特許第6948468号(P6948468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948468
(24)【登録日】2021年9月22日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】イオン源および傍熱型陰極イオン源
(51)【国際特許分類】
   H01J 27/20 20060101AFI20210930BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   H01J27/20
   H01J37/08
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-531588(P2020-531588)
(86)(22)【出願日】2018年11月14日
(65)【公表番号】特表2021-506081(P2021-506081A)
(43)【公表日】2021年2月18日
(86)【国際出願番号】US2018061000
(87)【国際公開番号】WO2019118120
(87)【国際公開日】20190620
【審査請求日】2020年6月26日
(31)【優先権主張番号】62/597,736
(32)【優先日】2017年12月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509146975
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Applied Materials, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル アルヴァラード
(72)【発明者】
【氏名】マイケル セント ピーター
(72)【発明者】
【氏名】グラハム ライト
【審査官】 中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−175861(JP,A)
【文献】 特開平04−028862(JP,A)
【文献】 特開平05−117843(JP,A)
【文献】 特開2003−246672(JP,A)
【文献】 特開2003−323850(JP,A)
【文献】 特開2004−359985(JP,A)
【文献】 特表2011−525036(JP,A)
【文献】 特開2012−221629(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0289197(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 27/20
H01J 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アークチャンバの第1の端部と第2の端部とを接続する複数の導電性側壁を備える前記アークチャンバと、
前記アークチャンバの前記第1の端部に配置される傍熱型陰極と、
前記アークチャンバの前記第2の端部に配置されるるつぼと、を備え、
前記るつぼは、その中に供給材料が配置される凹部空洞を有するターゲットホルダを備える、傍熱型陰極イオン源。
【請求項2】
前記複数の導電性側壁の1つに配置される電極をさらに備え、
電圧は、前記アークチャンバの前記複数の導電性側壁に印加される電圧に対して、前記電極に印加される、請求項1に記載の傍熱型陰極イオン源。
【請求項3】
前記るつぼに配置される供給材料をさらに備え、
前記アークチャンバは、重力が前記供給材料を前記るつぼに保持するように、配向される、請求項1に記載の傍熱型陰極イオン源。
【請求項4】
前記るつぼは、供給材料が配置されて加熱される凹部空洞を有する加熱るつぼを備える、請求項1に記載の傍熱型陰極イオン源。
【請求項5】
前記供給材料を加熱するためにフィラメントが使用される、請求項4に記載の傍熱型陰極イオン源。
【請求項6】
アークチャンバの第1の端部と第2の端部とを接続する複数の導電性側壁を備える前記アークチャンバと、
前記アークチャンバの前記第1の端部に配置される傍熱型陰極と、
前記複数の導電性側壁の第1の側壁の反対側にある前記複数の導電性側壁の第2の側壁に配置されるるつぼと、を備え、
前記るつぼは、その中に供給材料が配置される凹部空洞を有するターゲットホルダを備える、傍熱型陰極イオン源。
【請求項7】
前記第1の側壁に配置される電極をさらに備え、
電圧は、前記アークチャンバの前記複数の導電性側壁に印加される電圧に対して、前記電極に印加される、請求項6に記載の傍熱型陰極イオン源。
【請求項8】
前記るつぼに配置される供給材料をさらに備え、
前記アークチャンバは、重力が前記供給材料を前記るつぼに保持するように、配向される、請求項6に記載の傍熱型陰極イオン源。
