(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態1]
図1は、水素化マグネシウム製造装置10の構成を説明する説明図である。水素化マグネシウム製造装置10は、筒状の生成炉20と、生成炉20の第1端に連結した第1室21と、生成炉20の第2端に連結した第2室22とを有する。
【0011】
生成炉20は、第1端側が第2端側より高くなるように、傾斜した状態で設置されている。生成炉20の第1端側の外周に、水素供給筒24が取り付けられている。生成炉20の第2端側の外周に、水素排出筒25が取り付けられている。後述するように、生成炉20の外周と水素供給筒24との間、および、生成炉20の外周と水素排出筒25との間には、水素が流れる流路が形成されている。
【0012】
水素排出筒25と水素供給筒24とは、水素ポンプ578を介して接続されている。さらに水素供給筒24に第3バルブ563を介して第3水素タンク613が接続されている。生成炉20に、ヒータ58および冷却装置54が取り付けられている。
【0013】
第1室21は、生成炉20に近い側から順に昇圧室211、加熱室212、第1置換室213および収容室214を有する。生成炉20と昇圧室211との間に、第1気密扉551が設けられている。昇圧室211と加熱室212との間に、第3気密扉553が設けられている。加熱室212と第1置換室213との間に、第4気密扉554が設けられている。第1置換室213と収容室214との間に、第5気密扉555が設けられている。
【0014】
第1置換室213に、第1バルブ561を介して第1水素タンク611が、アルゴンバルブ564を介してアルゴンガスタンク621がそれぞれ接続されている。さらに第1置換室213に第1吸引ポンプ571が接続されている。
【0015】
第1バルブ561は、加圧された水素を送出する水素送出装置または水素放出管に接続されており、水素を放出するバルブであっても良い。第1水素タンク611を使用する代わりに、生成炉20から回収した水素を精製した後に、第1バルブ561から送出する方式でも良い。
【0016】
加熱室212に、ヒータ58が取り付けられている。昇圧室211に、第2バルブ562を介して第2水素タンク612が接続されている。
【0017】
第2室22は、生成炉20に近い側から順に冷却室221、減圧室222、第2置換室223および払出室224を有する。生成炉20と冷却室221との間に、第2気密扉552が設けられている。冷却室221と減圧室222との間に第6気密扉556が設けられている。減圧室222と第2置換室223との間に、第7気密扉557が設けられている。第2置換室223と払出室224との間に、第8気密扉558が設けられている。
【0018】
冷却室221に、冷却装置54が取り付けられている。減圧室222に、第3吸引ポンプ573が接続されている。第2置換室223に、空気ポンプ577および第2吸引ポンプ572が接続されている。
【0019】
昇圧室211に設けられた第1気密扉551と第3気密扉553とは、一方が開放している間は他方は閉鎖され、同時には開放されない。加熱室212に設けられた第3気密扉553と第4気密扉554とは、一方が開放している間は他方は閉鎖され、同時には開放されない。第1置換室213に設けられた第4気密扉554と第5気密扉555とは、一方が開放している間は他方は閉鎖され、同時には開放されない。
【0020】
冷却室221に設けられた第2気密扉552と第6気密扉556とは、一方が開放している間は他方は閉鎖され、同時には開放されない。減圧室222に設けられた第6気密扉556と第7気密扉557とは、一方が開放している間は他方は閉鎖され、同時には開放されない。第2置換室223に設けられた第7気密扉557と第8気密扉558とは、一方が開放している間は他方は閉鎖され、同時には開放されない。
【0021】
なお、第1室21を構成する昇圧室211、加熱室212、第1置換室213および収容室214は、略水平に配置されている。たとえば収容室214の入り口に、昇降機が設置されていてもよい。同様に第2室22を構成する冷却室221、減圧室222、第2置換室223および払出室224は略水平に配置されている。
【0022】
すなわち、
図1においては、生成炉20の部分は水素化マグネシウム製造装置10を側面視した図であり、それ以外の部分は水素化マグネシウム製造装置10を平面視した図である。
【0023】
以上の構成により、生成炉20内の温度および圧力を安定させるとともに、生成炉20内が酸素および異物等により汚染されることを防止する。これにより、水素化マグネシウム製造装置10を長時間安定して稼働させられる。
【0024】
水素化マグネシウム製造装置10の各部には、圧力計51(
図6参照)、温度計52(
図6参照)および流量計53(
図6参照)が取り付けられている。
【0025】
水素化マグネシウム製造工程の概要を説明する。本実施の形態で使用するマグネシウムは、マグネシウムのインゴットから薄片を削り取り、所定の形状に圧縮成形して製造したマグネシウム圧縮体16である。マグネシウム圧縮体16は、多孔質構造体であり、実質的な表面積が大きくなっている。
【0026】
マグネシウム圧縮体16は、乾燥空気と共に気密に封止した容器で輸送されて、収容室214に投入される。マグネシウム圧縮体16を投入する際には、収容室214は大気に開放される。すなわち、収容室214内では、マグネシウム圧縮体16は大気雰囲気状態である。
【0027】
なお、収容室214にマグネシウム圧縮体16を製造する製造プラントが接続されていても良い。製造されたマグネシウム圧縮体16を、収容室214に直接投入できる。
【0028】
マグネシウム圧縮体16は、収容室214から第1置換室213に搬送される。第1置換室内で、マグネシウム圧縮体16は不活性ガス雰囲気を介して水素ガス雰囲気に置換される。以下の説明では、不活性ガスにアルゴンを使用する場合を例にして説明する。
