特許第6948338号(P6948338)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948338
(24)【登録日】2021年9月22日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】ブロー成形金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/54 20060101AFI20210930BHJP
【FI】
   B29C49/54
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-545063(P2018-545063)
(86)(22)【出願日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】JP2017037080
(87)【国際公開番号】WO2018070499
(87)【国際公開日】20180419
【審査請求日】2020年10月9日
(31)【優先権主張番号】特願2016-201322(P2016-201322)
(32)【優先日】2016年10月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸茂 健二
【審査官】 北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/033319(WO,A2)
【文献】 特開2000−246790(JP,A)
【文献】 特開平10−272679(JP,A)
【文献】 特表2008−519709(JP,A)
【文献】 特開平11−314268(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/073699(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0098935(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00−49/80
B29C 33/00−33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリップ部付きの樹脂容器をブロー成形するためのブロー成形金型であって、
有底筒状のプリフォームが収容されるキャビティを形成する一対の割型からなるキャビティ型と、
一端側が軸部材によって回動可能に支持され、ブロー成形時に前記プリフォームを押圧して前記グリップ部を形成する凹部入れ子型を他端側に備えるリンク部材と、
前記キャビティ型の側方に直線移動可能に設けられ、直線移動に伴って前記リンク部材を押圧して回動させるカム部材と、を備え
前記カム部材は、直線移動に伴って前記リンク部材を前記キャビティに向かって押圧して回動させる第1のカム部と、前記リンク部材を前記キャビティの外側に向かって押圧して回動させる第2のカム部と、を備え、
前記リンク部材は、前記第1のカム部が当接し当該第1のカム部の表面を転動する第1のカムフォロアを備えていると共に、前記第2のカム部が当接し当該第2のカム部の表面を転動する第2のカムフォロアを前記第1のカムフォロアとは別に備えていることを特徴とするブロー成形金型。
【請求項2】
請求項に記載のブロー成形金型において、
前記第1のカム部と前記第2のカム部とが、前記キャビティ型の高さ方向で離間して設けられていることを特徴とするブロー成形金型。
【請求項3】
請求項に記載のブロー成形金型において、
前記第1のカム部は、前記カム部材の本体部から前記キャビティ型側に突出して設けられ、前記第2のカム部は、前記本体部から前記第1のカム部の端面に沿って片持ち梁状に設けられていることを特徴とするブロー成形金型。
【請求項4】
請求項に記載のブロー成形金型において、
前記第2のカムフォロアの直径が、前記第1のカムフォロアの直径よりも小さいことを特徴とするブロー成形金型。
【請求項5】
請求項に記載のブロー成形金型において、
前記第2のカムフォロアの軸中心は、前記第1のカムフォロアの軸中心よりも前記キャビティの外側に配置されていることを特徴とするブロー成形金型。
【請求項6】
グリップ部付きの樹脂容器をブロー成形するためのブロー成形金型であって、
有底筒状のプリフォームが収容されるキャビティを形成する一対の割型からなるキャビティ型と、
一端側が軸部材によって回動可能に支持され、ブロー成形時に前記プリフォームを押圧して前記グリップ部を形成する凹部入れ子型を他端側に備えるリンク部材と、
前記キャビティ型の側方に直線移動可能に設けられ、直線移動に伴って前記リンク部材を押圧して回動させるカム部材と、を備えるブロー成形金型であって、
