(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
酸価が200mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂が、構成する単量の質量比で、スチレン/ラジカル重合性不飽和カルボン酸の炭素数が8以上のアルキルエステル/(メタ)アクリル酸=35〜55/25〜35/15〜35のもの、又は(メタ)アクリル酸の炭素数が8未満のアルキルエステル/アクリル酸/メタクリル酸=50〜70/13〜25/15〜25のものである請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクセット。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のインクセットは、白色顔料を含有する特定の第1のインク組成物と、特定の第2のインク組成物を組み合わせてなるインクセット、さらに前処理液と、該第1のインク組成物と該第2のインク組成物とを有するインクセットを基本とする。
このインクセットを以下に順に説明する。インク組成物は印刷用でも良く、捺染用であっても良い。本明細書において、インクジェット用インク組成物を場合により「インク組成物」というときがある。
【0008】
本明細書中の樹脂に関するガラス転移温度及び重量平均分子量は以下のように定義される。
<ガラス転移温度>
本発明における樹脂のガラス転移温度は、樹脂がアクリル系共重合体樹脂の場合、下記のWoodの式により求めた理論ガラス転移温度である。
Woodの式:1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+・・・・・+Wx/Tgx
[式中、Tg1〜Tgxは樹脂を構成する単量体1、2、3・・・xのそれぞれの単独重合体のガラス転移温度、W1〜Wxは単量体1、2、3・・・xのそれぞれの重合分率、Tgは理論ガラス転移温度を表す。ただし、Woodの式におけるガラス転移温度は絶対温度である。]
【0009】
樹脂のガラス転移温度は、樹脂がアクリル系共重合体樹脂以外の場合、熱分析により求めた理論ガラス転移温度である。熱分析の方法としては、JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準じ、一例として、パーキンエルマー社製Pyris1 DSCを用いて、昇温速度20℃/分、窒素ガス流速20ミリリットル/分の条件下でガラス転移温度を測定することができる。
【0010】
<重量平均分子量>
本発明における樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。一例として、GPC装置としてWater2690(ウォーターズ社製)、カラムとしてPLgel、5μ、MIXED−D(Polymer Laboratories社製)を使用して、展開溶媒としてテトラヒドロフラン、カラム温度25℃、流速1ミリリットル/分、RI検出器、試料注入濃度10ミリグラム/ミリリットル、注入量100マイクロリットルの条件下、クロマトグラフィーを行ない、ポリスチレン換算の重量平均分子量として求める。
【0011】
<前処理液>
本発明中の前処理液は、1気圧下で沸点120℃以下の有機酸を含有し、さらに界面活性剤を含有する。
(1気圧下で沸点120℃以下の有機酸)
前処理液にて使用される1気圧下で沸点120℃以下の有機酸としては、ギ酸(1気圧下で沸点100.8℃)、及び/又は、酢酸(1気圧下で沸点118℃)を使用できる。
このような有機酸は前処理液中に5.0質量%以上含有することが好ましく、8.0質量%以上含有することがより好ましい。また30.0質量%以下含有することが好ましく、25.0質量%以下含有することがより好ましい。
有機酸の沸点及び含有量がこれらの範囲であると、この前処理液を被印刷基材表面に塗布しておくことにより、その上に形成する本発明の第1のインク組成物による印字部の塗膜厚さが、印刷における通常の範囲でれば、この第1のインク組成物層を通じて、上記有機酸が第1のインク組成物層表面に存在できる。そして、続いて印刷をした第2のインク組成物中の成分がその有機酸と反応する。なお、特にインクジェット印刷時、及びインクジェットによる捺染時には、この傾向が顕著である。
有機酸の含有量が少なすぎると、その上に印刷した各インク組成物層中の樹脂の定着に時間を要する可能性がある。また、過剰に含有させると、印刷後の印刷層中に多くの有機酸が残存するため、有機酸が蒸発して印字や画像中の遊離の酸が消滅するまでに時間を要する可能性がある。
【0012】
(界面活性剤)
前処理液に界面活性剤を含有しても良く、含有しなくても良い。含有できる界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤が好ましい。カチオン系界面活性剤や両性界面活性剤を含有させると、上記1気圧下で沸点120℃以下の有機酸と塩を構成する可能性がある。
界面活性剤の含有量は、例えば、前処理液全体に対して、0〜1.0質量%、好ましくは0.01〜1.0質量%、より好ましくは0.1〜0.7質量%である。
【0013】
アニオン系界面活性剤としてはリン酸塩系界面活性剤、アルケニルコハク酸系界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩類系界面活性剤、タウリン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニル硫酸アルカリ金属塩系界面活性剤、を採用できる。
リン酸塩系界面活性剤としては、リン酸エステル系界面活性剤が好ましく、プライサーフAL、プライサーフDB−01、プライサーフA219B、プライサーフA208B、プライサーフ212C(第一工業製薬社製)を使用することができる。リン酸塩系界面活性剤と共に、アルケニルコハク酸系界面活性剤及び/又はタウリン系界面活性剤等を併用できる。
アルケニルコハク酸系界面活性剤又はその塩としては、アルケニルコハク酸(星光PMC社製)、アルケニルコハク酸ジカリウム(花王社製)を使用できる。
アルキルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩類系界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどを使用できる。
タウリン系界面活性剤としては、N−アシルタウリン塩(日光ケミカルズ社製)、LMT(N−ラウロイルメチルタウリンNa)、MMT(N−ミリストイルメチルタウリンNa)、PMT(N−パルミトイルメチルタウリンNa)、SMT(N−ステアロイルメチルタウリンNa)を含有できる。
ポリオキシエチレンアルキルフェニル硫酸アルカリ金属塩系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニル硫酸ナトリウム等を使用できる。
【0014】