【請求項9】
前記るつぼは、供給材料が配置されて加熱される凹部空洞を有する加熱るつぼを備える、請求項6に記載の傍熱型陰極イオン源。
【請求項10】
前記供給材料を加熱するためにフィラメントが使用される、請求項9に記載の傍熱型陰極イオン源。
【請求項11】
前記第2の側壁に配置される第2のるつぼをさらに備える、請求項6に記載の傍熱型陰極イオン源。
【請求項12】
プラズマが生成される複数の壁を有するアークチャンバと、
供給材料を保持するために、前記複数の壁の1つに配置されたるつぼと、を備え、
前記アークチャンバは、重力が前記供給材料を前記るつぼに保持するように、配向されて、
前記るつぼは、その中に供給材料が配置される凹部空洞を有するターゲットホルダを備え、
前記るつぼの上面は、前記複数の壁の1つと面一である、イオン源。
【請求項13】
前記るつぼは、前記供給材料が配置されて加熱される凹部空洞を有する加熱るつぼを備える、請求項12に記載のイオン源。
【請求項14】
前記供給材料を加熱するためにフィラメントが使用される、請求項13に記載のイオン源。
【請求項15】
前記プラズマは、傍熱型陰極またはRFイオン源を用いて生成される、請求項12に記載のイオン源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、イオン源に関し、より詳細には、固体供給材料用のるつぼを備えるイオン源に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体処理装置で使用されるイオンを生成するために、様々なタイプのイオン源が使用され得る。例えば、傍熱型陰極(IHC)イオン源は、陰極の後方に配置されたフィラメントに電流を供給することによって動作する。フィラメントは熱電子を放出し、それが陰極に向かって加速されて陰極を加熱し、次に、陰極に電子をイオン源のアークチャンバに放出させる。陰極は、アークチャンバの一端部に配置される。反射電極は、典型的には陰極の反対側のアークチャンバの端部に配置される。陰極および反射電極は、電子を反発させ、アークチャンバの中心に向けて戻すように、バイアスをかけることができる。いくつかの実施形態において、電子をアークチャンバ内にさらに閉じ込めるために、磁場が使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特定の実施形態において、電極は、また、アークチャンバの1つ以上の側壁に配置される。これらの電極は、イオンおよび電子の位置を制御するように正または負にバイアスされ、アークチャンバの中心付近のイオン密度を増加させ得る。抽出開口部は、アークチャンバの中心に近接して、別の側面に沿って配置され、イオンはこの開口部を通って抽出され得る。
【0004】
特定の実施形態において、ドーパント種として固体形態である供給材料を利用することが望ましい場合がある。しかし、IHCイオン源で固体供給材料を使用することに関連する問題がある。例えば、イオン源で使用される気化器は、1200℃を超える温度で操作することが困難である。また、気化器とアークチャンバとを接続するチューブの熱遮蔽および凝縮の問題があり得る。多くの固体の蒸気圧が1200℃では低すぎるため、これらの問題によって気化器でそれらの固体を使用できない場合がある。
【0005】
したがって、これらの制限なしに固体供給材料と共に使用できるイオン源は有益であろう。また、イオン源が固体供給材料によって汚染されないならば利点となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
るつぼを備えるイオン源が開示される。いくつかの実施形態において、るつぼは陰極の反対側のイオン源の端部の1つに配置される。他の実施形態において、るつぼは側壁の1つに配置される。固体形態であってよい供給材料は、るつぼ内に配置される。特定の実施形態において、供給材料はプラズマ中のイオンおよび電子によってスパッタされる。他の実施形態において、供給材料は気化するように加熱される。イオン源は、重力が供給材料をるつぼに保持するように、るつぼが最も低い壁に配置されるように配向されてよい。
【0007】
一実施形態によれば、傍熱型陰極(IHC)イオン源が開示される。IHCイオン源は、アークチャンバの第1の端部と第2の端部とを接続する複数の導電性側壁を備えるアークチャンバと、アークチャンバの第1の端部に配置される傍熱型陰極と、アークチャンバの第2の端部に配置されるるつぼと、を備える。特定の実施形態において、イオン源は、複数の導電性側壁の1つに配置される電極を備え、電圧は、アークチャンバの複数の導電性側壁に印加される電圧に対して、電極に印加される。いくつかの実施形態において、供給材料がるつぼ内に配置され、アークチャンバは、重力が供給材料をるつぼに保持するように、配向される。特定の実施形態において、るつぼは、その中に供給材料が配置される凹部空洞を有するターゲットホルダを備える。特定の実施形態において、るつぼは、供給材料が配置されて加熱される凹部空洞を有する加熱るつぼを備える。いくつかの実施形態において、小さな開口部を有するカバーが、凹部空洞の上部に配置される。特定の実施形態において、供給材料を加熱するためにフィラメントが使用される。