前記ブロー成形金型は隣接して配置された複数の前記キャビティ型を備え、各キャビティ型に対応して設けられる複数のカム部材が連結部材に固定されて一体化され、
複数の前記カム部材が固定された前記連結部材の一端側には、当該連結部材を直線往復移動させるアクチュエータ装置が接続されていることを特徴とするブロー成形金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリップ部を有する樹脂容器をブロー成形するためのブロー成形金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、調味料や飲料等を収容するための樹脂容器として、持ち運びを容易にするために容器の一部を窪ませたグリップ部を備えているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1にも記載されているように、グリップ部を備える樹脂容器は、一般的に、ブロー成形装置によって、プリフォームをブロー成形することで形成されている。そしてグリップ部は、ブロー成形金型のキャビティ内でプリフォームをブロー成形する際、プリフォームをグリップ成形部(可動入れ子)で押圧することによって形成されている。
【0004】
グリップ成形部の移動機構は、様々あるが、例えば、油圧ある或いは空気圧等により作動するアクチュエータ装置によって、グリップ成形部(プラグ)をキャビティの左右方向から互いに接近する方向に前進させるようにしたものがある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−103612号公報
【特許文献2】特開平2−72925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のようにグリップ成形部をアクチュエータ装置によって移動させる場合、各グリップ成形部に対応する複数のアクチュエータ装置を設ける必要があり、ブロー成形装置が大型化したり、コスト高になってしまうといった問題が生じる虞がある。
【0007】
特に、隣接して配置される複数のブロー成形金型を備え、複数個の樹脂容器を一度に形成可能なブロー成形装置においては、このような問題が生じやすい。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、構造を簡略化して小型化を図ることができ、コストの削減を図ることができるブロー成形金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の態様は、グリップ部付きの樹脂容器をブロー成形するためのブロー成形金型であって、有底筒状のプリフォームが収容されるキャビティを形成する一対の割型からなるキャビティ型と、一端側が軸部材によって回動可能に支持され、ブロー成形時に前記プリフォームを押圧して前記グリップ部を形成する凹部入れ子型を他端側に備えるリンク部材と、前記キャビティ型の側方に直線移動可能に設けられ、直線移動に伴って前記リンク部材を押圧して回動させるカム部材と、を備えることを特徴とするブロー成形金型にある。
【0010】
ここで、前記カム部材は、直線移動に伴って前記リンク部材を前記キャビティに向かって押圧して回動させる第1のカム部を備えることが好ましい。また前記カム部材は、前記リンク部材を前記キャビティの外側に向かって押圧して回動させる第2のカム部を備えていることが好ましい。
【0011】
さらに前記第1のカム部と前記第2のカム部とが、前記キャビティ型の高さ方向で離間して設けられていることが好ましい。例えば、前記第1のカム部は、前記カム部材の本体部から前記キャビティ型側に突出して設けられ、前記第2のカム部は、前記本体部から前記第1のカム部の端面に沿って片持ち梁状に設けられている。
【0012】
また前記リンク部材は、前記第1のカム部が当接し当該第1のカム部の表面を転動する第1のカムフォロアを備えていると共に、前記第2のカム部が当接し当該第2のカム部の表面を転動する第2のカムフォロアを前記第1のカムフォロアとは別に備えていることが好ましい。
【0013】
また前記第2のカムフォロアの直径が、前記第1のカムフォロアの直径よりも小さいことが好ましい。さらに第2のカムフォロアの軸中心は、第1のカムフォロアの軸中心よりも前記キャビティの外側に配置されていることが好ましい。
【0014】
また、隣接して配置された複数の前記キャビティ型を備え、各キャビティ型に対応して設けられる複数のカム部材が連結部材に固定されて一体化され、複数の前記カム部材が固定された前記連結部材の一端側には、当該連結部材を直線往復移動させるアクチュエータ装置が接続されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
