【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 刊行物名 第23回ディスプレイ国際ワークショップ(IDW/AD’16)予稿集、第1434〜1435頁 発行日 平成28年12月7日 集会名 第23回ディスプレイ国際ワークショップ(IDW/AD’16) 開催日 平成28年12月8日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0015】
従来のフレキシブル液晶ディスプレイに用いられるプラスチック基板としては、ポリカーボネート(PC)やシクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等がある。これらのうち、比較的耐熱性が高い樹脂としては、ポリカーボネート(PC)が挙げられる。しかしながら、ポリカーボネート(PC)は、薄い厚さに形成することはできず、十分な柔軟性(屈曲性)を有するものではなかった。つまり、従来のフレキシブル液晶ディスプレイに用いられるプラスチック基板は、高い耐熱性と高い屈曲性とを併せ持つものではなかった。
【0016】
これに対して、本発明では、液晶素子の基板として、前述の(1)〜(5)の物性を満たす基板を用いる。また、2つの基板の少なくとも一方と接合する接合スペーサを用いる。そのような接合スペーサは、液晶素子を折り曲げても基板上で固定されており、動かないことから、基板間の間隔を一定に保つことができる。これらを組み合わせることで、高い耐熱性を有し、且つ折り曲げ時のセルギャップムラが抑制され、曲げ耐性に優れた液晶素子を得ることができる。
【0017】
また、接合スペーサの形状を格子状とすることで、液晶材料を、接合スペーサで区画された表示領域内に閉じ込めやすくし、液晶素子を折り曲げた時の液晶材料の流動を一層抑制することができる。さらに、格子状の接合スペーサで区画される表示領域の長手方向Aと接合スペーサの幅Bとの比率を調整することで、表示特性を損なうことなく、基板との接着強度を一層高めることができる。それにより、液晶素子を折り曲げた時のセルギャップムラを一層高度に抑制することができる。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
【0018】
1.液晶素子
本発明の液晶素子は、一の基板と、それと対向する他の基板と、それらの間に配置された複数の接合スペーサと、一の基板と、他の基板と、接合スペーサとで区画される空間に充填された液晶層とを有する。以下、一の基板と他の基板を、それぞれ単に「基板」ともいう。
【0019】
1−1.基板
(1)L
*a
*b
*表色系のb
*値について
基板の、厚さ10μmにおけるL
*a
*b
*表色系のb
*値は、5以下であり、好ましくは4以下であり、より好ましくは3以下である。b
*値が当該範囲であると、基板が無色となり、可視光の透過性が良好となる。つまり、当該基板を有する液晶素子の光透過率を高くしやすい。
【0020】
基板のL
*a
*b
*表色系のb
*値は、スガ試験機製Color Cute i型を用いて測定することができる。具体的には、上記試験機を白色標準板によって校正した後、透過モード、測光方式8°diにて、基板のb
*値を測定することができる。尚、本発明におけるb
*値は、基板の厚さを10μmとしたときの値であり、厚さ10μmの基板についてb
*値を測定したものであってもよいし、異なる厚さの基板のb
*値を測定し、これを常法に従って10μmの厚さに換算したものであってもよい。
【0021】
基板のL
*a
*b
*表色系のb
*値は、例えば基板を構成する樹脂の種類や合成条件によって調整することができる。例えば、基板がポリイミドを含む場合、脂環式構造を有する構造単位(例えば脂環族ジアミン由来の構造単位や脂環族テトラカルボン酸二無水物由来の構造単位)を多くすることによってb
*値を低くすることができる。また、ポリイミド合成時に、イナート雰囲気(例えば、窒素気流下)にして酸素濃度を下げることで、酸化による着色を抑制し、b
*値を低くすることができる。
【0022】
(2)Rthについて
基板の、厚さ10μmにおける波長550nmでのRthは、200nm以下であり、好ましくは120nm以下であり、より好ましくは100nm以下である。Rthの下限値は、例えば0nmとしうる。基板のRthが当該範囲内であると、意図しない複屈折を生じにくいことから、液晶素子の表示特性を高めうる。
【0023】
基板のRthは、以下の方法で測定することができる。即ち、基板の面内遅相軸方向(X軸方向)の屈折率nx、基板の面内で、面内遅相軸と直交する方向(Y軸方向)の屈折率ny、及び厚さ方向(Z軸方向)の屈折率nzを、大塚電子社製 光学材料検査装置(型式RETS−100)にて、室温(20〜25℃)、波長550nmの光で測定する。得られた屈折率nx、ny、nzと、基板の厚さ(d)から、以下の式に基づき、厚さ方向の位相差(Rth)を算出する。
Rth(nm)=[(nx+ny)/2−nz]×d
【0024】
面内遅相軸とは、基板の面内において、屈折率が最大となる方向の軸をいう。基板が面内遅相軸を有しない場合、X軸方向は基板面内の任意の一方向とし、Y軸はそれと直交する方向としうる。
【0025】
基板のRthは、例えば基板の作製条件(延伸条件等)や種類によって調整することができる。例えば、基板がポリイミドを含む場合、上式より導かれるように、Z軸方向(厚さ方向)の屈折率nzが大きくなるような構造(例えば、脂環族ジアミン由来の構造単位や脂肪族ジアミン由来の構造単位等の比較的柔軟な構造)を導入することで、Rthを低くすることができる。
【0026】
(3)MIT耐折性について
基板の、JIS P8115に準拠して測定される、厚さ10μmにおけるMIT耐折性試験での耐折回数は、1万回以上であり、好ましくは2万回以上であり、より好ましくは3万回以上であり、さらに好ましくは5万回以上である。MIT耐折性試験の耐折回数が1万回以上であると、当該基板を有する液晶素子の屈曲性を高めることができる。
【0027】
基板のMIT耐折性は、MIT耐折度試験機(例えば、安田精機製作所製、307型等)によって、試験片の一端を固定した上で、他端を把持して試験片を往復折り曲げし、試験片が破断するまでの折り曲げ回数をカウントすることによって測定することができる。
【0028】
基板の耐折性は、例えば基板を構成する樹脂の種類等によって調整することができる。基板がポリイミドを含む場合、比較的柔軟な構造を有する構造単位(例えば脂環族ジアミン由来の構造単位や脂肪族ジアミン由来の構造単位等)を含めることで、耐折性を高めることができる。
【0029】
(4)ガラス転移温度について
基板のガラス転移温度は、200℃以上であり、好ましくは230〜370℃であり、より好ましくは260〜370℃であり、さらに好ましくは280〜370℃である。基板のガラス転移温度が200℃以上であると、例えば配向膜や透明電極を形成する際の、アニール処理の熱にも耐えることができ、当該基板に変形等を生じにくくすることができる。特に、酸化インジウムスズ(ITO)等の透明電極は、アニール温度を上げると導電性が向上するため、基板のガラス転移温度は高いほうが好ましい。
【0030】
基板のガラス転移温度は、熱機械分析装置(TMA)にて測定することができる。具体的には、ポリイミドからなる試験片(幅4mm×長さ20mm)を、島津製作所社製 熱機械分析装置(TMA−50)を用いて、25〜350℃の温度範囲で、昇温速度5℃/分、荷重14g/mm
2、引張りモードの測定条件で、TMA測定し、得られた温度−試験片伸び曲線の変曲点から、ガラス転移温度(Tg)を求める。
【0031】
