(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948467
(24)【登録日】2021年9月22日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】多様なガス水素環境下で材料脆化挙動の定量的評価が可能なスモールパンチ試験装置
(51)【国際特許分類】
G01N 3/18 20060101AFI20210930BHJP
G01N 17/00 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
G01N3/18
G01N17/00
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-531413(P2020-531413)
(86)(22)【出願日】2018年9月13日
(65)【公表番号】特表2020-534544(P2020-534544A)
(43)【公表日】2020年11月26日
(86)【国際出願番号】KR2018010789
(87)【国際公開番号】WO2019083163
(87)【国際公開日】20190502
【審査請求日】2020年2月19日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0140180
(32)【優先日】2017年10月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520058860
【氏名又は名称】アンドン ナショナル ユニバーシティ インダストリー−アカデミック コーオペレイション ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】ANDONG NATIONAL UNIVERSITY INDUSTRY−ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100125450
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 広明
(72)【発明者】
【氏名】シン・ヒョンソプ
(72)【発明者】
【氏名】ペ・ギョンオ
【審査官】
伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−077696(JP,A)
【文献】
特開2016−075612(JP,A)
【文献】
松本佳久,その場小型パンチ試験による5族水素透過膜の延性−脆性遷移水素濃度(DBTC)解析,日本金属学会誌,2013年12月01日,77巻,12号,585−592頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00 − 3/62
G01N 17/00 − 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上・下部ダイからなる治具の内部に試験片が固定され、試験片の下部にガスが充填され、上部に力を加えるパンチが含まれ、流入されたガスの環境下で試験片を垂直下方に曲げ変形させて測定するスモールパンチ試験機;
上記治具を内部に包むように設けられる断熱容器;
上記断熱容器の内部に連結されて上記断熱容器の内部の温度と上記試験片の温度を測定する温度測定器;
上記治具の外周面に設けられ、外部の熱伝逹手段によって上記試験片を加熱又は冷却させて熱伝逹されるようにする熱伝達器;及び、
上記試験片の既に設定されている温度に合うように上記熱伝達器を制御する制御器;が含まれることを特徴とする多様なガス水素環境下で材料脆化挙動の定量的評価が可能なスモールパンチ試験装置。
【請求項2】
上記熱伝達器は、
上記治具の外周面に巻かれ、内部に冷媒又は熱媒体を循環させる管を含み、熱伝導により上記試験片に熱伝逹することを特徴とする
請求項1に記載の多様なガス水素環境下で材料脆化挙動の定量的評価が可能なスモールパンチ試験装置。
【請求項3】
上記熱伝達器は、
上記治具の外周面に巻かれ、内部に気化された低温冷媒ガスが供給されて上記断熱容器の内部に噴射されることを特徴とする
