特許第6948367号(P6948367)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6948367金属ストリップの冷却装置及び金属ストリップの冷却方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948367
(24)【登録日】2021年9月22日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】金属ストリップの冷却装置及び金属ストリップの冷却方法
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/573 20060101AFI20210930BHJP
   B21B 45/02 20060101ALI20210930BHJP
   B21B 37/76 20060101ALI20210930BHJP
   C21D 9/56 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   C21D9/573 101Z
   B21B45/02 320Z
   B21B37/76 A
   B21B45/02 320U
   C21D9/56 101F
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-190775(P2019-190775)
(22)【出願日】2019年10月18日
(65)【公開番号】特開2021-66901(P2021-66901A)
(43)【公開日】2021年4月30日
【審査請求日】2019年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094042
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】一前 憲悟
【審査官】 鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−215213(JP,A)
【文献】 特開昭61−253329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/52− 9/66
C21D 1/00
C22F 1/00− 3/02
B21B 45/00−45/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱後の金属ストリップを冷却する金属ストリップの冷却装置であって、
加熱され搬送方向の上流側から下流側へ搬送される上記金属ストリップに上方から冷却水を噴射するノズルと、
冷却水が噴射された上記金属ストリップの搬送高さを、冷却水が噴射された位置よりも搬送方向の下流側で高くするように持ち上げる持ち上げ機構とを備え、
前記持ち上げ機構は、搬送方向に間隔を隔てて複数設けられると共に、前記金属ストリップの搬送速度が速ければ速いほど、または、前記金属ストリップの厚みが厚ければ厚いほど、前記ノズルから次第に遠方となる位置で該金属ストリップを持ち上げるように、これら複数の持ち上げ機構を選択可能に作動する制御を行う制御部を備えていることを特徴とする金属ストリップの冷却装置。
【請求項2】
加熱後の金属ストリップを冷却する金属ストリップの冷却装置であって、
加熱され搬送方向の上流側から下流側へ搬送される上記金属ストリップに上方から冷却水を噴射するノズルと、
冷却水が噴射された上記金属ストリップの搬送高さを、冷却水が噴射された位置よりも搬送方向の下流側で高くするように持ち上げる持ち上げ機構とを備え、
前記持ち上げ機構は、搬送方向に移動可能であることを特徴とする金属ストリップの冷却装置。
【請求項3】
前記持ち上げ機構は、前記金属ストリップの搬送速度が速ければ速いほど、または、前記金属ストリップの厚みが厚ければ厚いほど、前記ノズルから次第に遠方となる位置で該金属ストリップを持ち上げるように制御する制御部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の金属ストリップの冷却装置。
【請求項4】
前記持ち上げ機構は、前記金属ストリップを持ち上げる空気を噴出することを特徴とする請求項1〜3いずれかの項に記載の金属ストリップの冷却装置。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかの項に記載の金属ストリップの冷却装置を用い、