ノニオン系界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤及びアセチレン系界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては、BYK−347、BYK−377、BYK−3455(ビックケミー・ジャパン社)等などが挙げられる。
【0015】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、F−410、F−444、F−553(以上、DIC社製)、FS−65、FS−34、FS−35、FS−31、FS−30(以上、デュポン社製)などが挙げられる。
【0016】
アセチレン系界面活性剤としては、例えば、サーフィノール104E、サーフィノール104H、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104DPM、サーフィノール104PA、サーフィノール104PG−50、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465(EVONIK社)、ダイノール607、ダイノール609、オルフィンE1004、オルフィンE1010、オルフィンE1020、オルフィンPD−001、オルフィンPD−002W、オルフィンPD−004、オルフィンPD−005、オルフィンEXP.4001、オルフィンEXP.4200、オルフィンEXP.4123、オルフィンEXP.4300(日信化学工業社)等の商品名で市販されているものから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0017】
(溶媒)
本発明中の前処理液は溶媒として、水のみ、又は水と水溶性有機溶媒の混合溶媒を採用できる。
この水溶性有機溶媒としては、例えば、モノアルコール類、多価アルコール類、多価アルコールの低級アルキルエーテル類、ケトン類、エーテル類、エステル類、窒素含有化合物類等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記モノアルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、又はこれらの異性体、シクロペンタノール、シクロヘキサノール等が挙げられ、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜6のアルコールを使用できる。
上記多価アルコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール等を使用できる。
上記多価アルコールの低級アルキルエーテル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等を使用できる。
上記水溶性有機溶媒の含有量としては、極力少なくすることが好ましく、配合しないこともできる。
しかしながら配合する際の含有量は、前処理液中0〜10.0質量%が好ましく、さらに好ましくは0〜5.0質量%である。10.0質量%を超えるときには乾燥不良や耐ブロッキング性が低下する。
【0018】
(その他成分)
本発明中の前処理液には、その他の成分として水溶性多価金属塩を含有しても良く、含有しなくても良い。
水溶性多価金属塩としては20℃における水100mLに対する溶解度が1g/100mL以上、好ましくは2g/100mL以上、より好ましくは20g/100mL以上である、多価金属の有機酸又は無機酸の塩である。
水溶性多価金属塩は、多価金属を含む複塩であってもよく、水和物であってもよい。
多価金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、亜鉛、銅、鉄、及びアルミニウムから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0019】
水溶性多価金属塩を構成するための有機酸としては、例えば、RCOOH(式中、Rは、水素、炭素数1〜30の有機基)で表される脂肪酸の1種又は2種以上が挙げられる。
このような有機酸として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸、安息香酸、アスコルビン酸等が挙げられる。
無機酸としては、例えば、硝酸、硫酸、塩化水素(塩酸)、臭化水素、ヨウ化水素、塩素酸、臭素酸、炭酸、リン酸から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0020】
有機酸の多価金属塩である水溶性多価金属塩としては、例えば、酢酸亜鉛、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸マグネシウム、ギ酸亜鉛、ギ酸カルシウム、ギ酸ストロンチウム、ギ酸銅(II)、ギ酸マグネシウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸亜鉛、乳酸カルシウム、乳酸マグネシウム、乳酸アルミニウム、乳酸鉄(II)、乳酸銅、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸マグネシウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸マグネシウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸マグネシウム、グルコン酸亜鉛、グルコン酸銅、クエン酸亜鉛、クエン酸銅、及びこれらの水和物から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0021】
また、無機酸の多価金属塩である水溶性多価金属塩としては、例えば、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化鉄、塩化銅(II)、塩化ニッケル、塩化マグネシウム、塩化マンガン(II)、臭化亜鉛、臭化カルシウム、臭化ストロンチウム、臭化鉄(II)、臭化銅(II)、臭化マグネシウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化カルシウム、ヨウ化マグネシウム、硝酸アルミニウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸鉄(III)、硝酸銅(II)、硝酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウム、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムカリウム、リン酸二水素カルシウム、炭酸水素カルシウム、及びこれらの水和物から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0022】
水溶性多価金属塩の配合量は、塩種や配合目的に応じて適宜調整し得るものであり、特に限定されない。
