特許第6948478号(P6948478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 6948478-炭酸ガス含有含水ゲル物品の製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6948478
(24)【登録日】2021年9月22日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】炭酸ガス含有含水ゲル物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20210930BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20210930BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20210930BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20210930BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20210930BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20210930BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20210930BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20210930BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20210930BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20210930BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20210930BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   A61K8/19
   A61K8/02
   A61Q19/00
   A61K8/26
   A61K8/73
   A61K8/81
   A61K9/70 405
   A61K47/02
   A61K47/38
   A61K47/32
   A61P17/00
   A61P3/00
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2021-12894(P2021-12894)
(22)【出願日】2021年1月29日
【審査請求日】2021年5月27日
(31)【優先権主張番号】特願2020-69396(P2020-69396)
(32)【優先日】2020年4月7日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 翔平
【審査官】 小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−202609(JP,A)
【文献】 特開2006−89459(JP,A)
【文献】 特開2006−28158(JP,A)
【文献】 特開2005−170937(JP,A)
【文献】 特開2009−173649(JP,A)
【文献】 特開2013−60504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61K 9/70
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程(1)〜(3)を有する、炭酸ガス含有含水ゲル物品の製造方法。
(1)(A)水溶性高分子、(B)該水溶性高分子の架橋剤及び(C)水を含有する、動的粘弾性測定における1Hzでの損失正接が0.46以上である含水ゲルを有する物品を調製する工程。
(2)前記含水ゲルを有する物品における前記含水ゲルの動的粘弾性測定における1Hzでの損失正接が0.46以上のうちに、該含水ゲルを有する物品の周囲雰囲気中の炭酸ガスの濃度が10体積%以上となるように該周囲雰囲気の組成を調整するとともに該含水ゲルを有する物品を包装体内に密封する工程。
(3)前記含水ゲルを有する物品における前記含水ゲルの動的粘弾性測定における1Hzでの損失正接が0.46未満となるまで該含水ゲルの架橋を進行させて、前記包装体内に密封された炭酸ガス含有含水ゲル物品を得る工程。
【請求項2】
(2)の工程を常温且つ大気圧下に行う、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記水溶性高分子が、アニオン性ポリマーを含有し、
前記架橋剤が、アルミニウムイオン供給架橋剤を含有する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
(1)の工程が、調製された前記含水ゲルを支持体に塗布して、該支持体上に該含水ゲルを有する含水ゲル物品を形成する工程を有する、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
(1)の工程において、前記架橋剤の含有量が前記含水ゲル中に0.01質量%以上10質量%以下となるように、該架橋剤を含有させる請求項1ないし4のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭酸ガスを含有する含水ゲル物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘性物中に溶解性ガスを含有させる工程に関する従来の技術としては例えば特許文献1及び2に記載のものが知られている。特許文献1には、溶解性ガスを充満させて高圧条件とした圧力タンク内に粘性物を導入し、ミキサーによる撹拌や多孔質体を用いて粘性物に溶解性ガスを溶解させる技術が記載されている。
【0003】
特許文献2には、カルボキシメチルセルロース及び乾燥水酸化アルミニウムゲルを混合して含水ゲル原液を調製し、該含水ゲルを熟成させることで該含水ゲルのイオン架橋反応を促進させて、架橋した含水ゲルシートを得た後に、炭酸ガスの濃度が90%以上である包装体内に該含水ゲルシートを封入して、該含水ゲルシートに炭酸ガスを溶解させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−62087号公報
【特許文献2】特開2018−177775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、血行促進や美容等の目的で、炭酸ガスを溶解させてなる含水ゲルを人体の各部位へ施すことが行われている。特許文献1及び2に記載の技術はそのような場面に用いられるものであるところ、炭酸ガスを人体に効率的に付与するためには、含水ゲル中に含まれる炭酸ガスの濃度を高めることが必要とされ、また、工業化を志向した場合には、炭酸ガスを含有する含水ゲル物品の効率的な製造方法が求められる。しかし、特許文献1及び2に記載の技術では、含水ゲル中に含有させ得る炭酸ガスの濃度を高めることが容易でないか、又は炭酸ガスの濃度を高め得るとしても高濃度にするためには時間を要する場合がある。更に、炭酸ガスを含有する含水ゲル物品の効率的な製造といった点でも改良の余地がある。
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る、炭酸ガス含有含水ゲル物品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、次の工程(1)〜(3)を有する、炭酸ガス含有含水ゲル物品の製造方法を提供するものである。
(1)(A)水溶性高分子、(B)該水溶性高分子の架橋剤及び(C)水を含有する、動的粘弾性測定における1Hzでの損失正接が0.46以上である含水ゲルを有する物品を調製する工程。
(2)前記含水ゲルを有する物品における前記含水ゲルの動的粘弾性測定における1Hzでの損失正接が0.46以上のうちに、該含水ゲルを有する物品の周囲雰囲気中の炭酸ガスの濃度が10体積%以上となるように該周囲雰囲気の組成を調整するとともに該含水ゲルを有する物品を包装体内に密封する工程。
