特許第6948316号(P6948316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948316
(24)【登録日】2021年9月22日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】間接加熱陰極イオン源
(51)【国際特許分類】
   H01J 27/20 20060101AFI20210930BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   H01J27/20
   H01J37/08
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-519799(P2018-519799)
(86)(22)【出願日】2016年9月23日
(65)【公表番号】特表2018-535513(P2018-535513A)
(43)【公表日】2018年11月29日
(86)【国際出願番号】US2016053361
(87)【国際公開番号】WO2017069912
(87)【国際公開日】20170427
【審査請求日】2019年8月30日
(31)【優先権主張番号】62/245,567
(32)【優先日】2015年10月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/972,412
(32)【優先日】2015年12月17日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239188
【氏名又は名称】ヴァリアン セミコンダクター イクイップメント アソシエイツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル アルバラド
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】デビッド アッカーマン
【審査官】 関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−525036(JP,A)
【文献】 特開2002−117780(JP,A)
【文献】 特表2010−532082(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0242793(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0034837(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0101742(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J27/00−27/26
37/04
37/06−37/08
37/248
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間接加熱陰極イオン源であって、
該間接加熱陰極イオン源は、
ガスが導入されるチャンバと、
該チャンバの一方の端部に配置される陰極と、
前記チャンバの反対側の端部に配置される反射電極と、
前記チャンバの側面に沿って配置される少なくとも1つの電極と、を備え、
記陰極、前記反射電極及び前記少なくとも1つの電極の内の少なくとも1つに印加される、前記チャンバに対する電圧が、時間と共に、変わ
前記間接加熱陰極イオン源は、
コントローラを、さらに備え、
該コントローラは、前記間接加熱陰極イオン源の動作の時間をモニターし、前記間接加熱陰極イオン源の動作の前記時間に基づいて、印加すべき前記電圧を決定する、間接加熱陰極イオン源。
【請求項2】
前記電圧が、時間と共に、低減する、請求項1記載の間接加熱陰極イオン源。
【請求項3】
前記電圧は、前記少なくとも1つの電極に印加される、請求項1記載の間接加熱陰極イオン源。
【請求項4】
前記陰極、前記反射電極及び前記少なくとも1つの電極の内の少なくとも1つは、凹表面を有する前面で最初に形成される、請求項1記載の間接加熱陰極イオン源。
【請求項5】
間接加熱陰極イオン源であって、
該間接加熱陰極イオン源は、
ガスが導入されるチャンバと、
該チャンバの一方の端部に配置される陰極と、
前記チャンバの反対側の端部に配置される反射電極と、
前記チャンバの側面に沿って配置される少なくとも1つの電極と、
