特許第6948498号(P6948498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6948498ポリ(フェニレンエーテル)組成物、それから調製されるライニング管および射出成形品、並びに水輸送および貯蔵中の微生物の増殖の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948498
(24)【登録日】2021年9月24日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】ポリ(フェニレンエーテル)組成物、それから調製されるライニング管および射出成形品、並びに水輸送および貯蔵中の微生物の増殖の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 1/08 20060101AFI20210930BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20210930BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20210930BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20210930BHJP
   C08L 25/06 20060101ALI20210930BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20210930BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   B32B1/08 Z
   B32B27/30 B
   B32B27/32 Z
   C08L71/12
   C08L25/06
   C08L53/02
   C08K7/14
【請求項の数】16
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-556804(P2018-556804)
(86)(22)【出願日】2017年3月20日
(65)【公表番号】特表2019-514739(P2019-514739A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】IB2017051609
(87)【国際公開番号】WO2017187283
(87)【国際公開日】20171102
【審査請求日】2019年12月16日
(31)【優先権主張番号】62/329,348
(32)【優先日】2016年4月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521320704
【氏名又は名称】エスエイチピーピー グローバル テクノロジーズ べスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】クーフーツ、クリスティアーン ヘンリクス ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】フォルタイン、ヨハネス イー.
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−007908(JP,A)
【文献】 特表2015−500901(JP,A)
【文献】 特表2012−506807(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/157872(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00
C08K3/00−13/08
C08L1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層組成物の合計質量に対して、
架橋ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、およびポリ(塩化ビニル)からなる群より選択される熱可塑性物質を50〜100質量%と、
充填剤を0〜50質量%と、
を含む外層組成物を含む外層と、
ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、
ポリ(フェニレンエーテル)を20〜70質量部と、
ISO1133−4(2011)に準拠して200℃および5kg負荷で測定されるメルトフローインデックスが1〜5g/10分であるアタクチックホモポリスチレンを含むポリスチレンを30〜80質量部と、
アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーを0〜15質量部と、
を含む内層組成物を含む内層と、
を含むことを特徴とする水の輸送用のライニング管。
【請求項2】
前記外層組成物中の前記熱可塑性物質がポリプロピレンである請求項1に記載のライニング管。
【請求項3】
前記充填剤が、タルク、クレイ、マイカ、炭酸カルシウム、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1または2に記載のライニング管。
【請求項4】
前記ポリ(フェニレンエーテル)が、クロロホルム中25℃でUbbelohde粘度計によって測定される固有粘度が0.1〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のライニング管。
【請求項5】
前記内層組成物が前記水素化ブロックコポリマーを1〜15質量部含み、前記水素化ブロックコポリマーが、ポリスチレン含量が約25〜40質量%であり、質量平均分子量が約200,000〜400,000g/モルであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーである請求項1乃至のいずれか1項に記載のライニング管。
【請求項6】
前記内層が、3〜15nmの値である表面粗さパラメータR、および7〜25nmの値であるRによって特徴付けられる内面を含む請求項1乃至のいずれか1項に記載のライニング管。
【請求項7】
前記外層組成物がポリプロピレンを95〜100質量%含み;
前記ポリ(フェニレンエーテル)が、クロロホルム中25℃で測定される固有粘度が0.1〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含み;
前記ポリスチレンが、ISO1133−4(2011)に準拠して200℃および5kg負荷で測定されるメルトフローインデックスが1.5〜3.5g/10分であるアタクチックホモポリスチレンを含み;
前記内層組成物が前記水素化ブロックコポリマーを1〜15質量部含み、前記水素化ブロックコポリマーが、ポリスチレン含量が約25〜40質量%であり、質量平均分子量が約200,000〜400,000g/モルであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーであり;
前記内層組成物が、
前記ポリ(フェニレンエーテル)を35〜45質量部と、
前記ポリスチレンを43〜53質量部と、
前記水素化ブロックコポリマーを5〜15質量部と、
を含む請求項1に記載のライニング管。
【請求項8】
ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、
クロロホルム中25℃でUbbelohde粘度計によって測定される固有粘度が0.1〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を30〜50質量部と;
ISO1133−4(2011)に準拠して200℃および5kg負荷で測定されるメルトフローインデックスが1〜5g/10分であるアタクチックホモポリスチレンを35〜55質量部と;
ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを1〜15質量部と;
ガラス繊維を5〜100質量部と;
を含む組成物を含み、
前記組成物はゴム変性ポリスチレンを含まず、スチレンとブタジエンの非水素化ブロックコポリマーを含まず、内層組成物の合計質量に対して、遊離ブタジエンを1質量ppm未満含み;
前記組成物は、NEN−EN16421:2014方法1に従って決定される500pgアデノシン三リン酸/cm以下のバイオマス生成能を示す
ことを特徴とする水と接触する射出成形品。
【請求項9】
前記ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)の質量平均分子量が25,000〜60,000g/モルである請求項に記載の射出成形品。
【請求項10】
ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、
ポリ(フェニレンエーテル)を20〜70質量部と、
ISO1133−4(2011)に準拠して200℃および5kg負荷で測定されるメルトフローインデックスが1〜5g/10分であるアタクチックホモポリスチレンを含むポリスチレンを30〜80質量部と、
アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーを1〜15質量部と、
ガラス繊維を5〜100質量部と:
を含む組成物を有する表面と接触させて水を輸送するか、または貯蔵するステップを含むことを特徴とする水の輸送または貯蔵中の微生物増殖の制御方法。
【請求項11】
前記ポリ(フェニレンエーテル)の質量平均分子量が20,000〜60,000g/モルである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、
クロロホルム中25℃でUbbelohde粘度計によって測定される固有粘度が0.1〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を30〜50質量部と;
ISO1133−4(2011)に準拠して200℃および5kg負荷で測定されるメルトフローインデックスが1〜5g/10分であるアタクチックホモポリスチレンを35〜55質量部と;
アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーを1〜15質量部と
ガラス繊維を5〜100質量部と;を含み;
ゴム変性ポリスチレンを含まず、スチレンとブタジエンの非水素化ブロックコポリマーを含まず、内層組成物の合計質量に対して、遊離ブタジエンを1質量ppm未満含み、
NEN−EN16421:2014方法1に従って決定される500pgアデノシン三リン酸/cm以下のバイオマス生成能を示すことを特徴とする組成物。
【請求項13】
前記ポリ(フェニレンエーテル)の質量平均分子量が20,000〜60,000g/モルである請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記水素化ブロックコポリマーが食品等級の水素化ブロックコポリマーである請求項12乃至13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
NEN−EN16421:2014の方法1に従って決定される300pgアデノシン三リン酸/cm以下のバイオマス生成能を示す請求項12乃至14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリ(フェニレンエーテル)を37〜47質量部と、
前記ポリスチレンを42〜52質量部と、
前記水素化ブロックコポリマーを5〜15質量部と、
前記ガラス繊維を5〜75質量部と、を含む請求項12乃至15のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
水の輸送または貯蔵に使用されるプラスチック材料は、細菌増殖を刺激する成分を放出し得る。細菌は、水を消費するヒトおよび家畜への健康リスクを引き起こし得る。細菌増殖を制御するために、塩素または二酸化塩素などの殺菌剤が典型的には飲用水に添加される。しかしながら、長期間の使用で、管、フィッティング、および貯蔵容器の形成に使用したプラスチック材料が塩素および塩素化誘導体によって化学的に攻撃され得る。したがって、細菌増殖の刺激がより少なくなり、それ故に飲用水の塩素処理を減少させることが可能な管、フィッティング、および貯蔵容器が望まれている。
【発明の概要】
【0002】
一実施形態は、水の輸送用のライニング管である。該ライニング管は、外層組成物の合計質量に対して、架橋ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、およびポリ(塩化ビニル)からなる群より選択される熱可塑性物質を50〜100質量%と、充填剤を0〜50質量%とを含む外層組成物を含む外層と、ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、ポリ(フェニレンエーテル)を20〜70質量部と、ポリスチレンを30〜80質量部と、アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーを0〜15質量部とを含む内層組成物を含む内層と、を含む。
【0003】
別の実施形態は水と接触する射出成形品である。該射出成形品は、ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、クロロホルム中25℃でUbbelohde粘度計によって測定される固有粘度が0.1〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を30〜50質量部と、ISO1133−4(2011)に準拠して200℃および5kg負荷で測定されるメルトフローインデックスが1〜5g/10分であるアタクチックホモポリスチレンを35〜55質量部と;ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを1〜15質量部とを含む組成物を含み、該組成物はゴム変性ポリスチレンを含まず、スチレンとブタジエンの非水素化ブロックコポリマーを含まず、内層組成物の合計質量に対して、遊離ブタジエンを1質量ppm未満含み、該組成物は、NEN−EN16421:2014方法1に従って決定される500pgアデノシン三リン酸/cm以下のバイオマス生成能(Biomass Production Potential)を示す。
【0004】
別の実施形態は水の輸送または貯蔵中の微生物増殖の制御方法である。該方法は、ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、ポリ(フェニレンエーテル)を20〜70質量部と、ポリスチレンを30〜80質量部と、アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーを1〜15質量部とを含む組成物を有する表面と接触させて水を輸送するか、または貯蔵するステップを含む。
【0005】
別の実施形態は組成物である。該組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、クロロホルム中25℃でUbbelohde粘度計によって測定される固有粘度が0.1〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を30〜50質量部と、ISO1133−4(2011)に準拠して200℃および5kg負荷で測定されるメルトフローインデックスが1〜5g/10分であるアタクチックホモポリスチレンを35〜55質量部と;アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーを1〜15質量部とを含み、ゴム変性ポリスチレンを含まず、スチレンとブタジエンの非水素化ブロックコポリマーを含まず、内層組成物の合計質量に対して、遊離ブタジエンを1質量ppm未満含み、NEN−EN16421:2014方法1に従って決定される500pgアデノシン三リン酸/cm以下のバイオマス生成能を示す。
【0006】
これらの実施形態および他の実施形態を以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図面を参照すれば、類似の要素は、いくつかの図面において同様に番号付けされている。
図1】外層20と内層30とを含むライニング管10の断面図である。
図2】外層20と、内層30と、中間層40とを含むライニング管10の断面図である。
図3】外層20と、内層30と、2層の中間層40とを含むライニング管10の断面図である。
図4図4A図4Cは、高密度ポリエチレン(4A)、ポリ(フェニレンエーテル)組成物(4B)、および無可塑ポリ(塩化ビニル)(4C)の押出された表面での原子間力顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らは、特定のポリ(フェニレンエーテル)組成物は細菌増殖の非常に低い刺激を示すことを見出した。該組成物は、管の内側のライニングとして、水と接触する射出成形品として、および一般に飲用水と接触する表面として採用できる。
【0009】
したがって、一実施形態は、水の輸送用のライニング管である。該ライニング管は、外層組成物の合計質量に対して、架橋ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、およびポリ(塩化ビニル)からなる群より選択される熱可塑性物質を50〜100質量%と、充填剤を0〜50質量%とを含む外層組成物を含む外層と、ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、ポリ(フェニレンエーテル)を20〜70質量部と、ポリスチレンを30〜80質量部と、アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーを0〜15質量部とを含む内層組成物を含む内層と、を含む。
【0010】