(3)前記含水ゲルを有する物品における前記含水ゲルの動的粘弾性測定における1Hzでの損失正接が0.46未満となるまで該含水ゲルの架橋を進行させて、前記包装体内に密封された炭酸ガス含有含水ゲル物品を得る工程。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、含水ゲル中の炭酸ガスの保持性の高い含水ゲル物品を生産性よく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の方法を実施するための好適な装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明は炭酸ガス含有含水ゲル物品の製造方法に関するものである。後述する説明から明らかなとおり、本発明によれば、包装体内に密封された炭酸ガス含有含水ゲル物品が製造される。炭酸ガス含有含水ゲル物品は含水ゲルを備え、該含水ゲルには炭酸ガスが含有されている。
【0010】
前記の構成を有する炭酸ガス含有含水ゲル物品は以下の(1)〜(3)の工程を備えた方法によって好適に製造される。
(1)含水ゲルを有する物品の調製工程。
(2)含水ゲルを有する物品を炭酸ガスとともに包装体内に密封する工程。
(3)含水ゲルの架橋工程。
以下、これらの工程についてそれぞれ説明する。
【0011】
(1)含水ゲルを有する物品の調製工程
本工程においては含水ゲルを調製する。含水ゲルは、(A)水溶性高分子、(B)該水溶性高分子の架橋剤及び(C)水を含有するものである。水溶性高分子及び該水溶性高分子の架橋剤の詳細については後述する。これら(A)〜(C)成分を混合して含水ゲルを得る。混合には各種の混合器を用いることができる。
【0012】
含水ゲルの調製は、常温で行うことができ、あるいは加熱下に行うこともできる。本明細書において「常温」とは周囲温度のことであり、本製造方法を実施する環境を意図的に加熱又は冷却しない状態での温度のことをいい、一般的には10℃以上35℃以下の温度範囲をいう。
含水ゲルの調製は、大気圧下で行うことができ、あるいは大気圧よりも加圧下又は減圧下に行うこともできる。好ましくは〔大気圧−0.1MPa〕以上の圧力を採用する。
本明細書において「大気圧」とは周囲圧力のことであり、本製造方法を実施する環境を意図的に加圧又は減圧しない状態での圧力のことをいい、標準大気圧(1気圧=0.1MPa)のことを指していう。
【0013】
本工程においては、水溶性高分子、架橋剤及び水を、大気圧下に混合することで含水ゲルを調製することが、含水ゲル中に炭酸ガスを含有させやすくする観点から好ましい。これによって、得られる含水ゲル中に多数の気泡を含ませることができる。つまり、気泡入り含水ゲルを容易に得ることができる。含水ゲルを気泡入りのものとすることで、後述する(2)の工程において含水ゲル中に多量の炭酸ガスを含有させやすくなる。また、本工程において調製する含水ゲルは未架橋状態のものであり、具体的には、動的粘弾性測定における1Hzでの損失正接(以下、「損失正接(1Hz)」ともいう。)が0.46以上の含水ゲルである。損失正接の測定条件の詳細については後述する。
【0014】
なお、目的とする炭酸ガス含有含水ゲル物品の種類によっては、該物品を貼付面から剥がれにくくする観点、及び該物品の貼付面への優れた追随性の観点から、含水ゲル中に気泡を生じさせたくない場合があるが、そのような場合には減圧下に含水ゲルを調製すればよい。
【0015】
含水ゲル調製時の圧力及び温度にかかわらず、前記の(A)〜(C)成分を混合する時間は、効率的な製造の観点から、1分以上60分以下が好ましく、5分以上30分以下がより好ましい。混合時の撹拌速度は、調製する含水ゲルの量に応じて適宜変更すればよく、例えば1kgの含水ゲルを調製する場合には、多くの気泡を含有させる観点から、好ましくは10rpm以上80rpm以下(回転/分)であり、より好ましくは20rpm以上70rpm以下であり、更に好ましくは30rpm以上65rpm以下である。この条件下での混合によって、微細な気泡を多数生成させることができる。
用いる混合器の種類に特に限定はないが、効率的に多くの気泡を取り込む観点から、自転公転による混合が可能なプラネタリーミキサーや湿式混合ニーダーが好ましい。
【0016】
本工程においては、製造対象である炭酸ガス含有含水ゲル物品の各種の性能を高めることを目的として、前記の(A)〜(C)成分とともに、それ以外の成分を混合することもできる。例えばTRPM8アゴニストや油剤を用いることができる。
【0017】
本工程においては、含水ゲル中に炭酸ガスを含有させやすくする観点から含水ゲルに占める水の割合が高くなるように該含水ゲルを調製することが好ましい。こうすることによって、後述する(3)の工程において含水ゲル中に多量の炭酸ガスを含有させやすくなる。本工程においては、含水ゲル中に炭酸ガスを含有させやすくする観点から、含水ゲルに占める水の割合が、より好ましくは20質量%以上95質量%以下となるように、更に好ましくは30質量%92質量%以下となるように、より更に好ましくは40質量%以上88質量%以下となるように、より一層好ましくは70質量%以上88質量%以下となるように、該含水ゲルを調製する。
【0018】
[含水ゲルを有する物品の形成工程]
本工程においては、上述の手順で得られた含水ゲルを支持体上に塗布して、該支持体の一面に含水ゲル層を有するシート状の物品(以下「含水ゲル物品」ともいう。)を形成することが好ましい。含水ゲルの塗工には各種の塗工機を用いることができる。塗工機によって含水ゲルを支持体の一面に展延することで含水ゲル層が形成される。
塗工機によって含水ゲルを展延するときには、例えば2枚のシートの間に含水ゲルを挟み込み、均一に展延すればよい。含水ゲルを挟み込む2枚のシートとしては、それぞれ独立に、例えば不織布、PETフィルムのような樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0019】
塗工機としては、平滑な含水ゲル層を形成する観点からロールコーターを用いることが好ましく、2本ロールコーターを用いることがより好ましい。かかる塗工機を用いることで、ロールとロールの間に支持体を通しつつ一定の強い圧力を負荷させながら含水ゲルを展延することができる。その結果、支持体に含水ゲルを担持させつつ、該含水ゲル中の気泡を維持した状態で含水ゲル層を形成させることができる。かかる2本ロールコーターとしては、例えばダイレクトグラビアコーターやチャンバードクターコーター、ダブルロール塗工機等が挙げられる。
【0020】
支持体の一面に含水ゲル層が形成されたシート状の含水ゲル物品を作製する場合、目的とする炭酸ガス含有含水ゲル物品における含水ゲル層の厚みが、含水ゲル中に炭酸ガスを含有させやすくする観点から、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.7mm以上、更に好ましくは1mm以上となるように塗工され、また、炭酸ガス含有含水ゲル物品を貼付面から剥がれにくくする観点、及び該物品の貼付面への優れた追随性の観点から、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下、更に好ましくは2mm以下となるように塗工される。
【0021】
(2)含水ゲル物品の包装体内への密封工程
本工程においては、含水ゲル物品における含水ゲルに炭酸ガスを吸収させるために、該含水ゲル物品と炭酸ガスとを包装体内に密封する。この場合、含水ゲル物品を包装体内に設置した後に、該包装体内に炭酸ガスを封入してもよく、あるいはその逆の順序で操作を行ってもよいが、一日当たりの生産量(日産量)を増加させる観点から、炭酸ガスの封入と、含水ゲル物品の包装体内への密封は同時に行うことが好ましい。
【0022】
含水ゲル中には、水溶性高分子と、該水溶性高分子の架橋剤が含まれていることから、両者が接することで水溶性高分子の架橋が開始する。水溶性高分子が架橋することで、含水ゲルの基本骨格となる緻密な網目構造が形成される。水溶性高分子が化学的に架橋してなる含水ゲルは、網目構造中に多量の水を保持して膨潤しているため、適度な弾力性や伸展性、柔軟性を有する。
【0023】
架橋が完了してから、あるいは架橋の終期の段階で、含水ゲルに炭酸ガスを含有させることは、含水ゲルへの炭酸ガスの吸収に時間を要してしまう。すなわち、日産量を増加させる観点から有利とはいえない。そこで本発明においては、水溶性高分子の架橋の程度が低い段階で、含水ゲルに炭酸ガスを含有させることとしている。これによって、短時間で生産性よく、含水ゲルに炭酸ガスを含有させることが可能になり、日産量を増加させることができる。
【0024】
