特許第6948395号(P6948395)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6948395電気化学金属イオンバッテリ及び関連するバッテリ用の端子を形成するフィードスルー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948395
(24)【登録日】2021年9月22日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】電気化学金属イオンバッテリ及び関連するバッテリ用の端子を形成するフィードスルー
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/562 20210101AFI20210930BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20210930BHJP
   H01M 50/159 20210101ALI20210930BHJP
   H01M 50/55 20210101ALI20210930BHJP
   H01M 50/552 20210101ALI20210930BHJP
   H01M 50/564 20210101ALI20210930BHJP
【FI】
   H01M50/562
   H01M4/485
   H01M50/159
   H01M50/55 101
   H01M50/55 201
   H01M50/552
   H01M50/564
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-533670(P2019-533670)
(86)(22)【出願日】2017年9月1日
(65)【公表番号】特表2019-526921(P2019-526921A)
(43)【公表日】2019年9月19日
(86)【国際出願番号】EP2017071951
(87)【国際公開番号】WO2018046397
(87)【国際公開日】20180315
【審査請求日】2019年4月25日
(31)【優先権主張番号】1658288
(32)【優先日】2016年9月7日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518014999
【氏名又は名称】コミッサリアット ア ル’エネルギエ アトミク エト アウクス エネルギーズ オルタナティブス
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク デウルフ
(72)【発明者】
【氏名】ピエール ジョスト
(72)【発明者】
【氏名】コメ‐エマヌエル レイズ
【審査官】 結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/001821(WO,A1)
【文献】 特開2012−059365(JP,A)
【文献】 特開昭63−004548(JP,A)
【文献】 特開2015−065149(JP,A)
【文献】 特開2009−076394(JP,A)
【文献】 特開2004−316637(JP,A)
【文献】 特開平07−235289(JP,A)
【文献】 特表2015−518254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/562
H01M 4/485
H01M 50/159
H01M 50/55
H01M 50/552
H01M 50/564
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの相反する面(30、31)を有する壁(3)の両側で開口した開口部(32)を貫通して形成された、金属イオン電気化学二次電池用の端子を形成するフィードスルー(1)であって:
導電性雄型部品(7);及び
アルミニウム系合金から形成された雌型部品(8)を備え、該雄型部品(7)の一部(71)が該雌型部品(8)の盲孔(81)に緊密に嵌合し、
該雄型部品(7)が、該雌型部品のアルミニウム系合金とは異なるアルミニウム系合金から形成され、
該雄型部品のアルミニウム合金が、H18の調質度を有するグレード5754、6060、及び3003合金から選択され、該雌型部品のアルミニウム合金が、グレード1050の合金である、前記フィードスルー(1)。
【請求項2】
2つの電気絶縁ワッシャ(5A、5B)を備え、それぞれが、前記壁の面の1つ(30、31)を表面で支持する支持部(50A、50B)、及び該支持部から突出して、前記開口部(32)の縁に接触するガイド部(51A、51B)を備え、
該フィードスルーにおいて、前記導電性雄型部品及び雌型部品のそれぞれが、前記ワッシャの支持部(50A、50B)を表面で支持する支持部(70、80)を備える、請求項1記載のフィードスルー。
【請求項3】
前記雄型部品(7)の一部(71)の前記雌型部品(8)の盲孔(81)への緊密な嵌合がN9p7型嵌合である、請求項1記載のフィードスルー。
【請求項4】
前記部品の1つ以上の材料及び該部品の断面の寸法が、最大で少なくとも100Aに等しい値の電流が通過するのを可能にするのに適している、請求項1記載のフィードスルー(1)。
【請求項5】
前記雄型部品の一部が、該雄型部品を前記雌型部品にクランプするときに空気を逃がすことができるように、前記二次電池の外部及び該雌型部品の盲孔への底部の両方で開口している少なくとも1つのダクト(72)を備える、請求項1記載のフィードスルー(1)。
【請求項6】