【0029】
具体的には、第1吸引ポンプ571が動作して、第1置換室213内を減圧する。アルゴンバルブ564が動作して、第1置換室213内にアルゴンを充満させる。第1吸引ポンプ571およびアルゴンバルブ564の動作を数回繰り返すことにより、第1置換室213内がアルゴン雰囲気になる。
【0030】
その後、第1吸引ポンプ571が動作して、第1置換室213内を減圧する。第1バルブ561が動作して、第1置換室213内に水素を充満させる。第1吸引ポンプ571および第1バルブ561の動作を数回繰り返すことにより、第1置換室213内が水素雰囲気になる。
【0031】
マグネシウム圧縮体16は、第1置換室213から加熱室212に搬送される。マグネシウム圧縮体16は、加熱室212内で加熱される。マグネシウム圧縮体16は、加熱室212から昇圧室211に搬送される。マグネシウム圧縮体16周囲の水素の圧力は、昇圧室211内で昇圧する。以上によりマグネシウム圧縮体16周囲の環境は、生成炉20内部の環境と一致する。
【0032】
マグネシウム圧縮体16は、昇圧室211から生成炉20に搬送される。マグネシウム圧縮物は、所定の反応時間の間に生成炉20の第1端から第2端に移動する。生成炉20内で(1)式に示す化学反応によりマグネシウムと水素とが化合し、マグネシウム圧縮物が水素化マグネシウム構造体17に変化する。
Mg+H
2 → MgH
2 ‥‥‥ (1)
【0033】
前述の通り、マグネシウム圧縮体16は多孔質構造体であるため、内部まで水素が迅速に侵入して、(1)式の反応が生じる。マグネシウム圧縮体16の寸法および圧縮率は、所定の反応時間内にマグネシウム圧縮体16全体で(1)式の反応が完了するように選択される。
【0034】
水素化マグネシウム構造体17は、マグネシウム圧縮体16と同様の多孔質構造体である。水素化マグネシウム構造体17は、冷却室221を介して減圧室222に搬送されて、常温常圧の状態になる。その後、水素化マグネシウム構造体17は減圧室222から第2置換室223に搬送される。第2置換室223内の水素が、空気に置換される。水素化マグネシウム構造体17は、払出室224に搬送される。その後、水素化マグネシウム構造体17が払出室224から取り出される。
【0035】
なお、第2置換室223では、まず水素をアルゴン等の不活性ガスに置換した後に、アルゴンを大気に置換しても良い。そのようにする場合には、第2置換室223には不活性ガスを供給するタンクまたは不活性ガス製造装置が接続される。
【0036】
水素化マグネシウムは安定な化合物であり、大気中で輸送および保管できる。なお、長期保存が必要である場合等には、第2置換室223内の水素をアルゴン等の不活性ガスに置換し、水素化マグネシウム構造体17を不活性ガスとともに容器に入れて輸送および保管しても良い。不活性ガス雰囲気中で保存することで、5年以上あるいは十数年程度の長期保管後であっても安定した品質を保つ水素化マグネシウム構造体17を提供できる。
【0037】
このような、不活性ガス雰囲気中での保存は、たとえば災害対策用の備蓄物資用の水素化マグネシウム構造体17に適している。開封後、すぐに加水分解反応容器に水素化マグネシウム構造体17を投入し、生成した水素を燃料電池に投入することにより、速やかな電源供給に寄与できる。なお、不活性ガスの代わりに乾燥空気を使用しても良い。不活性ガスを使用する場合よりも安価に、長期保存用の水素化マグネシウム構造体17を提供できる。
【0038】
生成炉20の内面、水素供給筒24の内面、水素排出筒25の内面およびマグネシウム収容皿等の、高温高圧の水素に触れる部分は、ステンレス鋼、銅またはアルミニウム等で覆うことが望ましい。このようにすることにより、水素による腐食および脆化等を防止できる。
【0039】
図2は、マグネシウム圧縮体16を収容するサブユニット33の構成を説明する説明図である。サブユニット33は、隙間を空けて積層された複数のマグネシウム収容皿31を含む。マグネシウム収容皿31は、底および底を囲む側面を有する平皿である。生成炉20内で、マグネシウム圧縮体16が水素に触れやすいため、化学反応が速やかに進行する。
【0040】
マグネシウム収容皿31は、マグネシウム圧縮体16が通過しない程度の小孔またはスリット等を多数有しても良い。マグネシウム圧縮体16がさらに水素に触れやすくなるため、(1)式の反応が効率良く進む。
【0041】
サブユニット33は、たとえば複数の棚板を有するラックに、マグネシウム収容皿31を収容したものである。サブユニット33は、スペーサを介してマグネシウム収容皿31を積層したものであっても良い。スペーサとマグネシウム収容皿31とが一体になっていても良い。
【0042】
本実施の形態の水素化マグネシウム製造装置10は、6個のサブユニット33を
図2の奥行方向に連結したユニット34(
図3参照)を、1つの処理単位に使用する。ユニット34を構成するサブユニット33は、機械的に連結されていても、機械的に連結されずに単に同時に搬送されるだけでも良い。
【0043】
それぞれのマグネシウム収容皿31に、マグネシウム圧縮体16が収容される。マグネシウム圧縮体16の収容は、収容室214内の内部で行われる。マグネシウム圧縮体16を収容済のサブユニット33またはユニット34が、収容室214に供給されても良い。
【0044】
図3は、生成炉20の第1端近傍における断面図である。
図1を使用して説明した通り、「生成炉20の第1端」は生成炉20の両端のうちの第1室21に連結した側を意味する。
図3は、水素ポンプ578から水素供給筒24に連結する配管の位置で生成炉20を切断した図を示す。
【0045】
図4は、生成炉20の第2端近傍における断面図である。
図1を使用して説明した通り、「生成炉20の第2端」は生成炉20の両端のうちの第2室22に連結した側を意味する。
図4は、水素排出筒25の中央部で生成炉20を切断した図を示す。