水溶性多価金属塩の含有量の下限は、例えば、前処理液中に固形分換算で0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。また、水溶性多価金属塩の含有量の上限は、例えば、前処理液中に固形分換算で20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
水溶性多価金属塩の含有量は、例えば、前処理液中に固形分換算で0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%である。
【0023】
<第1及び第2のインク組成物>
(顔料)
本発明中のインク組成物には、各色相の顔料を含有させて、第1及び第2のインク組成物として各色のインク組成物を得る。第1のインク組成物は白色顔料を含有した白色インク組成物であり、第2のインク組成物は白以外の着色顔料を含有した着色インク組成物である。
このような顔料としては、通常のインク組成物で従来から使用されている顔料を特に制限なく使用できる。
白インク組成物として使用するための白色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられ、好ましくは、アルミナ、シリカ等の種々の材料で表面処理された酸化チタンが挙げられる。
着色インク組成物を得るために使用する着色顔料は、以下の有機顔料及びブラック顔料から選ばれる1種以上である。
そして有機顔料としては、例えば、染料レーキ顔料、アゾ系、ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジコ系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、ニトロ系、ニトロソ系、フラバンスロン系、キノフタロン系、ピランスロン系、インダンスロン系の顔料等が挙げられる。無機顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、ベンガラ、黒鉛、鉄黒、酸化クロムグリーン、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
また、顔料の具体例としては以下のものが挙げられる。
イエロー顔料としては、例えば、C.I.PigmentYellow1、2、3、12、13、14、16、17、42、73、74、75、81、83、87、93、95、97、98、108、109、114、120、128、129、138、139、150、151、155、166、180、184、185、213等が挙げられ、好ましくは、C.I.PigmentYellow150、155、180、213等が挙げられる。
マゼンタ顔料としては、例えば、C.I.PigmentRed5 、7、12、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57、57:1、63:1、101、102、112、122、123、144、146、149、168、177、178、179、180、184、185、190、202、209、224、242、254、255、270、C.I.PigmentViolet19等が挙げられ、好ましくは、C.I.PigmentRed122、202、PigmentViolet19等が挙げられる。
シアン顔料としては、例えば、C.I.PigmentBlue1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、18、22、27、29、6等で、好ましくは、C.I.PigmentBlue15:4等が挙げられる。
ブラックインク組成物として使用するためのブラック顔料としては、例えば、カーボンブラック(C.I.Pigment Black7)等が挙げられる。
インク組成物における顔料の含有量は、インク組成物の総質量に対して1.0〜20.0質量%であることが好ましい。顔料の含有量が1質量%未満では、得られる印刷物の画像品質が低下する傾向がある。一方、20.0質量%を超えると、インク組成物の粘度特性に悪影響を与える傾向がある。
【0024】
(顔料分散剤(第1のインク組成物用))
本発明中の第1のインク組成物は、必要に応じて顔料分散剤を含有していてもよい。
顔料分散剤は、顔料の分散性、本発明のインク組成物の保存安定性を向上させるために使用するもので、従来から使用されているものを特に制限なく使用できるが、その中でも高分子分散剤を使用することが好ましい。このような顔料分散剤としては、カルボジイミド系分散剤、ポリエステルアミン系分散剤、脂肪酸アミン系分散剤、変性ポリアクリレート系分散剤、変性ポリウレタン系分散剤、多鎖型高分子非イオン系分散剤、高分子イオン活性剤等が挙げられる。これら顔料分散剤は単独で又は2種以上を混合して使用できる。
上記顔料分散剤を使用する際には、使用する全顔料の量を100質量部としたときに、1〜200質量部含有することが好ましい。顔料分散剤の含有量が1質量部未満では、顔料分散性、及び本発明のインク組成物の貯蔵安定性が低下する場合がある。一方、200質量部を超えて含有させることもできるが効果に差がでない場合もある。顔料分散剤の含有量のより好ましい下限は5質量部、より好ましい上限は60質量部である。
【0025】
(酸価が200mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂又はその架橋物(第1及び第2のインク組成物用))
酸価が200mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂又はその架橋物としては、例えば、アクリル系共重合樹脂、マレイン酸系共重合樹脂、縮重合反応によって得られるポリエステル樹脂、及びポリウレタン樹脂など又はその架橋物が挙げられる。
このアルカリ可溶性樹脂を合成するための材料については、例えば、特開2000−94825号公報に開示されており、該公報に記載されている材料を使用して得られるアクリル系共重合樹脂、マレイン酸系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂などが利用可能である。さらには、これら以外のその他の材料を用いて得られた樹脂も利用可能である。
前記アルカリ可溶性樹脂は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、本発明による効果を毀損しない範囲で、第1及び第2のインク組成物に、酸価が200mgKOH/g以下のアルカリ可溶性樹脂又はその架橋物を配合することもできる。
【0026】
顔料の分散性を向上させるために、第1のインク組成物及び第2のインク組成物それぞれの中に、酸価が200mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂又はその架橋物は1.0質量%以上含有する。そしてインク組成物中の含有量は1.3質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましい。
