特許第6948680号(P6948680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6948680代謝性疾患治療用化合物及びその製造方法、並びに応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948680
(24)【登録日】2021年9月24日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】代謝性疾患治療用化合物及びその製造方法、並びに応用
(51)【国際特許分類】
   C07J 43/00 20060101AFI20210930BHJP
   A61K 31/661 20060101ALI20210930BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210930BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20210930BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20210930BHJP
   C07J 41/00 20060101ALI20210930BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20210930BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20210930BHJP
【FI】
   C07J43/00CSP
   A61K31/661
   A61P43/00 111
   A61P1/16
   A61P3/06
   A61P1/16 101
   C07J41/00
   A61K31/675
   !C07B61/00 300
【請求項の数】15
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2020-539124(P2020-539124)
(86)(22)【出願日】2018年8月15日
(65)【公表番号】特表2020-536119(P2020-536119A)
(43)【公表日】2020年12月10日
(86)【国際出願番号】CN2018100663
(87)【国際公開番号】WO2019119832
(87)【国際公開日】20190627
【審査請求日】2020年4月1日
(31)【優先権主張番号】201711371702.0
(32)【優先日】2017年12月19日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520114317
【氏名又は名称】西安奥立泰医薬科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】XI’AN BIOCARE PHARMA LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】付 国琴
(72)【発明者】
【氏名】丁 偉
(72)【発明者】
【氏名】尹 博
(72)【発明者】
【氏名】楊 超
(72)【発明者】
【氏名】王 翠芹
(72)【発明者】
【氏名】豆 勇
(72)【発明者】
【氏名】王 瑞玲
【審査官】 早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−527277(JP,A)
【文献】 特表2017−535570(JP,A)
【文献】 特表2017−536379(JP,A)
【文献】 特表2018−530559(JP,A)
【文献】 米国特許第05541348(US,A)
【文献】 国際公開第2016/173524(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/147137(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104672290(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07J 43/00
C07J 9/00
C07J 43/00
A61P 1/16
A61P 3/06
A61K 31/675
A61K 31/661
C07F 9/24
C07F 9/6574
A61K 31/58
A61K 31/575
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される構造を有する化合物、又はそのラセミ体、立体異性体、幾何異性体、溶媒和物、水和物、若しくは薬学的に許容される塩である化合物。
【化1】
(ここで、R1は、水素、置換又は非置換のアルキル基、又はハロゲンであり、
各R2は、それぞれ独立して、置換又は非置換のアルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、ニトロ基、スルホン酸基及びカルボキシ基のいずれか1種又は複数種から選ばれ、
mは0、1、2、3又は4であり、
各R3は、それぞれ独立して、置換又は非置換のアルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、アリール基の1種又は複数種から選ばれ、
nは0、1、2、3又は4である。)
【請求項2】
前記R1は、水素、置換又は非置換のC1-5アルキル基、又はハロゲンであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記R1は、水素、フッ素、塩素、臭素、置換又は非置換のメチル基、置換又は非置換のエチル基、置換又は非置換のプロピル基、置換又は非置換のイソプロピル基であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記R2は、それぞれ独立して、フッ素、塩素、臭素、ニトロ基、シアノ基、置換又は非置換のメチル基、置換又は非置換のエチル基、置換又は非置換のイソプロピル基の1種又は複数種から選ばれ、
前記mは0又は1であり、
前記R3は、それぞれ独立して、フッ素、塩素、臭素、置換又は非置換のメチル基、置換又は非置換のエチル基の1種又は複数種から選ばれ、
前記nは0又は1であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
以下の1つの化合物、又はその立体異性体、溶媒和物若しくは薬学的に許容される塩である請求項1に記載の化合物。
【化2】
【請求項6】
式(II)で表される構造を有する化合物、又はそのラセミ体、立体異性体、幾何異性体、溶媒和物、水和物、若しくは薬学的に許容される塩である化合物。
【化3】
(ここで、R4は、水素、置換又は非置換のアルキル基、又はハロゲンであり、
5は、それぞれ独立して、置換又は非置換のアルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、スルホン酸基及びカルボキシ基のいずれか1種又は複数種から選ばれ、