前記少なくとも1つの電極に印加すべき電圧を決定するように構成されるコントローラと、を備え、
所望の電流を維持するために、前記少なくとも1つの電極に印加される前記電圧が、時間と共に、低減
前記陰極、前記反射電極及び前記少なくとも1つの電極の内の少なくとも1つは、凹表面を有する前面で最初に形成される、間接加熱陰極イオン源。
【請求項6】
前記コントローラは、前記間接加熱陰極イオン源の動作の時間をモニターし、前記間接加熱陰極イオン源の動作の前記時間に基づいて、前記電圧を決定する、請求項記載の間接加熱陰極イオン源。
【請求項7】
前記コントローラは、バーンイン段階中、前記電圧を第1の速度により低減し、動作段階中、前記電圧を第2の速度により低減し、前記第1の速度は前記第2の速度より大きい、請求項記載の間接加熱陰極イオン源。
【請求項8】
前記コントローラは、電流測定システムと連通し、
前記電流測定システムは、前記間接加熱陰極イオン源から引出されるイオンビームの電流を測定し、
前記コントローラは、測定した前記イオンビームの電流に基づいて、印加すべき前記電圧を調整する、請求項記載の間接加熱陰極イオン源。
【請求項9】
間接加熱陰極イオン源であって、
該間接加熱陰極イオン源は、
チャンバと、
該チャンバの一方の端部に配置され、陰極電源に連通する陰極と、
前記チャンバの反対側の端部に配置され、反射電極電源に連通する反射電極と、
前記チャンバ内の前記チャンバの側面に配置され、電極電源に連通する電極と、
前記チャンバの別の側面に配置される、引出しアパーチャと、
前記陰極電源、前記反射電極電源及び前記電極電源の内の少なくとも1つに連通するコントローラと、を備え、
該コントローラは、前記陰極、前記反射電極及び前記電極の内の少なくとも1つに印加される、前記チャンバに対する電圧を、時間と共に、変更し、
前記コントローラは、バーンイン段階中、前記電圧を第1の速度により低減し、動作段階中、前記電圧を第2の速度により低減し、前記第1の速度は前記第2の速度より大きい、間接加熱陰極イオン源。
【請求項10】
前記コントローラは、前記間接加熱陰極イオン源の動作の時間の関数として、前記電圧を変える、請求項記載の間接加熱陰極イオン源。
【請求項11】
前記コントローラは、前記引出しアパーチャを通して引出されるイオンビームのビーム電流の関数として、前記電圧を変える、請求項記載の間接加熱陰極イオン源。
【請求項12】
前記電極に印加される前記電圧が変更される、請求項記載の間接加熱陰極イオン源。
【請求項13】
前記陰極、前記反射電極及び前記電極の内の少なくとも1つは、凹表面を有する前面で最初に形成される、請求項1記載の間接加熱陰極イオン源。
【発明の詳細な説明】
【優先権主張】
【0001】
本願は2015年10月23日に出願された米国仮特許出願第62/245,567号及び2015年12月17日に出願された米国特許出願第14/972,412号の優先権を主張するものであり、その開示内容はその全体において参照することにより本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明の実施形態は間接加熱陰極(IHC)イオン源に関し、特に、IHCイオン源の寿命を向上するため可変電極電圧を有するIHCイオン源に関する。
【背景技術】
【0003】
間接加熱陰極(IHC)イオン源は、陰極の後ろに配置されるフィラメントに電流を供給することにより、動作する。フィラメントは熱電子を放出し、熱電子は、陰極の方へ加速され、陰極を加熱し、順に、陰極に、電子をイオン源のチャンバの中に放出させる。陰極は、チャンバの一端に配置される。反射電極は、陰極の反対側のチャンバの端に通常は配置される。反射電極は、電子をチャンバの中心へ戻す方に向けて反発するように、バイアスをかけることができる。いくつかの実施態様において、さらに電子をチャンバ内に閉じ込めるために、磁場が用いられる。
【0004】
いくつかの実施態様において、電極も、又、チャンバの1つ以上の側面に配置される。チャンバの中心の近くのイオン密度を増大するために、これらの電極は、イオン及び電子の位置を制御するように、正に又は負にバイアスをかけることができる。イオンを引き出すことができる引き出しアパーチャは、チャンバの中心の近くの別の側面に沿って配置される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