一実施形態は、ライニング管に関する。図1に図示される一実施形態は、外層20と内層30とを含む管10である。図2に図示される別の実施形態は、外層20と、内層30と、外層20と内層30との間の中間層40とを含む管10である。図3に図示される別の実施形態は、外層20と、内層30と、それぞれ外層20と内層30との間にある2層の中間層40とを含む管10である。2層以上の中間層がある場合、それらは、互いに同じまたは異なる組成物を有し得る。様々な層の組成物を以下に詳細に説明する。
【0011】
ライニング管のサイズは幅広く変動し得る。例えば、一部の実施形態では、外層は、外径が20mm〜1.6mであり、外径:肉厚の比が7:1〜45:1である。これらの実施形態では、内層は、任意選択的に、外径が12mm〜1.55mであるか、かつ/または肉厚が50μm〜外層の肉厚の三分の一である。
【0012】
ライニング管は、架橋ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、およびポリ(塩化ビニル)からなる群より選択される熱可塑性物質をベースとした外層を含む。一部の実施形態では、熱可塑性物質は、架橋ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、およびポリ(塩化ビニル)からなる群より選択される。一部の実施形態では、熱可塑性物質はポリプロピレン(すなわち、プロピレンホモポリマー)である。外層の組成物は、その合計質量に対して、熱可塑性物質を50〜100質量%を含む。この範囲内で、熱可塑性物質の含量は、70〜100質量%、または80〜100質量%、または90〜100質量%、または95〜100質量%であり得る。熱可塑性物質以外にも、外層組成物は、任意選択的に、充填剤を最大50質量%含み得る。適した充填材としては、タルク、クレイ、マイカ、炭酸カルシウム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。0〜50質量%の範囲内で、充填剤量は、5〜50質量%、または5〜40質量%、または5〜30質量%であり得る。外層組成物は、任意選択的に、着色剤、UVブロッカー、酸化防止剤、安定化剤、加工助剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される添加剤を最大10質量%さらに含み得る。10質量%の限界内で、添加剤量は、0〜5質量%、または0〜2質量%であり得る。
【0013】
外層に加えて、ライニング管またはフィッティングは、細菌増殖の低刺激を示す内層を含む。内層の組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)を含む。ポリ(フェニレンエーテル)は、下式の繰り返し単位を含む:
【化1】
式中、Zはそれぞれ独立にC−C12ヒドロカルビルチオ、C−C12ヒドロカルビルオキシ、または非置換または置換されたC−C12ヒドロカルビル(但し該ヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)であり、Zはそれぞれ独立に水素、C−C12ヒドロカルビルチオ、C−C12ヒドロカルビルオキシ、または非置換または置換されたC−C12ヒドロカルビル(但し該ヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)である。本明細書での「ヒドロカルビル」は、単独であるいは別の用語の接頭辞、接尾辞またはフラグメントとして使用されたとしても、炭素と水素だけを含有する残基を指す。該残基は、脂肪族または芳香族、直鎖、環式、二環式、分岐鎖、飽和あるいは不飽和であってもよい。それはまた、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分岐鎖、飽和および不飽和の炭化水素部分の組み合わせを含んでいてもよい。該ヒドロカルビル残基が置換と記載された場合、任意選択的に、置換基の残基の炭素員および水素員上にヘテロ原子を含有し得る。このように、置換と具体的に記載された場合、該ヒドロカルビル残基は、カルボニル基、アミノ基またはヒドロキシル基等の1つ以上も含有し得、また、ヒドロカルビル残基の骨格内にヘテロ原子を含み得る。一例として、Zが、末端の3,5−ジメチル−1,4−フェニル基と酸化重合触媒のジ−n−ブチルアミン成分との反応によって形成されたジ−n−ブチルアミノメチル基であり得る。
【0014】
ポリ(フェニレンエーテル)は、典型的にはヒドロキシ基に対してオルト位に位置した1個又は複数のアミノアルキル含有末端基を有する分子を含み得る。また、多くの場合、典型的にはテトラメチルジフェノキノン副生物が存在する2,6−ジメチルフェノール含有反応混合物から得られたテトラメチルジフェノキノン((商標)DQ)末端基が存在する。ポリ(フェニレンエーテル)は、ホモポリマー、コポリマー、グラフトコポリマー、イオノマー、またはブロックコポリマー、並びにこれらの組み合わせの形態であり得る。
【0015】
一部の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)の固有粘度が、クロロホルム中25℃でUbbelohde粘度計によって測定される0.1〜1dL/gである。この範囲内で、ポリ(フェニレンエーテル)の固有粘度は、0.1〜0.6dL/g、0.2〜0.6dL/g、または0.25〜0.55dL/gであり得る。
【0016】
一部の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)は、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるモノマーのホモポリマーまたはコポリマーを含む。一部の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)は、クロロホルム中25℃で測定される固有粘度が0.1〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含む。
【0017】
内層組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、ポリ(フェニレンエーテル)を20〜70質量部を含む。20〜70質量部の範囲内で、ポリ(フェニレンエーテル)の量は、30〜60質量部、または30〜50質量部であり得る。
【0018】
ポリ(フェニレンエーテル)に加えて、内層組成物はポリスチレンを含む。本明細書で、ポリスチレンは、スチレンのホモポリマーを意味する。ポリスチレンは、アタクチック、シンジオタクチック、またはイソタクチック、またはそれらの組み合わせであり得る。一部の実施形態では、ポリスチレンはアタクチックホモポリスチレンを含む。一部の実施形態では、ポリスチレンは、ISO1133−4(2011)に準拠して200℃および5kg負荷で測定されるメルトフローインデックスが1〜5g/10分、または1.5〜5g/10分、または1.5〜3.5g/10分、または1.9〜2.9g/10分であるアタクチックホモポリスチレンを含む。一部の実施形態では、ポリスチレンはシンジオタクチックホモポリスチレンを含まない。
【0019】
内層組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、ポリスチレンを30〜80質量部含む。30〜80質量部の範囲内で、ポリスチレン量は、40〜70質量部、または40〜60質量部であり得る。
【0020】
一部の実施形態では、内層組成物は、アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーを含む。簡潔して表現するために、この成分を「水素化ブロックコポリマー」と称する。水素化ブロックコポリマーは、その質量に対して、10〜90質量%のポリ(アルケニル芳香族)含量と90〜10質量%の水素化ポリ(共役ジエン)含量とを含み得る。一部の実施形態では、水素化ブロックコポリマーは、ポリ(アルケニル芳香族)含量が低い水素化ブロックコポリマーであり、該ポリ(アルケニル芳香族)含量は、ポリ(アルケニル芳香族)含量が低い水素化ブロックコポリマーの質量に対して、10〜40質量%未満、または20〜35質量%、または25〜35質量%である。他の実施形態では、水素化ブロックコポリマーは、ポリ(アルケニル芳香族)含量が高い水素化ブロックコポリマーであり、該ポリ(アルケニル芳香族)含量は、ポリ(アルケニル芳香族)含量が高い水素化ブロックコポリマーの質量に対して、40〜90質量%、または50〜80質量%、または60〜70質量%である。
【0021】
一部の実施形態では、水素化ブロックコポリマーの質量平均分子量が40,000〜400,000amuである。数平均分子量および質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーで決定し得、ポリスチレン標準との比較を基準とし得る。一部の実施形態では、水素化ブロックコポリマーの質量平均分子量は200,000〜400,000amuである。
【0022】
水素化ブロックコポリマーの調製に使用されるアルケニル芳香族モノマーは、下式の構造を有し得る:
【化2】
