(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948513
(24)【登録日】2021年9月24日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】廃液処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20060101AFI20210930BHJP
E03F 5/14 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
C02F1/00 X
C02F1/00 T
C02F1/00 V
E03F5/14
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-95116(P2017-95116)
(22)【出願日】2017年5月12日
(65)【公開番号】特開2018-187606(P2018-187606A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2019年8月2日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】396020132
【氏名又は名称】株式会社システック
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241474
【氏名又は名称】トヨタT&S建設株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂本 利彦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 伸介
(72)【発明者】
【氏名】本間 博和
(72)【発明者】
【氏名】香高 孝之
【審査官】
高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−174963(JP,A)
【文献】
特開2006−200133(JP,A)
【文献】
特開2014−190098(JP,A)
【文献】
特開2017−023918(JP,A)
【文献】
実開昭62−043691(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
E03F 1/00 − 11/00
E03B 1/00 − 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃液を処理する処理槽と前記処理槽に前記廃液を導入する導入口と、前記処理された廃液を出力する排出口と、前記処理槽内に前記廃液を導く時で、前記廃液の移動量が所定の入力量を上回る量となった場合に、前記上回る量の前記廃液を前記廃液処理を介さず排出側に排液するための排液開口部による移動量閾値を持った排液ゲートを前記導入口の後に備え、
前記排出側に前記廃液濃度のセンサーを設けて、前記センサーによる測定結果で前記排液ゲートに付けた駆動手段により前記移動量閾値を変えることを可能としたことを特徴とする廃液処理装置。
【請求項2】
前記排液ゲートの前記移動量閾値を調整するために前記排液開口部の高さを上下することを可能としたことを特徴とする請求項1記載の廃液処理装置。
【請求項3】
廃液を処理する処理槽と前記処理槽に前記廃液を導入する導入口と、前記処理された廃液を出力する排出口と、前記処理槽内に前記廃液を導く時で、前記廃液の移動量が所定の入力量を上回る量となった場合に、前記上回る量の前記廃液を前記廃液処理を介さず排出側に排液するための排液開口部による移動量閾値を持った排液ゲートを前記導入口の後に備え、前記排液ゲートが回転傾斜板を有し、前記排液開口部は前記回転傾斜板の先端側に設けられ、前記回転傾斜板の傾斜により、前記排液開口部による前記移動量閾値が決まることを特徴とする廃液処理装置。
【請求項4】
前記排液ゲートの後ろに、前記処理槽又は前記処理槽の内の最初の処理槽である第一処理槽の後の処理槽とは構造的に分かれた排液専用流路を有し、前記排液ゲートの前記排液開口部から溢れた前記廃液は、前記排液専用流路を通過して排出するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の廃液処理装置。
【請求項5】
前記処理槽の前に前記排液ゲートを有する前室を設け、前記排液が前記排液ゲートの移動量閾値を上回った廃液を前記排出側へ、前記移動量閾値を上回らない廃液を前記処理槽内に供給するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の廃液処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水等の増加により被処理含有物質濃度が薄すまった増量した廃液の処理に対応した廃液処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、雨水等の増加により被処理含有物質濃度が薄すまった増量した廃液の処理の対応を記述した文献の例として、特許文献1が見いだされ、