含水ゲルに含まれる水溶性高分子の架橋の程度を定量的に評価することは容易ではない。この観点から本発明者が種々検討した結果、含水ゲルの動的粘弾性率を尺度として水溶性高分子の架橋の程度を評価することが有効であることを知見した。動的粘弾性率には、貯蔵弾性率、損失弾性率及び損失正接があるところ、これらのうち損失正接を尺度として水溶性高分子の架橋の程度を評価することが最も客観性が高いことを本発明者は知見した。
【0025】
以上のとおり、本発明においては含水ゲルの損失正接に基づき水溶性高分子の架橋の程度を評価する。水溶性高分子の架橋の程度が低い状態では損失正接の値が相対的に高く、架橋が進行するに連れて含水ゲルの損失正接の値が低下する。そこで本発明においては、含水ゲルの動的粘弾性測定における1Hzでの損失正接が、日産量を増加させる観点、及び含水ゲル中に炭酸ガスを含有させやすくする観点から、0.46以上、好ましくは0.48以上、より好ましくは0.50以上、更に好ましくは0.55以上のうちに、また、日産量を増加させる観点から、好ましくは0.90以下、より好ましくは0.80以下、更に含水ゲル中に炭酸ガスを含有させやすくする観点から、更に好ましくは0.65以下、より更に好ましくは0.64以下のうちに、含水ゲルに炭酸ガスを吸収させるようにしている。損失正接の測定方法は以下に述べるとおりであるところ、本発明においては損失正接の値として周波数1Hzでの値を採用している。この理由は、この周波数が、含水ゲルの架橋状態を適切に反映する周波数であるからである。
【0026】
本発明における、含水ゲルの損失正接(1Hz)は次の方法で測定することができる。測定は、常温、常圧下で 行い、その他の測定条件は以下のとおりである。測定によって損失弾性率及び貯蔵弾性率を求め、これらの値から損失正接(tanδ値)を算出する。また、含水ゲルの損失正接を求めるにあたって、含水ゲルは直径25mmの円に切り出し、両面テープで平行平板に固定して測定する。
なお、測定は複数回(3回以上)行い、その平均値を損失正接(tanδ値)として採用した。
・装置:レオメータ PhysicaMCR301(アントンパール(株)製)
・試料部:直径25mmの平行平板
・ノーマルフォース:1N
・ギャップ間隔:1〜2mm
・含水ゲルの質量:0.5〜1.0g
・周波数:1Hz
・歪:2%
・温度:25℃
【0027】
含水ゲルに炭酸ガスを吸収させるには、含水ゲル物品の周囲雰囲気を炭酸ガスリッチにすることが好ましい。この観点から、含水ゲルの損失正接が上述した値以上のうちに、つまり水溶性高分子の架橋が過度に進行していないうちに、含水ゲル物品の周囲雰囲気中の炭酸ガスの濃度が好ましくは10体積%以上となるように該周囲雰囲気の組成を調整することが好ましい。周囲雰囲気の炭酸ガスの濃度をこの値以上に設定することで、含水ゲルに炭酸ガスを効率よく吸収させることが可能となる。この観点から、周囲雰囲気の炭酸ガス濃度を30体積%以上とすることが更に好ましく、60質量%以上とすることがより更に好ましく、80体積%以上とすることがより一層好ましい。周囲雰囲気の炭酸ガス濃度は高ければ高いほど、効率的な炭酸ガスの吸収の点から好ましく、理想的な濃度は100体積%である。
【0028】
含水ゲルに炭酸ガスを吸収させるときの周囲雰囲気は、炭酸ガスを含んでいる限りにおいて、他のガス成分の種類に特に制限はない。工業的には大気に炭酸ガスを混合して、周囲雰囲気中の炭酸ガスの濃度を高めることが簡便である。
【0029】
周囲雰囲気の炭酸ガスの濃度は、含水ゲルの損失正接が上述した値以上のうちに一旦10体積%以上になれば、効率的な炭酸ガスの吸収の点から十分であり、その後の炭酸ガスの濃度が10体積%を下回っても差し支えない。もちろん、含水ゲルに炭酸ガスを吸収させている間、周囲雰囲気の炭酸ガス濃度を10体積%以上に保つことは妨げられない。
【0030】
本工程は、常温で行うことができ、あるいは加熱下に行うこともできる。また、本工程は、大気圧下で行うことができ、あるいは大気圧よりも加圧下又は減圧下に行うこともできる。本発明においては、含水ゲルへの炭酸ガスの吸収は水溶性高分子の架橋の初期段階で行われるので、加熱を行わなくても炭酸ガスは含水ゲルに効率的に吸収される。同様の理由によって、加圧を行わなくても炭酸ガスは含水ゲルに効率的に吸収される。加熱及び/又は加圧を行うことは、日産量を増加させる観点からは有利といえない。そこで本工程は、常温且つ大気圧下に行うことが好ましい。こうすることで、生産性よく目的とする炭酸ガス含有含水ゲル物品が得られる。
【0031】
図1には、本工程を実施するための装置の一実施形態の構造が示されている。同図に示す製造装置10は、第1フィルム接合部20、ノズル部30、第2フィルム接合部40及びカッター部50を備えている。
【0032】
第1フィルム接合部20は、搬送方向MDに搬送されているフィルムの原反の側部どうしを搬送方向MDに沿って接合する装置である。図1に示すように、搬送方向MDに搬送されている非通気性のフィルムの第1原反11(以下、これを「第1フィルム原反11」ともいう。)と、該原反11と同一方向に搬送されている非通気性のフィルムの第2原反12(以下、これを「第2フィルム原反12」ともいう。)とはそれぞれ同一の幅を有しており、両原反11,12における両側縁の位置が一致するように重ね合わせた状態で第1フィルム接合部20に供給されている。
【0033】
図1に示すように、両原反11,12は、これらの原反間に含水ゲル物品5が配された状態で、搬送ロール又はコンベアなどの搬送手段(図示せず)によって搬送され、第1フィルム接合部20に供給される。この時点での含水ゲル物品5における含水ゲルの損失正接(1Hz)は、上述した値以上になっている。両原反11,12は、その両側縁の位置が一致するように重ね合わせた状態で搬送されながら第1フィルム接合部20を通過することで、両原反11,12の接合部位である各両側部が搬送方向MDに沿って連続的に接合され、第1接合部位15,15が形成される。両原反11,12が第1フィルム接合部20を通過した後、含水ゲル物品5は、搬送方向MDと直交する方向CD(以下、これを「幅方向CD」ともいう。)において、両原反11,12の両側部に形成された第1接合部位15,15の間に位置した状態で、原反とともに搬送される。第1フィルム接合部20における接合手段は、例えばヒートシール等を用いることができる。フィルムどうしの接合を効率よく行う観点から、同図に示すように、第1フィルム接合部20は、幅方向CDにおいて含水ゲル物品5の両側縁よりも外方に一対配されていることが好ましい。
【0034】
ノズル部30は、包装体内に封入される炭酸ガス含有ガスを供給するためのものである。ノズル部30は、気体が流通可能な中空の部材であり、第1フィルム接合部20よりも搬送方向MDの上流側に位置するノズル部30の一端と、ノズル部30の他端である開口端31とを有する。ノズル部30は、その一端に接続されたガス源(図示せず)から供給された炭酸ガス含有ガスを、ノズル部30の他端である開口端31から外部に向けて連続的に又は断続的に供給できるようになっている。ノズル部30の開口端31は、第1フィルム接合部20よりも搬送方向MDの下流側に且つ第1接合部位15よりもCD方向内側に位置している。図1に示すノズル部30は、搬送方向MDに沿って延びるように配されているノズル延長部32を両原反11,12の間に一対有しており、これによって、気体流が両原反11,12の搬送方向MDに沿って供給される。各ノズル延長部32は、互いに略平行に配されている。またノズル部30におけるノズル延長部32は、幅方向CDにおいて、第1フィルム接合部20よりも内方に位置し、且つ搬送される含水ゲル物品5の両端縁よりも外方に配されている。同図に示すノズル部30は、第1フィルム接合部20よりも搬送方向上流側において、原反11,12の両側部の外方から内方に向けて折れ曲がる部位を有しており、これによって、両原反11,12の間にノズル延長部32が配されるようになっている。
【0035】
ノズル部30を通じて炭酸ガス含有ガスが供給されることで、2枚の原反11,12によって画成される空間に存在する大気を、炭酸ガス含有ガスに90体積%以上置換することができる。したがって、炭酸ガス含有ガスが炭酸ガスそのものである場合には、2枚の原反11,12によって画成される空間のガス濃度をほぼ炭酸ガス100体積%とすることができる。
【0036】
