(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948495
(24)【登録日】2021年9月24日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】生地シート整形装置
(51)【国際特許分類】
A21C 3/02 20060101AFI20210930BHJP
【FI】
A21C3/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-106769(P2019-106769)
(22)【出願日】2019年6月7日
(65)【公開番号】特開2020-198795(P2020-198795A)
(43)【公開日】2020年12月17日
【審査請求日】2019年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390013941
【氏名又は名称】株式会社コバード
(74)【代理人】
【識別番号】110003203
【氏名又は名称】特許業務法人大手門国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100111855
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 好昭
(72)【発明者】
【氏名】小林 博紀
(72)【発明者】
【氏名】吹上 透
【審査官】
川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−319128(JP,A)
【文献】
特開2007−240457(JP,A)
【文献】
実開昭54−158893(JP,U)
【文献】
特開2009−053123(JP,A)
【文献】
特開2007−330116(JP,A)
【文献】
特開2019−170270(JP,A)
【文献】
特開平04−259815(JP,A)
【文献】
特開2007−238314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 1/00−15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地を搬送する搬送部と、生地を圧延してシート状に整形する圧延部と、圧延された生地シートの形状を認識する認識部と、認識された前記生地シートの形状データに基づいて前記圧延部の圧延量を調整する調整部とを備え、前記認識部は、圧延された前記生地シートの形状を上方から撮影する撮影部を備えており、前記調整部は、前記撮影部により撮影された前記生地シートの形状に関する画像データに基づいて前記形状データを1枚ずつ蓄積し前記形状データの推移を分析して前記圧延部の圧延量を調整する生地シート整形装置。
【請求項2】
前記調整部は、前記形状データにより算出された圧延方向の長さに基づいて前記圧延量を調整する請求項1に記載の生地シート整形装置。
【請求項3】
前記圧延部は、前記生地を圧延する一対の転圧ローラを備えており、前記調整部は、前記圧延量として前記転圧ローラ間の間隔を調整する請求項1又は2に記載の生地シート整形装置。
【請求項4】
前記調整部は、前記圧延量及び当該圧延量で調整した後の次の前記生地シートの形状データに基づいて次の前記圧延量を調整する請求項1から3のいずれかに記載の生地シート整形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生地をシート状に整形する生地シート整形装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、製造された生地玉を分割して圧延ローラ等によりシート状に成形することが行われている。シート状に成形された生地は、例えば、様々な食材を配置して食材を包み込むように成形するのに用いられる。
【0003】
生地をシート状に成形する場合、用途に合わせて所定の形状や厚さに調整する必要がある。例えば、食材を包み込んで丸形に成形する場合には、略円形形状に整形することが好ましく、厚さについても均一な厚さに調整したり周辺部分を薄く調整することが好ましい。
【0004】
こうした生地の成形技術としては、例えば、特許文献1では、生地を延展した後方向転換して別の方向から延展してシート状に整形する点が記載されている。また、特許文献2では、生地を球状に整形した後扁平化されて円板状に整形する点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭58−83287号公報