前記盲孔(81)の底部(82)と前記雌型部品(8)のベースとの間で測定される該雌型部品の厚みが、6mmの該盲孔の内径では、2mm以上である、請求項1記載のフィードスルー(1)。
【請求項7】
カバー(3)を有するハウジング(10)であって、請求項1記載のフィードスルー(1)がカバー(3)を貫通して形成されているハウジング(10)を備える、金属イオン二次電池又はバッテリ。
【請求項8】
前記雄型部品(7)が、雌ねじ部品であり、前記ハウジング(10)の外部に突き出ている、請求項記載の金属イオン二次電池又はバッテリ。
【請求項9】
前記カバーが、アルミニウムから形成されている、請求項記載の金属イオン二次電池又はバッテリ。
【請求項10】
前記フィードスルーの雌型部品が、アルミニウム系集電体に溶接され、該集電体自体が、金属イオン挿入活物質を支持するアルミニウム系電極箔に溶接されている、請求項記載の金属イオン二次電池又はバッテリ。
【請求項11】
前記金属イオン挿入活物質が、チタン酸塩系材料から選択される、請求項10記載の金属イオン二次電池又はバッテリ。
【請求項12】
請求項2記載のフィードスルーを製造するための方法であって:
(a)前記ワッシャ(5A、5B)のガイド部(51A、51B)のうちの1つを、前記壁(3)の2つの相反する面(30、31)のそれぞれから前記開口部(32)に挿入して、該ガイド部(51A、51B)が該壁の該開口部(32)の縁を支持するようにする工程;
(b)前記アルミニウム雌型部品(8)を該壁の一方の面(31)から一方の該ワッシャ(5B)に挿入する工程;
(c)前記雄型部品(7)を該壁の反対の面(30)から圧入して、該雄型部品(7)の一部(71)が該雌型部品(8)の盲孔(81)の底部(82)に当接し、かつ該雄型部品及び該雌型部品の支持部(70、80)のそれぞれが、該開口部の縁に案内される該ワッシャの支持部(50A、50B)を表面で支持するようにする工程を行う、前記方法。
【請求項13】
工程(c)での前記圧入動作を、前記雄型部品(7)の一部(71)と前記雌型部品(8)の盲孔(81)との間にN9p7型嵌合が得られるように、1重量トン以上の力で押圧することによって行う、請求項12記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、金属イオン電気化学二次電池用の端子を形成するフィードスルー及びこのような二次電池に関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、典型的には10アンペア時(Ah)を超える高容量を有し、かつ典型的には100Aを超える大きい電流を流すのに適しているリチウムイオン(Liイオン)電気化学二次電池に関する。
【0003】
本発明は、より詳細には、ハウジング用のフィードスルーであって、それを備えた大容量リチウムイオン二次電池が大きい電流を供給できるようにする、前記フィードスルーの製造に関する。
【0004】
用語「フィードスルー」は、通常の意味を有すると理解される、すなわち導電性要素が壁を貫通する一方、導体をこの壁から絶縁するために使用される装置であると規定している。
【0005】
リチウムイオン二次電池に関して説明したが、本発明は、あらゆる金属イオン電気化学二次電池、すなわちナトリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオンなどの二次電池にも適用可能である。
【背景技術】
【0006】
(先行技術)
リチウムイオン二次電池又はバッテリは、通常は、正極又はカソードと負極又はアノードとの間の電解質成分からなる少なくとも1つの電気化学セル、該カソードに接続された集電体、該アノードに接続された集電体、及び、最後に、たとえ集電体の一部が貫通しても電気化学セルを密封して収容するのに適したケーシングを備える。
【0007】
電解質成分は、固体、液体、又はゲルであり得る。後者の形態では、成分は、充電のためにリチウムイオンのカソードからアノードへの移動を可能にし、かつ反対に放電のため、従って電流を発生させるために該アノードから該カソードへの移動を可能にする有機又は液体イオン電解質(複数可)を含浸したポリマー又は細孔複合材料から形成されたセパレータを含み得る。電解質は一般に、リチウム塩、典型的にはLiPF6が添加される、有機溶媒、例えば炭酸塩の混合物である。
【0008】
正極又はカソードは、リチウムカチオンを挿入するための材料からなり、この材料は、一般に、LiFePO4、LiCoO2、又はLiNi0.33Mn0.33Co0.33O2などの複合材料である。
【0009】
負電極又はアノードは、非常に多くの場合、黒鉛炭素からなるか、又はLi4TiO5O12(チタン酸塩材料)から形成されるが、任意にシリコン又はシリコン系の複合材料に基づいてもよい。
【0010】
正極に接続された集電体は、通常は、アルミニウムから形成される。
【0011】
負極に接続された集電体は、通常は、銅、ニッケルメッキ銅、又はアルミニウムから形成される。
【0012】
リチウムイオン二次電池又はバッテリは、当然、互いに積み重ねられた複数の電気化学セルを含み得る。
【0013】
従来、Liイオン二次電池又はバッテリは、典型的には3.6ボルトに等しい高い電圧レベルで動作することを可能にする一対の材料をアノード及びカソードに使用する。
【0014】
Liイオン二次電池又はバッテリは、目的とする用途の要求が厳しい、又は長寿命が求められる場合、例えば非常に高い圧力に耐えるべきであり、かつより厳密な密封レベル(典型的には、10-8 mbar.l/s(10-9kPa.l / s)よりも低い)が要求される場合、又は航空学の分野などの要求が厳しい環境では、硬質ケーシングを備える。
【0015】