又は、第1のインク組成物において、前記酸価が200mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂の含有量は、前記顔料100質量部に対して、顔料の分散性を高める観点から、5.0質量部以上であることが好ましく、15.0質量部以上であることがより好ましい。前記アルカリ可溶性樹脂の含有量は、前記顔料100質量部に対して、インク組成物の粘度を低下させる観点から、100.0質量部以下であることが好ましく、80.0質量部以下であることがより好ましく、60.0質量部以下であることがさらに好ましい。
第2のインク組成物において、前記酸価が200mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂の含有量は、前記顔料100質量部に対して、顔料の分散性を高める観点から、50.0質量部以上であることが好ましく、100.0質量部以上であることがより好ましい。前記アルカリ可溶性樹脂の含有量は、前記顔料100質量部に対して、インク組成物の粘度を低下させる観点から、300.0質量部以下であることが好ましく、280.0質量部以下であることがより好ましく、250.0質量部以下であることがさらに好ましい。
【0027】
アクリル系共重合樹脂としては、例えば、アニオン性基含有単量体と共重合可能な他の単量体の混合物を通常のラジカル発生剤(例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ターシャリブチルパーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリルなど)の存在下、溶媒中で重合して得られるものが使用できる。
【0028】
アニオン性基含有単量体としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基よりなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン性基を有する単量体が挙げられ、これらの中でも、カルボキシル基を有する単量体が特に好ましい。
【0029】
前記カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、無水フマル酸、マレイン酸ハーフエステルなどが挙げられる。また、前記スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、スルホエチルメタクリレートなどが挙げられる。また、前記ホスホン酸基を有する単量体としては、例えば、ホスホノエチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0030】
前記アニオン基含有単量体と共重合可能な他の単量体としては、顔料との吸着性を向上させる観点から、疎水性基含有単量体を含むことが好ましい。
前記疎水性基含有単量体としては、例えば、長鎖アルキル基を有する単量体として、(メタ)アクリル酸などのラジカル重合性不飽和カルボン酸の炭素数が8以上のアルキルエステル類(例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシステアリル(メタ)アクリレートなど)、炭素数が8以上のアルキルビニルエーテル類(例えば、ドデシルビニルエーテルなど)、炭素数が8以上の脂肪酸のビニルエステル類(例えば、ビニル2−エチルヘキサノエート、ビニルラウレート、ビニルステアレートなど);脂環族炭化水素基を有する単量体として、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなど;芳香族炭化水素基を有する単量体として、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系単量体などが挙げられる。前記疎水性基含有単量は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
前記アニオン性基含有単量体と共重合可能な他の単量体としては、水性媒体中でアルカリ可溶性樹脂の凝集を抑制する観点から、親水性基含有単量体を含むことができる。
【0032】
前記親水性基含有単量体としては、例えば、(ポリ)オキシアルキレン鎖を有する単量体として、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール、プロポキシポリエチレングリコール、プロポキシポリエチレンポリプロピレングリコールなどの片末端アルキル封鎖(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸などのラジカル重合性不飽和カルボン酸とのエステル化物や、(メタ)アクリル酸などのラジカル重合性不飽和カルボン酸へのエチレンオキシド付加物及び/又はプロピレンオキシド付加物など;塩基性基含有単量体として、例えば、1−ビニル−2−ピロリドン、1−ビニル−3−ピロリドンなどのビニルピロリドン類、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジンなどのビニルピリジン類、1−ビニルイミダゾール、1−ビニル−2−メチルイミダゾールなどのビニルイミダゾール類、3−ビニルピペリジン、N−メチル−3−ビニルピペリジンなどのビニルビペリジン類、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸第3ブチルアミノエチル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシ(メタ)アクリルアミド、N−エトキシ(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミドなどの(メタ)アクリル酸の含窒素誘導体類など;水酸基を有する単量体として、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類など;エポキシ基を有する単量体として、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記親水性基含有単量体は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
前記疎水性基含有単量体、及び親水性基含有単量体以外の共重合可能な他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸の炭素数が8未満のアルキルエステル類などが挙げられる。前記疎水性基含有単量体、及び親水性基含有単量体以外の共重合可能な他の単量体は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
アルカリ可溶性樹脂は、構成する単量体の質量比で、好ましくはスチレン/ラジカル重合性不飽和カルボン酸の炭素数が8以上のアルキルエステル/(メタ)アクリル酸=35〜55/25〜35/15〜35、より好ましくはスチレン/アクリル酸ラウリル/アクリル酸=35〜55/25〜35/15〜35である。