【特許文献2】特開2006−304662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パン生地等の生地を製造して所定の形状に成形する場合、モルダ等の製造装置で所定量の生地を製造する工程、製造された生地を分割する工程及び分割された生地玉を成形する工程が行われる。バッチ処理で一括して製造された生地は分割された後順次成形されるため、分割された生地玉はそれぞれ成形処理されるまでの時間が異なるようになる。生地は、時間経過とともに発酵等により物性が変化してくるため、成形時の生地の伸びや弾力性が生地玉により変化するようになる。
【0007】
上述した特許文献では、生地玉を延展させてシート状に形成しているが、一定のやり方で処理した場合、生地玉の物性の変化により成形された生地シートの形状が不揃いとなって同じ品質で成形品を成形することが難しくなるといった課題がある。
【0008】
そこで、本発明は、生地の物性の変化に対応して生地シートを整形することができる生地シート整形装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る生地シート整形装置は、生地を搬送する搬送部と、生地を圧延してシート状に整形する圧延部と、圧延された生地シートの形状を認識する認識部と、認識された前記生地シートの形状データに基づいて前記圧延部の圧延量を調整する調整部とを備え、前記認識部は、圧延された前記生地シートの形状を上方から撮影する撮影部を備えており、前記調整部は、前記撮影部により撮影された前記生地シートの形状に関する画像データに基づいて
前記形状データを1枚ずつ蓄積し前記形状データの推移を分析して前記圧延部の圧延量を調整する。さらに、前記調整部は、前記形状データにより算出された圧延方向の長さに基づいて前記圧延量を調整する。さらに、前記圧延部は、前記生地を圧延する一対の転圧ローラを備えており、前記調整部は、前記圧延量として前記転圧ローラ間の間隔を調整する。さらに、前記調整部は、前記圧延量及び当該圧延量で調整した後の次の前記生地シートの形状データに基づいて次の前記圧延量を調整する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記のような構成を有することで、生地の物性の変化に対応して生地シートを整形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る実施形態に関する概略平面図である。
【
図2】本発明に係る実施形態に関する概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明に係る実施形態に関する概略平面図であり、
図2は、その概略正面図である。生地シート整形装置1は、生地を搬送する搬送部2と、生地を圧延してシート状に整形する第1圧延部3及び第2圧延部4と、圧延された生地を方向転換する方向転換部5と、圧延された生地シートの形状を認識する認識部である撮影部6と、認識された生地シートの形状データである生地シートの撮影画像に基づいて前記圧延部の圧延量を調整する調整部7とを備えている。
【0015】
搬送部2は、基台上に配列された搬送コンベヤ2a〜2cを備えており、搬送コンベヤ2a〜2cは、それぞれの搬送方向が直線状になるように配置されている。そして、搬送コンベヤ2aに搬入された生地は、搬送コンベヤ2b及び2cに順次移送されながら整形されるようになっている。
【0016】
第1圧延部3は、搬送コンベヤ2a及び2bの間に配置されており、第1上部転圧ローラ3a及び第1下部転圧ローラ3bを備えている。第1上部転圧ローラ3a及び第1下部転圧ローラ3bは、生地の搬送路の上側及び下側に対向するように配置されている。第1圧延部3は、第1上部転圧ローラ3aの上下方向の位置調整を行う位置調整機構3cを備えており、第1下部転圧ローラ3bは上下方向に移動しないように取り付けられている。そのため、位置調整機構3cにより第1上部転圧ローラ3aを上下動させることで、第1上部転圧ローラ3a及び第1下部転圧ローラ3bの間の間隔を調整することができ、両転圧ローラの間を通過する生地の圧延量を調整することが可能となる。
【0017】
第1圧延部3には、転圧ローラの搬送方向下流側に生地検出センサ3dが取り付けられており、搬送された生地が通過する時間を測定するようになっている。生地の通過時間は生地を圧延する際の生地速度に対応するため、圧延量の調整の際にパラメータとして用いることができる。