IHCイオン源と関連する1つの課題は、陰極が限られた寿命を有し得ることである。陰極は、その後面で、電子からの照射にさらされ、その前面で、正の電荷イオンにより、さらされる。この照射により、結果的にスパッタリングをもたらし、陰極の浸食を引き起す。多くの実施態様において、IHCイオン源の寿命は、陰極の寿命により決定される。
【0006】
したがって、陰極の寿命を増大することができるIHCイオン源が有益であり得る。さらに、この装置が、IHCイオン源の寿命にわたって、所望の電流を維持するならば、優位であろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
向上した寿命を有するIHCイオン源が開示される。該IHCイオン源は、陰極及び前記イオン源の反対側の端部の反射電極を有するチャンバを備える。バイアスをかけられた電極が、前記イオン源の1つ以上の面に配置される。前記陰極、前記反射電極及び前記電極の内の少なくとも1つに印加される、前記チャンバに対するバイアス電圧を時間と共に変える。特定の実施態様において、前記電極に印加される前記電圧は、最初の正の電圧で始めることができる。時間と共に、ターゲットのイオンビーム電流を、なお維持しながら、この電圧を低減することができる。有利に、前記陰極の前記寿命は、この技術を用いて向上される。
【0008】
一実施態様により、間接加熱陰極イオン源が開示される。該間接加熱陰極イオン源は、ガスが導入されるチャンバと、該チャンバの一方の端部に配置される陰極と、前記チャンバの反対側の端部に配置される反射電極と、前記チャンバの側面に沿って配置される少なくとも1つの電極と、を備え、前記陰極、前記反射電極及び前記少なくとも1つの電極の内の少なくとも1つに印加される、前記チャンバに対する電圧が、時間と共に、変わる。特定の実施態様において、前記電圧が、時間と共に、低減する。特定の実施態様において、前記イオン源はコントローラを備える。特定の実施態様において、該コントローラは、前記間接加熱陰極イオン源の動作の時間をモニターし、前記間接加熱陰極イオン源の動作の時間に基づいて、印加すべき前記電圧を決定する。特定の実施態様において、前記コントローラは電流測定システムと連通し、前記電流測定システムは、引出しアパーチャを通って前記間接加熱陰極イオン源から引出されるイオンビームの電流を測定し、前記コントローラは、測定した前記イオンビームの電流に基づいて、印加すべき前記電圧を調整する。特定の実施態様において、前記陰極、前記反射電極及び前記少なくとも1つの電極の内の少なくとも1つは、凹表面を有する前面で最初に形成される。
【0009】
別の実施態様により、間接加熱陰極イオン源が開示される。該間接加熱陰極イオン源は、ガスが導入されるチャンバと、該チャンバの一方の端部に配置される陰極と、前記チャンバの反対側の端部に配置される反射電極と、前記チャンバの側面に沿って配置される少なくとも1つの電極と、を備え、前記少なくとも1つの電極に印加される電圧が、時間と共に、低減する。特定の実施態様において、前記イオン源は、前記少なくとも1つの電極の反対側の側面に、第2の電極を、さらに備え、該第2の電極は前記チャンバに電気的に接続される。特定の実施態様において、前記陰極及び前記反射電極は、前記チャンバに対して、負にバイアスをかけられ、前記少なくとも1つの電極は、前記チャンバに対して、最初に正にバイアスをかけられる。特定の実施態様において、前記間接加熱陰極イオン源はコントローラを備え、該コントローラは、バーンイン段階中、前記電圧を第1の速度により低減し、動作段階中、前記電圧を第2の速度により低減し、前記第1の速度は前記第2の速度より大きい。
【0010】
別の実施態様により、間接加熱陰極イオン源が開示される。該間接加熱陰極イオン源は、チャンバと、該チャンバの一方の端部に配置され、陰極電源に連通する陰極と、前記チャンバの反対側の端部に配置され、反射電極電源に連通する反射電極と、前記チャンバ内の前記チャンバの側面に配置され、電極電源に連通する電極と、前記チャンバの別の側面に配置される、引出しアパーチャと、前記陰極電源、前記反射電極電源及び前記電極電源の内の少なくとも1つに連通するコントローラと、を備え、該コントローラは、前記陰極、前記反射電極及び前記電極の内の少なくとも1つに印加される、前記チャンバに対する電圧を、時間と共に、変更する。特定の実施態様において、前記陰極電源及び前記反射電極電源は1つの電源である。
