特許第6948401号(P6948401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6948401HCV NS5Bポリメラーゼ阻害剤のプロドラッグならびにその生産および使用のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948401
(24)【登録日】2021年9月22日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】HCV NS5Bポリメラーゼ阻害剤のプロドラッグならびにその生産および使用のための方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/10 20060101AFI20210930BHJP
   A61K 31/7072 20060101ALI20210930BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20210930BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   C07H19/10CSP
   A61K31/7072
   A61P31/14
   A61P1/16
【請求項の数】8
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2019-547276(P2019-547276)
(86)(22)【出願日】2017年4月7日
(65)【公表番号】特表2020-509029(P2020-509029A)
(43)【公表日】2020年3月26日
(86)【国際出願番号】RU2017000210
(87)【国際公開番号】WO2018160089
(87)【国際公開日】20180907
【審査請求日】2020年3月24日
(31)【優先権主張番号】2017106609
(32)【優先日】2017年2月28日
(33)【優先権主張国】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】509276582
【氏名又は名称】アラ・ケム・エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】513016895
【氏名又は名称】アレクサンドル・バシリエビッチ・イワシェンコ
(73)【特許権者】
【識別番号】509277338
【氏名又は名称】アンドレイ・アレクサンドロビッチ・イワシェンコ
(73)【特許権者】
【識別番号】519311293
【氏名又は名称】イワシェンコ,アレナ・アレクサンドロブナ
(73)【特許権者】
【識別番号】513016909
【氏名又は名称】ニコライ・フィリッポビッチ・サブチュク
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・バシリエビッチ・イワシェンコ
(72)【発明者】
【氏名】ミトキン,オレグ・ドミトリエビッチ
【審査官】 小堀 麻子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−532747(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0143835(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/033617(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0057866(US,A1)
【文献】 J. Med. Chem.,2010年,Vol.53,pp.7202-7218
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 19/00
A61K 31/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式1のシクロブチル(S)−2−{[(2R,3R,4R,5R)−5−(2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ピリミジン−1−イル)−4−フルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロフラン−2−イルメトキシ]−フェノキシ−ホスホリルアミノ}プロパノエート、その立体異性体。
【化1】
【請求項2】
式1.1のシクロブチル(S)−2−{(S)−[(2R,3R,4R,5R)−5−(3,4−ジヒドロ−2,4−ジオキソ−2H−ピリミジン−1−イル)−3−ヒドロキシ−4−メチル−4−フルオロ−テトラヒドロフラン−2−イルメトキシ]−フェノキシ−ホスホリルアミノ}プロパノエート
または
式1.2のシクロブチル(S)−2−{(R)−[(2R,3R,4R,5R)−5−(3,4−ジヒドロ−2,4−ジオキソ−2H−ピリミジン−1−イル)−3−ヒドロキシ−4−メチル−4−フルオロ−テトラヒドロフラン−2−イルメトキシ]−フェノキシ−ホスホリルアミノ}プロパノエー
ある、請求項1に記載の化合物。
【化2】
【請求項3】
結晶形態または多結晶形態である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
結晶形態または多結晶形態である、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
HCV NS5Bポリメラーゼ阻害剤の特性を有する医療用薬物であり、それを必要とするヒトまたは温血動物におけるC型肝炎の処置を意図した請求項1に記載の化合物である、上記医薬用薬物。
【請求項6】
請求項1または2に記載の化合物の生産のための方法であって、式2のシクロブチル(S)−2−(ペンタフルオロフェニルオキシ−フェノキシ−ホスホリルアミノ)プロピオン酸塩、またはその立体異性体:式2.1のシクロブチル(S)−2−((S)−ペンタフルオロフェニルオキシ−フェノキシ−ホスホリルアミノ)プロピオン酸塩または式2.2のシクロブチル(S)−2−((R)−ペンタフルオロフェニルオキシ−フェノキシ−ホスホリルアミノ)プロピオン酸塩の使用を含む、上記方法。
【化3】
【請求項7】
治療有効量の請求項1に記載の化合物および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項8】
C型肝炎ウイルスの処置のための、請求項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス性およびがん疾患の処置のための化学療法剤およびその適用に関する。これらの化合物は、HCV NS5Bポリメラーゼ阻害剤のプロドラッグであり、哺乳動物におけるC型肝炎を処置することが意図される。
【背景技術】
【0002】
HCVによって引き起こされるC型肝炎は、世界で最も広く蔓延している肝疾患の1つである。世界保健機関(WHO)の年報によれば、1億3000万から1億5000万を超える人がHCVに感染しており、70万を超える個体がHCVのために死亡している[WHO. Hepatitis C.WHOファクトシート第164号、2016年7月アップデート、http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs164/en/]。HCVは、高い遺伝学的多様性を実証しており、(gT)HCV遺伝子型が地域によって多様であることを特徴とする。遺伝子型1(gT1)は、世界中で最も一般的である(8340万の人、または全HCV感染者の46.2%;彼らの約3分の1は東アジア圏である)。遺伝子型3(gT3)は、2番目に一般的な遺伝子型である。世界的に、5430万の人(30.1%)がgT3に感染している。遺伝子型2、4、および6は、全HCV感染者の22.8%を占め、一方で遺伝子型5(gT5)は<1%を占める。大部分の国々において、経済状態に関係なく遺伝子型1および3が優勢であるが、遺伝子型4および5は、低所得者層で最も多く出現する[Messina, J. P.ら、Global Distribution and Prevalence of Hepatitis C Virus Genotypes. Hepatology 2015、61(1)、77〜87]。
【0003】
近年成し遂げられたC型肝炎の療法における顕著な進歩は、主として、HCV NS5B阻害剤のヌクレオシドプロドラッグであり、プロドラッグPSI−7851のSp異性体であるソホスブビル(ソバルディ(Sovaldi)(登録商標)、PSI−7977、GS−7977)の発見に関連する[Sofia, M.J.ら、Discovery of a β-D-20-Deoxy-20-rfluoro-20-β-C-methyluridine Sovaldi Nucleotide Prodrug (PSI-7977) for the Treatment of Hepatitis C Virus.J.Med.Chem. 2010、53、7202〜7218、Sofia, M.J.ら、Nucleoside phosphoramidate prodrugs.、米国特許第7964580号(2011)、米国特許第8334270号(2012)。ロシア国特許第2478104号(2013)]。
【0004】
【化1】
【0005】
ソバルディ(登録商標)は、HCV NS5A阻害剤などとのC型肝炎の併用療法において現在広く適用されている。ソバルディ(登録商標)は、様々なHCV遺伝子型(gT)に感染したC型肝炎患者の併用療法に関するFDAおよびECの規制機関によって承認された最初のヌクレオチドとなっている。臨床研究において、6種のHCV遺伝子型(gT1〜gT6)に対する高い効力が示されている[I.M.Jacobsonら、Sofosbuvir for hepatitis C genotype 2 or 3 in patients without treatment options. Engl.J.Med. 2013、368、1867〜1877、E.Lewirzら、Sofosbuvir for previously untreated chronic hepatitis C infection. Engl.J.Med. 2013、368、1878〜1887]。
【0006】
PSI−7851ならびにその立体異性体PSI−7976およびPSI−7977は、三リン酸塩PSI−7409に代謝され、これは、実際には、HCV NS5Bポリメラーゼ阻害剤である[E.Murakamiら、Mechanism of activation of PSI-7851 and its diastereoisomer PSI-7977. J.Biol.Chem. 2010、285(45)、34337〜34347]。
【0007】
【化2】
【0008】
他にも公知のソバルディ(登録商標)類似体があり[米国特許第8334270号(2012)、M.J.Sofiaら、Discovery of a β-D-20-Deoxy-20-r-fluoro-20-β-C-methyluridine Nucleotide Prodrug (PSI-7977) for the Treatment of Hepatitis C Virus. J.Med. Chem. 2010、53、7202〜7218]、例えば、式A1のシクロヘキシル(S)−2−{[(2R,3R,4R,5R)−5−(2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ピリミジン−1−イル)−4−フルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロフラン−2−イルメトキシ]−フェノキシ−ホスホリルアミノ}−プロピオン酸塩、例えばPSI−7851ならびにそのリン含有立体異性体PSI−7976およびPSI−7977(ソバルディ(登録商標))などであり、これらは、三リン酸塩PSI−7409に代謝される。
【0009】
【化3】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7964580号
【特許文献2】米国特許第8334270号
【特許文献3】ロシア国特許第2478104号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】WHO. Hepatitis C.WHOファクトシート第164号、2016年7月アップデート、http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs164/en/
【非特許文献2】Messina, J. P.ら、Global Distribution and Prevalence of Hepatitis C Virus Genotypes. Hepatology 2015、61(1)、77〜87
【非特許文献3】Sofia, M.J.ら、Discovery of a β-D-20-Deoxy-20-rfluoro-20-β-C-methyluridine Sovaldi Nucleotide Prodrug (PSI-7977) for the Treatment of Hepatitis C Virus. J.Med.Chem. 2010、53、7202〜7218
【非特許文献4】Sofia, M.J.ら、Nucleoside phosphoramidate prodrugs.