【0018】
第2圧延部4は、搬送コンベヤ2b及び2cの間に配置されており、第2上部転圧ローラ4a及び第2下部転圧ローラ4bを備えている。第2上部転圧ローラ4a及び第2下部転圧ローラ4bは、生地の搬送路の上側及び下側に対向するように配置されている。第2圧延部4は、第1圧延部3と同様に、第2上部転圧ローラ4aの上下方向の位置調整を行う位置調整機構4cを備えており、第2下部転圧ローラ4bとの間の間隔を調整するようになっている。また、第1圧延部3と同様に、転圧ローラの搬送方向下流側に生地検出センサ4dが取り付けられており、搬送された生地が通過する時間を測定するようになっている。
【0019】
方向転換部5は、生地を両側から接触させる一対の枠部材5aと、枠部材5aを支持して互いに接近又は離間させる駆動機構5bと、駆動機構5bを回動させる回動機構5cとを備えている。そして、方向転換部5の下方に位置決めされた生地に対して枠部材5aを互いに接近させて接触させ、枠部材5aを生地に接触させた状態で90度回動させることで生地を搬送方向に対して90度回動させる。そのため、生地自体の搬送方向が90度転換されることになり、第1圧延部3で圧延された方向と90度で交差する方向から第2圧延部4において圧延されるようになる。
【0020】
撮影部6は、第2圧延部4の搬送方向下流側に配置されており、圧延された生地シートを上方から撮影カメラで撮影して生地シートの形状を認識するようになっている。そして、生地シートの撮影画像に基づいて生地シートの外形形状等の整形状態の形状に関するパラメータを取得するようになっている。
【0021】
この例では、第2圧延部4の下流側に配置されているが、第1圧延部3の下流側に別の撮影部を配置して各圧延部で圧延された生地を撮影して整形状態の形状を認識するようにしてもよい。
【0022】
なお、生地シートの形状データとして圧延方向の長さを用いる場合には、生地検出センサの検出結果に基づいて算出することもできる。例えば、搬送コンベヤの搬送速度と生地の検出時間とを掛け合わせることで搬送方向(圧延方向)の長さを算出すればよい。
【0023】
調整部7は、撮影部6から送信された整形状態の形状に関するパラメータに基づいて第1圧延部3及び第2圧延部4の転圧ローラ間の間隔及び生地速度等のパラメータを調整して圧延量の調整を行う。調整部7としては、CPU、メモリ、入力キー、表示パネル等の公知の情報処理装置を用いることができ、処理に必要なプログラム及びデータを入力することで所望の機能を実現することが可能となる。
【0024】
圧延量の調整は、例えば、生地シートの外形形状の撮影画像に基づいて各圧延部の圧延方向の長さに関するデータを取得し、基準値に対する差分により圧延部の転圧ローラ間の間隔を調整する。こうした調整を行うことで、圧延方向の長さを基準値に近い値となるように生地シートの形状を整形することができる。
【0025】
生地を順番にシート整形する場合、順番が後になるにしたがって生地の伸び及び弾力性といった特性が変化するようになる。そのため、圧延方向の長さが次第に基準値よりずれてくるようになるが、整形状態の生地シートの形状データを1枚ずつ蓄積していくことで、基準値に対する差分の推移を定量的に測定することができる。上述した例では、生地シートの1枚毎の撮影画像を蓄積していくことで、蓄積枚数が増加するにしたがいより精度の高い分析を行うことが可能となる。
【0026】
そして、生地シートの基準値に対する差分により圧延量を調整し、次の生地シートの基準値に対する差分により前回の圧延量の調整結果を確認し、調整結果に基づいて圧延量の調整を行うことで、圧延方向の長さを基準値に近い値に維持していくことが可能となる。
【0027】
そして、圧延部のパラメータに関する調整値と差分の推移との間の相関関係を分析し、生地の特性変化に対する最適な調整値を求めることが可能となる。こうした生地シートに関する形状データ及び分析データを蓄積していくことで、人工知能等の公知の推論プログラムを用いた調整処理を行うこともできる。その際には、生地の原料、周囲温度等の条件を加味することでより正確な調整処理を行えるようになる。
【0028】
図3は、生地シートの整形過程を示す説明図である。第1圧延部3及び第2圧延部4では、位置調整機構3c及び4cにより上部転圧ローラ3a及び4aの上下方向の位置を調整して間隔を予め設定する。搬送方向上流側の第1圧延部3の転圧ローラの間隔を搬送方向下流側の第2圧延部4の転圧ローラの間隔よりも広く設定しておくことが好ましい。調整部7では、生地整形シートの圧延方向の長さに関する基準値を予め設定する。