【0011】
本発明をより良く理解するために、参照することにより本明細書に組み込まれる、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態によるイオン源である。
図2】使用後の図1のイオン源を示し、別の実施形態によるイオン源も表わす。
図3】一実施形態による制御システムの表示である。
図4】一実施形態における、バイアス電圧と動作時間との間の関係を示す代表的グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記のように、間接加熱陰極イオン源は、特に、陰極及び反射電極へのスパッタリングの影響による短くなった寿命の影響を受けやすい。通常は、時間とともに、穴がコンポーネントにわたって、大きくなるときに、よくあるが、これらのコンポーネントの1方又は両方が機能しなくなる。
【0014】
図1は、これらの課題を克服するIHCイオン源10を示す。IHCイオン源10は、2つの向かい合った端部及びこれらの端部と接続する側部を有するチャンバ100を含む。チャンバは、導電性の材料を材料として作ることができる。陰極110は、チャンバ100の一方の端部で、チャンバ100の中に配置される。この陰極110は、チャンバ100に対して、陰極110にバイアスをかけるために供給する陰極電源115と連通する。特定の実施形態において、陰極電源115は、チャンバ100に対して、陰極110に負のバイアスをかけることができる。例えば、陰極電源115は、他の電圧を用いることができるけれども、0Vから−150Vの範囲の出力を有することができる。特定の実施形態において、陰極110は、チャンバ100に対して、0Vと−40Vとの間でバイアスをかけられる。フィラメント160は、陰極110の後に配置される。フィラメント160は、フィラメント電源165と連通する。フィラメント電源165は、フィラメント160が熱電子を放出するように、電流がフィラメント160を通過するように構成される。陰極バイアス電源116は、陰極110に対して、フィラメント160に負のバイアスをかけ、したがって、これらの熱電子は、フィラメント160から陰極110の方へ、加速され、熱電子が陰極110の後面を突き当てるときに、陰極110を加熱する。陰極バイアス電源116は、フィラメント160が、例えば、陰極110の電圧よりもっと負の300Vと600Vとの間の電圧を有するように、フィラメント160にバイアスをかけることができる。陰極110は、次いで、熱電子を陰極110の前面からチャンバ100の中へ放出する。この技術は、「電子ビーム加熱」としても、既知であり得る。
【0015】
したがって、フィラメント電源165は、電流をフィラメント160に供給する。陰極バイアス電源116は、フィラメント160にバイアスをかけ、したがって、フィラメント160が陰極110よりもっと負になるようにし、電子が、フィラメント160から陰極110の方に引き付けられるようにする。最後に、陰極電源115は、チャンバ100よりもっと負になるように、陰極110にバイアスをかける。
【0016】
反射電極120は、陰極110の反対側のチャンバ100の端部の上のチャンバ100の中に配置される。反射電極120は、反射電極電源125と連通することができる。名称が示唆するように、反射電極120は、陰極110から放出される電子をチャンバ100の中心へ戻す方に向けて反発するように、役目を果たす。例えば、反射電極120は、電子を反発するために、チャンバ100に対して負の電圧でバイアスをかけることができる。陰極電源115と同様に、反射電極電源125は、チャンバ100に対して反射電極120に負のバイアスをかけることができる。例えば、反射電極電源125は、他の電圧を用いることができるけれども、0Vから−150Vの範囲の出力を有することができる。特定の実施形態において、反射電極120は、チャンバ100に対して、0Vと−40Vとの間でバイアスをかけられる。
【0017】
特定の実施形態において、陰極110及び反射電極120は、共通の電源に接続することができる。したがって、本実施形態において、陰極電源115及び反射電極電源125は、同一の電源である。
【0018】
図示されないけれども、特定の実施形態において、磁場がチャンバ100の中に生成される。この磁場により、電子を一方向に沿って閉じ込めることを意図する。例えば、陰極110から反射電極120への方向(すなわち、方向)に平行な列の中に、電子を閉じ込めることができる。