ノズル部30の配置位置の搬送方向MD下流側には、第2フィルム接合部40が配されている。第2フィルム接合部40は、第1フィルム接合部20を通過させて両側部どうしが接合された両原反11,12を、搬送方向MDと交差する方向に接合する装置である。同図に示す第2フィルム接合部40は、ヒートロールの態様となっており、第2フィルム接合部40を構成する二本のヒートロール間に含水ゲル物品5が位置する状態で、両原反11,12を搬送方向MDと交差する方向にわたって所定の間隔で接合することによって、含水ゲル物品5の周縁において両原反11,12が接合された包装体連続体1Aを形成することができる。第2フィルム接合部40における接合手段は、例えばヒートシール等を用いることができる。
【0037】
第2フィルム接合部40は、第1フィルム接合部20を通過させて両側部どうしが接合された両原反11,12を、搬送方向MDと交差する方向に接合して、幅方向CDの全域に延びる第2接合部位16,16を形成するものである。図1に示す第2フィルム接合部40は、ヒートロールの態様となっており、第2接合部位16を形成する前の状態では、第2フィルム接合部40は、両原反11,12における第1接合部位15以外の部位が離間した状態となるように配置されており、好ましくは第2フィルム接合部40と両原反11,12とはそれぞれ離間している。搬送方向MDに沿って配置された第2フィルム接合部40の間に含水ゲル物品5が位置する状態となったときに、第2フィルム接合部40を移動させる制御手段(図示せず)を介して、両原反11,12を当接させるように、第2フィルム接合部40を両原反11,12に押し当てて、両原反11,12を搬送方向MDと交差する方向に接合する。これによって、含水ゲル物品5の周縁外方に位置する両原反11,12どうしが、一対の第1接合部位15、15及び一対の第2接合部位16,16によって接合される。これによって、両接合部位15,16の内部に含水ゲル物品5及び炭酸ガス含有ガスが密封状態で封入された包装体連続体1Aを形成することができる。
【0038】
第2フィルム接合部40の配置位置よりも搬送方向MD下流側には、カッター部50が配されている。カッター部50は、搬送方向MDに交差する方向に沿って延びるカッター刃を有しており、包装体連続体1Aにおける第2接合部位16の位置で両原反11,12を切断し、個々の包装体1に分断することができる。図1に示すカッター部50は、その軸方向と幅方向CDとが一致したカッターロールの態様となっており、該ロールの周上に配され、且つ該ロールの軸方向にわたって延びる第1カッター刃50aと、該ロールの周方向に沿って延びる第2カッター刃50bとを有している。カッターロールの回転によって、第1カッター刃50aは、包装体連続体1Aを第2接合部位16の位置で搬送方向MDに交差する方向にわたって切断する。これとともに、第2カッター刃50bは、包装体連続体1Aにおける幅方向CDの両端部側に一対配されているので、包装体連続体1Aを第1接合部位15の位置で搬送方向MDに沿って切断する。これによって、炭酸ガス含有ガスと含水ゲル物品が密封された包装体1を形成することができる。
【0039】
以上の構成を有する装置によれば、幅方向CDにおいて、ノズル部30が第1フィルム接合部20よりも内方に位置しており、且つノズル部30の開口端31が第1フィルム接合部20よりも搬送方向下流側に位置しているので、ノズル部30が両原反11,12の接合位置を規定するガイドの役割を果たし、両原反11,12どうしを所望の位置で搬送方向に沿って接合することができる。また、フィルムどうしの接合にあたり、ノズル部30によって含水ゲル物品5の動きが規制されるので、含水ゲル物品5が第1フィルム接合部20に意図せず巻き込まれたり、噛み込まれたりすることを防ぐことができる。その結果、含水ゲル物品5に傷がつくことなく、包装体1を安定的に且つ連続的に製造することができる。これに加えて、ノズル部30が搬送方向MDに沿って、且つ第1フィルム接合部20の搬送方向下流まで延びるように配されているので、ノズル部30を搬送方向MDに交差する方向に挿入した場合と比較して、両原反11,12内の大気を、炭酸ガス含有ガスに効率よく置換できるという利点も奏される。
【0040】
このように、以上の構成を有する装置によれば、非通気性の第1原反と非通気性の第2原反との間に含水ゲル物品を配置し且つ炭酸ガス含有ガスを両原反間に供給した状態下に、一方向に搬送される両原反における搬送方向に沿う両側部を接合する第1接合工程と;両原反を、含水ゲル物品が存在しない位置において搬送方向と交差する方向に接合して、含水ゲル物品及び炭酸ガス含有ガスが封入された包装体連続体を形成する第2接合工程と;第2接合工程によって接合された部位において、包装体連続体を搬送方向と交差する方向に切断して、包装体を形成する切断工程と;を連続して行うことができる。その結果、水溶性高分子の架橋の程度が低いうちに炭酸ガスを吸収させることと相まって、目的とする炭酸ガス含有含水ゲル物品を一層生産性よく製造することができる。
【0041】
(3)含水ゲルの架橋工程
前記の(2)の工程によって、含水ゲル物品が炭酸ガス含有ガスとともに包装体内に密封される。この密封状態下に、炭酸ガスが含水ゲルに吸収される。含水ゲルへの炭酸ガスの吸収は自発的に進行する。したがって、包装体を加熱するなどの特段の操作は必要ない。つまり、含水ゲルへの炭酸ガスの吸収は常温で行うことができる。なお、生産速度を高めたい場合には、本工程において、後述の水溶性高分子の架橋の進行を促進する観点から、例えば包装体を加熱してもよい。
【0042】
含水ゲル中に気泡が存在する場合には、密封された包装体内において炭酸ガスが浸透圧(濃度勾配)の作用によって含水ゲル中に溶解し、更には気泡中にも拡散していく。つまり、炭酸ガスは、含水ゲルそのものに吸収されるだけでなく、含水ゲル中に気泡が存在する場合には、気泡内にも吸収される。炭酸ガスが吸収されることによって包装体内の炭酸ガス濃度は次第に低下するが、そのことは問題とならない。
【0043】
含水ゲルへの炭酸ガスの吸収とともに、含水ゲルに含まれる水溶性高分子の架橋が進行する。その結果、含水ゲルの損失正接は低下してくる。水溶性高分子の架橋は、含水ゲル中に炭酸ガスを含有させやすくする観点から、損失正接(1Hz)が0.46未満、好ましくは0.40未満、より好ましくは0.38未満、更に好ましくは0.35未満となるまで進行させる。損失正接が0.46未満になるまでの時間は、常温で架橋させた場合、含水ゲル物品を密封してから24時間以上366時間以下が好ましく、24時間以上240時間以下がより好ましい。
【0044】
また、含水ゲル中に炭酸ガスを含有させやすくする観点ととともに、得られる含水ゲル物品の粘着性を向上させる観点から、水溶性高分子の架橋は、損失正接(1Hz)が0.20以上0.45以下となるまで進行させることが好ましく、0.35以上0.45以下となるまで進行させることがより好ましく、0.40以上0.45以下となるまで進行させることが更に好ましい。
【0045】
水溶性高分子の架橋によって含水ゲルの保形性が高まる。架橋が完了した時点での含水ゲルに含まれる炭酸ガスの濃度は、水溶性高分子の種類や、含水ゲルの含水率にもよるが、一般に10ppm以上20000ppm以下である。
炭酸ガスの濃度とは、炭酸ガス含有含水ゲル物品をアルカリ溶液の入った蓋付き容器に入れて12時間浸漬させ、炭酸ガスを水溶液中に炭酸塩としてトラップした後、再び酸性緩衝液で酸性に戻し、その溶液の室温25℃での炭酸ガス濃度を、炭酸ガス電極を用いて測定後、得られた炭酸ガス濃度、物品の質量、溶液体積から、炭酸ガス含有含水ゲル物品中の炭酸ガスの含有量を換算して得ることができる値を意味する。
【0046】
従来、この種の炭酸ガス含有物品を製造する場合には、含水ゲルへの炭酸ガスの吸収のための熟成に長時間を費やしていた。したがって、炭酸ガスの吸収のために物品を一時的に保存しておくためのスペースを確保する必要があった。このこととは対照的に、本製造方法によれば、従来行われていた熟成を製造工程の最後に行うので、物品を一時的に保存しておくためのスペースを確保する必要がない。より具体的には(3)の工程の完了後に物品を直ちに段ボール箱等の出荷用箱に詰めることができ、余計なスペースを占有する必要がないという利点等が挙げられる。
【0047】