前記持ち上げ機構により、前記金属ストリップの搬送速度が速ければ速いほど、または、前記金属ストリップの厚みが厚ければ厚いほど、前記ノズルから次第に遠方となる位置で該金属ストリップを持ち上げるようにしたことを特徴とする金属ストリップの冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ストリップ上の冷却水をより確実に水切りできる金属ストリップの冷却装置及び金属ストリップの冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱処理後の金属ストリップを冷却する技術として、特許文献1〜7が知られている。特許文献1の「高温鋼板の冷却装置」では、熱間圧延された高温の鋼板を挟んで、拘束ロールが一定ピッチで設けられ、拘束ロール相互間に、鋼板の上面および下面に向け冷却水を噴射する上部ノズルおよび下部ノズルが設けられている冷却装置において、下部ノズルの鋼板長さ方向の数は上部ノズルの鋼板長さ方向の数よりも多く、上部ノズルから噴射された冷却水の鋼板上面に対する接触開始位置と、下部ノズルから噴射された冷却水の鋼板下面に対する接触開始位置とが同じになるように、上部ノズルおよび下部ノズルが配置されている。
【0003】
特許文献2の「スリットジェットノズルによる鋼板の冷却方法」は、高温鋼板のパスラインの上下に、ノズル口が鋼板の幅方向に細長くされ且つパスラインを上下から指向するスリットジェットノズルを配設し、該ノズルからの冷却水噴射方向を、その前方側に向うに従って通板方向前方側に移行するように上下方向に対して傾斜させて、鋼板と冷却水が衝突するようにし、鋼板を搬送し乍ら、ノズルからの冷却水流により、鋼板の上下面を幅方向全長にわたって通板方向前端から後端に向って逐次冷却するスリットジェットノズルによる鋼板の冷却方法において、ノズルからの冷却水流の水量を150〜200m3/h.mとし、その吐出圧力を1.5〜2kg/cm2とするようにしている。
【0004】
特許文献3の「熱間厚板圧延設備における鋼板の急速冷却装置」は、熱鋼板の搬送ライン上に、上下対の搬送ローラを搬送方向に沿って適当間隔を距てて2組配設し、それら2組の各上側ローラ及び各下側ローラ間に、それぞれ搬送ライン上を通る熱鋼板と上下のカバーで囲まれた上下の冷却ゾーンを形成し、それら冷却ゾーンの上下の各カバーに、その全幅に亘ってスリット状の給水ノズルをそれぞれ取付け、該スリット状給水ノズルから上下の冷却ゾーン内に冷却水を噴射せしめるように構成されている。
【0005】
特許文献4の「鋼板冷却装置」は、所定間隔で同一平面内に配列されたロール上を移送される熱鋼板の上、下に相対して2本で1組を成すスリット状ノズルを配し、かつ該1組を成す2本のスリット状ノズルを互に向き合う方向に傾斜せしめると共に、該1組を成す2本のスリット状ノズルの先端部間にストリップの幅方向全長に亘って該先端部間を塞ぐ仕切板を備えて構成されている。
【0006】
特許文献5の「金属板の冷却装置」は、金属板を上下から挟みつつ移送する複数組の対の上ロールおよび下ロールと、互いに隣合う上ロール相互間の金属板移送方向後方側の上ロール近傍に配設され、冷却水を前記金属板の上面に対して吐出する上部冷却水ノズルと、前記上ロール相互間の金属板移送方向前方側の上ロール近傍に配設され、前記上部冷却水ノズルによって吐出された冷却水を前記金属板の上面から吸引する吸水装置と、互いに隣合う下ロール相互間の中央部に配設され、冷却水を金属板の下面に向けて吐出する下部冷却水ノズルとを具備してなり、前記上部冷却水ノズルを、前記金属板の幅全体にわたる長さのヘッダー部と、上端部がそのヘッダー部の内部に位置してそのヘッダー部に供給された冷却水のオーバーフロー水を金属板の移送方向に吐出するスリットノズル部とを有してなるオーバーフロー型スリットノズルとし、前記吸水装置は、前記上ロールに沿って延びる吸水管と、その吸水管に取り付けられて上ロールと金属板の接触部の近傍から冷却水を吸引する吸水ノズルとを有してなり、かつ、前記上ロール、前記上部冷却水ノズル、前記吸水装置は、前記下ロールに対してそれぞれ昇降自在とされて構成されている。
【0007】
特許文献6の「連続圧延における帯上の残留冷却水除去装置」は、仕上圧延機を出た金属帯を冷却帯で注水冷却したのちコイラーに巻取る連続圧延設備において、前記金属帯の先端が前記コイラーに巻取られたのちに前記金属体を持ち上げるロールを、前記冷却帯の出側と前記コイラーとの間に設置して構成している。
【0008】