式中、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、C−Cアルキル基、またはC−Cアルケニル基を表し、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子またはC−Cアルキル基を表し、R、R、およびRはそれぞれ独立に水素原子、C−Cアルキル基、またはC−Cアルケニル基を表すか、またはRおよびRが中心の芳香族環と一緒になってナフチル基を形成するか、またはRおよびRが中心の芳香族環と一緒になってナフチル基を形成する。具体的なアルケニル芳香族モノマーとしては、例えば、スチレン、メチルスチレン(α−メチルスチレンおよびp−メチルスチレンなど)、およびt−ブチルスチレン(3−t−ブチルスチレンおよび4−t−ブチルスチレンなど)が挙げられる。一部の実施形態では、アルケニル芳香族モノマーはスチレンである。
【0023】
水素化ブロックコポリマーの調製に使用される共役ジエンは、C−C20共役ジエンであり得る。適した共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、共役ジエンは1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、またはそれらの組み合わせである。一部の実施形態では、共役ジエンは1,3−ブタジエンである。
【0024】
水素化ブロックコポリマーは、(A)アルケニル芳香族化合物由来のブロックを少なくとも1つと、(B)共役ジエン由来のブロックを少なくとも1つとを含むコポリマーであり、該コポリマーにおいて、ブロック(B)中の脂肪族不飽和基の含量が水素化によって少なくとも一部減少している。一部の実施形態では、(B)ブロック中の脂肪族不飽和は、少なくとも50%、または少なくとも70%減少している。ブロック(A)および(B)の配置としては、直鎖構造、グラフト構造、および分岐鎖があってもなくてもよいラジアルテレブロック構造が挙げられる。直鎖ブロックコポリマーは、テーパ型直鎖構造および非テーパ型直鎖構造を含む。一部の実施形態では、水素化ブロックコポリマーは、テーパ型直鎖構造を有する。一部の実施形態では、水素化ブロックコポリマーは、非テーパ型直鎖構造を有する。一部の実施形態では、水素化ブロックコポリマーは、アルケニル芳香族モノマーのランダムに組み込まれた(B)ブロックを含む。直鎖ブロックコポリマー構造としては、ジブロック(A−Bブロック)、トリブロック(A−B−AブロックまたはB−A−Bブロック)、テトラブロック(A−B−A−Bブロック)、およびペンタブロック(A−B−A−B−AブロックまたはB−A−B−A−Bブロック)構造、並びに(A)および(B)の合計で6個以上のブロックを含む直鎖構造が挙げられ、ここで、各(A)ブロックの分子量は、他の(A)ブロックのものと同じであっても異なっていてもよく、各(B)ブロックの分子量は、他の(B)ブロックのものと同じであっても異なっていてもよい。一部の実施形態では、水素化ブロックコポリマーは、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、またはそれらの組み合わせである。
【0025】
一部の実施形態では、水素化ブロックコポリマーは、アルケニル芳香族化合物および共役ジエン由来のブロックからなる。それは、これらのまたはいずれの他のモノマーから形成されるグラフトを含まない。また、それは、炭素および水素原子からなり、それ故に、ヘテロ原子を含まない。他の実施形態では、水素化ブロックコポリマーは、マレイン酸無水物などの1つ以上の酸官能化剤の残基を含む。
【0026】
一部の実施形態では、水素化ブロックコポリマーは、質量平均分子量が200,000〜400,000g/モルであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを含む。
【0027】
水素化ブロックコポリマーの調製方法は当分野で既知であり、多くの水素化ブロックコポリマーは市販されている。例示の市販の水素化ブロックコポリマーとしては、KRATON(商標)G1701(ポリスチレンを約37質量%有する)およびG1702(ポリスチレンを約28質量%有する)として、Kraton Performance Polymers社から入手できるポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)ジブロックコポリマー;KRATON(商標)G1641(ポリスチレンを約33質量%有する)、G1650(ポリスチレンを約30質量%有する)、G1651(ポリスチレンを約33質量%有する)、およびG1654(ポリスチレンを約31質量%有する)として、Kraton Performance Polymers社から入手できるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー;並びにSEPTON(商標)S4044、S4055、S4077、およびS4099として、Kuraray社から入手できるポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーが挙げられる。さらなる市販の水素化ブロックコポリマーとしては、Dynasol社からCALPRENE(商標)H6140(ポリスチレンを約31質量%有する)、H6170(ポリスチレンを約33質量%有する)、H6171(ポリスチレンを約33質量%有する)、およびH6174(ポリスチレンを約33質量%有する)として、Kuraray社からSEPTON(商標)8006(ポリスチレンを約33質量%有する)および8007(ポリスチレンを約30質量%有する)として入手できるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレン(SEBS)トリブロックコポリマー;並びにSEPTON(商標)2006(ポリスチレンを約35質量%有する)および2007(ポリスチレンを約30質量%有する)として、Kuraray社から入手できるポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレン(SEPS)コポリマー;並びにKraton Performance Polymers社からKRATON(商標)G4609(約45%鉱油と、ポリスチレンを約33質量%有するSEBSとを含む)およびG4610(約31%鉱油と、ポリスチレンを約33質量%有するSEBSとを含む)として、Asahi社からTUFTEC(商標)H1272(約36%の油と、ポリスチレンを約35質量%有するSEBSとを含む)として入手できるこれらの水素化ブロックコポリマーの油展化合物が挙げられる。2つ以上の水素化ブロックコポリマーの混合物を使用し得る。
【0028】
一部の実施形態では、水素化ブロックコポリマーは食品等級の水素化ブロックコポリマーである。米国では、物品と接触する食品に使用される物質は、31CFR170.39に準拠して定義され、規制される。欧州食品安全機関の下では、材料と接触するすべて食品での一般の要件が、Framework Regulation EC1935/2004で定義され;食品との接触が意図される材料および物品のためのGood Manufacturing Practiceが、Regulation EC2023/2006に記載されている。食品等級の水素化ブロックコポリマーとしては、KRATON(商標)G1650、G1651、G1652、G1654、およびG1657が挙げられ、これらすべてが、Kraton Performance Polymers社から入手できるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーである。
【0029】
内層組成物中に存在する場合、水素化ブロックコポリマーの使用量は、ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して1〜15質量部であり得る。この範囲内で、水素化ブロックコポリマーの量は、2〜15質量部、または5〜15質量部、または8〜14質量部であり得る。
【0030】
一部の実施形態では、内層組成物は、内層組成物の合計質量に対して、遊離ブタジエンを1質量ppm未満含む。遊離の(未重合)ブタジエンの存在は、ポリブタジエンを含む非水素化ポリマーおよびコポリマーの存在に一般に関連している。例えば、内層組成物にポリブタジエン含有ゴム変性ポリスチレンを含ませると、遊離ブタジエン濃度1ppm未満を達成するのが困難となり得る。本明細書で「ゴム変性ポリスチレン」は、完成した基本ポリマーがスチレンモノマー由来の合計ポリマー単位を80質量%以上含有するように、ポリスチレンの重合の間または重合後にスチレン−ブタジエンランダムコポリマーおよび/またはポリブタジエンとポリスチレンとを混合して得られる生成物を指す。ゴム変性ポリスチレンは、スチレン−ブタジエンブロックコポリマーと異なる。一部の実施形態では、内層組成物はゴム変性ポリスチレンを含まない。ポリブタジエンが水素化されている水素化ポリマーおよびコポリマーを内層組成物に含ませたままで、遊離ブタジエン含量1ppm未満を達成可能であることに注目すべきである。