従って、これまで、硬質ケーシングは、典型的にはステンレス鋼(316L又は304ステンレス鋼)、アルミニウム(1050又は3003アルミニウム)、又はチタンから形成された金属ハウジングからなる。
【0016】
現在、2つのタイプの硬質ケーシングが製造されている。
【0017】
第1のタイプは、レーザーによって周辺部で互いに溶接された機械加工された底部及びカバーから構成された硬質ハウジングからなる。集電体は、一部が金属ワイヤ又はピンで形成される。1つ以上のピンは、集電体の対応する部分に電気溶接又は超音波によって溶接され、該集電体は、それ自体が電気化学セルの電極のうちの1つ、又は電気化学セルのスタックに接続されている。ハウジングの金属カバーと金属ピンとの間の電気的絶縁を達成するために、ガラス球がピンを覆い、これにより一般的にはガラス金属フィードスルーと呼ばれるものを形成する。さらに、フィードスルーをハウジングカバーで密封するために、一般的にはケーシングの金属と同じ金属から形成される、ガラス球の周りのリングが、該カバーに溶接されている。単一ガラス金属フィードスルーの使用のためのいくつかの構造が提供され、ハウジングが、二次電池の極とも呼ばれる他方の端子を形成している。
【0018】
第2のタイプもまた、レーザーによって周辺部で互いに溶接された型打ちカップ及びカバーで構成された硬質ハウジングからなる。しかしながら、集電体は、ケーシングの頂部から突出して、バッテリの突出端子又は極とも呼ばれるものを形成する部分を有するフィードスルーを備える。
【0019】
端子を形成するこのようなフィードスルー1と集電体2及びハウジングのカバー3との組立体の第1の例が図1に示され:該集電体2は、典型的には雌ねじ雄型部品の形状に銅から形成され、M5又はM8ナット2を用いるねじ込みによって取り付けられる。典型的にはポリプロピレンである電気絶縁材料から形成され、互いに重ね合わされた2つのワッシャ5A、5Bは、一方の5Aが、カバー3とナット4の他方の支持ワッシャ6との間に挿入され、他方の5Bが、カバー3と集電体2との間に挿入される。これらのワッシャ5A、5Bは、ハウジングのカバー3に対して集電体2を密封し、電気的に絶縁する。より具体的には、この第1の例示された例では、2つの絶縁ワッシャ5A、5Bは同一であり、それぞれ、支持部50A、50B並びにガイド及びセンタリング部51A、51Bを備える。支持部50Aは、カバー3の壁の面30及びナット4の支持ワッシャ6の両方に当接してこれらを表面で支持している。同様に、支持部50Bは、カバー3の反対側の面31及び集電体2の支持部20の両方を表面で支持している。ガイド及びセンタリング部51A、51Bは、カバー3の貫通開口部32の縁及び集電体2の両方に部分的に接触している。これらのガイド及びセンタリング部51A、51Bは、両方のワッシャ5A、5Bを貫通開口部32に案内してセンタリングすること、及び集電体2を前記ワッシャ5A、5Bに案内してセンタリングすることを可能にする。
【0020】
端子を形成するフィードスルー1と集電体2及びハウジングのカバー3との組立体の第2の例が図2に示され:該集電体2は、雌ねじ雄型部品の形状に銅から形成され、該集電体を支持ワッシャ6に対してクリンプすることによって取り付けられる。この例でも、支持部50A、50B並びにガイド及びセンタリング部51A、51Bを備える、電気絶縁材料から形成された2つのワッシャ5A、5Bが存在し、該支持部50A、50B並びに該ガイド及びセンタリング部51A、51Bは、第1の例と同じように配置され、かつ第1の例と同じ機能を果たす。しかしながら、この第2の例に従ってクリンプすることによる取り付けは、第1の例のねじナット4のような追加の部品を一切使用することなく行われる。具体的には、クリンプ作業は、雄型集電体2の円筒部の外側に配置されたクリンプ部21を支持ワッシャ6に対して機械的に押し潰すことによって行われる。
【0021】
端子を形成するフィードスルーと集電体及びハウジングのカバーとの組立体の第3の例は、仏国特許出願第2798227号に記載されている。
【0022】
上述のように、Liイオン二次電池又はバッテリは、典型的には3.6ボルトに等しい高い電圧レベルで動作することを可能にする一対の材料をアノード及びカソードに使用する。
【0023】
他の対の材料も可能であり、より低い電圧レベルを供給する。例として、LiFePO4/黒鉛の対の材料は、3.0〜3.2ボルトでの動作中に平均電圧レベルを供給する。また、例として、LiFePO4/Li4TiO5O12の対の材料は、1.6〜1.8ボルトでの動作中に平均電圧レベルを供給する。
【0024】
上述の仏国特許出願2798227号で提案されている解決策は、大電流が流れるのには適していない。なぜなら、電流が流れると、特に雄型部品及び雌型部品の幾何学的形状のため、レーザー溶接が存在しないなどのために、該部品が加熱されて熱膨張が起こると、該部品間の剥離によって接触不良が生じることがある。
【0025】
このため、本出願人は、仏国特許出願第2989836号において、従来使用されている3.6Vよりも低い平均電圧で、典型的には100Aを超える非常に大きい電流を流すことができる接続端子を有するハウジングを備えたLiイオン二次電池を提案した。具体的には、「電力」用途と呼ばれる場合、大容量二次電池は、その端子に非常に高い電力、すなわち非常に高い電流と電圧との積を供給しなければならない。しかしながら、より低い電圧レベルの対を使用しているため、従来の電流よりも高い電流を供給する必要がある。
【0026】
図3は、仏国特許出願第2989836号による、Liイオン二次電池の端子1を形成するフィードスルーの一例を示す。
