特許第6948364号(P6948364)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6948364高い亀裂発生閾値を有するイオン交換可能なガラス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948364
(24)【登録日】2021年9月22日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】高い亀裂発生閾値を有するイオン交換可能なガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/097 20060101AFI20210930BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   C03C3/097
   C03C21/00 101
【請求項の数】8
【全頁数】64
(21)【出願番号】特願2019-162935(P2019-162935)
(22)【出願日】2019年9月6日
(62)【分割の表示】特願2017-195255(P2017-195255)の分割
【原出願日】2012年11月15日
(65)【公開番号】特開2019-202935(P2019-202935A)
(43)【公開日】2019年11月28日
【審査請求日】2019年10月7日
(31)【優先権主張番号】61/560,434
(32)【優先日】2011年11月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー マイケル グロス
【審査官】 若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−145640(JP,A)
【文献】 特開2004−102210(JP,A)
【文献】 米国特許第04055703(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00−14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも4モル%のPおよび0モル%〜4モル%のBを含み、
さらに40モル%〜70モル%のSiO;11モル%〜25モル%のAl;4モル%〜15モル%のP;13モル%〜20モル%のNaOを含み、
少なくとも10μmの層深さまでイオン交換されたアルカリアルミノケイ酸ガラスであって、
i. リチウムを含有せず;かつ
ii. 1.3<[(P(モル%)+RO(モル%))/M(モル%)]≦2.3;
であり、式中M=Al+Bであり、ROが前記アルカリアルミノケイ酸ガラス中に存在する一価カチオン酸化物の合計である、
アルカリアルミノケイ酸ガラス。
【請求項2】
さらにMgOを含む、請求項1記載のアルカリアルミノケイ酸ガラス。
【請求項3】
前記ガラスが、下記式
1.5<[(P(モル%)+RO(モル%))/M(モル%)]≦2.0
を満たす、請求項1または2記載のアルカリアルミノケイ酸ガラス。
【請求項4】
1モル%未満のKOまたは1モル%未満のBをさらに含む、請求項1または2記載のアルカリアルミノケイ酸ガラス。
【請求項5】
さらに1モル%未満のBを含む、請求項1または2記載のアルカリアルミノケイ酸ガラス。
【請求項6】
前記アルカリアルミノケイ酸ガラスが50モル%〜65モル%のSiOと;14モル%〜20モル%のAlと;4モル%〜10モル%のPと;14モル%〜20モル%のNaOを含む、請求項1または2記載のアルカリアルミノケイ酸ガラス。
【請求項7】
カリウム/ナトリウム相互拡散係数が、410℃で2.4×10−10cm/s〜1.5×10−9cm/sの範囲内にあるか;または、前記ガラスが該ガラスの表面から前記層深さまで延在する圧縮層を有し、その圧縮層が少なくとも300MPaの圧縮応力下にあるか;または前記ガラスが少なくとも12kgfのビッカース圧子圧入亀裂発生荷重を有する、請求項1〜のいずれか1項記載のアルカリアルミノケイ酸ガラス。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載のアルカリアルミノケイ酸ガラスを含む電子製品。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、内容が依拠され、参照により全体として本明細書中に援用されている2011年11月16日出願の米国仮特許出願第61/560,434号明細書の米国法典第35編第119条に基づく優先権の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、耐損傷性ガラスに関する。より詳細には、本開示は、任意選択でイオン交換により強化されている耐損傷性ガラスに関する。さらに一層詳細には、本開示は、任意選択でイオン交換により強化されているリン酸塩を含む耐損傷性ガラスに関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
強化された場合、急激な衝撃に起因する損傷に対する耐性を有し、高速イオン交換能を有するアルカリアルミノケイ酸ガラスが提供される。ガラスは少なくとも4モル%のPを含み、イオン交換された場合少なくとも約7kgfのビッカース圧子圧入亀裂発生荷重を有する。
【0004】
したがって、一態様は、少なくとも約4%のPを含むアルカリアルミノケイ酸ガラスにおいて、少なくとも約10μmの層深さまでイオン交換されていること;および、
i. 0.6<[M(モル%)/RO(モル%)]<1.4;または
ii. 1.3<[(P+RO)/M]≦2.3;
であり、式中M=Al+Bであり、ROが、アルカリアルミノケイ酸ガラス中に存在する一価および二価のカチオン酸化物の合計であり、ROがアルカリアルミノケイ酸ガラス中に存在する一価カチオン酸化物の合計である、アルカリアルミノケイ酸ガラスを含む。一部の実施形態において、ガラスは0.6<[M(モル%)/RO(モル%)]<1.4を満たす。一部の実施形態において、ガラスは0.6<[M(モル%)/RO(モル%)]<1を満たす。一部の実施形態において、ガラスは1.3<[(P+RO)/M]≦2.3を満たす。一部の実施形態において、ガラスは1.5<[(P+RO)/M]≦2.0を満たす。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは1モル%未満のKOをさらに含んでいる。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、さらに、1モル%未満のBを含む。一部の実施形態において、一価および二価のカチオン酸化物は、LiO、NaO、KO、RbO、CsO、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOからなる群から選択される。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、410℃で少なくとも約2.4×10−10cm/sのカリウム/ナトリウム相互拡散係数を有する。一部の実施形態において、カリウム/ナトリウム相互拡散係数は、約2.4×10−10cm/s〜約1.5×10−9cmの範囲内にある。一部の実施形態において、ガラスは、その表面から層深さまで延在する圧縮層を有し、ここで圧縮層は少なくとも約300MPaの圧縮応力下にある。一部の実施形態において、ガラスは、少なくとも約7kgfのビッカース圧子圧入亀裂発生荷重を有する。一部の実施形態において、ガラスは少なくとも約12kgfのビッカース圧子圧入亀裂発生荷重を有する。
【0005】
別の態様は、約40モル%〜約70モル%のSiOと;約11モル%〜約25モル%のAlと;約4モル%〜約15モル%のPと;約13モル%〜約25モル%のNaOとを含むアルカリアルミノケイ酸ガラスを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは約50モル%〜約65モル%のSiOと;約14モル%〜約20モル%のAlと;約4モル%〜約10モル%のPと;約14モル%〜約20モル%のNaOとを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスはさらに、1モル%未満のKOを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスはさらに1モル%未満のBを含む。一部の実施形態において、一価および二価のカチオン酸化物は、LiO、NaO、KO、RbO、CsO、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOからなる群から選択される。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、410℃で少なくとも約2.4×10−10cm/sのカリウム/ナトリウム相互拡散係数を有する。一部の実施形態において、カリウム/ナトリウム相互拡散係数は、約2.4×10−10cm/s〜1.5×10−9cm/sの範囲内にある。一部の実施形態において、ガラスは、ガラスの表面から層深さまで延在する圧縮層を有し、ここで圧縮層は少なくとも約300MPaの圧縮応力下にある。一部の実施形態において、ガラスは、少なくとも約7kgfのビッカース圧子圧入亀裂発生荷重を有する。一部の実施形態において、ガラスは少なくとも約12kgfのビッカース圧子圧入亀裂発生荷重を有する。
