(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
発明者らは、驚いたことに、ポリエチレンを作るために用いるプロセス、特に、好ましくは4族メタロセンから選択され、最も好ましくは非対称4族ビス架橋シクロペンタジエニルメタロセンから選択されるシングルサイト触媒を使用するプロセスが、最終生成物の構造に影響を与え得ることを見出した。本明細書で開示するポリエチレンの形成プロセスは、さらに後述する溶液プロセスである。本プロセスは、触媒、モノマー、及び結果として生じるポリマーが、不活性な炭化水素及び/又は1種以上のモノマーであり得る反応溶媒に溶解していることを特徴とする。
本明細書で使用する場合、「4族」は、Hawley実用化学辞典、第13版(John Wiley & Sons, Inc. 1997)に掲載されている元素周期表の新表記を指す。
同様に本明細書で使用する場合、「混ぜ合わせる」は、例えば重合反応器内で、典型的に触媒前駆体及び活性化剤の存在によって触媒される、1種以上のモノマー間の化学反応を引き起こすような温度、圧力、溶媒の条件、及び他の環境条件下で、指定成分を一緒にして互いに接触させることを意味する。
【0008】
任意の実施形態では、重合プロセスでエチレンモノマーと混ぜ合わせられる環状オレフィンモノマーは、少なくとも1つのC5-C8環状構造を含むC5からC8、又はC12、又はC16、又はC20までのオレフィン、例えば、ビシクロ化合物、例えばビシクロ-(2,3,1)-ヘプテン-2から選択される。好ましくは環状オレフィンは、C5、又はC6からC8、又はC10、又はC12、又はC20までの環状オレフィン、さらに好ましくは、例えばビシクロ-(2,3,1)-ヘプテン-2(ノルボルネン)等の全体構造に2つの環を形成する架橋炭化水素部分を含有する環状オレフィンである二環式オレフィンから選択される。最も好ましくは環状オレフィンはノルボルネン、テトラシクロドデセン、及びその置換型から選択される。混合時に重合プロセスを引き起こすためには、望ましい温度で混ぜ合わせるのみならず、少なくとも0.8、若しくは1、若しくは2、若しくは3MPa;又は0.8、若しくは1、若しくは2、若しくは3MPaから4、若しくは6、若しくは8、若しくは10MPaまでの範囲内の圧力で混ぜ合わせるのが好ましい。この圧力は、エチレンの添加及び/又は重合反応器内の他のガスに由来する可能性があり、当然に反応器の温度によって影響を受ける。エチレン及び環状オレフィンのレベルを調整して、所望の触媒活性並びに本明細書に記載のポリエチレンに組み込まれる環状オレフィンコモノマーの所望レベルを得る。任意の実施形態では、モノマーと触媒の混合は、成分を混ぜ合わせて重合を引き起こすために用いる容器又は反応器内の平均温度である反応温度で起こり得る。この温度は、80、又は85、又は90、又は100℃から120、又は130、又は140、又は150℃までの範囲内である。
【0009】
さらに詳細には、種々のモノマー並びに触媒前駆体及び活性化剤が所望のモノマー濃度、触媒濃度、温度及び圧力で反応できる重合反応器内でそれらを混ぜ合わせるのが好ましい。任意の実施形態では、モノマー及び/又は触媒供給用の入口と、重合反応の流出物用の出口を有する重合反応器内で接触が起こる。ここで、流出物中のポリエチレンの量は、流出物ストリームの溶媒中の成分の質量に基づいて2又は4又は6wt%から12又は14又は16又は20wt%までの範囲内である。重合反応は、いわゆる気相反応、溶液反応又はスラリー反応等のポリオレフィンの形成に有用ないずれのタイプの重合であってもよく、好ましくは連続的な溶液、スラリー又は気相反応である。
任意の実施形態では、一般的に「溶液」プロセスとして知られているプロセスでポリエチレンを作る。例えば、1つ以上の単相液体充填撹拌槽型反応器内で、定常状態下でのシステムへの連続供給流及び生成物の連続回収を伴って共重合を行なうのが好ましい。複数の反応器を使用するとき、本質的に同一又は異なるポリマー成分を作る直列又は並列配置で反応器を操作してよい。有利には、反応器は、異なる特性、例えば異なる分子量、又は異なるモノマー組成、若しくは異なるレベルの長鎖分岐、又はその任意の混ぜ合わせを有するポリマーを生成することができる。全ての重合は、いずれかの1種以上のC4-C12アルカン及び/又はオレフィンモノマーを含む溶媒を有するシステム内で、可溶性メタロセン触媒又は他のシングルサイト触媒及び共触媒として別個の非配位性ホウ酸アニオンを用いて行なうことができる。適切な溶媒中のトリ-n-オクチルアルミニウムの均一希釈溶液は、反応を維持するのに適した濃度でスカベンジャーとして使用可能である。水素等の連鎖移動剤を添加して分子量を制御することができる。重合は、要望があれば、長鎖分岐を作り出すマクロマーの再挿入を最大にするために上記高温及び高転化率であり得る。均一な連続溶液プロセスのこの組み合わせは、ポリマー生成物が狭い組成分布及び配列分布を有するように支援する。
【0010】
任意の実施形態では、水素をもモノマー及び触媒と混ぜ合わせ、最も好ましくは、水素は、4、又は5から20、又は25、又は30、又は40、又は50、又は100、又は200cm
3/分(SCCM)までの範囲内で存在する。
任意の実施形態では、接触(又は重合)は、2つ以上の反応器で行なわれる場合でさえ、1段階又は1セットの条件下で起こってポリエチレンを生成する。
任意の実施形態では、反応体混合物の蒸気圧を超える圧力で反応器を維持して液相内に反応体を保持することができる。この様式では、反応器は均一単相状態で液体フル動作し得る。エチレンと環状オレフィンの供給(並びに任意的なプロピレン、C4-C12αオレフィン及び/又はジエン)を混ぜ合わせて1つのストリームにしてから予冷ヘキサンストリームと混合することができる。混ぜ合わせた溶媒とモノマーのストリームが反応器に入る直前に、望ましい溶媒中のトリ-n-オクチルアルミニウムナスカベンジャーの溶液を添加して、いずれの触媒毒の濃度をもさらに下げることができる。溶媒中の触媒成分(触媒前駆体及び/又は活性化剤)の混合物を別々に反応器にポンピングして別々のポートを通して入れてよい。別の実施形態では、供給冷却を必要としない冷却等温反応器を使用することができる。
【0011】
いわゆる「二重重合可能(dual-polymerizable)ジエン」及び「非共役ジエン」を含め、任意的な「ジエン」を重合媒体に添加してよい。任意の実施形態では、「二重重合可能ジエン」は、ビニル置換ひずみ二環式及び非共役ジエン、並びに両不飽部位が重合触媒(例えば、チーグラー・ナッタ、バナジウム、メタロセン等)によって重合可能なα-ω直鎖ジエンから;さらに好ましくは非共役ビニルノルボルネン及びC8-C12α-ω直鎖ジエン(例えば、1,7-ヘプタジエン及び1,9-デカジエン)から選択され、最も好ましくは5-ビニル-2-ノルボルネンである。任意の実施形態では、混ぜ合わせられる(すなわち、重合反応器に至る供給原料に存在する)二重重合可能ジエンのモルパーセントは、他のモノマーに対して0.30、若しくは0.28、若しくは0.26モル%未満、又は0.05から0.26若しくは0.28若しくは0.30モル%までの範囲内である。それから形成されるポリエチレンは、「二重重合可能ジエン由来モノマー単位」を含む。