【0029】
まず、搬送コンベヤ2aに丸められた生地玉Fが搬入される(
図3(a))。生地玉Fは搬送コンベヤ2aにより搬送されて第1圧延部3に導入されていき、第1上部転圧ローラ3a及び第1下部転圧ローラ3bを回動させて生地玉Fを圧延する。生地玉Fは、搬送方向に拡がるように薄く圧延されて楕円形状の生地シートGに形成される(
図3(b))。この場合には、生地玉Fに対して搬送方向が圧延方向Aとなる。
【0030】
圧延された生地シートGは、搬送コンベヤ2bに導出されて搬送されるようになり、生地検出センサ3dにより生地シートGが検出されて通過する時間により圧延速度が算出される。搬送コンベヤ2bにより方向転換位置に搬送されて一旦停止し、枠部材5aを生地シートGの両側に接触させて90度回動させる(
図3(c))。この場合、生地シートGの第1圧延部3での圧延方向Aとは直交する方向から枠部材5aを挟むように接触させているので、生地シートGの圧延方向Aの長さが変化しないように生地シートGを方向転換することができる。
【0031】
方向転換後に生地シートGは搬送コンベヤ2bにより搬送されて第2圧延部4に導入されていき、第2上部転圧ローラ4a及び第2下部転圧ローラ4bを回動させて生地シートGを圧延する。生地シートGは、搬送方向に拡がるように薄く圧延されてほぼ円形状の整形シートHに形成される(
図3(d))。圧延された整形シートHは、搬送コンベヤ2cに導出されて搬送されるようになり、生地検出センサ4dにより整形シートHが検出されて通過する時間により圧延速度が算出される。
【0032】
この場合には、生地シートGに対して搬送方向が圧延方向Bとなるため、整形シートHでは、第2圧延部4の圧延方向Bは第1圧延部3の圧延方向Aと直交する方向となり、整形シートHは互いに直交する方向に圧延されて円形に整形されるようになる。
【0033】
整形シートHは、撮影部6により上方から撮影されて整形シートHの画像を取得する。調整部7では、取得された撮影画像に基づいて整形シートHの外形形状から圧延方向A及びBの長さを算出する。そして、圧延方向Aの長さ及び基準値の差分により第1圧延部3の転圧ローラ間の間隔を調整する。例えば、圧延方向Aの長さが基準値よりも短い場合には転圧ローラ間の間隔が狭くなるように間隔量を調整し、基準値よりも長い場合には間隔を拡げるように間隔量を調整する。
【0034】
また、圧延方向Bの長さ及び基準値の差分により第2圧延部4の転圧ローラ間の間隔を調整する。例えば、圧延方向Bの長さが基準値よりも短い場合には転圧ローラ間の間隔が狭くなるように間隔量を調整し、基準値よりも長い場合には間隔を拡げるように間隔量を調整する。
【0035】
そして、次の整形シートHの撮影画像に基づいて圧延方向A及びBにおける基準値との差分により前回の間隔量の調整による効果を確認し、次の間隔量を調整する。例えば、前回の間隔量による差分の減少分を算出することで調整結果を確認し、今回の差分について減少分に対する比率を算出して前回の間隔量に比率を掛けて次の間隔量を算出して調整する。
【0036】
このように、生地シートの撮影画像に基づいて圧延量を調整するようにしているので、生地の物性が変化した場合でもそれに合わせて生地シートを整形することができる。また、圧延量を調整した結果を次の生地シートの撮影画像に基づいて確認して次の圧延量を調整するようにしているので、生地シートの整形を安定して行うことができる。
【0037】
以上説明した例では、方向転換により円形状の整形シートを整形する場合を示しているが、円形状の整形シート以外の楕円形状、長円形、卵形状、小判形状といった様々な曲線形状の整形シートに適用することが可能で、特に限定されない。例えば、上述した例で第1圧延部3及び第2圧延部4を方向転換せずに同じ方向で段階的に圧延することで、楕円形状や長円形状に整形することができる。
【0038】
また、圧延量を調整する際の基準値については、予め決められたデータを入力して基準値として用いることができるが、生地シート整形工程の上流側又は下流側の工程で算出されたデータに基づいて基準値を設定することもできる。例えば、各工程での歩留り、品質管理に関連するデータをリアルタイムで収集し、収集されたデータに基づいて基準値をリアルタイムで修正していくことで、高品質の成形品を効率よく製造することができ、生産性の向上に大きく貢献することが期待される。
【符号の説明】
【0039】
1・・・生地シート整形装置、2・・・搬送部、3・・・第1圧延部、4・・・第2圧延部、5・・・方向転換部、6・・・撮影部、7・・・調整部