【0008】
別の実施形態によれば、傍熱型陰極(IHC)イオン源が開示される。IHCイオン源は、アークチャンバの第1の端部と第2の端部とを接続する複数の導電性側壁を備えるアークチャンバと、アークチャンバの第1の端部に配置される傍熱型陰極と、第1の側壁の反対側の第2の側壁に配置されるるつぼと、を備える。特定の実施形態において、イオン源は、第1の側壁に配置される電極を備え、電圧は、アークチャンバの複数の導電性側壁に印加される電圧に対して、電極に印加される。いくつかの実施形態において、供給材料がるつぼ内に配置され、アークチャンバは、重力が供給材料をるつぼに保持するように、配向される。特定の実施形態において、るつぼは、その中に供給材料が配置される凹部空洞を有するターゲットホルダを備える。特定の実施形態において、るつぼは、供給材料が配置されて加熱される凹部空洞を有する加熱るつぼを備える。いくつかの実施形態において、小さな開口部を有するカバーが、凹部空洞の上部に配置される。特定の実施形態において、供給材料を加熱するためにフィラメントが使用される。特定の実施形態において、第2のるつぼが第2の側壁に配置される。
【0009】
別の実施形態によれば、イオン源が開示される。イオン源は、プラズマが生成される複数の壁を有するアークチャンバと、供給材料を保持するために、複数の壁の1つに配置されたるつぼと、を備え、アークチャンバは、重力が供給材料をるつぼに保持するように、配向される。特定の実施形態において、るつぼは、その中に供給材料が配置される凹部空洞を有するターゲットホルダを備える。特定の実施形態において、るつぼは、供給材料が配置されて加熱される凹部空洞を有する加熱るつぼを備える。いくつかの実施形態において、供給材料を加熱するためにフィラメントが使用される。特定の実施形態において、プラズマは、RFイオン源の傍熱型陰極を用いて生成される。
【0010】
本開示のより良い理解のために、参照により本明細書に組み込まれる添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態による、るつぼを備える傍熱型陰極(IHC)イオン源である。
図2】一実施形態によるるつぼである。
図3】別の実施形態によるるつぼである。
図4】別の実施形態によるるつぼを備える傍熱型陰極(IHC)イオン源である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述のように、気化器は、凝縮と低い蒸気圧のために、非常に高い温度で問題となる場合がある。
【0013】
図1は、これらの問題を克服するるつぼを備えるIHCイオン源10を示す。IHCイオン源10は、2つの向かい合った端部、および、これらの端部に接続する側壁101を備えるアークチャンバ100を含む。アークチャンバ100は、また、底部の壁および頂部の壁を含む。アークチャンバ100の壁は導電性材料で構成されてよく、互いに電気的に連通してよい。陰極110は、アークチャンバ100の第1の端部104において、アークチャンバ100内に配置される。フィラメント160は陰極110の後方に配置される。フィラメント160は、フィラメント電源165と連通している。フィラメント電源165は、フィラメント160が熱電子を放出するように、電流をフィラメント160に流すように構成される。陰極バイアス電源115は、フィラメント160を陰極110に対して負にバイアスするため、これらの熱電子は、フィラメント160から陰極110に向かって加速されて、熱電子が陰極110の背面に当たると陰極110を加熱する。陰極バイアス電源115は、例えば、陰極110の電圧より例えば200Vから1500V負である電圧であるように、フィラメント160をバイアスしてよい。そのため、陰極110は、その前面で熱電子をアークチャンバ100内に放出する。
【0014】
このように、フィラメント電源165は、フィラメント160に電流を供給する。陰極バイアス電源115は、フィラメント160をバイアスして、陰極110よりも負になるようにし、その結果、電子がフィラメント160から陰極110に引き付けられる。特定の実施形態において、陰極110は、バイアス電源111などによって、アークチャンバ100に対してバイアスされ得る。他の実施形態において、陰極110は、アークチャンバ100の側壁と同じ電圧になるように、アークチャンバ100と電気的に接続され得る。これらの実施形態において、バイアス電源111は使用されなくてよく、陰極110は電気的にアークチャンバ100の側壁と接続されてよい。特定の実施形態において、アークチャンバ100はアースに接続されてよい。