【非特許文献5】I.M.Jacobsonら、Sofosbuvir for hepatitis C genotype 2 or 3 in patients without treatment options. Engl.J.Med. 2013、368、1867〜1877
【非特許文献6】E.Lewirzら、Sofosbuvir for previously untreated chronic hepatitis C infection. Engl.J.Med. 2013、368、1878〜1887
【非特許文献7】E.Murakamiら、Mechanism of activation of PSI-7851 and its diastereoisomer PSI-7977. J.Biol.Chem. 2010、285(45)、34337〜34347
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、C型肝炎療法における近年の進歩にもかかわらず、改善された特徴を有する新規のHCV NS5B阻害剤のプロドラッグの探求がいまだ主要な課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者らは、驚くべきことに、これまでに未知の一般式1の化合物および式1.1(Sp立体異性体)または1.2(Rp立体異性体)のそのリン含有立体異性体が、とりわけC型肝炎の処置に使用され得るHCV NS5Bポリメラーゼ阻害剤の有力なプロドラッグおよび有望な抗ウイルス剤であることを見出した。
【0014】
【化4】
【0015】
以下に、本発明を説明するのに使用される様々な用語の定義を列挙する。これらの定義は、特定の例において別段の限定がない限り、その用語が本明細書と特許請求の範囲にわたり使用されるときに、個々に、またはより大きい群の一部としてのいずれかでそれに適用される。
【0016】
用語「結晶形態」は、結晶格子が形成されるように分子が配列されている物質構造を指す。
用語「多結晶形態」は、特定の結晶形態の複数の小さい単結晶または晶子からなる多結晶性の構造を指す。
【0017】
用語「活性成分」(医薬物質)は、薬理活性を示す合成または他の(生物工学的な、植物性、動物性、細菌などの)起源の生理学的に活性な化合物を指し、医薬組成物の活性成分である。
【0018】
用語「医療用薬物」は、ヒトおよび動物における生理学的機能の回復、改善または改変、ならびに疾患の処置および予防、診断、麻酔、避妊、美容術などを意図した、錠剤、カプセル剤、注射剤、軟膏剤、または他の完成した剤形の形態の化合物(または医薬組成物を形成する化合物の混合物)を指す。
【0019】
用語「治療用カクテル」は、薬理学的作用の異なるメカニズムを示し、疾患の病因に関与する様々なバイオターゲットを標的化する、同時に投与される2種またはそれより多くの医療用薬物の組合せを指す。
【0020】
用語「医薬組成物」は、式1の化合物と、医薬的に許容され、薬理学的に適合性を有する、増量剤、溶媒、希釈剤、担体、助剤、分散剤、および知覚剤、賦形剤、送達のための物質、例えば保存剤、安定剤、増量剤、崩壊薬、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、増粘剤、甘味料、矯味矯臭剤、芳香剤、抗菌剤、殺真菌剤、潤滑剤、および持続性の送達制御物質からなる群から選択される成分の少なくとも1つとを含む組成物を指し、これらの選択および比率は、投与の性質および経路ならびに投薬量によって決まる。好適な懸濁化剤の例は、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレン、ソルビトールおよびソルビトールエーテル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにそれらの混合物である。微生物からの保護は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、ソルビン酸などを使用して提供することができる。前記組成物はまた、糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含んでいてもよい。組成物の持続的な作用は、活性成分の吸収を遅らせる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを使用して達成することができる。好適な担体、溶媒、希釈剤および送達のための物質の例としては、注射の場合、水、エタノール、多価アルコールおよびそれらの混合物、天然油(例えばオリーブ油)、ならびに有機エステル(例えばオレイン酸エチル)が挙げられる。増量剤の例は、ラクトース、乳糖、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどである。崩壊薬および分散剤の例は、デンプン、アルギン酸およびその塩、ならびにケイ酸塩である。潤滑剤の例は、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、および高分子量のポリエチレングリコールである。活性成分の経口、舌下、経皮、筋肉内、静脈内、皮下、および局所または直腸内投与のための医薬組成物は、単独で、または別の活性化合物と組み合わせて、標準的な投与形態で、従来の医薬用担体との混合物として動物やヒトに投与することができる。好適な標準的な投与形態としては、経口の形態、例えば、錠剤、ゼラチンカプセル剤、丸剤、粉末剤、顆粒剤、チューインガム、および経口溶液または懸濁液;舌下およびバッカル経由の投与形態;エアロゾル;インプラント;局所、経皮、皮下、筋肉内、静脈内、鼻腔内、または眼球内の形態;ならびに直腸内投与形態が挙げられる。
【0021】
用語「不活性増量剤」は、本明細書で使用される場合、医薬組成物を形成するために使用され、概して安全で非毒性であり、生物学的にもそれ以外の観点からも有害ではない化合物を指し、獣医学的な使用やヒトの医薬における使用にとって許容できる賦形剤を含む。本発明の化合物は、個別に投与することもできるが、一般的に、予期される薬物の投与経路および標準的な製薬上の実施に応じて選択された1つまたはそれより多くの医薬的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体との混合物として投与される。
【0022】
用語「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、対象におけるの疾患の症状を軽減するのに必要な物質、プロドラッグ、または薬物の量を指す。物質、プロドラッグ、または薬物の用量は、それぞれの特定のケースにおいて個々の要求を満たすものと予想される。前記用量は、処置しようとする疾患の重症度、患者の年齢および全体の状態、患者の処置に使用される他の医薬、投与の様式および経路、ならびに担当医師の経験のような多数の要因に応じて広範に変更することができる。経口投与の場合、1日用量は、単独療法および/または併用療法の両方において、その間の全ての値を含め約0.01〜10gである。好ましい1日用量は、約0.1〜7gである。一般的に、ウイルスを低減するかまたはなくすために、処置の開始時にはより多くの負荷用量を与え、続いて用量を、感染バーストを防ぐのに十分な程度のレベルに低減する。
【0023】
用語「対象」は、これらに限定されないが、ウシ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、シチメンチョウ、スイギュウ、ラマ、ダチョウ、イヌ、ネコ、およびヒトなどの哺乳動物を指し、最も好ましくは、ヒト対象である。対象の処置は、一般式1のいずれかのプロドラッグ、その立体異性体、同位体で濃縮された類似体、医薬的に許容される塩、水和物、溶媒和物、および結晶形態もしくは多結晶形態、またはそれらとHCV NS5A阻害剤などの別の化合物との組合せの使用を含み得ることが想定される。
【0024】
本発明の主題は、一般式1のシクロブチル(S)−2−{[(2R,3R,4R,5R)−5−(2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ピリミジン−1−イル)−4−フルオロ−3−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロフラン−2−イルメトキシ]−フェノキシ−ホスホリルアミノ}−プロパノエート、そのリン含有立体異性体(式1.1のSp立体異性体または式1.2のRp立体異性体)、それらの同位体で濃縮された類似体、または結晶形態もしくは多結晶形態である。
【0025】
本発明の主題は、それを必要とするヒトまたは温血動物におけるC型肝炎の処置のための医薬用薬物としての、一般式1のHCV NS5Bポリメラーゼ阻害剤のプロドラッグ、そのリン含有立体異性体(式1.1のSp立体異性体または式1.2のRp立体異性体)、それらの同位体で濃縮された類似体、または結晶形態もしくは多結晶形態である。
【0026】
好ましいプロドラッグは、シクロブチル(S)−2−{(S)−[(2R,3R,4R,5R)−5−(3,4−ジヒドロ−2,4−ジオキソ−2H−ピリミジン−1−イル)−3−ヒドロキシ−4−メチル−4−フルオロ−テトラヒドロフラン−2−イルメトキシ]−フェノキシ−ホスホリルアミノ}−プロパノエート(1.1)、その同位体で濃縮された類似体、または結晶形態もしくは多結晶形態である。
【0027】
驚くべきことに、新規の一般式1のプロドラッグ、そのリン含有立体異性体、それらの同位体で濃縮された類似体、ならびに結晶形態および多結晶形態は、公知のHCV NS5B阻害剤のプロドラッグより有効な、特定には、ソバルディ(Sovaldi)(登録商標)および式A1のシクロヘキシルエステルより有効な、HCV NS5B阻害剤のプロドラッグのようであった。
【0028】
実際に、ソバルディ(登録商標)は、HCV遺伝子型1b(gT1b)に対して、EC50=0.045〜0.170μM[http://www.hcvdruginfo.ca/downloads/HCV_Sofosbuvir.pdf]およびEC90=0.59μMを有するが、新規の式1.1のプロドラッグは、EC50=15.0〜27.0nMおよびEC90=128.0nM(表1а)を有し、これは、新規の式1.1のプロドラッグは、ソバルディ(登録商標)より3倍高活性であることを意味する。ヒト肝臓ミクロソームS9画分における式1.1のプロドラッグの半減期は、T1/2hS9=0.05時間であるが、ソバルディ(登録商標)は、T1/2hS9=0.54時間を有し(表2)、これは、ヒト肝臓ミクロソームS9画分における新規の式1.1のプロドラッグの代謝率は、ソバルディ(登録商標)の代謝率より11倍速いことを意味する。加えて、式1.1のプロドラッグの代謝プロセスにより生じるラット肝臓における三リン酸塩PSI−7409の濃度およびAUC24hは、それぞれCmax=3224.0ng/gおよびAUC24h=30487.0ng・時間/gであるが、ソバルディの類似の代謝は、Cmax=1934.0ng/gおよびAUC24h=16796.0ng・時間/gをもたらす(表3)。これは、新規の式1.1のプロドラッグは、ほぼ2倍高い有効性で、肝臓で必要な三リン酸塩PSI−7409(薬物)に代謝されるという事実を証明する。
【0029】
新規の式1.1のプロドラッグは、以下のパラメーター:EC90=250.0nM、T1/2hS9=1.4時間、Cmax=557ng/gおよびAUC24h=6484.0ng・時間/gを有することが公知であることから[M. J. Sofiaら、J.Med.Chem. 2010、53、7202〜7218]、前記プロドラッグは、公知の式A1のシクロヘキシルエステルと比較して、よりいっそう大きい有効性を有する。