【0006】
別の態様は、少なくとも約4%のPを含み、
i. 0.6<[M(モル%)/RO(モル%)]<1.4;または
ii. 1.3<[(P+RO)/M]≦2.3;
であり、式中M=Al+Bであり、ROが、アルカリアルミノケイ酸ガラス中に存在する一価および二価のカチオン酸化物の合計であり、ROがアルカリアルミノケイ酸ガラス中に存在する一価カチオン酸化物の合計であるアルカリアルミノケイ酸ガラスを提供するステップと;最大約24時間の時限中イオン交換浴中にアルカリアルミノケイ酸ガラスを浸漬して、アルカリアルミノケイ酸ガラスの表面から少なくとも10μmの層深さまで延在する圧縮層を形成するステップとを含む、アルカリアルミノケイ酸ガラスを強化する方法を含んでいる。一部の実施形態において、ガラスは0.6<[M(モル%)/RO(モル%)]<1.4を満たす。一部の実施形態において、ガラスは0.6<[M(モル%)/RO(モル%)]<1を満たす。一部の実施形態において、ガラスは1.3<[(P+RO)/M]≦2.3を満たす。一部の実施形態において、ガラスは1.5<[(P+RO)/M]≦2.0を満たす。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは1モル%未満のKOを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、1モル%未満のBを含む。一部の実施形態において、圧縮層は少なくとも約300MPaの圧縮応力下にある。一部の実施形態において、イオン交換ガラスは、少なくとも約7kgfのビッカース圧子圧入亀裂発生荷重を有する。一部の実施形態において、イオン交換ガラスは少なくとも約12kgfのビッカース圧子圧入亀裂発生荷重を有する。
【0007】
別の態様は、少なくとも4モル%のPを含み、[M(モル%)/RO(モル%)]<1.4であり、式中M=Al+Bであり、かつROがアルカリアルミノケイ酸ガラス中に存在する一価および二価のカチオン酸化物の合計であるアルカリアルミノケイ酸ガラスを含んでいる。一部の実施形態において、[M(モル%)/RO(モル%)]<1.2である。一部の実施形態において、[M(モル%)/RO(モル%)]<1である。一部の実施形態において、一価および二価のカチオン酸化物はLiO、NaO、KO、RbO、CsO、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOからなる群から選択されている。
【0008】
一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは約40モル%〜約70モル%のSiOと;約11モル%〜約25モル%のAlと;約4モル%〜約15モル%のPと;約13モル%〜約25モル%のNaOとを含む。他の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは約50モル%〜約65モル%のSiOと;約14モル%〜約20モル%のAlと;約4モル%〜約10モル%のPと;約14モル%〜約20モル%のNaOとを含む。
【0009】
一部の実施形態において、組成はさらに1モル%未満のKOを含む。一部の実施形態において、組成はさらに約0モル%のKOを含む。一部の実施形態において、組成はさらに1モル%未満のBを含む。一部の実施形態において、組成はさらに約0モル%のBを含む。
【0010】
実施形態は、イオン交換されてよい。一部の実施形態において、ガラスは少なくとも約10μmの層深さまでイオン交換される。一部の実施形態において、ガラスは少なくとも約20μmの層深さまでイオン交換される。他の実施形態において、ガラスは、少なくとも約40μmの層深さまでイオン交換される。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、ガラスの表面から層深さまで延在する圧縮層を有し、ここで圧縮層は、少なくとも約300MPaの圧縮応力下にある。他の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、ガラスの表面から層深さまで延在する圧縮層を有し、ここで圧縮層は、少なくとも約500MPaの圧縮応力下にある。他の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、ガラスの表面から層深さまで延在する圧縮層を有し、ここで、圧縮層は少なくとも約750MPaの圧縮応力下にある。一部の実施形態において、イオン交換されたアルカリアルミノケイ酸ガラスは、少なくとも約7kgfのビッカース圧子圧入亀裂発生荷重を有する。さらに他の実施形態において、イオン交換されたアルカリアルミノケイ酸ガラスは、少なくとも約15kgfのビッカース圧子圧入亀裂発生荷重を有する。他の実施形態において、イオン交換されたアルカリアルミノケイ酸ガラスは、少なくとも約20kgfのビッカース圧子圧入亀裂発生荷重を有する。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、410℃で少なくとも約2.4×10−10cm/sのカリウム/ナトリウム相互拡散係数を有する。一部の実施形態において、カリウム/ナトリウム相互拡散係数は、410℃で約2.4×10−10cm/s〜約1.5×10−9cm/sの範囲内にある。
【0011】
別の態様は、少なくとも約4モル%のPを含むアルカリアルミノケイ酸ガラスを提供することにある。アルカリアルミノケイ酸ガラスは、約10μmの層深さまでイオン交換され、ここで0.6<[M(モル%)/RO(モル%)]<1.4であり、式中M=Al+Bであり、ROは、アルカリアルミノケイ酸ガラス中に存在する一価および二価のカチオン酸化物の合計である。一部の実施形態において、0.6<[M(モル%)/RO(モル%)]<1.2である。一部の実施形態において、0.6<[M(モル%)/RO(モル%)]<1である。一部の実施形態において、0.8<[M(モル%)/RO(モル%)]<1である。一部の実施形態において、一価および二価のカチオン酸化物は、LiO、NaO、KO、RbO、CsO、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOからなる群から選択される。
【0012】
一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは約40モル%〜約70モル%のSiOと;約11モル%〜約25モル%のAlと;約4モル%〜約15モル%のPと;約13モル%〜約25モル%のNaOとを含む。他の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは約50モル%〜約65モル%のSiOと;約14モル%〜約20モル%のAlと;約4モル%〜約10モル%のPと;約14モル%〜約20モル%のNaOとを含む。
【0013】
一部の実施形態において、組成はさらに1モル%未満のKOを含む。一部の実施形態において、組成はさらに約0モル%のKOを含む。一部の実施形態において、組成はさらに1モル%未満のBを含む。一部の実施形態において、組成はさらに約0モル%のBを含む。
【0014】
態様の実施形態は、イオン交換されてよい。一部の実施形態において、ガラスは少なくとも約10μmの層深さまでイオン交換される。一部の実施形態において、ガラスは少なくとも約20μmの層深さまでイオン交換される。他の実施形態において、ガラスは、少なくとも約40μmの層深さまでイオン交換される。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、ガラスの表面から層深さまで延在する圧縮層を有し、ここで圧縮層は、少なくとも約300MPaの圧縮応力下にある。他の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、ガラスの表面から層深さまで延在する圧縮層を有し、ここで圧縮層は、少なくとも約500MPaの圧縮応力下にある。他の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、ガラスの表面から層深さまで延在する圧縮層を有し、ここで、圧縮層は少なくとも約750MPaの圧縮応力下にある。一部の実施形態において、イオン交換されたアルカリアルミノケイ酸ガラスは、少なくとも約7kgfのビッカース圧子圧入亀裂発生荷重を有する。さらに他の実施形態において、イオン交換されたアルカリアルミノケイ酸ガラスは、少なくとも約15kgfのビッカース圧子圧入亀裂発生荷重を有する。他の実施形態において、イオン交換されたアルカリアルミノケイ酸ガラスは、少なくとも約20kgfのビッカース圧子圧入亀裂発生荷重を有する。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、410℃で少なくとも約2.4×10−10cm/sのカリウム/ナトリウム相互拡散係数を有する。一部の実施形態において、カリウム/ナトリウム相互拡散係数は、410℃で約2.4×10−10cm/s〜約1.5×10−9cm/sの範囲内にある。
【0015】
本開示の別の態様は、アルカリアルミノケイ酸ガラスを強化する方法を提供することにある。この方法は、少なくとも約4モル%のPを含み、
