【実施例】
【0023】
以下、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0024】
<サンプルの調製>
(原料)
ニンニク皮としては、東北産の「福地ホワイト」の皮(主として各鱗片を覆う皮)を用いた。
【0025】
(抽出操作)
ニンニク皮1gを秤量し、水又はエタノールで24時間振盪抽出(200rpm)した。水抽出物は、遠心分離し、上澄みを凍結乾燥させて得た。エタノール抽出物は、抽出液を濾過し、ロータリーエバポレーターにて濃縮後、デシケータ内で乾固させて得た。
【0026】
<脳機能改善試験(抗認知症試験)>
上述のように、近年では、食物や食物由来成分が脳機能の維持、発達および改善に効果があるということが明らかになりつつあり、その1つとして、ヒト腸管上皮細胞において吸収された成分が脳由来神経栄養因子(BDNF;brain derived neurotrophic factor)産生を増強し、産生されたBDNFが神経細胞の活性化を促すという腸管の活性化を介した脳機能制御機構がある。
本試験では、腸管上皮細胞モデルとしてヒト結腸癌由来細胞(以下、「Caco−2細胞」という。)を用い、神経細胞モデルとしてヒトアストロサイトーマ(以下、「1321N1細胞」という。)を用い、各サンプルが脳機能(認知症)に及ぼす影響を評価した。
【0027】
(細胞培養)
Caco−2細胞および1321N1細胞はDulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)(高グルコース)(含1%ペニシリン−ストレプトマイシン及び10%ウシ胎児血清(FBS))を用いて、コンフルエントになるまでφ10cmディッシュにて前培養した。その後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、培地に再懸濁後、24穴プレートに5.0×10
4cells/wellの濃度で播種し、CO
2インキュベーター(37℃、5%CO
2)でオーバーナイト培養した。
【0028】
(サンプル添加)
オーバーナイト培養後、サンプルを含む無血清DMEM培地(含1%ペニシリン−ストレプトマイシン)に交換し、CO
2インキュベーターにて24時間培養した。
【0029】
(リアルタイムPCRによるUCP1遺伝子の発現量の比較)
サンプル添加24時間後のCaco−2細胞および1321N1細胞を回収し、PureLink RNA Mini kit(Invitrogen)を用いてtotal RNAを抽出した。ReverTra Ace qPCR RT Master Mix with gDNA Remover(TOYOBO)にて、抽出したtotal RNAからcDNAを合成した。合成したcDNAを鋳型としてAriaMX リアルタイムPCR装置(アジレント・テクノロジー)でリアルタイムPCRを行った。リアルタイムPCR反応には、THUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(TOYOBO)を用いた。BDNF遺伝子用プライマーとして5’−GTCAAGTTGGGAGCCTGAAATAGTG−3’及び5’−AGGATGCTGGTCCAAGTGGTG−3’を、NGF遺伝子用プライマーとして5’−ACCTTTCTCAGTAGCGGCAA−3’及び5’−TGTGTCACCTTGTCAGGGAA−3’を、内部標準β−アクチン用プライマーとして5’−GGGTCAGAAGGACTCCTATG−3’及び5’− GTAACAATGCATGTTCAAT−3’を使用した。リアルタイムPCR反応条件として、95℃、3分の初期変性後、95℃、3秒での変性、60℃、30秒のアニーリング/伸長という2ステップのPCR反応を40サイクル行った。
【0030】
ニンニク皮水抽出物及びエタノール抽出物添加による神経栄養因子(BDNF)の遺伝子発現、及びニンニク皮水抽出物の神経成長因子(NGF)の遺伝子発現を評価した。
その結果を
図1及び2に示す。
【0031】
図1に示すように、Caco−2細胞におけるBDNF遺伝子発現は、ニンニク皮水抽出物及びエタノール抽出物において、コントロールと比較して約5〜7倍に上昇することが確認できた。したがって、ニンニク皮水抽出物及びエタノール抽出物には、神経栄養因子(BDNF)を活性化する成分が含まれると考えられる。
【0032】
また、
図2に示すように、1321N1細胞におけるNGF遺伝子発現は、ニンニク皮水抽出物において、コントロールと比較して、濃度依存的に発現量が上昇することが確認できた。
【0033】