任意の実施形態では、「非共役ジエン」は、二重結合の1つだけが重合触媒によって活性化され、かつ環状及び直鎖アルカンから選択され、その非限定例としては、1,5-シクロオクタジエン、非共役ジエン(及び各二重結合が他方から2個の炭素原子離れている他の構造)、ノルボルナジエン、並びに他のひずみ二環式及び非共役ジエン、並びにジシクロペンタジエンが挙げられる。さらに好ましくは、非共役ジエンはC7-C30環状非共役ジエンから選択される。最も好ましくは非共役ジエンは、5-エチリデン-2-ノルボルネンである。それから形成されるポリエチレンは「非共役ジエン由来モノマー単位」を含む。
最も好ましくは、重合プロセスにジエンは存在しない。すなわち、本明細書に記載のポリエチレンの形成プロセスのいずれの段階でも、ジエンを環状オレフィン、エチレン、及び触媒成分と意図的には混ぜ合わせない。
【0012】
技術上周知のいずれの手段によっても溶液反応混合物を激しく撹拌して、広範な溶液粘度にわたって徹底的な混合を実現し得る。5から10又は20分の反応器内の平均滞留時間を維持するように流速を設定することができる。反応器を出たら、コポリマー混合物をクエンチング、すなわち一連の濃縮工程、加熱及び真空ストリッピング及びペレット化にさらすか、或いは、プロピレン等の別のαオレフィンが共重合することになる次の反応器に供給するか、或いは密接な混合が起こり得る溶液若しくはスラリー(又は両方の組み合わせ)ポリオレフィンを含有するラインに供給してよい。次に水又は水/アルコール混合物を供給して重合反応をクエンチする。そいしないと、残存触媒、未反応モノマー、及び上昇した温度の存在下で重合反応が続く可能性がある。酸化防止剤を用いて重合反応をクエンチすることもできる。
【0013】
通常の分離手段を用いてポリマーを流出物の他成分から分離することによって流出物からポリエチレンを回収することができる。例えば、液-液分離又はメタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、若しくはn-ブチルアルコール等の非溶媒による凝固によっていずれかの流出物からポリマーを回収することができ、或いは熱又は蒸気による溶媒又は他の媒体のストリッピングによってポリマーを回収することができる。溶媒及びモノマーの除去後、ペレット化ポリマーをプラントから取り出してポリオレフィンと物理的にブレドすることができる。その場ブレンドが好ましい場合、溶液又はスラリー相ポリオレフィンとの密接な混合後に溶媒の除去が行われる。
液相分離の下流で除去された希薄相及び揮発性物質を再循環させて重合供給原料の一部にすることができる。このプロセスでは、分離及び精製の度合は、触媒の活性を損ねる可能性のある極性不純物又は内部不飽和オレフィンを除去するように行なわれる。そうしないと、重合しにくいいずれの内部不飽和オレフィンも希薄相及び再循環ストリーム内に徐々に蓄積することになる。これらのオレフィンを再循環ストリームから除去し、及び/又は高い重合温度に恵まれているポリマーにそれらを組み込むよう促すことによって、重合活性に及ぼすいずれの悪影響をも軽減することができる。
【0014】
上に述べたように、溶液重合プロセスで環状オレフィン、エチレン、水素及び場合によりC4-C12αオレフィンをシングルサイト触媒と混ぜ合わせてポリエチレンを形成することを含む(又はから本質的に成る、又はから成る)ポリエチレンの形成プロセスを提供する。多くの有機金属化合物が有用なシングルサイト触媒として、例えばメタロセン(MN)、ピリジイルジアミド遷移金属触媒、アルコキシド及び/又はアミド遷移金属触媒、ビス(イミノ)ピリジル遷移金属触媒、及び技術上周知のポリオレフィン触媒に有用な多くの他の有機金属化合物等が知られている。これらの化合物は、活性化化合物、例えばメチルアルミノキサン又はホウ素活性化剤、特に全フッ素置換アリール化合物等を伴う。合わせて、これら及び技術上周知の他の有機金属化合物は、例えば下記により概説されているような「シングルサイト触媒」を形成する(H. Kaneyoshi et al.,“ポリオレフィン用非メタロセンシングルサイト触媒(Nonmetallocene single-site catalysts for polyolefins)”, Research Review (McGraw Hill, 2009);C. De Rosa et al.,“ポリオレフィンの特性の探査方法としてのシングルサイト有機金属重合触媒作用(Single site metalorganic polymerization catalysis as a method to probe the properties of polyolefins)”, 2 Polym. Chem. 2155 (2012);I.E. Sedov et al.“ポリエチレンの工業生産におけるシングルサイト触媒(Single-site catalysts in the industrial production of polyethylene),” 4(2) Catalysis in Industry 129-140 (2012);及びG.W. Coates, “シングルサイト金属触媒を用いるポリオレフィン立体化学の正確な制御(Precise control of polyolefin stereochemistry using single-site metal catalysts),” 100 Chem. Rev. 1223 (2000))。最も好ましくは、本明細書で有用なssPPを作るために使用するシングルサイト触媒は、例えば、US 8,318,875;US 8,143,353;及びUS 7,524,910に記載されているようないずれかのタイプの活性化化合物を伴うメタロセンである。
【0015】
従って、任意の実施形態では、シングルサイト触媒は、4族メタロセン、最も好ましくは非対称4族ビス架橋シクロペンタジエニルメタロセンから選択される。
さらに好ましくは、任意の実施形態では、4族メタロセン又は4族ビス架橋シクロペンタジエニルメタロセンは、2つのシクロペンタジエニル配位子及び/又はシクロペンタジエニル基にアイソローバルな(isolobal)配位子、例えばインデニル、ベンゾインデニル、フルオレニル、オクタヒドロフルオレニル、シクロオクタテトラエニル、シクロペンタフェナントレニル、その水素化又は部分的水素化型、その置換型、及びそのヘテロ環式型(好ましくは環炭素の窒素、酸素、硫黄、ケイ素、及び/又はリンによる置換)から選択されるもの等を含む(又はから成る)ものである。
「非対称」が意味することは、2つのシクロペンタジエニル配位子が互いに少なくとも置換のパターン及び独自性によって異なるが、最も好ましくは環構造自体が異なることである。
【0016】