請求項1に記載の多様なガス水素環境下で材料脆化挙動の定量的評価が可能なスモールパンチ試験装置。
【請求項4】
上記熱伝達器は、
上記治具の外周面に設けられる熱線で構成され、上記制御器により温度調節されることを特徴とする
請求項1に記載の多様なガス水素環境下で材料脆化挙動の定量的評価が可能なスモールパンチ試験装置。
【請求項5】
上記断熱容器及び上記下部ダイを貫通するチューブコネクタは、外部のガス水素を上記下部ダイに供給されるようにし、
上記チューブコネクタは、端部がねじ部に形成されて上記断熱容器の外部のガス供給側には流量調節弁、ワンタッチコネクタが締結可能であり、排出側には圧力ゲージが連結可能であることを特徴とする
請求項1に記載の多様なガス水素環境下で材料脆化挙動の定量的評価が可能なスモールパンチ試験装置。
【請求項6】
上記チューブコネクタは、
上記下部ダイの下端部両側面に溶接処理で結合されて低温環境で高圧ガスの漏洩を防止することを特徴とする
請求項5に記載の多様なガス水素環境下で材料脆化挙動の定量的評価が可能なスモールパンチ試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多様なガス水素環境(温度、圧力)下で材料脆化挙動の定量的評価が可能なスモールパンチ試験装置に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
温室効果ガスと地球温暖化の防止のためのCO
2排出規制及び自動車から排出される微細粒子の低減のために世界的に新再生可能エネルギ、特に水素エネルギの開発が活発に行われてきている。水素燃料電池(fuel cell,FC)、燃料電池車(fuel cell vehicle,FCV)の商用化及び普及拡大によって水素充填所の拡充及び普及に全力が注がれている。このような新再生可能エネルギの開発の一環として、水素の生産/貯蔵/輸送による材料の安全性確保のための関連研究が活発に進められており、その大部分は高圧圧力容器の安全設計に重点が置かれていて、その中で特に水素エネルギ機器材料の水素脆化(hydrogen embrittlement:HE)による力学的特性評価技術の確立に力点を置いて研究開発が進められている。
【0003】
最近、水素エネルギの使用拡大によって、高圧水素ガス車両搭載及び水素貯蔵所タンク、コンテナ及び容器に対する安全性及び信頼性を確保することが非常に重要である。水素原子は、大きさが非常に小さく、高圧環境下で金属材料の内部に浸透及び拡散して脆化現象を起こす。水素エネルギ機器及び部品素材として使用可能な材料の選定時、材料の化学成分及び微細組織と使用環境特性(加えられた圧力及び温度条件)が異なるため、脆化挙動の把握のために短時間で多くのデータを確保して長時間使用による材料の信頼性を選別確認することができる簡便試験法を用いた評価技術の開発及び普及が必要であるのが実情である。これに関連して、本研究チームは先立って常温での水素脆化挙動評価のための簡便試験装置として‘腐食性ガス環境下スモールパンチ試験装置’を考案し、特許登録された。一方、燃料電池車(FCV)用水素充填所の場合、35MPa或いは70MPaの高圧水素を供給しており、これら水素の生産、貯蔵及び運送には多様な構造用及び部品材料が使用されているため、これら材料の水素脆化挙動評価が非常に重要であると言える。これにより、金属の水素脆化は常温だけではなく低温又は高温のような温度環境でより顕著に発生し、既に出願登録されている常温用スモールパンチ試験装置ではこのような脆弱な温度及び圧力環境下での対応が困難であることから、低温及び高温環境で水素脆化挙動を評価することができる簡便試験装置の開発が必要となった。よって、燃料電池車(FCV)車両搭載貯蔵タンク、水素充填所水素タンクなど水素の生産、貯蔵、運送時に発生する脆弱温度環境を考慮した簡便試験法としてスモールパンチ試験装置の開発構築及び試験法確立が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような問題点を解決するために案出されたものであり、多様な水素ガス環境でのスモールパンチ試験時、著しい脆化特性を示す温度環境を造成して短時間で容易に試験片が設定温度に逹することができるようにし、設定温度を維持しながら曲げ変形による金属材料の脆化挙動に及ぼす温度影響を容易に評価することができる多様なガス水素環境下で材料脆化挙動の定量的評価が可能なスモールパンチ試験装置を提供しようとすることにその目的がある。