また好ましくは(メタ)アクリル酸の炭素数が8未満のアルキルエステル/アクリル酸/メタクリル酸=50〜70/13〜25/15〜25、より好ましくはアクリル酸シクロヘキシル/アクリル酸/メタクリル酸=50〜70/13〜25/15〜25である。
前記アルカリ可溶性樹脂は、当該樹脂を適度に架橋して、顔料の凝集を抑制させる観点から、2官能以上の架橋剤を使用してもよく、架橋させなくてもよい。
【0035】
前記2官能以上の架橋剤は、アルカリ架橋性樹脂が有する官能基と反応するために、分子内に2つ以上の反応性官能基を有するものであればよい。当該反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、水酸基、イソシアネート基、アミノ基、アジリジン基などが挙げられる。さらに、水中に分散、乳化、溶解されているか、又は水中に分散できる、乳化できる及び/又は溶解できる架橋剤が特に好ましい。前記2官能以上の架橋剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
前記アルカリ可溶性樹脂の酸価は、前処理液に含有される有機酸との反応性を高める観点から、200mgKOH/g以上であり、210mgKOH/g以上がより好ましく、220mgKOH/g以上がさらに好ましい。また、前記アルカリ可溶性樹脂の酸価は、印刷物の耐水性を向上させる観点から、300mgKOH/g以下が好ましく、250mgKOH/g以下がより好ましく、240mgKOH/g以下がさらに好ましい。なお、前記酸価は、アルカリ可溶性樹脂を合成するために用いる単量体の組成に基づいて、アルカリ可溶性樹脂1gを中和するのに理論上要する水酸化カリウムのmg数を算術的に求めた理論酸価である。
【0037】
前記アルカリ可溶性樹脂のガラス転移温度は、印刷物の耐ブロッキング性を向上させる観点から、0℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、40℃以上がさらに好ましい。前記アルカリ可溶性樹脂のガラス転移温度は、印刷物の耐折り曲げ性を向上させる観点から、100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく60℃以下がさらに好ましい。
【0038】
前記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、印刷物の耐水性を向上させる観点から、5,000以上が好ましく、8,000以上がより好ましく、13,000以上がさらに好ましい。前記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、水性媒体への溶解性を高める観点から、50,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、20,000以下がさらに好ましい。
【0039】
(両性界面活性剤)
第2のインク組成物に含有される両性界面活性剤として、公知のものを採用でき、中でもアルキルアミノ酢酸ベタイン及び/又はアルキルアミンオキシドが好ましい。
アルキルアミノ酢酸ベタインとしては、ラウリルジメチルアミノ酢酸(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)が好ましい。
アルキルアミンオキシドとしては、ラウリルジメチルアミンオキシドが好ましい。
また、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインも採用できる。
本発明中のインク組成物中の両性界面活性剤の含有量は、インク組成物全量に対して0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。また、インク組成物全量に対して10.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましく、2.0質量%以下がさらに好ましく、1.0質量%以下が最も好ましい。
両性界面活性剤を含有しない場合には、印字部のドット拡張性を良好にすることが困難になる可能性があり、10.0質量%を超えても、それ以上の効果の向上を見込めない可能性がある。
なお第1のインク組成物も同様に両性界面活性剤を含有できる。
【0040】
(その他の界面活性剤)
本発明中の第1及び第2のインク組成物は、本発明による効果を毀損しない範囲で、印刷や捺染工程を最適化させるために任意のその他の界面活性剤を含有できる。さらにインクジェット用インク組成物にする際には、使用するインクジェットヘッドに応じて、界面活性剤として従来からインク組成物に使用されているアセチレンジオール系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤等の界面活性剤、アニオン系界面活性剤等を、吐出安定性を改良するために含有することでき、又は含有しなくても良い。
アセチレンジオール系界面活性剤の具体例としては、サーフィノール104E、サーフィノール104H、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104DPM、サーフィノール104PA、サーフィノール104PG−50、サーフィノール420、サーフィノール440等(EVONIK社製)、オルフィンE−1004、オルフィンE−1010、オルフィンE−1020、オルフィンPD−001、オルフィンPD−002W、オルフィンPD−004、オルフィンPD−005、オルフィンEXP.4001、オルフィンEXP.4200、オルフィンEXP.4123、オルフィンEXP.4300等(日信化学工業社製)が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シリコーン系界面活性剤の具体例としては、ポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性メチルアルキルポリシロキサン等が挙げられる。これらの例として、BYK−307、BYK−333、BYK−347、BYK−348、BYK−349、BYK−345、BYK−378、BYK−3455(ビックケミー社製)などが挙げられる。これらは単独又は2種以上を併用して用いることができる。
本発明中のインク組成物において、その他の界面活性剤を含有する際の含有量としては、好ましくは0.005〜1.0質量%である。0.005質量%未満であると、本発明のインク組成物の表面張力が高くなり、インクジェットヘッドからの吐出安定性が低下する可能性がある。一方、1.0質量%を超えると、インク組成物中に泡が増加し吐出安定性が低下する可能性がある。
【0041】
(水分散性樹脂(第2のインク組成物用))
第2のインク組成物に含有される水分散性樹脂として、アクリル系樹脂エマルジョン、スチレンアクリル系樹脂エマルジョン、ポリウレタン系樹脂エマルジョン及びポリオレフィン系樹脂エマルジョンから選ばれた1種以上を採用できる。
【0042】
本発明中の第2のインク組成物中の水分散性樹脂の固形分の割合は、印刷画質及び耐擦過性を向上させる観点から、10.0質量%以上が好ましく、13.0質量%以上がより好ましく、そして、印刷画質を向上させる観点から、30.0質量%以下が好ましく、25.0質量%以下がより好ましい。