炭化水素に関して本明細書で使用する場合、「その置換型」又は「置換される」は、指定炭化水素部分が、1個以上の水素、好ましくは1〜2個の水素の代わりに、C1-C6アルキル、好ましくはメチル若しくはエチル、フェニル若しくは他のC7-C20芳香族炭化水素(又は「アリール」)、アニリン、イミダゾール若しくは他の窒素ヘテロ環、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシラート、スクシナート、グリコール、及び/又はメルカプタンをも含み得ることを意味する。
任意の実施形態では、2つの配位子の少なくとも1つは、C1-C12アルキル、C3-C16イソアルキル、C6-C24アリール、C9-C24縮合多環アリール、C5-C20窒素及び/又は硫黄ヘテロ環、並びにその混ぜ合わせから選択される基で一置換又は二置換されている。さらに好ましくは、2つの配位子の少なくとも1つは、イソプロピル、イソブチル、tert-ブチル、フェニル、アルキルフェニル、及びジアルキルフェニルから選択される基で一置換又は二置換されている。また、任意の実施形態では、本明細書に記載のいずれの2つの配位子をも共有結合する架橋基は、少なくとも1つのフェニル基、アルキル置換フェニル基、又はシリル置換フェニル基を含む。
【0017】
任意の実施形態では、シングルサイト触媒は、下記構造体(I):
【化1】
【0018】
(ここで、Mは、4族金属、好ましくはジルコニウム又はハフニウムであり;Qは、ケイ素又は炭素であり;R’及びR”は、それぞれ独立にフェニル、アルキル置換フェニル、及びシリル置換フェニルから選択され;各Xは、独立にC1-C10アルキル、フェニル、及びハロゲンから選択され;R
1〜R
8は、それぞれ独立に水素、C1-C10アルキル、フェニル、及びアルキルフェニルから選択され;かつR
1’〜R
6’は、それぞれ独立に水素、C1-C10アルキル、及びフェニルから選択される)
から選択される。
【0019】
さらに好ましくは、シングルサイト触媒は、下記構造体(II):
【化2】
(II)
【0020】
(ここで、Mは、4族金属、好ましくはジルコニウム又はハフニウム、最も好ましくはハフニウムであり;Qは、ケイ素又は炭素、最も好ましくは炭素であり;R’及びR”は、それぞれ独立にフェニル、アルキル置換フェニル、及びシリル置換フェニル、最も好ましくはC1-C4若しくはC1-C6アルキル-シリル置換フェニルから選択され;各Xは、独立にC1-C10アルキル、フェニル、及びハロゲンから選択され;R
1〜R
8は、それぞれ独立に水素、C1-C10アルキル、フェニル、及びアルキルフェニルから選択され、最も好ましくはR
2及びR
7は、C2-C6直鎖若しくは分岐アルキルであり、残りのR基は水素原子であり;かつR
1’〜R
6’は、それぞれ独立に水素、C1-C10アルキル、及びフェニル、最も好ましくは水素から選択される。任意の実施形態では、上記任意の構造体のMはハフニウムであり、かつR’及びR”は、それぞれフェニル-p-トリ-(C1-C6)-シリル基である)
から選択される。
【0021】
また、環状オレフィンモノマーとエチレンの重合を引き起こすためには触媒前駆体を少なくとも1つの活性化剤と混ぜ合わせなければならず、活性化剤は、好ましくは非配位性ホウ酸アニオン及びかさ高い有機カチオンを含む。任意の実施形態では、非配位性ホウ酸アニオンは、テトラ(全フッ素置換C6-C14アリール)ホウ酸アニオン及びその置換型を含み;最も好ましくは非配位性ホウ酸アニオンは、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸アニオン又はテトラ(ペルフルオロナフチル)ホウ酸アニオンを含む。好ましくは、かさ高い有機カチオンは、下記構造体(IIIa)及び(IIIb):
【化3】
【0022】
(ここで、各R基は、独立に水素、C6-C14アリール(例えば、フェニル、ナフチル等)、C1-C10若しくは又はC1-C20アルキル、又はその置換型から選択され;さらに好ましくは少なくとも1つのR基は、C6-C14アリール又はその置換型である)
から選択される。
任意の実施形態では、かさ高い有機カチオンは、還元可能ルイス酸、特に触媒前駆体から配位子を引き出すことができるトリチル型カチオン((IIIa)中の各「R」基はアリール)であり、各「R」基はC6-C14アリール基(フェニル、ナフチル等)又は置換C6-C14アリールであり、好ましくは還元可能ルイス酸はトリフェニルカルベニウム及びその置換型である。
また、任意の実施形態では、かさ高い有機カチオンは、プロトンを触媒前駆体に供与できるブレンステッド酸であり、(IIIb)中の少なくとも1つの「R」基は水素である。一般的にこのタイプの典型的なかさ高い有機カチオンとしては、アンモニウム、オキソニウム、ホスホニウム、シリリウム、及びその混合物;好ましくはメチルアミン、アニリン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N-メチルアニリン、ジフェニルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、メチルジフェニルアミン、ピリジン、p-ブロモ-N,N-ジメチルアニリン、及びp-ニトロ-N,N-ジメチルアニリンのアンモニウム;トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、及びジフェニルホスフィンからのホスホニウム;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びジオキサン等のエーテルからのオキソニウム;並びにジエチルチオエーテル及びテトラヒドロチオフェン等のチオエーテルからのスルホニウム、並びにその混合物が挙げられる。
【0023】
触媒前駆体は、好ましくは活性化剤と混ぜ合わせると、活性化剤と反応して「触媒」又は「活性化触媒」を形成し、その結果モノマーの重合を引き起こすことができる。触媒は、モノマーと混ぜ合わせる前、モノマーと混ぜ合わせた後、又はモノマーと同時に混ぜ合わせて形成され得る。
任意の実施形態では、成分の混合による重合反応の結果は、0.5、又は1、又は2、又は4から10、又は15、又は20wt%までの範囲内の環状オレフィン由来単位、0、又は1wt%から10、又は15wt%までの範囲内のC4-C12αオレフィン由来単位を含み(又はから本質的に成り、若しくはから成り)、残りはエチレン由来単位である、ポリエチレンである。最も好ましくは、0.5、又は1、又は2、又は4から10、又は15、又は20wt%までの範囲内の環状オレフィン由来単位含み(又はから本質的に成り、若しくはから成り)、残りはエチレン由来単位である、ポリエチレンである。
【0024】
任意の実施形態では、環状オレフィン由来単位は、少なくとも1つのC5-C8環状構造を含むC5-C20オレフィン由来単位から選択される。任意の実施形態では、環状オレフィン由来単位はノルボルネン又はC1-C10アルキル置換ノルボルネン由来単位である。最も好ましくはポリエチレンは、環状オレフィン由来単位及びエチレン由来単位から成る。