【0031】
内層組成物は、任意選択的に、熱可塑性物質の分野で既知の添加剤を1つ以上さらに含み得る。例えば、内層組成物は、任意選択的に、安定化剤、離型剤、滑剤、加工助剤、UVブロッカー、染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、鉱油、金属不活性化剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される添加剤をさらに含む。そのような添加剤は、存在する場合、典型的には、ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、10質量部以下、または5質量部以下、または2質量部以下の合計量で使用される。
【0032】
外層組成物および内層組成物は、任意選択的に、本明細書にて必要または任意と記載されていない成分を最小限にし得るか、または除き得る。一部の実施形態では、外層組成物および内層組成物は、難燃剤(有機リン酸エステル、金属ジアルキルホスフィナート、ビス(フェノキシ)ホスファゼン、メラミンホスフェート、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート、金属水酸化物、およびそれらの組み合わせを含む)を含まない。一部の実施形態では、内層組成物は、ゴム変性ポリスチレンを0〜2質量部含む(または含まない)。一部の実施形態では、内層組成物は、ポリアミドを0〜2質量部含む(または含まない)。一部の実施形態では、内層組成物は、ポリオレフィンを0〜2質量部含む(または含まない)。一部の実施形態では、内層組成物は、低密度ポリエチレン0〜2質量部を含むか、またはポリオレフィンを含まない。すべての質量部はポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対してのものである。
【0033】
内層の1つの利点は、その内側の(曝される)表面が、比較的滑らかであり得ることである。これは、表面粗さパラメータRおよびRを用いて定量し得る。例えば、一部の実施形態では、内層は、粗さ平均Rの値が3〜15nm、二乗平均平方根粗さRの値が7〜25nmである内面を含む。3〜15nmの範囲で、Rは5〜10nmの値を有し得る。7〜25nmの範囲で、Rは10〜20nmの値を有し得る。表面粗さの測定方法およびRおよびRqパラメータの計算方法は当分野で既知である。例えば、後述する実施例で示されているように、原子間力顕微鏡(AFM)を使用して測定を実施し得る。RおよびRq値の計算は、T.V.VorburgerおよびJ.Raja,”Surface Finish Metrology Tutorial”,NISTIR 89−4088,1990年6月,page36,Figure3−22に記載されている。
【0034】
外層および内層に加えて、ライニング管は、任意選択的に、外層と内層との間に配置される少なくとも1層の中間層を含み得る。一部の実施形態では、ライニング管またはフィッティングは、2層の中間層を含む。他の実施形態では、ライニング管またはフィッティングは3層の中間層を含む。1層以上の中間層は、それぞれ独立に、芳香族エポキシ樹脂、酸−官能化ポリオレフィン(マレイン酸無水物官能化高密度ポリエチレンを含む)、酸官能化ポリ(フェニレンエーテル)(マレイン酸無水物官能化ポリ(フェニレンエーテル)を含む)、スチレン−マレイン酸無水物コポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される材料を含み得る。
【0035】
ライニング管の非常に特定の実施形態では、外層組成物は、ポリプロピレンを95〜100質量%含み;ポリ(フェニレンエーテル)が、クロロホルム中25℃で測定される固有粘度が0.1〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含み;ポリスチレンが、ISO1133−4(2011)に準拠して200℃および5kg負荷で測定されるメルトフローインデックスが1.5〜3.5g/10分であるアタクチックホモポリスチレンを含み;内層組成物が水素化ブロックコポリマーを1〜15質量部含み;水素化ブロックコポリマーが、ポリスチレン含量が約25〜40質量%であり、質量平均分子量が約200,000〜400,000g/モルであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーであり;内層組成物が、ポリ(フェニレンエーテル)を35〜45質量部と、ポリスチレンを43〜53質量部と、水素化ブロックコポリマーを5〜15質量部とを含む。この実施形態では、内層組成物は、任意選択的に、遊離ブタジエンを1質量ppm未満含み得る。また、この実施形態では、内層組成物は、任意選択的に、ゴム変性ポリスチレンを含まないことが可能である。
【0036】
ライニング管は、外層、内層、およびいずれの中間層の共押出によって形成され得る。一実施形態は、ライニング管またはフィッティングの形成方法である。該方法は、外層および内層を共押出しするステップを含み;外層は断面において環状であり、第一の外径、第1の内径および第一の肉厚によって特徴付けられ;外層は、外層組成物の合計質量に対して、架橋ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、およびポリ(塩化ビニル)からなる群より選択される熱可塑性物質を50〜100質量%と、充填剤を0〜50質量%とを含む外層組成物を含み;内層は断面において環状であり、第1の内径より小さい第2の外径、第2の内径、および第2の肉厚によって特徴付けられ;内層は、ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、ポリ(フェニレンエーテル)を20〜70質量部と、ポリスチレンを30〜80質量部と、アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーを0〜15質量部とを含む内層組成物を含む。
【0037】
ライニング管の一部の実施形態では、該ライニング管は、外層と内層からなり、第2の外径(すなわち、内層の外径)は第1の内径(すなわち、外層の内径)の98〜100%未満、または第1の内径の99〜100%未満である。
【0038】
他の実施形態では、該方法は、外層および内層と共に、断面において環状であり、第1の内径より小さい第3の外径および第2の外径より大きい第3の内径によって特徴付けられる少なくとも1層の中間層を共押出しするステップをさらに含む。
【0039】
ライニング管の形成方法の非常に特定の実施形態では、外層組成物は、ポリプロピレンを95〜100質量%含み;ポリ(フェニレンエーテル)が、クロロホルム中25℃で測定される固有粘度が0.1〜0.6dL/g、または0.3〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含み;ポリスチレンが、ISO1133−4(2011)に準拠して200℃および5kg負荷で測定されるメルトフローインデックスが1.5〜3.5g/10分であるアタクチックホモポリスチレンを含み;水素化ブロックコポリマーが、質量平均分子量が200,000〜400,000g/モルであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを含み;内層組成物が、ポリ(フェニレンエーテル)を35〜45質量部と、ポリスチレンを43〜53質量部と、水素化ブロックコポリマーを5〜15質量部とを含む。この実施形態では、内層組成物は、任意選択的に、遊離ブタジエンを1質量ppm未満含み得る。また、この実施形態では、内層組成物は、任意選択的に、ゴム変性ポリスチレンを含まないことが可能である。
【0040】
別の実施形態は水と接触する射出成形品である。該射出成形品は、ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、クロロホルム中25℃でUbbelohde粘度計によって測定される固有粘度が0.1〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を30〜50質量部と、ISO1133−4(2011)に準拠して200℃および5kg負荷で測定されるメルトフローインデックスが1〜5g/10分であるアタクチックホモポリスチレンを35〜55質量部と;ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを1〜15質量部とを含む組成物を含み、該組成物はゴム変性ポリスチレンを含まず、スチレンとブタジエンの非水素化ブロックコポリマーを含まず、内層組成物の合計質量に対して、遊離ブタジエンを1質量ppm未満含み、該組成物は、NEN−EN16421:2014方法1に従って決定される500pgアデノシン三リン酸/cm以下のバイオマス生成能を示す。ライニング管の内層組成物について上述したすべてのバリエーションが射出成形品を形成するのに使用される組成物にも同様に適用される。一部の実施形態では、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)の質量平均分子量が25,000〜60,000g/モルである。一部の実施形態では、射出成形品は、3〜15nmの値である表面粗さパラメータR、および7〜25nmの値であるRによって特徴付けられる表面(例えば、水と接触する表面)を含む。