このようにして、含水ゲルに炭酸ガスが十分に吸収されてなる炭酸ガス含有含水ゲル物品が得られる。この物品は、含水ゲルを身体に接着して用いる、身体接着用物品として用いることが好ましい。炭酸ガス含有含水ゲル物品を身体に接着することで、含水ゲルに含まれる炭酸ガスが放出されて皮膚に作用し、使用者の血行を促進させることができる。接着部位としては、好ましくは頭皮以外の身体、例えば、足、腕、肩、腰等が挙げられる。接着して適用する時間は特に制限されないが、15分以上が好ましく、30分以上がより好ましい。例えば、含水ゲルの粘着力を利用し、就寝前に貼付して、就寝中を通して適用し続ける身体接着用物品として使用することができる。なお、本発明における炭酸ガス含有含水ゲル物品は、必ずしも含水ゲルが不織布等の支持体に担持されたシート状の含水ゲル物品である必要はなく、身体に含水ゲルのみを直接適用する形態であってもよい。
【0048】
以上の製造方法において用いられる水溶性高分子としては、水を安定に保持できる物質であればその種類に特に制限はなく、成形性の観点から例えばアニオン性ポリマーであることが好ましい。
アニオン性ポリマーとしては、例えば、カルボキシル基、硫酸基、又はリン酸基を有するポリマーが挙げられる。具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸及びこれらの塩類;カルボキシビニルポリマー及びこれらの塩類;カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等のアニオン性セルロース誘導体及びこれらの塩類;カラゲナン、アルギン酸、及びこれらの塩類、アニオン性の澱粉誘導体等が挙げられる。そのなかでも、特に高い保水量と十分なゲル強度及び凹凸や動きに追従可能な柔軟性とを満たすような含水ゲルを得る観点から、カルボキシメチルセルロース及びその塩、並びにポリ(メタ)アクリル酸及びその塩から選ばれる少なくとも1種以上を用いることが好ましく、カルボキシメチルセルロースナトリウムを用いることがより好ましい。
【0049】
水溶性ポリマーの架橋剤としては、水溶性ポリマーの種類に応じたものが適切に選択される。水溶性ポリマーが例えば上述したアニオン性ポリマーである場合には、架橋剤として例えば金属イオン化合物、カチオン性ポリマー、多官能性エポキシ化合物等を使用することができる。
金属イオン化合物としては、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム等を含む酸化物や水酸化物、塩類等が挙げられる。例えば、水酸化アルミニウム、カリミョウバン、硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミニウムグリシネート、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、含水ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、塩化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、カオリン、合成ヒドロタルサイト、及び水酸化カリウム等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0050】
水溶性高分子として、カルボキシメチルセルロース又はその塩などのアルミニウムの作用によって架橋可能なアニオン性ポリマーを用いる場合には、架橋剤として水溶性高分子へアルミニウムの供給が可能なもの、すなわちアルミニウムイオン供給架橋剤を用いることが、含水ゲル中での溶解性が高いこと、及び分散性が良好であることから好ましい。そのような架橋剤としては、例えばメタケイ酸アルミン酸マグネシウムや、水酸化アルミニウム等のアルミニウムイオン化合物を用いることが好ましい。特にメタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、含水ゲル中での溶解性が高く、且つ分散性が良好であるのみならず、常温でも架橋反応が進行しやすいので、含水ゲルに十分な弾力性を付与することができる。
【0051】
架橋剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを用いる場合には、それを単独で用いてもよく、あるいは他の架橋剤と併用してもよい。メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと他の架橋剤とを用いる場合には、水溶性高分子を十分に架橋させ得る観点から、架橋剤に占めるメタケイ酸アルミン酸マグネシウムの割合は30質量%以上100質量%以下とすることが好ましく、70質量%以上100質量%以下とすることがより好ましい。
【0052】
日産量を増加させる観点から、(1)の工程において、架橋剤の含有量が含水ゲル中に0.01質量%以上10質量%以下となるように、該架橋剤を含有させることが好ましい。日産量を一層増加させる観点から、架橋剤の仕込み量は、含水ゲル中に、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、より一層好ましくは0.1質量%以上であり、含水ゲル中に炭酸ガスを含有させやすくする観点から、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは2質量%以下である。
【0053】
本製造方法によって得られた炭酸ガス含有含水ゲル物品は、含水ゲル中に炭酸ガスを含有させやすくする観点から、含水ゲル中に、炭酸ガスを含む気泡を気泡率で好ましくは10%以上含有し、より好ましくは気泡率で20%以上含有する。
一方で、本製造方法によって得られた炭酸ガス含有含水ゲル物品は、これを貼付面から剥がれにくくする観点、及び貼付面への優れた追随性の観点から、含水ゲル中に、炭酸ガスを含む気泡を気泡率で好ましくは40%以下含有し、より好ましくは気泡率で35%以下含有する。ここで、気泡率とは、以下の方法により測定及び算出される値を意味する。
【0054】
本製造方法によって得られた炭酸ガス含有含水ゲル物品は、気体難透過性容器内に密封されてなるものであることから、かかる容器を開封してシートを取り出した後、5分以内に測定した値を気泡率とする。具体的には、気泡を除いた部分の比重を1と仮定し、取り出したシートを直方体形状に切り出して、縦・横・高さから、そのシートの体積A(mL)を求め、更に質量B(g)を測定する。次いで、これらを下記式(1)に代入して、気泡率を算出する。
気泡率(%)=(A−B)/A×100・・・・・(1)
なお、炭酸ガス含有含水ゲル物品が、更に支持体層や剥離層に担持されてなる場合、操作の便宜上の観点から、これらの層を除去又は剥離することなく測定し、これら支持体層や剥離層の総質量を後に除いて気泡率を求めることとしてもよい。
【0055】
本製造方法によって得られた炭酸ガス含有含水ゲル物品は、含水ゲルの表面積100%中において、仮想直径5mm以上の気泡が占める総面積が10%以下であることが好ましい。このように、気泡の大きさを制御することで、物品中の炭酸ガスを効率的に皮膚へ供給することができる。また、不要に粗大化した気泡の混在を回避して含水ゲル表面の平滑性を高めることができるため、該物品の粘着性を増強させることが可能となり、身体への貼付性を効果的に向上させることができる。
【0056】
本製造方法によって得られた炭酸ガス含有含水ゲル物品において、含水ゲルの表面に存在する気泡は、室温25℃且つ相対湿度50%の条件下、後述する気体難透過性容器を開封して、密封されていた内容物である炭酸ガス含有含水ゲル物品を取り出してから5分以内に測定されるものである。ここで、気泡は、不定形な楕円であり得るため、かかる気泡については、その長径と短径を足して2で割った値を直径とする仮想円であるとみなし、かかる仮想円の直径を「気泡の仮想直径」として定義する。したがって、「仮想直径5mm以上の気泡が占める総面積」とは、このように定義された仮想直径が5mm以上であって、物品における肌に接する側の表面に存在する気泡を全部選び出し、かかる仮想直径に基づき仮想円の面積を算出して得られた総和を意味する。そして、含水ゲルの表面積を100%としてかかる総面積の値を除することにより、「含水ゲルの表面積100%中における、仮想直径5mm以上の気泡が占める総面積(%)」の値とする。
なお、本製造方法によって得られた炭酸ガス含有含水ゲル物品において、このような微細な気泡が含水ゲル槽内全域にわたり存在している場合、含水ゲルの表面のみならず、含水ゲルの内部にも気泡が同様に存在する。したがって、含水ゲルの横断面においても、かかる横断面に存在する気泡について、横断面の面積100%中における仮想直径5mm以上の気泡が占める総面積(%)の値は、含水ゲルの表面積100%中における、仮想直径5mm以上の気泡が占める総面積(%)と同じ値を示すこととなる。
【0057】