【0027】
フィードスルー1は、Liイオン二次電池のカバー3の両側に開口した開口部32を貫通して形成されている。このカバーは、2つの相反する面30、31を有する。フィードスルー1は、リチウムイオン二次電池のハウジングの軸に平行な軸Xに沿って延在する。
【0028】
フィードスルー1はまず、2つの同一の電気絶縁ワッシャ5A、5Bを備える。各ワッシャは、支持部50A、50B、及び該支持部から突出したガイド部51A、51Bを備える。上部ワッシャ5Aの支持部は、カバー3の上面30に当接してこれを表面で支持し、そしてそのガイド部51Aは、該カバー3の開口部32の縁に接触している。同様に、下部ワッシャ5Bの支持部は、カバー3の下面30に当接してこれを表面で支持し、そしてそのガイド部51Bは、該カバー3の開口部32の縁に接触している。
【0029】
フィードスルー1は、導電性雄型部品7を備え、該導電性雄型部品7は、同様に導電性である雌型部品8に緊密に嵌合する。雌型部品8は、開口している。
【0030】
雄型部品7及び雌型部品はそれぞれ、支持部70、80を備える。雄型部品7の支持部70は、上部ワッシャ5Aの支持部50Aに当接してこれを表面で支持し、一方、該雌型部品の支持部80は、下部ワッシャ5Bの支持部50Bに当接してこれを表面で支持している。図3に例示するように、この雌型部品8は、その変形により、ワッシャのガイド部51A、51Bに当接してこれを表面で支持する。
【0031】
この仏国特許出願第2989836号によると、雄型部品7及び雌型部品の1つ以上の材料及び該部品の断面の寸法は、少なくとも100Aに等しい値の電流を流すことができるように選択され、該電流は、少なくとも3分の持続時間の直流であり得る。図3において、黒い矢印は、仏国特許出願第2989836号によるフィードスルー1を通る、100Aよりも高い電流Iの経路を表している。
【0032】
一般に、特に上述の特許出願において、公知のLiイオン二次電池で実施されるフィードスルー又は密封端子の導電性部品は、ニッケルメッキ銅から形成される。これは、このようなフィードスルーが二次電池の負極端子として作用し、従って負極に電気的に接続され、該負極は、非常に多くの場合、挿入活物質(active insertion material)として黒鉛を含み、該黒鉛が、一般に銅箔に被覆されることによって保持されるという事実によるものである。言い換えれば、端子の導電性部品のニッケルメッキ銅は、負極の銅箔と最も適合性のある材料である。
【0033】
しかしながら、次世代の金属イオン二次電池は、シリコン、チタン酸塩、又はナトリウムなどの新しいタイプの挿入活物質を使用する。これらの材料は、アルミニウム箔などのアルミニウム基板上に十分に被覆できるだけではなく、二次電池の内部のために可能な限り純度の高いアルミニウムグレードを選択することによって、該材料を用いて、汚染物質の存在を、及び腐食の原因となり得る電解質の存在下でのガルバニックカップルの発生を回避することが可能である。
【0034】
従って、本発明者らは、シリコン、チタン酸塩、又はナトリウムなどの新しいタイプの挿入活物質のための支持体としてのアルミニウム基板との最良の適合性を提供するように少なくとも部分的にアルミニウムから形成された導電性部品を有する二次電池用のフィードスルーを画定する必要性に直面した。
【0035】
本発明者らは、自然に、アルミニウムから形成された雄型部品及び雌型部品を使用する、仏国特許出願第2989836号による解決策に至った。
【0036】
しかしながら、クリンプすることによってこれらの部品の組立体を試験するための特定の条件下で、本発明者らは、雌型部品のベースの実質的な変形、特に、雄型部品と該雌型部品とを共にクリンプする工程で加えられる圧力下でのアルミニウムの可塑性に関連した該雌型部品のベースの直径の著しい増大が起こり得るという事実を明らかにした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
従って、特に、アルミニウム基板によって保持することができる、金属イオン電気化学二次電池の1つ以上の電極、特に負極用の他の挿入活物質、例えば、シリコン、チタン酸塩、又はナトリウムを使用できるようにフィードスルーの導電性部品の少なくとも一部をアルミニウムから形成することを目的として、該二次電池のハウジングを貫通する、該二次電池用の端子を形成する密封フィードスルーの製造を改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0038】
(発明の概要)
これを達成するために、本発明は、その態様の1つによると、2つの相反する面を有する壁の両側に開口した開口部を貫通して形成された、リチウムイオン(Liイオン)電気化学二次電池用の端子を形成するフィードスルーに関し、該フィードスルーは:
・導電性雄型部品;及び
・アルミニウム系合金から形成された雌型部品を備え、該雄型部品の一部が該雌型部品の盲孔に緊密に嵌合する。
【0039】
用語「アルミニウム系合金」は、必要に応じて、典型的には0.5%未満の小さい割合でSi、Mn、Zn、Fe、又はTiなどの他の元素を含むが、殆ど全てがアルミニウムから形成される合金を意味することを理解されたい。
【0040】
有利な一実施態様によると、フィードスルーは:
・2つの電気絶縁ワッシャを備え、該ワッシャのそれぞれが、壁の一方の面を支持する表面支持部、及び該支持部から突出して開口部の縁部に接触するガイド部を備え、
該フィードスルーにおいて、導電性部品のそれぞれが、該ワッシャの支持部を表面で支持する支持部を備える。
【0041】
絶縁ワッシャは、ポリエーテルイミド(PEI)から形成することができる。