図5は、
図3におけるV−V線による生成炉20の断面図である。
【0046】
生成炉20は円筒状であり、第1端に第1気密扉551が、第2端に第2気密扉552がそれぞれ設けられている。生成炉20の第1端側の外周に、水素供給筒24が配置されている。水素供給筒24の両端と、生成炉20の外周との間には壁が設けられており、生成炉20の外周を囲む水素の流路が形成されている。
【0047】
同様に、生成炉20の第2端側の外周に、水素排出筒25が配置されている。水素排出筒25の両端と、生成炉20の外周との間には壁が設けられており、生成炉20の外周を囲む水素の流路が形成されている。
【0048】
生成炉20の下部に、移動路595が設けられている。移動路595の上に、複数のユニット34が一列に搭載されている。移動路595の上に配置されるユニット34の下面、または、移動路595の上面には、たとえば車輪、コロまたは摺動面が設けられているため、ユニット34は移動路595の上を滑らかに
図1中の左から右方向に移動できる。
【0049】
なお、移動路595はベルトコンベアであっても良い。移動路595にベルトコンベアを使用する場合には、生成炉20は水平に設置されていても良い。生成炉20は、角筒状または楕円筒状等の任意の形状であっても良い。
【0050】
図3に示すように、水素供給筒24の内側で生成炉20の側面に複数の送出口201が設けられている。送出口201の位置は、マグネシウム収容皿31同士の隙間に対応している。
図4に示すように、水素排出筒25の内側で生成炉20の側面に複数の排出口202が設けられている。排出口202は、ほぼ均等に配置されている。
【0051】
水素ポンプ578から水素供給筒24に連結する配管、および、第3水素タンク613から水素供給等24に連結する配管から、水素供給筒24の内側に水素が供給される。送出口201を介してマグネシウム収容皿31同士の隙間に向けて水素が送出される。
【0052】
図5に矢印で示すように、生成炉20の第1端側から第2端側に向けて、水素が流れる。水素は、流れの途中でマグネシウムと反応して、水素化マグネシウムを生成する。反応しなかった水素は、排出口202を介して水素ポンプ578に吸引され、水素供給筒24に循環輸送される。水素化マグネシウムの生成により消費された分の水素は、第3水素タンク613から補充される。
【0053】
表1に、本実施の形態の水素化マグネシウム製造装置10の概略寸法を記載する。
図2に示すように、サブユニット33の寸法Aはサブユニット33の幅、寸法Bはサブユニット33の高さ、寸法Cは、サブユニット33の奥行をそれぞれ意味する。前述の通り、サブユニット33は、奥行方向に連結されてユニット34を形成する。
【0055】
No.1、No.2とも、年間28日のメンテナンス日を除き24時間連続稼働して、水素化マグネシウム構造体17を製造する。稼働中の生成炉20の内部には、No.1では5個のユニット34が、No.2では10個のユニット34が、それぞれ1列に並ぶ。
【0056】
マグネシウム圧縮体16の寸法、および、マグネシウム収容皿31の深さは、生成炉通過時間内に中心まで(1)式の反応が完了する程度の寸法に設定する。浅いマグネシウム収容皿31を隙間を空けて多数積層することにより、マグネシウム収容皿31に収容されたマグネシウム圧縮体16が水素と接触しやすくなる。そのため、(1)式の反応が進みやすくなる。
【0057】
そのほか、表1に示す寸法はいずれも例示であり、これに限定されるものではない。必要な生産量および設置面積に応じて、適切な寸法が選択される。
【0058】
図6は、水素化マグネシウム製造装置10の制御系の構成を説明する説明図である。制御装置40は、制御部41、主記憶装置42、補助記憶装置43、入力部44、出力部45、通信部46、入力I/F(Interface)47、出力I/F48およびバスを備える。本実施の形態の制御装置40には、水素化マグネシウム製造装置10専用の装置を利用しても良いし、汎用のパーソナルコンピュータ等を利用しても良い。
【0059】
制御部41は、本実施の形態に係るプログラムを実行する演算制御装置である。制御部41には、一または複数のCPU(Central Processing Unit)またはマルチコアCPU等が使用される。制御部41は、バスを介して制御装置40を構成するハードウェア各部と接続されている。
【0060】
主記憶装置42は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の記憶装置である。主記憶装置42には、制御部41が行う処理の途中で必要な情報および制御部41で実行中のプログラムが一時的に保存される。
【0061】
補助記憶装置43は、SRAM、フラッシュメモリ、ハードディスクまたは磁気テープ等の記憶装置である。補助記憶装置43には、制御部41に実行させるプログラムおよびプログラムの実行に必要な各種情報が保存される。
【0062】
入力部44は、たとえば、キーボード、タッチパネル、マウス等である。出力部45は、たとえば液晶表示装置または有機EL表示装置等である。出力部45は、警告灯またはスピーカー等をさらに備えても良い。通信部46は、ネットワークとの通信を行うインターフェイスである。
【0063】
入力I/F47は、水素化マグネシウム製造装置10の各所に取り付けられた圧力計51、温度計52および流量計53等の各種センサから、制御部41がデータを取得するインターフェイスである。
【0064】
出力I/F48は、水素化マグネシウム製造装置10の各所に取り付けられたバルブ56、ポンプ57、ヒータ58、冷却装置54、搬送部59および気密扉55等に対する制御信号を制御部41が送出するインターフェイスである。なお、出力I/F48と、バルブ56、ポンプ57、ヒータ58、冷却装置54、搬送部59および気密扉55との間には、図示を省略する駆動回路が設けられている。