【0041】
射出成形品を形成するのに使用される組成物は、任意選択的に、ガラス繊維を含み得る。適したガラス繊維としては、E、C、ECR、R、S、D、およびNEガラスに基づくもの、並びに石英が挙げられる。一部の実施形態では、ガラス繊維の直径が約2〜約30μm、具体的には約5〜約25μm、より具体的には約10〜約15μmである。一部の実施形態では、配合前のガラス繊維の長さが約2〜約7mm、具体的には約3〜約5mmである。ガラス繊維は、任意選択的に、ポリ(フェニレンエーテル)およびポリスチレンとのその相溶性を向上させるいわゆる接着促進剤を含み得る。接着促進剤としては、クロム錯体、シラン、チタン酸塩、ジルコアルミネート、プロピレンマレイン酸無水物コポリマー、反応性セルロースエステルなどが挙げられる。適したガラス繊維は、例えば、Owens Corning、日本電気硝子、PPG、およびJohns Manvilleを含めた供給業者から入手できる。存在する場合、ガラス繊維の使用量は、ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、5〜100質量部、または5〜80質量部、または5〜75質量部、または5〜50質量部、または10〜40質量部、または20〜30質量部である。
【0042】
射出成形品の非常に特定の実施形態では、組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、クロロホルム中25℃で測定される固有粘度が0.1〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を35〜45質量部と、ISO1133−4(2011)に準拠して200℃および5kg負荷で測定されるメルトフローインデックスが1.5〜3.5g/10分であるアタクチックホモポリスチレンを43〜53質量部と、質量平均分子量が200,000〜400,000g/モルであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを5〜15質量部と、を含む。一部の実施形態では、組成物は、ガラス繊維を5〜75質量部含む。
【0043】
別の実施形態は、水の輸送または貯蔵中の微生物増殖の制御方法である。該方法は、ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、ポリ(フェニレンエーテル)を20〜70質量部と、ポリスチレンを30〜80質量部と、アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーを1〜15質量部とを含む組成物を有する層の表面と接触させて水を輸送するか、または貯蔵するステップを含む。ライニング管の内層について上述したすべてのバリエーションが、水の輸送または貯蔵中の微生物増殖の制御方法での組成物にも同様に適用される。一部の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)の質量平均分子量が25,000〜60,000g/モルである。一部の実施形態では、該表面は、3〜15nmの値である表面粗さのパラメータR、および7〜25nmの値であるRによって特徴付けられる。
【0044】
微生物増殖の制御方法では、組成物は、任意選択的に、ガラス繊維を含み得る。適したガラス繊維としては、E、C、ECR、R、S、D、およびNEガラスに基づくもの、並びに石英が挙げられる。一部の実施形態では、ガラス繊維の直径が約2〜約30μm、具体的には約5〜約25μm、より具体的には約10〜約15μmである。一部の実施形態では、配合前のガラス繊維の長さが約2〜約7mm、具体的には約3〜約5mmである。ガラス繊維は、任意選択的に、ポリ(フェニレンエーテル)およびポリスチレンとのその相溶性を向上させるいわゆる接着促進剤を含み得る。接着促進剤としては、クロム錯体、シラン、チタン酸塩、ジルコアルミネート、プロピレンマレイン酸無水物コポリマー、反応性セルロースエステルなどが挙げられる。適したガラス繊維は、例えば、Owens Corning、日本電気硝子、PPG、およびJohns Manvilleを含む供給業者から入手できる。存在する場合、ガラス繊維の使用量は、ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、5〜100質量部、または5〜80質量部、または5〜75質量部、または5〜50質量部、または10〜40質量部、または20〜30質量部である。
【0045】
水の輸送または貯蔵中の微生物増殖の制御方法の非常に特定の実施形態では、該方法は、ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、クロロホルム中25℃で測定される固有粘度が0.1〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を35〜45質量部と、ISO1133−4(2011)に準拠して200℃および5kg負荷で測定されるメルトフローインデックスが1.5〜3.5g/10分であるアタクチックホモポリスチレンを43〜53質量部と、質量平均分子量が200,000〜400,000g/モルであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを5〜15質量部とを含む組成物を有する層の表面と接触させて水を輸送するか、または貯蔵するステップを含む。一部の実施形態では、組成物はガラス繊維を5〜75質量部含む。
【0046】
別の実施形態は組成物である。該組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、クロロホルム中25℃でUbbelohde粘度計によって測定される固有粘度が0.1〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を30〜50質量部と、ISO1133−4(2011)に準拠して200℃および5kg負荷で測定されるメルトフローインデックスが1〜5g/10分であるアタクチックホモポリスチレンを35〜55質量部と;アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーを1〜15質量部と、を含み;該組成物はゴム変性ポリスチレンを含まず、スチレンとブタジエンの非水素化ブロックコポリマーを含まず、内層組成物の合計質量に対して、遊離ブタジエンを1質量ppm未満含み、該組成物は、NEN−EN16421:2014方法1に従って決定される500pgアデノシン三リン酸/cm以下のバイオマス生成能を示す。一部の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)の質量平均分子量が20,000〜60,000g/モルである。一部の実施形態では、組成物は、ガラス繊維を5〜50質量部、または15〜45質量部さらに含む。一部の実施形態では、水素化ブロックコポリマーは上記の食品等級の水素化ブロックコポリマーである。一部の実施形態では、組成物は、NEN−EN16421:2014方法1に従って決定される300pgアデノシン三リン酸/cm以下のバイオマス生成能を示す。
【0047】
組成物は、任意選択的に、ガラス繊維を含み得る。適したガラス繊維としては、E、C、ECR、R、S、D、およびNEガラスに基づくもの、並びに石英が挙げられる。一部の実施形態では、ガラス繊維の直径が約2〜約30μm、具体的には約5〜約25μm、より具体的には約10〜約15μmである。一部の実施形態では、配合前のガラス繊維の長さが約2〜約7mm、具体的には約3〜約5mmである。ガラス繊維は、任意選択的に、ポリ(フェニレンエーテル)およびポリスチレンとのその相溶性を向上させるいわゆる接着促進剤を含み得る。接着促進剤としては、クロム錯体、シラン、チタン酸塩、ジルコアルミネート、プロピレンマレイン酸無水物コポリマー、反応性セルロースエステルなどが挙げられる。適したガラス繊維は、例えば、Owens Corning、日本電気硝子、PPG、およびJohns Manvilleを含む供給業者から入手できる。存在する場合、ガラス繊維の使用量は、ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、5〜100質量部、または5〜80質量部、または5〜75質量部、または10〜50質量部、または10〜40質量部、または20〜30質量部である。
【0048】
組成物の非常に特定の実施形態では、該組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)を37〜47質量部と、ポリスチレンを42〜52質量部と、水素化ブロックコポリマーを5〜15質量部と、ガラス繊維を5〜75質量部とを含む。