【0030】
得られた結果(作用)は、式1.1のプロドラッグが、シクロブチルエステルであり、その類似体である式A1のシクロヘキシルエステルほど有効ではないが、前述の驚くべき作用をよりよく例示するために発明者らによって特別に調製された別の類似体である式A2のシクロプロピルエステルより高い活性を有することから(EC90=73.0nM、EC90=410.0nM、表1aを参照)驚くものである。
【0031】
【化5】
【0032】
驚いたことに、一連のシクロアルキルエステルにおいて、最も有効なものは、中程度のサイズのシクロアルキルとの式1.1のシクロブチルエステルのようであったが、より大きいサイズのシクロアルキル(公知の式A1のシクロヘキシルエステル)や、より小さいサイズのシクロアルキル(発明者らによって特別に調製された式A.2のシクロプロピルエステル)とのエステルは、有効性がより低いようであった。
【0033】
上記のデータは、本発明の新規性およびレベル(有効性)の説得力のある証拠である。
本発明の主題は、HCV NS5Bポリメラーゼ阻害剤の特性を有する医薬用薬物であった、それを必要とするヒトまたは温血動物におけるC型肝炎の処置を意図した治療有効量での、一般式1の化合物、その立体異性体、同位体で濃縮された類似体、または結晶形態もしくは多結晶形態である、上記医薬用薬物である。
【0034】
本発明の主題は、一般式1のプロドラッグ、その立体異性体、同位体で濃縮された類似体、結晶形態または多結晶形態を、任意選択で医薬的に許容される増量剤、担体、添加剤、または希釈剤と組み合わせて含む、哺乳動物におけるC型肝炎ウイルスの処置のための治療有効量の医薬組成物である。
【0035】
前記一般式1のプロドラッグ、その立体異性体、同位体で濃縮された類似体、結晶形態または多結晶形態は、様々な経口剤形および担体で調製することができる。経口投与は、錠剤、フィルムコーティング錠剤、ハードおよびソフトゼラチンカプセル、液剤、乳剤、シロップ剤、または懸濁剤の形態で行うことができる。本発明の化合物は、坐剤の形態で投与すると効果的である。一般的に、最も便利な投与経路は、一般的な1日投薬レジメンを使用する経口経路であり、このようなレジメンは、疾患の重症度および患者の抗ウイルス薬または抗腫瘍薬反応に応じて調整することができる。
【0036】
1種またはそれより多くの一般的な賦形剤、担体、または希釈剤と組み合わせた、一般式1のプロドラッグ、その立体異性体、同位体で濃縮された類似体、または結晶形態もしくは多結晶形態は、医薬組成物およびその単位剤形の形態であってもよい。医薬組成物および標準的な剤形は、追加の活性化合物および剤形を共に含むまたは含まない、通常の比率での通常の成分からなっていてもよい。医薬組成物は、処方された1日用量に応じてあらゆる適切な有効量の活性成分を含んでいてもよい。医薬組成物は、経口投与の場合、固形の物質、例えば錠剤もしくは充填済みのカプセルの形態;半固体の粉末剤、持続放出剤、もしくは液剤、例えば懸濁剤、乳剤、もしくは充填済みカプセルの形態;または直腸または膣内投与の場合、坐剤の形態で使用することができる。典型的な薬物療法は、およそ5wt%〜95wt%の活性化合物または化合物を含むと予想される。用語「薬物療法」または「剤形」は、活性化合物の固体組成物と液体組成物の両方を包含することが意図され、したがって活性成分が、必要な用量および薬物動態パラメーターに応じて様々な薬物療法の形態で存在し得ることが当業者には明らかであると予想される。
【0037】
固体剤形としては、粉末剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、坐剤、および分散性の顆粒剤が挙げられる。固形担体は、希釈剤、矯味矯臭薬剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁化剤、結合剤、保存剤、崩壊剤、または封入材料として作用し得る1種またはそれより多くの物質を指す。粉末担体は、一般的に、微粒状の活性成分と混合された微粒状の固体である。錠剤において、活性成分は通常、必要な結合能力を有する担体と適切な比率で混合され、望ましい形状およびサイズに圧縮される。好適な担体としては、これらに限定されないが、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオバターなどが挙げられる。固体製剤は、活性成分に加えて、色素、矯味矯臭剤、安定剤、緩衝液、人工および天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含んでいてもよい。
【0038】
液体組成物も経口投与に好適である。液体剤形としては、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、および水性懸濁剤が挙げられる。これらは、使用直前に液状の薬物に変換されることになる固体薬物形態を含む。乳剤は、溶液中で、例えばプロピレングリコール水溶液中で調製してもよいし、またはこれらは、乳化剤、例えばレシチン、ソルビトールモノオレエート、またはアラビアゴムを含んでいてもよい。水性懸濁液は、延性材料、例えば天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および他の周知の懸濁化剤と共に、水中に微粒状の活性成分を分散させることによって調製することができる。
【0039】
一般式1のプロドラッグ、その立体異性体、同位体で濃縮された類似体、結晶形態または多結晶形態は、坐剤の形態での投与のために調製することができる。低融点ワックス、例えば脂肪酸のグリセリドの混合物またはカカオバターをまず溶融させ、次いで活性成分を、例えば撹拌によって均一に分散させる。溶融した均一な混合物を好適なサイズの型に流し込み、そのまま冷却し、凝固させる。
【0040】
一般式1のプロドラッグ、その立体異性体、同位体で濃縮された類似体、結晶形態または多結晶形態は、膣内投与のために調製することができる。活性成分に加えて当業界において周知の担体を含む、坐剤、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、発泡剤、またはスプレー剤を適用することが適切であると予想される。
【0041】
本発明の主題は、C型肝炎ウイルスの処置のための医薬用薬物の生産における、一般式1のプロドラッグ、その立体異性体、同位体で濃縮された類似体、結晶形態または多結晶形態の適用である。本明細書に記載されるいずれかのウイルス性疾患の処置のための前記医薬用薬物の生産で使用される一般式1のプロドラッグ、その立体異性体、同位体で濃縮された類似体、結晶形態または多結晶形態は、以下から選択される一般式1の化合物:
シクロブチル(S)−2−{[(2R,3R,4R,5R)−5−(3,4−ジヒドロ−2,4−ジオキソ−2H−ピリミジン−1−イル)−3−ヒドロキシ−4−メチル−4−フルオロ−テトラヒドロフラン−2−イルメトキシ]−フェノキシ−ホスホリルアミノ}−プロパノエート(1)、
シクロブチル(S)−2−{(S)−[(2R,3R,4R,5R)−5−(3,4−ジヒドロ−2,4−ジオキソ−2H−ピリミジン−1−イル)−3−ヒドロキシ−4−メチル−4−フルオロ−テトラヒドロフラン−2−イルメトキシ]−フェノキシ−ホスホリルアミノ}−プロパノエート(1.1)、
およびシクロブチル(S)−2−{(R)−[(2R,3R,4R,5R)−5−(3,4−ジヒドロ−2,4−ジオキソ−2H−ピリミジン−1−イル)−3−ヒドロキシ−4−メチル−4−フルオロ−テトラヒドロフラン−2−イルメトキシ]−フェノキシ−ホスホリルアミノ}−プロパノエート(1.2)、
それらの同位体で濃縮された類似体、または結晶形態もしくは多結晶形態
のいずれかのそれぞれ、または本発明のいくつかの他の化合物と組み合わせたものであり得ると想定される。
【0042】
本発明の主題は、それを必要とする対象におけるウイルス性およびがん疾患の併用処置および/または予防のための方法であって、治療有効量の一般式1のプロドラッグ、その立体異性体、同位体で濃縮された類似体、または結晶形態もしくは多結晶形態、および治療有効量のいくつかの他の抗ウイルス剤または抗がん剤を対象に投与することを含み、ここで薬剤は、同時または交互に投与される、上記方法である。連続した薬剤投与間の時間は、1〜24時間の範囲のあらゆる期間であってもよいことが理解される。
【0043】
「他の抗ウイルス剤」の例としては、これらに限定されないが、HCV NS3プロテアーゼ阻害剤[US20140296136、US8,987,195、US7973040、US2012214783]、HCV NS4阻害剤[EP1497282]、HCV NS3/NS4阻害剤[EP2364984]、およびHCV NS5A阻害剤[C. Wangら、Hepatitis C virus RNA elimination and development of resistance in replicon cells treated with BMS-790052. Antimicrob. Agents Chemother. 2012、56、1350〜1358. https://en.wikipedia.org/wiki/Daclatasvir;A.V. Ivachtchenkoら、Discovery of Novel Highly Potent Hepatitis C Virus NS5A Inhibitor(AV4025). J. Med. Chem. 2014、57、7716〜7730;米国特許出願第14/845,333号);Toll様受容体アゴニスト(WO2015023958、WO2012097012);および他の阻害剤(WO2014106019、WO2014033176、WO2014033170、WO2014033167、WO2013006394、US 20090163545]が挙げられる。
【0044】
より好ましくは、新規の一般式1のプロドラッグまたはその式1.1の立体異性体、同位体で濃縮された類似体、結晶形態または多結晶形態と共に、抗ウイルス性または抗がん性医薬用薬物を治療有効量でさらに含む抗ウイルス性医薬組成物である。
【0045】
より好ましくは、新規の一般式1のプロドラッグまたはその式1.1の立体異性体、同位体で濃縮された類似体、結晶形態もしくは多結晶形態と共に、以下の群から選択される治療有効量のHCV NS5A阻害剤をさらに含む、抗ウイルス性医薬組成物である:
ダクラタスビル(ダクルインザ、BMS790052)[Belema, M.ら、Discovery and Development of Hepatitis C Virus NS5A Replication Complex Inhibitors. J. Med. Chem. 2014、57、1643〜1672;Bachand, C.ら、Hepatitis C virus inhibitors.特許WO2008/021927、2008;Bachand, C.ら、Hepatitis c virus inhibitors.特許WO2008/021928、2008;Bachand, C.ら、Hepatitis C virus inhibitors.特許WO2008/021936、2008;http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/EPAR_Public_assessment report/human/003768/WC500172849.pdf.]