【0019】
電極130a、130bがチャンバ100内にあるように、電極130a、130bをチャンバ100の側面に配置することができる。電極130a、130bは電源によりバイアスをかけることができる。特定の実施形態において、電極130a、130bは共通の電源に連通することができる。しかしながら、他の実施形態において、IHCイオン源10の出力を調整するため、最大の柔軟性及び機能性を可能にするために、電極130a、130bは、各々、それぞれの電極電源135a、135bに連通することができる。
【0020】
陰極電源115及び反射電極電源125と同様に、電極電源135a、135bは、チャンバ100に対して電極にバイアスをかける役目を果たす。特定の実施形態において、電極電源135a、135bは、チャンバ100に対して正に又は負に電極130a、130bにバイアスをかけることができる。例えば、電極電源135a、135bは、電極130a、130bの内の少なくとも1つに、チャンバ100に対して0Vと150Vとの間の電圧で、最初にバイアスをかけることができる。特定の実施形態において、電極130a、130bの内の少なくとも1つに、チャンバに対して60Vと150Vとの間の電圧で、最初にバイアスをかけることができる。他の実施形態において、電極130a、130bの内の1つ又は両方は、チャンバ100に電気的に接続することができ、したがって、チャンバ100と同一の電圧である。
【0021】
陰極110の各々、反射電極120及び電極130a、130bは、金属などの導電材料から作ることができる。
【0022】
チャンバ100の別の側面に配置されるのは、引き出しアパーチャ140とすることができる。図1において、引き出しアパーチャ140は、X−Y平面に平行な(ページに平行な)側面に配置される。さらに、図示していないが、IHCイオン源10は、また、イオン化すべきガスがチャンバに導入されるガス注入口も備える。
【0023】
コントローラ180は、これらの電源により供給される電圧又は電流を変更することができるように、1つ以上の電源と連通することができる。さらに、特定の実施形態において、コントローラ180は、引き出したイオンビーム電流をモニターする測定システム200(図3を参照)と連通することができる。コントローラ180は、1つ以上の電源を時間と共に調整することができる。これらの調整は、動作の時間に基づくか、又は、測定した引き出されるイオンビーム電流に基づくことができる。コントローラ180は、マイクロコントローラ、パソコン、特殊用途コントローラ、又は、別の適切な処理装置などの処理装置を含むことができる。コントローラ180は、また、半導体メモリ、磁気メモリ、又は、別の適切なメモリなどの持続性記憶要素も含むことができる。この持続性記憶要素は、コントローラ180に本明細書で説明した機能を実行させる命令及び他のデータを含むことができる。
【0024】
動作中、フィラメント電源165は、フィラメントに熱電子を放出させる電流をフィラメント160に通す。これらの電子は、陰極110の後面に突き当たり、フィラメント160よりもっと正にすることができ、陰極110を加熱させ、順次、陰極110に電子をチャンバ100の中へ放出させる。これらの電子は、ガス注入口を通ってチャンバ100の中へ供給されるガスの分子と衝突する。これらの衝突はプラズマ150を形成するイオンを創生する。プラズマ150は、陰極110、反射電極120、及び、電極130a、130bにより創生される電場により、閉じ込め、操作することができる。特定の実施形態において、プラズマ150は、チャンバ100の中心の近くで、引き出しアパーチャ140に近接して閉じ込められる。
【0025】
時間と共に、陰極110、反射電極120、及び、電極130a、130bは、これらのコンポーネントの上へのイオン及び電子のスパッタリングにより、すり減らされ得る。例えば、図2は、数時間の動作後の図1のイオン源を表わすことができる。陰極110、反射電極120、及び、電極130a、130bは、腐食され、各々は、凹形状である前面を有し得る。したがって、プラズマ150は、図1のサイズと比較して、成長し得る。これにより、イオン密度の低減をもたらし得て、したがって、引き出したイオンビーム電流の対応する低減をもたらし得る。
【0026】
