特許第6948443号(P6948443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6948443デマンド電力抑制手段を備えた電動射出成形機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6948443
(24)【登録日】2021年9月22日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】デマンド電力抑制手段を備えた電動射出成形機
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/14 20060101AFI20210930BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20210930BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20210930BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20210930BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20210930BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20210930BHJP
   B29C 45/84 20060101ALI20210930BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   H02J3/14
   H02J3/32
   H02J3/38 110
   H02J3/00 130
   B29C45/76
   B29C45/17
   B29C45/84
   B22D17/32 Z
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-126123(P2020-126123)
(22)【出願日】2020年7月27日
【審査請求日】2020年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】岩田 啓
【審査官】 下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−189935(JP,A)
【文献】 特開2020−028999(JP,A)
【文献】 特開2006−158146(JP,A)
【文献】 特開2010−240915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 − 5/00
B29C 45/76
B29C 45/17
B29C 45/84
B22D 15/00 − 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータによって各種装置が駆動されるようになっていると共にヒータによって加熱シリンダが加熱されるようになっている、蓄電装置を備えた電動射出成形機であって、
前記電動射出成形機は第1、2の運転モードからなる運転モードを備え、工場から供給される交流電力である工場電力と、前記蓄電装置から供給される蓄電電力とで切り換え可能に運転できるようになっており、
前記第1の運転モードは前記電動モータと前記ヒータとに前記工場電力が供給され、前記第2の運転モードは前記電動モータと前記ヒータとに前記蓄電電力が供給されるようになっており、
前記電動射出成形機は、前記第1の運転モードで運転しているとき、工場に設けられているデマンド監視装置から工場の受電電力を受信し、30分毎の電力積算値であるデマンド電力を逐次予測し、該予測したデマンド電力が予め設定されている所定の許容電力を超過したら、前記電動射出成形機のコントローラにおいて警報を出力し、オペレータに対して前記運転モードの切り換えを促すようになっていることを特徴とする蓄電装置を備えた電動射出成形機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動射出成形機において、前記運転モードは、前記第1、2の運転モードに加えて第3、4の運転モードからなり、
前記第3の運転モードは、前記電動モータには前記工場電力が、前記ヒータには前記蓄電電力がそれぞれ供給され、
前記第4の運転モードは、前記電動モータには前記蓄電電力が、前記ヒータには工場電力がそれぞれ供給されるようになっていることを特徴とする蓄電装置を備えた電動射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置を備えた電動射出成形機であって、工場から供給される電力と蓄電装置からの電力とを適宜切り換えて運転することができるようになっている電動射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動射出成形機は工場に設置され、工場から供給される三相交流電力によって駆動される。周知のように電動射出成形機は、工場からの三相交流電力を直流電力に変換するコンバータと、この直流電力を所望の三相交流電力に変換するインバータとが設けられ、インバータによって生成された三相交流電力によって各種装置を駆動するモータが駆動されるようになっている。