以上の結果から、ニンニク皮抽出物は、ヒト腸管上皮細胞において吸収され、脳由来神経栄養因子(BDNF)産生を増強し、産生されたBDNFが神経成長因子(NGF)の活性化を促すという腸管の活性化を介した脳機能制御機構、及び/又はNGFを直接活性化するNGF活性化機構により、認知症の予防、緩和、治療等の脳機能改善を図ることができると考えられる。
【0034】
<各種ニンニク皮水抽出物添加による脳機能改善試験(抗認知症試験)>
Caco−2細胞または1321N1細胞に、ニンニク皮の熱水抽出物、亜臨界水抽出物、温水・凍結乾燥物、温水・減圧乾燥物、水・凍結乾燥物を、終濃度100μg/mL処理区添加、RNAを抽出後、合成したcDNAを鋳型として、BDNF遺伝子またはNGF遺伝子の発現量を調査するため、リアルタイムPCRを行った。
その結果を
図3及び
図4に示す。
【0035】
図3に示すように、ニンニク皮熱水抽出物をCaco−2細胞に添加した場合、コントロールと比較してBDNF遺伝子の発現は約6倍に上昇していた。また、亜臨界水抽出物では、コントロールと比較してBDNF遺伝子の発現は約4倍に上昇していた。その他、常温の水や温水によるニンニク皮抽出物は、コントロールと比較してBDNF遺伝子の発現は約1.6〜2.3倍に上昇していた。
以上の結果から、熱水抽出物が、脳由来神経栄養因子(BDNF)の産生を最も増強できると考えられる。
【0036】
図4に示すように、ニンニク皮熱水抽出物を1321N1細胞に添加した場合、コントロールと比較してNGF遺伝子の発現は約4.4倍に上昇していた。また、亜臨界水抽出物では、コントロールと比較してNGF遺伝子の発現は約2倍に上昇していた。その他、常温の水や温水によるニンニク皮抽出物は、コントロールと比較してNGF遺伝子の発現は約1.4〜3倍に上昇していた。
以上の結果から、熱水抽出物が、神経成長因子(NGF)を最も活性化できると考えられる。
【0037】
以上の
図3及び
図4の結果から、ニンニク皮熱水抽出物が、脳機能改善に対して最も効果を期待することができる。
【0038】
<ヒト脳機能改善試験>
ニンニク皮含有サプリメントを摂取することによるヒトの認知機能の改善効果を検証した。
【0039】
(試験方法)
満65歳以上の健常な成人男女16名を対象に、プラセボ対照二重盲検ランダム化並行群間比較試験(RCT)を行った。被験者は、ブロックランダム化法を用いて、試験物群・プラセボ群の間に有意な偏りがないよう、性別と年齢を条件に各群を8名ずつに割り付けた。試験物群の平均年齢は70.3±2.60歳、プラセボ群の平均年齢は66.6±0.92歳であった。
【0040】
ニンニク皮含有サプリメント(試験物)として、にんにく外皮末200mg、菜種硬化油10mg、ステアリン酸Ca5mgからなる錠剤を用いた。プラセボとして、コーンスターチ200mg、菜種硬化油10mg、ステアリン酸Ca5mgからなる錠剤を用いた。それぞれ1錠/1日、6週間摂取した。
【0041】
試験物及びプラセボの摂取の前後に、口頭による精神状態短時間検査(MMSE)を行うことによって、認知機能(場所の見当識、記憶力、計算力、言語的能力、図形的能力)を評価した。
【0042】
その結果を表1、及び
図5〜
図8に示す。結果は、試験前後で有意な差が示された項目を示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1、及び
図5〜
図8に示すように、本発明の組成物群は、場所の見当識、計算及び合計の項目において、摂取後に上昇傾向を示した。また、上昇傾向が見られた各項目において、事前測定時からの得点の変化量は、プラセボ群と比較して、本発明の組成物群の方が大きかった。なお、本試験は、本発明の組成物の摂取期間が6週間という短期間であったため、効果の表れにくい状況での試験であったが、このような所望の効果が示された。
したがって、ニンニク皮含有サプリメントを摂取することにより、認知機能の向上が図られることが明らかとなった。
【0045】
<アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性試験>
ACEは、血圧調節メカニズムの一つであるレニン−アンジオテンシン系において、アンジオテンシンIから、昇圧作用を有するアンジオテンシンIIを生成する。また同時に、降圧ペプチドであるブラジキニンを分解するなど、血圧上昇に大きく関与する酵素である。
本試験では、各サンプルのACEに対する酵素阻害活性を評価することにより、各サンプルの降圧効果について検討した。
【0046】
(ACE阻害活性の測定)
ACE活性試験は、ACE kit−WST(同仁化学研究所)を用いた。同キットは、3−Hydroxybutyryl−Gly−Gly−Gly(3HBGGG)より遊離した3−Hydroxybutyric acid(3HB)を酵素法にて検出する方法である。