基板のガラス転移温度は、基板を構成する樹脂の種類によって調整することができる。基板がポリイミドを含む場合、ポリイミド中に含まれるイミド基の当量やジアミン成分又はテトラカルボン酸二無水物成分の構造によってガラス転移温度を調整することができる。例えば、ジアミン成分又はテトラカルボン酸二無水物成分として、芳香環を含むジアミン又はテトラカルボン酸二無水物を含有させることで、ガラス転移温度を高めることができる。
【0032】
(5)厚さについて
基板の厚さは、50μm以下であり、好ましくは0.5〜30μmであり、より好ましくは1〜20μmであり、さらに好ましくは5〜10μmである。基板の厚さが当該範囲であると、液晶素子の厚さを薄くすることができ、フレキシブル性を高めることができる。
【0033】
(6)最大透過率について
基板の、厚さ10μmにおける波長365±5nmの最大透過率は、15%以上であることが好ましく、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは65%以上である。基板の最大透過率が当該範囲であると、液晶素子の光透過率を高めうるだけでなく、2枚の基板を液晶組成物からなる層を介して積層した後、液晶組成物に含まれる光硬化性化合物を硬化させて接合スペーサを形成する際に、照射する光を十分に透過させうる。
【0034】
基板の最大透過率は、分光光度計によって波長365±5nmの範囲内で測定される光線透過率のうち最大値をいう。また、本発明における最大透過率は、基板の厚さを10μmとしたときの値である。例えば、厚さ10μmの基板について、最大透過率を測定してもよいし、異なる厚さの基板の最大透過率を測定し、当該測定値をランベルト・ベールの法則に従って10μmの厚さに換算してもよい。
【0035】
基板の最大透過率は、基板を構成する樹脂の種類や合成条件によって調整することができる。基板がポリイミドを含む場合、例えば脂環式構造を有する構造単位(例えば脂環族ジアミン由来の構造単位や脂環族テトラカルボン酸二無水物由来の構造単位)を含むことで、最大透過率を向上させることができる。また、ポリイミド合成時に、イナート雰囲気(例えば、窒素気流下)にして酸素濃度を下げることで、酸化による着色を抑制し、最大透過率を高めることができる。
【0036】
基板は、前述の(1)〜(5)の全てを満たし、(1)〜(6)の全てを満たすことがより好ましい。
【0037】
基板を構成する材料は、前述の(1)〜(5)、好ましくは(1)〜(6)の物性を満たす樹脂であれば、特に制限されない。そのような樹脂の例には、ポリイミドが含まれる。即ち、基板は、下記一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される構造単位を有するポリイミドを含むことが好ましい。
【0039】
一般式(1)のR
1は、脂環式炭化水素構造を含む炭素原子数4〜15の2価の基、又は炭素原子数5〜12の2価の直鎖状脂肪族基を表す。R
1の例には、以下の2価の基が含まれる。
【化4】
【0040】
中でも、R
1は、脂環式炭化水素構造を含む炭素原子数4〜15の2価の基であることが好ましく、以下の基であることがより好ましい。
【化5】
【0041】
一般式(1)のY
1は、芳香環を含む炭素原子数6〜27の4価の基を表す。Y
1の具体例には、以下の4価の基が含まれる。
【化6】
【0042】
中でも、Y
1は、以下の基であることが好ましい。
【化7】
【0044】
一般式(2)のR
2は、芳香環を含む炭素原子数6〜27の2価の基を表す。R
2の例には、以下の2価の基が含まれる。
【化9】
【0045】
上記式のX
1〜X
3は、それぞれ独立に以下の2価の基を表す。一つの構造単位中にX
2又はX
3が複数含まれる場合、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【化10】
【0046】
一般式(2)のY
2は、脂環式炭化水素構造を含む炭素原子数4〜12の4価の基を表す。Y
2の例には、以下の4価の基が含まれる。
【化11】
【0047】
ポリイミドは、一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位のうち、いずれか一方のみを含んでいてもよいし、両方を含んでいてもよい。また、当該ポリイミドは、一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位以外の他の構造単位をさらに含んでいてもよい。
【0048】
一般式(1)で表される構造単位と一般式(2)で表される構造単位の総量は、ポリイミドを構成する構造単位の総量に対して50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましく、95モル%以上であることが特に好ましい。これらの総量が50モル%以上であると、上述の物性を有する基板が得られやすく、物性が均一になりやすく、特にガラス転移温度を高くすることができる。
【0049】
これらの2つの基板の一方には画素電極が、他方には対向電極がそれぞれさらに配置されるか;又は2つの基板の一方に、画素電極と対向電極がさらに配置される。さらに、画素電極や対向電極が配置されうるこれらの2つの基板上には、液晶材料を配向させるための配向膜がそれぞれさらに配置される。配向膜は、通常、ポリイミドを主成分として含む。
【0050】
1−2.接合スペーサ
接合スペーサは、一の基板と他の基板の間に配置され、且つそれらのうち少なくとも一方と接着又は接合したものである。このように、液晶素子が、少なくとも一方の基板と接着又は接合した接合スペーサを有することで、液晶素子を折り曲げた際の液晶材料の流動を少なくし、基板間のギャップ(セルギャップ)にムラが生じるのを抑制できる。接合スペーサは、一の基板と他の基板の両方に接着している接合スペーサと、一の基板と他の基板のうち一方のみに接着している接合スペーサとを組み合わせてもよい。中でも、液晶素子を折り曲げた時のセルギャップムラを高度に抑制しうる点では、接合スペーサは、一の基板と他の基板の両方に接着していることが好ましい。
【0051】
基板と接着又は接合しているとは、具体的には、基板上に配向膜が形成されている場合は、配向膜と接着又は接合していることをいう。接合スペーサが基板(基板上に配向膜が形成されている場合は配向膜)と接着又は接合しているかどうかは、例えば液晶素子を曲率半径20mmで折り曲げて60分間保持した後でも、接合スペーサの位置が動くことなく(剥がれることなく)、基板との接着状態を維持できるかどうかによって判断することができる。
【0052】
接合スペーサを構成する材料は、特に制限されないが、適度な可とう性を有し、折り曲げに追従しやすい等の観点から、樹脂であることが好ましい。樹脂は、硬化性化合物の硬化物であることが好ましい。硬化性化合物の硬化物は、光硬化性化合物の硬化物であってもよいし、熱硬化性化合物(例えばフェニルマレイミド等のマレイミド類や;グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有化合物)の硬化物であってもよく、後述するように、液晶組成物からなる層を介して2つの基板を積層した後に、光照射で接合スペーサを形成しうる観点から、光硬化性化合物の硬化物であることが好ましい。
【0053】
接合スペーサを得るための光硬化性化合物は、ラジカル重合性化合物であることが好ましく、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物であることが好ましい。ラジカル重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレートであることがより好ましい。(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基又はメタアクリロイル基を意味する。1分子中に含まれる(メタ)アクリロイル基の数は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