【0042】
特に有利な一実施態様によると、雄型部品は、雌型部品のアルミニウム系合金とは異なるアルミニウム系合金から形成される。
【0043】
この実施態様によると、雄型部品のアルミニウム合金は、好ましくは、H18の調質度を有するグレード5754、6060、及び3003合金から選択され、雌型部品のアルミニウム合金は、グレード1050の合金である。
【0044】
従って、本発明によると、有利に、一対の雄型部品及び雌型部品を備えるフィードスルーを提供することが可能であり、これらの部品は、共にアルミニウム合金から形成されるが、これらの部品が受ける応力に適切かつ個別に耐えることができるように異なっている。従って、雄型部品は、非常に優れた機械的特性を示すアルミニウム合金から形成され、雌型部品のアルミニウム合金は、金属イオン二次電池の電気化学コアとのその化学的適合性で選択される。
【0045】
雄型部品では、H18の調質度を有するグレード5754、グレード6060、又はグレード3003合金は、非常に優れた機械的特性を示し、その表面に圧力が加えられたとき、特に本発明によるクリンプの際にその完全性を維持する。これらの非常に優れた機械的特性の中には、高降伏強度があり、この高降伏強度により、先行技術による銅系端子に加えられ得る締め付けトルクと同等又はそれ以上のレベルでの、フィードスルーの雄型部品とバスバーとの間のねじ込みによって加えられる締め付けトルクが許容される。典型的には、ねじ込みによって本発明による出力端子に加えられ得る締め付けトルクは4N.mよりも大きい。
【0046】
さらに、グレード5754及び6060は、雌型部品のグレード1050のアルミニウムと直接適合性であり、これにより、グレード1050の電気抵抗に比較的近い低い電気抵抗で連続的な電気伝導を提供する。
【0047】
H18の調質度を有するグレード3003では、Mg含有量は、有利に0.01〜0.05%であり得、銅(Cu)含有量は、0.05〜0.2%であり得る。
【0048】
グレード5754では、Mg含有量は、有利に2.6〜3.2%であり得、銅(Cu)含有量は、0.05〜0.1%であり得る。
【0049】
グレード6060では、Mg含有量は、有利に0.35〜0.6%であり得、銅(Cu)含有量は、0.05〜0.1%であり得る。
【0050】
雌型部品に関して、グレード1050は、金属イオン二次電池の電気化学コアを構成することができ、かつシリコン系、チタン酸塩系、又はナトリウム系挿入活物質、Liイオン二次電池用のLiPF6系電解質などを含む材料と申し分なく適合性である。さらに、このアルミニウムグレードは、アルミニウム系電極箔及び集電体に典型的に使用されるものと同様である。
【0051】
言い換えれば、本発明によると、仏国特許出願第2989836号によるものと同じタイプであるが、雄型部品の突出部と好ましくは可能な限り純度の高いアルミニウムグレードのアルミニウムから形成される雌型部品の盲孔との間の緊密な嵌合が追加されたフィードスルーを形成する。
【0052】
仏国特許出願第2989836号における貫通孔の代わりに雌型部品に盲孔を形成することにより、該雌型部品を機械的に強化することができ、これが、クリンプ動作中のあらゆる不所望の変形を防止し、従って、最終的に強いフィードスルーを得ることができる。
【0053】
本発明により、本発明による端子のアルミニウム系合金から形成された雌型部品に電気的に接続されるアルミニウム箔によって保持されるあらゆる挿入物質を含む金属イオン二次電池を定義することが可能である。
【0054】
本発明は、まず第1に、密封された機械的に強いフィードスルー、すなわち以下の特徴の全てを有するフィードスルーを提供する:
・二次電池の組立工程中に変形しない;
・接続バスバーによって、二次電池をモジュールの形態の他の二次電池と一緒に組み立てることを可能にする締め付けトルク(一般に、3N.mよりも高い)に耐える;
・二次電池の用途ではその寿命期間にわたってその完全性を維持することができ、従って、不所望の変形も漏出もなく、振動、機械的衝撃、典型的には−40℃〜+75℃である温度変化、及び圧力の変動に耐える。
【0055】
さらに、雌型部品のベースが中実であるため、雄型部品は、二次電池の電気化学反応に関与するその内部成分にもはや直接接触せず、雌型部品と下部絶縁ワッシャによってフィードスルーを支持する二次電池の壁との間の完全密封がさらに保証される。
【0056】
表現「完全密封性」は、典型的にはヘリウムでは10-8 mbar.l/s(10−9kPa.l/s)未満である、要求される最も厳密な密封を意味することを理解されたい。
【0057】
好ましくは、雄型部品の一部の雌型部品の盲孔への緊密な嵌合は、特に6mmのオーダーの盲孔の内径では、N9p7型嵌合(type N9p7 fitting)である。検討中のN9p7嵌合は、ISOシステムの嵌合に従っていると本明細書に規定される。
【0058】
有利に、部品の1つ以上の材料及び部品の断面の寸法は、最大で少なくとも100Aに等しい値の電流が流れるのを可能にするのに適し得る。
【0059】
有利な一実施態様によると、雄型部品の一部は、該雄型部品を雌型部品にクリンプするときに空気を逃がすことができるように、二次電池の外部及び該雌型部品の盲孔への底部の両方で開口している少なくとも1つのダクトを備える。
【0060】
この実施態様は、あるクリンプ条件下で、本発明者らが、雄型部品の端部と雌型部品の盲孔の底部との間に位置するチャンバに対応する非圧縮性空間が残存し得ることを観察したため有利である。
【0061】