本製造方法によって得られた炭酸ガス含有含水ゲル物品を貼付面から剥がれにくくする観点、及び貼付面への優れた追随性の観点から、含水ゲルの表面積100%中において、仮想直径5mm以上の気泡が占める総面積は、上述のとおり好ましくは10%以下であって、より好ましくは5%以下であり、更に好ましくは、含水ゲルは、該含水ゲルの表面積100%中において、仮想直径5mm以上の気泡を含有しない。
【0058】
含水ゲルを調製するときに任意に用いられる成分としては、通常化粧品や医薬品等に用いられる成分、例えば油性成分、水溶性高分子、アルコール類、糖類、血行促進剤、皮膚栄養剤、ビタミン類、酸化防止剤、酸化防止助剤、防腐剤、色素、香料等が挙げられる。
【0059】
含水ゲルが塗布される支持体としては、織布、不織布、編布、合成樹脂のフィルム、耐水紙等のシート基材を用いることができる。これらが複数積層されてなる積層体を使用することもできる。具体的には、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリオレフィン等の合成繊維、絹、綿、麻、レーヨン、コラーゲン等からなる天然繊維等の織布、又は不織布;ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン等のシート;プルランや澱粉等の薄膜シート等を用いることができる。なかでも、気泡の大きさを抑制する観点、及び身体への良好な貼付性を確保する観点から、織布や不織布を用いることが好ましく、不織布を用いることがより好ましい。
支持体の厚みは、0.05mm以上2.0mm以下程度である。支持体における含水ゲルの塗工面には親水処理又は疎水処理を施してもよい。
【0060】
包装体を構成する非通気性の材料としては、例えばアルミニウム等の金属を蒸着したフィルムや、材質の異なる2層以上のフィルムを積層した積層フィルムなどを用いることができる。図1に示す装置以外の装置を用いる場合には、ガラス容器やプラスチック容器を用いることもできる。
【0061】
包装体は、非通気性であり、特に二酸化炭素難透過性である必要がある。「二酸化炭素難透過性」とは、二酸化炭素透過度が50cc/(m・day・atm)(ASTMD―1434)以下であることをいい、更に非透過性であるのが好ましい。包装体の好ましい材料としてはヒートシール性を有するものが挙げられ、具体的には、アルミニウム箔を積層したラミネートフィルム、アルミニウム蒸着層を有するラミネートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニリデン層を含むラミネートフィルムなどが挙げられる。包装体の形態は、平袋やガゼットなどが好ましい。必要に応じ、含水ゲルのみからなる組成物を保持する目的で、ポリエチレンテレフタレート製などのトレイを用い、このトレイに含水ゲルを充填し、先に述べた袋などの包装体に保存するなどの方法も採用することができる。
【0062】
また、気温の変化等による包装体の膨れ等を抑制する観点から、包装体は、その容積に対し0.5〜35%の充填比を保持するような体積を保つことが好ましい。
【0063】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記の実施形態に制限されない。例えば前記の(1)〜(3)の工程は好ましくは常温で実施し、更に好ましくは常温・大気圧で実施するが、必要に応じ、(1)〜(3)のいずれか1以上の工程において、冷却、加熱、減圧、加圧などの条件を採用してもよい。尤も、効率的に生産性よく目的物を得る観点から、(1)〜(3)のすべての工程を常温・大気圧で行うことが好ましい。
【0064】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の炭酸ガス含有含水ゲル物品の製造方法を開示する。
<1>
次の工程(1)〜(3)を有する、炭酸ガス含有含水ゲル物品の製造方法。
(1)(A)水溶性高分子、(B)該水溶性高分子の架橋剤及び(C)水を含有する、動的粘弾性測定における1Hzでの損失正接が0.46以上である含水ゲルを有する物品を調製する工程。
(2)前記含水ゲルを有する物品における前記含水ゲルの動的粘弾性測定における1Hzでの損失正接が0.46以上のうちに、該含水ゲルを有する物品の周囲雰囲気中の炭酸ガスの濃度が10体積%以上となるように該周囲雰囲気の組成を調整するとともに該含水ゲルを有する物品を包装体内に密封する工程。
(3)前記含水ゲルを有する物品における前記含水ゲルの動的粘弾性測定における1Hzでの損失正接が0.46未満となるまで該含水ゲルの架橋を進行させて、前記包装体内に密封された炭酸ガス含有含水ゲル物品を得る工程。
【0065】
<2>
(2)の工程を常温且つ大気圧下に行う、前記<1>に記載の製造方法。
<3>
前記水溶性高分子が、アニオン性ポリマーを含有し、
前記架橋剤が、アルミニウムイオン供給架橋剤を含有する、前記<1>又は前記<2>に記載の製造方法。
<4>
(2)の工程は、非通気性の第1原反と非通気性の第2原反との間に前記含水ゲルを有する物品を配置し且つ炭酸ガス含有ガスを前記両原反間に供給した状態下に、一方向に搬送される前記両原反における搬送方向に沿う両側部を接合する第1接合工程と、
前記両原反を、前記含水ゲル物品が存在しない位置において前記搬送方向と交差する方向に接合して、該含水ゲルを有する物品及び炭酸ガス含有ガスが封入された包装体連続体を形成する第2接合工程と、
第2接合工程によって接合された部位において、前記包装体連続体を前記搬送方向と交差する方向に切断して、前記包装体を形成する切断工程とを備える、前記<1>ないし前記<3>のいずれか一に記載の製造方法。
<5>
(2)の工程において、前記損失正接が、好ましくは0.48以上、より好ましくは0.50以上、更に好ましくは0.55以上のうちに、また好ましくは0.90以下、より好ましくは0.80以下、更に好ましくは0.65以下、より更に好ましくは0.64以下のうちに、前記含水ゲルを有する物品の周囲雰囲気中の炭酸ガスの濃度が10体積%以上となるように該周囲雰囲気の組成を調整する、前記<1>ないし前記<4>のいずれか一に記載の製造方法。
<6>
(1)の工程において、前記水溶性高分子、前記架橋剤及び前記水を、大気圧下に混合して、気泡入りの前記含水ゲルを調製する工程が含まれる、前記<1>ないし前記<5>に記載の製造方法。
【0066】
<7>
(2)の工程において、前記損失正接が0.46以上のうちに、前記含水ゲルを有する物品の周囲雰囲気中の炭酸ガスの濃度が、10体積%以上、好ましくは30体積%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは80体積%以上となるように該周囲雰囲気の組成を調整する、前記<1>ないし前記<6>のいずれか一に記載の製造方法。
<8>
(2)の工程は、前記包装体内に前記含水ゲルを有する物品を収容する操作と、前記包装体内に炭酸ガス含有ガスを供給する操作とを、この順で、又はこの逆の順で、又はこれらを同時に行い、然る後に該包装体を封止することで行われる、前記<1>ないし前記<7>のいずれか一に記載の製造方法。
<9>
(3)の工程において、前記損失正接が、好ましくは0.40未満、より好ましくは0.38未満、更に好ましくは0.35未満となるまで該含水ゲルの架橋を進行させて、前記包装体内に密封された炭酸ガス含有含水ゲル物品を得る、前記<1>ないし前記<8>のいずれか一に記載の製造方法。
<10>
(3)の工程を常温で行い、(3)の工程において、前記損失正接が0.46未満となるまでの時間は、前記含水ゲル物品を密封してから24時間以上366時間以下が好ましく、24時間以上240時間以下がより好ましい、前記<1>ないし前記<9>のいずれか一に記載の製造方法。
<11>
(3)の工程において、前記含水ゲルの架橋は、前記損失正接が0.20以上0.45以下となるまで進行させることが好ましく、0.35以上0.45以下となるまで進行させることがより好ましく、0.40以上0.45以下となるまで進行させることが更に好ましい、前記<1>ないし前記<10>のいずれか一に記載の製造方法。
<12>
(1)の工程が、得られた前記含水ゲルを支持体に塗布して、該支持体上に該含水ゲルを有する物品を形成する工程を有する、前記<1>ないし前記<11>のいずれか一に記載の製造方法。
<13>
前記支持体上に前記含水ゲルを有する物品を形成する工程において、該含水ゲルは、前記炭酸ガス含有含水ゲル物品における該含水ゲルの厚みが、好ましくは0.5mm以上5mm以下、より好ましくは0.7mm以上3mm以下、更に好ましくは1mm以上2mm以下となるように塗布される、前記<12>に記載の製造方法。