【0054】
分子内に1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物の例には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ブチルビシクロヘキサン、(メタ)アクリル酸4−プロピルシクロヘキシルベンゼン等の単官能の(メタ)アクリレートが含まれる。
【0055】
分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の例には、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート等の2官能の(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレートが含まれる。
【0056】
これらの中でも、不要な硬化反応を生じにくい点から、分子内に1又は2つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。分子内に1又は2つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、液晶性化合物であっても、非液晶性化合物であってもよいが、液晶材料との良好な相溶性が得られやすい点では液晶性化合物であることが好ましい。液晶性化合物とは、分子内に、液晶材料と同様の剛直な棒状構造を有する化合物をいい、前述の例では、(メタ)アクリル酸4−ブチルビシクロヘキサンや(メタ)アクリル酸4−プロピルシクロヘキシルベンゼン等が該当する。光硬化性化合物の市販品の例には、UCL−011(DIC社製)等が含まれる。
【0057】
接合スペーサは、任意の位置に配置されうるが、表示特性を損なわないようにする点では、ブラックマトリクスに対応する位置に配置されることが好ましい。複数の接合スペーサは、ランダムに配置されてもよいし、規則的に配置されてもよい。
【0058】
平面視したときの接合スペーサの形状は、特に制限されず、ドット状、ライン状、クロス状、格子状のいずれであってもよい。ドット状の形状は、円状、楕円状、矩形状のいずれであってもよい。クロス状とは、少なくとも2本の線が交差した形状をいう。
【0059】
図1A〜Dは、接合スペーサの形状の一例を示す図である。
図1Aは、ドット状(柱状)の接合スペーサの一例であり、
図1Bは、ライン状の接合スペーサの一例であり、
図1Cは、クロス状の接合スペーサの一例であり、
図1Dは、格子状の接合スペーサの一例である。中でも、接合スペーサで区画される領域内に液晶材料を閉じ込めやすく、液晶素子を折り曲げた時の液晶材料の流動を抑制できる点、基板との接着面積を一定以上としやすい点から、ライン状、クロス状又は格子状であることが好ましく、格子状がより好ましい。尚、クロス状の交差部や格子状の角部の形状は、
図1CやDに示されるような直角状に限らず、少し丸みを帯びた形状であってもよい。
【0060】
図2Aは、ドット状(柱状)の接合スペーサで区画される表示領域の一例を示す説明図であり;
図2Bは、格子状の接合スペーサで区画される表示領域の一例を示す説明図である。
図2A及びBに示されるように、接合スペーサで区画される表示領域の長辺の長さAと、接合スペーサの幅Bとの比率は、接合スペーサを得るための液晶組成物中の光硬化性化合物の含有量や接合スペーサの形状にもよるが、A:B=3:1〜300:1であることが好ましい。接合スペーサの幅Bとの比率がA:B=3以上:1であると、表示領域を十分に確保しやすいので、液晶素子の発光輝度が損なわれにくい。また、接合スペーサによる束縛を十分に少なくしうるので、電圧切り替え時の液晶分子の動きが妨げられにくく、駆動電圧の上昇を高度に抑制できる。一方、A:B=300以下:1であると、接合スペーサの幅Bを十分に確保しやすいので、接合スペーサと基板との接着面積を十分に確保しやすく、折り曲げ時の液晶素子のセルギャップムラを高度に抑制しやすい。また、表示領域内に残存する光硬化性化合物に紫外線等の光が照射されたときの、当該光硬化性化合物の硬化に起因する駆動電圧の上昇を高度に抑制できる。格子状の接合スペーサの場合、A:B=4:1〜100:1であることがより好ましく、8:1〜20:1であることがさらに好ましい。柱状の接合スペーサの場合、A:B=4:1〜100:1であることがより好ましく、4:1〜20:1であることがさらに好ましい。
【0061】
尚、ドット状の接合スペーサで区画される表示領域は、隣り合う接合スペーサ同士の最小距離の長さの線分で区画される領域である(
図2Aの点線部分)。また、ドット状の接合スペーサの幅Bは、
図2Aのドット状の接合スペーサを平面視したときの長辺又は長軸としうる。尚、長辺と短辺の長さ又は長軸と短軸の長さが同じ場合は、いずれか一方の長さを採用すればよい。
【0062】
表示領域の長辺Aと短辺Cとの比率は、長辺:短辺=1:1〜4:1としうる。表示領域の長辺と短辺の比率が上記範囲内であると、表示特性を損なうことなく、基板との十分な接着強度が得られやすい。
【0063】
接合スペーサの幅(
図2A及びBにおいては接合スペーサの幅B)は、例えば1〜50μm、好ましくは2〜30μm、さらに好ましくは5〜20μmとしうる。接合スペーサの幅が上記範囲内であると、表示特性を損なうことなく、基板との十分な接着強度が得られやすい。
【0064】
隣り合う接合スペーサ同士の平均間隔は、50〜300μmであることが好ましい。隣り合う接合スペーサ同士の平均間隔が50μm以上であると、表示領域を十分に確保しやすいので、液晶素子の発光輝度が損なわれにくく、平均間隔が300μm以下であると、接合スペーサと基板との接着面積を十分に確保しやすいので、折り曲げ時の液晶素子のセルギャップムラを高度に抑制しやすい。隣り合う接合スペーサ同士の平均間隔は、80〜200μmであることがより好ましい。
【0065】
隣り合う接合スペーサ同士の平均間隔は、以下の手順で求めることができる。
1)複数の接合スペーサのうち、任意の1つの接合スペーサを選択する。そして、それと隣り合う接合スペーサのうち最も近い位置にある接合スペーサを特定し、当該接合スペーサとの最小距離を測定する。例えば
図1Cにおいて、上段中央の接合スペーサを「任意に選択した接合スペーサ」とし、その右隣にある接合スペーサを「最も近い位置にあると特定した接合スペーサ」とした場合、それらの間の最小距離はDで示される距離となる。
2)上記1)の操作を、全ての接合スペーサについて繰り返し、それらの平均値を、接合スペーサの平均間隔として求める。
【0066】
1−3.液晶層
液晶層は、一の基板と、他の基板と、接合スペーサとで区画される空間に設けられた、液晶材料を含む層である。液晶層は、シール部材によって封止されている。液晶層は、2つの基板の少なくとも一方に設けられた、対をなす透明電極間に電圧を印加することで、電界を生じさせ、液晶材料の配向状態を変化させる。それにより、液晶層の透過率を変化させて、画像表示を行う。
【0067】
液晶層に含まれる液晶材料は、負又は正の誘電率異方性を有する液晶材料である。負又は正の誘電率異方性を有する液晶材料の例には、負又は正の誘電率異方性を有するネマチック液晶材料が含まれる。
【0068】
液晶層の表示モードは、例えばSTN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPS、FFS(Fringe Field Switching)等の種々の表示モードであってよい。視野角を広げる観点では、IPSモード又はFFSモードが好ましい。
【0069】