【0047】
ニンニク皮水抽出物は、MilliQ水に、エタノール抽出物はDMSOに溶解し、ACE活性試験に使用した。サンプルの終濃度は、0.87、21.4、108.3、541.3、2706.7μg/mLとした。ポジティブコントロールとして、MilliQ水またはDMSOに溶解したVal−Tyr(サーディンペプチド)を使用した。
【0048】
測定には、96穴プレートを用いた。各ウェルにサンプル溶液を20μL、Substrate buffer 20μL及び20μLのEnzyme working solutionを加えた。ACE阻害なしのブランク(blank1)として、MilliQ水またはDMSO 20μL、Substrate bufferを20μLおよびEnzyme working solutionを20μL加えたウェルを作製した。また、試薬ブランク(blank2)としてMilliQ水またはDMSO 40μL、Substrate bufferを20μL加えたウェルを作製した。その後、37℃で60分間インキュベートした。インキュベート後、Indicator working solutionを200μL加え、室温で10分間インキュベートした。マイクロプレートリーダーにて450nmの吸光度を測定し、その値からACE阻害活性率(%)を求め、さらに50%阻害濃度(IC
50)を算出した。
【0049】
ACE阻害活性率(%)
=[(A
blank1−A
smaple)/(A
blank1−A
blank2)]×100
【0050】
その結果を
図9及び10に示す。
【0051】
図9に示すように、試験した最も高い濃度(2706.7μg/mL)におけるACE阻害活性率は、Val−Tyr(ポジティブコントロール)で99.9%、ニンニク皮水抽出物では82.2%であった。Val−Tyr(ポジティブコントロール)では、450nmの吸光度値から算出したACEに対するIC
50は3.07μg/mLであった。一方、ニンニク皮水抽出物のACEに対するIC
50は1165.24μg/mLであった。
【0052】
図10に、ニンニク皮エタノール抽出物によるACE阻害活性率(%)を示した。その結果、試験した最も高い濃度(2706.7μg/mL)におけるACE阻害活性率は、Val−Tyr(ポジティブコントロール)で112.1%、ニンニク皮エタノール抽出物では47.7%であった。Val−Tyr(ポジティブコントロール)では、450nmの吸光度値から算出したACEに対するIC
50は13.27μg/mLであった。一方、ニンニク皮エタノール抽出物のACEに対するIC
50は3092.09μg/mLであった。
【0053】
以上の結果から、ニンニク皮水抽出物及びエタノール抽出物には、降圧効果が期待できる。また、ニンニク皮水抽出物は、エタノール抽出物と比較して、より強いACE阻害活性を示すことから、より優れた降圧効果を期待できる。
【0054】
<抗血糖値試験>
糖尿病は糖代謝の異常により高血糖状態が継続する疾病であり、様々な病気を引き起こす原因ともなる。高血糖状態には生活習慣が大きく影響をしており、日常的な血糖値のコントロールが重要である。α−グルコシダーゼは小腸上皮細胞において糖のα−グルコシド結合を加水分解する酵素の複合体であり、二糖類の消化と吸収に関与する。
本試験では、サンプルの血糖値上昇抑制効果を評価するため、サンプルのα−グルコシダーゼ活性を測定した。
【0055】
(α−グルコシダーゼ活性の測定)
評価サンプルとして、ニンニク皮水抽出を22、222μg/mLの終濃度、及びエタノール抽出物を222μg/mLの終濃度で添加した。スクロース、α−グルコシダーゼおよびサンプルを各100μLずつ混合した。インキュベーター内で37℃、30分間反応させた。100℃にセットしたブロックインキュベーターにて10分間加熱し、反応停止した。加熱後、室温に戻るまで3分間静置した。サンプルを遠心し、上清中のグルコース濃度をバイオセンサで測定した。
【0056】
その結果を
図11に示す。
【0057】
図11に示すように、ニンニク皮水抽出物及びエタノール抽出物において、強いα−グルコシダーゼ阻害活性が確認できた。
【0058】
以上の結果から、ニンニク皮水抽出物およびエタノール抽出物にはα−グルコシダーゼ阻害活性が認められ、血糖値上昇抑制効果が期待できる。したがって、抗糖尿病に関する素材として利用できると考えられる。
【0059】
<抗骨粗しょう症試験>
骨は、骨芽細胞による骨形成と、破骨細胞による骨吸収(骨破壊)のバランスによってコントロールされている。高齢になると骨粗しょう症になりやすいのは、破骨細胞が骨芽細胞よりも活性化されることで骨量が減少するためである。そのため、破骨細胞の増殖・分化を阻害することは骨粗しょう症の抑制に有効であると考えられる。