i. 0.6<[M(モル%)/RO(モル%)]<1.4;または
ii. 1.3<[(P+RO)/M]≦2.3;
であり、式中M=Al+Bであり、ROが、アルカリアルミノケイ酸ガラス中に存在する一価および二価のカチオン酸化物の合計であり、ROがアルカリアルミノケイ酸ガラス中に存在する一価カチオン酸化物の合計であるアルカリアルミノケイ酸ガラスを提供するステップと;最大約24時間の時限中イオン交換浴中にアルカリアルミノケイ酸ガラスを浸漬して、アルカリアルミノケイ酸ガラスの表面から少なくとも10μmの層深さまで延在する圧縮層を形成するステップとを含む。一部の実施形態において、ガラスは0.6<[M(モル%)/RO(モル%)]<1.4を満たす。一部の実施形態において、ガラスは0.6<[M(モル%)/RO(モル%)]<1を満たす。一部の実施形態において、ガラスは1.3<[(P+RO)/M]≦2.3を満たす。一部の実施形態において、ガラスは1.5<[(P+RO)/M]≦2.0を満たす。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは1モル%未満のKOを含んでいる。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、1モル%未満のBを含む。一部の実施形態において、圧縮層は少なくとも約300MPaの圧縮応力下にある。一部の実施形態において、イオン交換ガラスは、少なくとも約7kgfのビッカース圧子圧入亀裂発生荷重を有する。一部の実施形態において、イオン交換ガラスは少なくとも約12kgfのビッカース圧子圧入亀裂発生荷重を有する。一部の実施形態において、圧縮層は表面から、少なくとも70μmの層深さまで延在する。
【0016】
一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、ガラスの表面から層深さまで延在する圧縮層を有し、ここで圧縮層は、少なくとも約300MPaの圧縮応力下にある。他の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、ガラスの表面から層深さまで延在する圧縮層を有し、ここで圧縮層は、少なくとも約500MPaの圧縮応力下にある。他の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、ガラスの表面から層深さまで延在する圧縮層を有し、ここで圧縮層は少なくとも約750MPaの圧縮応力下にある。一部の実施形態において、イオン交換されたアルカリアルミノケイ酸ガラスは、少なくとも約7kgfのビッカース圧子圧入亀裂発生荷重を有する。さらに他の実施形態において、イオン交換されたアルカリアルミノケイ酸ガラスは、少なくとも約15kgfのビッカース圧子圧入亀裂発生荷重を有する。他の実施形態において、イオン交換されたアルカリアルミノケイ酸ガラスは、少なくとも約20kgfのビッカース圧子圧入亀裂発生荷重を有する。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、410℃で少なくとも約2.4×10−10cm/sのカリウム/ナトリウム相互拡散係数を有する。一部の実施形態において、カリウム/ナトリウム相互拡散係数は、410℃で約2.4×10−10cm/s〜約1.5×10−9cm/sの範囲内にある。
【0017】
一部の実施形態において、この方法で使用されるアルカリアルミノケイ酸ガラスは、LiO、NaO、KO、RbO、CsO、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOからなる群から選択される一価および二価のカチオン酸化物を含む。
【0018】
一部の実施形態において、この方法で使用されるアルカリアルミノケイ酸ガラスは、約40モル%〜約70モル%のSiOと;約11モル%〜約25モル%のAlと;約4モル%〜約15モル%のPと;約13モル%〜約25モル%のNaOとを含む。他の実施形態において、この方法で使用されるアルカリアルミノケイ酸ガラスは、約50モル%〜約65モル%のSiOと;約14モル%〜約20モル%のAlと;約4モル%〜約10モル%のPと;約14モル%〜約20モル%のNaOとを含む。
【0019】
一部の実施形態において、この方法で使用される組成にはさらに、1モル%未満のKOが含まれる。一部の実施形態において、この方法で使用される組成にはさらに、約0モル%のKOが含まれる。一部の実施形態において、この方法で使用される組成にはさらに、1モル%未満のBが含まれる。一部の実施形態において、この方法で使用される組成にはさらに、約0モル%のBが含まれる。
【0020】
これらのおよび他の態様、利点および顕著な特徴は、以下の詳細な説明、添付図面および添付のクレームから明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】イオン交換により強化されたガラスシートの概略的断面図である。
図2】700℃で焼鈍され溶融KNO塩浴内において410℃でイオン交換された厚さ0.7mmの試料についての圧縮応力の関数としての層深さのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここでは、開示された方法および組成物のために使用可能であるか、それらと併用され得るかそれらの調製のために使用可能であるか、またはそれらの実施形態である材料、化合物、組成物および構成要素が開示される。これらの材料および他の材料は、本明細書中で開示されており、これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、群などが開示されている場合、これらの化合物の各々のさまざまな個別のおよび集合的な組合せおよび置換に対する特定の言及は明示的に開示されていないこともあるが、各々は本明細書中に具体的に企図され記述されているものと理解される。
【0023】
したがって、一類の置換基A、BおよびCが一類の置換基D、E、およびFと同様に開示され、組合せ実施形態の例A−Dが開示されている場合には、各々が個別的にかつ集合的に企図される。したがって、この例において、各々の組合せA−E、A−F、B−D、B−E、B−F、C−D、C−EおよびC−Fが具体的に企図され、A、Bおよび/またはC;D、Eおよび/またはF;そして組合せ例A−Dの開示から開示されたものとみなされなければならない。同様にして、これらの任意のサブセットまたは組合せも同様に、具体的に企図され開示される。こうして例えば、A−E、B−FおよびC−Eのサブグループは具体的に企図され、A、Bおよび/またはC;D、Eおよび/またはFの開示から開示されたものと理解されるべきである。この概念は、組成物の任意の構成要素および開示された組成物の製造および使用方法中の任意のステップを含めた(ただしこれらに限定されない)本開示の全ての態様にあてはまる。したがって、実施可能なさまざまな追加のステップが存在する場合、これらの追加のステップはそれぞれ、開示された方法の任意の特定の実施形態または複数の実施形態の組合せを用いて実施可能であること、そしてこのような組合せの各々が具体的に企図され、開示されたものとみなされるべきであることが理解される。
【0024】
さらに、1群の要素およびその組合せの少なくとも1つを含むものとして1つの群が記述されている場合にはつねに、その群が、個別にまたは互いに組み合わせた状態のいずれかで列挙された任意の数のこれらの要素を含むか、本質的にそれらで構成されるかまたはそれらで構成されていてよいと理解される。同様にして、1つの群が、1群の要素またはその組合せのうちの少なくとも1つで構成されるものとして記述されている場合にはつねに、その群が、個別にまたは互いに組合せた状態のいずれかで列挙された任意の数のこれらの要素で構成されていてよいと理解される。
【0025】
その上、上限値と下限値を含む1つの数値範囲が本明細書中に列挙されている場合には、特定の状況下で特に明記の無いかぎり、この範囲はその端点およびその範囲内の全ての整数および分数を含むように意図される。開示の範囲は、1つの範囲を定義する場合に列挙された具体的値に限定されるものとして意図されない。さらに、量、濃度または他の値またはパラメータが1つの範囲、1つ以上の好ましい範囲または好ましい上限値と好ましい下限値のリストとして示されている場合、これは、対が別個に開示されているか否かに関わらず、任意の範囲上限または好ましい上限値と任意の範囲下限または好ましい下限値の任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示するものとして理解すべきである。最後に、1つの範囲の1つの値または1つの端点を記述するにあたり「約」という用語が使用される場合には、開示は、言及された具体的値または端点を含むものと理解されるべきである。
【0026】
本明細書中で使用される「約」という用語は、量、サイズ、配合、パラメータ、および他の数量および特性が、正確でなくかつ正確である必要がなく、近似であってかつ/または許容誤差、換算率、丸め、測定誤差などおよび当業者にとって公知の他の因子を反映して所望される通りにより大きいかまたはより小さいものであってよいことを意味する。概して、量、サイズ、配合、パラメータまたは他の数量あるいは特性は、そのように明示的に記されているか否かに関わらず、「約」または「近似」のものである。
【0027】