液晶層の厚さは、求められるコントラスト比や視野角に応じて設定される。液晶層の厚さは、コントラスト比や視野角を高める観点では、液晶材料の種類にもよるが、例えば3〜4μm、好ましくは3〜3.5μmとしうる。
【0070】
2.液晶素子の製造方法
本発明の液晶素子の製造方法は、任意の方法で製造されうる。液晶素子は、例えば一の基板と、他の基板と、それらの間に配置された液晶組成物からなる層とを積層した後、当該液晶組成物に含まれる硬化性化合物を硬化させて接合スペーサを形成する工程を経て得てもよいし;一の基板と他の基板の少なくとも一方に接合スペーサを形成した後、それらの基板を、液晶組成物からなる層を介して積層する工程を経て得てもよい。
【0071】
中でも、一の基板と他の基板の両方と十分に接着又は接合した接合スペーサを形成しやすい点、任意の形状の接合スペーサを形成しやすい点では、液晶素子は、一の基板と、他の基板と、それらの間に配置された液晶組成物からなる層とを積層した後、当該液晶組成物に含まれる硬化性化合物を硬化させて接合スペーサを形成する工程を経て得られることが好ましい。硬化性化合物は、前述の通り、光硬化性化合物であっても、熱硬化性化合物であってもよいが、短時間で硬化でき、且つ液晶材料へのダメージも少ない点から、光硬化性化合物であることが好ましい。
【0072】
即ち、本発明の液晶素子の好ましい製造方法は、1)一の支持体上に塗布形成された一の基板と、他の支持体上に塗布形成された他の基板とを得る工程、2)一の支持体上に塗布形成された一の基板と、他の支持体上に塗布形成された他の基板と、それらの間に配置された液晶組成物からなる層とを有する積層体を得る工程、3)積層体から他の支持体を剥がし取る工程、4)他の支持体を剥がし取った積層体の少なくとも一方の面から光をパターン状に照射して、液晶組成物からなる層に含まれる光硬化性化合物を硬化させて、接合スペーサを形成する工程、及び5)接合スペーサが形成された積層体から一の支持体を剥がし取り、液晶素子を得る工程を含む。
【0073】
図3A〜Hは、本発明の液晶素子の製造方法の一例を示す図である。以下、図を参照しながら、各工程について説明する。
【0074】
1)の工程について
一の支持体101(又は他の支持体201)に、基板用組成物を塗布した後、乾燥及び必要に応じて硬化させて、前述の(1)〜(5)を全て満たす一の基板103(又は他の基板203)を形成する(
図3A〜B)。それにより、厚さが薄いにも係わらず、後述する配向膜や透明電極を形成する際の熱による変形が少ない基板を得ることができる。
【0075】
一の支持体101(又は他の支持体201)は、一の基板103(又は他の基板203)を十分に支持可能な剛性を有するものであれば、特に制限されない。そのような支持体の例には、アルカリ金属酸化物(Na
2O、K
2O)を含むアルカリガラス板や無アルカリガラス板等のガラス板;Siウェハ;剛性の高いポリマーフィルム等が含まれる。
【0076】
一の支持体101(又は他の支持体201)の厚さは、通常、0.05〜3mm、好ましくは0.1〜1mm、より好ましくは0.1〜0.7mmである。支持体の厚さが厚いほど、例えば配向膜や透明電極を形成する際の熱による一の基板103(又は他の基板203)の変形を抑制することができ、支持体の厚さを上記範囲内とすることで、基板の変形を抑制しつつ、ハンドリング性を高めうる。
【0077】
前述の(1)〜(5)を全て満たす一の基板103(又は他の基板203)が前述のポリイミドを含む場合、基板用組成物としては、特定の構造を有するジアミン成分と、特定の構造を有するテトラカルボン酸二無水物成分とを、溶媒中で重合反応させたアミド酸含有ワニスを用いることができる。そして、当該アミド酸含有ワニスを、一の支持体101(又は他の支持体201)上に塗布した後、イミド化して、一の基板103(又は他の基板203)を形成する。
【0078】
(ポリアミド酸ワニスの調製)
まず、所定の構造を有するジアミンと、特定の構造を有するテトラカルボン酸二無水物とを、溶媒中で重合反応させてアミド酸含有ワニスを得る。
【0079】
ジアミン及びテトラカルボン酸二無水物は、調製するポリイミドの構造に合わせて適宜選択される。例えば、前述の一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミドを含む基板を作製する場合、脂環式炭化水素構造を有するジアミン又は直鎖脂肪族ジアミンと、芳香環を含むテトラカルボン酸二無水物とを反応させて、ポリアミド酸を調製する。ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物は、それぞれ一種のみ用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
脂環式炭化水素構造を有するジアミンの例には、シクロブタンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン〕、ジアミノビシクロヘプタン、ジアミノメチルビシクロヘプタン(ノルボルナンジアミンなどのノルボルナンジアミン類を含む)、ジアミノオキシビシクロヘプタン、ジアミノメチルオキシビシクロヘプタン(オキサノルボルナンジアミンを含む)、イソホロンジアミン、ジアミノトリシクロデカン、ジアミノメチルトリシクロデカン、ビス(アミノシクロへキシル)メタン、ビス(アミノシクロヘキシル)イソプロピリデン等が含まれる。
【0081】
直鎖状脂肪族ジアミンの例には、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン等が含まれる。
【0082】
芳香環を含むテトラカルボン酸二無水物の例には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、2,2−ビス[(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、ナフタレン2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(9−フルオレニリデン)ビス無水フタル酸等が含まれる。
【0083】
前述の一般式(2)で表される構造単位を有するポリイミドを含む基板を作製する場合、芳香環を含むジアミンと、脂環式炭化水素構造を含むテトラカルボン酸二無水物とを反応させて、ポリアミド酸を調製する。ジアミン及びテトラカルボン酸二無水物は、それぞれ一種のみ用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
芳香環を含むジアミンの例には、ベンゼン環を1つ有するジアミンである、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン;ベンゼン環を2つ有するジアミンである、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、1,5−ジアミノナフタレン、;ベンゼン環を3つ有するジアミンである、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン;ベンゼン環を4つ有するジアミンである、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等が含まれる。
【0085】
脂環式炭化水素構造を含むテトラカルボン酸二無水物の例には、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2.]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5−トリカルボン酸−6−酢酸二無水物,1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロ−1,4,5,8−ジメタノナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−テトラリン−1,2−ジカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物等が含まれる。