特許文献7の「熱延鋼帯の冷却装置および冷却方法」は、熱間圧延された鋼帯を冷却水で冷却する際に、鋼帯の先端から尾端まで均一に冷却を施すことができる熱延鋼帯の冷却装置および冷却方法を提供することを課題とし、冷却装置が、棒状冷却水を鋼帯の進行方向に向けて噴射角度θで噴射するように傾斜して配置されている複数の円管ノズルと、その下流側に配置されて、ローラテーブルとの間で鋼帯を挟み込むピンチロールを備えて構成されている。
【0009】
特許文献1〜4は、熱間圧延された鋼板に向け冷却水を噴射して冷却する冷却装置に関し、特許文献5は、ロール上を搬送され圧延された金属板の上面に対して冷却水を吐出して冷却し、冷却水を吸引する吸引装置を備えた金属板の冷却装置に関し、特許文献6は、圧延機を出て冷却帯で注水冷却された金属帯がコイラーに巻き取られる際に、コイラーに巻き取られる前に金属帯をロールによって持ち上げる連続圧延における帯上の残留冷却除去装置に関し、特許文献7は、鋼片を板状に延ばす仕上げ圧延をした後、搬送される当該圧延後の熱延鋼帯に棒状冷却水を噴射し、鋼帯上面の冷却水の水切りを行う水切り手段を有する熱延鋼帯の冷却装置に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−166023号公報
【特許文献2】特開昭61−264137号公報
【特許文献3】特開昭58−86904号公報
【特許文献4】特公平2−38283号公報
【特許文献5】特開昭63−168215号公報
【特許文献6】実開昭58−96803号公報
【特許文献7】特開2007−152429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
金属ストリップを熱処理する装置において、加熱された金属ストリップをより早く冷却するために、多量の水を噴射する場合がある。このような場合には、たとえ水切り手段が設けられていたとしても、金属ストリップ上の水を無くすことは難しい。
【0012】
金属ストリップ上の水切りが不完全な場合には、加熱された金属ストリップに対し、不均一な冷却が持続されてしまうことにより、金属ストリップが変形してしまうという課題があった。
【0013】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、加熱した金属ストリップを効率よく冷却できると共に、金属ストリップ上の冷却水をより確実に水切りできる金属ストリップの冷却装置及び金属ストリップの冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明にかかる金属ストリップの冷却装置は、加熱後の金属ストリップを冷却する金属ストリップの冷却装置であって、加熱され搬送方向の上流側から下流側へ搬送される上記金属ストリップに上方から冷却水を噴射するノズルと、冷却水が噴射された上記金属ストリップの搬送高さを、冷却水が噴射された位置よりも搬送方向の下流側で高くするように持ち上げる持ち上げ機構とを備え、前記持ち上げ機構は、搬送方向に間隔を隔てて複数設けられると共に、前記金属ストリップの搬送速度が速ければ速いほど、または、前記金属ストリップの厚みが厚ければ厚いほど、前記ノズルから次第に遠方となる位置で該金属ストリップを持ち上げるように、これら複数の持ち上げ機構を選択可能に作動する制御を行う制御部を備えていることを特徴とする。
【0016】
本発明にかかる金属ストリップの冷却装置は、加熱後の金属ストリップを冷却する金属ストリップの冷却装置であって、加熱され搬送方向の上流側から下流側へ搬送される上記金属ストリップに上方から冷却水を噴射するノズルと、冷却水が噴射された上記金属ストリップの搬送高さを、冷却水が噴射された位置よりも搬送方向の下流側で高くするように持ち上げる持ち上げ機構とを備え、前記持ち上げ機構は、搬送方向に移動可能であることを特徴とする。
【0017】
前記持ち上げ機構は、前記金属ストリップの搬送速度が速ければ速いほど、または、前記金属ストリップの厚みが厚ければ厚いほど、前記ノズルから次第に遠方となる位置で該金属ストリップを持ち上げるように制御する制御部を備えていることを特徴とする。
【0018】
前記持ち上げ機構は、前記金属ストリップを持ち上げる空気を噴出することを特徴とする。
【0019】