本明細書中で使用される「または(or)」という用語は、包含的である。より具体的には、語句「AまたはB」は、「A、BまたはAとBの両方」を意味する。排他的「または」は本明細書では、例えば「AかBのいずれか」および「AまたはBの1つ」などの用語によって呼称される。
【0028】
単数形の名詞は、実施形態の要素および構成要素を説明するために用いられる。これらの単数形の名詞の使用は、これらの要素または構成要素の1つまたは少なくとも1つが存在することを意味している。これらの単数形の名飯は従来、単数であることを意味するために使用されるものの、本明細書中で使用される単数形の名詞は、同様に、具体的例の中で特に明記されるのでないかぎり、複数も含む。
【0029】
実施形態を説明する目的で、1つの変数が1つのパラメータまたは別の変数の「関数」であると本明細書中で言及されている場合、それはその変数が排他的にそのリストアップされたパラメータまたは変数の「関数」であることを示すように意図されていないという点に留意されたい。むしろ、本明細書中で、リストアップされたパラメータの「関数」である変数に対する言及は、その変数が単一のパラメータまたは複数のパラメータの関数であってよいように無制限であるように意図されている。同様に、特に明記のないかぎり、「上部」、「底部」、「外向き」、「内向き」などの用語は、便宜上の用語であり、限定的用語とみなされるべきものではないことも理解される。
【0030】
「好ましくは」、「一般的に」および「典型的に」などの用語が本明細書中で使用される場合、それらは、範囲を限定するために、または特定の特徴が記述されている実施形態の構造または機能にとって決定的であるか、本質的であるかさらには重要でありさえすることを暗示するために使用されないことに留意されたい。むしろ、これらの用語は、単に、一実施形態の特定の態様を識別するかまたは、特定の実施形態の中で使用されてよい或いは使用されなくてよい代替的なまたは追加的な特徴を強調するように意図されているにすぎない。
【0031】
実施形態を説明し定義する目的で、「実質的に」および「おおよそ」という用語が本明細書においては、任意の数量的比較、値、測定または他の表現の属性であり得る固有の度合いの不確実性を表わすために用いられていることが指摘される。「実質的に」および「おおよそ」という用語は、同様に、問題となっている対象の基本的機能を変更する結果をもたらさずに、記載された基準から数量的表現が変動し得る度合いを表わすものとして本明細書では使用されている。
【0032】
クレームの1つ以上が、移行句として「ここで(wherein)」という用語を使用することもあるということが指摘される。実施形態を定義する目的で、この用語が、構造の一連の特徴の列挙を導入するために使用される無制限の移行句としてクレーム中に導入され、より一般的に使用される無制限の前置き用語「〜を含む」と同様の要領で解釈されるべきであるという点に留意されたい。
【0033】
ガラス組成物を生産するために使用される原料および/または機器の結果として、意図的に添加されるものではない特定の不純物または構成成分が最終的なガラス組成物中に存在し得る。このような材料は、ガラス組成物中にわずかな量で存在し、本明細書では「混入物(tramp materials)」と呼ばれる。
【0034】
本明細書で使用する、0wt%またはモル%の一化合物を有するガラス組成物とは、その化合物、分子または元素が、組成物に意図的に添加されたのでないものの、それでも組成物が典型的に混入物量または痕跡量でその化合物を含む場合があることを意味するものとして定義される。同様にして、「ナトリウムを含まない」、「アルカリを含まない」、「カリウムを含まない」などの用語は、化合物、分子または元素が組成物に意図的に添加されたものでないものの、それでも組成物には、おおよそ混入物量または痕跡量でナトリウム、アルカリまたはカリウムが含まれる場合があることを意味するものとして定義される。特に明記のないかぎり、本明細書中に列挙された全ての成分の濃度は、モル百分率(モル%)単位で表現されている。
【0035】
本明細書中に記載のビッカース圧子圧入亀裂閾値測定は、0.2mm/minの速度でガラス表面に対して圧子圧入荷重を加え、次に除去することによって実施される。最大圧子圧入荷重は、10秒間保持される。圧子圧入亀裂閾値は、圧痕が印加されたコーナーから広がる任意の数の放射状/垂直亀裂を10個の圧痕の50%が示す圧子圧入荷重として定義される。最大荷重は、所与のガラス組成物について閾値が達成されるまで増大させられる。全ての圧子圧入測定は、50%の相対湿度で室温で実施される。
【0036】
図面全体、特に図1を参照すると、図が特定の実施形態を説明することを目的としたものであって、添付されたクレームの開示を限定することを意図されたものでないことがわかる。図面は必ずしも原寸に比例しておらず、図面の一部の特徴および一部の図は、明確さおよび簡潔さを期して縮尺的にまたは図解的に誇張して示されている場合がある。
【0037】
高い耐損傷性を有する(すなわち15キログラム重(kgf)そして一部の実施形態においては20kgf超のビッカース亀裂閾値を有する)化学的に強化されたアルカリアルミノケイ酸ガラスは、典型的に[(Al(モル%)+B(モル%))/(Σ改質酸化物(モル%))]という規則を満たす組成を有し、ここで改質酸化物はアルカリおよびアルカリ土類酸化物を含む。このようなガラスは、以前に、「Crack and Scratch Resistant Glass and Enclosures Made Therefrom」という名称のKristen L.Barefootらにより2010年8月18日付けで出願された米国特許出願第12/858,490号明細書中に記載されている。
【0038】
含有アルカリアルミノケイ酸ガラスの増強された耐損傷性は以前に、「Ion Exchangeable Glass with Deep Compressive Layer and High Modulus」という名称でDana Craig Bookbinderらにより2010年11月30日付けで出願された米国仮特許出願第61/417,941号明細書に記載されている。その中に記載されているガラスは、それぞれAlPOおよびBPOを形成するためにAlおよびBとバッチ処理されたリン酸塩を含み、以下の組成規則を遵守している:
0.75≦[(P(モル%)+RO(モル%))/M(モル%)]≦1.3
(式中、M=Al+B)。
【0039】
本明細書中に記載されているのは、イオン交換により化学的に強化された場合に少なくとも約7kgf、8kgf、9kgf、10kgf、11kgf、12kgf、13kgf、14kgf、15kgf、16kgf、17kgf、18kgf、19kgfそして一部の実施形態では少なくとも約20kgfのビッカース亀裂閾値を達成する、P含有アルカリアルミノケイ酸ガラスおよびそれから製造された物品を含む実施形態である。これらのガラスおよびガラス物品の耐損傷性は、少なくとも約4モル%のPを添加することによって増強される。一部の実施形態において、耐損傷性は少なくとも約5モル%のPの添加により増強される。一部の実施形態において、P濃度は、約4モル%〜約10モル%の範囲内、そして他の実施形態においては約4モル%〜約15モル%の範囲内にある。
【0040】
本明細書中に記載の実施形態は概して、米国仮特許出願第61/417,941号明細書中に記載の組成空間(composition space)のガラスおよびガラス物品の範囲には入らない。さらに、本開示に記載のガラスは、公称では、主として、4面リン構造単位1つあたり1個の2重結合酸素を含む4面体配位のリン酸塩(PO3−)基を含む。
【0041】
一部の実施形態において、M対ΣROの比が、有利な溶融温度、粘度、および/または液相温度を有するガラスを提供する。一部の実施形態は、1.4未満の(M(モル%)/ΣRO(モル%))比により表現され、式中M=Al+Bであり、ΣROはアルカリアルミノケイ酸ガラス中に存在する一価および二価のカチオン酸化物の合計である。一部の実施形態において、本明細書中に記載のガラスおよびガラス物品は、4モル%超のPを含み、ここで、(M(モル%)/ΣRO(モル%))の比は1.4未満であり、式中M=Al+Bであり、ここでΣROはアルカリアルミノケイ酸ガラス中に存在する一価および二価のカチオン酸化物の合計である。一部の実施形態において、(M(モル%)/ΣRO(モル%))の比は1.0未満である。一部の実施形態において、(M(モル%)/ΣRO(モル%))の比は、1.4、1.35、1.3、1.25、1.2、1.15、1.1、1.05、1.0、0.95、0.9、0.85、0.8、0.75または0.7未満である。一部の実施形態において、0.6<[M(モル%)/RO(モル%)]<1.4である。一部の実施形態において、0.6<[M(モル%)/RO(モル%)]<1.2である。一部の実施形態において、0.6<[M(モル%)/RO(モル%)]<1である。一部の実施形態において、0.8<[M(モル%)/RO(モル%)]<1.4である。一部の実施形態において、0.8<[M(モル%)/RO(モル%)]<1.2である。一部の実施形態において、0.8<[M(モル%)/RO(モル%)]<1.0である。一部の実施形態において、Y<[M(モル%)/RO(モル%)]<Zであり、ここでYは約0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1.0、1.05または1.1であり、Xは独立して約1.4、1.35、1.3、1.25、1.2、1.15、1.1、1.05、1.0、0.95、0.9、0.85、0.8であり、X>Yである。このような一価および二価の酸化物には、アルカリ金属酸化物(LiO、NaO、KO、RbO、CsO)、アルカリ土類酸化物(MgO、CaO、SrO、BaO)および遷移金属酸化物、例えばZnO(ただしこれに限定されない)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0042】