【0086】
そして、当該アミド酸含有ワニスを、一の支持体101(又は他の支持体201)上に塗布した後、乾燥及び加熱してイミド化(イミド閉環)させる。これにより、一の支持体101上に塗布形成された一の基板103(又は他の支持体201上に塗布形成された他の基板203)を得ることができる。
【0087】
ポリアミド酸ワニスは、例えば、上記ジアミンと、テトラカルボン酸二無水物とを、非プロトン性極性溶媒又は水溶性アルコール系溶媒中で重合することにより得られる。非プロトン性極性溶媒の例には、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルフォスフォラアミド等;エーテル系化合物である、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-(メトキシメトキシ)エトキシエタノール、2-イソプロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどが含まれる。水溶性アルコール系溶媒の例には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、ジアセトンアルコール等が含まれる。
【0088】
これらの溶剤は1種単独で、若しくは2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンもしくはこれらの組み合わせが好ましい。
【0089】
ポリアミド酸ワニスの調製手順に、特に制限はない。例えば、撹拌機及び窒素導入管を備えた容器を用意する。窒素置換した容器内に前述の溶媒を投入し、固形分濃度が30重量%程度となるようにジアミンを加えて攪拌し、溶解させる。この溶液に、ジアミンに対して、モル比率が1程度となるようにテトラカルボン酸二無水物を加え、温度を調整して1〜50時間程度攪拌する。これにより、ポリアミド酸が溶媒に分散されたポリアミド酸ワニスを得ることができる。
【0090】
(ポリアミド酸ワニスの塗布及びイミド化)
得られたポリアミド酸ワニスを、前述の一の支持体101(又は他の支持体201)上に塗布した後、加熱し、ワニスに含まれるポリアミド酸をイミド化させる。
【0091】
ポリアミド酸ワニスの塗布方法は、特に制限されず、所望の塗布厚や樹脂組成物の粘度等に応じて、公知の塗布方法を適宜選択して使用できる。具体的には、ドクターブレードナイフコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ロータリーコーター、フローコーター、ダイコーター、バーコーター等の塗布方法、スピンコート、スプレ−コート、ディップコート等の塗布方法、スクリーン印刷やグラビア印刷等に代表される印刷技術を応用することもできる。
【0092】
ポリアミド酸のイミド化は、通常の加熱乾燥炉で行うことができる。乾燥炉の雰囲気は、空気、又はイナートガス(窒素、アルゴン)等でありうるが、酸素濃度が5%以下の不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。環境雰囲気中の酸素濃度を低くすることで、得られる一の基板103(又は他の基板203)の透明性を高めることができる。また、得られる一の基板103(又は他の基板203)の耐折性や引張強度も高まりやすい。不活性ガスの環境雰囲気における酸素濃度は、0.1%以下であることがより好ましい。
【0093】
イミド化時の平均昇温速度は、50〜300℃の範囲で、例えば0.25〜50℃/分ことができ、好ましくは1〜10℃/分、より好ましくは2〜5℃/分である。昇温速度は、一定としてもよく、2段階以上に変えてもよい。2段階以上に変える場合は、各昇温速度を0.25〜50℃/分とすることが好ましい。得られる一の基板103(又は他の基板203)の透明性が高くなり、さらに、引張強度や耐折性も高くなる。さらに、昇温は、連続的でも段階的(逐次的)でもよいが、連続的とすることが、得られる一の基板103(又は他の基板203)の外観不良やイミド化反応に伴う白化を抑制できる点から好ましい。尚、塗膜は必ずしも300℃まで加熱する必要はない。昇温終了温度が300℃未満である場合、150℃からその昇温終了温度までの範囲における平均昇温速度を0.25〜50℃/分とすることが好ましい。
【0094】
昇温終了(到達最高)温度は、通常、高めの温度、具体的にはポリイミドのガラス転移温度Tgより10℃以上高い温度とすることが好ましい。昇温終了(到達最高)温度を当該温度とすることで、塗膜に含まれる残存溶剤を除去しやすくなる。また、得られる一の基板103(又は他の基板203)の耐折性が高くなる。昇温終了(到達最高)温度は、例えば200〜300℃が好ましく、より好ましくは250〜290℃であり、さらに好ましくは270〜290℃である。昇温終了後の加熱時間は、例えば1秒〜10時間程度とすることができる。
【0095】
このようにして得られた一の基板103及び他の基板203の一方に画素電極(不図示)を、他方に対向電極(不図示)をさらに形成するか;又は、一方のみに画素電極と対向電極(不図示)をさらに形成する。画素電極や対向電極の形成は、例えば蒸着法やスパッタリング法等で形成することができる。
【0096】
さらに、一の基板103及び他の基板203に、配向膜用組成物の塗膜をそれぞれ形成した後、ラビング処理を施して、配向膜105又は205を形成する(
図3C参照)。具体的には、配向膜用組成物としては、通常、ポリイミドを溶媒に溶解させた溶液を用いる。従って、配向膜用組成物を塗布及び乾燥させた後、約200℃の高温でアニール処理して塗膜を形成する。その後、得られた塗膜の表面をラビング処理する。ラビング処理は、例えばラビングローラ106を用いて行うことができる。
【0097】
一の基板103及び他の基板203は、前述の通り、良好な耐熱性を有する。従って、厚さが薄いにも係わらず、配向膜形成時のアニール処理の熱を受けても変形しにくい。
【0098】
2)の工程について
一の支持体101上に塗布形成された一の基板103と、他の支持体201上に塗布形成された他の基板203と、それらの間に配置された液晶組成物からなる層301とを有する積層体400を得る(
図3D〜E)。液晶組成物からなる層301は、枠状のシール部材303(後述するシールパターンの硬化物)によって封止されている。
【0099】
積層体400を製造する方法は、特に制限されないが、液晶注入工法と液晶滴下工法のいずれであってもよい。
【0100】
液晶注入工法による積層体400の製造方法は、例えば2A−1)一の基板103に、シール剤を枠状に付与して、開口部を有するシールパターンを形成する工程、2A−2)シールパターンが未硬化の状態において一の基板103と他の基板203とをシールパターンを介して重ね合わせる工程、2A−3)シールパターンを硬化させる工程、及び2A−4)基板間のシールパターンで囲まれた領域内に液晶組成物を注入した後、封止口を塞ぐ工程を含む。
【0101】
2A−3)の工程では、加熱による硬化を行ってもよい。それにより、短時間で十分にシール剤を硬化させ、一の基板103と他の基板203とを接着させることができる。
【0102】
液晶滴下工法による積層体400の製造方法は、例えば2B−1)一の基板103に、シール剤を枠状に付与してシールパターンを形成する工程、2B−2)シールパターンが未硬化の状態において、一の基板103のシールパターンで囲まれた領域内又はシールパターンで囲まれた領域に対向する他の基板203の領域に、液晶組成物を滴下する工程、2B−3)一の基板103と他の基板203とをシールパターンを介して重ね合わせる工程、及び2B−4)シールパターンを硬化させる工程を含む。