また本発明中の第2のインク組成物中の樹脂と顔料の合計量に対する、水分散性樹脂の固形分の割合は、印刷画質及び耐擦過性を向上させる観点から、30.0質量%以上が好ましく、40.0質量%以上がより好ましく、50.0質量%以上がさらに好ましく、60.0質量%が最も好ましい。そして、印刷画質を向上させる観点から、93.0質量%以下が好ましく、90.0質量%以下がより好ましい。
また水分散性樹脂の酸価は、耐酸性を高める観点から、15mgKOH/g以下が好ましく、10mgKOH/g以下がより好ましく、5mgKOH/g以下がさらに好ましく、1mgKOH/g以下が最も好ましく、0mgKOH/gでもよい。なお、前記酸価は、アルカリ可溶性樹脂を合成するために用いる単量体の組成に基づいて、アルカリ可溶性樹脂1gを中和するのに理論上要する水酸化カリウムのmg数を算術的に求めた理論酸価である。
アクリル系樹脂エマルジョンは、下記の単量体から1種又は2種以上を混合した重合体である。
例えば、炭素数1〜18のアルキル基を有するアルコールとの(メタ)アクリル酸エステル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの総称である。また、上記に加えて下記エチレン性不飽和単量体を併用しても良い。例えば、アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
【0043】
スチレンアクリル系樹脂エマルジョンは、スチレンアクリル系樹脂が水に分散したエマルジョンであり、乳化重合、分散重合、懸濁重合、粉砕又は溶液/バルク重合、その後の後乳化により製造できる。
この方法及び安定化剤についての詳しい情報は、“Emulsion Polymerization and Emulsion Polymer”(P.A.Lovell,M.S.El−Aasser,John Wiley & Sons Ltd.,England、1977年、引用することにより本明細書に包含する)に記載されている。
スチレンアクリル系樹脂エマルジョンの市販品としては、M6963(ジャパンコーティングレジン社製)J−450、J−734、J−7600、J−352、J−390、J−7100、J−741、J−74J、J−511、J−840、J−775、HRC−1645、HPD−71、PDX−6102B、JDX−5050(BASF社製)、UC−3900(東亜合成社製)などが挙げられる。
【0044】
前記ポリウレタン系樹脂エマルジョンは、ポリウレタン樹脂が水に分散したエマルジョンであり、アニオン性、カチオン性、ノニオン性のいずれも使用できるが、アニオン性、ノニオン性が好ましい。また、前記ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル・ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂などが挙げられる。前記ポリウレタン系樹脂エマルジョンは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0045】
前記ポリウレタン系樹脂エマルジョンの市販品としては、例えば、「スーパーフレックス210」(第一工業製薬社製、アニオン性ポリエステル系ポリウレタン樹脂)、「NeoRez R967」(DSM Coating Resins社製、ポリエーテルポリウレタン)、「スーパーフレックス130」(第一工業製薬社製、アニオン性ポリエーテル系ポリウレタン樹脂)、「スーパーフレックス500M」(第一工業製薬社製、ノニオン性ポリエステル系ポリウレタン樹脂)、「スーパーフレックス460」(第一工業製薬社製、アニオン性ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂)、「インプラニールDLP1380」(住化コベストロウレタン社製、アニオン性ポリエステル系ポリウレタン樹脂)、「バイボンド PU407」(住化コベストロウレタン社製、アニオン性/非イオン性ポリエステル系ポリウレタン樹脂)、「スーパーフレックス420NS」(第一工業製薬社製、アニオン性ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂)、SF460 、SF460S、SF420、SF110、SF300、SF361(日本ユニカー社製、ポリウレタン系樹脂エマルジョン)、W−6020、W−5025、W−5661、W−6010(三井化学社製、ポリウレタン系樹脂エマルジョン、)などが挙げられる。
【0046】
前記ポリオレフィン系樹脂エマルジョンは、ポリオレフィン系樹脂が水に分散したエマルジョンである。前記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレン樹脂、ならびにエチレン、プロピレン、及びブチレンのうち2種以上を共重合させたポリオレフィン樹脂などが挙げられる。また、前記ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン鎖に対して、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アクリロイル基、その他の高分子鎖を導入した変性ポリオレフィン樹脂;ポリオレフィン鎖の一部を酸化処理した酸化ポリオレフィン樹脂;一部をハロゲンで処理したハロゲン化ポリオレフィン樹脂などであってもよい。前記ポリオレフィン系樹脂エマルジョンは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0047】
前記ポリオレフィン系樹脂エマルジョンの市販品としては、例えば、「ケミパールS100」(三井化学社製、ポリエチレン系樹脂エマルジョン)、「ケミパールXEP800H」(三井化学社製、ポリプロピレン系樹脂エマルジョン)、「アローベースTC−4010」(ユニチカ社製、ポリプロピレン系樹脂エマルジョン)などが挙げられる。
【0048】
樹脂エマルジョンには、前記アクリル系樹脂エマルジョン、前記スチレンアクリル系樹脂エマルジョン、前記ポリウレタン系樹脂エマルジョン及び前記ポリオレフィン系樹脂エマルジョン以外の、インク組成物に使用される、AP4710(アクリルーシリコン系樹脂エマルジョン、昭和高分子社製) 等の公知の樹脂エマルジョン(その他の樹脂エマルジョン)を、本発明の効果を損なわない範囲で含むことができる。当該その他の樹脂エマルジョンとしては、例えば、ポリ酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、ポリ塩化ビニル系樹脂エマルジョンなどが挙げられる。
【0049】
前記樹脂エマルジョン中、前記スチレンアクリル系樹脂エマルジョン及び/又は前記ポリウレタン系樹脂エマルジョンは、耐擦過性などの塗膜耐性を向上させる観点から、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上が最も好ましい。