一部の実施形態において、本明細書中に記載のガラスは、以下の不等式を満たす:
[(Al(モル%)+B(モル%))/(Σ改質酸化物(モル%))]<1.0
一部の実施形態において、ガラスはガラス構造を可能にするのに充分なPを有することができ、ここでPはむしろ構造中に存在するかまたはMPOに加えて存在する。一部の実施形態において、このような構造は、1.24超の[(P(モル%)+RO(モル%))/M(モル%)]比により表現されてよく、式中M=Al+Bであり、Pは4モル%以上であり、ROはアルカリアルミノケイ酸ガラス中に存在する二価のカチオン酸化物の合計である。一部の実施形態において、本明細書中に記載のガラスは、4モル%超のPを含み、ここで[(P(モル%)+RO(モル%))/M(モル%)]の比は1.24超であり、式中M=Al+Bであり、ここでROは、アルカリアルミノケイ酸ガラス中に存在する二価のカチオン酸化物の合計である。一部の実施形態において、[(P(モル%)+RO(モル%))/M(モル%)]の比は1.3超である。一部の実施形態において、この比は1.24≦[(P(モル%)+RO(モル%))/M(モル%)]≦2.8である。一部の実施形態において、本明細書中に記載のガラスおよびガラス物品は4モル%超のPを含み、
S≦[(P(モル%)+RO(モル%))/M(モル%)]≦V
の比で表現される。式中、Sは独立して約1.5、1.45、1.4、1.35、1.3、1.25、1.24、1.2または1.15であり、Vは独立して約2.0、2.05、2.1、2.15、2.2、2.25、2.3、2.35、2.4、2.45、2.5、2.55、2.6、2.65、2.7、2.75または2.8である。
【0043】
本明細書中に記載のアルカリアルミノケイ酸ガラスおよび物品は、多くの化学的構成要素を含む。ガラスの形成に関与する酸化物であるSiOは、ガラスの網状結合構造を安定化するために機能する。一部の実施形態において、ガラス組成物は、約40〜約70モル%のSiOを含み得る。一部の実施形態において、ガラス組成物は約50〜約70モル%のSiOを含み得る。一部の実施形態において、ガラス組成物は、約55〜約65モル%のSiOを含み得る。一部の実施形態において、ガラス組成物は、約40〜約70モル%、約40〜約65モル%、約40〜約60モル%、約40〜約55モル%、約40〜50モル%、約40〜45モル%、50〜約70モル%、約50〜約65モル%、約50〜約60モル%、約50〜約55モル%、約55〜約70モル%、約60〜約70モル%、約65〜約70モル%、約55〜約65モル%または約55〜約60モル%のSiOを含み得る。一部の実施形態において、ガラス組成物は、約40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69または70モル%のSiOを含む。
【0044】
Alは、他の利益の中でも、a)可能なかぎり低い液相温度を維持すること、b)膨張係数を低下させること、またはc)歪点を上昇させることといった利益を提供することもある。一部の実施形態において、ガラス組成物は、約11〜約25モル%のAlを含み得る。一部の実施形態において、ガラス組成物は、約14〜約20モル%のAlを含み得る。一部の実施形態において、ガラス組成物は、約11〜約25モル%、約11〜約20モル%、約11〜約18モル%、約11〜約15モル%、約12〜約25モル%、約12〜約20モル%、約12〜約18モル%、約12〜約15モル%、約14〜約25モル%、約14〜約20モル%、約14〜約18モル%、約14〜約15モル%、約18〜約25モル%、約18〜約20モル%または約20〜約25モル%のAlを含み得る。一部の実施形態において、ガラス組成物は約11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25モル%のAlを含み得る。
【0045】
実施形態中のBの存在は、耐損傷性を改善し得るが、圧縮応力および拡散率にとっては有害であることもある。本明細書中に記載のガラスは概して、Bを含有しない(つまりBを含まない)。一部の実施形態において、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3または4モル%のBが存在してよい。一部の実施形態において、4、3、2または1モル%未満のBが存在してよい。一部の実施形態において、混入物量のBが存在することもある。一部の実施形態においてガラス組成物は、約0モル%のBを含み得る。一部の実施形態において、Bの量は0.5モル%以下、0.25モル%以下、0.1モル%以下、約0.05モル%以下、0.001モル%以下、0.0005モル%以下または0.0001モル%以下である。一部の実施形態によると、ガラス組成物は、意図的に添加されたBを含まない。
【0046】
としてリンをガラスに添加することは、耐損傷性を改善し、かつイオン交換を妨げないことが発見された。一部の実施形態において、ガラスに対するリンの添加は、4面体配位のアルミニウムとリンから成るリン酸アルミニウム(AlPO)および/または4面体配位のホウ素とリンから成るリン酸ホウ素(BPO)によりシリカ(ガラス中のSiO)が置換されている構造を作り上げる。本明細書中に記載のガラスは概して4モル%超のPを含む。一部の実施形態において、ガラスは、約4〜約15モル%のPを含み得る。一部の実施形態において、ガラスは約4〜約12モル%のPを含み得る。一部の実施形態において、ガラスは約4〜約10モル%のPを含み得る。一部の実施形態において、ガラスは約6〜約10モル%のPを含み得る。一部の実施形態において、ガラス組成物は、約4〜約15モル%、約6〜約15モル%、約8〜約15モル%、約10〜約15モル%、約12〜約15モル%、約4〜約12モル%、約4〜約10モル%、約4〜約8モル%、約4〜約6モル%、約6〜約12モル%、約6〜約10モル%、約6〜約8モル%、約8〜約12モル%、約8〜約10モル%、約10〜約12モル%のPを含み得る。一部の実施形態において、ガラス組成物は、約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15モル%のPを含み得る。
【0047】
実施されたガラス中で、イオン交換のためにNaOを使用してよい。一部の実施形態において、ガラスは、約13〜約25モル%のNaOを含み得る。他の実施形態において、ガラスは約13〜約20モル%のNaOを含み得る。一部の実施形態において、ガラス組成物は、約13〜約25モル%、約13〜約20モル%、約13〜約18モル%、約13〜約15モル%、約15〜約25モル%、約15〜約20モル%、約15〜約18モル%、約18〜約25モル%、約18〜約20モル%または約20〜約25モル%のNaOを含み得る。一部の実施形態において、ガラスは約13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25モル%のNaOを含み得る。
【0048】
Oは概して、アルカリアルミノケイ酸ガラス中に存在する一価および二価のカチオン酸化物を表現する。ROの存在によりガラスのイオン交換についての利点が提供されることもある。このような一価および二価の酸化物は、アルカリ金属酸化物(LiO、NaO、KO、RbO、CsO)、アルカリ土類酸化物(MgO、CaO、SrO、BaO)および遷移金属酸化物、例えばZnO(ただしこれに限定されない)を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態において、組成物中のROの量は、式(M(モル%)/ΣRO(モル%))<1.4により表現される。一部の実施形態において、組成物中のROの量は、式(M(モル%)/ΣRO(モル%))<1.0により表現される。一部の実施形態において、組成物中のROの量は、式0.6<(M(モル%)/ΣRO(モル%))<1.4により表現される。一部の実施形態において、組成物中のROの量は、0.6<(M(モル%)/ΣRO(モル%))<1.0により表現される。一部の実施形態において、ガラス組成物は、約7〜約30モル%のAlを含み得る。一部の実施形態において、ガラス組成物は、約14〜約25モル%のAlを含み得る。一部の実施形態において、ガラス組成物は約7〜約30モル%、約7〜約25モル%、約7〜約22モル%、約7〜約20モル%、約7〜約18モル%、約7〜約15モル%、約7〜約10モル%、約10〜約30モル%、約10〜約25モル%、約10〜約22モル%、約10〜約18モル%、約10〜約15モル%、約15〜約30モル%、約15〜約25モル%、約15〜約22モル%、約15〜約18モル%、約18〜約30モル%、約18〜約25モル%、約18〜約22モル%、約18〜約20モル%、約20〜約30モル%、約20〜約25モル%、約20〜約22モル%、約22〜約30モル%、約22〜約25モル%または約25〜約30モル%のAlを含み得る。一部の実施形態において、ガラス組成物は、約8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30モル%のAlを含み得る。