【0103】
2B−2)の工程において、シールパターンが未硬化の状態とは、シール剤の硬化反応がゲル化点までは進行していない状態を意味する。このため、2B−2)の工程では、シール剤の液晶への溶解を抑制するために、シールパターンを光照射又は加熱して半硬化させてもよい。
【0104】
2B−4)の工程では、光照射による硬化のみを行ってもよいが、光照射による硬化を行った後、加熱による硬化を行ってもよい。光照射による硬化を行うことで、シール剤を短時間で硬化させることができるので、液晶への溶解を抑制できる。光照射による硬化と加熱による硬化とを組み合わせることで、光照射による硬化のみの場合と比べて光による液晶層へのダメージを少なくすることができる。
【0105】
照射する光は、波長350〜450nmの光であることが好ましい。上記波長の光は、液晶材料や駆動電極に与えるダメージが比較的少ないからである。光の照射は、紫外線や可視光を発する公知の光源を使用できる。可視光を照射する場合、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、蛍光灯等を使用できる。
【0106】
用いられる液晶組成物は、液晶材料と、光硬化性化合物と、光重合開始剤とを含む。液晶材料は、前述の液晶層に含まれる液晶材料と同様であり;光硬化性化合物は、前述の接合スペーサを得るための光硬化性化合物と同様である。
【0107】
液晶組成物における光硬化性化合物の含有量は、液晶組成物の全質量に対して10〜35質量%、好ましくは15〜30質量%としうる。光硬化性化合物の含有量が10質量%以上であると、光照射により短時間で十分な接着強度を有する接合スペーサが得られやすく、35質量%以下であると、表示領域に残存する光硬化性化合物の硬化に伴って駆動電圧が上昇することによる表示特性の低下を抑制しやすい。
【0108】
光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。光ラジカル重合開始剤の例には、開裂型ラジカル開始剤及び水素引き抜き型ラジカル開始剤が含まれる。
【0109】
開裂型ラジカル開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンを含むアセトフェノン系の開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルを含むベンゾイン系の開始剤、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドを含むアシルホスフィンオキシド系の開始剤、ベンジル並びにメチルフェニルグリオキシエステルが含まれる。
【0110】
水素引き抜き型ラジカル開始剤の例には、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン及び3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンを含むベンゾフェノン系の開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン及び2,4−ジクロロチオキサントンを含むチオキサントン系の開始剤、ミヒラーケトン及び4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンを含むアミノベンゾフェノン系の開始剤、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン並びにカンファーキノンが含まれる。
【0111】
液晶組成物における光重合開始剤の含有量は、光硬化性化合物の全質量に対して0.1〜30質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましく、1〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0112】
3)の工程について
積層体400から他の支持体201を剥がし取る(
図3E)。具体的には、積層体400から他の支持体201を剥がし取ってもよいし、他の支持体201からそれ以外の積層体部分を剥がし取ってもよい。剥がし取る方法は、特に制限されないが、剥離後に得られる積層体を傷付けずに剥離しやすい点から、レーザー・リフト・オフ法を好ましく採用することができる。レーザー・リフト・オフ法では、パルスレーザーを照射することで、例えばポリイミドを含む基板と、ガラス板等の支持体との間の化学結合を切断し、剥離が可能となる。
【0113】
4)の工程について
他の支持体201を剥がし取って得られる積層体400の少なくとも一方の面から光をパターン状に照射して、液晶組成物に含まれる光硬化性化合物を硬化させて、接合スペーサ305を形成する(
図3F〜G)。
【0114】
パターン状に光を照射する方法は、特に制限されないが、例えば他の基板203上に、パターン状に設けられたフォトマスク307を付与し、その上から光を照射する方法が挙げられる。例えば、格子状のスリットが設けられたフォトマスク307を介して光を照射することで、格子状に光を照射することができるので、格子状の接合スペーサ305を形成することができる。そして、接合スペーサ305によって区画された液晶組成物からなる層301は、液晶層となる。
【0115】
照射する光は、前述の2B−4)の工程と同様に、波長350〜450nmの光であることが好ましい。上記波長の光は、液晶材料や駆動電極に与えるダメージが比較的少ないからである。光の照射は、紫外線や可視光を発する公知の光源を使用できる。
【0116】
光照射強度及び光照射時間は、光硬化性化合物を十分に硬化させうる程度であればよい。光照射強度は、例えば0.5〜10mW/cm
2、好ましくは1mW/cm
2である。光照射時間は、例えば300〜3600秒、好ましくは1800〜3600秒である。
【0117】
5)の工程について
得られた積層体400から一の支持体101を剥がし取り、液晶素子500を得る(
図3G〜H)。積層体400から一の支持体101を剥がし取るとき、積層体の残部は大きく湾曲しやすい(折り曲がりやすい)。しかしながら、本発明では、接合スペーサ305が少なくとも一方の基板に接着又は接合しているため、湾曲した積層体の残部において、隣り合う接合スペーサ305同士の間の基板103及び203の変形が少なく、液晶材料の流動も抑制されうる。それにより、一の基板103と他の基板203との間隔が一定に保たれやすく、セルギャップムラを抑制できる。尚、
図3Hにおいて、一の基板103と他の基板203とが対向していない端部は、不要部分であり、最終的には切り落とされる。
【0118】
また、得られる液晶素子500は、使用時に大きく折り曲げられても、接合スペーサ305が十分に接着又は接合している。それにより、液晶素子500は、使用時に大きく折り曲げられても、セルギャップムラを抑制できるので、表示ムラが生じるのを抑制できる。
【0119】
尚、
図3A〜Hでは、一の基板と他の基板とを、液晶組成物からなる層を介して積層した後、当該液晶組成物に含まれる硬化性化合物を硬化させて接合スペーサを形成する例を示したが、これに限定されず、前述の通り、一の基板に接合スペーサを形成した後、他の基板を、液晶組成物からなる層を介して積層してもよい。この方法においては、液晶組成物は、液晶材料を含んでいればよく、硬化性化合物や重合開始剤は含まない。また、接合スペーサを形成するためのスペーサ形成用組成物は、硬化性化合物と、重合開始剤とを含む。当該硬化性化合物としては、前述した接合スペーサを得るための光硬化性化合物や熱硬化性化合物と同様のものを使用することができる。スペーサ形成用組成物の市販品の例には、PR200(大阪有機化学社製)等が含まれる。