破骨細胞のマーカー酵素としては、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP:tartrate−resistant acid phosphatase)が知られている。骨髄細胞を分化誘導し、TRAP活性を測定することにより細胞の分化状態を評価可能である。
本実験では、サンプルが破骨細胞への分化を抑制する機能を有するか、TRAP活性を測定し評価した。
【0060】
(細胞培養)
マクロファージ様細胞(RAW264)はDulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)(高グルコース)(含1%ペニシリン−ストレプトマイシンおよび10%ウシ胎児血清(FBS))を用いて、80%コンフルエントになるまでφ10cmディッシュにて前培養した。その後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、培地に再懸濁後、96穴プレートに0.5×10
4cells/wellの濃度で播種し、CO
2インキュベーター(37℃、5%CO
2)でオーバーナイト培養した。
【0061】
(サンプル添加)
評価サンプルとして、ニンニク皮水抽出物を0.01、0.1、1μg/mLの終濃度で添加した。オーバーナイト培養後、サンプルを含む破骨細胞分化誘導培地(OSCMM、コスモバイオ)に交換し、CO
2インキュベーターにて72時間培養した。
【0062】
(細胞生存率の測定)
細胞生存率は、Cell Counting kit−8(同仁化学)を用いて測定した。サンプル添加72時間後、サンプル含有OSCMM培地を除去し、96穴プレートの各ウェルにサンプルを含まない無血清DMEM培地(含1%ペニシリン−ストレプトマイシン)を100μL加えた。次いで、各ウェルにCCK−8液を10μL添加し、CO
2インキュベーターにて1時間静置培養した。マイクロプレートリーダーで450nmにおける吸光度を測定し、細胞生存率を算出した。
【0063】
(TRAP活性の測定)
細胞生存率測定後、細胞上清を除去し、細胞固定液(アセトン:エタノール=1:1)を各ウェル100μLずつ加え、1分間室温にて細胞を固定した。細胞固定液を除去し、30分間ウェルを乾燥させた。各ウェルに基質パラニトロフェニルリン酸(pNPP)溶液(1.5mg/mL)を100μLずつ加え、37℃で60分間反応させる。その後、反応停止液1N NaOHを各ウェルに50μL加えた。マイクロプレートリーダーで405nmにおける吸光度を測定し、TRAP活性を算出した。
【0064】
その結果を
図12及び
図13に示す。
【0065】
図12に示すように、コントロール(水)と比較して、細胞生存率の増加が認められた。また、
図13に示すように、コントロール(水)と比較して、1細胞あたりのTRAP活性は80%程度の抑制が確認できた。
【0066】
以上のように、ニンニク皮水抽出物は、細胞生存率を促進すると共にTRAP活性を低下させており、選択的に破骨細胞分化に関わる経路を阻害していると理解できる。すなわち、安全性の高い、骨粗しょう症治療改善薬・機能性食品に関する素材として期待できる。
【0067】
<AGEs(最終糖化産物)阻害活性試験>
アミノ酸と還元糖を共存させると、架橋反応が生じタンパク質の構造が変化する。これはメイラード反応と呼ばれる非酵素的褐変化反応であり、パンやホットケーキなど、食品の加熱調理時に見られる茶色い焦げも、この反応によるものである。メイラード反応は、体内に存在するタンパク質と糖質との共存によっても進行する。血中の糖濃度が高い状態が続くと、タンパク質との架橋反応が生じ、後期生成物であるAGEs(Advanced Glycation End Products:最終糖化産物)が生成される。AGEsが体内へ蓄積すると、老化や疾病のリスクが高まると考えられていることから、AGEs生成を阻害する素材の探索が求められている。
本試験では、ニンニク皮水抽出物及びエタノール抽出物がAGEs形成に及ぼす影響について評価した。
【0068】
(サンプル調製)
ニンニク皮水抽出物は超純水を溶媒としてサンプル濃度2.5mg/mlになるよう調製した。終濃度は1mg/mlである。ニンニク皮エタノール抽出物はDMSOを溶媒としてサンプル濃度2.5mg/mlになるよう調製した。終濃度は1mg/mlである。ポジティブコントロールとして、アミノグアニジンを2.2mg/mlとなるよう、超純水を溶媒として調製した(終濃度:880μg/ml)。
【0069】
(AGE形成量の測定)