本発明にかかる金属ストリップの冷却方法は、上記金属ストリップの冷却装置を用い、前記持ち上げ機構により、前記金属ストリップの搬送速度が速ければ速いほど、または、前記金属ストリップの厚みが厚ければ厚いほど、前記ノズルから次第に遠方となる位置で該金属ストリップを持ち上げるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる金属ストリップの冷却装置及び金属ストリップの冷却方法にあっては、搬送される加熱された金属ストリップをより効率よく冷却できると共に、金属ストリップ上の冷却水をより確実に水切りすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る金属ストリップの冷却装置の好適な一実施形態を示す概略側面図である。
図2】本発明に係る金属ストリップの冷却装置の変形例を示す概略側面図である。
図3】本発明に係る金属ストリップの冷却装置の他の変形例を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明にかかる金属ストリップの冷却装置及び金属ストリップの冷却方法の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
本実施形態における金属ストリップの冷却装置(以下、冷却装置という)1は、図1に示すように、延ばされた金属ストリップ(帯状の金属板)2の加熱の後に、当該金属ストリップ2を連続搬送しながら冷却する冷却設備である。
【0024】
冷却装置1は、金属ストリップ2が搬送される搬送方向に、加熱する加熱装置(不図示)と隣接して設けられている。帯状をなす金属ストリップ2は、加熱装置内からつながった状態で、加熱の後工程となる冷却を行う冷却装置1に搬送される。
【0025】
冷却装置1は、加熱されて搬送方向の上流側から下流側へ搬送される金属ストリップ2に上方から冷却水を噴射する複数の噴射ノズル3と、噴射ノズル3よりも搬送方向における下流側に設けられ、上方から空気を吹き付けるエアノズル4とを備えている。
【0026】
噴射ノズル3及びエアノズル4は、搬送方向と直交する金属ストリップ2の幅方向に向かって並べて配置されている。噴射ノズル3については、さらに、搬送方向に適宜間隔を空けて複数列設けられている。このため、金属ストリップ2には、噴射ノズル3から全幅に亘って冷却水が噴射され、また、エアノズル4から全幅に亘って空気が吹き付けられるように構成されている。ここで、噴射ノズル3は、1列であってもよい。
【0027】
搬送方向において最も下流側に位置する噴射ノズル(以下、最下流ノズルという)3よりも下流側の領域には、搬送される金属ストリップ2の下方に設けられ、冷却水が噴射された当該金属ストリップ2の搬送高さを、冷却水が噴射された位置よりも高くなるように持ち上げる持ち上げ機構5が設けられている。
【0028】
持ち上げ機構5は、金属ストリップ2の幅より長いローラ6と、ローラ6を昇降自在に上下方向へ作動される昇降機構7とを備えている。昇降機構7は、例えば油圧式のアクチュエータ等である。
【0029】
持ち上げ機構5は、搬送方向に適宜間隔を隔てて複数設けられている。持ち上げ機構5は、制御部8の制御により、各々独立して昇降可能に構成されている。持ち上げ機構5のローラ6は、昇降機構7により降下している状態では、金属ストリップ2の下方に離れて位置しており、上昇されると、金属ストリップ2を下から持ち上げる。持ち上げられた金属ストリップ2は、山形状に屈曲されて、持ち上げ機構5に支持される。
【0030】
冷却装置1では、冷却水が噴射されて搬送された金属ストリップ2が、持ち上げ機構5により持ち上げられることにより、金属ストリップ2の持ち上げられた部位よりも上流側に、冷却水の水溜まりWが生じるように構成されている。
【0031】
エアノズル4は、持ち上げ機構5が設けられている領域の上方に位置させて、ノズル移動機構(図示せず)により搬送方向に沿って移動可能に設けられている。エアノズル4は、金属ストリップ2を持ち上げる持ち上げ機構5の上方に移動され位置される。エアノズル4は、押し上げられて山形状をなす金属ストリップ2に対し、その上流側の斜面2aに沿うように傾斜配置されている。エアノズル4は、下流側から上流側に、すなわち、山形状をなす金属ストリップ2の斜面2aに対し、上方から下方へ向けて吹き下ろすようにエアを噴出する。
【0032】
加熱装置で加熱された金属ストリップ2を、本実施形態の冷却装置1を用いて冷却する金属ストリップ2の冷却方法は、まず、複数の持ち上げ機構5のうちのいずれかを制御部8の制御により上昇させると共に、上昇させた持ち上げ機構5と対向する位置にエアノズル4を移動させる。
【0033】