かかる本発明によれば、ブロー成形金型の構造を比較的簡略化することができ、ブロー成形装置の小型化を図ることができる。具体的には、複数のカム部材を一つのアクチュエータ装置で作動させることができるため、複数のキャビティ型を備える多数個取りのブロー成形金型において特に有効であり、装置の小型化を図ることができると共に、コストの削減を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】グリップ付き樹脂容器の一例を示す正面図及び断面図である。
図2】本発明に係るブロー成形装置の全体構成を示す平面図である。
図3】本発明に係るブロー成形金型の一部を示す上面図である。
図4】本発明に係るブロー成形金型の一部を示す正面図である。
図5】本発明に係るブロー成形金型を示す断面図である。
図6】本発明に係るブロー成形金型を示す断面図である。
図7】本発明に係るブロー成形金型が備えるカム部材の斜視図である。
図8】本発明に係るカム部材によるリンク部材の押圧状態を示す図である。
図9】本発明に係るカム部材によるリンク部材の押圧状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るブロー成型金型によってブロー成形される樹脂容器の一例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A′断面図である。
【0018】
図1(a)に示すように、樹脂容器10は、例えば、調味料や飲料等の液体を収容するための容器であり、上端に口部11を有するネック部12と、筒状の胴部13と、ネック部12と胴部13とを繋ぎネック部12側から内径が徐々に拡開する肩部14と、胴部13の一端を密封する底部15と、を有する。また水平方向の断面図である図1(b)に示すように、本実施形態では、樹脂容器10の胴部13及び肩部14は、略楕円形の外形に形成されている。
【0019】
そして、略楕円形の外形を有する胴部13及び肩部14には、その長辺方向の一端側に、把持用の凹部であるグリップ部16が形成されている。このグリップ部16は、樹脂容器10の一部を窪ませることによって形成されている。グリップ部16は、消費者が把持する際の握り易さ等を考慮して、本実施形態では、肩部14の外形(曲線)に沿って形成されている。
【0020】
このようなグリップ部16を有する樹脂容器10は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂材料からなり、所定形状のプリフォームをブロー成形装置によってブロー成形することによって形成されている。
【0021】
なおグリップ部16を含む樹脂容器10の形状は、あくまで一例であり、本発明に係るブロー成型金型によって成形される樹脂容器10は、この形状に限定されるものではない。
【0022】
以下、グリップ部16を有する樹脂容器10を成形する本発明のブロー成形金型を備えるブロー成形装置について詳細に説明する。
【0023】
図2に示すように、ブロー成形装置20は、中空容器となるプリフォーム200を射出成形する射出成形部30と、射出成形部30で成形されたプリフォーム200を冷却する冷却部40と、プリフォーム200を加熱する加熱部50と、後述するブロー成形金型610によってプリフォーム200をブロー成形するブロー成形部60と、を備えている。
【0024】
またブロー成形装置20は、射出成形部30で成形されたプリフォーム200をブロー成形部60まで搬送するための連続搬送部70を備えている。連続搬送部70は、搬送ライン71を備え、搬送治具72に搭載されたプリフォーム200をこの搬送ライン71に沿って連続搬送する。
【0025】
さらにブロー成形装置20は、搬送ライン71における加熱部50の下流側に、複数個(例えば、4つ)のプリフォーム200を保持してブロー成形部60に間欠的に搬送する間欠搬送部80と、連続搬送部70によって連続搬送されたプリフォーム200を搬送ライン71から間欠搬送部80に受け渡す受渡部90と、を備えている。
【0026】
なお本実施形態に係るブロー成形装置20を構成する射出成形部30、冷却部40、加熱部50の構成、また連続搬送部70、間欠搬送部80及び受渡部90のプリフォーム200を搬送するための構成は、公知のものであるため、ここでの説明は省略する(必要であれば、本件出願人による国際公開第2012/057016号公報など参照)。
【0027】
本発明に係るブロー成形装置20は、これら射出成形部30、冷却部40、加熱部50、ブロー成形部60、連続搬送部70、間欠搬送部80及び受渡部90のうち、ブロー成形部60の構成に特徴がある。すなわち本発明は、ブロー成形部60が備えるブロー成形金型の構成に特徴がある。
【0028】