【0065】
バルブ56には、第1バルブ561、第2バルブ562、第3バルブ563およびアルゴンバルブ564が含まれる。ポンプ57には、第1吸引ポンプ571、第2吸引ポンプ572、第3吸引ポンプ573、空気ポンプ577および水素ポンプ578が含まれる。
【0066】
搬送部59には移動路595と、後述する第1アクチュエータ591(
図10参照)および第2アクチュエータ592とが含まれる。気密扉55には、第1気密扉551、第2気密扉552、第3気密扉553、第4気密扉554、第5気密扉555、第6気密扉556、第7気密扉557および第8気密扉558が含まれる。
【0067】
制御部41は、入力I/F47を介して取得したデータに基づいて、バルブ56、ポンプ57、ヒータ58および冷却装置54を制御して、生成炉20内の温度および圧力を所定の値に保つ。所定の値は、たとえば水素の温度が摂氏400度程度、水素の圧力が0.9メガパスカル、すなわち9気圧程度である。なお、生成炉20内の温度および圧力は、制御部41とは独立したフィードバック回路等により制御されても良い。
【0068】
さらに制御部41は、気密扉55および搬送部59を制御して、ユニット34を収容室214から第1置換室213、加熱室212、昇圧室211、生成炉20、冷却室221および減圧室222、第2置換室223を介して、払出室224に搬送する。
【0069】
図7から
図12は、搬送部59の動作を説明する説明図である。なお、
図7から
図12では、生成炉20、第1室21、第2室22、気密扉55およびユニット34を模式的に図示し、水素タンク61、ポンプ57および配管等の図示を省略する。
【0070】
以下の説明は、表1のNo.2に示す、生成炉20内に10個のユニット34が1列に並ぶ状態を例にして説明する。No.2では、生成炉20内に10個のユニット34が1列に並ぶ。
図7から
図12において、U
10からU
22の添字はユニット34の番号を示す。ユニット34の番号を明示する必要がある場合には、たとえば「ユニット34U10」のように、符号の後ろにユニット番号を続けて記載する。
【0071】
図7は、生成炉20内で(1)式の反応が行われている場合の状態を示す。表1のNo.1では9.6時間、No.2では4.8時間この状態が維持される。昇圧室211、加熱室212および第2室22は空である。冷却室221の内部は、生成炉20の内部と同程度の温度および圧力に維持されている。
【0072】
収容室214内は大気中にある。制御部41は収容室214内で、ユニット34のマグネシウム収容皿31に、マグネシウム圧縮体16を収容する。
【0073】
生成炉20内で、ユニット34U10の処理が終了するよりも所定時間前に、制御部41は収容室214内のユニット34U20を第1置換室内に移動させる。第1置換室213は大気雰囲気になる。制御部41は、第1置換室213の雰囲気をアルゴン雰囲気を介して水素雰囲気に置換する。
【0074】
具体的には、制御部41は第5気密扉555を開放する。制御部41は、搬送部59を動作させてユニット34U20を収容室214から第1置換室213に移動させる。制御部41は第5気密扉555を閉鎖する。
【0075】
制御部41は、第1吸引ポンプ571を動作させて、第1置換室213内を減圧する。制御部41は、アルゴンバルブ564を動作させて、第1置換室213内にアルゴンを充満させる。制御部41は、第1吸引ポンプ571およびアルゴンバルブ564の動作を数回繰り返すことにより、第1置換室213内をアルゴン雰囲気にする。
【0076】
制御部41は、第1吸引ポンプ571を動作させて、第1置換室213内を減圧する。制御部41は、第1バルブ561を動作させて、第1置換室213内に水素を充満させる。制御部41は、第1吸引ポンプ571および第1バルブ561の動作を数回繰り返すことにより、第1置換室213内を水素雰囲気にする。第4気密扉554および第5気密扉555により、第1置換室213内は水素雰囲気に維持される。
【0077】
水素雰囲気への置換が完了した後、制御部41は第4気密扉554および搬送部59を動作させて、ユニット34U20を第1置換室213から加熱室212に移動させる。制御部41は、第4気密扉554を閉鎖する。制御部41は、ヒータ58を動作させて加熱室212の内部を生成炉20の内部と同程度の温度に加熱する。
【0078】
加熱の終了後、制御部41は第3気密扉553を開き、搬送部59を動作させて
図8に示すようにユニット34U20を昇圧室211に移動させる。制御部41は、第3気密扉553を閉鎖する。制御部41は、第2バルブ562を動作させて第2水素タンク612から昇圧室211に水素を送り込むことにより、昇圧室211の内部を生成炉20の内部と同程度の圧力に加圧する。以上により、昇圧室211の内部は、生成炉20の内部と同程度の温度および圧力に設定される。
【0079】
なお、第2水素タンク612と昇圧室211との間には、図示を省略するヒータが配置されており、昇圧室211には生成炉20の内部と同程度の温度に加熱した水素が供給される。昇圧室211に加熱用のヒータが設けられていても良い。
【0080】
図9に示すように、制御部41は第1気密扉551および第2気密扉552を開放し、生成炉20と、昇圧室211と、冷却室221とを連続した一つの空間にする。なお、第1気密扉551および第2気密扉552の開放により、生成炉20と、昇圧室211と、冷却室221とは、同一の温度および圧力になる。
【0081】
前述のとおり、第1気密扉551および第2気密扉552を開放する前に、昇圧室211および冷却室221の温度および圧力を生成炉20内と同一の状態にしておくことにより、第1気密扉551および第2気密扉552の開放による生成炉20内の状態の変化を防止できる。このようにすることにより、水素化マグネシウム構造体17の品質ばらつきを防止できる。
【0082】