【0049】
は、組成物中のAlとBの量を表現する。一部の実施形態において、ガラス組成物は、約11〜約30モル%のMを含み得る。一部の実施形態において、ガラス組成物は、約14〜約20モル%のMを含み得る。一部の実施形態において、ガラス組成物は、約11〜約30モル%、約11〜約25モル%、約11〜約20モル%、約11〜約18モル%、約11〜約15モル%、約12〜約30モル%、約12〜約25モル%、約12〜約20モル%、約12〜約18モル%、約12〜約15モル%、約14〜約30モル%、約14〜約25モル%、約14〜約20モル%、約14〜約18モル%、約14〜約15モル%、約18〜約25モル%、約18〜約20モル%または約20〜約25モル%のMを含み得る。一部の実施形態において、ガラス組成物は約11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30モル%のMを含み得る。
【0050】
一部の実施形態においてKOはイオン交換のために使用可能であるが、圧縮応力にとって有害であり得る。一部の実施形態において、ガラス組成物はKOを含まない。ガラス組成物は、例えば、KOの含有量が0.5モルパーセント以下、0.25モル%以下、0.1モル%以下、約0.05モル%以下、0.001モル%以下、0.0005モル%以下、あるいは0.0001モル%以下である場合に、実質的にKOを含まない。一部の実施形態に係るガラスシートは、意図的に添加したナトリウムを含まない。一部の実施形態において、ガラスは、0〜約1モル%のKOを含み得る。他の実施形態において、ガラスは0超〜約1モル%のKOを含み得る。一部の実施形態において、ガラス組成物は0〜約2モル%、0〜約1.5モル%、0〜約1モル%、0〜約0.9モル%、0〜約0.8モル%、0〜約0.7モル%、0〜約0.6モル%、0〜約0.5モル%、0〜約0.4モル%、0〜約0.3モル%、0〜約0.2モル%または0〜約0.1モル%のKOを含み得る。一部の実施形態において、ガラスは、約0、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1モル%のKOを含み得る。
【0051】
付加的な利益を提供するために、追加の構成成分をガラス組成物中に取込むことができる。例えば、清澄剤として(例えばガラスを生産するために使用される溶融バッチ材料からの気体介在物の除去を容易にするため)および/または他の目的のために、追加の構成成分を添加することができる。一部の実施形態において、ガラスは、紫外線吸収剤として有用な1つ以上の化合物を含んでいてよい。一部の実施形態において、ガラスは、3モル%以下のTiO、MnO、ZnO、Nb、MoO、Ta、WO、ZrO、Y、La、HfO、CdO、SnO、Fe、CeO、As、Sb、Cl、Brまたはその組合せを含み得る。一部の実施形態において、ガラスは、0〜約3モル%、0〜約2モル%、0〜約1モル%、0〜0.5モル%、0〜0.1モル%、0〜0.05モル%または0〜0.01モル%のTiO、MnO、ZnO、Nb、MoO、Ta、WO、ZrO、Y、La、HfO、CdO、SnO、Fe、CeO、As、Sb、Cl、Brまたはその組合せを含み得る。一部の実施形態において、ガラスは0〜約3モル%、0〜約2モル%、0〜約1モル%、0〜約0.5モル%、0〜約0.1モル%、0〜約0.05モル%または0〜約0.01モル%のTiO、CeOまたはFeまたはその組合せを含み得る。
【0052】
一部の実施形態に係るガラス組成物(例えば上述のガラスのいずれか)は、例えばガラスが清澄剤としてClおよび/またはBrを含む場合のように、F、ClまたはBrを含むことができる。
【0053】
一部の実施形態に係るガラス組成物は、BaOを含み得る。特定の実施形態において、ガラスは、約5未満、約4未満、約3未満、約2未満、約1未満、0.5未満または0.1モル%未満のBaOを含み得る。
【0054】
一部の実施形態において、ガラスはSb、Asまたはその組合せを実質的に含まない可能性がある。例えば、ガラスは、0.05モル%以下のSbまたはAsまたはその組合せを含む可能性があり、ガラスはゼロモル%のSbまたはAsまたはその組合せを含んでいてよく、あるいはガラスは例えば、意図的に添加されたSbまたはAsまたはその組合せを全く含まなくてもよい。
【0055】
一部の実施形態に係るガラスは、商業的に調製されたガラス中に典型的に見られる汚染物質をさらに含み得る。さらに、または代替的に、他のガラス構成成分に対する調整を加えながらではあるが、さまざまな他の酸化物(例えばTiO、MnO、ZnO、Nb、MoO、Ta、WO、ZrO、Y、La、Pなど)を添加してよく、それによりガラス組成物の溶融または成形特性が損なわれることはない。一部の実施形態に係るガラスがさらにこのような他の1つまたは複数の酸化物を含む場合には、このような他の酸化物の各々は、典型的に約3モル%、約2モル%または約1モル%を超えない量で存在し、その合計組合せ濃度は、典型的に、約5モル%以下、約4モル%以下、約3モル%以下、約2モル%以下または約1モル%以下である。一部の状況において、使用される量によって組成が上述の範囲外に陥るのでないかぎり、より多くの量を使用することができる。一部の実施形態に係るガラスは、バッチ材料に付随するおよび/またはガラスの生産に使用される溶融、清澄および/または成形用設備によってガラス内に導入される(例えばZrOなどの)さまざまな汚染物質を含む可能性もある。
【0056】
一部の実施形態において、本明細書に記載のアルカリアルミノケイ酸ガラスおよび物品は、約40モル%〜70モル%のSiOと;約11モル%〜約25モル%のAlと;約4モル%〜約15モル%のPと;約11モル%〜約25モル%のNaOとを含む。
【0057】
一部の実施形態において、ガラス組成物は高い耐損傷性を有する。一部の実施形態において、ガラス組成物は7キログラム重(kgf)超のビッカース亀裂閾値を有する。一部の実施形態において、ガラス組成物は12kgf超のビッカース亀裂閾値を有する。一部の実施形態において、ガラス組成物は15kgf超のビッカース亀裂閾値を有する。一部の実施形態において、ガラス組成物は20kgf超のビッカース亀裂閾値を有する。一部の実施形態において、ガラス組成物は6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25kgf超のビッカース亀裂閾値を有する。
【0058】
実施されたガラスの非限定的な例(ここでガラスの厚さは0.7mmである)が表1に列挙されている。
【0059】
【表1-1】
【0060】
【表1-2】
【0061】
実施されたガラスの非限定的例(ここでガラスの厚さは1.0mmである)が表2に列挙されている(イオン交換データについては、SOCが全く提供されていない場合、使用される既定値は、厚さ1.0mmのイオン交換部品を用いて3.0であった)。
【0062】
【表2-1】
【0063】
【表2-2】
【0064】
【表3-1】
【0065】
【表3-2】
【0066】
【表4-1】
【0067】
【表4-2】
【0068】
【表5-1】
【0069】
【表5-2】
【0070】
【表6-1】
【0071】
【表6-2】
【0072】
【表7-1】
【0073】
【表7-2】
【0074】
【表8-1】
【0075】
【表8-2】
【0076】
【表9-1】
【0077】
【表9-2】
【0078】
【表10-1】
【0079】
【表10-2】
【0080】
【表11-1】
【0081】
【表11-2】
【0082】
【表12-1】
【0083】
【表12-2】
【0084】
【表13-1】
【0085】
【表13-2】
【0086】
【表14-1】
【0087】
【表14-2】
【0088】
【表15-1】
【0089】
【表15-2】
【0090】
【表16-1】
【0091】
【表16-2】
【0092】
【表17-1】
【0093】
【表17-2】
【0094】
【表18-1】
【0095】
【表18-2】
【0096】
【表19-1】
【0097】
【表19-2】
【0098】
【表20-1】
【0099】
【表20-2】
【0100】
【表21-1】
【0101】
【表21-2】
【0102】
【表22-1】
【0103】
【表22-2】
【0104】
イオン交換は、大衆消費電子製品、自動車利用分野、電気機器、建築構成要素および高レベルの耐損傷性が所望される他の分野において使用するためのガラス物品を化学的に強化する目的で広く使用されている。イオン交換プロセスにおいては、第1の金属イオン(例えばLiO、NaOなどの中のアルカリカチオン)を含むガラス物品が、ガラス中に存在する第1の金属イオンに比べて大きいかまたは小さいかのいずれかである第2の金属イオンを含むイオン交換浴または媒質の中に少なくとも部分的に浸漬されるか、あるいは他の形でこの浴または媒質と接触させられる。第1の金属イオンはガラス表面からイオン交換浴/媒質中に拡散し、一方、イオン交換浴/媒質からの第2の金属イオンは、ガラスの表面より下の層深さまでガラス中の第1の金属イオンに置き換わる。ガラス中のより小さいイオンのより大きいイオンによる置換は、ガラスの表面において圧縮応力を作り出し、一方ガラス中のより大きいイオンのより小さいイオンによる置換は、典型的に、ガラスの表面において引張応力を作り出す。一部の実施形態において、第1の金属イオンと第2の金属イオンは一価のアルカリ金属イオンである。ただし、Ag、Tl、Cuなどの他の一価の金属イオンをイオン交換プロセス中で使用してもよい。AgおよびCuの少なくとも1つがガラス中の金属イオンと交換される場合においては、このようなガラスは抗ウイルスおよび/または抗菌の利用分野において極めて有用であり得る。