ポリエチレンの分岐レベル並びにモル質量は、モノマーを触媒と混ぜ合わせて重合を引き起こすときに重合反応器に水素を添加する等のいずれの既知手段によっても制御可能である。任意の実施形態では、本明細書に記載のポリエチレンの数平均分子量(Mn)は、20、又は30kg/モルから60、又は80、又は100、又は140kg/モルまでの範囲内である。任意の実施形態では、ポリエチレンの質量平均分子量(Mw)は、80、又は100kg/モルから120、又は140、又は160、又は200、又は300kg/モルまでの範囲内である。任意の実施形態では、180kg/モルより大きいか、又は180、若しくは200、若しくは210kg/モルから250、若しくは280、若しくは300kg/モルまでの範囲内のz平均分子量(Mz)。任意の実施形態では、ポリエチレンは、2.5、若しくは2.3、若しくは2.2未満のMw/Mn、又は1、若しくは1.1、若しくは1.2から1.8、若しくは2、若しくは2.2、2.3、若しくは2.5までの範囲内のMw/Mn値を有する。任意の実施形態では、本明細書に記載のポリエチレンは、2.5、若しくは2未満、又は1.2、若しくは1.5から2若しくは2.5までの範囲内のMz/Mwを有する。
【0025】
任意の実施形態では、ポリエチレンは、長鎖(6〜10個の炭素原子より長い鎖)分岐が存在しないことを意味する実質的に直鎖状である。最も好ましくは、ポリエチレンは、0.95、又は0.96、又は0.97より大きいg’(又はg’
vis)値を有する。「1」という値は、理想的な直鎖状ポリエチレンを反映する。
ポリエチレンは、驚いたことに例えば低いずり速度で相対的に高く、高いずり速度で相対的に低い複素粘度を有することに反映されるているように、改善されたずり流動化を示す。この挙動は、例えば
図4のような負勾配を有するほぼ線形又は線形である複素粘度対ずり速度のプロットをもたらす。従って、任意の実施形態では、ポリエチレンは、190℃で0.01秒
-1のずり速度にて少なくとも70、若しくは80、若しくは90kPa・秒、又は70、若しくは80、若しくは90kPa・秒から120、若しくは140、若しくは160kPa・秒までの範囲内の複素粘度を有する。また、任意の実施形態では、ポリエチレンは、190℃で100秒
-1のずり速度にて40、若しくは30、若しくは20、若しくは10kPa・秒未満、又は40、若しくは30、若しくは20、若しくは10から5kPa・秒までの範囲内の複素粘度を有する。
【0026】
ポリエチレンは、驚いたことに例えば
図6dで実証されるような種々のずり速度で経時的に上昇する粘度を有することに反映されているように改善されたひずみ硬化を示す。好ましくはポリエチレンは、ピーク伸長粘度を超える検出可能な伸長粘度を示し、ピークに到達後にゼロ粘度に降下しない。従って任意の実施形態では、ポリエチレンは、150℃で0.1秒
-1のひずみ速度にて、少なくとも600、若しくは700、若しくは800、若しくは900kPa・秒(線形粘弾性限界、または「LVE」を上回る)又は600、若しくは700、若しくは800、若しくは900kPa・秒から1000、若しくは1500、若しくは2000kPa・秒までの範囲内のピーク伸長粘度を有する。また、任意の実施形態では、ポリエチレンは、150℃で0.1秒
-1のひずみ速度にて3、若しくは3.2より大きいか、又は3、若しくは3.2から4、若しくは5、若しくは6までの範囲内のひずみ硬化率(SHR)を有する。
任意の実施形態では、ポリエチレンは、原子間力顕微鏡法によって実証されるような棒状形態学を示し、凝固温度以下で幅1〜10nm及び長さ50〜1000nmの範囲内の寸法を有する。
【0027】
本明細書に記載のポリエチレンは、かなり多数の物品、例えばフィルム(200μm未満の平均厚さ)、シート(200μm以上の平均厚さ)、成形品(例えば、熱成形品、ブロー成形品、押出成形品等)、及び管類又は配管等に有用であり、これらはいずれも発泡又は非発泡であってよく、ポリエチレンを主ポリマー成分として単独で又は他のポリマー、例えばプロピレンベースインパクトコポリマー(propylene-based impact copolymer)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、高密度ポリエチレン(HDPE)、他の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ブチルベースポリマー、アリールポリエステルカーボナート、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、非晶質ポリアクリラート、ナイロン-6、ナイロン-6,6、さらなるポリアミド、ポリアラミド、ポリエーテルケトン、ポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、及びポリフッ化ビニリデン等と組み合わせて含む。フィルム、シート等では好ましくはポリエチレンを単独で、又は主成分として、すなわち、物品の質量で物品の50、又は60、又は70、又は80wt%超使用する。
【0028】
本明細書に記載のポリエチレンは、フィルム、特にブローフィルムに有用である。任意の実施形態では、本明細書に記載のポリエチレンを含む(又はから本質的に成る、又はから成る)、500、又は550、又は600g/ミル(kg/25mm)より大きい固有引裂(intrinsic Tear)、800、又は850、又は900%より大きい伸び、及び150、又は200、又は250、又は300MPaより大きいMD 1%セカント曲げ弾性率(Secant Flexural Modulus)を有するフィルムである。フィルムは、単層、二層、三層以上であってよく、1つ以上の層が1種以上のポリエチレンを含むか又は本質的に1種以上のポリエチレンから成る。
本明細書に記載のポリエチレン及びその形成方法に関して本明細書で開示する種々の記述要素及び数値範囲は、ポリエチレン及びそれを含む望ましい組成物を説明するために他の記述要素及び数値範囲と組み合わせることができ;さらに、所与の要素について、いずれの上限数値も本明細書に記載のいずれの下限数値と組み合わせることが、該組み合わせを許す管轄権内の例を含め、可能である。下記非限定例においてポリエチレンの特徴を実証する。
【実施例】
【0029】
試験方法
化学構造。500MHzのNMR機器、TCE-d2溶媒中、120℃で120スキャン。20±1mgのサンプルを0.7mlのd-溶媒に溶かすことによって、オレフィンブロックコポリマーのNMRデータを測定した。5mmのNMR管内120℃でサンプルが溶解するまでサンプルをTCE-d2に溶かす。標準物質は使用しない。TCE-d2はピークとして5.98ppmに現れ、サンプルの基準ピークとして用いた。