図10に示すように、制御部41は搬送部59を構成する第1アクチュエータ591を動作させて、ユニット34U20を生成炉20の内部に押し込む。
図3を使用して説明した様に、生成炉20の内部でユニット34は移動路595に一列に搭載されている。
図1を使用して説明したように、生成炉20は、第1端側が第2端側より高くなるように、傾斜した状態で設置されている。以上により、ユニット34U20に押されて、生成炉20内のすべてのユニット34が冷却室221の方に滑らかに移動する。
【0083】
図11に示すように、制御部41は、第1気密扉551を閉鎖する。制御部41は、搬送部59を構成する第2アクチュエータ592を動作させて、ユニット34U10を冷却室221内に引き込む。
【0084】
第2アクチュエータ592を使用する代わりに、冷却室221の入口に下り坂になるような傾斜を設け、
図10に示す状態でユニット34U10が自動的に冷却室221内に滑り込むようにしても良い。
【0085】
図12に示すように、制御部41は第2気密扉552を閉鎖する。制御部41は冷却装置54を動作させてユニット34U10を冷却する。制御部41は、第6気密扉556を開放し、搬送部59を動作させてユニット34U10を減圧室222に移動させる。制御部41は第6気密扉556を閉鎖する。
【0086】
制御部41は、第3吸引ポンプ573を動作させて、減圧室222内を減圧する。制御部41は、第7気密扉557を開放し、搬送部59を動作させてユニット34U10を第2置換室223に移動させる。制御部41は第7気密扉557を閉鎖する。
【0087】
制御部41は、第2置換室223を水素雰囲気から空気雰囲気に置換する。具体的には、制御部41は第2吸引ポンプ572を動作させて第2置換室223内を減圧した後に、空気ポンプ577から第2置換室223内に空気を送り込む動作を数回繰り返す。
【0088】
制御部41は、第8気密扉558を開放し、搬送部59を動作させてユニット34U10を払出室224に移動させる。制御部41は第8気密扉558を閉鎖する。制御部41は、完成した水素化マグネシウム構造体17は払出室224から排出する。マグネシウム収容皿31は、次回の使用に備えて、第1室21側に搬送される。
【0089】
空気ポンプ577を使用する代わりにバルブ56を介して第2置換室223を外気に連通させても良い。第1水素タンク611、第2水素タンク612および第3水素タンク613のうち2つまたは全部が共通の水素タンク61であっても良い。水素タンク61の代わりに、水素製造装置が接続されていても良い。
【0090】
第1吸引ポンプ571で吸引された不活性ガスおよび水素は、それぞれ分離および精製して再利用されてもよい。第2吸引ポンプ572で吸引された水素は精製して再利用されても良い。
【0091】
制御部41は、第3吸引ポンプ573を動作させて、減圧室222内を減圧する代わりに、減圧室222内に水素吸蔵合金を入れても良い。減圧室222内の高圧の水素が、水素吸蔵合金に吸蔵されて、減圧室222の圧力が低下する。制御部41は、水素を吸蔵した水素吸蔵合金を、第1置換室213に輸送し、第1置換室213内で水素を放出させる。以上により、水素化マグネシウム製造装置10内の水素を再使用できる。
【0092】
図13は、ユニット34の温度変化を示すグラフである。横軸は、収容室214でマグネシウム収容皿31にマグネシウム圧縮体16を収容する作業を開始した後の経過時間を示す。縦軸は、ユニット34の温度、さらに詳しくはユニット34に収容されたマグネシウム圧縮体16または水素化マグネシウム構造体17の内部温度を示す。
【0093】
収容作業は、室温である温度P
1で行われる。時刻T
1までに収容作業が終了する。
図7を使用して説明したように、制御部41は収容室214から第1置換室213にユニット34を搬送する。時刻T
1に、制御部41は第1置換室213を不活性ガス雰囲気から水素雰囲気に置換する作業を開始する。第1置換室213の減圧と水素放出との繰り返しにより、若干の温度変動は発生するが、ユニット34はほぼ温度P
1に保たれる。
【0094】
時刻T
2までに水素雰囲気への置換が終了し、制御部41は第1置換室213から加熱室212にユニット34を搬送する。時刻T
2に、制御部41はヒータ58を動作させてユニット34の加熱を開始する。加熱完了温度である温度P2は、前述の通り摂氏400度程度である。
【0095】
加熱終了後、
図8を使用して説明したように制御部41は昇圧室211にユニット34を搬送し、ユニット34周囲の水素を昇圧させる。昇圧完了後の水素の圧力は、前述の通り0.9メガパスカル程度である。
【0096】
時刻T
3に、
図9を使用して説明したように、制御部41は第1気密扉551および第2気密扉552を開放する。制御部41は、
図10から
図12を使用して説明したように、生成炉20内にユニット34を挿入し、第1気密扉551および第2気密扉552を閉鎖する。生成炉20内で(1)式の反応が進行する。
【0097】
同様の作業により、制御部41は定期的に新たなユニット34を生成炉20に挿入する。生成炉20内のユニット34は、新たなユニット34に押し出されて第2端側に移動する。なお、新たなユニット34を生成炉20に挿入する時間間隔は、表1のNo.1では9.6時間ごと、No.2では4.8時間ごとである。
【0098】
時刻T
4に、ユニット34は
図9のユニット34U10の位置に到達する。時刻T
3から時刻T
4までの経過時間は、表1の「生成炉通過時間」の行に示した通り、No.1、No.2ともに48時間である。
【0099】
制御部41は、新たなユニット34を生成炉20に挿入し、押し出されたユニット34を冷却室221に収容する。制御部41は、ユニット34周囲の水素を大気圧まで減圧した後に、減圧室222に移動させて室温P
1に冷却する。時刻T
5に、制御部41はユニット34を第2置換室223に移動させて、水素雰囲気から大気雰囲気に置換する作業を開始する。