【0046】
【化6】
【0047】
ヘパビビル(Hepavivir)(AV−4025)[Ivachtchenko, A. V.ら、Discovery of Novel Highly Potent Hepatitis C Virus NS5A Inhibitor(AV4025). J. Med. Chem. 2014、57、7716〜7730;特許WO2012/074437、2012;米国特許第9428491号、2016]
【0048】
【化7】
【0049】
AV−4056およびAV−4058[US9428491]
【0050】
【化8】
【0051】
AV−4067およびAV−4084[米国特許出願第14/845,333号]
【0052】
【化9】
【0053】
オムビタスビル(ABT−267)[Gardelli, C.ら、Phosphoramidate Prodrugs of 20-C-Methylcytidine for Therapy of Hepatitis C Virus Infection. J. Med. Chem. 2014、57、2047〜2057;特許WO2010/144646、2010]
【0054】
【化10】
【0055】
エルバスビル(MK−8742)[Coburn, C. A.ら、ChemMedChem. 2013、8、1930〜1940;特許WO2012/040923、2012;特許WO2012/041014、2012]
【0056】
【化11】
【0057】
ベルパタスビル(VEL、GS−5816)[特許WO2015/110048、2015;http://www.accessdata.fda.gov/drugsatfdadocs/nda/2016/208341Orig1s000PharmR.pdf;http://www.gilead.com/~/media/files/pdfs/medicines/liver-disease/epclusa/epclusa_pi.pdf]
【0058】
【化12】
【0059】
ナルラプレビル(SCH900518)、HCV非構造タンパク質3(NS3)の阻害剤[Arasappan A.ら、Discovery of Narlaprevir (SCH 900518):A Potent, Second Generation HCV NS3 Serine Protease Inhibitor. ACS Med. Chem. Lett.、2010、1(2)、64〜69]
【0060】
【化13】
【0061】
およびシメプレビル(オリシオ(Olysio))、HCV非構造タンパク質NS3/NS4の阻害剤[https://www.tga.gov.au/sites/default/files/auspar-simeprevir-141027-pi.docx]。
【0062】
【化14】
【0063】
本発明の主題は、それを必要とする対象におけるウイルス性およびがん疾患の併用処置のための方法であって、治療有効量の一般式1のプロドラッグ、その立体異性体、同位体で濃縮された類似体、結晶形態もしくは多結晶形態、またはいくつかの他の抗ウイルス剤もしくは抗がん剤の連続または同時投与を含む、上記方法である。連続した薬剤投与間の時間は、あらゆる期間であってもよいことが理解される。
【0064】
他の抗ウイルス剤は、これらに限定されないが、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、ペグインターフェロンアルファ、リバビリン、レボビリン(levovirin)、ビラミジン(viramidine)、別のヌクレオシドHCVポリメラーゼ阻害剤、非ヌクレオシドHCVポリメラーゼ阻害剤、HCVプロテアーゼ阻害剤、HCVヘリカーゼ阻害剤またはHCV融合阻害剤、HBV DNAポリメラーゼ阻害剤、およびHIV1逆転写酵素(RT)阻害剤であると想定される。プロドラッグもしくは誘導体またはそれらの塩が別の抗ウイルス剤または抗がん剤と組み合わせて投与される場合、プロドラッグの元の活性より活性が増加する可能性がある。併用療法において、薬剤投与は、一般式1のプロドラッグと同時でもよいし、またはそれと連続していてもよい。したがって観念「同時の投与」は、本明細書で使用される場合、同時のまたは異なる時間での薬剤投与を意味する。2種またはそれより多くの薬剤の同時投与は、2種またはそれより多くの活性成分を含む1つの分取可能な形態を使用することによって、または1種の活性薬剤を含む剤形の2種またはそれより多くを実質的に同時に投与することによって実行することができる。本明細書で使用される全ての療法への言及は、予防も同様に網羅することが理解されるものとする。加えて、ウイルス感染「療法」という用語は、本明細書で使用される場合、媒介されたウイルスの感染またはその臨床症状に関連する疾患または状態の処置または予防を包含する。
【0065】
本発明は、一般式1のプロドラッグおよびその立体異性体、同位体で濃縮された類似体、ならびに結晶形態および多結晶形態の生産のための方法であって、これまでに未知の式2のシクロブチル(S)−2−(ペンタフルオロフェニルオキシ−フェノキシ−ホスホリルアミノ)−プロピオン酸塩またはその立体異性体、式2.1のシクロブチル(S)−2−((S)−ペンタフルオロフェニルオキシ−フェノキシ−ホスホリルアミノ)−プロピオン酸塩、および式2.2のシクロブチル(S)−2−((R)−ペンタフルオロフェニルオキシ−フェノキシ−ホスホリルアミノ)−プロピオン酸塩の使用を含む、上記方法に関し、これらもまた本発明の主題である。
【0066】
【化15】
【0067】
本発明者らは、驚くべきことに、新規の一般式1のプロドラッグおよびそのリン含有立体異性体(式1.1のSp−立体異性体および式1.2のRp−立体異性体)は、例えば公知のソバルディ(登録商標)および式A1のシクロヘキシルエステル、加えてこれまでに未知の式A2のシクロプロピルエステル(比較例)より有効なHCV NS5B阻害剤のプロドラッグであることを見出した。
【0068】
したがって、ソバルディ(登録商標)は、HCV遺伝子型1b(gT1b)に対して、EC50=0.045〜0.170μMおよびEC90=590nMを有し、式A1のシクロヘキシルエステルは、EC90=250.0nMを有するが、式A2のシクロプロピルエステルは、EC90=73.0nMおよびEC90=410.0nMを有する(表1)。新規の式1.1のプロドラッグは、EC50=15.0〜27.0nMおよびEC90=128.0nM(表1а)を有し、これは、新規の式1.1のプロドラッグは、ソバルディ(登録商標)より3倍高い活性を有し、式A1の化合物の2倍の活性を有し、式A2の化合物より3倍高い活性を有することを意味する。
【0069】
ヒト肝臓ミクロソームS9画分における式1.1のプロドラッグの半減期は、T1/2hS9=0.05時間であるが、ソバルディ(登録商標)は、T1/2hS9=0.54時間を有し、式A1のシクロヘキシルエステルは、T1/2hS9=1.4時間を有し(表2)、これは、ヒト肝臓ミクロソームS9画分における新規の式1.1のプロドラッグの代謝率が、ソバルディ(登録商標)のより11倍速く、式A1のシクロヘキシルエステルのより28倍速いことを意味する。加えて、式1.1のプロドラッグの代謝プロセスの結果生じるラット肝臓における三リン酸塩PSI−7409の濃度およびAUC24hは、それぞれCmax=3224.0ng/gおよびAUC24h=30487.0ng・時間/gであるが、ソバルディの類似の代謝は、Cmax=1934.0ng/gおよびAUC24h=16796.0ng・時間/gをもたらす(表3)。これは、新規の式1.1のプロドラッグは、ソバルディ(登録商標)のほぼ2倍高い有効性で、さらに、式A1のシクロヘキシルエステルより4.7倍高い有効性で、肝臓で必要な三リン酸塩PSI−7409(薬物)に代謝されるという事実を証明する。
【0070】
得られた結果(作用)は、式1.1のプロドラッグが、シクロブチルエステルであり、その類似体である式A1のシクロヘキシルエステルほど有効ではないが、前述の驚くべき作用をよりよく例示するために発明者らによって特別に調製された別の類似体である式A2のシクロプロピルエステルより高い活性を有することから(EC90=73.0nM、EC90=410.0nM、表1aを参照)、驚くものである。
【発明を実施するための形態】
【0071】
最良の実施態様
ここで本発明を特定の実施態様に関して説明するが、それにより本発明の範囲を限定することは意図されない。それとは逆に、本発明は、特許請求の範囲内に含めることができる全ての代替物、改変、および均等物を網羅する。したがって、以下の具体的な実施態様を含む実施例は、本発明を限定することなく本発明を例示するものである。
【実施例】
【0072】
実施例1.一般式1のシクロブチル(S)−2−{[(2R,3R,4R,5R)−5−(3,4−ジヒドロ−2,4−ジオキソ−2H−ピリミジン−1−イル)−3−ヒドロキシ−4−メチル−4−フルオロ−テトラヒドロフラン−2−イルメトキシ]−フェノキシ−ホスホリルアミノ}−プロパノエートのプロドラッグ、ならびにその立体異性体01.1および1.2のための合成プロトコール(スキーム1)。
【0073】
【化16】
【0074】
ジクロロメタン(300ml)中のN−Boc−L−アラニン(4:15.5g、81.9mmol)の溶液に、DCC(16.9g、81.9mmol)を0℃で添加し、5分後、シクロブタノール(3:5.6g、78.0mmol)およびDMAP(2.0g、16.4mmol)で添加した。混合物をそのまま室温で一晩撹拌し、真空中で蒸発させ、残留物を酢酸エチル(300ml)で処理した。残留物をろ過して分離し、酢酸エチルで洗浄した。ろ液をクエン酸の5%溶液(2×100ml)、NaHCO飽和溶液(2×100ml)、およびブラインで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、真空中で蒸発させ、19.6g(98%)の(S)−シクロブチル2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)プロパノエート(5)を白色の粉末として得た。1H NMR (400MHz, DMSO-d6)δ 7.22 (d, J=7.2 Hz, 0.85H), 6.87 (m, 0.15H), 4.89 (p, J=7.2 Hz, 1H), 3.94 (m, 1H), 2.26 (m, 2H), 1.98 (m, 2H), 1.74 (m, 1H), 1.59 (m, 1H), 1.38 (s, 7.5H), 1.34 (brs, 1.5H), 1.22 (d, J=7.2Hz, 3H)。