分子量特性及び分岐。3台のインライン検出器、すなわち示差屈折率検出器(DRI)、光散乱(LS)検出器、及び粘度計を装備した高温GPC(Agilent PL-220)を用いてMw、Mn及びMw/Mnを決定した。検出器の較正を含めた実験の詳細は、T. Sun, P. Brant、R. R. Chance、及びW. W. Graessleyによる論文、34(19) Macromolecules, 6812-6820 (2001)及びその中の参考文献に記載されている。3本のAgilent PLgel 10μm Mixed-B LSカラムを使用した。呼び流速は0.5mL/分であり、呼び注入量は300μLである。145℃で維持したオーブン内に種々の移送ライン、カラム、粘度計及び示差屈折計(DRI検出器)を収容した。4リットルのAldrich試薬グレードの1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)に酸化防止剤として6グラムのブチル化ヒドロキシトルエンを溶かすことによって実験用溶媒を調製する。次に0.1μmのテフロン(登録商標)(Teflon)フィルターを通してTCB混合物を濾過する。それからGPCに入る前にオンラインデガッサーでTCBを脱気する。乾燥ポリマーをガラス容器に入れ、所望量のTCBを添加してから、連続振盪しながら混合物を160℃で約2時間加熱することによってポリマー溶液を調製した。全ての量は重量測定法で測定した。質量/体積単位でポリマー濃度を表すために用いるTCB密度は、室温で1.463g/mlであり、145℃で1.284g/mlである。注入濃度は0.5〜2.0mg/mlであり、サンプルの分子量が大きいほど低濃度を使用する。各サンプルを流す前にDRI検出器及び粘度計をパージした。次に装置の流速を0.5ml/分に上げ、DRIを8時間安定化させた後に最初のサンプルを注入する。サンプルを流す少なくとも1〜1.5時間前にLSレーザーをオンにする。クロマトグラムの各点の濃度cは、ベースライン減算DRIシグナル、I
DRIから下記方程式を用いて計算する。
c=K
DRII
DRI/(dn/dc)
式中、K
DRIは、DRIを較正することによって決まる定数であり、(dn/dc)は、システムの屈折率増分である。145℃及びy=690nmでのTCBの屈折率、n=1.500。この記述を通じたパラメーターに関する単位はg/cm
3で表し、分子量はkg/モル又はg/モルで表し、固有粘度はdL/gで表す。
【0030】
LS検出器は、Wyatt Technology High Temperature DAWN HELEOSである。静的光散乱に関するZimmモデルを用いてLS出力を解析することによってクロマトグラムの各点の分子量Mを決定する(M.B. Huglin, Light Scattering from Polymer Solutions, Academic Press, 1971)。
【数1】
【0031】
ここで、ΔR(Θ)は、散乱角Θで測定された過剰なレイリー散乱強度であり、「c」は、DRI解析から決定されるポリマー濃度であり、A
2は、第2ビリアル係数である。P(Θ)は、単分散ランダムコイルの形状因子であり、K
oは、システムの光学定数である。
【数2】
【0032】
式中、N
Aは、アボガドロ数であり、(dn/dc)は、システムの屈折率増分であり、DRI法から得られるのと同じ値を取る。145℃及びy=657nmでのTCBの屈折率n=1.500。
2台の圧力変換器を備えるホイートストンブリッジ構造に配置された4本の毛細管を有する高温Viscotek Corporation粘度計を用いて比粘度を決定する。一方の変換器は検出器を横切る総圧力降下を測定し、ブリッジの両側間に位置する他方の変換器は差圧を測定する。それらの出力から、粘度計を通って流れる溶液の比粘度η
sを計算する。下記方程式からクロマトグラムの各点の固有粘度[η]を計算する。
η
s=c[η]+0.3(c[η])
2
式中、cは濃度であり、DRI出力から決定した。
【0033】
以下のようにGPC-DRI-LS-VIS法の出力を用いて分岐指数(g'
vis)を計算する。モデルとして、下記実施例2は、EP中の0wt%のプロピレン及び5.9wt%のENBを有するEPDMとして分析するように分析し;実施例1は、EP中の6.7wt%のプロピレン(ヘキセンの置換分として)及び9.3wt%のENB(NBの置換分として)を有するEPDMとして分析した。サンプルの平均固有粘度[η]
avgは下記式により計算する。
【数3】
【0034】
式中、総和は、積分限界間の全てのクロマトグラフィーの区画(slice)、iにわたる。
【0035】
分岐指数g’(又はg'
vis)は、以下のように定義される。
【数4】
M
vは、LS解析によって決まる分子量に基づく粘度平均分子量である。データ処理のために、使用したマルク・ホウインク(Mark-Houwink)定数はK=0.000579及びa=0.695だった。Mnの値は±50g/モル、Mwの値は±100g/モル、Mzの値は±200である。
ひずみ硬化。Anton-Paar MCR 501又はTA機器DHR-3でSER Universal Testing Platform (Xpansion Instruments, LLC)、モデルSER2-P又はSER3-Gを用いて伸長レオメトリーを行なった。SER(Sentmanat伸長レオメーター)試験プラットフォームは、US 6,578,413及びUS 6,691,569に記載されている。過渡的一軸伸長粘度測定の概要は、例えば、“一軸伸長流れにおける種々のポリオレフィンのひずみ硬化(Strain hardening of various polyolefins in uniaxial elongational flow),” 47(3) The Society of Rheology, Inc., J. Rheol., 619-630 (2003);及び“SER汎用試験プラットフォームを用いるポリエチレン溶融物の過渡的伸長レオロジーの測定(Measuring the transient extensional rheology of polyethylene melts using the SER universal testing platform),” 49(3) The Society of Rheology, Inc., J. Rheol., 585-606 (2005)に提供されている。ポリマーが一軸伸長を受けるとひずみ硬化が起こり、過渡的伸長粘度は、線形粘弾性理論から予測されるものより増大する。ひずみ硬化は、過渡的伸長粘度対時間のプロットにおいて伸長粘度の急激な上昇として観察される。ひずみ硬化率(SHR)は、伸長粘度の上昇を特徴づけるために使用され、同一ひずみにおける過渡的ゼロずり速度粘度の値の3倍と比べた最大過渡的伸長粘度の比と定義される。この比が1より大きい場合に該材料にひずみ硬化が存在する。SER機器は、シャーシ内に収容され、交差反転式ギアによって機械的に連結されたベアリングに取り付けられた対の主動及び従動巻取ドラムから成る。駆動軸の回転が、装着された主ドラムの回転と、従動ドラムの等しいが反対の回転をもたらし、ポリマーサンプルの末端を探ってドラムに押し上げさせ、結果としてサンプルを引き伸ばす。ほとんどの場合、固定クランプを用いてサンプルをドラムに取り付ける。伸長試験に加えて、過渡的定常ずり条件を利用してもサンプルを調べ、3という相関係数を用いて伸長データと一致させた。これは線形粘弾性包絡線(LVE)を与える。概算寸法が長さ18.0mm×幅12.70mmの矩形サンプル片をSER治具に載せた。一般的に3つのヘンキー(Hencky)ひずみ速度:0.01秒