【0005】
また、発明した試験装置は、必要なとき、金属の結晶構造及び微細組織に応じて、高温で所定の長時間加圧水素状態で試験片を維持して試験片の内部に水素装入(hydrogen charging)した試験片の製作を可能にする脆化チャンバ(hydrogen exposure chamber)の役割が可能であり、また水素装入した試験片に対して所定温度でスモールパンチ試験を行うことを可能にする。これを通して、金属材料の結晶構造に応じて要求される内部水素(internal hydrogen)と外部水素(external hydrogen)試験条件に合う多様なガス水素環境(温度、圧力)下でのスモールパンチ試験装置を発明することが目的の一つである。
【0006】
本発明の目的は上で言及された目的に制限されるものではなく、言及されていないまた他の目的は下記記載から明確に理解されることができるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような目的を達成するために、本発明は、上・下部ダイ(die)からなる治具の内部に試験片が固定され、試験片の下部にガスが充填され、上部に力を加えるパンチが含まれ、流入されたガスの環境下で試験片を垂直下方に曲げ変形させて測定するスモールパンチ試験機;上記治具を内部に包むように設けられる断熱容器;上記断熱容器の内部に連結されて上記断熱容器の内部の温度と上記試験片の温度を測定する温度測定器;上記治具の外周面に設けられ、外部の熱伝逹手段によって上記試験片を加熱又は冷却させて熱伝逹されるようにする熱伝達器;及び、上記試験片の既に設定されている温度に合うように上記熱伝達器を制御する制御器;が含まれることを特徴とする。
【0008】
上記熱伝達器は、上記治具の外周面に巻かれ、内部に冷媒又は熱媒体を循環させる管を含むことを特徴とする。
【0009】
上記熱伝達器は、上記治具の外周面に設けられる熱線で構成されることを特徴とする。
【0010】
上記断熱容器及び上記下部ダイを貫通するチューブコネクタは、外部のガス水素を上記下部ダイに供給されるようにし、上記チューブコネクタは、端部がねじ部に形成されて上記断熱容器の外部のガス供給側には流量調節弁、ワンタッチコネクタが締結可能であり、排出側には圧力ゲージが連結可能であることを特徴とする。
【0011】
上記チューブコネクタは、上記下部ダイの下端部両側面に溶接処理で結合されて低温環境で高圧ガスの漏洩を防止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記のような構成の本発明によれば、次のような効果を期待することができる。
【0013】
上記の構成による本発明は、常温試験用として発案された“腐食性ガス環境下スモールパンチ試験装置(韓国登録特許第10−1177429)”を改善使用することにより、オートクレーブ(autoclave)のような高価な大型装備を使わず、40MPaの高圧ガス環境でも少量の水素ガスを取り扱うため高圧ガス規制対象に抵触せず、小型試験片を使用することにより短時間で試験片の温度を設定温度に冷却又は加熱することが可能であり、これを通して高圧水素ガス環境で試験片の設定温度によるスモールパンチ試験時、試験片の垂直下方曲げ変形により試験片の破断までの荷重−変位線図を導き出し、水素脆化による材料の破壊様相及び破断時の吸収エネルギと破断部の相対厚さ減少率を定量的に導き出して水素エネルギ用機器及び部品素材の適用環境に適した水素脆化耐性を有する材料の選別(screening)を可能にする。
【0014】
試験完了後に回収した試験片から破断様相と破断面を観察することにより、荷重−変位線図と連携して定性的に耐水素脆化程度の確認が可能であり、試験温度による水素エネルギ用金属及び合金材料の脆化による延性脆性遷移挙動を段階別に区分することが可能である。
【0015】