【0049】
本発明は、少なくとも以下の非限定的な実施形態を含む。
【0050】
実施形態1::外層組成物の合計質量に対して、架橋ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、およびポリ(塩化ビニル)からなる群より選択される熱可塑性物質を50〜100質量%と、充填剤を0〜50質量%とを含む外層組成物を含む外層と、ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、ポリ(フェニレンエーテル)を20〜70質量部と、ポリスチレンを30〜80質量部と、アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーを0〜15質量部とを含む内層組成物を含む内層と、を含む水の輸送用のライニング管。
【0051】
実施形態2:外層組成物中の熱可塑性物質がポリプロピレンである実施形態1のライニング管。
【0052】
実施形態3:充填剤が、タルク、クレイ、マイカ、炭酸カルシウム、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される実施形態1または2のライニング管。
【0053】
実施形態4:ポリ(フェニレンエーテル)がクロロホルム中25℃でUbbelohde粘度計によって測定される固有粘度が0.1〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である実施形態1〜3のいずれか1つのライニング管。
【0054】
実施形態5:ポリスチレンが、ISO1133−4(2011)に準拠して200℃および5kg負荷で測定されるメルトフローインデックスが1〜5g/10分であるアタクチックホモポリスチレンを含む実施形態1〜4のいずれか1つのライニング管。
【0055】
実施形態6:内層組成物が水素化ブロックコポリマーを1〜15質量部含み、水素化ブロックコポリマーが、ポリスチレン含量が約25〜40質量%であり、質量平均分子量が約200,000〜400,000g/モルであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーである実施形態1〜5のいずれか1つのライニング管。
【0056】
実施形態7:内層が、3〜15nmの値である表面粗さパラメータR、および7〜25nmの値であるRによって特徴付けられる内面を含む実施形態1〜6のいずれか1つのライニング管。
【0057】
実施形態8:外層組成物がポリプロピレンを95〜100質量%含み、ポリ(フェニレンエーテル)が、クロロホルム中25℃で測定される固有粘度が0.1〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含み;ポリスチレンがISO1133−4(2011)に準拠して200℃および5kg負荷で測定されるメルトフローインデックスが1.5〜3.5g/10分であるアタクチックホモポリスチレンを含み;内層組成物が水素化ブロックコポリマーを1〜15質量部含み、水素化ブロックコポリマーが、ポリスチレン含量が約25〜40質量%であり、質量平均分子量が約200,000〜400,000g/モルであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーであり;内層組成物が、ポリ(フェニレンエーテル)を35〜45質量部と、ポリスチレンを43〜53質量部と、水素化ブロックコポリマーを5〜15質量部とを含む実施形態1のライニング管。
【0058】
実施形態9::ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、クロロホルム中25℃でUbbelohde粘度計によって測定される固有粘度が0.1〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を30〜50質量部と、ISO1133−4(2011)に準拠して200℃および5kg負荷で測定されるメルトフローインデックスが1〜5g/10分であるアタクチックホモポリスチレンを35〜55質量部と、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを1〜15質量部と、を含む組成物を含み;組成物はゴム変性ポリスチレンを含まず、スチレンとブタジエンの非水素化ブロックコポリマーを含まず、内層組成物の合計質量に対して、遊離ブタジエンを1質量ppm未満含み組成物は、NEN−EN16421:2014方法1に従って決定される500pgアデノシン三リン酸/cm以下のバイオマス生成能を示す水と接触する射出成形品。
【0059】
実施形態10:ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)の質量平均分子量が25,000〜60,000g/モルである実施形態9の射出成形品。
【0060】
実施形態11:組成物が、ガラス繊維を5〜100質量部さらに含む実施形態10の射出成形品。
【0061】
実施形態12:ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、ポリ(フェニレンエーテル)を20〜70質量部と、ポリスチレンを30〜80質量部と、アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーを1〜15質量部とを含む組成物を有する表面と接触させて水を輸送するか、または貯蔵するステップを含む水の輸送または貯蔵中の微生物増殖の制御方法。
【0062】
実施形態13:組成物が、ガラス繊維を5〜100質量部さらに含む実施形態12の方法。
【0063】
実施形態14:ポリ(フェニレンエーテル)の質量平均分子量が20,000〜60,000g/モルである実施形態12または13の方法。
【0064】
実施形態15:ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対して、クロロホルム中25℃でUbbelohde粘度計によって測定される固有粘度が0.1〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を30〜50質量部と、ISO1133−4(2011)に準拠して200℃および5kg負荷で測定されるメルトフローインデックスが1〜5g/10分であるアタクチックホモポリスチレンを35〜55質量部と、アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとの水素化ブロックコポリマーを1〜15質量部と、を含み、ゴム変性ポリスチレンを含まず、スチレンとブタジエンの非水素化ブロックコポリマーを含まず、内層組成物の合計質量に対して、遊離ブタジエンを1質量ppm未満含み、NEN−EN16421:2014方法1に従って決定される500pgアデノシン三リン酸/cm以下のバイオマス生成能を示す組成物。
【0065】
実施形態16:ポリ(フェニレンエーテル)の質量平均分子量が20,000〜60,000g/モルである実施形態15の組成物。
【0066】
実施形態17:ガラス繊維を5〜100質量部さらに含む実施形態15または16の組成物。
【0067】
実施形態18:水素化ブロックコポリマーが食品等級の水素化ブロックコポリマーである実施形態15〜17のいずれかの組成物。
【0068】
実施形態19:NEN−EN16421:2014の方法1に従って決定される300pgアデノシン三リン酸/cm以下のバイオマス生成能を示す実施形態15〜18のいずれかの組成物。
【0069】
実施形態20:ポリ(フェニレンエーテル)を37〜47質量部と、ポリスチレンを42〜52質量部と、水素化ブロックコポリマーを5〜15質量部と、ガラス繊維を5〜75質量部と、を含む実施形態15〜19のいずれかの組成物。
【0070】
本明細書において開示されるすべての範囲は端点を含み、端点はそれぞれ独立して組み合わせ可能である。本明細書において開示されるそれぞれの範囲は、開示された範囲内にある任意の点またはサブ範囲の開示を構成する。
【0071】
本発明を以下の非限定的な実施例によってさらに例証する。
【実施例】
【0072】
(実施例1〜6)
ポリ(フェニレンエーテル)組成物の調製に使用した成分を表1要約する。
【表1】
【0073】
アタクチックポリスチレン以外のすべての成分を配合前に乾燥ブレンドした。組成物を、約20kg/hのスループットで、供給口からダイスまで40℃/210℃/260℃/280℃/280℃/270℃/280℃/280℃/290℃/290℃/300℃のバレル温度で作動する28mm内径の二軸Werner & Pfleiderer押出機で配合した。すべての成分を供給口で添加した。押出成形物を水浴で冷却し、ペレット化し、射出成形への使用前に、ペレットを80℃で2時間乾燥した。
【0074】