【実施例】
【0120】
以下において、実施例を参照して本発明を説明する。実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
【0121】
1.基板の作製・評価
(基板の作製)
温度計、攪拌機、窒素導入管、滴下ロートを備えた300mLの5つ口セパラブルフラスコに、1,4−ジアミノシクロヘキサン(CHDA)5.71g(0.05モル)、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(14BAC)7.11g(0.05モル)、及びN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)229.7gを加えて撹拌した。
ここに、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物(ODPA)30.9g(0.1モル)を装入し、反応容器を120℃に保持したオイルバス中に5分間浴し、速やかに再溶解していく様子を確認した。オイルバスを外してから、さらに18時間室温で攪拌し、ポリアミド酸を含むポリアミド酸ワニスを得た。
当該ポリアミド酸ワニスを、洗浄した、厚さ0.7mmのガラス板(支持体)の上に滴下し、スピンコートした。スピンコートの条件は、2500rpm、30秒間とした。その後、当該ポリアミド酸ワニスを塗布したガラス板をイナートオーブンにて、昇温速度2℃/分で270℃まで昇温させ、270℃で2時間焼成した。これにより、ガラス板上に、厚さ10μmのポリイミド基板を形成した。
【0122】
(基板の評価)
(1)L
*a
*b
*表色系におけるb
*値
得られたポリイミド基板のL
*a
*b
*表色系におけるb
*値を、スガ試験機製Color Cute i型を用いて、透過モード、測光方式8°diにて白色標準板による校正を行った後、測定した。
【0123】
(2)Rth
得られたポリイミド基板の面内のX軸方向の屈折率nx、それと直交するY軸方向の屈折率ny、及びZ軸方向(厚さ方向)の屈折率nzを、大塚電子社製 光学材料検査装置(型式RETS−100)にて、室温(20〜25℃)、波長550nmの光で測定した。そして、屈折率nx、ny、nzとポリイミド基板の厚さ(d)から、以下の式に基づき、厚さ方向の位相差(Rth)を算出した。
Rth(nm)=[(nx+ny)/2−nz]×d
【0124】
(3)MIT耐折性
得られたポリイミド基板を、長さ約120mm×幅15mmの形状にカットし、試験片とした。この試験片を下記条件で折り曲げたときの、破断するまでの回数を測定した。
具体的には、MIT耐折度試験機(安田精機製作所製、307型)を用い、上記試験片の一端を固定した上で、他端を把持して試験片を往復折り曲げし、試験片が破断するまでの折り曲げ回数を測定した。測定条件は以下の通りとした。
(測定条件)
曲げ半径:R=0.38mm
荷重:0.5kgf
折り曲げ角度:270°(左右135°)
折り曲げ速度:175回/分
試験回数:n=3
尚、試験時には、試験片の一方側への折り曲げを1回と数えた。試験は3回行い、3回の試験結果の算術平均値について有効数値2ケタで四捨五入した値を耐折性の測定結果とした。また、耐折性の測定結果の上限値は、100万回とした。
【0125】
(4)ガラス転移温度(Tg)
得られたポリイミド基板を、幅4mm、長さ20mmに切り出して、試験片とした。この試験片のガラス転移温度を、島津製作所社製 熱分析装置(TMA−50)を用いて、
25〜350℃の温度範囲で、昇温速度5℃/分、荷重14g/mm
2、引張りモードの測定条件で、TMA測定し、得られた温度−試験片伸び曲線の変曲点から、ガラス転移温度(Tg)を求めた。
【0126】
(5)最大透過率
得られたポリイミド基板の波長365±5nmの光線透過率を、島津製作所社製 分光光度計(MultiSpec−1500)で測定した。そして、厚さ10μmにおける波長365±5nmにおける最大透過率を算出した。
【0127】
得られたポリイミド基板の物性を、表1に示す。
【表1】
【0128】
2.液晶素子の作製・評価
[実施例1]
(ポリイミド基板の形成)
厚さ0.7mmのガラス板(支持板)を2枚準備した。これらのガラス板上に、前述の(基板の作製)と同様にして、厚さ10μmのポリイミド基板をそれぞれ形成した(前述の1)の工程)。
【0129】
得られた各ポリイミド基板上に、配向膜用ポリイミド溶液AL1254(JSR社製)を塗布及び乾燥させた後、200℃で熱硬化させて、厚さ0.1μmの塗膜をさらに形成した。得られた塗膜の表面にラビング処理をさらに施して、配向膜を形成した。ラビング処理は、上下のポリイミド基板上の塗膜のラビング方向が互いに直交するように行い、注入した液晶分子がねじれ配向となるように行った。
【0130】
(積層体の形成)
ポリイミド基板と配向膜が積層された2枚のガラス板のうち、一方のガラス板の配向膜上に、光硬化型シール剤3035B(スリーボンド社製)を枠状(枠状内の領域のサイズは2.5cm×2.5cm)に塗布した後、乾燥させた。次いで、枠状に形成されたシール剤の内側に、液晶材料としてTD1016L(JNC社製)、光硬化性化合物としてUCL−011(DIC社製、紫外線硬化型液晶性モノマー)、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(DIC社製)を含む液晶組成物を滴下した後、液晶組成物からなる層を形成した。液晶組成物における紫外線硬化型液晶性モノマーの含有量は30質量%であった。
そして、ポリイミド基板と配向膜とが積層された一方のガラス板と、ポリイミド基板と配向膜とが積層された他方のガラス板とを、当該一方のガラス板の配向膜と他方のガラス板の配向膜とが液晶組成物からなる層を介して対向するように貼り合わせた後、紫外線を100mW、300秒間照射してシール剤を硬化させて、積層体(一方のガラス板/一方のポリイミド基板/配向膜/液晶組成物からなる層/配向膜/他方のポリイミド基板/他方のガラス板の積層構造を有する積層体)を得た(前述の2)の工程)。積層体における液晶組成物からなる層の厚さは、5μmであった。
【0131】
得られた積層体から他方のガラス板を、レーザー・リフト・オフ法により剥がし取った(前述の3)の工程)。
【0132】
(接合スペーサの形成)
その後、露出した他方のポリイミド基板の表面に、フォトマスクを介して紫外光を格子状に照射し、光硬化性化合物であるUCL−011(DIC社製)を光硬化させた。紫外光の照射は、照射強度1mW/cm
2、照射時間3600秒とした。それにより、格子状で、且つ一方の基板上の配向膜と他方の基板の配向膜の両方に接着(接合)した接合スペーサを形成した(前述の4)の工程)。格子状の接合スペーサは、表示領域の長辺Aは100μm、短辺Cは100μm、接合スペーサの幅Bは10μm(表示領域の長辺A:接合スペーサの幅B=10:1)であった。
【0133】
(ガラス板の剥離)
接合スペーサが形成された積層体から、一方のガラス板をレーザー・リフト・オフ法により剥がし取り、液晶素子1を得た(前述の5)の工程)。
【0134】
[実施例2]
(ポリイミド基板の形成)
実施例1と同様にして、ポリイミド基板と配向膜がこの順に積層された2枚のガラス板を準備した。
【0135】
(接合スペーサの形成)