<14>
(1)の工程において、前記水溶性高分子、前記架橋剤及び前記水を混合する時間は、1分以上60分以下が好ましく、5分以上30分以下がより好ましい、前記<1>ないし前記<13>のいずれか一に記載の製造方法。
<15>
(1)の工程において、前記水溶性高分子、前記架橋剤及び前記水の混合時の撹拌速度は、好ましくは10rpm以上80rpm以下であり、より好ましくは20rpm以上70rpm以下であり、更に好ましくは30rpm以上65rpm以下である、前記<1>ないし前記<14>のいずれか一に記載の製造方法。
<16>
前記水溶性高分子がアニオン性ポリマーである、前記<1>ないし前記<15>のいずれか一に記載の製造方法。
【0067】
<17>
前記アニオン性ポリマーが、カルボキシル基、硫酸基、又はリン酸基である、前記<16>に記載の製造方法。
<18>
前記アニオン性ポリマーが、ポリ(メタ)アクリル酸及びこれらの塩類;カルボキシビニルポリマー及びこれらの塩類;カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等のアニオン性セルロース誘導体及びこれらの塩類;カラゲナン、アルギン酸、及びこれらの塩類、アニオン性の澱粉誘導体から選ばれる少なくとも1種以上である、前記<17>に記載の製造方法。
<19>
前記架橋剤が、金属イオン化合物、カチオン性ポリマー又は多官能性エポキシ化合物である、前記<1>ないし前記<18>のいずれか一に記載の製造方法。
<20>
前記架橋剤が金属イオン化合物であり、
前記金属イオン化合物が、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム等を含む酸化物や水酸化物又は塩類である、前記<19>に記載の製造方法。
<21>
前記金属イオン化合物が、水酸化アルミニウム、カリミョウバン、硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミニウムグリシネート、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、含水ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、塩化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、カオリン、合成ヒドロタルサイト、及び水酸化カリウム等から選ばれる1種又は2種以上である、前記<20>に記載の製造方法。
【0068】
<22>
前記金属イオン化合物がメタケイ酸アルミン酸マグネシウムである、前記<21>に記載の製造方法。
<23>
前記架橋剤に占めるメタケイ酸アルミン酸マグネシウムの割合は30質量%以上100質量%以下が好ましく、70質量%以上100質量%以下が更に好ましい、前記<22>に記載の製造方法。
<24>
前記架橋剤の仕込み量は、前記含水ゲル中に、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、より更に好ましくは0.1質量%以上であり、また、10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは2質量%以下である、前記<1>ないし前記<23>のいずれか一に記載の製造方法。
<25>
前記水の仕込み量は、前記含水ゲル中に、好ましくは20質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは30質量%92質量%以下であり、より更に好ましくは40質量%以上88質量%以下であり、より更に好ましくは70質量%以上88質量%以下である、前記<1>ないし前記<24>のいずれか一に記載の製造方法。
【実施例】
【0069】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0070】
〔実施例1〕
<工程(1)>
表1に示す成分を、同表に示す量で用いた。大気圧、25℃の条件下で、5gのコハク酸とポリビニルアルコール50.0gを764gの水に溶解させた水溶液を湿式混合ニーダーに投入し、更にカルボキシメチルセルロースナトリウム28.0g、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム0.5g、グリセリン100.0g、プロピレングリコール50.0g、及びパラオキシ安息香酸メチル2.5gを添加し、これらを撹拌速度60rpmで40分間混合することで気泡入りの含水ゲルを調整した。
【0071】
[含水ゲルを有する物品の形成工程]
工程(1)で得られた含水ゲルを、大気圧、25℃の条件下で、ポリプロピレンフィルムと不織布との間に挟み込み、2本ロールコーターによって厚さが2mmの含水ゲル層が形成されるように展延した。更に、12.5cm×8.5cm(面積106.25cm、含水ゲル塗工量1250g/m)の矩形の寸法に型抜きした。これによって、気泡入りの含水ゲル層が不織布からなる支持体上に形成された含水ゲル物品を得た。
【0072】
<工程(2)>
本工程では図1に示す装置を用いた。上述の工程で得られた含水ゲル物品における含水ゲルの損失正接(1Hz)が0.50の時点(工程(1)の終了後4時間経過時点)で、型抜きされた含水ゲル物品2枚を、2枚の矩形のアルミニウム蒸着フィルムの間に配置し、両フィルムの間に炭酸ガスを供給しつつ、両蒸着フィルムの四辺を気密に接合し、該蒸着フィルムからなる包装体内に密封した。このときのアルミニウム蒸着フィルムからなる包装体の内表面積は300cm、該包装体内の容積は354cmであった。また、この工程は25℃、大気圧下に行った。更に、包装体の密封時の周囲雰囲気における炭酸ガスの濃度の算出方法を以下に示す。
[装体の密封時の周囲雰囲気における炭酸ガスの濃度の算出方法]
気体難透過性容器内に炭酸ガスを充填して包装した含水ゲル物品に対し、容器内の酸素濃度を測定し、得られた値から容器内の炭酸ガス濃度を算出する。具体的には、ジルコニア式酸素濃度計LS―450F(東レエンジニアリング(株)製)で容器内の酸素濃度(F%)を測定する。空気中の酸素濃度は20.6%であることから、容器内の空気の割合(G%)は、式:(F/20.6)×100で求められる。空気以外の気体は炭酸ガスと仮定し、容器内の炭酸ガス濃度(H%)は、式:100−Gと定義する。
[包装体内表面積から計算される包装体内の容積の算出方法]
本明細書における包装体の内表面積から計算される容積とは、内表面積から取り得る立方体の体積を、その容積として定義する。つまり立方体の表面積Sは、一辺Xcmとした場合に、Xの二乗の6倍であり、体積はXの三乗となることから、体積=容積として、容積は(S/6)の3/2乗で求められる。
【0073】
<工程(3)>
包装体で密封された含水ゲル物品を25℃の環境下に120時間置くことで、含水ゲルの損失正接が0.30となるまで該含水ゲルの架橋を進行させた。このようにして、目的とする炭酸ガス含有含水ゲル物品を得た。
【0074】
〔実施例2〕
工程(1)で、架橋剤として水酸化アルミニウム1.5gを用い、工程(3)において50℃の環境下で架橋を進行させた。これら以外は実施例1と同様の操作を行い、炭酸ガス含有含水ゲル物品を得た。
【0075】
〔実施例3〕
工程(1)で、コハク酸の代わりに酒石酸10.0gを用い、グリセリンを50.0g用い、水溶性高分子としてカルボキシメチルセルロースナトリウム30.0g、ポリアクリル酸30.0g、ポリアクリル酸ナトリウム20.0gを用い、ポリビニルアルコールを含有させなかった。
これら以外は実施例1と同様の操作を行い、炭酸ガス含有含水ゲル物品を得た。
【0076】
〔実施例4〕
工程(2)において、含水ゲル物品の封入時の周囲雰囲気中の炭酸ガスの濃度を61%とした。また、工程(3)において、含水ゲルの損失正接が0.29となるまで該含水ゲルの架橋を進行させた。
これら以外は実施例1と同様の操作を行い、炭酸ガス含有含水ゲル物品を得た。
【0077】
〔実施例5〕
工程(2)において、含水ゲル物品の封入時の周囲雰囲気中の炭酸ガスの濃度を31%とした。また、工程(3)において、含水ゲルの損失正接が0.28となるまで該含水ゲルの架橋を進行させた。
これら以外は実施例1と同様の操作を行い、炭酸ガス含有含水ゲル物品を得た。
【0078】
〔実施例6〕