-1、0.1秒
-1及び1秒
-1でサンプルを試験した。試験温度は150℃である。ポリマーサンプルは以下のように調製した:サンプル片を190℃でホットプレスし、治具に取り付け、150℃で平衡化した。
【0036】
ずり流動化。発明サンプル及びサンプルB21〜B25、並びにUS 5,942,587 (“Arjunan”)の「ECD」LLDPE (ECD-103)サンプルについて小角振動分光測定(Small Angle Oscillatory Spectroscopy)(SAOS)を行なった。ホットプレス(Carver Press又はWabash Press)を用いて調製したポリマーサンプルは直径25mm及び厚さ2.5mmの円盤であった。ずり流動化挙動を特徴づけるためにレオメーターARES-G2 (TA Instruments)を用いて、190℃で0.01〜500ラジアン/秒の範囲の各周波数及び10%の固定ひずみで小角振動ずり測定を行なった。次にデータをずり速度の関数として粘度に換算する。選択ひずみが線形変形範囲内の測定値を与えることを確実にするため、ひずみ掃引測定を行なった(100Hzの角周波数で)。Triosソフトウェアを用いてデータ処理した。
形態学。原子間力顕微鏡法(AFM)は、Asylum Research Cypher原子間力顕微鏡を用いて行なう形態学イメージング技術である。-120℃で滑らかな表面を作り出すため、スキャン前にサンプルをクライオミクロトームした(cryo-microtomed)。ミクロトーム後、デシケーター内N
2下でサンプルをパージした後に評価した。下記に従ってイメージングを行なった:機器をカンチレバーの基本(第1)モードにし、振幅を1.0Vに設定し、カンチレバーのフリーエア共鳴周波数の約5%下に駆動周波数を設定した。多周波数モードで実行する場合、より高いモード(カンチレバー及びホルダーに応じて第2、第3、又は第4)を選択し、振幅を100mVに設定し、共鳴時の駆動周波数を設定した。設定点を640mV、スキャン速度を1Hz、スキャン角度を90°に定めた。Asylum Research標準試料(10ミクロン×10ミクロンピッチの格子×200nm深さのピット)をAFM SQC並びにX、Y、及びZ較正に使用した。X-Yに関して真値の2%以内又はそれより正確に、Zに関して5%以内又はそれより正確になるように機器を較正した。代表的スキャンサイズは500×500nmであった。
【0037】
本明細書で使用する全ての他の試験方法を表1に示す。
【表1】
【0038】
実施例
全ての発明ポリマーは、1.0リットルの連続撹拌槽型反応器(オートクレーブ反応器)内での溶液プロセスを用いて調製した。オートクレーブ反応器は、撹拌機、温度コントローラー付き水冷/蒸気加熱要素、及び圧力コントローラーを装備した。溶媒及びモノマーをまず最初に精製カラムに通すことによって精製した。精製カラムは、定期的に(2回/年)又は低触媒活性の証拠があったときはいつでも再生した。重合溶媒としてイソヘキサンを使用した。Pulsaポンプを用いて溶媒を反応器に供給し、その流速をマスフローコントローラーで制御した。精製エチレン供給原料を反応器の上流のマニフォールドに供給し、その流速をもマスフローコントローラーで調節した。別のラインを通してイソヘキサン及びトリ-n-オクチルアルミニウム(TNOAL)及びコモノマー(1-ヘキセン、ノルボルネン、又は両方の混合物)の混合物を同マニフォールドに添加し、モノマーと溶媒を合わせた混合物を単一のチューブを用いて反応器に供給した。表1に示す量の水素を添加して分子量を制御し、ポリエチレンの分岐レベルを達成した。両重合例について反応温度をも110℃に制御したが、ポリエチレンの分子量及び分岐を達成するために反応温度を変えることもできる。
【0039】
まず最初にフード内の沸騰水蒸気テーブルに収集ポリマーを置いて大部分の溶媒と未反応モノマーを蒸発させてから真空オーブン内で90℃の温度にて約12時間乾燥させた。真空オーブン乾燥サンプルを秤量して収率を得た。ポリマーの1-ヘキセン含量はFTIR及び/又はNMRにより決定したのに対してポリマーのノルボルネン含量はNMRにより決定した。ポリマーの収率、組成及び反応器に供給したモノマーの量を用いてモノマーの転化率を計算した。触媒活性(触媒生産性とも呼ばれる)は、収率と触媒の供給速度に基づいて計算した。全ての反応は約2.2MPaのゲージ圧力で行なった。
重合に用いたシングルサイト触媒は、p-トリエチルシリルフェニルカルビルビス(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ハフニウムジメチルであり、用いた活性化剤はN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートであった。触媒も活性化剤もまず最初にトルエンに溶かし、この溶液を不活性雰囲気内で維持した。触媒と活性化剤の溶液を予混合し、ISCOシリンジポンプを用いて反応器に供給した。触媒と活性化剤の供給比(モル比)は0.98に設定した。トリ-n-オクチルアルミニウム(TNOAL)溶液(Sigma Aldrich, Milwaukee, WIから入手可能)をさらにイソヘキサンで希釈し、スカベンジャーとして使用した。
【0040】
発明例1のために、ノルボルネンモノマーをイソヘキサンに溶かし、窒素ガスを溶液の中で泡立てながら溶液を塩基性アルミナ床に通して流すことによって精製した。次に精製ノルボルネンをイソヘキサン及び1-ヘキセンと予混合してからコモノマー供給システムを用いて反応器の上流のマニホールドに混合物を供給した。発明例2のために、ノルボルネンをトルエンに溶かし、発明例1と同様に精製した。この溶液をイソヘキサンと予混合し、コモノマー供給システムを用いて反応器の上流のマニホールドに供給した。
プロセス条件の要約(表2)及び生成物特性(表3)は以下のとおりである。エチレン由来単位(「C2」)、1-ヘキセン由来単位(「C6」)及びノルボルネン由来単位(「NB」)は、ポリエチレン全体の質量に基づいて質量パーセントで表してある。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
NMRによるポリマーの特徴づけ。ポリマー生成物はプロトン核磁気共鳴(
1H NMR)分光法により特徴づけた。ターポリマー発明例1(ターポリマー)及び発明例2(コポリマー)の
1H NMRスペクトルをそれぞれ
図1及び