【0015】
本実施形態において、るつぼ120は、アークチャンバ100において陰極110の反対側にある第2の端部105に配置される。るつぼ120は、導電性材料から作られ、アークチャンバ100の側壁に電気的に接続されてよい。
【0016】
特定の実施形態において、磁場190はアークチャンバ100内で生成される。この磁場は、一方向に沿って電子を閉じ込めることを目的としている。磁場190は、典型的には、第1の端部104から第2の端部105まで側壁101に平行に及ぶ。例えば、電子は、陰極110からるつぼ120への方向(すなわち、y方向)に平行な列に閉じ込められ得る。したがって、電子は、y方向に動かすためのどんな電磁力も受けない。しかし、他の方向への電子の動きは、電磁力を受け得る。
【0017】
図1に示す実施形態において、第1の電極130aおよび第2の電極130bは、第1の電極130aおよび第2の電極130bがアークチャンバ100内にあるように、アークチャンバ100のそれぞれの対向する側壁101に配置され得る。第1の電極130aおよび第2の電極130bは、側壁101から電気的に絶縁されるように構成され得る。第1の電極130aおよび第2の電極130bは、それぞれの電源によってそれぞれバイアスされ得る。特定の実施形態において、第1の電極130aおよび第2の電極130bは、共通の電源と連通していてよい。しかし、他の実施形態において、IHCイオン源10の出力を最大限に調整する柔軟性および能力を可能にするために、第1の電極130aは第1の電極電源135aと連通していてよいし、第2の電極130bは第2の電極電源135bと連通していてよい。
【0018】
第1の電極電源135aおよび第2の電極電源135bは、それぞれ、第1の電極130aおよび第2の電極130bを、アークチャンバ100の側壁に対してバイアスするように機能する。特定の実施形態において、第1の電極電源135aおよび第2の電極電源135bは、第1の電極130aおよび第2の電極130bを、アークチャンバ100の側壁101に対して、正または負にバイアスし得る。特定の実施形態において、電極の少なくとも1つは、アークチャンバ100の側壁101に対して、40Vから500Vの間でバイアスされ得る。
【0019】
陰極110、るつぼ120および電極のそれぞれは、金属またはグラファイトなどの導電性材料で作られる。
【0020】
頂部の壁103と呼ばれるアークチャンバ100の別の側面に配置されるのは、抽出開口部140であり得る。図1に示すように、抽出開口部140は、XY平面に平行な(紙面に平行な)側面に配置される。さらに、IHCイオン源10は、また、イオン化されるガスがアークチャンバ100へ導入されるガス注入口106を備える。
【0021】
コントローラ180は、これらの電源によって供給される電圧または電流を変更できるように、1つ以上の電源と通信することができる。コントローラ180は、マイクロコントローラ、パーソナルコンピュータ、専用コントローラ、または、別の適切な処理装置などの処理装置を含み得る。コントローラ180は、また、半導体メモリ、磁気メモリ、または、別の適切なメモリなどの非一時的な記憶素子を含み得る。この非一時的な記憶素子は、コントローラ180に、本明細書において説明される機能を実行させることを可能にする命令および他のデータを含み得る。
【0022】
インジウム、アルミニウム、アンチモンまたはガリウムなどの供給材料125は、るつぼ120内に配置されてよい。供給材料125は、るつぼ120内に配置されるとき、固体の形態であってよい。しかし、特定の実施形態において、供給材料125は溶融して液体になり得る。したがって、特定の実施形態において、イオン源10はるつぼ120が最も低い側面(すなわち、地面に最も近い側面)に位置するように構成され、その結果、溶融した供給材料がるつぼ120からアークチャンバ100に流れずに、るつぼ120内に留まる。換言すれば、イオン源10は、供給材料125が重力によってるつぼ120内に保持されるように配向される。
【0023】