【0050】
(添加剤)
本発明中の第1及び第2のインク組成物には、必要に応じて種々の機能性を発現させるため、各種の添加剤を添加することができる。具体的には、表面調整剤、光安定化剤、表面処理剤、酸化防止剤、老化防止剤、架橋促進剤、重合禁止剤、可塑剤、防腐剤、pH調整剤、消泡剤、保湿剤等が挙げられる。また、ビヒクルとして機能するが硬化性ではない樹脂を配合しても良く、配合しなくても良い。また、溶媒を含有させても良いが、含有しなくても良い。
【0051】
<塩基性化合物>
本発明中の第1及び第2のインク組成物には、アルカリ可溶性樹脂を溶解させる観点から、塩基性化合物を含有しても良い。前記塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基性化合物;アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、モノエタノールアミン、N、N−ジメチルエタノールアミン、N、N−ジエチルエタノールアミン、N、N−ジブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンなどの有機塩基性化合物などが挙げられる。前記塩基性化合物は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0052】
本発明中の第1及び/又は第2のインク組成物に前記塩基性化合物を含有させる場合における、第1及び/又は第2のインク組成物中の前記塩基性化合物の割合は、前記アルカリ可溶性樹脂を媒体中に溶解させる量であればよいが、通常、アルカリ可溶性樹脂の分散安定性を高める観点から、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、そして、印刷物の耐水性を高める観点から、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。
【0053】
本発明中の第1及び第2のインク組成物には、さらに、目的に応じて公知の樹脂、防黴剤、防錆剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保存性向上剤、消泡剤、pH調整剤などの添加剤を添加することができる。
【0054】
<前処理液の調製方法>
本発明中の前処理液は、水に対して、有機酸及び必要に応じて界面活性剤等の所定量を任意の順で添加して調製できる。
【0055】
<第1及び第2のインク組成物の調製方法>
本発明中の第1及び第2のインク組成物を調製(製造)する方法としては、特に限定されず、上記の成分を順番に、あるいは同時に添加して、混合すればよい。例えば、下記(1)や(2)の方法を採用できる。
(1)前記塩基性化合物の存在下にアルカリ可溶性樹脂を水に溶解した水性樹脂ワニス、顔料、必要に応じて顔料分散剤などを混合した後、各種分散機、例えばボールミル、アトライター、ロールミル、サンドミル、アジテーターミルなどを利用して顔料分散液(インクベース)を調製し、さらに残りの材料を添加して、インク組成物を調製する方法。
(2)上記の方法で顔料を分散した後、酸析法や、塩基性化合物の存在下にアニオン性基含有樹脂を溶解させた水性溶液に顔料 を分散させた後、イオン交換手段を用いて前記水性溶液中の塩基性化合物を除去することにより、顔料表面にアニオン性基含有樹脂を析出させる方法などにより、顔料表面にアルカリ可溶性樹脂を析出させた樹脂被覆顔料を得、次いで得られた樹脂被覆顔料を塩基性化合物で中和し、各種分散機(高速撹拌装置など)を用いて水に再分散し、さらに残りの材料を添加して、インク組成物を調製する方法。
本発明中のインク組成物は、製造後の初期粘度が2.0〜15.0mPa・s、好ましくは3.0〜12.0mPa・sの範囲である。粘度は、例えば、E型粘度計(商品名「RE100L型粘度計」、東機産業社製)により測定できる。
【0056】
(本発明のインクセットによる印刷方法)
本発明のインクセットによる印刷方法は、印刷用紙、樹脂フィルム等の被印刷基材表面に対して、前処理液を塗布する工程と、インク組成物により印刷を行う印刷工程の2つの工程からなる。
前処理液を塗布する工程はインクジェット印刷によっても良く、その他の周知の方法により行ってもよい。
この2つの工程に関して、インク組成物により印刷を行う工程は、塗布された前処理液が乾燥してないウエットオンウエットで行ってもよく、塗布された前処理液を乾燥させた後に行うドライオンウェットで行ってもよい。
【実施例】
【0057】
<前処理液>
前処理液1(酢酸20質量部、サーフィノール440(アセチレンジオール系界面活性剤、HLB8、EVONIK社製)を0.2質量部、及び精製水を撹拌混合し、100質量部としたもの)
前処理液2(前処理液1において酢酸を10質量部としたもの)
前処理液3(前処理液1において酢酸を乳酸(1気圧下で沸点が120℃を超える有機酸)に置換したもの)
【0058】
<顔料>
JR−809(商品名「JR−809」、シリカとアルミナで処理された酸化チタン、平均粒子径0.23μm、DBP給油量24ml/100g、テイカ社製)
PF−690(商品名「PF−690」、シリカとアルミナと有機物で処理された酸化チタン、平均粒子径0.21μm、DBP給油量16ml/100g、石原産業社製)
HB890(商品名「ハイブラック890」、平均一次粒子径15nm、DBP給油量95ml/100g、pH8.0、オリオンエンジニアドカーボンズ社製)
PB15:3(ピグメントブルー15:3)
PR122(ピグメントレッド122)
PY14(ピグメントイエロー14)
【0059】
<アルカリ可溶性樹脂>
アルカリ可溶性樹脂1(重量平均分子量15000、酸価235mgKOH/gの、アクリル酸シクロヘキシル/アクリル酸/メタクリル酸=65/16/19の共重合体)
アルカリ可溶性樹脂2(重量平均分子量9500、酸価235mgKOH/gの、アクリル酸シクロヘキシル/アクリル酸/メタクリル酸=65/16/19の共重合体)
アルカリ可溶性樹脂3(重量平均分子量15800、酸価144mgKOH/gの、スチレン/アクリル酸ラウリル/アクリル酸=51/30/19の共重合体共重合体)
アルカリ可溶性樹脂4(重量平均分子量30000、酸価220mgKOH/gの、スチレン/アクリル酸ラウリル/アクリル酸=40/30/30の共重合体)
アルカリ可溶性樹脂5(重量平均分子量32000、酸価188mgKOH/gの、スチレン/アクリル酸ラウリル/アクリル酸=45/30/25の共重合体)
【0060】
<アルカリ可溶性樹脂ワニス>
アルカリ可溶性樹脂1を25質量部と、中和当量100%となる水酸化ナトリウムと、精製水を混合して100質量部とし、90℃で加熱撹拌して溶解させ、アルカリ可溶性樹脂ワニス1とした。
同様にして、アルカリ可溶性樹脂2〜5それぞれを25質量部と、それぞれのアルカリ可溶性樹脂に対して中和当量が100%となる質量の水酸化ナトリウムと、精製水を混合して100質量部とし、90℃で加熱撹拌して溶解させ、それぞれアルカリ可溶性樹脂ワニス2〜5とした。