ポリイミド基板と配向膜とがこの順に積層された2枚のガラス板のうち、一方のガラス板上に形成された一方のポリイミド基板の配向膜上に、熱硬化性化合物としてPR200(大阪有機化学社製)からなるスペーサ用組成物を塗布し、フォトマスクを介して紫外線を60mW、1分間照射した後、アルカリ水溶液で現像した。その後、150℃で30分焼成して、格子状で、且つ一方のポリイミド基板と接合した接合スペーサを形成した。格子状の接合スペーサは、表示領域の長辺Aは100μm、短辺Cは100μm、接合スペーサの幅Bは10μm(表示領域の長辺A:接合スペーサの幅B=10:1)であった。
【0136】
(積層体の形成)
スペーサ用組成物を付与した配向膜の周縁部に、光硬化型シール剤3035B(スリーボンド社製)を枠状に塗布した後、乾燥させた。そして、枠状に形成されたシール剤(枠状内の領域のサイズは2.5cm×2.5cm)の内側に、液晶材料としてTD1016L(JNC社製)を含む液晶組成物を滴下した後、液晶組成物からなる層を形成した。
そして、ポリイミド基板と配向膜と液晶組成物からなる層とが積層された一方のガラス板と、ポリイミド基板と配向膜とが積層された他方のガラス板とを、当該一方のガラス板の配向膜と他方のガラス板の配向膜とが液晶組成物からなる層を介して対向するように貼り合わせた後、紫外線を100mW、300秒間照射してシール剤を硬化させて、積層体を得た。積層体における液晶層の厚さは、5μmであった。
【0137】
(ガラス板の剥離)
得られた積層体から、一方のガラス板と他方のガラス板を、それぞれレーザー・リフト・オフ法により剥がし取り、液晶素子2を得た。
【0138】
[比較例1]
(ポリイミド基板の形成)
実施例1と同様にして、ポリイミド基板と配向膜がこの順に積層された2枚のガラス板を準備した。
【0139】
(スペーサの形成)
ポリイミド基板と配向膜とがこの順に積層された2枚のガラス板のうち、一方のガラス板の配向膜上に、球状微粒子(積水化学工業社製ミクロパール、直径5μm)を、エアガンで直接、吹き付けてスペーサを形成した。吹き付け量は、0.3〜0.4mgとした。
【0140】
(積層体の形成)
スペーサを形成した配向膜の周縁部に、光硬化型シール剤3035B(スリーボンド社製)を枠状に塗布した後、乾燥させた。そして、枠状に形成されたシール剤(枠状内の領域のサイズは2.5cm×2.5cm)の内側に、液晶材料としてTD1016L(JNC社製)を含む液晶組成物を滴下した後、液晶組成物からなる層を形成した。
次いで、ポリイミド基板と配向膜と液晶組成物からなる層とが積層された一方のガラス板と、ポリイミド基板と配向膜とが積層された他方のガラス板とを、当該一方のガラス板の配向膜と他方のガラス板の配向膜とが液晶組成物からなる層を介して対向するように貼り合わせた後、紫外線を100mW、300秒間照射してシール剤を硬化させて、積層体を得た。積層体における液晶層の厚さは、5μmであった。
【0141】
(ガラス板の剥離)
得られた積層体から、一方のガラス板と他方のガラス板を、それぞれレーザー・リフト・オフ法により剥がし取り、液晶素子3を得た。
【0142】
得られた液晶素子1〜3を所定の条件で湾曲させたときの、液晶の配向の乱れに起因する表示ムラ(明るさムラ)の有無を、以下の方法で評価した。
【0143】
(表示ムラ)
得られた液晶素子を、フラットな状態から曲率半径Rが20mmとなる湾曲状態まで湾曲させる過程での表示ムラ、及び湾曲状態で固定したときの表示ムラ(明るさのムラ)を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:湾曲の過程(湾曲させていないフラットな状態から、液晶デバイスに力を加え、規定の湾曲半径Rになるまで押し続けている状態)でも、液晶の配向に乱れが生じず、明るさが変化せず、表示ムラは発生しなかった。
○:湾曲の過程で、液晶の配向に乱れが生じて明るさが変化し、表示ムラが発生した。その後、規定の湾曲半径Rの状態で固定すると、数秒間で液晶の乱れが落ち着き、表示ムラは確認されなかった。
×:湾曲の過程で、液晶の配向に乱れが生じて明るさが変化し、表示ムラが発生した。その後、規定の湾曲半径Rの状態で固定しても、液晶の配向に乱れが生じて明るさが変化し、表示ムラが発生した状態から変化しなかった。
【0144】
得られた結果を表2に示す。
【0145】
【表2】
【0146】
表2に示されるように、一方の基板と他方の基板の少なくとも一方に接合したスペーサを有する実施例1及び2の液晶素子は、湾曲過程及び湾曲状態で固定した状態のいずれにおいても表示ムラを抑制できることがわかる。
【0147】
特に、一方の基板と他方の基板の両方と接合したスペーサを有する実施例1の液晶素子は、湾曲過程又は湾曲状態を固定した状態のいずれにおいても、表示ムラを高度に抑制できることがわかる。
【0148】
これに対して、一方の基板と他方の基板のどちらにも接合していないパーティクルスペーサを有する比較例1の液晶素子は、湾曲過程及び湾曲状態で固定した状態のいずれにおいても表示ムラを抑制できないことがわかる。これは、湾曲時に、パーティクルスペーサが動いてしまうことから、液晶材料の流動が生じ(セルギャップムラが生じ)、液晶材料の配向ムラが生じるためと考えられる。
【0149】
[実施例3〜6]
実施例1の(接合スペーサの形成)において、格子状の接合スペーサの表示領域の長辺A、短辺C、接合スペーサの幅Bを、それぞれ表3に示されるように変更した以外は実施例1と同様にして液晶素子4〜7を得た。
【0150】
[実施例7〜10]
接合スペーサの形状を柱状(ドット状)に変更し、且つ表示領域の長辺A、短辺C、接合スペーサの幅Bを、それぞれ表4に示されるように変更した以外は実施例1と同様にして液晶素子8〜11を得た。
【0151】
そして、得られた液晶素子4〜11を湾曲させたときの液晶の配向の乱れに起因する表示ムラ(明るさのムラ)の有無を、実施例1と同様にして評価した。また、液晶素子4〜7については、さらに駆動電圧を、以下の方法で評価した。
【0152】
(駆動電圧)
得られた液晶素子を、吸収軸が直交するように配置した二枚の偏光板の間に配置した。そして、液晶素子に1kHzの交流電圧(矩形波)を印加し、透過光強度の変化を測定した。二枚の偏光板に挟まれた液晶素子は、印加電圧が0Vの時、透過率が最大となり、印加電圧の増加に伴い、透過率が減少する。透過率が最小となる電圧を駆動電圧と定義した。
○:駆動電圧が10V以下
△:駆動電圧が10V超20V以下
×:駆動電圧が20V以上
【0153】
実施例3〜6の結果を表3に示し;実施例7〜10の結果を表4に示す。
【0154】
【表3】
【表4】
【0155】
表3に示されるように、接合スペーサが格子状で、且つ液晶組成物中の光硬化性化合物の濃度が30質量%である場合、湾曲時の表示ムラについては、A:Bの比率に寄らず、曲率半径が20mm以上、20mm未満のいずれにおいても、高度に抑制できることがわかる。
一方で、駆動電圧については、A:Bの比率を6:1と50:1の間、例えば8:1〜20:1とすることで、駆動電圧の上昇を特に抑制できることがわかる。これは、以下の理由によると考えられる。即ち、Aの比率が一定以上であると、接合スペーサによる束縛が大きすぎないので、電圧切り替え時に液晶分子が動きやすく、駆動電圧の上昇が高度に抑制されやすい。また、Aの比率が一定以下であると、表示領域中に残存する未硬化の光硬化性化合物の量が多すぎないので、表示領域に紫外線が当たった際に、光硬化性化合物の硬化に伴う高分子ネットワークの形成を高度に抑制でき、駆動電圧の上昇が高度に抑制されやすい。
【0156】
表4に示されるように、接合スペーサが柱状(ドット状)で、且つ液晶組成物中の光硬化性化合物の濃度が30質量%である場合、A:Bの比率を50以下:1、例えば4:1〜20:1とすることで、湾曲時の表示ムラを特に抑制できることがわかる。これは、柱状の接合スペーサにおいては、A:Bの比率が4:1〜20:1であると、接合スペーサと基板との接着強度が十分に得られやすく、湾曲時のセルギャップムラが高度に低減されるからであると考えられる。