電動射出成形機には、例えば特許文献1において提案されているような、蓄電装置を備えた電動射出成形機もある。蓄電装置はコンバータの出力側つまり直流電圧線に接続するようにし、成形サイクルの各工程のうち電力の消費が比較的少ない工程においては、コンバータが変換する直流電力の一部を蓄電させるようにする。そして、インバータが大電力を必要とする工程、具体的には射出工程においては蓄電装置から電力を供給させる。そうすると、電動射出成形機全体として消費電力が平滑化されることになる。また、このように蓄電装置を備えた電動射出成形機の中には、停電が発生して工場からの三相交流電力が得られなくなっても蓄電装置に蓄電されている電力で所定時間成形サイクルを運転できるようになっているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−8397号公報
【特許文献2】特開2010−240915号公報
【0004】
電動射出成形機が設置されている工場では、受電電力を30分毎に積算した、いわゆるデマンド電力の最大値に応じて、電気料金に関係する契約電力が決定される。従って、工場においては、デマンド電力の最大値が所定の範囲を超過しないように留意されている。特許文献2には、デマンド電力が所定の範囲を超過しないように管理する射出成形機の電力管理システムが提案されている。このシステムにおいては、それぞれの射出成形機に電力測定器を設け、各電力測定器において射出成形機において使用されている電力を所定のサンプリング周期で積算する。これらの射出成形機はネットワークを介して所定の管理装置に接続されており、それぞれの射出成形機において積算された使用電力が管理装置に送られる。管理装置では、これらを集計して、あらかじめ設定された最大許容電力量と比較する。最大許容電力量を超えそうだと判断したときは、管理装置は1台以上の所定の射出成形機に通知して、電力削減措置を実施させる。通知された射出成形機では、電力削減措置として成形サイクルを停止したり、ヒータ設定温度を低下させる等の対応を実施する。このようにして、射出成形機の電力管理システムを運転すると、結果的に工場のデマンド電力を所定の範囲内に維持することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の射出成形機は消費電力を平滑化することができるので優れている。また特許文献2に記載の射出成形機の電力管理システムは複数台の射出成形機の使用電力の合計が最大許容電力量にならないようにするので、工場のデマンド電力を抑制する効果が高く優れている。しかしながら、デマンド電力の抑制に関して解決すべき課題も見受けられる。例えば特許文献1に記載の射出成形機については、消費電力を平滑化することはできるが、消費電力の変動を緩和することが目的であって、所定のデマンド電力を超えないよう消費電力をコントロールしているわけではない。工場全体の受電電力と連動して駆動するわけではないので、デマンド電力が大きくなって所定の値を超えそうになっても、消費電力をゼロにすることはできない。つまり工場のデマンド電力の抑制はできない。一方特許文献2に記載の射出成形機の電力管理システムの場合には、電力削減措置をとらせる点に問題が見受けられる。すなわち、複数台の射出成形機の使用電力量が最大許容電力量を越えたら、対象となる射出成形機に対して電力削減措置として、成形サイクルの停止等をさせることになる。そうすると生産効率が低下してしまう。デマンド電力を抑制する効果は高いが、生産効率が低下するのは問題がある。
【0006】
本発明は、上記したような問題点を解決した電動射出成形機を提供することを目的としており、具体的には工場のデマンド電力を抑制することができ、抑制に際しては生産効率を低下させることがない電動射出成形機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、蓄電装置を備えた電動射出成形機を対象とする。電動射出成形機は第1〜4の運転モードを設ける。第1の運転モードは、電動射出成形機の電動モータとヒータのいずれにも工場からの電力つまり工場電力を供給するモードとする。第2の運転モードは電動モータとヒータとに蓄電装置からの蓄電電力を供給する。第3の運転モードは電動モータには工場電力を、ヒータには蓄電電力を供給し、第4の運転モードは電動モータには蓄電電力を、ヒータには工場電力を供給する。電動射出成形機は前記第1の運転モードで運転しているとき、デマンド監視装置から工場の受電電力を受信し、デマンド電力を逐次予測する。予測したデマンド電力が目標デマンド電力を越えたら警報を発し、オペレータに対して運転モードの切換を促す。
【0008】