【0105】
イオン交換によって強化されたガラスシートの一部分(すなわちガラスシートの端部は図示せず)の断面図が、図1に概略的に示されている。図1中に示されている非限定的な例において、強化されたガラスシート100は、厚さt、中央部分130および互いに実質的に平行である第1の表面110と第2の表面112を有する。圧縮層120、122は、それぞれ第1の表面110および第2の表面112から、各表面の下の層深さd、dまで延在する。圧縮層120、122は、圧縮応力下にあり、一方中央部分130は、引張応力下、つまり張力を受けた状態にある。中央部分130内の引張応力は、圧縮層120、122内の圧縮応力を平衡化し、こうして、強化されたガラスシート100内部の平衡を維持する。一部の実施形態において、本明細書中に記載されたガラスおよびガラス物品は、少なくとも約300MPaの圧縮応力および/または少なくとも約10μmの圧縮層深さを達成するようにイオン交換されてよい。一部の実施形態において、本明細書中に記載のガラスおよびガラス組成物は、少なくとも約500MPaの圧縮応力および/または少なくとも約40μmの圧縮層深さを達成するためにイオン交換されてよい。一部の実施形態において、ガラスは、少なくとも約200、300、400、500、600、700、800、900または1000MPaの圧縮応力を達成するためにイオン交換される。一部の実施形態において、ガラスは少なくとも約10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μmまたは110μm以上の層深さを達成するためにイオン交換される。
【0106】
高い耐損傷性に加えて、本明細書中に記載のガラスは、比較的短時間で所望のレベルの圧縮応力および圧縮深さを達成するためにイオン交換されてよい。例えば溶融KNO塩中で4時間410℃でイオン交換した後、約700MPa超の圧縮応力および約75μm超の圧縮層深さを有する圧縮層がこれらのガラス中で達成されてもよい。一部の実施形態において、イオン交換は、約400°C、410°C、420°C、430°C、440°C、450°C、460°C、470°C、480°C、490°C、500°C、510°C、520°C、530°C、540°Cまたは550°C以上で行なわれる。一部の実施形態において、イオン交換は、約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10時間または10時間超の間行なわれる。
【0107】
図2は、表1中の試料a〜fに関する圧縮応力の一関数としての層深さのプロットである。厚さ0.7mmの試料を700℃で焼鈍し、410℃で1時間〜8時間の時間(図2のグループ「b〜d」)または470℃で6分間(図2のグループ「a」)溶融KNO塩浴中でイオン交換した。470℃で6分間イオン交換した試料は、破砕性限界(すなわちガラス試料が図2中でライン1により示されている破砕性挙動を示すはずのまたは示す確率が高い点)よりもはるかに低い圧縮応力および層深さを示した。厚さ0.7mmの試料が破砕性限界に達するのに必要なイオン交換時間は410℃で1時間よりわずかに長いものである。約1011ポアズに対応する粘度でより高い仮想温度を有する試料(すなわちダウンドロー試料のように未焼鈍のもの)において、破砕性限界は同様に、類似の短い時間で達成されるが、焼鈍された試料の場合に比べて圧縮応力は低く層深さは大きくなる。1時間イオン交換された試料(グループ「b」)は、破砕性限界の直下の圧縮応力および層深さを示し、4時間または8時間イオン交換した試料(それぞれグループ「c」および「d」)は、破砕性限界を超える圧縮応力と層深さを示す。
【0108】
本明細書中に記載のガラスをイオン交換する能力は、これらのガラスが、ビッカース亀裂発生閾値によって特徴づけされるガラスの耐損傷性が所望の属性である利用分野において使用される他のアルカリアルミノケイ酸ガラスのものに比べて著しく大きいカリウムおよびナトリウム相互拡散係数を有するという事実に少なくとも部分的に起因するものであることもある。410℃で、本明細書中に記載のガラスは、少なくとも約2.4×10−10cm/s、3.0×10−10cm/s、4.0×10−10cm/sまたは4.5×10−10cm/s、6.0×10−10cm/s、7.5×10−10cm/s、9.0×10−10cm/s、1.0×10−9cm/s、1.2×10−9cm/s、1.5×10−9cm/sそして一部の実施形態においては、約2.4×10−10cm/s、3.0×10−10cm/s、4.0×10−10cm/sまたは4.5×10−10cm/sから約7.5×10−10cm/s、9.0×10−10cm/s、1.0×10−9cm/s、1.2×10−9cm/sまたは1.5×10−9cm/sまでの範囲内のカリウム/ナトリウム相互拡散係数を有する。これらのガラスとは対称的に、米国特許出願第12/858,490号明細書、同第12/856,840号明細書および同第12/392,577号明細書中に記載のアルカリアルミノケイ酸ガラスは、1.5×10−10cm/s未満のカリウム/ナトリウム相互拡散係数を有する。
【0109】
一実施形態は、少なくとも約4モル%のPを含むアルカリアルミノケイ酸ガラスを含み、ここで[M(モル%)/RO(モル%)]<1.4であり、式中M=Al+Bであり、ROはアルカリアルミノケイ酸ガラス中に存在する一価および二価のカチオン酸化物の合計である。一部の実施形態において、[M(モル%)/RO(モル%)]は1未満である。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスはさらに、1モル%未満のKOを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは0モル%のKOを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは1モル%未満のBを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは0モル%のBを含む。一部の実施形態において、一価および二価のカチオン酸化物は、LiO、NaO、KO、RbO、CsO、MgO、CaO、SrO、BaOそしてZnOからなる群から選択される。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、410℃で少なくとも約2.4×10−10cm/sのカリウム/ナトリウム相互拡散係数を有する。一部の実施形態において、カリウム/ナトリウム相互拡散係数は、410℃で約2.4×10−10cm/s〜約1.5×10−9cm/sの範囲内にある。
【0110】
一実施形態は、0.6<[M(モル%)/RO(モル%)]<1.4を含むアルカリアルミノケイ酸ガラスを含み、式中M=Al+Bであり、ROはアルカリアルミノケイ酸ガラス中に存在する一価および二価のカチオン酸化物の合計である。一部の実施形態において、0.8<[M(モル%)/RO(モル%)]<1.4である。一部の実施形態において、0.8≦[M(モル%)/RO(モル%)]≦1.0である。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスはさらに、1モル%未満のKOを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは0モル%のKOを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは1モル%未満のBを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは0モル%のBを含む。一部の実施形態において、一価および二価のカチオン酸化物は、LiO、NaO、KO、RbO、CsO、MgO、CaO、SrO、BaOそしてZnOからなる群から選択される。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、410℃で少なくとも約2.4×10−10cm/sのカリウム/ナトリウム相互拡散係数を有する。一部の実施形態において、カリウム/ナトリウム相互拡散係数は、約2.4×10−10cm/s〜約1.5×10−9cm/sの範囲内にある。
【0111】