金属ストリップ2は、加熱装置から搬送されて冷却装置1の噴射ノズル3から噴射されている冷却水の下方を通過する際に冷却水が付着し、加熱された金属ストリップ2の熱により冷却水が気化することにより冷却される。このとき、金属ストリップ2の上面に残存する冷却水は、金属ストリップ2上に溜まっていく。
【0034】
搬送されている金属ストリップ2は、持ち上げ機構5により上昇されると、上面に残存する冷却水が上流側に戻されて水溜まりWが生じる。水溜まりWを越えた金属ストリップ2の上面に残存する冷却水は、エアノズル4から吹き付けられる空気により、水溜まりWに戻る、もしくは吹き飛ばされて金属ストリップ2は水切りされる。
【0035】
冷却装置1の搬送方向に並べて複数設けられている持ち上げ機構5は、金属ストリップ2の搬送速度または金属ストリップ2の厚みなどに応じ、制御部8の選択に応じて作動される。
【0036】
すなわち、制御部8には、金属ストリップ2の搬送速度や厚みなどに応じて、金属ストリップ2の押し上げ位置が設定され、押し上げ機構5は、制御部8の制御設定に応じて、選択可能に作動される。
【0037】
例えば、生産量を上げるため、加熱装置の熱量を上げて金属ストリップ2の搬送速度を速くした場合には、一定時間に加熱装置で加熱され当該加熱装置を通過してくる金属ストリップ2の体積が大きくなるので、より高い冷却効果を確保する必要がある。
【0038】
このため、金属ストリップ2に冷却水をより多く噴射して、奪い取る熱量を増やすこととなり、すると、金属ストリップ2の上面に残存する多くの冷却水が蒸発しながら、冷却装置1の下流側遠方へ運ばれていくので、熱量を上げる前と同じだけの冷却水の蒸発時間を確保するためには、持ち上げ機構5により持ち上げられる金属ストリップ2の部位よりも上流側に生じる冷却水の水溜まりWの区間を長くする必要があり、そのため、複数の持ち上げ機構5のうち、噴射ノズル3からより遠方(下流側)に位置している持ち上げ機構5(5a)により金属ストリップ2を持ち上げるようにする。
【0039】
一方、金属ストリップ2の搬送速度が遅い場合には、加熱された金属ストリップ2が冷却装置1を通過している時間が長いので、速度が速い場合よりも、冷却水の噴射量を少なくすることができる。
【0040】
しかし、金属ストリップ2の上面に噴射された冷却水は、分散しながら蒸発するため、水切りのタイミングが遅いと、金属ストリップ2の上面で冷却時間にバラツキが生じ、微小な凹凸変形が生じてしまうため、そうならないうちに水切りすることが必要である。
【0041】
このため、複数の持ち上げ機構5のうち、噴射ノズル3の近く(上流側)に位置している持ち上げ機構5(5b)により金属ストリップ2を持ち上げるようにし、より上流側で金属ストリップ2の水切りを完了させることができるようにする。
【0042】
金属ストリップ2の厚みが厚い場合には、加熱された金属ストリップ2の温度が下がり難いので、より多くの冷却水を噴射して冷却することが好ましい。
【0043】
このため、複数の持ち上げ機構5のうち、噴射ノズル3からより遠方(下流側)に位置している持ち上げ機構5(5a)により金属ストリップ2を持ち上げ、持ち上げ機構5により押し上げられた金属ストリップ2の部位よりも上流側に生じる冷却水の水溜まりWの区間を長くする。
【0044】
一方、金属ストリップ2の厚みが薄い場合には、加熱された金属ストリップ2の温度が下がり易いので、厚みが厚い場合よりも、冷却水の噴射量を少なくすることができる。
【0045】
しかし、水切りのタイミングが遅いと、前述と同様の悪影響があるため、複数の持ち上げ機構5のうち、噴射ノズル3の近く(上流側)に位置している持ち上げ機構5(5b)により金属ストリップ2を持ち上げるようにし、より上流側で金属ストリップ2の水切りを完了させることができるようにする。
【0046】
すなわち、金属ストリップ2の搬送速度を速くしたり厚さが厚くなると、時間当たりで処理する金属ストリップ2の体積が増えるため、多量の冷却水が必要になり、その結果、水溜まりWの区間も長く必要となる。また、搬送速度が速いと、蒸発するまでに、冷却水が遠方まで運ばれていくことからも、長い水溜まりWの区間が必要になる。
【0047】
このように、金属ストリップ2の搬送速度が速ければ速いほど、または、金属ストリップ2の厚みが厚ければ厚いほど、搬送方向に噴射ノズル3から次第に遠方となる位置で金属ストリップ2を持ち上げる動作は、制御部8が複数の持ち上げ機構5を選択可能に作動することによって行われる。
【0048】