以下では、本発明に係るブロー成形金型について詳細に説明する。図3は、ブロー成形金型の一例を示す上面図であり、図中左側はリンク部材が待機位置にある状態を示し、図中右側はリンク部材が成形位置にある状態を示す。図4はブロー成形金型の一部を示す正面図である。図5及び図6はブロー成形金型の断面図であり、図5はリンク部材が待機位置にある状態を示し、図6はリンク部材が成形位置にある状態を示している。また図7はカム部材の斜視図であり、図8は、リンク部材を成形位置に回動させる際のカム部材によるリンク部材の押圧状態を示す図であり、図9は、リンク部材を待機位置に回動させる際のカム部材によるリンク部材の押圧状態を示す図である。
【0029】
図3及び図4に示すように、ブロー成形部60は、加熱部50から搬送されたプリフォームをブロー成形するためのブロー成形金型610を備えている。本実施形態では、ブロー成形金型610は、ベースプレート601に固定されて近接して一列に配置された複数のキャビティ型611を備えている。キャビティ型611は、プリフォームが収容される空間であるキャビティ612を形成する。キャビティ型611の下部には、樹脂容器10の底部15を形成する底型613が昇降可能に設けられている。またブロー成形金型610の両端に配置された各キャビティ型(一列に配置された両端の各キャビティ型)611の外側には、圧受け板(圧受け部材)602がベースプレート601に固定された状態で設置されている。また図示は省略するが、キャビティ型611の上部にはブローコア型が昇降可能に設けられている。
【0030】
またキャビティ型611は、図5及び図6に示すように、一対の割型である第1の割型614及び第2の割型615で構成されている。これら第1の割型614及び第2の割型615には、樹脂容器10のグリップ部16を形成するためのリンク部材620が、それぞれ、軸部材630によって回動可能に取り付けられている。またブロー成形金型610は、各キャビティ型611の側方(第1の割型614及び第2の割型615のそれぞれの側方)に配置されて各リンク部材620を押圧して回動させるカム部材640を備えている。
【0031】
ここで、リンク部材620は、一端側が軸部材630によって回動可能に支持された長尺状のリンク本体部621と、リンク本体部621の他端側に固定されて樹脂容器10のグリップ部16を形成するための凹部入れ子型(凸状入れ子型、凸状可動型)622と、を備えている。本実施形態では、リンク本体部621は、その一方の端部(第1の端部)621aが、キャビティ型611のパーティング面611aとは直交する方向の一方の端面611b付近に、軸部材630によって回動可能に支持されている。すなわちリンク本体部621の第1の端部621aは、隣接するキャビティ型611の間に配置された軸部材630によって回動可能に支持されている(図4参照)。なお軸部材630は、キャビティ型611に固定されていてもよいし、キャビティ型611の外側に設けられた他の部材に固定されていてもよい。
【0032】
凹部入れ子型622は、ブロー成形の際に膨らむプリフォームを押圧して樹脂容器10にグリップ部16を形成するための金型であり、プリフォームを押圧する押圧面622aがキャビティ612側を向くように押圧面622aとは反対側の面622bでリンク本体部621の第2の端部(第1の端部621aとは反対側の端部)621bに固定されている。
【0033】
またリンク本体部621の第2の端部621bには、カム部材640が備える第1のカム部641に当接する第1のカムフォロア623と、カム部材640が備える第2のカム部642に当接する第2のカムフォロア624と、が設けられている。これら第1のカムフォロア623及び第2のカムフォロア624は、リンク本体部621に対して回転可能に支持されたローラ(回転部材)によって構成されている。このため、第1のカムフォロア623は、第1のカム部641が当接した際、この第1のカム部641の表面を転動する。同様に、第2のカムフォロア624も、第2のカム部642が当接した際に、第2のカム部642の表面を転動する。
【0034】
第1のカムフォロア623は、リンク本体部621の厚さ方向(リンク本体部621が回動する面に対し直交する方向)の略中央部に形成された溝部625内に、リンク本体部621の凹部入れ子型622とは反対側の端面621cよりも外側に若干突出するように設けられている(図8図9参照)。また、第1のカムフォロア623の厚さ方向の中心は凹部入れ子型622の厚さ方向の中心と略同一平面上に位置している。これにより、凹部入れ子型622がブロー圧を受けた際、第1のカム部641は、第1のカムフォロア623を介して適切に荷重を受けることができる。
【0035】