すなわち本発明は、電動モータによって各種装置が駆動されるようになっていると共にヒータによって加熱シリンダが加熱されるようになっている、蓄電装置を備えた電動射出成形機であって、前記電動射出成形機は第1、2の運転モードからなる運転モードを備え、工場から供給される交流電力である工場電力と、前記蓄電装置から供給される蓄電電力とで切り換え可能に運転できるようになっており、前記第1の運転モードは前記電動モータと前記ヒータとに前記工場電力が供給され、前記第2の運転モードは前記電動モータと前記ヒータとに前記蓄電電力が供給されるようになっており、前記電動射出成形機は、第1の運転モードで運転しているとき、工場に設けられているデマンド監視装置から工場の受電電力を受信し、30分毎の電力積算値であるデマンド電力を逐次予測し、該予測したデマンド電力が予め設定されている所定の目標デマンド電力を超過したら、前記電動射出成形機のコントローラにおいて警報を出力し、オペレータに対して前記運転モードの切り換えを促すようになっていることを特徴とする蓄電装置を備えた電動射出成形機として構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電動射出成形機において、前記運転モードは、前記第1、2の運転モードに加えて第3、4の運転モードからなり、前記第3の運転モードは、前記電動モータには前記工場電力が、前記ヒータには前記蓄電電力がそれぞれ供給され、前記第4の運転モードは、前記電動モータには前記蓄電電力が、前記ヒータには工場電力がそれぞれ供給されるようになっていることを特徴とする蓄電装置を備えた電動射出成形機として構成される。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明は、電動モータによって各種装置が駆動されるようになっていると共にヒータによって加熱シリンダが加熱されるようになっている、蓄電装置を備えた電動射出成形機であって、電動射出成形機は第1、2の運転モードからなる運転モードを備え、工場から供給される交流電力である工場電力と、蓄電装置から供給される蓄電電力とで切り換え可能に運転できるようになっており、第1の運転モードは電動モータとヒータとに工場電力が供給され、第2の運転モードは電動モータとヒータとに蓄電電力が供給されるようになっている。つまり、運転に必要な電力を工場電力から供給するか、蓄電電力から供給するか切り換えられるようになっている。そして本発明によると電動射出成形機は、第1の運転モードで運転しているとき、工場に設けられているデマンド監視装置から工場の受電電力を受信し、30分毎の電力積算値であるデマンド電力を逐次予測し、該予測したデマンド電力が予め設定されている所定の許容電力を超過したら、電動射出成形機のコントローラにおいて警報を出力し、オペレータに対して運転モードの切り換えを促すように構成されている。電動射出成形機の運転モードを第2の運転モードに切り換えると、その後は工場電力を消費しないで済む。そうすると、デマンド電力を抑制できる効果が得られる。そしてこの切り換えはオペレータの判断によって実施するので、必要性、緊急性を勘案して切換を決定すれば、工場全体にとって最適な判断ができる。他の発明によると、運転モードは、第1、2の運転モードに加えて第3、4の運転モードからなり、第3の運転モードは、電動モータには工場電力が、ヒータには蓄電電力がそれぞれ供給され、第4の運転モードは、電動モータには蓄電電力が、ヒータには工場電力がそれぞれ供給されるようになっている。この発明によると、電動射出成形機に必要な電力のうち一部を蓄電電力からまかなうので、工場電力もある程度は消費する。しかしながら、予測されるデマンド電力が許容電力よりわずかに大きいだけであるときには、第3、4の運転モードを選択して切り換えるだけで、工場のデマンド電量が許容電力を越えないようにすることができる。そして、蓄電電力の消費は少なくて済むので蓄電装置に対する負担も小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】工場の電力システムと、工場に設置されている本発明の実施の形態に係る電動射出成形機の電力システムとを示すブロック図である。
図2】デマンド監視装置から受信される受電電力の積算値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1には、本発明の実施の形態に係る電動射出成形機1が設置されている工場の電力システムが示されているが、工場には電力会社から送電される高圧電力を受電する受電設備3が設けられている。高圧電力は受電設備3によって、例えば200V等の三相交流電力に降圧され、工場内の配電線4に供給されている。工場にはプレス機、NC工作機械等の各種の産業機械が設けられ配電線4から電力供給されている。これらの産業機械は工場内負荷5a、5b、…として示されている。本発明の実施の形態に係る電動射出成形機1も工場内負荷の1つであり、配電線4に接続され三相交流電力が供給されるようになっている。受電設備3には、電力会社から供給される電力を測定し、この電力を積算して所定の単位時間毎、具体的には30分毎の電力量であるデマンド電力を計算するデマンド監視装置8が設けられている。デマンド監視装置8はいわゆるスマートメータであってもよい。
【0012】