いくつかの場合において、フィラメント160に供給される電流は、プラズマ密度のこの低減を補償するために、コントローラ180により、増大することができる。これにより、陰極110を、より高温に加熱することを引き起し、もっと多くの電子を放出する。いくつかの場合において、フィラメント160からの電子が陰極110に突き当たるエネルギーを変更する、陰極バイアス電源116の出力を変えることにより、フィラメント160と陰極110との間の電位差を変更する。特定の場合において、これらの技術の両方が用いられる。しかしながら、これらの技術は、所望の引き出したイオンビーム電流を回復するのに成功するが、イオン源の寿命に有害な影響を有し得る。
【0027】
フィラメント160の電流を変更すること、又は、フィラメント160と陰極110との間のバイアス電圧を変更すること、よりはむしろ、本システムは、時間と共に、チャンバに対して、陰極110、反射電極120、及び、電極130a、130bの内の少なくとも1つに印加される電圧を調整する。
【0028】
コントローラ180は、2つの方法の内の1つで、これらの電圧を変更することができる。第1に、コントローラ180は、動作の時間に基づいて、電圧を変更することができる。例えば、コントローラ180は、電圧を動作の潮流時間と関連付ける、表、式、方程式又は他の技術を含むことができる。さらに、コントローラ180は、IHCイオン源10が利用された時間を、コントローラ180に追跡させる、クロック機能を含むことができる。言い換えれば、IHCイオン源10が、50時間、動作している場合、コントローラ180は、この値に基づいて、陰極110、反射電極120、及び、電極130a、130bに印加される適切な電圧を決定するために、表を参照し、又は、計算を実施することができる。コントローラ180は、電圧を連続的に変更することができ、又は、電圧を離散的ステップで変更することができる。例えば、コントローラ180は、N時間の動作ごとの後に、電圧を変更することができる。
【0029】
別の実施形態において、コントローラ180は、図3に示すように、閉ループフィードバックを利用することができる。本実施形態において、引き出したイオンビーム電流を測定するために、測定システム200が用いられる。この測定システム200は、ファラデーカップ又は別の適切な測定装置を含むことができる。コントローラ180は、測定した引き出されるイオンビーム電流がコントローラ180に利用できるように、この測定システム200と連通することができる。この測定値に基づいて、コントローラ180は、陰極110、反射電極120、及び、電極130a、130bに印加される1つ以上の電圧を調整することができる。このように、コントローラ180は、陰極110、反射電極120、及び、電極130a、130bに印加される電圧の調整により、所望のイオンビーム電流を維持する。これは、電源の1つにその出力を変更させることにより、達成することができる。
【0030】
1つの特殊な実施形態において、コントローラ180は、数時間の動作をモニターすることができ、電極電源135aを用いて、電極130aに印加される電圧を調整することができる。特定の実施形態において、電極130aに印加される電圧は、時間と共に、低減することができる。例えば、イオン源が初期化されるとき、電圧は第1の値とすることができる。この第1の値は、チャンバ100に対して、例えば、60Vと150Vとの間などの、正にすることができる。一実施形態において、電極130aに印加される電圧とIHCイオン源10の動作時間との間に関係がある。この関係は、線形であり得て、又は、任意の適切な関数とすることができる。例えば、電極130aに印加される電圧は、10時間の動作ごとの後に、変更することができる。
【0031】
更なる実施形態において、コントローラ180は、イオン源の動作を、バーンイン段階か、それとも、動作段階として、さらに分類することができる。バーンイン段階は、他の持続時間も用いることができるけれども、例えば、最初の50時間の動作と考慮することができる。動作段階は、バーンイン段階の後の時間の動作とすることができる。コントローラ180は、電圧とバーンイン段階中の動作時間との間の1つの線形関係、及び、電圧と動作段階中の動作時間との間の第2の線形関係を用いることができる。図4は、この2つの段階のアプローチを表わすグラフを示す。線400により示すバーンイン段階中、電圧は第1の速度で低減し得る。線410により示す動作段階中、電圧は第2の速度により低減し得る。いくつかの実施形態において、第1の速度は第2の速度より大きい。