動作中、フィラメント電源165は、フィラメント160に電流を流し、これにより、フィラメント160が熱電子を放出する。これらの電子は、フィラメント160よりも正であり得る陰極110の背面に衝突し、陰極110を加熱させて、これにより、陰極110が電子をアークチャンバ100内に放出する。これらの電子は、ガス注入口106を介してアークチャンバ100内に供給されるガス分子と衝突する。アルゴンなどのキャリアガスまたはフッ素などのエッチングガスが、適切に配置されたガス注入口106を介して、アークチャンバ100内に導入されてよい。陰極110からの電子、ガスおよび正電位の組み合わせがプラズマ150を生成する。プラズマ150は、第1の電極130aおよび第2の電極130bによって生成された電場によって閉じ込められ、操作され得る。また、特定の実施形態において、電子および正イオンは、磁場190によっていくらか閉じ込められ得る。特定の実施形態において、プラズマ150は、抽出開口部140に近接して、アークチャンバ100の中心付近に閉じ込められる。いくつかの実施形態において、プラズマ150は、第1の電極130aおよび第2の電極130bに印加される電圧の平均に近い電圧でバイアスされ得る。プラズマ150による化学エッチングまたはスパッタリングは、供給材料125を気相に変化させて、イオン化を引き起こす。そして、イオン化された供給材料は、抽出開口部140を介して抽出されて、イオンビームを準備するために使用され得る。
【0024】
特定の実施形態において、陰極110の電圧は、プラズマ150の電圧よりも正ではない。例えば、一実施形態において、陰極110は、アークチャンバ100の側壁と同じ電圧であり得る。第1の電極130aは150Vでバイアスされ得る。一方、第2の電極130bは0Vまたは20Vでバイアスされ得る。したがって、陰極110によって生成された電子は、プラズマ150に向かって引き付けられる。いくつかの実施形態において、これらの放出された電子または他の粒子は、また、供給材料125に衝突し、供給材料125をスパッタさせ得る。
【0025】
プラズマ150はるつぼ120よりも正の電圧に維持されるので、供給材料125からスパッタされた、または、他の方法で放出された負イオンおよび中性原子は、プラズマ150に向かって引き付けられる。
【0026】
図1は2つの電極を示しているが、いくつかの実施形態において、第2の電極130bおよびそれに関連する第2の電極電源135bのような、これらの電極の1つは省略できることを理解されたい。別の実施形態において、第2の電極130bは、アークチャンバ100内に配置されるが、アークチャンバ100の側壁101と電気的に接続される。このように、本実施形態において、第2の電極電源135bは省略され得る。
【0027】
図2は、るつぼの第1の実施形態を示す。本実施形態において、るつぼはターゲットホルダ200を備える。ターゲットホルダ200は、凹部空洞210を備え、その中に供給材料を配置することができる。凹部空洞210は、ターゲットホルダ200がアークチャンバ100に取り付けられたときにアークチャンバ100の内部と連通している上面201に配置される。ターゲットホルダ200は、グラファイト、タングステンまたはタンタルのような導電性材料で作られる。また、ターゲットホルダ200は、アークチャンバ100の側壁101に電気的および機械的に接続される。
【0028】
図2のターゲットホルダ200がアークチャンバ100と共に使用される場合に、供給材料125は、プラズマ150内の電子およびイオンによって駆動されるスパッタリングまたは化学エッチングの作用によってアークチャンバ100内に移送される。供給材料125に加えられる電気バイアスまたは熱の他の発生源はない。
【0029】
図3は、るつぼの第2の実施形態を示す。本実施形態において、るつぼは加熱るつぼ300である。加熱るつぼ300は、第1の表面310に凹部空洞302を有するターゲットボディ301を備える。凹部空洞302は、供給材料125を保持するために使用される。ターゲットボディ301は、グラファイト、タングステンまたはタンタルのような導電性材料とすることができる。
【0030】
ターゲットフィラメント304は、典型的には第1の表面310の反対側の第2の表面320にある第2の空洞315内に配置される。ターゲットフィラメント304は、ターゲットフィラメント電源303と連通している。ターゲットフィラメント電源303は、ターゲットフィラメント304に電流を流すように構成されて、ターゲットフィラメント304が熱電子を放出するようにする。ターゲットバイアス電源305は、ターゲットフィラメント304をターゲットボディ301に対して負にバイアスするので、これらの熱電子は、ターゲットフィラメント304からターゲットボディ301に向かって加速され、ターゲットボディ301の第2の空洞315の内面に当たったときにターゲットボディ301を加熱する。ターゲットバイアス電源305は、ターゲットボディ301の電圧より例えば200Vから1500V負である電圧であるように、ターゲットフィラメント304をバイアスしてよい。ターゲットボディ301は、供給材料が気化するような温度に加熱されてよい。特定の実施形態において、ターゲットバイアス電源305によって印加される電圧は、ターゲットボディ301の温度を制御するように調整可能であり得る。