また、スモールパンチ試験後、試験片から圧入破断部の厚さを測定して、窒素ガス又はアルゴン、ヘリウムなど非活性ガス環境下で試験した場合の試験片に対して測定した厚さと比べて、水素脆化による試験片の厚さ減少率(reduction of thickness:RT)及び相対厚さ減少率(relative reduction of thickness:RRT)を導き出し、相対厚さ減少率(RRT)値を耐水素脆化材料選別時の基準として設定することを可能にするという大きい利点がある。
【0016】
【数1】
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の望ましい実施例によるスモールパンチ試験機の斜視図である。
【
図3】本発明の望ましい実施例による低温試験環境を造成するための多様なガス水素環境で材料の脆化挙動に及ぼす温度及び圧力の影響評価が可能なスモールパンチ試験装置を示した斜視図である。
【
図4】本発明の望ましい実施例による高温試験環境を造成するための多様なガス水素環境で材料の脆化挙動に及ぼす温度及び圧力の影響評価が可能なスモールパンチ試験装置を示した斜視図である。
【
図5】本発明の望ましい実施例による循環式冷媒又は高温熱媒質を循環させて設定温度環境を造成するための多様なガス水素環境で材料の脆化挙動に及ぼす温度及び圧力の影響評価が可能なスモールパンチ試験装置を示した斜視図である。
【
図6】本発明の望ましい実施例による高圧水素ガス環境で材料の脆化挙動に及ぼす温度の影響評価時、大きい温度差にも水素ガス漏洩防止が可能なスモールパンチ試験装置の上・下部ダイの下端部とチューブコネクタの溶接構造を示した拡大図である。
【
図7】本発明の望ましい実施例による高圧水素ガス環境で材料の脆化挙動に及ぼす温度影響評価が可能なスモールパンチ試験装置の特に高温環境で長時間維持を通してオーステナイト相組織を有する試験片に対して水素装入処理が可能な複数個のカートリッジで構成された脆化チャンバを示した斜視図である。
【
図8】本発明の望ましい実施例による多様なガス水素環境で材料の脆化挙動に及ぼす温度及び圧力の影響評価が可能なスモールパンチ試験装置によって導き出された各設定温度で得られた荷重−変位線図を示したグラフである。
【
図9】本発明の望ましい実施例による10MPaの高圧水素ガス環境で材料の脆化挙動に及ぼす温度影響評価が可能なスモールパンチ試験装置によって導き出された荷重−変位線図の下の面積を積分して得た破断時の吸収エネルギ値(SPエネルギ)を高圧N
2ガス及びH
2ガス下で試験温度に対して示したグラフである。
【
図10】本発明の望ましい実施例による高圧水素ガス環境で材料の脆化挙動に及ぼす温度影響評価が可能なスモールパンチ試験装置によって破断された試験片の損傷及び破壊破断の様相を示したイメージである。
【
図11】本発明の望ましい実施例による高圧非活性ガス及び水素ガス環境で材料の脆化挙動に及ぼす温度影響評価が可能なスモールパンチ試験装置によって破断されたそれぞれ試験片の破断部断面の様相を示したイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参考として本発明の望ましい実施例について説明することにする。
本発明の望ましい実施例による水素エネルギの生産・運送・貯蔵用金属材料の高圧水素ガス環境で常温よりも低温又は高温の範囲内の設定温度で材料の脆化挙動評価機能を備えたスモールパンチ試験装置の構成及び作用を説明することにする。
【0019】
本発明である多様なガス水素環境下で材料脆化挙動の定量的評価が可能なスモールパンチ試験装置は、大きく、スモールパンチ試験機、断熱容器、温度測定器、熱伝達器及び制御器を含んでなる。
【0020】
先ず、本発明の望ましい実施例によってスモールパンチ試験機の構成を簡単に説明することにし、これは、従来の特許‘腐食性ガス環境下スモールパンチ試験装置’と同一のもので簡単に説明することにする。
【0021】
図1と2を参照すると、スモールパンチ試験機100は、試験片Tが上・下部ダイ120、140からなる治具によって挿入固定されており、上部ダイ120にパンチ160が設けられ、パンチ160の下部に加圧球162が形成される。
【0022】