【0075】
ジオキサン(50ml)中の化合物5(19.6g、80.6mmol)の溶液に、ジオキサン中のHCl(230ml、3M)を添加し、混合物をそのまま一晩撹拌し、真空中で蒸発させた。残留物をエーテル(400ml)で処理し、一晩撹拌した。残留物をろ過して分離し、エーテルで洗浄し、真空中で乾燥させて、14.1g(97%)の(S)−シクロブチル2−アミノ−プロパノエート塩酸塩(6)を白色の粉末として得た。1H NMR(400MHz, DMSO-d6)δ8.56 (brs, 3H), 5.00 (p, J=7.6 Hz, 1H), 4.02 (q, J=7.2 Hz, 1H), 2.31 (m, 2H), 2.07 (m, 2H), 1.78 (m, 1H), 1.62 (m, 1H), 1.41 (d, J=7.2 Hz, 3H)。
【0076】
ジクロロリン酸フェニル(16.9g、80.2mmol)を、ジクロロメタン(214ml)中の化合物6(14.4g、80.2mmol)の溶液に添加した。混合物を−75〜70℃に冷却し、ジクロロメタン(16ml)中のトリエチルアミン(16.2g、160.4mmol)の溶液を、温度を−75〜70℃に維持しながら一滴ずつ添加した。混合物を−70℃で30分撹拌し、次いで−20℃に加熱した。ジクロロメタン(105ml)中のペンタフルオロフェノール(14.6g、79.4mmol)の溶液を−20〜10℃で添加し、次いでジクロロメタン(8ml)中のトリエチルアミン(8.1g、80.2mmol)の溶液を一滴ずつ添加し、混合物をそのまま室温で一晩撹拌した。混合物を真空中で蒸発させ、酢酸エチル(500ml)および水(500ml)を添加し、有機層を分離し、5%NaHCO溶液、ブラインで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、真空中で蒸発させた。ヘキサンおよび酢酸エチルの混合物(200ml、6:1)を残留物に添加し、混合物をそのまま一晩撹拌させた。得られた残留物をろ過して分離し、6:1のヘキサン/酢酸エチル混合物(50ml)で洗浄し、風乾させ、16.7gのシクロブチル(S)−2−((ペルフルオロフェノキシ)(フェノキシ)ホスホリルアミノ)プロパノエート(2)を得た。
【0077】
得られた生成物(2)をヘキサン/酢酸エチル(4:1)混合物(500ml)から再結晶させて、13.8g(37%)のシクロブチル(S)−2−((S)−(ペルフルオロフェノキシ)−(フェノキシ)−ホスホリルアミノ)プロパノエート(2.1)を白色のばらばらの粉末として得た。1H NMR (300MHz, DMSO-d6)δ 7.42 (m, 2H), 7.24 (m, 3H), 6.87 (dd, J1=14.1 Hz, J2=10.2 Hz, 1H), 4.87 (p, J=7.5 Hz, 1H), 3.94 (m, 1H), 2.23 (m, 2H), 1.94 (m, 2H), 1.71 (m, 1H), 1.58 (m, 1H), 1.27 (d, J=7.2 Hz, 3H)。式2.1の化合物の再結晶中にヘキサン/酢酸エチルの混合物(6:1)で洗浄した後に残った全溶液を真空中で蒸発させ、ヘキサンから3回再結晶させて、シクロブチル(S)−2−((R)−(ペルフルオロフェノキシ)−(フェノキシ)−ホスホリルアミノ)プロパノエート(2.2)を白色のばらばらの粉末として得た。1H NMR(300MHz, DMSO-d6)δ7.42 (m, 2H), 7.26 (m, 3H), 6.85 (dd, J1=13.8 Hz, J2=10.2 Hz, 1H), 4.88 (p, J=7.5 Hz, 1H), 3.95 (m, 1H), 2.24 (m, 2H), 1.93 (m, 2H), 1.72 (m, 1H), 1.59 (m, 1H), 1.28 (d, J=6.9 Hz, 3H)。
【0078】
THF(165ml)中のtert−ブチル(2R,3R,4R,5R)−5−(2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)−2−(ヒドロキシメチル)−4−メチル−4−フルオロ−テトラヒドロフラン−3−イル炭酸塩(7:5g、13.9mmol)の溶液に、THF(31.3ml、31.3mmol)中のtert−ブチルマグネシウムクロリドの1M溶液を、アルゴン下、0℃で添加し、混合物を室温で30分間撹拌した。THF(30ml)中の式2.1の化合物の溶液(7.8g、16/7mmol)を、シリンジを使用して0〜5℃で添加し、混合物をアルゴン下で24時間撹拌した。メタノール(10ml)の添加のとき、混合物を真空中で蒸発させた。残留物を500mlの酢酸エチル中に溶解させ、クエン酸の5%溶液、NaHCOの5%溶液で洗浄した、NaSO上で乾燥させ、真空中で蒸発させた。残留物を、溶離剤としてヘキサン/酢酸エチル(1:2)を使用するシリカゲルでのクロマトグラフィーにかけて、5.89g(66%)のシクロブチル(S)−2−((S)−(((2R,3R,4R,5R)−3−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)−5−(2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)−4−メチル−4−フルオロ−テトラヒドロフラン−2−イル)メトキシ)(フェノキシ)ホスホリルアミノ)プロパノエート(8.1)を無色の凝固した発泡体のような外観で得た。LC-MS (ESI) 642 (M+H)+
【0079】
同様に、シクロブチル(S)−2−((((2R,3R,4R,5R)−3−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)−5−(2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)−4−メチル−4−フルオロ−テトラヒドロフラン−2−イル)メトキシ)(フェノキシ)ホスホリルアミノ)プロパノエート(8)を、中間体7および2から開始して調製し(収量:52%、LC-MS (ESI) 642 (M+H)+)、シクロブチル(S)−2−((R)−(((2R,3R,4R,5R)−3−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)−5−(2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)−4−メチル−4−フルオロ−テトラヒドロフラン−2−イル)メトキシ)(フェノキシ)ホスホリルアミノ)プロパノエート(8.2)を、中間体7および2.2から開始して調製した(収量:59%、LC-MS (ESI) 642 (M+H)+)。
【0080】
ジクロロメタン(60ml)中の式8.1の化合物(4.45g、6.9mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(60ml)を0℃で添加した。混合物を室温で15時間撹拌し、真空中で蒸発させ、250mlのDCM中に溶解させ、300mlの5%NaHCOで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、真空中で蒸発させ、酢酸エチルおよびメチル−tert−ブチルエーテル(1:1)の混合物から再結晶させ、2.7g(71%)のシクロブチル(S)−2−((S)−(((2R,3R,4R,5R)−5−(2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)−3−ヒドロキシ−4−メチル−4−フルオロ−テトラヒドロフラン−2−イル)メトキシ)−(フェノキシ)−ホスホリルアミノ)プロパノエート(1.1)を白色の結晶質として得た。LC-MS (ESI) 542 (M+H)+1H NMR (400MHz, DMSO-d6 )δ 11.51 (brs, 1H), 7.56 (d, J=8.0 Hz, 1H), 7.38 (m, 2H), 7.23 (m, 2H), 7.19 (m, 1H), 6.03 (m, 2H), 5.84 (d, J=6.8 Hz, 1H), 5.55 (dd, J1=8.0 Hz, J2=1.2 Hz, 1H), 4.85 (p, J=7.2 Hz, 1H), 4.37 (m, 1H), 4.27 (m, 1H), 4.01 (m, 1H), 3.83 (m, 2H), 2.23 (m, 2H), 1.95 (m, 2H), 1.71 (m, 1H), 1.56 (m, 1H), 1.25 (d, J=22.8 Hz, 3H), 1.23 (d, J=6.8 Hz, 3H)。
【0081】
様々な溶媒からの式1.1のプロドラッグの再結晶により、多結晶または結晶形態が生じる。したがって、酢酸エチルとメチル−tert−ブチルエーテルとの混合物(1:1)、エタノール、酢酸エチル、および酢酸と水との混合物からの再結晶により、a=28.1056(8)A、b=16.8998(4)A、およびc=5.25380(12)Aの単位格子パラメーターを有する斜方晶相、ならびにa=16.2770(6)A、b=16.9117(8)A、c=5.20429(15)A、およびβ=117.822(2)°の単位格子パラメーターを有する単斜晶相を本質的に含む多結晶形態のプロドラッグ1.1を得た。
【0082】
ジメチルスルホキシドと水との混合物からの式1.1のプロドラッグの再結晶により、a=28.1056(8)A、b=16.8998(4)A、およびc=5.25380(12)Aの単位格子パラメーターを有する斜方晶相からなる白色の結晶質を得た。
【0083】
結晶形態および多結晶形態は、pH2およびpH7で、0.18から0.25mg/mlに変化させた様々な溶媒からの再結晶の後に、類似の溶解性値を有する。例外は、ジメチルスルホキシドからの再結晶から得られた多結晶のサンプルであり、その溶解性は、よりわずかに高く、0.63からの0.67mg/mlに変化している(表1)。
【0084】
【表1】
【0085】