【0031】
このように、ターゲットフィラメント電源303は、ターゲットフィラメント304に電流を供給する。ターゲットバイアス電源305は、ターゲットフィラメント304をバイアスして、ターゲットボディ301よりも負になるようにし、その結果、電子がターゲットフィラメント304からターゲットボディ301に引き付けられる。特定の実施形態において、ターゲットボディ301は、アークチャンバ100の側壁と同じ電圧になるように、アークチャンバ100に電気的に接続され得る。電子はターゲットボディ301を加熱し、ターゲットボディ301がプラズマを生成するのに十分な蒸気圧に達するまで供給材料125を加熱する。加熱るつぼ300は、高温で固体を直接気化させるために使用され得る。これは、キャリアガスが望ましくない場合、または、適切なキャリアガスが利用できない場合に利用し得る。
【0032】
図3に示す加熱るつぼ300はスパッタリングに依存しない。したがって、供給材料125をプラズマ150から隔離するために、小さな開口部307を備えるカバー306が、凹部空洞302の上に配置され得る。特定の実施形態において、開口部は、加熱るつぼ300からの供給材料125の急速な枯渇を回避するような寸法で形成され得る。特定の実施形態において、開口部の寸法は、るつぼの最大内部寸法の25%未満であってよい。カバー306は、ターゲットボディ301と同じ材料で構成されてよいし、ターゲットボディ301に使用される材料に関係なくグラファイトであってよい。カバー306の使用は、加熱るつぼ300が使用されない場合に、供給材料125によるプラズマ150の汚染を低減する。したがって、イオン源10は、1つの供給材料のみの専用でなく、依然として複数の供給材料に使用され得る。
【0033】
また、ターゲットボディ301は、ターゲットフィラメント304に対してバイアスされるが、ターゲットボディ301は、イオン源10の壁に対してバイアスされない。供給材料125に加えられる電気バイアスの他の発生源はない。
【0034】
図1のイオン源10は、図2のターゲットホルダ200または図3の加熱るつぼ300と共に利用されてよい。両方の実施形態において、図1に示すように、重力がるつぼ内に供給材料を保持するように、るつぼが側面に取り付けられることが好ましい。特定の実施形態において、図1に示すように、ターゲットホルダ200の上面は、第2の端部105と面一であってよい。他の実施形態において、ターゲットホルダ200は、単に第2の端部105に載っていてよい。同様に、特定の実施形態において、加熱るつぼ300の上面は、第2の端部105と面一であってよい。他の実施形態において、加熱るつぼ300は、単に第2の端部105に載っていてよい。
【0035】
本実施形態において、るつぼ120は、従来、反射電極が設置されるアークチャンバ100の端部に配置されることに留意されたい。また、本実施形態において、反射電極は使用されない。
【0036】
1つの試験の間、図2のターゲットホルダ200は、インジウムを含むイオンビームを生成するために使用された。固体のインジウムがターゲットホルダ200に配置され、イオン源10が作動された。インジウムは溶融したが、イオン源10を汚染しなかった。換言すれば、液体のインジウムがるつぼ120内に残る。第2の試験の間、図2のターゲットホルダ200は、アルミニウムの供給材料を保持するように形成された。この場合も、アルミニウムは溶融したが、イオン源10を汚染しなかった。
【0037】
図1は、陰極110がアークチャンバ100に電気的に接続され、第1の電極130aおよび第2の電極130bが、それぞれ第1の電極電源135aおよび第2の電極電源135bを用いて、アークチャンバ100に対して個別にバイアスされる、IHCイオン源10の実施形態を示す。図4は、別の実施形態によるIHCイオン源11を示す。同様の構成要素には同じ参照記号が与えられている。本実施形態において、IHCイオン源11は、アークチャンバ100に電気的に接続された陰極110を有する。しかし、アークチャンバ100の側壁101に対して陰極110をバイアスするために、バイアス電源111が使用され得ることが理解される。また、第2の電極130bは除去されている。磁場190を使用することもできる。
【0038】
本実施形態において、第1の電極130aのみがアークチャンバ100に対してバイアスされる。第1の電極130aは、第1の電極電源135aを用いて、アークチャンバ100に対して40Vから500V正にバイアスされ得る。また、アークチャンバ100は、側壁101の1つが地面に最も近くなるように回転されている。具体的には、第1の電極130aの反対側の側壁が地面に最も近い。
【0039】