図2に示す。1.92〜約2.4ppm領域のピークをノルボルネンに割り当て、これらを用いてポリマー中のノルボルネン濃度を計算した。0.85〜約1.05ppm領域のピークを1-ヘキセンコモノマーの末端メチル基に割り当て、これらを用いてポリマー中のヘキセン由来単位濃度を計算した。
GPCによる狭いMW分布及び直線性。発明例1及び発明例2のGPCトレースを
図3に示す。両ポリマーは、単峰形分布及び狭い分子量分布(Mw/Mn<1.9)並びに1に近いg’値を示す。分子量は、Exceed(商標) 1018 LLDPE(Mw約108kg/モル)の分子量に匹敵する。
ポリエチレンコポリマーのずり流動化。発明コポリマーは、Exceed 1018 LLDPEに比べて強いずり流動化を示す(
図4)。参考として、US 5,942,587(“Arjunan”)に開示されたいくつかの以前の気相コポリマーの複素粘度対ずり速度のプロットを
図5に示す。該特許では実質的なずり流動化は観察されなかった(低いずり速度で粘度は増加せずに横ばい状態)。
【0044】
ひずみ硬化。150℃におけるポリマー溶融物の伸長粘度を
図6に示す。Exceed 1018 LLDPEには本質的にひずみ硬化がない(
図6a)。ポスト反応器ブレンド手法(低レベルの高環状ポリエチレンの添加)は中程度のひずみ硬化をもたらすが、溶融物は伸長すると容易に破壊する(
図6b)。Exceed 1018 LLDPEは8wt%のヘキセンコモノマーを含有し、Topas(商標)5013環状オレフィンコポリマー(COC)は78wt%のノルボルネンコモノマーを含有するので、10wt%のTopas 5013 COCとのExceed 1018 LLDPEブレンドは7wt%のヘキセン及び8wt%のノルボルネンを含有する。このブレンドと同様のコモノマー含量を有する発明例1は、優れたひずみ硬化を示す(
図6c)。さらに、発明例2もずっと改善されたひずみ硬化を有する(
図6d)。150℃、0.1秒
-1のひずみ速度でExceed 1018 LLDPEについて計算したSHRは1.6であり、10wt%のTopas 5018を有するExceed 1018については2.9であり、発明例1では3.4、発明例2のSHRは4であった。
機械的特性。発明ポリエチレン及びExceed 1018 LLDPE樹脂を圧縮成形し、結果として生じたフィルムを引張及び引裂試験に供した。データを表4にまとめる。比較目的で、Exceed 1018 LLDPE及び気相COCターポリマーのブローフィルムをも収載する。気相COCターポリマーのブローフィルムは典型的に3〜5ミル(76.2〜127μm)の厚さである。Exceed 1018ブローフィルムは厚さが約1ミル(25.4μm)である。全ての圧縮成形フィルムは厚さが約2ミル(50.8μm)である。全てのデータを厚さに対して正規化する。「GP」は、フィルムにブロー成形した気相生成LLDPE ターポリマーである。
【0045】
【表4】
【0046】
発明ポリエチレン(発明コポリマー2)は、Exceed 1018の2倍の引張弾性率を有し、US 5,942,587に従って作製された以前の気相ターポリマーに比べた改善を実証する。降伏強度は、Exceed 1018 LLDPEより35%高く、気相ターポリマーよりも高い。破断点伸びは、同様に加工されたExceed 1018 LLDPEのものより良い。発明ポリエチレンの引裂特性は、Exceed 1018 LLDPEの固有引裂強度の2倍であり、Exceed 1018 LLDPEのMD引裂強度の3倍であり、気相ターポリマーのMD引裂強度より70%高い。
溶液生成ポリエチレンの形態学的特性。発明ポリエチレンは、Exceed 1018 LLDPEと異なる独特の形態学をも有する(
図7a)。
図7b及び7cの二峰性AFMイメージに示されるように、両発明ポリエチレンは、おそらくポリマー鎖のノルボルネンに富むセグメントの集合体に起因する数ナノメートルの幅と50〜約500nmの長さの虫様構造を示す。これらの虫様構造は、代わりに交互の明暗セグメントを有し、まばらに分布しているノルボルネンコモノマー分を示している
図7aのポリエチレン結晶子のシシカバブ(shish-kabob)集合体とは非常に異なる。虫様集合体は主に非晶質相に存在する。結果として、それらはポリマーマトリックスを織って強化する。追加のヘキセンコモノマーを持たず、おそらくヘキセンコモノマーの中断なしでより高次の連続集合体が達成可能なので、発明コポリマー2サンプルには、より長い虫様集合体が見られる。形態学的特性は、ずり流動化、ひずみ硬化、及び機械的特性における発明コポリマー2サンプルの観察された改善と一致する。
【0047】
これらの結果は、US 5,942,587のような気相プロセスに比べて溶液プロセスで作ったときの発明ポリエチレンの驚くべき差異を実証する。発明ポリエチレンは、気相対抗物より大きいひずみ硬化並びにずり流動化を示す。従って、発明ポリエチレンは、フィルムブロープロセスにおいて改善された加工性及び生産性を有しながら、結果として生じるフィルムの機械的特性を維持又は増強する。発明ポリエチレンは、押出コーティング及び発泡品等の塗布に必要とされる改善された溶融強度をも提供することになる。
【0048】
ポリマー組成物又はポリマー成分における「から本質的に成る」という表現は、言及している組成物又はプロセスに、名前を挙げたもの以外の他の添加剤、モノマー、及び/又は触媒が存在しなこと、或いは、存在したとしても、組成物の質量で0.5、又は1.0、又は2.0、又は4.0wt%以下のレベルまでしか存在しないこと;及びプロセスにおいても、「プロセスは、...から本質的に成る」は、2つ以上の部分間の共有化学結合の形成を引き起こす他の主要プロセス工程、例えば、外部放射線への曝露、反応性架橋剤の添加、別の重合工程等が存在しないことを意味するが、要求どおりに共有結合形成速度をもたらす、例えば、温度若しくは圧力又は成分濃度の変化のようなささいなプロセスの特徴及び変化は存在してよい。「添加剤」には、酸化防止剤、酸スカベンジャー、フィラー、着色剤、アルキルラジカルスカベンジャー、UV吸収剤、炭化水素樹脂、滑り止め剤、粘着防止剤等のような一般的化合物が含まれる。
「参照による組み込み」という原則が適用される全ての管轄権のため、全ての試験方法、特許公開、特許及び参考論文は、参照によってそれら全体又はそれらが参照される関連部分が本明細書に組み込まれる。
なお、本発明は、以下の事項を含んでいると捉えることもできる。
[付記1]
0.5〜20wt%の範囲内の環状オレフィン由来単位、0wt%〜15wt%の範囲内のC4-C12αオレフィン由来単位を含み、残りはエチレン由来単位であり;かつ
2.5未満のMw/Mn;
80〜300kg/モルの範囲内の質量平均分子量(Mw);
0.95より大きいg’値;
190℃で0.01秒-1のずり速度にて少なくとも70kPa・秒の複素粘度;及び
190℃で100秒-1のずり速度にて40kPa・秒未満の複素粘度
を有する、ポリマー。
[付記2]
環状オレフィン、エチレン、及び場合によりC4-C12αオレフィンを溶液プロセスで混ぜ合わせて前記ポリマーが形成される、付記1に記載のポリマー。