本実施の形態に係る電動射出成形機1は、内部に内部配電線10が設けられており、内部配電線10は所定の端子盤11を介して配電線4に接続されて電力供給を受けている。内部配電線10はその一部が分岐してコンバータ13に接続されている。より詳しくは、コンバータ13は、遮断器14を介して内部配電線10に接続されている。従って遮断器14を操作するとコンバータ13への電力の供給を遮断できるようになっている。コンバータ13は周知のように三相交流電力を所定の直流電圧に変換するようになっており、出力側には直流電圧線15が接続されている。本実施の形態においては、この直流電圧線15に昇圧チョッパ回路からなるDC/DC変換器18が設けられている。これによって昇圧された直流電圧がインバータ17、17、…に供給されるようになっている。次に説明するように、本実施の形態において直流電圧線15には蓄電に適した比較的低圧の直流電圧が供給されているからであり、インバータ17、17、…の駆動に適した直流電圧に昇圧することが好ましいからである。インバータ17、17、…では所望の三相交流電圧が生成されて電動モータM、M、…に供給される。すなわち電動モータM、M、…が駆動され、各種装置が作動するようになっている。なお、本実施の形態においてはこのようにインバータ17、17、…DC/DC変換器18を介して直流電圧線15に接続されて直流電圧が昇圧されるようになっているが、直流電圧線15に高圧の直流電圧を供給し、インバータ17、17、…を直接に直流電圧線15に接続するようにしてもよい。
【0013】
本実施の形態に係る電動射出成形機1においては、直流電圧線15に蓄電装置20が設けられている。蓄電装置20は蓄電池、電気二重層キャパシタ等からなるが、本実施の形態において直流電圧線15には比較的低圧の直流電力が供給されているので、蓄電装置20は直接この直流電圧線15に接続されている。蓄電装置20には直流電圧線15から直流電力の供給を受けて蓄電したり、蓄電された電力を直流電圧線15に供給するようになっている。従って、遮断器14を遮断して内部配電線10からの電力供給を停止しているとき、蓄電装置20からの電力によって電動モータM、M、…を駆動できる。本実施の形態においては、電動射出成形機1を制御するコントローラ21は、この蓄電装置20からの直流電圧を降圧チョッパ回路からなるDC/DC変換器23を介してさらに降圧させ制御用電力用として利用されている。従って遮断器14を遮断しても、コントローラ21は動作できる。なお、本実施の形態においては蓄電装置20は直流電圧線15に直接接続されているが、変形することもできる。具体的には直流電圧線15は高圧の直流電力を供給するようにし、蓄電装置20はいわゆる降圧チョッパ回路を介して直流電圧線15に接続して降圧して低圧にされた直流電圧を受けるように変形できる。
【0014】
本実施の形態に係る電動射出成形機1にも、加熱シリンダにヒータ24が設けられているが、このヒータ24には、工場からの三相交流電力を供給することもできるし、蓄電装置20に蓄電されている電力を供給することもできるようになっている。これを説明する。まず内部配電線10は、その分岐がサイリスタからなるバイパススイッチ26に接続され、バイパススイッチ26からヒータ24に接続されている。バイパススイッチ26は切換スイッチになっているが、内部配電線10側に切り換えられているときは、工場からの三相交流電力が直接ヒータ24に供給されることになる。一方蓄電装置20には、昇圧チョッパ回路からなるDC/DC変換器27を介してインバータ28が設けられている。蓄電装置20からの直流電圧が昇圧された後に、インバータ28によって三相交流電力が生成されるようになっている。インバータ28の出力は電力波形を滑らかにする出力用LCフィルタ29を介してバイパススイッチ26に接続されている。つまり工場内の三相交流電力と同じ電圧で同等の三相交流電力がバイパススイッチ26に供給されるようになっている。バイパススイッチ26が蓄電装置20からの電力供給に切り換えられているときは、インバータ28が生成した三相交流電力がヒータ24に供給されることになる。バイパススイッチ26はサイリスタから構成されているので、いわゆるゼロクロス動作により電力供給先を切り換えることができる。従って、ヒータ24には工場からの三相交流電力と、蓄電装置20、インバータ28経由で生成される三相交流電力とがシームレスに切り換えられて供給することができる。
【0015】
本実施の形態に係る電動射出成形機1は、電動射出成形機1の各装置を駆動する電力に関して供給源を変更でき、オペレータが選択することができる第1〜4の運転モードが用意されている。第1の運転モードは、遮断器14をONにして電動モータM、M、…の電力を工場からの三相交流電力すなわち工場電力によってまかない、ヒータ24についてもバイパススイッチ26を内部配電線10側に切り換えて工場電力を供給するモードになっている。このように第1の運転モードは電動射出成形機1が必要とする電力を全て工場電力によってまなかうモードになっている。なお、蓄電装置20の蓄電量が不十分であるときにはこの運転モードにおいて蓄電するようにする。第2の運転モードは、遮断器14をOFFにして電動モータM、M、…には蓄電装置20からの電力つまり蓄電電力を供給するようにし、ヒータ24についてもバイパススイッチ26を蓄電装置20からの電力供給に切り換えて蓄電電力を供給するモードになっている。つまり電動射出成形機1は蓄電電力のみによって運転し、工場電力は消費されない。第3の運転モードは、遮断器14をONにして電動モータM、M、…に工場電力を供給するが、ヒータ24についてはバイパススイッチ26を蓄電装置20からの電力供給に切り換えて蓄電電力を供給するモードになっている。電動射出成形機1に対して必要となる工場電力は、第1の運転モードより少なくなる。第4の運転モードは、遮断器14をOFFにして電動モータM、M、…に蓄電電力を供給するが、ヒータ24についてはバイパススイッチ26を内部配線10側に切り換えて工場電力を供給するモードになっている。第4の運転モードも、電動射出成形機1に対して必要となる工場電力が第1の運転モードより少なくなる。