例えば、第1のカムフォロア623が受ける荷重(ブロー圧)は、第1のカムフォロア623の厚さ方向で略均一になり、それに伴い、第1のカム部641が受ける荷重も、第1のカム部641の厚さ方向で略均一になる。すなわち第1のカム部641の厚さ方向において、第1のカム部641が受ける荷重のバラツキが小さく抑えられる。したがって、第1のカム部641を備えるカム部材640や、カム部材640を保持する各部材に対する負荷を抑制することができる。
【0036】
また第2のカムフォロア624は、リンク本体部621の上面に設けられている。このように第2のカムフォロア624は、第1のカムフォロア623とは別に設けられ、両者は、キャビティ型611の上下方向において離間して配置されている。
【0037】
第2のカムフォロア624の直径は、第1のカムフォロア623の直径よりも小さく、その軸中心は、第1のカムフォロア623の軸中心よりも外側(キャビティとは反対側)に配置されている(図8図9参照)。特に、第2のカムフォロア624の軸中心は、第1のカムフォロア623の軸中心よりも外側で、且つリンク本体部621の端面621cに近い位置に配置されていることが好ましい。さらに本実施形態では、第2のカムフォロア624の軸中心は、第1のカムフォロア623の軸中心よりもリンク本体部621の端面621dに近い位置に設けられている(図4参照)。
【0038】
なおキャビティ型611を構成する第1の割型614及び第2の割型615の側面(パーティング面611aとは反対側の面)615aには、リンク部材620が収容される収容凹部616が形成されている。また収容凹部616の凹部入れ子型622に対応する位置には、キャビティ612に連通する連通孔617が形成されている。この連通孔617から凹部入れ子型622がキャビティ612内に突出することとで、樹脂容器10にグリップ部16が形成されるようになっている。
【0039】
一方、カム部材640は、各キャビティ型611の側方の各リンク部材620に対応する位置に、キャビティ型611のパーティング面611aに沿って直線移動可能に設けられている。本実施形態では、各カム部材640は、平板状又は棒状の連結部材631にそれぞれ固定されて一体化されている。連結部材631は、並設されている複数のキャビティ型611に亘って連続的に設けられ、スライド部材632を介してガイドレール633に装着されている。すなわち連結部材631は、ガイドレール633に沿って直線移動可能に構成されている。本発明では、ガイドレール633はベースプレート601に固定されている。また連結部材631の長手方向一端部には、アクチュエータ装置634のロッド部材635が接続されている(図3参照)。アクチュエータ装置634は、アクチュエータ固定部材636を介して圧受け板602やベースプレート601に固定されている。
【0040】
このような構成では、アクチュエータ装置634を作動させてロッド部材635を前進又は後退させることで、複数の各カム部材640が固定された連結部材631がガイドレール633に沿って直線移動する。この直線移動に伴って複数の各カム部材640も直線移動し、その際、各カム部材640が各リンク部材620を押圧して回動させる。これにより、凹部入れ子型622を備えるリンク部材620を、待機位置と成形位置との間で適宜回動させることができる。
【0041】
ここで、カム部材640は、図7に示すように、リンク部材620に当接してリンク部材620を押圧する第1のカム部641及び第2のカム部642を備えている。第1のカム部641は、連結部材631に固定されるカム本体部643からリンク部材620側に突出して設けられている。この第1のカム部641は、第1のカムフォロア623に対応する位置(高さ)に設けられており、カム部材640の直線移動に伴って第1のカム部641の端面641aに第1のカムフォロア623が当接するようになっている。この第1のカム部641は、リンク部材620の第1の端部621a側から第2の端部621b側に向かって突出量が徐々に増加するように形成されている。すなわちカム部材640を直線移動させた際に、第1のカムフォロア623が第1のカム部641の端面641a上を転動するように第1のカム部641の突出量を徐々に増加させている。
【0042】
第2のカム部642は、カム本体部643の端部(リンク部材620の第1の端部621a)から第1のカム部641の端面(第1のカムフォロア623が当接する端面)641aに沿って片持ち状に設けられている。すなわち第2のカム部642は、その一端側のみがカム本体部643に接続されており、他端側はカム本体部643とは分離されている。この第2のカム部642は、第2のカムフォロア624に対応する位置(高さ)に設けられている。そして第2のカム部642は、第2のカムフォロア624のキャビティ612側に配置されている。
【0043】