【0061】
<水性各色インクベース>
表1の通りJR−809を50質量部、アルカリ可溶性樹脂ワニス2を40質量部、及び精製水10質量部を撹拌混合後、湿式サーキュレーションミルで練肉を行い、水性白色インクベース1を調製した。
同様にして、表1の通り各顔料、各アルカリ可溶性樹脂ワニス、及び精製水を撹拌混合後、湿式サーキュレーションミルで練肉を行い、水性各色インクベースを調製した。
【0062】
<水分散性樹脂>
M6963(商品名「M6963」、スチレン−アクリル系エマルジョン(固形分濃度45質量%)、酸価10mgKOH/g未満、ジャパンコーティングレジン社製)
R967(商品名「NeoRez R−967」、ポリエーテルポリウレタン系エマルジョン(固形分濃度40質量%)、酸価19mgKOH/g、DSM Coating Resins社製)
【0063】
<両性界面活性剤>
アンヒトール20N(固形分35%、花王社製、ラウリルジメチルアミンオキシド水溶液)
NIKKOL AM−301(固形分35%、日光ケミカルズ社製、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液)
<その他の界面活性剤>
E1010(商品名「オルフィンE−1010」、アセチレンジオール系界面活性剤、HLB13、日信化学工業社製)
<溶剤>
グリセリン
プロピレングリコール
【0064】
<インク組成物>
表2に示す通り各成分を撹拌混合して、各実施例及び比較例のインク組成物を得た。「アルカリ可溶性樹脂ワニス2(後添)」は、一旦得たインク組成物にさらにアルカリ可溶性樹脂ワニス2を添加したものである。
表2の参考例は、前処理液1又は2で前処理し、次いで各色インクベース、顔料、及び溶媒等を含有し、さらに場合によりアルカリ可溶性樹脂ワニスを含有する各色インク組成物で印刷した例である。
また本発明における白色インク組成物は第1のインク組成物に対応し、その他の色のインク組成物は第2のインク組成物に対応する。実施例1〜5においては、前処理液1で前処理した後、その上に表2には記載していないが、参考例1で使用した白色インク組成物を第1のインク組成物として印刷し、次いで各実施例に記載の各色のインク組成物を第2のインク組成物として印刷した。
比較例1〜4においては、前処理液1又は3で前処理した後、その上に表2には記載していないが、参考例1で使用した白色インク組成物を第1のインク組成物として印刷し、次いで各比較例に記載の各色のインク組成物を第2のインク組成物として印刷した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
<評価方法>
(画質)
綿100%の白色布帛に、参考例、実施例及び比較例の前処理液を、A4サイズあたり10g含浸させた後に加熱乾燥して印刷媒体を得た。加熱乾燥した後であっても前処理液に含有された酸が印刷媒体中に含有されていた。揮発性の有機酸が存在する雰囲気下では、一般にノズルから吐出されたインク組成物の飛翔軌道が乱れる傾向があるところ、そのような飛翔軌道が乱れないときには優れた画質を形成できる効果を発揮できる。
前記印刷媒体に対して、SPECTRA社製ヘッドを搭載した評価用プリンターと、参考例、実施例及び比較例のインク組成物を用いてベタ画像を印字し、続いてノズルチェック画像を印字し、印刷媒体を交換した。その後、画像の印字とノズルチェック画像の印字と印刷媒体の交換を19回繰り返した。
ノズルチェック画像の印字は、プリンター側で予め設定されたテスト用画像を、プリンター側による専用のプログラムにより印刷して得た印字である。
○:印刷媒体20枚以上の印刷媒体に印刷しても、ノズルチェック画像を印刷した際に全てのノズルから吐出が確認された
×:印刷開始後、印刷媒体20枚以内に、ノズルチェック画像を印刷した際に不吐出又は吐出曲がりの発生したノズルが確認された
【0068】
(塗膜耐性)
JIS L0849乾燥条件に従ってII型試験機で試験(200gの荷重で100mmの長さを100回往復摩擦)を行い、変退色グレースケールを用いて評価した。
○:4−5級〜5級
△:3−4級〜4級
×:3級以下
【0069】
(ドット径)
綿100%の白色布帛に参考例、実施例及び比較例の前処理液を、A4サイズあたり10g含浸させた後に加熱乾燥して印刷媒体を得た。前記印刷媒体に対して、SPECTRA社製ヘッドを搭載した評価用プリンターと、参考例1の白インク組成物を第1のインク組成物として用いて白ベタ画像を印字した。この白ベタ画像の上に、吐出液量を20ピコリットルとした実施例1〜5のインク組成物を用いてドットパターンを印字した。得られた画像のドット径を、顕微鏡を用いて測定した。 このドット印刷部位のドット100個に対して、顕微鏡によりその直径を測定し、平均値を求めた。この値をドット径とした。
【0070】
本発明に沿った例である実施例1〜5によれば、画質及び塗膜耐性に優れた画像等を形成できる。さらにドット径が35μmで印刷することができる。
インク組成物が両性界面活性剤を含有しない参考例1〜10によれば、画質及び塗膜耐性に優れた画像等を形成できるが、例えば参考例7〜10の結果に代表されるように、ドット径が22μmと小さかった。
酸価が200mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂を含有させず、かつ両性界面活性剤を含有させなかった比較例1によれば、画質及び塗膜耐性共に良好ではない結果になった。
前処理液中に1気圧下で沸点が120℃を超える有機酸を使用し、インク組成物に両性界面活性剤を含有させなかった比較例2によっても、画質及び塗膜耐性共に良好ではない結果になった。
黒色インク組成物は酸価が200mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂を含有するものの、両性界面活性剤を含有しない比較例3によれば、特に画質が良好ではなくドット径が26μmと小さかった。また黒色インク組成物が酸価が200mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂を少量のみ含有し、両性界面活性剤を含有しない比較例4によれば画質が良好ではなかった。
【課題】前処理液中に揮発性の酸を使用したときに生じるインクノズル付近等での酸の雰囲気の存在によっても、印字部のドット拡張性が良好で、かつ優れた画質を形成するインクセットを得ること。
【解決手段】白色顔料、酸価が200mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂又はその架橋物をインク組成物中1.0質量%以上含有し、さらに水を含有する第1のインク組成物と、
この第1のインクジェット印刷用インク組成物による印刷層上にさらに印刷するための、着色顔料、酸価が200mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂又はその架橋物をインク組成物中1.0質量%以上含有し、さらに両性界面活性剤、水分散性樹脂、及び水を含有する第2のインク組成物を含む、