工程(2)において、含水ゲル物品の封入時の周囲雰囲気中の炭酸ガスの濃度を15%とした。また、工程(3)において、含水ゲルの損失正接が0.28となるまで該含水ゲルの架橋を進行させた。
これら以外は実施例1と同様の操作を行い、炭酸ガス含有含水ゲル物品を得た。
【0079】
〔実施例7〕
工程(1)で、架橋剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウム0.4g、水酸化アルミニウム0.1gを用いた。また、工程(2)において、含水ゲル物品における含水ゲルの損失正接(1Hz)が0.58の時点で、型抜きされた含水ゲル物品2枚を包装体内に密封した。また、工程(3)において、含水ゲルの損失正接が0.31となるまで該含水ゲルの架橋を進行させた。
これら以外は実施例1と同様の操作を行い、炭酸ガス含有含水ゲル物品を得た。
【0080】
〔実施例8〕
工程(1)で、架橋剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウム0.4g、水酸化アルミニウム0.01gを用いた。
これら以外は実施例7と同様の操作を行い、炭酸ガス含有含水ゲル物品を得た。
【0081】
〔実施例9〕
工程(1)で、架橋剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウム0.3g、水酸化アルミニウム0.1gを用いた。また、工程(2)において、含水ゲル物品における含水ゲルの損失正接(1Hz)が0.62の時点で、型抜きされた含水ゲル物品2枚を包装体内に密封した。また、工程(3)において、含水ゲルの損失正接が0.43となるまで該含水ゲルの架橋を進行させた。
これら以外は実施例1と同様の操作を行い、炭酸ガス含有含水ゲル物品を得た。
【0082】
〔実施例10〕
工程(2)において、含水ゲル物品における含水ゲルの損失正接(1Hz)が0.49の時点で、型抜きされた含水ゲル物品2枚を包装体内に密封した。また、工程(3)において、含水ゲルの損失正接が0.42となるまで該含水ゲルの架橋を進行させた。
これら以外は実施例9と同様の操作を行い、炭酸ガス含有含水ゲル物品を得た。
【0083】
〔比較例1〕
工程(2)において、含水ゲル物品の封入時の周囲雰囲気中の炭酸ガスの濃度を6%とした。また、工程(3)において、含水ゲルの損失正接が0.28となるまで該含水ゲルの架橋を進行させた。
これら以外は実施例1と同様の操作を行い、炭酸ガス含有含水ゲル物品を得た。
【0084】
〔比較例2〕
工程(1)で、架橋剤として水酸化アルミニウム1.5gを用い、更に含水ゲルの損失正接が0.26になるまで50℃で2日間熟成させた後に炭酸ガスを充填した。したがって、本比較例では工程(3)は行っていない。これら以外は実施例1と同様の操作を行い、炭酸ガス含有含水ゲル物品を得た。
【0085】
〔比較例3〕
工程(1)で、架橋剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウム0.5gを用い、更に含水ゲルの損失正接が0.31になるまで50℃で2日間熟成させた後に炭酸ガスを充填した。また、含水ゲル物品の封入時の周囲雰囲気中の炭酸ガスの濃度を61%とした。
これら以外は比較例2と同様の操作を行い、炭酸ガス含有含水ゲル物品を得た。
【0086】
〔比較例4〕
含水ゲル物品の封入時の周囲雰囲気中の炭酸ガスの濃度を31%とした。これ以外は比較例2と同様の操作を行い、炭酸ガス含有含水ゲル物品を得た。
【0087】
〔比較例5〕
含水ゲル物品の封入時の周囲雰囲気中の炭酸ガスの濃度を15%とした。これ以外は比較例2と同様の操作を行い、炭酸ガス含有含水ゲル物品を得た。
【0088】
〔比較例6〕
含水ゲル物品の封入時の周囲雰囲気中の炭酸ガスの濃度を6%とした。これ以外は比較例2と同様の操作を行い、炭酸ガス含有含水ゲル物品を得た。
【0089】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた炭酸ガス含有含水ゲル物品について、含水ゲル中の炭酸ガス濃度を以下の方法で測定した。また、実施例及び比較例における炭酸ガス含有含水ゲル物品の日産量を計測した。含水ゲルの供給量に関しては特に限定されるものではないが、本評価においてはゲルの総供給量はそれぞれの例について3000kgで一定とした。また、実施例及び比較例で得られた炭酸ガス含有含水ゲル物品について、気泡率及び、該炭酸ガス含有含水ゲル物品の表面積100%中における仮想直径5mm以上の気泡が占める総面積の割合を測定した。また、実施例及び比較例で得られた炭酸ガス含有含水ゲル物品について、該物品の粘着性を以下の方法で測定し評価した。それらの結果を以下の表1及び2に示す。
なお、炭酸ガス含有含水ゲル物品の日産量が15000個以上のとき、該炭酸ガス含有含水ゲル物品を十分効率的に製造できると判断することができる。また、含水ゲル中の炭酸ガス濃度が250ppm以上のとき、炭酸ガス含有含水ゲル物品は血行促進効果が認められると判断することができる。
【0090】
〔炭酸ガス濃度の測定〕
包装体を開封した直後において、炭酸ガス含有含水ゲル物品中の炭酸ガス濃度を測定した。具体的には、まず炭酸ガス含有含水ゲル物品をアルカリ溶液の入った蓋付き瓶に浸漬し、ゲルを溶解させながら炭酸ガスを炭酸塩に変換した。次いで、酸性緩衝液(pH4.5)で酸性に戻し、炭酸ガス電極(CE−2041;東亜ディーケーケー(株)製)を用い、発生する炭酸ガスの濃度を測定した。得られた炭酸ガス濃度から、炭酸ガス含有含水ゲル物品中の炭酸ガス濃度を算出した。かかる炭酸ガス濃度の値は、得られた炭酸ガス含有含水ゲル物品の炭酸ガスの保持性の評価の指標とすることができる。
【0091】
〔炭酸ガス含有含水ゲル物品の粘着性の評価〕
炭酸ガス含有含水ゲル物品が封入された包装体を開封し、該物品を取り出した後、速やかに該物品を専門パネラーのふくらはぎに貼付し、該専門パネラーが底背屈運動を10回行った。
次いで、ふくらはぎに貼付した炭酸ガス含有含水ゲル物品における、該ふくらはぎから浮いている部分、すなわち該ふくらはぎから剥がれている部分の面積を測定した。そして、前記剥がれている部分の面積が、炭酸ガス含有含水ゲル物品全体の面積に占める割合(%)を求めた。得られた割合を下記基準にしたがって評価し、炭酸ガス含有含水ゲル物品の粘着性の評価の指標とした。なお、評価の数値が高いほど粘着性が優れていることを表している。粘着性が優れる場合、貼付性及び追随性も優れるといえる。
<粘着性の評価基準>
6:前記剥がれている部分の面積の割合が0%超10%以下。
5:前記剥がれている部分の面積の割合が10%超20%以下。
4:前記剥がれている部分の面積の割合が20%超30%以下。
3:前記剥がれている部分の面積の割合が30%超40%以下。
2:前記剥がれている部分の面積の割合が40%超50%以下。
1:前記剥がれている部分の面積の割合が50%超。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
表1及び2に示す結果から明らかなとおり、本製造方法を採用することで、比較例の方法よりも生産性よく目的物を製造できることが判る。
また、本製造方法を採用することで、比較例よりも炭酸ガスの保持性の高い目的物を得られることが判る。
【符号の説明】
【0095】
1 包装体
1A 包装体連続体
5 含水ゲル物品
10 装置
11 フィルムの第1原反(第1フィルム原反)
12 フィルムの第2原反(第2フィルム原反)
15 第1接合部位
16 第2接合部位
20 第1フィルム接合部
30 ノズル部
40 第2フィルム接合部
50 カッター部
【要約】
【課題】含水ゲル中に炭酸ガスが高濃度で含有された炭酸ガス含有含水ゲル物品を生産性よく製造すること。
【解決手段】工程(1)〜(3)を有する、炭酸ガス含有含水ゲル物品の製造方法。
(1)水溶性高分子、該水溶性高分子の架橋剤及び水を含有する、動的粘弾性測定における1Hzでの損失正接が0.46以上である含水ゲルを有する物品を調製する。
(2)前記含水ゲルを有する物品における前記含水ゲルの動的粘弾性測定における1Hzでの損失正接が0.46以上のうちに、該含水ゲルを有する物品の周囲雰囲気中の炭酸ガスの濃度が10体積%以上となるように該周囲雰囲気の組成を調整するとともに該含水ゲルを有する物品を包装体内に密封する。
(3)前記含水ゲルを有する物品における前記含水ゲルの動的粘弾性測定における1Hzでの損失正接が0.46未満となるまで該含水ゲルの架橋を進行させて、包装体内に密封された炭酸ガス含有含水ゲル物品を得る。
【選択図】図1
図1