このようなブロー成形金型610では、プリフォームのブロー成形前、リンク部材620は、凹部入れ子型622がキャビティ612から最も離れる待機位置にある(図5参照)。なお本実施形態では、リンク部材620が待機位置にある状態でも、凹部入れ子型622の押圧面622a側の一部がプリフォームに接触しない程度にキャビティ612内に突出した状態となっている。そして、プリフォームがブロー成形される際には、リンク部材620は、待機位置から凹部入れ子型622がキャビティ612内に最も突出する成形位置まで回動する(図6参照)。言い換えれば、リンク部材620の回動に伴い、凹部入れ子型622が待機位置から成形位置まで前進する。
【0044】
具体的には、アクチュエータ装置634を作動させてロッド部材635を前進させることで(図3中右側参照)、各カム部材640を、リンク部材620の第2の端部621b側から第1の端部621a側に向かって直線移動させる。その際、図8に示すように、第1のカムフォロア623が第1のカム部641の端面641aに当接して第1のカム部641の端面641a上を転動し、それに伴い、リンク部材620が軸部材630を中心としてキャビティ612側に向かって徐々に回動する。これにより、ブロー成形により膨張するプリフォームの一部が凹部入れ子型622によって押圧されてグリップ部16を備える樹脂容器10が良好に形成される。なお、このとき第2のカムフォロア624は、第2のカム部642とは非接触の状態となっている。
【0045】
グリップ部16を備える樹脂容器10が形成された後は、アクチュエータ装置634を作動させてロッド部材635を後退させることで(図3中左側参照)、各カム部材640を、リンク部材620の第1の端部621aから第2の端部621b側に向かって直線移動させる。その際、図9に示すように、第2のカムフォロア624が第2のカム部642の内側端面642aに当接し、第2のカムフォロア624が第2のカム部642の内側端面642aを転動する。これにより、リンク部材620の第2の端部621bがキャビティ612の外側に向かって回動、すなわちリンク部材620が成形位置から待機位置まで徐々に回動する。これによりリンク部材620を成形位置から待機位置まで良好に回動させることができる。すなわち凹部入れ子型622を成形位置から待機位置まで良好に後退させることができる。なお、このとき第1のカムフォロア623は第1のカム部641とは非接触の状態となっている。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係るブロー成形金型610は、各キャビティ型611に対応して設けられたカム部材640を直線移動させることで、凹部入れ子型622を備えるリンク部材620が回動するようにした。これにより、ブロー成形金型610の構造を比較的簡略化してブロー成形金型610の小型化を図ることができる。またブロー成形金型610の小型化に伴いブロー成形装置20の小型化を図ることができると共に、コストの削減を図ることもできる。
【0047】
また本実施形態では、カム部材640が備える第1のカム部641と第2のカム部642とがキャビティ型611の高さ方向で離間して設けるようにしたので、カム部材640を比較的容易にブロー成形金型610に組み込むことができる。すなわち第2のカム部642を、比較的容易に第2のカムフォロア624の内側(キャビティ612側)に組み入れることができる。
【0048】
さらに本実施形態では、第2のカム部642は、カム本体部643から第1のカム部641の端面に沿って片持ち梁状に設けられている。すなわち第2のカム部642は、片端が開放された状態に形成されている。これにより第2のカム部642を、より容易に第2のカムフォロア624の内側に組み入れることができる。
【0049】
また上述のように第2のカムフォロア624の直径は、第1のカムフォロア623の直径よりも小さくなっている。また第2のカムフォロア624の軸中心は、第1のカムフォロア623の軸中心よりもキャビティ612の外側に配置されている。これにより、リンク部材620を成形位置から待機位置に戻すのに必要なカム本体部643の移動距離を短縮することができるため、カム本体部643を小型化することができる。したがって、ブロー成形金型610をさらに小型化することができる。特に、パーティング面に直交する方向におけるブロー成形金型610の幅をより縮小することができる。
【0050】
なお、カム部材等の形状を変更すれば、例えば、第1のカムフォロアのみを利用してリンク部材を成形位置から待機位置に戻すこともできる。ただし、カム部材の移動距離は比較的長くなり、ブロー成形金型も大型化してしまう。
【0051】