【0032】
別の実施形態において、コントローラ180は、実際の引出したイオンビーム電流をモニターすることができ、電極電源135aを用いて、電極130aに印加される電圧を調整することができる。特定の実施形態において、電極130aに印加される電圧は時間と共に低減し得る。例えば、イオン源が初期化されるとき、電圧は第1の値とすることができる。この第1の値は、チャンバ100に対して、例えば、60Vと150Vとの間などの、正にすることができる。一定の引出したイオンビーム電流を維持するために、電圧は時間と共に低減し得る。
【0033】
特定の実施形態において、電極130aに印加される電圧は、最初に、80Vに設定することができる。ターゲットの引出したイオンビーム電流を維持するために、時間と共に、その電圧は低減し得る。いくつかの実施形態において、この低減は、動作の時間の関数として、線形であり得る。例えば、電極130aの電圧は、V−m×Hとして定義することができ、Vは電極130aに印加される最初の電圧であり、Hはイオン源に対する動作の時間数であり、mは電圧が動作の時間に対して低減される速度である。他の実施形態において、引出したイオンビーム電流をモニターし、ターゲットの引出したイオンビーム電流を維持するために、電極130aに印加される電圧を変えることにより、この低減が決定される。本実施形態において、電極130aに印加される電圧の低減は、時間と共に、線形であってもよいし、又は、線形でなくもよい。
【0034】
特定の実施形態において、IHCイオン源10の寿命を向上するために、陰極110、反射電極120、及び、電極130a、130bの最初の形状を変更することができる。例えば、通常は、これらのコンポーネントの前面は平坦である。しかしながら、特定の実施形態において、これらのコンポーネントは、凹形状を有する前面で最初に形成することができる。図2は、数時間の動作後の図1のイオン源を示すが、別の実施形態において、IHCイオン源は、この凹形状を有する前面で最初に形成されるコンポーネントを備える。したがって、別の実施形態において、図2は、凹形状を有する前面で最初に形成されるコンポーネントを有するIHCイオン源を表わす。この凹形状は、IHCイオン源10の寿命の増大にさらに役立つことができる。
【0035】
本出願の上記の実施形態は、多くの優位性を有し得る。上記のように、IHCイオン源は、陰極及び反射電極へのスパッタリングの影響による短い寿命の影響を受けやすい。他のIHCイオン源とは違って、本システムは、所望のイオンビーム電流を維持するために、陰極、反射電極及び/又は電極に、時間と共に、印加される電圧を変更する。しかしながら、これらのコンポーネントに印加される電圧は低減するので、低減した電位により、より少ないスパッタリングが生じ、IHCイオン源の寿命を増大する。1つのテストにおいて、IHCイオン源の寿命は、この技術を用いて、40%を超えて増大した。
【0036】
言い換えれば、従来の技術は、陰極110の温度を変えることを求め、これにより、引出したイオンビーム電流を制御する目的を達成する。しかしながら、スパッタする速度は、陰極110、反射電極120及び他の電極130a、130b間の差動電圧に主として依存するため、これらの従来の技術のどれも、陰極110のスパッタする速度を制御することを求めない。本システムは、同時に、IHCイオン源の寿命を伸ばしながら、イオンビーム電流を維持する。
【0037】
本発明は、本明細書に記載された特定の実施形態によって範囲を限定されるものではない。実際に、本明細書に記載された実施形態に加えて、本発明の他の様々な実施形態および変更は、前述の記載および添付図面から当業者には明らかであろう。したがって、このような他の実施形態および変更は、本発明の範囲内に含まれるものと意図している。さらに、本発明は、特定の環境における特定の目的のための特定の実装の文脈にて本明細書中で説明したけれども、当業者は、その有用性はそれらに限定されるものでなく、本発明は任意の数の環境における任意の数の目的のために有益に実装し得ることを認識するであろう。従って、以下に記載する特許請求の範囲は本明細書に記載された本発明の全範囲及び精神に鑑みて解釈しなければならない。
図1
図2
図3
図4