次に、このチャンバの存在は、完全に緊密な嵌合に達するのを防止する作用を有し得る。従って、雄型部品の貫通ダクトは、クリンプ中に全ての空気を外に出すことを可能にし、該雄型部品の一部が、雌型部品の盲孔の底部に対する機械的当接を達成することができる。最後に、ダクトの存在により、雄型部品の雌型部品の中への挿入の移動をより正確に調整することが可能となり、従って、クリンプ後のこれらの部品間のクリアランスが最小化される。これは、耐えなければならないクリンプ力をよりよく制御する効果、及び2つの部品間で得られる緊密な嵌合の質を改善する効果を有する。
【0062】
貫通ダクトは、有利に、雄型部品の中心テーパ孔に続けて形成することができる。このダクトは、この雄型部品を機械加工するときに1〜2mmの直径で穿孔することによって形成することができる。
【0063】
別の実施態様によると、雄型部品は、銅系合金、好ましくは、CuA1電解銅又はニッケルメッキ銅から形成される。
【0064】
ニッケルメッキ銅は、従来の銅負極端子について定義されたものと同じ化学的性質であるという利点を有し、これにより、たとえ二次電池の電気化学が従来の電気化学と異なっているとしても、使用者に対する同じインターフェイスを維持することができるであろう。
【0065】
本発明は、さらに別の態様によると、上記のようなフィードスルーが貫通して形成されているカバーを有するハウジングを備える金属イオン二次電池又はバッテリにも関する。
【0066】
一特徴によると、雄型部品は、雌ねじ部品であり、かつハウジングの外部に突き出ている。
【0067】
カバーは、1050又は3003アルミニウムなどのアルミニウムから形成することができる。
【0068】
有利な一構成によると、フィードスルーの雌型部品は、アルミニウム系集電体に溶接され、該集電体自体は、好ましくはチタン酸リチウム酸化物Li4TiO5O12などのチタン酸塩系材料、シリコン系材料、又はナトリウム系材料から選択される、金属イオン挿入活物質を支持するアルミニウム系電極箔に溶接されている。
【0069】
最後に、本発明は、上記のようなフィードスルーを製造するための方法に関し、該方法では:
(a)ワッシャのガイド部のうちの1つを、壁の2つの相反する面のそれぞれから開口部に挿入して、該ガイド部が該壁の該開口部の縁を支持するようにする工程;
(b)アルミニウム雌型部品を該壁の一方の面から一方の該ワッシャに挿入する工程;
(c)雄型部品を該壁の反対の面から圧入して、該雄型部品の一部が該雌型部品の盲孔の底部に当接し、かつ該雄型部品及び該雌型部品の支持部のそれぞれが、該開口部の該縁に案内される該ワッシャの支持部に当接してこれらを支持するようにする工程を行う。
【0070】
工程(c)で得られる圧力を用いた支持を可能にする圧入動作を、特に6mmのオーダーの雌型部品の盲孔の内径では、雄型部品の一部と該雌型部品の盲孔との間にN9p7型嵌合が得られるように、1重量トン以上の力で押圧することによって有利に行う。
【0071】
(詳細な説明)
本発明の他の利点及び特徴は、添付の図面を参照して、非限定的な例示によって示される本発明の実施の例の詳細な説明を読めばより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1図1は、先行技術の一例による、Liイオン二次電池の端子を形成するフィードスルーの軸方向断面図である。
図2図2は、先行技術の別の例による、Liイオン二次電池の端子を形成するフィードスルーの軸方向断面図である。
図3図3は、先行技術のさらに別の例による、Liイオン二次電池の端子を形成するフィードスルーの軸方向断面斜視図である。
図4図4は、図3の軸方向断面図である。
図5図5は、図3及び図4によるフィードスルーが負極端子として形成され、一方、正極端子がLiイオン二次電池のカバーに直接溶接されている、先行技術による該カバーの軸方向断面図である。
図6図6は、本発明の第1の例による金属イオン二次電池の端子を形成するフィードスルーの軸方向断面図である。
図7図7は、図6によるフィードスルーが負極端子として形成され、一方、正極端子が金属イオン二次電池のカバーに直接溶接されている、本発明による該カバーの軸方向断面図である。
図8図8は、雄型部品が5754アルミニウムから形成され、雌型部品が1050アルミニウムから形成されている、図6による本発明に従ったフィードスルーの断面の写真複製である。
図9図9は、雄型部品がCuA1銅から形成され、雌型部品が1050アルミニウムから形成されている、図6による本発明に従ったフィードスルーの断面の写真複製である。
図10図10は、本発明の第2の例による金属イオン二次電池の端子を形成するフィードスルーの軸方向断面図である。
図11図11は、図10による端子の雄型部品の軸方向断面図である。
図12図12は、雄型部品がCuA1銅から形成され、雌型部品が1050アルミニウムから形成されている、図6による本発明に従ったフィードスルーの断面の写真複製である。
図13図13は、雄型部品がCuA1銅から形成され、雌型部品が1050アルミニウムから形成されている、図10による本発明に従ったフィードスルーの断面の写真複製である。
図14A-14B】図14A及び図14Bはそれぞれ、金属イオン二次電池のハウジングに取り付けられるようになっているカバーの円形部分の上面図及び底面図であり、該カバーには、一方の極の出力端子として、本発明による密封フィードスルーが組み込まれている。
図15図15は、円筒形金属イオン二次電池のハウジングの斜視図であり、本発明による端子を形成するフィードスルーがカバーを貫通して形成されている。
図16図16は、角柱形金属イオン二次電池のハウジングの斜視図であり、本発明による端子を形成するフィードスルーがカバーを貫通して形成されている。