物理的特性試験のための試験物品を、バレル温度260〜280℃および成形温度80℃で作動するEngel 110T射出成形機で射出成形した。
【0075】
組成物および特性を表2に要約する。表2中、成分量は、ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対しての質量部で表される。シャルピー衝撃強度の値(kJ/mの単位で表される)を、ISO179−1(2010)に準拠して、ISO179−1/1eAの方法、沿層方向衝撃形状、ノッチ付き試料、棒の寸法80×10×4mm、振り子エネルギー4.2J、および組成物当たり5つの試料を用いて、−30、0、および23℃で決定した。曲げ弾性率および曲げ強度値(それぞれMPaの単位で表される)、曲げ強さ歪みおよび3.5%歪みでの曲げ応力の値(それぞれ%の単位で表される)を、ISO178−4(2010)に準拠して、23℃で、棒の寸法80×10×4mm、支持スパン64mm、試験速度2mm/分、および組成物当たり5つの試料を用いて決定した。熱たわみ温度(HDT)の値(℃の単位で表される)を、ISO75−1および75−2(2004)に準拠して、棒の寸法80×10×4mm、平らな試験方向、負荷繊維応力1.80MPa、および組成物当たり2つの試料を用いて決定した。アイゾットノッチ付き衝撃強度(INI)の値(kJ/mの単位で表される)を、−30、0、および23℃で、ISO180−1(2006)に準拠して、棒の寸法80×10×4mm、ノッチ付き試料、振り子エネルギー5.5J、および組成物当たり5つの試料を用いて決定した。多軸衝撃(MAI)破壊エネルギー、最大荷重でのエネルギーの値(それぞれJの単位で表される)、および破断時のたわみの値(mmの単位で表される)を、23℃でISO6603−2(2000)に準拠して、試験速度4.4m/sおよび組成物当たり5つの試料を用いて決定した。引張係数、降伏点引張応力、破断時引張応力(それぞれMPaの単位で表される)、および降伏点引張歪み、破断時引張歪みの値(それぞれ%の単位で表される)を、23℃で、ISO527−1および527−2(2012)に準拠して、試験速度50mm/分および組成物当たり5つの試料を用いて決定した。ビカット軟化温度の値(℃の単位で表される)を、ISO306−4(2004)に準拠して、50N荷重および試験速度120℃/hおよび組成物当たり2つの試料を用いて決定した。メルトボリュームフローレートの値(cm/10分の単位で表される)を、ISO1133−4(2011)に準拠して、80℃で2時間の予備試験乾燥、温度280℃、5kg負荷、および試験時間900秒を用いて決定した。
【表2】
【0076】
(実施例7〜11)
これらの実施例は、ガラス繊維を含む予言的なポリ(フェニレンエーテル)組成物を例証する。配合条件は、ガラス繊維を下流側のフィーダーを介して押出機に添加した以外は実施例1〜6と同じである。表3中、成分量はポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンと水素化ブロックコポリマーとの合計100質量部に対しての質量部で表される。
【表3】
【0077】
(表面粗さ測定)
これらの実施例は、高密度ポリエチレン(HDPE)、無可塑ポリ(塩化ビニル)(PVC−u)、およびポリ(フェニレンエーテル)組成物(PPE)の押出された表面の表面粗さの特徴付けを例証する。
【0078】
高密度ポリエチレンをSABIC社からVESTOLEN A RELY 5924R樹脂として入手した。ポリ(フェニレンエーテル)組成物は上記表2の実施例5であった。HDPEおよびPVC−uを、厚さが約32mmの単一層として押出した。ポリ(フェニレンエーテル)組成物を、厚さが150μmの単一層として押出した。押出温度は、高密度ポリエチレンでは240℃、ポリ(塩化ビニル)では165℃、ポリ(フェニレンエーテル)組成物では250℃であった。4×4μmの領域のそれぞれの押出された表面を、原子間力顕微鏡によって分析した。生じたデータを使用して、T.V.VorburgerおよびJ.Raja,”Surface Finish Metrology Tutorial”,NISTIR89−4088,1990年6月,page36,Figure3−22の方法に従い、RおよびR値を計算した。
【0079】
図4A〜4Cは、高密度ポリエチレン(4A)、ポリ(フェニレンエーテル)組成物(4B)、および無可塑ポリ(塩化ビニル)(4C)の押出された表面での原子間力顕微鏡写真を示す。RおよびR値を表4に示す。結果は、ポリ(フェニレンエーテル)組成物が最も滑らかな表面を有し、無可塑ポリ(塩化ビニル)の表面がわずかに粗く、高密度ポリエチレン表面が実質的により粗いことを示す。
【表4】
【0080】
(ライニング管の共押出)
共押出は、材料の多層の同時の押出である。共押出は、2つ以上の押出機を使用して、異なる粘性のプラスチックの一定の容量のスループットを溶融し、単一押出ヘッド(ダイス)へ送達し、それから材料を望ましい形状に押出する。層の厚さは、材料を送達する個々の押出機の相対速度およびサイズによって制御される。
【0081】
ポリプロピレンからなり、環状断面を有する外層を約235℃の溶融温度で押出した。ASTM D1238−13に準拠して230℃、2.16kg負荷で測定したポリプロピレンのメルトフローは0.3g/10分である。それは、VESTOLEN P 9421樹脂としてSABIC社から入手できる。上記実施例5の組成物からなり、環状断面を有する内層を約245℃の溶融温度で共押出した。
【0082】
(実施例12,比較実施例1および2)
これらの実施例は、本ポリ(フェニレンエーテル)組成物から調製した物品が、ポリ(塩化ビニル)から調製した対応する物品と比較して、水中の微生物増殖のはるかに良好な制御を示すことを例証する。NEN−EN 16421:2014,“Influence of materials on water for human consumption − Enhancement of microbial growth (EMG)”,方法1に準拠して試験を実施した。この試験では、ホウケイ酸ガラスがネガティブコントロールになり(BPP<100pg ATP/cmとして示される低い微生物増殖)、可塑化ポリ(塩化ビニル)(PVC−p)がポジティブコントロールになり(BPP>10,000pg ATP/cmとして示される高い微生物増殖)、ポリ(フェニレンエーテル)組成物が実験試料になる。
【0083】
ポリ(フェニレンエーテル)組成物の形成に使用した成分を表5に要約する。
【表5】
【0084】
組成物を実施例1〜6で説明したように配合した。ポリ(フェニレンエーテル)組成物を表6に要約する。表6中、成分量は、ポリ(フェニレンエーテル)(PPE)とポリスチレン(PS)と水素化ブロックコポリマー(SEBS)との合計100質量部に対しての質量部で表される。
【表6】
【0085】
3つの材料それぞれの1つの試験片を、2つの試験容器のそれぞれに入れた(すなわち、試験は二連で行った)。試験片それぞれの全外表面積は約150cmであった。それぞれの試験容器を適切に補正した飲用水(Tull en’t Waal社,オランダ国)で満たし、地表水源由来の自然発生の微生物の混合物を接種した。
【0086】
試験片を、0.16cm−1の一定の表面積/体積の比で16週間、30℃でインキュベートした。この比は、試験片をバイオマス測定のために除去した際に試験容器中の水の体積を調節することによって、一定に保った。試験水を7日に1回置き換えた。
【0087】
試験片上および水中のバイオマスの形成を、インキュベーションの8、12、および16週後のアデノシン三リン酸(ATP)測定で決定した。全水体積のATP濃度は、懸濁バイオマスの計算(ATP pg/mL)に使用した。二連の試料での値を使用して、平均および標準偏差を計算した。
【0088】
材料の表面に付着バイオマスを少量の水での高エネルギー超音波処理の下で緩めた。この水のATP濃度を、付着バイオマス(pg ATP/cm)の計算に使用した。二連の試料での値を使用して、平均および標準偏差を計算した。
【0089】
試験それぞれを、等価の条件下のネガティブコントロール(ガラス)およびポジティブコントロール(PVC−p)の満足できる性能によって実証した。試験片および試験水の平均ATP濃度を使用して、材料それぞれのバイオマス生成値(BP)(pg ATP/cm)を計算した。
【0090】
バイオマス生成能(BPP)を、8、12および16週で見られたBP値の平均値から同じ日で見られたネガティブコントロールのBP値を引いたものとして計算した。BPPはpg ATP/cmで表される。
【0091】
試験結果を表7および表8に示す。結果は、ポリ(フェニレンエーテル)組成物の存在下でのバイオマス生成が、PVCの存在下のものよりもはるかに低く、ガラスの存在下のものと同等であったことを示す。
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表8】
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C