蛍光測定用黒色プレートに、グリセルアルデヒド溶液(45mg/mlinPBS)10μl、BSA溶液(20mg/ml in PBS)50μl、サンプル溶液40μlを添加した。混合した直後(反応0時間)の蛍光強度(Ex:370nm、Em:440nm)をFlex Station 3により測定した(AGEsの構造は蛍光を発するものであり、蛍光強度によりAGEsの産生量を測定することが可能である)。また、サンプル自体の有する蛍光強度を測定するため、グリセルアルデヒド、BSA溶液をPBSに置き換えたプレートを陰性対照として用意し、この値を差し引くことで、反応0時間目の蛍光強度とした。このプレートを37℃で20時間反応させた。反応20時間後の溶液の蛍光強度をFlex Station 3(水抽出物)およびinfinite F200 PRO(エタノール抽出物)により測定した。陰性対照のプレートも同様に反応させて蛍光強度を測定し、陰性対照の値を差し引くことで、反応20時間目の蛍光強度とした。反応前後の蛍光強度を差し引いてAGEs生成量とし、コントロール(溶媒)のAGEs生成量を100%として、ニンニク皮のAGEs生成量の相対値をAGEs生成率(%)として表した。
【0070】
その結果を
図14及び
図15に示す。
【0071】
図14に示すように、ニンニク皮水抽出物のAGEs生成率(%)は、充分に反応が起こった反応20時間後、AGEs生成の抑制効果が認められた。
【0072】
また、
図15に示すように、ニンニク皮エタノール抽出物についても、ニンニク皮水抽出物と同様に、充分に反応が起こった反応20時間後AGEs生成の抑制効果が認められた。
【0073】
以上より、ニンニク皮水抽出物及びエタノール抽出物は、AGEs形成を阻害する効果を示した。したがって、ニンニク皮水抽出及びエタノール抽出物の成分には、体内のAGEs蓄積による老化を軽減する作用があることが期待される。
【0074】
<リパーゼ阻害活性試験>
リパーゼは脂肪を分解する酵素で、膵臓から十二指腸へ分泌されるリパーゼは脂肪の消化・吸収に大きく関与している。現在、肥満が原因となり、糖尿病に代表される代謝性疾患や血管疾患などの疾患を抱える人口が急増しており、肥満の解決は急務を有する事項の一つである。肥満の要因は環境、遺伝など数多くの要因があるが、肥満の原因自体は消費エネルギーよりも摂取エネルギーが過剰であることに尽きる。膵リパーゼは脂肪の吸収に関与しているため、リパーゼ活性が阻害されるような物質は、摂取エネルギーを低下させ、抗肥満効果を発揮する有効なアプローチの一つとして考えられている。
【0075】
(実験方法)
ニンニク皮水抽出物及びエタノール抽出物の抽出物溶液25μLを0.1mM 4−methylumbelliferyl oleate(4−MUO)(/13mM Tris−HCl、150mM NaCl、1.3mM CaCl
2緩衝液)溶液50μLと混合し、150μg/mL膵臓由来リパーゼ25μLを上記と同様の緩衝液に溶かし、反応の開始とした。25℃で30分間インキュベートした。0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.2)100μLを加えて反応を停止させた後、蛍光強度測定した(Ex:360、Em:465nm)。4−MUOにリパーゼが作用して遊離した4−methylumbelliferoneの蛍光強度を測定することで、リパーゼ活性に与える影響を評価した。
【0076】
その結果を
図16及び
図17に示す。
【0077】
図16に示すように、ニンニク皮水抽出物のリパーゼ生成阻害率(%)は、25mg/mlにおいて、ポジティブコントロールであるオルリスタット以上のリパーゼ生成阻害率が確認された。
【0078】
また、
図17に示すように、ニンニク皮エタノール抽出物のリパーゼ生成阻害率(%)は、ニンニク皮水抽出物同様、25mg/mlにおいて、オルリスタットと同程度のリパーゼ生成阻害率(%)が確認された。
【0079】
以上のとおり、ニンニク皮水抽出物及びエタノール抽出物において、抗リパーゼ活性の効果が認められた。したがって、脂質吸収抑制や抗肥満等の効果が期待される。
【0080】
[配合実施例1]
以下に示す配合により、カプセル剤を製造した。
にんにく皮エキス末 200mg
菜種硬化油 10mg
ステアリン酸Ca 5mg
【0081】
[配合実施例2]
以下に示す配合により、錠剤を製造した。
にんにく皮エキス末 200mg
結晶セルロース 88mg
ショ糖脂肪酸エステル 9mg
微粒二酸化ケイ素 3mg
【0082】
[配合実施例3]
以下に示す配合により、カプセル剤を製造した。
にんにく皮エキス末 200mg
べに花油 200mg
グリセリン脂肪酸エステル 25mg
【0083】
[配合実施例4]
以下に示す配合により、顆粒剤を製造した。
にんにく皮エキス末 60g
難消化性デキストリン 25g
コーンスターチ 15g