詳しくは、下部ダイ140には水素ガス(又は非活性ガス)と接触し得る空間と内部にガスが充填されて漏出しないように密閉空間が形成されることになり、上記下部ダイ140の上部に上記試験片Tを挿入位置させ、その下端にガス漏出及び気密性を維持するために形成された溝に挿入され上記試験片Tの下部に位置するゴム材質のOリング180が形成され、上記下部ダイ140と固定締結されながら試験片Tが固定され中央に貫通孔が形成されている上部ダイ120と、上記試験片Tの上部に位置し上記上部ダイ120の貫通孔に挿入されて垂直下方に垂直力を付加するためのパンチ160と、上記パンチ160によって上記試験片Tに直接接触して荷重を付加する加圧球162と、上記パンチの上端部一側に接触し垂直力を加えるパンチャーと、上記下部ダイに設けられ、流入されたガスを調節及び排出、開閉するための流量調節弁Vと、上記流量調節弁と連結されてガスを流入するためのワンタッチコネクタと、上記下部ダイに連結され、充填されたガス圧力を測定及び確認する圧力ゲージGとで構成される。
【0023】
また、
図3を参照すると、スモールパンチ試験機100に断熱容器200、温度測定器300、熱伝達器400及び制御器(図示せず)が含まれてなる。
【0024】
上記断熱容器200は、カプセル型に設定された環境、高温及び低温環境で十分に耐えられ、外部への熱損失防止に容易な材質で構成されることができ、同一の外周面直径を有する容器管、上部キャップ、下部キャップ又は容器管、下部キャップに分けられ、その外部は追加的な断熱のために断熱シートを巻いて取り付けた状態で設けるのが望ましい。外部への熱損失防止に容易な多様な高分子、セラミック、複合材質で構成することができる。
【0025】
ここで、断熱容器200及びスモールパンチ試験機100は、十分な剛性を有する材質の支持台によって水平状態に支持されて上記パンチ160が垂直下方に荷重を加えられるようにするのが望ましい。
【0026】
上記断熱容器200の上部キャップ及び上記下部キャップは、上記容器管の上端及び下端に挿入固定されることができるように容器管の内部の直径と同一に段を形成して設けるのが望ましい。
【0027】
ここで、上記断熱容器200は上記支持台に装着させ、上記スモールパンチ試験機100の上・下部ダイ120、140を上記断熱容器200の容器内部に隔離できるように上記スモールパンチ試験機100の下端部両一側面にそれぞれ連結挿入後、溶接されたチューブコネクタPを除外した流量調節弁V、ワンタッチコネクタ、圧力ゲージGは、上記断熱容器200の外部の常温環境に露出し、上記下部キャップの上端部両一側面と上記断熱容器の下端両一側面は上記チューブコネクタPの上・下端部が当接するように外径と同一の直径を有する半円形溝を形成して設けるのが望ましい。
【0028】
上記温度測定器300は、断熱容器200の内部と試験片の温度を測定することができるように熱電対(thermocouple)を含む。
【0029】
ここで、上記断熱容器200の内部に設けられた上記スモールパンチ試験機100は、上記スモールパンチ試験機の上部ダイ120の上端一側面に形成された貫通孔と上記断熱容器200の内部には上記試験片と上記断熱容器200の内部の温度変化量をリアルタイムで測定するためにそれぞれ一対の熱電対を挿入する。
【0030】
そして、上記熱電対は、本願発明の構成である上記温度測定器300に含まれるもので上記熱電対によって温度変化量を観察することができ、リアルタイムで測定されて検出された温度信号データは保存媒体に連結されて保存されることができる。
【0031】
上記熱電対は、上記断熱容器200に挿入されることができるように通過孔が形成されることが望ましく、試験環境を考慮して容易な位置に孔を形成することができる。
【0032】
上記試験装置の上部ダイに挿入されたパンチ160に垂直下方に垂直力を付加するためのパンチャーの下端部は、上記上部キャップの中央に位置した、パンチャーの直径と同一の貫通孔に挿入されることが望ましい。
【0033】
上記パンチとパンチャーは、それぞれ分離されず、上記加圧球を使用せず、パンチャーの下端部を試験片の一側面中央部に圧入することができるように一体型として使用可能である。
【0034】