[付記3]
凝固温度以下で幅1〜10nm及び長さ50〜1000nmの範囲内の寸法を有する棒状形態学を示す、付記1又は2に記載のポリマー。
[付記4]
1〜2.5の範囲内のMw/Mn値を有する、付記1〜3のいずれか1項に記載のポリマー。
[付記5]
180kg/モルより大きいか、又は180kg/モル〜300kg/モルの範囲内のz平均分子量を有する、付記1〜4のいずれか1項に記載のポリマー。
[付記6]
2.5未満のMz/Mwを有する、付記1〜5のいずれか1項に記載のポリマー。
[付記7]
190℃で0.01秒-1のずり速度にて70〜160kPa・秒の範囲内の複素粘度を有する、付記1〜6のいずれか1項に記載のポリマー。
[付記8]
190℃で100秒-1のずり速度にて40〜5kPa・秒の範囲内の複素粘度を有する、付記1〜7のいずれか1項に記載のポリマー。
[付記9]
150℃で0.1秒-1のひずみ速度にてLVEを少なくとも600kPa・秒上回る伸長粘度を有する、付記1〜8のいずれか1項に記載のポリマー。
[付記10]
150℃で0.1秒-1のひずみ速度にて3より大きいひずみ硬化率(SHR)を有する、付記1〜9のいずれか1項に記載のポリマー。
[付記11]
前記環状オレフィン由来単位が、少なくとも1つのC5-C8環状構造を含むC5-C20オレフィン由来単位から選択される、付記1〜10のいずれか1項に記載のポリマー。
[付記12]
前記環状オレフィン由来単位がノルボルネン又はC1-C10アルキル置換ノルボルネン由来単位である、付記1〜11のいずれか1項に記載のポリマー。
[付記13]
環状オレフィン由来単位及びエチレン由来単位から成る、付記1〜12のいずれか1項に記載のポリマー。
[付記14]
シングルサイト触媒をも混ぜ合わせる、付記2に記載のポリマー。
[付記15]
前記シングルサイト触媒が、下記構造体:
(ここで、
Mは、4族金属であり;
Qは、ケイ素又は炭素であり;
R’及びR”は、それぞれフェニル、アルキル置換フェニル、及びシリル置換フェニルから選択され;
各Xは、独立にC1-C10アルキル、フェニル、及びハロゲンから選択され;
R1〜R8は、それぞれ独立に水素、C1-C10アルキル、フェニル、及びアルキルフェニルから選択され;かつ
R1’〜R6’は、それぞれ独立に水素、C1-C10アルキル、及びフェニルから選択される)
から選択される、付記14に記載のポリマー。
[付記16]
前記シングルサイト触媒が、下記:
(ここで、
Mは、4族金属であり;
Qは、ケイ素又は炭素であり;
R’及びR”は、それぞれ独立にフェニル、アルキル置換フェニル、及びシリル置換フェニルから選択され;
各Xは、独立にC1-C10アルキル、フェニル、及びハロゲンから選択され;
R1〜R8は、それぞれ独立に水素、C1-C10アルキル、フェニル、及びアルキルフェニルから選択され;かつ
R1’〜R6’は、それぞれ独立に水素、C1-C10アルキル、及びフェニルから選択される)
から選択される、付記14に記載のポリマー。
[付記17]
付記1〜16のいずれか1項に記載のポリマーを含み、500g/ミルより大きい固有引裂、800%より大きい伸び、及び150MPaより大きいMD 1%セカント曲げ弾性率を有する、フィルム。
[付記18]
付記1〜16のいずれか1項に記載のポリマーを含む、熱成形品、発泡品、又は押出被覆品。
[付記19]
溶液中で環状オレフィン、エチレン、水素及び場合によりC4-C12αオレフィンをシングルサイト触媒と混ぜ合わせてポリマーを形成することを含む、ポリマーの形成プロセスであって、前記シングルサイト触媒が、下記構造体:
(ここで、
Mは、4族金属であり;
Qは、ケイ素又は炭素であり;
R’及びR”は、それぞれフェニル、アルキル置換フェニル、及びシリル置換フェニルから選択され;
各Xは、独立にC1-C10アルキル、フェニル、及びハロゲンから選択され;
R1〜R8は、それぞれ独立に水素、C1-C10アルキル、フェニル、及びアルキルフェニルから選択され;かつ
R1’〜R6’は、それぞれ独立に水素、C1-C10アルキル、及びフェニルから選択される)
から選択され;
前記ポリマーは、0.95より大きいg’値を有する、
前記プロセス。
[付記20]
前記シングルサイト触媒が、下記:
(ここで、
Mは、ジルコニウム又はハフニウムであり;
Qは、ケイ素又は炭素であり;
R’及びR”は、それぞれ独立にフェニル、アルキル置換フェニル、及びシリル置換フェニルから選択され;
各Xは、独立にC1-C10アルキル、フェニル、及びハロゲンから選択され;
R1〜R8は、それぞれ独立に水素、C1-C10アルキル、フェニル、及びアルキルフェニルから選択され;かつ
R1’〜R6’は、それぞれ独立に水素、C1-C10アルキル、及びフェニルから選択される)
から選択される、
付記19に記載のプロセス。
[付記21]
前記ポリマーが、0.5〜20wt%の範囲内の環状オレフィン由来単位、0wt%〜15wt%の範囲内のC4-C12αオレフィン由来単位を含み、残りはエチレン由来単位である、付記19又は20に記載のプロセス。
[付記22]
前記ポリマーが、2.5未満のMw/Mn;及び80,000〜300,000g/モルの範囲内の質量平均分子量(Mw)を有する、付記19〜21のいずれか1項に記載のプロセス。
[付記23]
前記シングルサイト触媒を80℃〜150℃の範囲内の温度でモノマーと混ぜ合わせる、付記19〜22のいずれか1項に記載のプロセス。
[付記24]
シングルサイト触媒を用いて溶液重合プロセスによって得られるポリマーであって、0.5〜20wt%の範囲内の環状オレフィン由来単位、0wt%〜15wt%の範囲内のC4-C12αオレフィン由来単位を含み、残りはエチレン由来単位であり;かつ
2.5未満のMw/Mn;
80〜300kg/モルの範囲内の質量平均分子量(Mw);
0.95より大きいg’値
を有する、前記ポリマー。
[付記25]
凝固温度以下で幅1〜10nm及び長さ50〜1000nmの範囲内の寸法を有する棒状形態学を示す、付記24に記載のポリマー。
[付記26]
190℃で0.01秒-1のずり速度にて少なくとも70kPa・秒の複素粘度;及び190℃で100秒-1のずり速度にて40kPa・秒未満の複素粘度を有する、付記24に記載のポリマー。
[付記27]
500g/ミルより大きい固有引裂、800%より大きい伸び、及び150MPaより大きいMD 1%セカント曲げ弾性率を有するフィルムであって、0.5〜20wt%の範囲内の環状オレフィン由来単位、0wt%〜15wt%の範囲内のC4-C12αオレフィン由来単位を含み、残りはエチレン由来単位であるポリマーを含み;前記ポリマーは、
2.5未満のMw/Mn;
80〜300kg/モルの範囲内の質量平均分子量(Mw);
0.95より大きいg’値;
190℃で0.01秒-1のずり速度にて少なくとも70kPa・秒の複素粘度;及び
190℃で100秒-1のずり速度にて40kPa・秒未満の複素粘度
を有する、前記フィルム。