同様に、シクロブチル(S)−2−((((2R,3R,4R,5R)−5−(2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)−3−ヒドロキシ−4−メチル−4−フルオロ−テトラヒドロフラン−2−イル)メトキシ)−(フェノキシ)−ホスホリルアミノ)プロパノエート(1)(収量:58%;LC-MS (ESI) 542 (M+H)+、およびシクロブチル(S)−2−((R)−(((2R,3R,4R,5R)−5−(2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)−3−ヒドロキシ−4−メチル−4−フルオロ−テトラヒドロフラン−2−イル)メトキシ)−(フェノキシ)−ホスホリルアミノ)プロパノエート(1.2)(収量:64%;LC-MS (ESI) 542 (M+H)+1H NMR (300MHz, DMSO-d6)δ 11.53 (brs, 1H), 7.56 (d, J=8.1 Hz, 1H), 7.38 (m, 2H), 7.19 (m, 3H), 6.08 (m, 2H), 5.91 (d, J=6.3 Hz, 1H), 5.57 (d, J=8.1 Hz, 1H), 4.85 (p, J=7.5 Hz, 1H), 4.41 (m, 1H), 4.27 (m, 1H), 4.05 (m, 1H), 3.79 (m, 2H), 2.23 (m, 2H), 1.94 (m, 2H), 1.70 (m, 1H), 1.56 (m, 1H), 1.24 (d, J=23.4 Hz, 3H), 1.21 (d, J=6.0 Hz, 3H)を調製した。
【0086】
実施例2.式A2のシクロプロピル(S)−2−((S)−(((2R,3R,4R,5R)−5−(2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)−3−ヒドロキシ−4−メチル−4−フルオロ−テトラヒドロフラン−2−イル)メトキシ)−(フェノキシ)−ホスホリルアミノ)プロパノエートのプロドラッグのための合成プロトコール(スキーム2)。
【0087】
【化17】
【0088】
シクロプロピルアミン(9:4.06ml、58.8mmol)およびBoc−L−アラニン(22.2g、58.8mmol)を250mlのクロロホルム中に溶解させ、亜硝酸イソアミル(7.9ml、58.8mmol)を氷で冷却しながら添加した。混合物を冷却しながら16時間撹拌し、乾燥するまで蒸発させ、シリカゲルでのクロマトグラフィー(1:8の酢酸エチル:ヘキサンで溶出)にかけて、7.68g(57%)の式10のシクロプロピルエステルと式11のアリルエーテルとの比率1:4の混合物(H NMRデータに基づく)を得た。得られたエステル10とエーテル11との混合物を、120mlのアセトニトリル中に溶解させ、その後すぐにトリフェニルホスフィン(446mg、1.7mmol)およびPd(PPh(984mg、0.85mmol)をアルゴン下で添加した。溶液を氷で冷却し、アセトニトリル(30ml)中のピロリジン(2.49g、35mmol)の溶液で希釈した。アルゴン下で混合物を0〜4℃で16時間撹拌し、乾燥するまで蒸発させ、シリカゲルでのクロマトグラフィー(1:8の酢酸エチル:ヘキサンで溶出)にかけて、1.38gの(S)−シクロプロピル2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)プロパノエート(15)を得た。1H NMR (CDCl3, 400 MHz)δ 5.04 (br.s., 1H), 4.26 (m, 1H), 4.19 (m, 1H), 1.46 (с, 9H), 1.37 (d, J=7.2 Hz, 3H), 0.74 (m, 4H)。
【0089】
10mlのジオキサン中の式12の化合物(3.5g、15.3mmol)の溶液に、20mlのジオキサン中の3MのHCl溶液を添加した。混合物を室温で2時間撹拌し、乾燥するまで蒸発させて、2.53gの(S)−シクロプロピル2−アミノ−プロパノエート塩酸塩(13)を得た。1H NMR (DMSO-d6, 300 MHz)δ 8,65 (br.s., 3H), 4,19 (m, 1H), 3,99 (к, J=6.9 Hz, 1H), 1.39 (d, J=6.9 Hz, 3H), 0.73 (m, 4H)。
【0090】
−70℃に冷却した50mlのジクロロメタン中の式13の化合物((2.53g、15.3mmol)およびジクロロリン酸フェニル(3.23g、15.3mmol)の溶液に、10mlのジクロロメタン中のトリエチルアミン(4.26ml、30.6mmol)の溶液を一滴ずつ添加した。次いで反応混合物の温度を−10℃に上昇させ、事前に調製した15mlのジクロロメタン中のペンタフルオロフェノール(2.82g、15.3mmol)およびトリエチルアミン(2.13ml、15.3mmol)の混合物を一滴ずつ添加した。添加が完了したら、反応混合物を室温で12時間撹拌し、次いで蒸発させ、残留物を、50mlのベンゼンで処理した。残留物をろ過して分離し、15mlのベンゼンで洗浄した。ろ液を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発させた。1:4の酢酸エチル:ヘキサンの混合物を物質1g当たり8mlの速度で残留物に添加し、得られた混合物を16時間力強く撹拌した。残留物をろ過して分離し、1:4の酢酸エチル:ヘキサンの混合物から再結晶させ、1.02g(14%)の(S)−シクロプロピル2−((S)−(ペルフルオロフェノキシ)−ホスホリルアミノ)プロパノエート(14)を得た。LC-MS (ESI) 452 (M+H)+1H NMR (CDCl3, 300 MHz)δ 7.38 (m, 2H), 7.26 (m, 3H), 4.7 (m, 1H), 3.96 (m, 1H), 1.46 (d, J=7.2 Hz, 3H), 0.74 (m, 4H)。
【0091】
25mlの氷で冷却した乾燥THF中のtert−ブチル(2R,3R,4R,5R)−5−(2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)−2−(ヒドロキシメチル)−4−メチル−4−フルオロ−テトラヒドロフラン−3−イル炭酸塩(820mg、1.85mmol)の溶液に、THF(4ml、0.4mmol)中のt−BuMgClの1M溶液を一滴ずつ添加した。冷却を終わらせ、反応混合物を室温で0.5時間撹拌し、次いで氷で再度冷却し、THF中の式14の化合物(1.02g、2.18mmol)の溶液を一滴ずつ添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌し、次いで飽和塩化アンモニウム溶液で処理した。有機相を分離し、水相をジクロロメタンで抽出した。合わせた抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過して、約1.16gの(S)−シクロプロピル2−((S)−(((2R,3R,4R,5R)−3−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)−5−(2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)−4−メチル−4−フルオロ−テトラヒドロフラン−2−イル)メトキシ)−(フェノキシ)−ホスホリルアミノ)プロパノエート(15)を得て、これを次の段階にそのまま使用した。LC-MS (ESI) 628 (M+H)+
【0092】
20mlのジクロロメタン中の式15の化合物(約1.16g、1.85mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(20ml)を氷で冷却しながら添加した。反応混合物を3時間撹拌し、次いで真空中で濃縮した。残留物をジクロロメタン中に溶解させ、水で希釈し、炭酸水素ナトリウムで中和した。有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、乾燥するまで蒸発させた。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール)にかけ、酢酸エチル:MTBEの混合物から再結晶させ、505mgの式A2の(S)−シクロプロピル2−((S)−(((2R,3R,4R,5R)−5−(2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)−3−ヒドロキシ−4−メチル−4−フルオロ−テトラヒドロフラン−2−イル)メトキシ)−(フェノキシ)−ホスホリルアミノ)プロパノエート(52%)を得た。LC-MS (ESI) 528 (M+H)+1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz)δ 11.24 (b.s., 1H), 7.56 (d, J=8.1 Hz, 1H), 7.38 (m, 2H), 7.20 (m, 3H), 6.05 (m, 2H), 5.86 (m, 1H), 5.54 (d, J=8.1 Hz, 1H), 4.36 (m, 1H), 4.23 (m, 1H), 4.02 (m, 2H), 3.82 (m, 2H), 1.25 (d, J=22.2 Hz, 3H), 1.21 (d, J=6.6 Hz, 3H), 0.66 (m, 2H), 0.57 (m, 2H)。
【0093】
実施例3.錠剤の形態の医薬組成物の調製
デンプン(500mg)、すりつぶしたラクトース(800mg)、タルク(200mg)、および1500mgの式1.1のプロドラッグを一緒に混合し、棒状にプレスした。得られた棒状物を顆粒状に粉砕し、篩にかけて、14〜16メッシュの顆粒を収集した。このようにして得られた顆粒を、好適な形態を有するそれぞれ重さ400または800mgの錠剤に成形した。
【0094】
実施例4.カプセルの形態の医薬組成物の調製
式1.1のプロドラッグをラクトース粉末と1:1の比率で慎重に混合した。得られた粉末状の混合物を、好適なサイズを有するゼラチンカプセルに、各カプセル中に200または400mgのいずれかで充填した。
【0095】
実施例5.筋肉内、腹膜内、または皮下注射のための組成物の形態の医薬組成物の調製
式1.1のプロドラッグ(500mg)を、クロロブタノール(300ml)、プロピレングリコール(2ml)、および注射可能な水と混合した。得られた溶液をろ過し、5mlアンプルに入れ、シールした。
【0096】
実施例6.式1.1およびA2のプロドラッグならびにソバルディ(登録商標)に関する抗HCV活性および細胞傷害性の評価