【発明を実施するための形態】
【0073】
図1図5は、先行技術によるLiイオン二次電池の端子を形成するフィードスルーの3つの異なる例に関連する。これらの図1図5は、既に序文で議論したため、以下にさらなる議論はしない。
【0074】
明確にするために、先行技術及び本発明によるフィードスルーの同じ要素を示す同じ参照符号を図1図16の全てで使用する。
【0075】
本出願を通じて、用語「下側」、「上側」、「下方」、「上方」、「底部」、及び「上部」は、そのカバーが上にきて、フィードスルーがハウジングから上方に突出した状態に垂直に配置された金属イオン二次電池のハウジングに対してのものであることを理解されたい。
【0076】
図6は、本発明による、金属イオン二次電池の端子1を形成するフィードスルーの第1の例を示す。
【0077】
本発明によるフィードスルー1は、序文で詳細に説明され、図4に示されている先行技術によるフィードスルーの全ての構成要素を使用し、以下の特徴が追加される:
・雌型部品8が、グレード1050のアルミニウムから形成されている;
・雄型部品7の突出部71と雌型部品8の盲孔81との間に緊密な嵌合が形成される。
【0078】
従って、雌型部品8のベースは中実であり、これにより、クリンプ圧力の効果によって端子の機械的強度を高めるだけではなく、挿入活物質及び電解質である二次電池の電気化学反応を行う材料と雄型部品7との間のあらゆる直接的な物理的接触を排除することも可能となる。
【0079】
本発明者らは、本発明による端子の雌型部品8のベースの厚みEを増加させることによって様々なクリンプ試験を行った。
【0080】
本発明者らは、N9P7型の緊密な嵌合、すなわち6mm+5μm/+30μmに等しい直径を有する雄型部品の部分71、及び6mm−25μm/0μmのオーダーの内径Dを有する雌型部品の盲孔81では、2mm以上の値を有する厚みEにより、フィードスルー1が、部品7、8が機械的に変形することなく、生じるクリンプ力、典型的には1.5トンのオーダーのクリンプ力に耐えることを可能にすることを観察できた。
【0081】
当然のことながら、内径Dが大きければ大きいほど、クリンプ力を大きくしなければならないため、雌型部品のベースの厚みEの値は、この直径と共に増加する。
【0082】
クリンプ後の、雄型部品7と雌型部品8との間の強い機械的連結を保証するための別の重要な特徴は、該雄型部品7の部分71が緊密に嵌合する該雌型部品8の盲孔81の部分の高さHである。
【0083】
従って、本発明者らはまた、高さHの値を盲孔81の内径Dの値と共に増加させることによって、圧入動作で加えられる様々な力による圧力下で様々な試験も行った。
【0084】
これらの試験の条件及び結果を以下の表に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
本発明に従った第1の例によるフィードスルーを製造するために以下の工程を行う。
【0087】
カバー3の2つの面30、31のそれぞれから、ワッシャ5A、5Bのガイド部51A、51Bのうちの1つを開口部32に挿入して、該ガイド部が該開口部32の縁を支持するようにする。
【0088】
雌型部品8を、カバー3の下面31から下部ワッシャ5Bの中に挿入する。
【0089】
雄型部品7を、カバー3の下面31の反対側の上面30から圧入する。この圧入動作により、雄型部品7の突出部71が雌型部品8の盲孔81に緊密に嵌合することが可能となり、該雄型部品7及び該雌型部品8の支持部70、80のそれぞれが、それ自体が開口部32の縁によって案内されるワッシャ5A、5Bの支持部50A、50Bに当接してこれらを表面で支持する。
【0090】
本発明の第1の例によるフィードスルーの断面図を作成した。図8は、雄型部品7がグレード5754のアルミニウムから形成され、雌型部品8がグレード1050のアルミニウムから形成されている断面の写真複製であり、図9は、雄型部品7がCuA1銅から形成され、雌型部品8がグレード1050のアルミニウムから形成されているフィードスルーを示す。
【0091】
これらの断面から分かるように、雄型部品7の部分71の端部と雌型部品8の盲孔81の底部82との間に位置するチャンバに対応する非圧縮性空間Vが残存している。
【0092】
完全に緊密な嵌合に達するのを防止し得る作用があるこのチャンバを除去するために、本発明者らは、雄型部品7のテーパ部72に続けて追加の貫通ダクト73を穿孔することによってフィードスルー1を形成した。従って、図10及び図11に概略的に示されているこのダクト73は、雄型部品7を雌型部品8にクリンプするときに空気を逃がすことを可能にする。
【0093】
追加の貫通ダクト73の有効性を検証するために断面図を作成した:この断面図は図13に示されており、図13では、雄型部品7の部分71の下端と盲孔81の底部82との間のクリアランスが最大限減少しているのがよく分かり、これにより、耐えなければならないクリンプ力をよりよく制御することができ、従って、2つの部品7、8間で得られる緊密な嵌合の質が改善される。
【0094】
比較として本発明の第1の例による、すなわちダクト73が存在しない、同一の部品7、8を備えるフィードスルー1に対して、同じクリンプ条件を設けた:このフィードスルー1を図12に示す。ここでもまた、非圧縮性空間Vの存在が認められる。
【0095】
本発明によるフィードスルー1は、円筒形(図14A図14B図15)及び角柱形(図16)の両方の金属イオン二次電池のハウジング10のカバー3に形成することができる。これらの様々な構成では、本発明による端子1は、例えば負極であり、陽極端子11を、例えば、カバー3に溶接することによって直接形成することができる。