上記の構成は、上記試験装置の上・下部ダイ120、140によって固定締結された試験片の温度を変化させるための構造として示すことができ、図示されていないが、上記の全ての構成を備えた状態で一つの設定恒温チャンバによって外部と隔離させて設けられることが可能である。
【0035】
ここで、上記チャンバは、高温及び低温に耐えることができ、温度調節時に上記チャンバの内部にある圧力ゲージGの変化を外部から容易に観察できるように透明な材質で設けられることが望ましい。
【0036】
本発明の望ましい実施例による多様なガス水素環境で材料の脆化挙動に及ぼす温度及び圧力の影響評価が可能なスモールパンチ試験装置について、添付図面を参照して詳しく説明すると、次の通りである。
【0037】
図3は、本発明の望ましい実施例による低温環境を造成するための高圧水素ガス環境で材料の脆化挙動に及ぼす温度影響評価が可能なスモールパンチ試験装置を示した斜視図である。
【0038】
本発明の望ましい実施例による低温環境を造成するための高圧ガス水素環境で材料の脆化挙動に及ぼす温度影響評価が可能なスモールパンチ試験装置は、
図3に示されているように、スモールパンチ試験機100、断熱容器200、温度測定器300及び熱伝達器400を含んでなる。
【0039】
上記熱伝達器400は、銅管、空気ポンプ装置(図示せず)、冷媒/昇温用熱媒体貯蔵容器(図示せず)とポンプ装置(図示せず)を含む。
【0040】
上記断熱容器200の外部には上記銅管がコイル型に形成され、他側部が上記容器管の外部に長く抜け出ており、上記銅管の他側端部は再び上記ポンプ装置の冷媒供給ホースの排出口の端と連結され、上記ポンプ装置は上記冷媒貯蔵容器に挿入及び固定締結され、上記ポンプ装置の上端に空気注入ホースを連結し、上記空気注入ホースの他側端に上記空気ポンプ装置の空気注入口を連結するのが望ましい。
【0041】
ここで、銅管を使用する理由は、熱伝逹効率を高めることができるからである。
【0042】
上記断熱容器200は、銅管がスモールパンチ試験機100の上・下部ダイ120、140の長手方向に巻かれて気化された冷媒が排出されることができるように他側部が上記断熱容器200の外部から冷媒が供給されるように十分な長さで構成され、上記断熱容器200に上記チューブ管の他側部が通過することができる通過孔を形成するのが望ましい。
【0043】
図4は、本発明の望ましい実施例による高温環境を造成するための高圧水素ガス環境で材料の脆化挙動に及ぼす温度影響評価が可能なスモールパンチ試験装置を示した斜視図である。
【0044】
本発明の望ましい実施例による高温環境を造成して高圧水素ガス環境で材料の脆化挙動に及ぼす温度評価が可能なスモールパンチ試験装置は、
図4に示されているように、スモールパンチ試験機100、断熱容器200、温度測定器300、熱伝達器400を含んでなり、熱伝達器400は熱線パッドからなる。
【0045】
上記熱線パッドは、上記試験装置の上・下部ダイの長手方向に巻かれ、熱線が含まれており、上記熱線の電力引込線は上記断熱容器200の通過孔によって外部に露出して外部で制御器の温度調節モジュールに連結されることが望ましく、電流量の強さを調節して目標値の温度に設定することが可能である。
【0046】
図5は、本発明の望ましい実施例による冷媒又は高温熱媒質を循環させて低温又は多様なガス水素環境で材料の脆化挙動に及ぼす温度及び圧力の影響評価が可能なスモールパンチ試験装置を示した斜視図である。
【0047】
図5に示されているように、冷媒又は高温熱媒質を銅管を通して循環させて低温又は高温環境を造成し、高圧水素ガス環境で材料の脆化挙動を評価する温度可変スモールパンチ試験装置は、スモールパンチ試験機100、断熱容器200、温度測定器300、熱伝達器400、制御器(図示せず)、冷媒及び熱媒質循環加圧ポンプ(図示せず)、冷媒及び熱媒質供給装置(図示せず)を含む。
【0048】
上記熱伝達器400は、コイル型銅管が含まれ、上記スモールパンチ試験機100の上・下部ダイ120、140の長手方向に巻かれており、管内に冷媒及び熱媒質を循環させて上記上・下部ダイ120、140を通した伝熱により上記試験片の温度が設定温度に達するように制御し、上記断熱容器200の通過孔によって外部に露出して外部で制御器によって温度調節モジュールに連結されるのが望ましい。