プロドラッグを含む試験された組成物の抗ウイルス活性を、HCVレプリコンで安定してトランスフェクトされたHuh7ヒト肝細胞癌細胞株を使用して評価した。完全培養培地(1×DMEM、セルグロ(Cellgro);カタログ番号10−013−CV)中の細胞懸濁液を、細胞7500個/ウェルの最終密度で96−ウェルプレート(50μl/ウェル)に移した。試験したプロドラッグの連続希釈液を、完全培地中の20nMから開始して11の濃度点と3倍の増加量での新しい200倍の汎用のDMSO溶液から調製し、2連で使用した。細胞をプレーティングしてから最短で4時間後、50μlのプロドラッグ連続希釈液を、各ウェルに添加した。最終的なプロドラッグ濃度は、10nMから0.1pMまで変動し、DMSOの濃度は0.5%であった。細胞を含むプレートを、加湿した5%CO下で、37℃で3日間インキュベートした。インキュベーション完了後、プレートをさかさまにして培地を除去し、それを慎重に振盪した。100μlの1:1のアセトン:メタノール溶液を用いて1分間にわたり細胞を固定し、リン酸緩衝液(PBS)で3回洗浄し、PBS中の10%ウシ胎児血清(FBS)(150μl/ウェル)を使用して室温で1時間ブロックした。細胞をPBSで3回洗浄し、アフィニティーバイオリージェント(Affinity BioReagents)(カタログ番号MA1−080)を使用して、抗NS5B HCV抗体(100μl/ウェル)と共に37℃で2時間インキュベートし、10%FBS−PBSで全溶液(1mg/ml)を1:4000の比率で希釈した。細胞をPBSで3回洗浄し、各プレートにつきクエン酸/リン酸緩衝液(12ml)中に溶解させた1つのOPDタブレットを使用してOPD溶液(100μl/ウェル)により展開し、そこに、暗所で、室温で30分間、5μlの30%Hを添加した。2NのHSO(100μl/ウェル)によって反応を止め、多機能リーダーVictorV1420(パーキンエルマー(Perkin Elmer))を使用してOD490を測定した。試験したプロドラッグのEC50値を、GraphPad Prizmソフトウェアを使用してプロットした活性曲線から測定した。新規の式1.1のプロドラッグは、1b(gT1b)HCV遺伝子型に対して、EC50=15.0〜27.0nMおよびEC90=128.0nMを有し;ソバルディ(登録商標)は、EC50=45〜170nMおよびEC90=590nMを有し;式A1のシクロヘキシルエステルは、EC90=250.0nMを有し;式A2のシクロプロピルエステルは、EC90=73.0nMおよびEC90=410.0nM(表1а)を有する。結果として、新規の式1.1のプロドラッグの活性は、ソバルディ(登録商標)の活性の3倍より高く、式A1の化合物の活性の2倍であり、式A2の化合物の活性より3倍高い。
【0097】
【表1a】
【0098】
試験したプロドラッグを含む組成物の細胞傷害性を、同じ細胞株Huh7で、ATPLiteキット(パーキンエルマー、米国ボストン)を製造元の説明書に従って使用して、同時に評価した。完全培養培地(1×DMEM、セルグロ);カタログ番号10−013−CV)中の細胞懸濁液を、細胞7500個/ウェルの最終密度で、黒色の壁と透明な底を有する96−ウェルプレートに移した(50μl/ウェル)。細胞をプレーティングしてから18時間後、薬物連続希釈液(50μl/ウェル)を添加した。細胞を含むプレートを、加湿した5%CO雰囲気中で、37℃で4日インキュベートした。次いで細胞をPBS(200μl/ウェル)で2回洗浄し、溶解緩衝液(50μl/ウェル)を添加することによって溶解させた。全ての試薬をATPLiteキットから採用した。振盪機で5分撹拌した後、基質を添加した(50μl/ウェル)。追加の5分のインキュベーション後、プレートを暗所で10分間維持し、多機能リーダーVictorV1420(パーキンエルマー)を使用してウェル中の発光を測定した。試験したプロドラッグのCC50値を、GraphPad Prizmソフトウェアを使用してプロットした細胞傷害性曲線から測定した。特定には、新規の式1.1のプロドラッグに関して、細胞傷害性はCC50>100μM(表1a)であり、治療域(治療指数TI=EC50/CC50)は、TI>6000.0であることが見出された。
【0099】
実施例7.化合物の動態学的溶解性の評価。
方法の原理。試験した化合物をDMSO中に溶解させて、10mM濃度にし、次いで水性溶媒(リン酸緩衝液、水、または異なるpH値の万能緩衝液)中に注ぎ、濃度を200μMに下げた。得られた溶液を96−ウェルフィルタープレート(ミリポア(Millipore)のマルチスクリーン溶解性フィルタープレート(MultiScreen Solubility Filter Plate))に入れ、振盪機で、室温で1時間インキュベートし、残留物を真空中でろ過して分離した。分光光度計で、化合物の吸収スペクトルを、240〜400nmの範囲で、10nmの増加量で記録した。溶解性の定量的な推測のために、40%アセトニトリルを含む標準溶液(0〜200μM)の検量線を使用した。推測された濃度の範囲は3〜200μMであった。試験手順を2連で実行した。
【0100】
較正標準の調製。較正標準を、40%アセトニトリルを含む緩衝液で希釈したDMSO中の50倍ストック溶液から調製し、これを添加して、較正サンプル中の試験した化合物の十分な溶解を確認した。0、3.125、12.5、50、100、および200μMの濃度を有する6つの標準サンプルを、UV96−ウェルプレートのウェル中で、4μlの対応するDMSO中の50×ストック溶液を196μlの40%アセトニトリルを含む緩衝液に添加することによって調製した。全てのポイントにおけるDMSOの濃度は一定であり、2%(v/v)に等しかった。
【0101】
検量線をプロットするために、UVプレートの光学スペクトルを、250〜400nmの波長範囲で、10nmの増加量で記録した。各化合物のスペクトルデータに基づいて、以下の基準を満たす波長を選択した:
−最小化合物濃度について、OD>0.1(AU);
−最大化合物濃度について、OD<2.0。
【0102】
各化合物につき、選択された波長におけるODで検量線を濃度の関数としてプロットした。
化合物の動態学的溶解性の評価。溶解性を、マルチスクリーン溶解性(ミリポア社)フィルタープレートで以下のように評価した:
・マルチスクリーン溶解性フィルタープレートの各ウェルに、196μlの緩衝液(アセトニトリル非含有)および4μlのDMSO中の10mM化合物または4μlのDMSO(ブランクマトリックスのため)を添加した。振盪機(400rpm)でプレートを室温で1時間インキュベートした。
【0103】
・得られた溶液を、真空(10インチHg)を用いてフィルタープレートでろ過して、U型の底を有するポリプロピレンプレートに分離した。
・U型の底を有するプレートから、ろ液(120μl/ウェル)を新しいUVプレートに移し、そこにアセトニトリル(80μl/ウェル)を添加した。
【0104】
・各化合物につき、得られた溶液の予め選択された波長に対する光学密度を測定した。
計算。ろ液中の最終的な化合物濃度を以下の通りコンピューターで計算した:
filtrate=(ろ液のODλ−ブランクのODλ)/傾き×1.67。
【0105】
式中、
ろ液のODλは、選択された波長でのろ液の光学密度であり;
ブランクのODλは、ブランクマトリックスのODであり;
傾きは、検量線の勾配であり;
1.67は、アセトニトリルで希釈したろ液の希釈係数である。
【0106】
この発見は、表1に示される。
実施例8.プロドラッグサンプルのX線粉末相分析
全ての回折パターンを、ピーカブー式の設定で、銅陽極X線チューブ、およびGe(111)モノクロメーター(CuKo^)、およびLynxEye位置検出型検出器を備えた、ブルカーのD8アドバンス・バリオ(Advance Vario)回折計で記録した。ショット範囲は、サンプル5では3〜90°26であり、他のサンプルでは5.7〜90°26であり、増加量は0.01°26であった。ブルカーのTopas5ソフトウェア[ブルカーTOPAS5使用者マニュアル−カールスルーエ、ドイツ:ブルカーAXS社(Bruker AXS GmbH)、2015]を使用して分析を行った。
【0107】
酢酸エチルとメチル−tert−ブチルエーテルとの混合物(1:1)、エタノール、酢酸エチル、および酢酸と水との混合物からの式1.1の化合物の再結晶により得られたサンプルは、多結晶形態を有していた。これらのサンプルのX線粉末相分析から、それらの定性的な相構造の類似性およびそれらの相関係における有意ではない差が解明された。サンプルは、以下の単位格子パラメーター:a=28.1056(8)A、b=16.8998(4)A、およびc=5.25380(12)Aを有する斜方晶相を含んでいた。系統的な消滅分析から、P2の空間群を仮定することが可能である。2495.45(11)Aの単位格子体積は、特許請求された組成物およびZ’=1に対応する。またサンプルは、以下の単位格子パラメーター:a=16.2770(6)A、b=16.9117(8)A、c=5.20429(15)A、β=117.822(2)°を有する単斜晶相も含む。系統的な消滅分析から、P2の空間群を仮定することが可能である。1266.98(9)Aの単位格子体積は、特許請求された組成物およびZ’=1に対応する。積分ピーク強度の比較に基づく相関係の評価は、単斜晶相の含量が30から50%に変動していることを示唆する。
【0108】
ジメチルスルホキシドと水との混合物からの式1.1の化合物の再結晶により得られたサンプルは、結晶形態の白色物質である。X線粉末分析データによれば、前記形態のサンプルは、単一相であり、以下の単位格子パラメーター:a=28.1056(8)A、b=16.8998(4)A、c=5.25380(12)Aを有する斜方晶相からなる。系統的な消滅分析から、P2の空間群を仮定することが可能である。2495.45(11)Aの単位格子体積は、特許請求された組成物およびZ’=1に対応する。
【0109】
実施例9.式1.1のプロドラッグを含む組成物の生物学的なマトリックスにおける安定性の評価
式1.1のプロドラッグ(試験した化合物)を含む最初の組成物を、DMSO中10mMの濃度で調製した。前記組成物から、100倍の使用溶液を、1:1の体積比のアセトニトリル:水の混合物中100μMの濃度で調製した。
【0110】