図5に示されるものである。特許文献1の段落番号0019には、「生物処理配管62は途中で分配配管66を介して放流用配管68に接続される。そして、この分配配管66で生物処理装置12に送水される濾過水の水量と、放流用配管68に送水される濾過水の水量を所定比率に分配することにより、濾過水の一部を河川等に直接放流することができる。」と記述され、段落番号0040の(4)には、「流入排水量が生物処理装置12の処理許容量の2倍程度(2Q)となり、処理許容量の範囲を更に越えた場合、分配装置によりA及びB系統の生物処理配管62の連通を遮断し、A系統の高速濾過装置10Aで濾過された濾過水を生物処理装置12に送水し、B系統の高速濾過装置10Bで濾過された濾過水を放流用配管を介して直接されるようにする。・・・」と記述され、放流用配管68に処理水を分けるために分配配管66を設けて、これを処理許容量を見て切り替えるようにしている。そのためには、大掛かりな配管系が必要であり、これを制御する処理許容量の監視・制御駆動系も必要となってくる欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2976272号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、従来のような、大掛かりの配管系と監視・制御駆動系を必要としないで、廃液処理装置に廃液の入力部において、廃液の移動量が所定の入力量を上回る量となった場合に上回る量の廃液を廃液処理装置の処理部を介さず自ずと排液する廃液処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる廃液処理装置は、装置の廃液導入口の後に排液ゲートを備え、開口部の高さ、サイズ、形状等の排液ゲートの特徴で与える閾値を越える廃液の液量分の廃液を、廃液処理装置の処理部を介さずに自ずと排液するものである。
以下、請求項に沿って記述する。
【0006】
請求項1記載の発明は、廃液処理装置であって、
廃液を処理する処理槽と前記処理槽に前記廃液を導入する導入口と、前記処理された廃液を出力する排出口と、前記処理槽内に前記廃液を導く時で、前記廃液の移動量が所定の入力量を上回る量となった場合に、前記上回る量の前記廃液を前記廃液処理を介さず排出側に排液するための排液開口部による移動量閾値を持った排液ゲートを前記導入口の後に備え、
前記排出側に前記廃液濃度のセンサーを設けて、前記センサーによる測定結果で前記排液ゲートに付けた駆動手段により前記移動量閾値を変えることを可能としたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の廃液処理装置において、
前記排液ゲートの前記移動量閾値を調整するために前記排液開口部の高さを上下することを可能としたことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、廃液処理装置であって、
廃液を処理する処理槽と前記処理槽に前記廃液を導入する導入口と、前記処理された廃液を出力する排出口と、前記処理槽内に前記廃液を導く時で、前記廃液の移動量が所定の入力量を上回る量となった場合に、前記上回る量の前記廃液を前記廃液処理を介さず排出側に排液するための排液開口部による移動量閾値を持った排液ゲートを前記導入口の後に備え、前記排液ゲートが回転傾斜板を有し、前記排液開口部は前記回転傾斜板の先端側に設けられ、前記回転傾斜板の傾斜により、前記排液開口部による前記移動量閾値が決まることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の廃液処理装置において、前記排液ゲートの後ろに、前記処理槽又は前記処理槽の内の最初の処理槽である第一処理槽の後の処理槽とは構造的に分かれた排液専用流路を有し、前記排液ゲートの前記排液開口部から溢れた前記廃液は、前記排液専用流路を通過して排出するようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の廃液処理装置において、前記処理槽の前に前記排液ゲートを有する前室を設け、前記排液が前記排液ゲートの移動量閾値を上回った廃液を前記排出側へ、前記移動量閾値を上回らない廃液を前記処理槽内に供給するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上の様に構成されているので、本発明による廃液処理装置は、予め決められた閾値を越える廃液の移動量の入力がある場合は、超過分を処理部を介さずに自ずと排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明にかかる廃液処理装置の一実施態様を示す図である。
【
図2】本発明にかかる廃液処理装置の別の一実施態様を示す図である。
【
図3】本発明にかかる廃液処理装置の他の一実施態様を示す図である。
【
図4】本発明にかかる廃液処理装置を既設廃液処理装置に後から外付けで実現する後付けアタッチメントの一実施態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明にかかる廃液処理装置では、装置の廃液導入口の後に排液ゲートを備え、開口部の高さ、サイズ、形状等の排液ゲートの特徴で与える閾値を越える廃液の液量分の廃液を、廃液処理装置の処理部を介さずに排液するものである。
以下図に沿って説明する。
【0014】
図1は、本発明にかかる廃液処理装置の一実施態様を示す図である。
1−Aには、上から見た平面図を、1−Bには、横から見た側面図を、1−Cには、1−Bにおいて、矢印A−A方向に見た立面図を示している。廃液処理装置100は、処理槽110と処理槽110に廃液を導入する導入口120、処理された廃液を出力する排出口130と、処理槽110内に置かれた処理剤140側に廃液を導く時で、廃液の移動量が所定の入力量を上回る量となった場合に上回る量の廃液を廃液処理装置を介さず排出側に排液するための移動量閾値を持った排液ゲート150を導入口120の後に備えている。
処理剤140は、廃液処理のための処理剤であり、廃液処理装置が濾過装置では濾過材、
生物処理装置では鉄バクテリア担持濾過材等など、多くの例が知られている。凝集装置では凝集材が前もって加えられることもある。処理剤140は、処理時には、廃液処理装置100の処理槽110内に置かれて使用される。廃液処理装置100の構成に含ませるかどうかは考え方により任意である。