別の実施形態は、少なくとも約4モル%のPを含むアルカリアルミノケイ酸ガラスを含み、ここでアルカリアルミノケイ酸ガラスは少なくとも約20μmの層深さまでイオン交換されており、ここで0.6<[M(モル%)/RO(モル%)]<1.4であり、式中M=Al+Bであり、ROはアルカリアルミノケイ酸ガラス中に存在する一価および二価のカチオン酸化物の合計である。一部の実施形態において、0.6<[M(モル%)/RO(モル%)]<1.0である。一部の実施形態において、0.8<[M(モル%)/RO(モル%)]<1.4である。一部の実施形態において、0.8≦[M(モル%)/RO(モル%)]≦1.0である。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスはさらに、1モル%未満のKOを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは0モル%のKOを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは1モル%未満のBを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは0モル%のBを含む。一部の実施形態において、一価および二価のカチオン酸化物は、LiO、NaO、KO、RbO、CsO、MgO、CaO、SrO、BaOそしてZnOからなる群から選択される。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、410℃で少なくとも約2.4×10−10cm/sのカリウム/ナトリウム相互拡散係数を有する。一部の実施形態において、カリウム/ナトリウム相互拡散係数は、約2.4×10−10cm/s〜約1.5×10−9cm/sの範囲内にある。
【0112】
別の実施形態は、少なくとも約4%のPを含むアルカリアルミノケイ酸ガラスを含み、ここで1.3<[(P+RO)/M]≦2.3であり、式中M=Al+Bであり、ROはアルカリアルミノケイ酸ガラス中に存在する一価のカチオン酸化物の合計である。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスはさらに、1モル%未満のKOを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは0モル%のKOを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは1モル%未満のBを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは0モル%のBを含む。一部の実施形態において、一価および二価のカチオン酸化物は、LiO、NaO、KO、RbO、CsO、MgO、CaO、SrO、BaOそしてZnOからなる群から選択される。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、410℃で少なくとも約2.4×10−10cm/sのカリウム/ナトリウム相互拡散係数を有する。一部の実施形態において、カリウム/ナトリウム相互拡散係数は、約2.4×10−10cm/s〜約1.5×10−9cm/sの範囲内にある。
【0113】
一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは約40モル%〜約70モル%のSiOと;約11モル%〜約25モル%のAlと;約4モル%〜約15モル%のPと;約13モル%〜約25モル%のNaOとを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは約50モル%〜約65モル%のSiOと;約14モル%〜約20モル%のAlと;約4モル%〜約10モル%のPと;約14モル%〜約20モル%のNaOを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスはさらに1モル%未満のKOを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは0モル%のKOを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、1モル%のBを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは0モル%のBを含む。一部の実施形態において、一価および二価のカチオン酸化物は、LiO、NaO、KO、RbO、CsO、MgO、CaO、SrO、BaOそしてZnOからなる群から選択される。
【0114】
一部の実施形態において、上述のアルカリアルミノケイ酸ガラスは、少なくとも約20μmの層深さまでイオン交換される。一部の実施形態において、ガラスは、少なくとも約40μmの層深さまでイオン交換される。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、ガラスの表面から層深さまで延在する圧縮層を有し、ここでこの圧縮層は、少なくとも500MPaの圧縮応力下にある。一部の実施形態において、圧縮応力は少なくとも750MPaである。一部の実施形態において、圧縮応力は、約500MPa〜約2000MPaである。一部の実施形態において、イオン交換されたアルカリアルミノケイ酸ガラスは、少なくとも約8kgfのビッカース圧子圧入亀裂発生荷重を有する。一部の実施形態において、イオン交換されたアルカリアルミノケイ酸ガラスは、少なくとも約12kgfのビッカース圧子圧入亀裂発生荷重を有する。
【0115】
一実施形態は、アルカリアルミノケイ酸ガラスを強化する方法において、上述の通りアルカリアルミノケイ酸ガラスを提供するステップと;最大約24時間の時限中イオン交換浴中にアルカリアルミノケイ酸ガラスを浸漬して、アルカリアルミノケイ酸ガラスの表面から少なくとも20μmの層深さまで延在する圧縮層を形成するステップと;を含む方法を含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、少なくとも約4モル%のPを含み、ここで[M(モル%)/RO(モル%)]<1.4であり、式中M=Al+Bであり、ROはアルカリアルミノケイ酸ガラス中に存在する一価および二価のカチオン酸化物の合計である。一部の実施形態においては、[M(モル%)/RO(モル%)]<1である。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは0.6<[M(モル%)/RO(モル%)]<1.4を含み、M=Al+Bであり、ROはアルカリアルミノケイ酸ガラス中に存在する一価および二価のカチオン酸化物の合計である。一部の実施形態においては、0.8<[M(モル%)/RO(モル%)]<1.4である。一部の実施形態においては、0.8≦[M(モル%)/RO(モル%)]≦1.0である。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは少なくとも4%のPを含み、ここで1.3<[(P+RO)/M]≦2.3であり、式中M=Al+Bであり、ROはアルカリアルミノケイ酸ガラス中に存在する一価のカチオン酸化物の合計である。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは約40モル%〜約70モル%のSiOと;約11モル%〜約25モル%のAlと;約4モル%〜約15モル%のPと;約13モル%〜約25モル%のNaOとを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは約50モル%〜約65モル%のSiOと;約14モル%〜約20モル%のAlと;約4モル%〜約10モル%のPと;約14モル%〜約20モル%のNaOを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスはさらに1モル%未満のKOを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは0モル%のKOを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、1モル%のBを含む。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは0モル%のBを含む。一部の実施形態において、一価および二価のカチオン酸化物はLiO、NaO、KO、RbO、CsO、MgO、CaO、SrO、BaOそしてZnOからなる群から選択される。
【0116】
一部の実施形態において、上述のアルカリアルミノケイ酸ガラスは、少なくとも約20μmの層深さまでイオン交換される。一部の実施形態において、ガラスは、少なくとも約40μmの層深さまでイオン交換される。一部の実施形態において、アルカリアルミノケイ酸ガラスは、ガラスの表面から層深さまで延在する圧縮層を有し、ここでこの圧縮層は、少なくとも500MPaの圧縮応力下にある。一部の実施形態において、圧縮応力は少なくとも750MPaである。一部の実施形態において、圧縮応力は、約500MPa〜約2000MPaである。一部の実施形態において、イオン交換されたアルカリアルミノケイ酸ガラスは、少なくとも約8kgfのビッカース圧子圧入亀裂発生荷重を有する。一部の実施形態において、イオン交換されたアルカリアルミノケイ酸ガラスは、少なくとも約12kgfのビッカース圧子圧入亀裂発生荷重を有する。
【0117】
例示を目的として典型的な実施形態について説明してきたが、以上の記述は、開示または添付のクレームの範囲に対する限定とみなすべきものではない。したがって、当業者であれば、本開示または添付のクレームの精神および範囲から逸脱することなくさまざまな修正形態、適応形態および変形形態を提供できることもある。
図1
図2