【0049】
図6は、上記スモールパンチ試験機100の下部ダイ140の下端部の両端一側面に連結される上記チューブコネクタPの溶接処理部を示した拡大図であり、溶接処理部を通して、低温に冷却時、構成材料の熱膨脹係数の差にもかかわらず、高圧ガスの漏洩による圧力低下及び長時間試験により配管のフィット部に沿って発生するガス漏出を防止することができる。溶接処理は、MIG、TIG、アーク、ブレージング、レーザーなどで処理可能である。
【0050】
ここで、上記チューブコネクタPは、一側がねじ部に形成されてフィット締結することができるばかりか、一定の長さを有するか長さ調節可能なチューブ形態で上記下部ダイ140の下側両端一側面に挿入後、溶接処理して固定することにより、低温冷却及び高温昇温時、熱膨脹係数の差によりねじ締結フィット部から充填されたガス気密性が落ちるのを防ぐことができる。上記断熱容器200によって上記上、下部ダイ120、140が外部と隔離されたとき、上記流量調節弁、上記ワンタッチコネクタ、上記圧力ゲージは常温に露出するように構成されて、それぞれの締結部に温度差が生じないようにする。
【0051】
上記の構成で、必要時、
図7に示されているように、常温よりも高温又は低温の設定温度で長時間加圧状態の高圧ガス水素に上記試験片を露出及び長時間維持して上記試験片に水素装入処理をして脆化させることが可能な脆化チャンバの役割も可能である。また、複数個のカートリッジ構成で連結及び分離可能にすることにより、簡便に携帯して移動することができ、高圧水素ガス環境で材料の脆化挙動に及ぼす温度影響評価が可能である。
【0052】
上記の構成を基に本発明の望ましい実施例による高圧水素ガス環境で材料の脆化挙動を評価する温度調節機能を備えたスモールパンチ試験装置を使用することにより、
図8に示されているように、スモールパンチ(SP,Small Punch)試験を通して試験に用いた材質に対する荷重−変位線図を導き出すことができ、上記荷重−変位線図の下の面積を積分して破断時の吸収エネルギに該当するスモールパンチ(SP,Small Punch)エネルギ値を得ることができ、その値を試験温度に対して
図9のように示すことができる。
【0053】
また、スモールパンチ試験後に回収した試験片の破断様相を光学及び走査電子顕微鏡観察を通して
図10のように確認することができるばかりか、これによる延性−脆性遷移挙動を把握することが可能である。
【0054】
また、スモールパンチ試験後に回収した試験片から圧入破断部での残存厚さをニードル形状マイクロメータで測定して、
図11(a)のように窒素ガス又はアルゴン、ヘリウムなど非活性ガス環境下で試験した場合の試験片に対して測定した厚さと
図11(b)のようにガス水素環境下で試験した場合とを比較して、水素脆化による試験片の厚さ減少率(reduction of thickness)と相対厚さ減少率(relative reduction of thickness:RRT)を導き出して、RRT値を耐水素脆化材料選別時の定量的基準として設定することが可能である。ここで、t
OはSP試験前の試験片の厚さ、t
fはSP試験後に測定した試験片の破断部の厚さをそれぞれ表す。
【0055】
このとき得られる相対厚さ減少率(relative reduction of thickness:RRT)は、下の公式で求められる。
【0057】
上記実施例は例示的なものに過ぎず、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、それから多様に変形された水素脆化挙動評価において他の実施例が可能である。
【0058】
よって、本発明の真正な技術的保護範囲には下記の特許請求範囲に記載の発明の技術的思想により上記の実施例だけではなく多様に変形された他の実施例が含まれなければならない。
【0059】
以上、本発明は多様なガス水素環境下で材料脆化挙動の定量的評価が可能なスモールパンチ試験装置を提供することを基本的な技術的思想としていることが分かり、このような本発明の基本的思想の範疇内で、当業界の通常の知識を有する者にとっては他の多くの変形が可能であることは勿論である。