【0100】
時刻T
6に、制御部41は完成した水素化マグネシウム構造体17を水素化マグネシウム製造装置10から排出する。
【0101】
図14は、水素化マグネシウム製造装置10の消費電力の推移を示すグラフである。横軸は、水素化マグネシウム製造装置10を起動した後の経過時間であり、単位は時間である。縦軸は水素化マグネシウム製造装置10の消費電力であり、単位はワットである。
【0102】
電流投入直後には、ヒータ58、ポンプ57等の起動電力が発生するため、消費電力は大きい値を示す。約1時間後に、水素化マグネシウム製造装置10は定常運転状態に達し、消費電力はほぼ一定の値になる。
【0103】
図15は、プログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。
図15においては、水素化マグネシウム製造装置10の起動から動作終了までの処理の概要を説明する。冷却装置54、気密扉55、バルブ56、ポンプ57、ヒータ58および搬送部59等の個々の部分の制御については、記載を省略する。
【0104】
制御部41は、水素化マグネシウム製造装置10の各部の運転を準備する初期動作を行なう(ステップS501)。初期動作は、たとえば生成炉20が所定の温度および圧力になるまで加熱および加圧を行なうこと等である。
【0105】
制御部41は、ユニット34を生成炉20に投入する準備を行なう(ステップS502)。具体的には、制御部41はユニット34に所定量のマグネシウム圧縮体16を収容し、水素雰囲気への置換、加熱および加圧を順次行なう。
図8のユニット34U20が、ステップS502が終了した時点のユニット34を示す。
【0106】
制御部41は、準備が終了したユニット34を生成炉20に投入する(ステップS503)。制御部41は、生成炉20内のユニット34が所定の数に到達したか否かを判定する(ステップS504)。所定の数は、表1の「生成炉内のユニットの数」の行に示す数である。
【0107】
所定の数に到達していないと判定した場合(ステップS504でNO)、制御部41はステップS502に戻る。所定の数に到達したと判定した場合(ステップS504でYES)、制御部41は、次のユニット34を生成炉20に投入する準備を行なう(ステップS505)。
【0108】
制御部41は、準備が終了したユニット34を生成炉20に投入する(ステップS506)。
図10を使用して説明した様に、処理が完了したユニット34が冷却室221に押し出される。
【0109】
制御部41は、
図11および
図12を使用して説明したように、押し出されたユニット34を生成炉20から取り出す(ステップS507)。その後、制御部41はユニット34の冷却、減圧および大気雰囲気への置換を行ない、水素化マグネシウム構造体17を水素化マグネシウム製造装置10から排出する。
【0110】
制御部41は、水素化マグネシウムの製造を終了するか否かを判定する(ステップS508)。たとえば、所定のメンテナンス時期が到来した場合、または、計画していた数のユニット34を生成炉20に投入完了した場合に、制御部41は水素化マグネシウムの製造を終了すると判定する。
【0111】
製造を終了しないと判定した場合(ステップS508でNO)、制御部41はステップS505に戻る。製造を終了すると判定した場合(ステップS508でYES)、制御部41はユニット34のダミーを生成炉20に投入する(ステップS509)。
【0112】
ダミーは、ユニット34の同様の形状、および比熱を有し、生成炉20を汚染する物質を含まないことが望ましい。たとえばマグネシウム収容皿にマグネシウム圧縮体16の代わりに過去に製造した水素化マグネシウム構造体17、マグネシウム片、ステンレス片を搭載したユニット34または空のラックをダミーに使用できる。ダミーには、マグネシウム収容皿に何も搭載していないユニット34を使用しても良い。
【0113】
ダミーを投入することにより、処理が完了したユニット34が冷却室221に押し出される。制御部41は、押し出されたユニット34を生成炉20から取り出す(ステップS510)。
【0114】
制御部41は、生成炉20内のユニット34の取り出しを終了したか否かを判定する(ステップS511)。完了していないと判定した場合(ステップS511でNO)、制御部41はステップS509に戻る。完了したと判定した場合(ステップS511でYES)、制御部41は処理を終了する。
【0115】
なお、メンテナンス時にダミーのユニット34を取り出す必要が無い場合、次回の水素化マグネシウム製造装置10の起動は生成炉20にダミーのユニット34が入った状態で開始しても良い。このようにする場合には、ステップS502からステップS504を省略できる。
【0116】
本実施の形態によると、水素化マグネシウムの量産に適した水素化マグネシウム製造装置10を提供できる。
【0117】
用途に応じた所望の形状のマグネシウム圧縮体16をマグネシウム収容皿31に収容することで、所望の形状の水素化マグネシウム構造体17を製造できる。
【0118】
生成炉20が傾斜して配置されているため、生成炉20内にベルトコンベアのような複雑な構造物を配置することなく、ユニット34を順次移動させることができる。
【0119】
なお、ユニット34が自重で第2気密扉552に向けてゆっくり滑るように構成されていても良い。このようにする場合には、第2気密扉552の手前に、ユニット34を停止させるストッパを設けることが望ましい。ステップS507およびステップS510で処理が完了したユニット34を生成炉20から取り出す際には、制御部41は、まずストッパを除去するか、または、退去させる。制御部41は、ユニット34を引き出した後にストッパを元に戻す。
【0120】
ユニット34が自重で滑るように構成される場合、