図1の例では、処理槽110内が複数の槽に区分され、導入口120から入った廃液は、廃液の移動量が所定の入力量を上回らない場合は、実線で示した流路160を通り、途中で処理剤140により、所望の処理を受けて、排出口130から排出する。この例では、複数の槽の仕切りが上下に交互に開いているので、流路160は上下に蛇行する。
仕切りは、上の方が開口になっていて、排液ゲート150を構成している。すなわち、1−Cのように上部が開口している。この図では、複数のV字開口になっているが、単数でもよく、又、必ずしもV字である必要が無く、開いていればよい。
廃液の移動量が所定の入力量を上回る量となった場合、即ち、液位が開口の下部を越えると、自ずと超えた液量の廃液が廃液処理装置の処理部を介さずに装置外に排出される。従って、開口部の位置、サイズ、形状等の特徴で、排出側に排液するための移動量閾値を決めることができる。開口部の特徴を一旦調整しておけば、排出側に排液することは、自ずと行われ、構成も極めて簡単である。尚、移動量閾値の調整の為に、開口部の位置(高さ)を上下できるものとするか、さらに、上下移動板(図示しない)を付加すると好都合である。
【0015】
図2は、本発明にかかる廃液処理装置の別の一実施態様を示す図である。
側面図のみで示されている。
図1との違いのみ述べると、排液ゲート150が、2−Bに示すようになっている。仕切りの上部が回転傾斜板210として、回転可能に適当な抗力を持って軸支されている。廃液の移動量が所定の入力量以上、ここでは、仕切りの回転傾斜板210の上部の位置を越えるほどになると、越えた分の廃液は、廃液処理装置の処理部を介さずに装置外に排出される。従って、液量が少ない場合は、実線で示す流路160となるが、液量が多い場合は、回転傾斜板210の上部の位置を越えた分の廃液は、点線で示す流路160となる。特に、回転傾斜板210は、調整のための傾斜を変えることができればよいが、抗力は、必ずしも必要はない。抗力があると、廃液の流れる液量が多くなると、その押圧により回転傾斜板210が押されて開口が開き、回転軸以上の部分を開口として拡大できる効果がある。
【0016】
図1と
図2では、導入口120に近い側の排液ゲート150の後の排液路は、構造的に分かれていない図で示した。
図1と
図2の排液ゲート150を
図3のように排液路を構造的に分けて構成することもできる。そうすると、排液ゲート150は、処理槽が複数あっても、最初の1つだけあれば十分な機能を果たすことになる。
図3は、本発明にかかる廃液処理装置の他の一実施態様を示す図であり、上記のことを反映した例である。
図3も側面図のみで示される。
3−Aにおいて、排液ゲート150は、導入口120に隣接した最初の第一処理槽と次の第二処理槽の間の仕切りの上部にある開口部の特徴で与えることができる。排液ゲート150の後は、開口部から溢れた廃液は、第二処理槽以降の処理槽とは構造的に分かれた流路(排液専用流路310)を通過して排出することになる。従って、排液ゲート150は1つでよい。図で矢印に示すように、仕切りの高さを上下に移動可能にすれば、移動量閾値の調節ができる。
3−Aでは、廃液が、第一処理槽を満杯になるほど、液が満ちてから排液ゲート150を越えるが、3−Bのようにすると、即ち、排液ゲート150を導入口120に近接させて構成し、液量が少ないときは、第一処理槽に廃液が入るようにし、液量が多くなってその結果、液の移動が速くなった場合に、排液ゲート150を越えるようにして、排液専用流路に流すようにすることも可能である。このようにすると、第一処理槽が満杯にならなくとも、廃液は排液ゲート150を越えさせることができる。
やや、不安定なのは、液の移動の瞬時的ばらつきで、配分の量が決まることである。
この不安定さを改善するために、3−Cは、3−Aと3−Bの折衷案となっている。従って、3−Bの特徴である、第一処理槽が満杯にならなくとも、そして、3−Aの安定さをもって、排液ゲート150の機能を果たすことができる。すなわち、導入口120の後には、前室320があって、前室320には、排液ゲート150がある。更に前室320からは、第一処理槽への配管330を備えている。前室320と配管330が廃液を通過させる能力は限度があるため、その限度を超えると、前室320内の液位が上がり、いずれ排液ゲート150の開口部の下限を越えて、越えた分は、排液専用流路を通り、排出口130Bから排出される。移動量閾値は、前室320と配管330が廃液を通過させる能力と排液ゲート150の開口部の特徴で決まる。
【0017】
図4は、本発明にかかる廃液処理装置を既設廃液処理装置に後から外付けで実現する後付けアタッチメントの一実施態様を示す図である。3−Cの応用として、前室320と排液ゲート150を廃液処理装置から分離し、後付けアタッチメント400にすると、これを既設廃液処理装置410に後付けで本発明にかかる廃液処理装置100が実現できるため、既設廃液処理装置410が生かされ、安価に改変できるため、後付けアタッチメント400は極めて好都合である。後付けアタッチメント400の説明は、分離しないもので十分説明したので省略する。排液ゲート150は、今まで
図1から
図3の例で説明したものと同様である。
【0018】
尚、排液専用流路又は排出口に廃液濃度のセンサーを設けて、その測定結果で排液ゲート150に付けた駆動手段により移動量閾値を変えることも可能である。そのことにより、廃液濃度を必要な値以下に維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
以上のように本発明にかかる廃液処理装置は、予め決められた閾値を越える廃液の移動量の入力がある場合は、超過分を処理部を介さずに自ずと排出するので、産業上利用して極めて好都合である。
【0020】
100 廃液処理装置
110 処理槽
120 導入口
130、130B 排出口
140 処理剤
150 排液ゲート
160 流路
210 回転傾斜板
310 排液専用流路
320 前室
330 配管
400 後付けアタッチメント