a)S9画分における安定性。反応混合物を、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.4、BD Gentest)で250μlの合計最終容量で調製し、1mMのNADPH四ナトリウム塩(AppliChem)、7mMのグルコース−6−リン酸ナトリウム塩(シグマ)、1.5U/mlのグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(シグマ)、3.3mMのMgCl(シグマ)、5mMのウリジン−5−二リン酸塩−グルクロン酸三ナトリウム塩(UDPGluA、シグマ)、および1μMの試験した化合物(これらは最終濃度である)を入れた。ヒト肝臓S9画分(BD Gentest)の懸濁液を添加することによって代謝反応を開始させたところ、タンパク質の最終濃度は1mg/mlであった。Vortemp56振盪機において400rpmで撹拌しながら、反応混合物を37℃でインキュベートした。特定のインターバル(0、0.25、0.5、1、2、4、6、8、24時間)の後、30μlのサンプルを採取し、採取したサンプルに内部標準を含む冷たいアセトニトリル(180μl)を添加することによって反応を止めた。タンパク質を氷上に15分置いた。次いでサンプルを3000rpmで10分遠心分離し、分析のために上清(150μl)をサンプリングした。インキュベーションを2連で実行し、各サンプルを2回測定した。
【0111】
b)人工胃および腸液中での安定性。最終濃度1μMの式1.1のプロドラッグを含む試験した組成物を、人工胃液(0.7%v/vのHCl中0.2%NaCl)および人工腸液(0.05MのKHPO、pH6.75)中でインキュベートした。Vortemp56振盪インキュベーター中、37℃で、300回転/分の速度で撹拌しながらインキュベーションを実行した。特定のインターバル(0、0.25、0.5、1、2、4、6、8、24時間)の後、30μlのサンプルを採取し、採取したサンプルに内部標準を含む冷たいアセトニトリル(180μl)を添加することによって反応を止めた。次いでサンプルを3000回転/分で10分遠心分離し、分析のために上清(150μl)をサンプリングした。インキュベーションを2連で実行し、各サンプルを2回測定した。
【0112】
c)血漿中の安定性。1μMの最終濃度の試験した化合物をプールしたヒト血漿中でインキュベートした(イノベーティブリサーチ(Innovative Research))。Vortemp56振盪インキュベーター中、37℃で、300回転/分の速度で撹拌しながらインキュベーションを実行した。特定のインターバル(0、0.25、0.5、1、2、4、6、8、24時間)の後、30μlのサンプルを採取し、採取したサンプルに内部標準を含む冷たいアセトニトリル(180μl)を添加することによって反応を止めた。次いでサンプルを3000回転/分で10分遠心分離し、分析のために上清(150μl)をサンプリングした。インキュベーションを2連で実行し、各サンプルを2回測定した。
【0113】
サンプル分析。試験したプロドラッグそれぞれにつき開発したHPLC−MS/MS技術を使用してサンプルを分析した。ここでクロマトグラフシステム1290インフィニティII(Infinity II)(アジレント・テクノロジーズ(Agilent Technologies))をタンデム質量分析計QTRAP5500(AB Sciex)と組み合わせた。質量分光分析検出のための条件を開発するとき、アセトニトリル−水の混合物(1:1)中の試験した化合物の溶液を、100ng/mlの濃度で、シリンジポンプを使用して質量分析計に直接注入し、エレクトロスプレーイオン化をポジティブイオンモードで行った。総イオン電流モード(MS1)でのスキャニングは、各化合物につき分子状のイオンの同定を可能にし、ベースの生成物イオンをMS2モードで記録した。次いで、最大感度を達成するために、MS/MS技術をMRMモードで最適化した。定量的なクロマトグラム処理において、最も強いMRM移動を分析物および内部標準に使用した。水中0.1%ギ酸およびアセトニトリル中0.1%ギ酸からなる移動相中におけるYMC Triart C18カラム(50×2mm、1.9μm)での直線状勾配溶出クロマトグラフィーを用いて分離を行った。内部標準としてトルブタミド(フルカ(Fluka))を使用した。
【0114】
コンピューターによる計算。生物学的なマトリックス中でインキュベートする間の、抗ウイルス性組成物における試験したプロドラッグの消滅の速度論から、半減期(T1/2)を見出した。コンピューターによる計算は、内部標準シグナルに正規化した、試験サンプル中の化合物ごとのクロマトグラフピーク面積の値に基づいてなされた。logで正規化したクロマトグラフピーク面積の時間に対する直線的な依存関係から、消滅速度定数を計算した(kは、直線部分の傾きである)。次いで半減期が、T1/2=0.693/kであることを見出した。式1.1のプロドラッグ、式A1の化合物、およびソバルディ(登録商標)は、ヒト胃液中(T1/2SGF=12.7〜17時間)、ヒト腸液中(T1/2SIF>20時間)、およびヒト血漿中(T1/2HPL>24時間)で同等の安定性を有していたことが具体的に発見された(表2)。同時に、式1.1のプロドラッグは、より高活発でヒト肝臓ミクロソームS9画分によって代謝され、T1/2HS9=0.05時間の半減期を有するが、そのプロトタイプであるソバルディ(登録商標)は、T1/2HS9=0.57時間を有し、式A1のシクロヘキシルエステルは、T1/2HS9=1.4時間を有し(表2)、これは、式1.1のプロドラッグが、ソバルディ(登録商標)より11倍速く、式A1の化合物より28倍速くヒト肝臓ミクロソームS9画分で代謝されることを意味する。
【0115】
【表2】
【0116】
実施例10.ラット肝臓における式1.1のプロドラッグおよびソバルディ(登録商標)を含む組成物の薬物動態(PK)研究
ラットへの投与のための式1.1のプロドラッグおよびソバルディ(登録商標)を含む組成物の調製
試験した組成物を50mg/kgの用量で投与した。この目的を達成するために、組成物を、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の0.5%溶液中、式1.1のプロドラッグまたはソバルディ(登録商標)を5.0mg/mlの濃度で調製して、そこに以下のようにして5%エタノールを添加した。式1.1のプロドラッグまたはソバルディ(登録商標)の重さを量った部分に、適切な量のHPMCを添加し、混合物を乳鉢で乾式粉砕し、その後、適量の蒸留水中5%エタノールを一部ずつ徐々に添加し、混合物を慎重に撹拌して、胃内投与に好適な懸濁液を得た。
【0117】
式1.1のプロドラッグおよびソバルディ(登録商標)を含む組成物の動物への投与。血漿および肝臓サンプルの調製。スプラギー・ダーレー(Sprague Dawley)ラットで研究を行った。ラットを、選択されたタイムポイント(1、2、4、6、8、10、12、16、および24時間)に基づき6つのグループに分割した。ラットの体重を量り、所定体積の式1.1のプロドラッグまたはソバルディ(登録商標)を含む組成物を、フィーディングチューブを介して胃内投与した。特定のグループの動物への投与間のインターバル中に、肝臓および血液のサンプルを採取した。投与してから適切な期間がたった後、ラットをCO吸入によって安楽死させた。安楽死の直後、動物を迅速に切開し、その肝臓の上葉を切り取り、瞬間的に液体窒素中に入れた。次いで凍結した肝臓断片を、液体窒素で冷却したラベルを付けた試験管に移した。実験の最後までサンプルを液体窒素中で維持し、次いで−80℃の超低温冷凍庫に入れた。
【0118】
サンプルの調製。重さ約1gの肝臓サンプルを、液体窒素で冷却しながら乳鉢で粉砕した。得られた粉末に、3倍体積のメタノールおよびEDTAを含む70%メタノールを注ぎ、オムニビーズラプター24(Omni Bead Ruptor)ホモジナイザーを使用して、6.3m/秒の速度で、45秒で2回(10秒のインターバルを入れて)ホモジナイズした。このようにして得られたホモジネート360μlに、PSI−7409およびH027−4261(または実験サンプルのケースではメタノール)を含む10倍標準溶液40μlおよび内部標準溶液(5−ブロモウリジン三リン酸塩)100μlを25ng/mlの濃度で添加した。撹拌し遠心分離した後、400μlの上清を、メタノール−水の混合物(1:1)中1%ギ酸溶液400μlで希釈した。次いで、ウォーターズ(Waters)のオアシスワックス(Oasis WAX)カートリッジを使用して固相抽出を実行した。得られた生成物をメタノール中5%のアンモニア溶液800μlで溶出させ、溶出液を蒸発させ、メタノール200μl中に再溶解させた。
【0119】
HPLC−MS/MS分析条件。HPLC−MS/MS技術を使用してサンプルを分析した。ここでHPLCシステムであるアジレント1290インフィニティIIをAB Sciex QTrap 5500質量分析計と組み合わせた。サーモハイパーカーボ(Thermo Hypercarb)カラム(50×3mm、5μm)で分離を行った。0.5%アンモニウムを含む25mM酢酸アンモニウム溶液を、移動相A(MPA)として使用し、0.5%アンモニウムを含む水−イソプロパノール−アセトニトリルの混合物(1:1:3)中の25mM酢酸アンモニウム溶液を、移動相B(MPB)として使用した。勾配モード:5%MPBを0〜0.3分;50%MPBを3〜3.4分;5%MPBを3.6〜4.5分で分離を実行した。PSI−7409およびH027−4261をMRMモードで記録したところ、イオン移動はそれぞれ499/159および410/150であった。
【0120】
薬物動態分析。「肝臓濃度−時間」データの薬物動態分析を、非コンパートメント技術によって、フェニックス(Phoenix)(商標)WinNonlin(登録商標)6.3(ファーサイト社(Pharsight Corp.))およびGraphPad Prizmソフトウェアを使用して実行した。以下の薬物動態パラメーター:肝臓中の最大濃度(Cmax)およびその達成時間(Tmax)、半減期(T1/2)、およびPK曲線下面積(AUC0−t、AUC0−inf)をコンピューターで計算した。表3に結果を示す。表3からわかるように、ラット肝臓における式1.1のプロドラッグの代謝の結果生じる三リン酸塩PSI−7409の濃度およびAUC24hは、それぞれCmax=3224.0ng/gおよびAUC24h=30487.0ng・時間/gであるが、類似の代謝を示すソバルディ(登録商標)は、Cmax=1934.0ng/gおよびAUC24h=16796.0ng・時間/gを有し、式A1のシクロヘキシルエステルは、Cmax=557ng/gおよびAUC24h=6484.0ng・時間/gを有する(表3)。これは、新規の式1.1のプロドラッグは、その望ましい三リン酸塩PSI−7409(薬物)への肝臓代謝において、ソバルディ(登録商標)と比較してほぼ2倍、式A1のシクロヘキシルエステルと比較して4.7倍、より有効であることを示唆する。
【0121】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、医薬および獣医学において使用することができる。