図8に示す状態で、ユニット34が1台入る程度の場所があるように、生成炉20を長くしておいても良い。ユニット34を生成炉20に投入する際に、第1アクチュエータ591は1台のユニット34を押し込むだけでよい。したがって、第1アクチュエータ591を小型化するとともに、消費電力を少なくできる。
【0121】
1個のユニット34を構成するサブユニット33の数は任意である。たとえば、1個または2個等の少数のサブユニット33で1個のユニット34を構成する場合には、第1室21および第2室22を小型化できる。たとえば、10個または20個等の多数のサブユニット33で1個のユニット34を構成する場合には、生成炉20を開く回数が少ないため、安定した反応条件を維持できる。
【0122】
図1においては、粒状のマグネシウム圧縮体16を例示したが、マグネシウム圧縮体16の形状はこれに限定しない。マグネシウム圧縮体16は、たとえば棒状または板状等の、任意の形状であってもよい。
【0123】
冷却室221での冷却処理に伴い、冷却室221内の圧力が十分に低下する場合には、減圧室222を設けなくても良い。
【0124】
なお、マグネシウム圧縮体16に代えてマグネシウム粉を水素化マグネシウムの原料に使用しても良い。マグネシウム粉を使用する場合には、大気中の酸素との反応を防ぐため、マグネシウム粉は不活性ガス雰囲気中で取り扱う。
【0125】
[実施の形態2]
本実施の形態は、2本の生成炉20を備える水素化マグネシウム製造装置10に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0126】
図16は、実施の形態2の水素化マグネシウム製造装置10の構成を説明する説明図である。生成炉20Aは、第1端側が第2端側より高くなるように、傾斜した状態で設置されている。生成炉20Bは、生成炉20Aと平行に配置されている。生成炉20Bも、第1端側が第2端側より高い。
【0127】
なお、生成炉20Aおよび生成炉20Bは、水平に設置されていても良い。生成炉20Aと生成炉20Bとのいずれか一方が水平に設置され、他方は第1端側が第2端側より高くなるように、傾斜して設置されていてもよい。
【0128】
生成炉20Aの第1端に第1気密扉551Aを介して昇圧室211Aが連結している。生成炉20Aの第2端に第2気密扉552Aを介して冷却室221Aが連結している。昇圧室211Aに、第2バルブ562Aを介して第2水素タンク612Aが接続されている。
【0129】
生成炉20Aの第1端側の外周に、水素供給筒24Aが取り付けられている。生成炉20Aの第2端側の外周に、水素排出筒25Aが取り付けられている。水素排出筒25Aと水素供給筒24Aとは、水素ポンプ578Aを介して接続されている。水素供給筒24Aに第3バルブ563Aを介して第3水素タンク613Aが接続されている。
【0130】
生成炉20Bの第1端に第1気密扉551Bを介して昇圧室211Bが連結している。生成炉20Bの第2端に第2気密扉552Bを介して冷却室221Bが連結している。昇圧室211Bに、第2バルブ562Bを介して第2水素タンク612Bが接続されている。
【0131】
生成炉20Bの第1端側の外周に、水素供給筒24Bが取り付けられている。生成炉20Bの第2端側の外周に、水素排出筒25Bが取り付けられている。水素排出筒25Bと水素供給筒24Bとは、水素ポンプ578Bを介して接続されている。水素供給筒24Bに第3バルブ563Bを介して第3水素タンク613Bが接続されている。
【0132】
図16においては、生成炉20Aおよび生成炉20Bにそれぞれに取り付けられた、ヒータ58および冷却装置54と、冷却室221Aおよび冷却室221Bにそれぞれ取り付けられた冷却装置54との図示を省略する。
【0133】
昇圧室211Aと、昇圧室211Bとの間に、第11気密扉291が設けられている。冷却室221Aと冷却室221Bとの間に、第12気密扉292が設けられている。昇圧室211Aと加熱室212との間に、第3気密扉553が設けられている。冷却室221Aと減圧室222との間に第6気密扉556が設けられている。
【0134】
図16においては、加熱室212に取り付けられたヒータ58と、第1置換室に接続された第1バルブ561、第1水素タンク611、アルゴンバルブ564、アルゴンガスタンク621および第1吸引ポンプ571と、減圧室222に接続された第3吸引ポンプ573と、第2置換室223に接続された空気ポンプ577および第2吸引ポンプ572との図示を省略する。
【0135】
昇圧室211Aに設けられた第1気密扉551Aと、第3気密扉553と、第11気密扉291とのいずれか一つが開放されている場合には他の2つは開放されない。昇圧室211Bに設けられた第1気密扉551Bと、第11気密扉291とは、一方が開放している間は他方は閉鎖され、同時には開放されない。
【0136】
冷却室221Aに設けられた第2気密扉552Aと、第6気密扉556と、第12気密扉292とのいずれか一つが開放されている場合には他の2つは開放されない。冷却室221Bに設けられた第2気密扉552Bと、第12気密扉292とは、一方が開放している間は他方は閉鎖され、同時には開放されない。
【0137】
図17から
図24は、実施の形態2の搬送部59の動作を説明する説明図である。なお、
図17から
図22では、生成炉20A、生成炉20B、第1室21、第2室22、気密扉55およびユニット34を模式的に図示し、水素タンク61、ポンプ57および配管等の図示を省略する。また、実施の形態1と同様の気密扉55の動作についても説明を省略する。
【0138】
図17においては、生成炉20Aおよび生成炉20Bはそれぞれ、表1のNo.2と同様の概略寸法を有し、それぞれ年間11200トンの水素化マグネシウム生産能力を有する。したがって、本実施の形態の水素化マグネシウム製造装置10は、年間22400トンの生産能力を有する。
【0139】
図17は、生成炉20Aおよび生成炉20B内で(1)式の反応が行われている場合の状態を示す。冷却室221Aおよび冷却室221Bの内部は、生成炉20の内部と同程度の温度および圧力に維持されている。