本実施形態に係る金属ストリップの冷却装置1によれば、持ち上げ機構5により、冷却水が噴射された金属ストリップ2の搬送高さを、冷却水が噴射された位置よりも搬送方向の下流側で高くするように持ち上げるので、金属ストリップ2上に残存する冷却水を、搬送方向上流側の、高さが低く冷却水が噴射された位置側に移動させることができる。
【0049】
このため、金属ストリップ2を搬送しつつ、金属ストリップ2上の冷却水をより確実に水切りすることができる。
【0050】
持ち上げ機構5は、搬送方向に適宜間隔を隔てて複数設けられ、それらは選択可能に作動されるので、例えば、上述したように制御部8の制御により、金属ストリップ2の搬送速度や厚み等に応じて、持ち上げ機構5で金属ストリップ2を持ち上げる位置を適宜変更することができる。
【0051】
このため、冷却する時間が確保しにくい搬送速度が速い金属ストリップ2であっても、厚みが厚く温度を下げにくい金属ストリップ2であっても、制御部8により、適切な位置に設けられている持ち上げ機構5で金属ストリップ2を持ち上げることにより、水溜まりWの区間を調節し、より適切に冷却できると共に、より確実に水切りすることができる。
【0052】
図2には、上記実施形態の変形例が示されている。上記実施形態においては、持ち上げ機構5が、搬送方向に適宜間隔を隔てて複数設けられている場合について説明したが、これに限られるものではない。
【0053】
図2に示すように、1つの持ち上げ機構5をスライドレール11などで搬送方向へ移動可能に設け、制御部8の制御により、設定した位置へ持ち上げ機構5を移動させて金属ストリップ2を持ち上げるようにしても良い。
【0054】
この場合、金属ストリップ2の搬送速度が速いときや金属ストリップ2の厚みが厚いときは、持ち上げ機構5を下流側に移動させるようにし、金属ストリップ2の搬送速度が遅いときや金属ストリップ2の厚みが薄いときは、持ち上げ機構5を上流側に移動させればよい。
【0055】
この変形例では、持ち上げ機構5を1つ設ければよいので、装置コストを抑えることができると共に、搬送方向において、持ち上げる位置をより細かく設定できて、上記実施形態よりもさらに適切な位置で金属ストリップ2を持ち上げて、金属ストリップ2上の冷却水を水切りすることができる。
【0056】
図3には、上記実施形態の他の変形例が示されている。上記実施形態においては、持ち上げ機構5を、ローラ6と、ローラ6の昇降機構7とで構成としたが、これに限られるものではない。
【0057】
図3に示すように、持ち上げ機構5を、搬送される金属ストリップ2の下方に設けられ、上方に向けて空気を噴出する空気噴出部9で構成しても良い。空気噴出部9を、搬送方向に適宜間隔を隔てて複数設け、制御部8の制御により、各空気噴出部9に空気を送る開閉バルブ10を各々独立して開閉制御する構成としてもよい(図中、バルブ開を白抜き表示、バルブ閉を黒塗り表示で示す)。
【0058】
この場合には、金属ストリップ2の持ち上げは、空気噴出部9から噴出される空気で行われる。空気噴出部9であれば、非接触で、金属ストリップ2を持ち上げることができ、金属ストリップ2が傷付くことを防ぐことができる。
【0059】
持ち上げ機構5として、開閉バルブ10と空気噴出部9とで構成する場合であっても、図2に示した構成を採用して、1つの持ち上げ機構5を、制御部8の制御により設定した位置に移動させて、金属ストリップ2を持ち上げるようにしても良い。
【0060】
上記実施形態及び変形例においては、1つのエアノズル4を搬送方向に移動させる例について説明したが、これに限らず、搬送方向に互いに間隔を隔てて複数のエアノズル4を配置し、持ち上げ機構5と対向する位置に配置されたエアノズル4から空気を吹き出すようにしてもよい。エアノズル4は、複数設けることにより、より早く水切りすることができる。
【0061】
また、本実施形態の金属ストリップの冷却方法によれば、金属ストリップ2の搬送速度が速ければ速いほど、または、金属ストリップ2の厚みが厚ければ厚いほど、噴射ノズル3から次第に遠方となる位置で金属ストリップ2を持ち上げるので、搬送速度や厚さに応じた位置で金属ストリップ2を持ち上げて、より適切に冷却できると共に、より確実に水切りすることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 金属ストリップの冷却装置
2 金属ストリップ
2a 金属ストリップの上流側の斜面
3 噴射ノズル
4 エアノズル
5 持ち上げ機構
6 ローラ
7 昇降機構
8 制御部
9 空気噴出部
10 バルブ
11 スライドレール
W 水溜まり
図1
図2
図3