第1のカムフォロアのみを利用してリンク部材を成形位置から待機位置に戻すようにするためには、例えば、カム部材の第1のカム部と第2のカム部とを同一水平面上に配置しなければならない。また、第1のカム部と第2のカム部との間のスペース(溝)は、第2のカムフォロアより大きい第1のカムフォロアの直径以上のサイズが求められる。したがって、カム部材が大きくなってしまう。加えて、リンク本体部の溝部も、第2のカム部が進入できるように大きくしなければならない。その結果、ブロー成形金型のパーティング面に直交する方向における幅が大きくなり、ブロー成形金型が大型化してしまう。
【0052】
また第2のカムフォロア624は、ブローエア圧力を受けることがないため、直径を第1のカムフォロア623より小さくしても、リンク部材620を成形位置から待機位置まで適切に回動させることができる。
【0053】
さらに本実施形態では、二つの異なるカム機構を用いてリンク部材620を回動させている。つまりリンク部材620の回動させる際の第1のカムフォロア623と第2のカムフォロア624との軌跡が異なる。これにより、凹部入れ子型622をそれぞれ適切な異なった速度でキャビティ621に対して前進及び後退させることができる。具体的には、凹部入れ子型622を後退時に比べて素早く前進させることができる。これにより、ブロー成形における賦形性も向上できる。また、凹部入れ子型622を前進時より遅く後退させることで、樹脂容器10のグリップ部16における変形や擦れを抑止できる。
【0054】
また本実施形態に係るブロー成形金型610では、複数のカム部材640が連結部材631によって一体化され、これら複数のカム部材640を一つのアクチュエータ装置634で作動させることができる。したがって本発明は、複数のキャビティ型611を備えるブロー成形金型610に適用すると、特に有効である。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能なものである。
【0056】
例えば、上述の実施形態では、ブロー成形金型が複数のキャビティ型を備える構成を例示したが、勿論、ブロー成形金型は一つのキャビティ型を備えるものであってもよい。
【0057】
また、上述の実施形態では、リンク部材が第1のカムフォロア及び第2のカムフォロアを備えた構成を例示したが、リンク部材は、カム部材によって押圧できる構成であればよく、第1のカムフォロア及び第2のカムフォロアは必ずしも設けられていなくてもよい。
【0058】
また上述の実施形態では、第2のカムフォロアの直径を第1のカムフォロアの直径よりも小さくし、さらに第2のカムフォロアの軸中心が、第1のカムフォロアの軸中心よりもキャビティの外側に配置されている構成を例示したが、勿論、第2のカムフォロアの直径、軸中心の位置は、特に限定されるものではない。
【0059】
また上述の実施形態では、カム部材が第1のカム部と第2のカム部とを備え、第2のカム部がリンク部材を押圧することで、成形位置から待機位置まで回動させるようにした。しかしながら、この第2のカム部は必ずしも設けられていなくてもよい。例えば、リンク部材を、コイルバネ等の弾性部材によってキャビティの外側に向かって付勢しておき、第1のカム部によるリンク部材の押圧が解除されると、弾性部材の弾性力によりリンク部材が待機位置に向かって回動するようにしてもよい。
【0060】
また上述の実施形態では、プリフォームを連続搬送するタイプの搬送部を備えたブロー成形装置を例示したが、搬送部の構成は特に限定されず、必ずしもプリフォームを連続的に搬送するものでなくてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 樹脂容器
11 口部
12 ネック部
13 胴部
14 肩部
15 底部
16 グリップ部
20 ブロー成形装置
30 射出成形部
40 冷却部
50 加熱部
60 ブロー成形部
70 連続搬送部
80 間欠搬送部
200 プリフォーム
601 ベースプレート
602 圧受け板(圧受け部材)
610 ブロー成形金型
611 キャビティ型
611a パーティング面
611b 端面
612 キャビティ
613 底型
614 第1の割型
615 第2の割型
616 収容凹部
617 連通孔
620 リンク部材
621 リンク本体部
621a 第1の端部
621b 第2の端部
622 凹部入れ子型(凸状入れ子型、凸状可動型)
622a 押圧面
623 第1のカムフォロア
624 第2のカムフォロア
625 溝部
630 軸部材
631 連結部材
632 スライド部材
633 ガイドレール
634 アクチュエータ装置
635 ロッド部材
636 アクチュエータ固定部材
640 カム部材
641 第1のカム部
642 第2のカム部
642a 内側端面
643 カム本体部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9