本実施形態において、るつぼ120は、第1の電極130aの反対側の側壁に配置される。また、特定の実施形態において、この側壁は、図4に示すように、複数のるつぼ120を支持するのに十分な長さであり得る。例えば、この側壁に沿って2つ以上のるつぼ120を設置することができる。図2および図3に示するつぼのいずれかが、本実施形態において、使用され得る。特定の実施形態において、図4に示すように、ターゲットホルダ200の上面は、側壁101と面一であってよい。他の実施形態において、ターゲットホルダ200は、単に側壁101に載っていてよい。同様に、特定の実施形態において、加熱るつぼ300の上面は、側壁101と面一であってよい。他の実施形態において、加熱るつぼ300は、単に側壁101に載っていてよい。
【0040】
図2のターゲットホルダ200が複数使用される場合に、汚染を防止するため、全てのターゲットホルダ200が同じ供給材料を含むことが好ましい場合がある。複数のターゲットホルダ200を使用することによって、プラズマ150中の固体材料の濃度を増加させることができる。したがって、複数のるつぼを使用することによって、所望するイオンのより高いビーム電流を可能にすることができる。
【0041】
図3の加熱るつぼ300が複数使用される場合に、加熱るつぼ300のそれぞれに異なる供給材料を配置することが可能である。例えば、2つの加熱るつぼ300は、異なる供給材料で満たされ得る。第1の供給材料が使用されるとき、第1の加熱るつぼ300のターゲットフィラメント304が作動され、一方、第2の加熱るつぼのターゲットフィラメント304は無効にされる。このようにして、第1の加熱るつぼからの気体はアークチャンバ100に入ることができるが、第2の加熱るつぼからの供給材料はアークチャンバ100に入らない。その後、IHCイオン源11は、第2の加熱るつぼ内のターゲットフィラメント304を作動させ、第1の加熱るつぼ内のターゲットフィラメントを無効にすることによって、第2の加熱るつぼ300からの供給材料を用いてイオンビームを生成してよい。
【0042】
図1および図4は、るつぼ120が、陰極110が配置される側面および第1の電極130aが配置される側面とは異なるアークチャンバ100の側面に配置され得ることを示す特定の実施形態を示す。
【0043】
上述の開示は、傍熱型陰極イオン源とともにあるるつぼの使用を説明しているが、本開示はこの実施形態に限定されないことが理解される。イオン源は、RFイオン源、ベルナスイオン源または他の任意のタイプなどの任意のタイプのイオン源であり得る。
【0044】
また、特定の実施形態において、図4に示す実施形態は、反射電極と組み合わせて使用されてよい。特定の実施形態において、図4の陰極は、アークチャンバの側壁に対して正にバイアスされ得る。特定の一実施形態において、陰極はバイアス電源111を用いて側壁に対してバイアスされており、反射電極がある。本実施形態において、第1の電極130aおよび第1の電極電源135aは省略されてよい。
【0045】
本願において上述した実施形態は、多くの利点を有し得る。第1に、本システムは、従来技術に関連する問題なしに、固体供給材料をドーパント材料として使用可能にする。第2に、地面に最も近い壁にるつぼを配置することによって、液体形態であっても、供給材料はるつぼ内に保持される。このようにして、イオン源は、液体形態の供給材料によって汚染またはダメージを受けない。第3に、このるつぼを使用すると、イオンビーム中のドーパントの濃度は、従来の気化器と比べて、はるかに高くなり得る。1つの実験において、イオンビームのドーパント濃度は、従来の気化器と比べて2倍以上であった。また、特定の実施形態において、複数のるつぼを1つのアークチャンバ内に配置することができる。これにより、高濃度の供給材料をイオン化することができる。他の実施形態において、これにより、るつぼを交換する必要なしに、1つのアークチャンバで異なる供給材料を使用することができる。
【0046】
本開示は、本明細書に記載された特定の実施形態によって範囲を限定されるものではない。実際に、本明細書に記載された実施形態に加えて、本開示の他の様々な実施形態および変更は、上述の記載および添付図面から当業者には明らかであろう。したがって、このような他の実施形態および変更は、本開示の範囲内に含まれるものと意図している。さらに、本開示は、特定の環境における特定の目的のための特定の実装の文脈にて本明細書中で説明したけれども、当業者は、その有用性はそれらに限定されるものでないことを認識するであろう。本開示の実施形態は任意の数の環境における任意の数の目的のために有益に実装し得る。従って、以下に記載する特許請求の範囲は本明細書に記載された本開示の全範囲および精神に鑑みて解釈しなければならない。
図1
図2
図3
図4