【0096】
上では明記しなかったが、雌型部品8の中実ベースの面積は十分であり、ハウジング内部の相互接続を電気的に接続し、かつ該ベース自体を1つ以上の電気化学セルからなる電気化学バンドルに電気的に接続できることが保証される。アルミニウム系内部相互接続とアルミニウム雌型部品8の中実ベースとの間の電気接続を溶接によって達成することができる。
【0097】
本発明は、上述の例に限定されるものではなく;特に、例示した例の特徴は、例示していない変更形態で組み合わせることができる。
【0098】
特段の記載がない限り、表現「1つ(a又はan)の〜を含む」は、「少なくとも1つの〜を含む」と同義であると解釈するべきである。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
2つの相反する面(30、31)を有する壁(3)の両側で開口した開口部(32)を貫通して形成された、金属イオン電気化学二次電池用の端子を形成するフィードスルー(1)であって:
導電性雄型部品(7);及び
アルミニウム系合金から形成された雌型部品(8)を備え、該雄型部品(7)の一部(71)が該雌型部品(8)の盲孔(81)に緊密に嵌合する、前記フィードスルー(1)。
(構成2)
2つの電気絶縁ワッシャ(5A、5B)を備え、それぞれが、前記壁の面の1つ(30、31)を表面で支持する支持部(50A、50B)、及び該支持部から突出して、前記開口部(32)の縁に接触するガイド部(51A、51B)を備え、
該フィードスルーにおいて、前記導電性雄型部品及び雌型部品のそれぞれが、前記ワッシャの支持部(50A、50B)を表面で支持する支持部(70、80)を備える、構成1記載のフィードスルー。
(構成3)
前記雄型部品(7)が、前記雌型部品のアルミニウム系合金とは異なるアルミニウム系合金から形成される、構成1又は2記載のフィードスルー(1)。
(構成4)
前記雄型部品のアルミニウム合金が、H18の調質度を有するグレード5754、6060、及び3003合金から選択され、前記雌型部品のアルミニウム合金が、グレード1050の合金である、構成3記載のフィードスルー(1)。
(構成5)
前記雄型部品が、銅系合金、好ましくは、CuA1電解銅又はニッケルメッキ銅から形成される、構成1又は2記載のフィードスルー(1)。
(構成6)
特に6mmのオーダーの前記盲孔(81)の内径では、前記雌型部品(7)の一部(71)の前記雌型部品(8)の盲孔(81)への緊密な嵌合がN9p7型嵌合である、構成1〜5のいずれか一項記載のフィードスルー。
(構成7)
前記部品の1つ以上の材料及び該部品の断面の寸法が、最大で少なくとも100Aに等しい値の電流が通過するのを可能にするのに適している、構成1〜6のいずれか一項記載のフィードスルー(1)。
(構成8)
前記雄型部品の一部が、該雄型部品を前記雌型部品にクランプするときに空気を逃がすことができるように、前記二次電池の外部及び該雌型部品の盲孔への底部の両方で開口している少なくとも1つのダクト(72)を備える、構成1〜7のいずれか一項記載のフィードスルー(1)。
(構成9)
前記盲孔(81)の底部(82)と前記雌型部品(8)のベースとの間で測定される該雌型部品の厚みが、6mmのオーダーの該盲孔の内径では、2mm以上である、構成1〜8のいずれか一項記載のフィードスルー(1)。
(構成10)
カバー(3)を有するハウジング(10)であって、構成1〜9のいずれか一項記載のフィードスルー(1)がカバー(3)を貫通して形成されているハウジング(10)を備える、金属イオン二次電池又はバッテリ。
(構成11)
前記雄型部品(7)が、雌ねじ部品であり、前記ハウジング(10)の外部に突き出ている、構成10記載の金属イオン二次電池又はバッテリ。
(構成12)
前記カバーが、1050又は3003アルミニウムなどのアルミニウムから形成されている、構成10又は11記載の金属イオン二次電池又はバッテリ。
(構成13)
前記フィードスルーの雌型部品が、アルミニウム系集電体に溶接され、該集電体自体が、好ましくはチタン酸リチウム酸化物Li4TiO5O12などのチタン酸塩系材料、シリコン系材料、又はナトリウム系材料から選択される、金属イオン挿入活物質を支持するアルミニウム系電極箔に溶接されている、構成10〜12のいずれか一項記載のLiイオン二次電池又はバッテリ。
(構成14)
構成2〜9のいずれか一項記載のフィードスルーを製造するための方法であって:
(a)前記ワッシャ(5A、5B)のガイド部(51A、51B)のうちの1つを、前記壁(3)の2つの相反する面(30、31)のそれぞれから前記開口部(32)に挿入して、該ガイド部(51A、51B)が該壁の該開口部(32)の縁を支持するようにする工程;
(b)前記アルミニウム雌型部品(8)を該壁の一方の面(31)から一方の該ワッシャ(5B)に挿入する工程;
(c)前記雄型部品(7)を該壁の反対の面(30)から圧入して、該雄型部品(7)の一部(71)が該雌型部品(8)の盲孔(81)の底部(82)に当接し、かつ該雄型部品及び該雌型部品の支持部(70、80)のそれぞれが、該開口部の縁に案内される該ワッシャの支持部(50A、50B)を表面で支持するようにする工程を行う、前記方法。
(構成15)
工程(c)での前記圧入動作を、特に6mmのオーダーの前記雌型部品(8)の盲孔(81)の内径では、前記雄型部品(7)の一部(71)と該雌型部品の盲孔との間にN9p7型嵌合が得られるように、1重量トン以上の力で押圧することによって行う、構成14記載の方法。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16