【0140】
生成炉20A内で、ユニット34U10の処理が終了するよりも所定時間前に、制御部41は収容室214から第1置換室213にユニット34U30を移動させる。第1置換室213は大気雰囲気になる。制御部41は、第1置換室213の雰囲気をアルゴン雰囲気を介して水素雰囲気に置換する。
【0141】
制御部41は、ユニット34U30を第1置換室213から加熱室212に移動させる。制御部41は、ヒータ58を動作させて加熱室212の内部を生成炉20の内部と同程度の温度に加熱する。
【0142】
加熱の終了後、制御部41は第3気密扉553を開き、搬送部59を動作させて
図18に示すようにユニット34U30を昇圧室211Aに移動させる。制御部41は、第3気密扉553を閉鎖する。なお、第1気密扉551Aおよび第11気密扉291も閉鎖されている。
【0143】
制御部41は、第2バルブ562Aを動作させて第2水素タンク612Aから昇圧室211Aに水素を送り込むことにより、昇圧室211Aの内部を生成炉20の内部と同程度の圧力に加圧する。以上により、昇圧室211Aの内部は、生成炉20の内部と同程度の温度および圧力に設定される。
【0144】
図19に示すように、制御部41は第1気密扉551Aおよび第2気密扉552Aを開放し、生成炉20Aと、昇圧室211Aと、冷却室221Aとを連続した一つの空間にする。
【0145】
制御部41は、ユニット34U30を生成炉20Aの内部に押し込む。制御部41は、第1気密扉551Aを閉鎖する。制御部41は、ユニット34U10を冷却室221内に引き込む。制御部41は第2気密扉552Aを閉鎖する。
【0146】
以上により、
図20に示すように、所定時間の処理が完了したユニット34U10が生成炉20Aから取り出される。ユニット34U10は、減圧室222、第2置換室223および払出室224を介して水素化マグネシウム製造装置10から取り出される。
【0147】
生成炉20B内で、ユニット34U11の処理が終了するよりも所定時間前に、制御部41は収容室214から第1置換室213にユニット34U31を移動させる。第1置換室213は大気雰囲気になる。制御部41は、第1置換室213の雰囲気をアルゴン雰囲気を介して水素雰囲気に置換する。
【0148】
水素雰囲気への置換が完了した後、制御部41はユニット34U31を第1置換室213から加熱室212に移動させる。制御部41は、ヒータ58を動作させて加熱室212の内部を生成炉20Bの内部と同程度の温度に加熱する。
【0149】
加熱の終了後、制御部41は第3気密扉553を開き、搬送部59を動作させて
図21に示すようにユニット34U31を昇圧室211Aに移動させる。制御部41は、第3気密扉553を閉鎖する。なお、第1気密扉551Aおよび第11気密扉291も閉鎖されている。
【0150】
制御部41は第11気密扉291を開き、搬送部59を動作させて
図22に示すようにユニット34U31を昇圧室211Bに移動させる。制御部41は、第11気密扉291を閉鎖する。なお、第1気密扉551Bも閉鎖されている。
【0151】
制御部41は、第2バルブ562Bを動作させて第2水素タンク612Bから昇圧室211Bに水素を送り込むことにより、昇圧室211Bの内部を生成炉20Bの内部と同程度の圧力に加圧する。以上により、昇圧室211Bの内部は、生成炉20Bの内部と同程度の温度および圧力に設定される。
【0152】
図23に示すように、制御部41は第1気密扉551Bおよび第2気密扉552Bを開放し、生成炉20Bと、昇圧室211Bと、冷却室221Bとを連続した一つの空間にする。制御部41は、ユニット34U31を生成炉20Bの内部に押し込む。制御部41は、第1気密扉551Bを閉鎖する。制御部41は、ユニット34U11を冷却室221B内に引き込む。制御部41は第2気密扉552Bを閉鎖する。
【0153】
以上により、
図24に示すように、所定時間の処理が完了したユニット34U11が生成炉20Bから取り出される。ユニット34U11は、冷却室221A、減圧室222、第2置換室223および払出室224を介して水素化マグネシウム製造装置10から取り出される。
【0154】
生成炉20Aへのユニット34の投入と、生成炉20Bへのユニット34の投入とを2.4時間間隔で交互に行なう。すなわち、制御部41は、収容室214、第1置換室213、加熱室212、減圧室222、第2置換室223および払出室224を、2.4時間ごとに動作させる。このようにすることにより、2.4時間ごとに水素化マグネシウムを取り出せる。
【0155】
なお、収容室214、第1置換室213、加熱室212、減圧室222、第2置換室223および払出室224の処理能力に余裕がある場合には、3本以上の生成炉20を並列に設けても良い。
【0156】
生成炉20同士は、垂直方向に並列に配置されていても、水平方向に並列に配置されていても良い。
【0157】
生成炉20Aおよび生成炉20Bは、表1のNo.1と同様の概略寸法を有しても良い。片方の生成炉20が年間4600トンの水素化マグネシウム生産能力を有するため、合計で年間9200トンの生産能力を有する水素化マグネシウム製造装置10を実現できる。
【0158】
各実施例で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組合せ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【解決手段】水素化マグネシウム製造装置10は、マグネシウムと水素とを反応させて水素化マグネシウムを生成する筒状の生成炉20と、前記生成炉20の第1端に連結しており、前記生成炉20に投入するマグネシウムを加熱する第1室21と、前記生成炉20の第2端に連結しており、前記生成炉20で生成した水素化マグネシウムを冷却する第2室22とを備える。