【0016】
本発明の実施の形態に係る電動射出成形機1は、工場のデマンド電力を予測して、デマンド電力が許容範囲を超えると判断したら、これを防止するための対応手段をオペレータに提供するようになっている。対応手段は、第1〜4の運転モードの切換であり、切換の必要があるときオペレータに通知するようになっている。まず、デマンド電力を予測するために、本実施の形態に係る電動射出成形機1のコントローラ21は、デマンド監視装置8に接続されてデマンド監視装置8から必要な情報を得ている。具体的に説明すると、デマンド監視装置8は、受電電力を積算し30分間の電力量を求めてこれをデマンド電力として計算しているが、受電電力の積算は30分毎に0にリセットして積算を繰り返すようにしている。この積算中の受電電力の積算値をコントローラ21は逐次受信している。電動射出成形機1のコントローラ21は逐次受信する受電電力の積算値からデマンドを予測するが、コントローラ21には2個の設定値が予め設定されている。第1の設定値は、デマンド電力の許容値である許容電力である。許容電力は、例えば500kWh等が設定され、工場の契約電気料金の基準となっている最大デマンド電力、もしくはそれよりも若干小さい値が設定されている。第2の設定値は予測開始タイミングである。予測開始タイミングは例えば10分、15分等に設定されている。受電電力の積算値は30分毎に0にリセットされるが、リセット後、この予測開始タイミングの時間が経過したらデマンド電力の予測を行う。
【0017】
図2のグラフには、コントローラ21が逐次受信する受電電力の積算値31が実線のグラフで示されている。現在の時刻が予測開始タイミング32に達したら、その後の受電電力の予測積算値34を予測する。予測のアルゴリズムは任意とすることができるが、受電電力の積算値31の最新値31aと原点0とを結ぶ直線によって、受電電力の予測積算値34を与えるようにすると簡単に計算できる。受電電力の予測積算値34から30分後の電力量、すなわちデマンド電力の予測値35を計算する。デマンド電力の予測値35が許容電力37を超えていれば、コントローラ21は警報を出力する。電動射出成形機1が第1の運転モードで運転しているとき、コントローラ21は付属するモニタに運転モードの切り換え用の所定の画面を表示し、オペレータに対して第2〜4の運転モードのいずれかを選択するように促す。オペレータが、運転モードの切換を実施すると、前記したように第1の運転モードに比して、電動射出成形機1が消費する工場電力は少なくなる。あるいは0になる。そうすると工場のデマンド電力が許容電力37を超過することを防止できる。
【0018】
なお、電動射出成形機1が第3、4の運転モードで運転しているときにも、デマンド電力の予測値35が許容電力37を超えることが予測されたら、コントローラ21は付属するモニタに運転モードの切り換え用の画面を表示してよい。この場合には、例えば第2の運転モードへの切換が推奨される。
【0019】
電動射出成形機1のコントローラ21は、30分が経過して受電電力の積算値が0にリセットされたら、その旨メッセージ等を出力し、オペレータに通知する。オペレータは運転モードを第1の運転モード等に切り換える。あるいはコントローラ21は、自動的に運転モードを切換前のモードに戻してもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 電動射出成形機 3 受電設備
4 配電線 8 デマンド監視装置
10 内部配電線 13 コンバータ
14 遮断器 15 直流電圧線
17 インバータ 18 DC/DC変換器
20 蓄電装置 21 コントローラ
24 ヒータ 26 バイパススイッチ
27 DC/DC変換器 28 インバータ
29 出力用LCフィルタ 31 受電電力の積算値
32 予測開始タイミング 34 受電電力の予測積算値
35 デマンド電力の予測値 37 許容電力
【要約】
【課題】生産効率を低下させずに工場のデマンド電力を抑制できる電動射出成形機を提供する。
【解決手段】電動射出成形機(1)に蓄電装置(20)を設け、第1〜4の運転モードを用意する。電動射出成形機(20)には各種電動モータ(M)とヒータ(24)とがあるが、第1の運転モードは電動モータ(M)とヒータ(24)とに工場電力を供給する。第2の運転モードはこれらに蓄電装置(20)からの蓄電電力を供給する。第3の運転モードは電動モータ(M)には工場電力を、ヒータ(24)には蓄電電力を供給し、第4の運転モードは電動モータ(M)には蓄電電力を、ヒータ(24)には工場電力を供給する。電動射出成形機(1)は、デマンド監視装置(8)から工場の受電電力の積算値を受信し、デマンド電力を逐次予測する。デマンド電力の予測値(34)が許容電力(37)を越えたら警報を発し、オペレータに対して運転モードの切換を促す。
【選択図】図2
図1
図2