6は、置換又は非置換のC1-5のアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシクロヘキシル基から選ばれ、
xは、0、1、2、3又は4であり、
yは、0又は1である。)
【請求項7】
前記R4は、水素、置換又は非置換のC1-6アルキル基、又はハロゲンであることを特徴とする請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
前記R4は、水素、フッ素、塩素、臭素、置換又は非置換のメチル基、置換又は非置換のエチル基、置換又は非置換のプロピル基、置換又は非置換のイソプロピル基であり、
前記R5は、それぞれ独立して、水素、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換又は非置換のメチル基、置換又は非置換のエチル基、置換又は非置換のイソプロピル基のいずれか1種又は複数種から選ばれ、
前記R6は、置換又は非置換のメチル基、置換又は非置換のエチル基、置換又は非置換のプロピル基、置換又は非置換のイソプロピル基、フェニル基、ピリジル基又はシクロヘキシル基から選ばれることを特徴とする請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
以下の1つの化合物、或いは立体異性体、溶媒和物又は薬学的に許容される塩である請求項6に記載の化合物。
【化4】
【請求項10】
化合物(10)と化合物(16)とを反応させ、式(I)で表される化合物を得るステップを含む請求項1に記載の化合物製造方法。
【化5】
(ここで、R1は、水素、置換又は非置換のアルキル基、又はハロゲンであり、
2は、それぞれ独立して、置換又は非置換のアルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、ニトロ基、スルホン酸基及びカルボキシ基のいずれか1種又は複数種から選ばれ、
mは0、1、2、3又は4であり、
3は、それぞれ独立して、置換又は非置換のアルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、アリール基の1種又は複数種から選ばれ、
nは0、1、2、3又は4である。)
【請求項11】
前記反応は、tert-ブチルマグネシウムクロリドの触媒作用で行い、前記反応の溶媒は、1,4−ジオキサンであることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物、及び薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、アジュバント、媒介物又はそれらの組み合わせを含む医薬組成物。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物、又は請求項12に記載の医薬組成物の、FXR及び/又はTGR5受容体介在性疾患を治療又は軽減するための医薬品の調製における使用。
【請求項14】
前記FXR及び/又はTGR5受容体介在性疾患は、慢性肝疾患、代謝性疾患又は門脈圧亢進症から選ばれることを特徴とする請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記慢性肝疾患は、原発性胆汁うっ滞性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、肝線維症関連疾患、薬物による胆汁うっ滞、進行性家族性肝内胆汁うっ滞、妊娠中の胆汁うっ滞、アルコール性肝疾患及び非アルコール性脂肪性肝疾患の1種又は複数種を含み、前記門脈圧亢進症は、肝線維症、肝硬変、脾腫或他の理由によって引き起こされる門脈圧上昇から選ばれ、前記代謝性疾患は、高コレステロール血症、脂質異常症、コレステロール結石及び高トリグリセリド血症を含むことを特徴とする請求項14に記載の使用
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
本願は、2017年12月19日に中国特許庁へ提出された、出願番号が201711371702.0、発明の名称が「代謝性疾患治療用化合物及びその製造方法、並びに応用」である中国特許出願に基づき優先権を主張し、その全内容は、援用により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、薬物化学の技術分野に関し、特に代謝性疾患治療用化合物及びその製造方法、並びに応用に関する。
【背景技術】
【0003】
胆汁酸にはさまざまな生理学的機能があり、脂肪や脂溶性ビタミンの吸収、輸送、分布に重要な役割を果たすだけでなく、核内受容体を活性化して胆汁酸とコレステロールの代謝を調節するシグナル分子としても作用する。胆汁酸の腸肝循環は、胆汁酸合成の速度を調節する重要な調節メカニズムである。胆汁酸は肝臓から胆嚢に合成され、小腸に分泌され、回腸で再吸収され、門脈を通って肝臓に戻される。
【0004】
胆汁うっ滞は主に妊娠中期および後期、肝線維症、肝硬変、胆道閉塞の患者に発生し、臨床症状には、掻痒、黄疸(Choleplania)、血清アルカリホスファターゼ(ALP)の上昇などが含まれる。胆汁うっ滞の治療薬は、臨床で最も一般的に使用されているのはウルソデスオキシコール酸(Ursodesoxycholic acid, UDCA)であり、それは、コール酸類似体であるステロイド化合物であり、胆嚢に有益な効果を有し、コレステロール結石を治療し、薬物誘発結石の形成を防ぐために使用されるが、UDCAは胆汁酸核受容体FXRに対する活性化効果が低いため、胆汁うっ滞の治療に限界があり、一部の胆汁うっ滞症の患者は、UDCAに対する感受性が低くなる。
【0005】
研究により、FXR受容体(ファルネソールX受容体)は、ホルモン核受容体スーパーファミリーに属する。典型的な核内受容体構造であって、アミノ酸末端の高度に保存されたDNA結合領域、カルボキシ末端リガンド結合領域、アミノ末端リガンド非依存性転写活性化機能領域及びカルボキシ末端のリガンド依存性活性化機能領域などを含むものを持つ。FXRは、肝臓腸系、腎臓、及び副腎で高度に発現され、心臓、肺、脂肪、及び胃でも低レベルで発現される。胆汁酸同化代謝に関連する肝臓、小腸、腎臓組織での多くのFXR標的遺伝子の発現が実証されている。胆汁酸の内因性FXRリガンドを説明する。FXRは胆汁酸受容体としても知られている。FXRは、胆汁酸受容体であり、多くの研究グループは、胆汁酸が生理学的条件下でFXRの内因性リガンドであることを報告し、胆汁酸がFXRに直接結合できるだけでなく、両方の相互作用が相乗的な活性化因子と共阻害剤の動員につながる可能性があることを発見し、これは、胆汁酸の内因性FXRリガンドであることを示しているため、FXRは胆汁酸受容体とも呼ばれる。胆汁酸受容体としてのFXRは、胆汁酸代謝に関与する遺伝子の発現を調節することにより、内部環境での胆汁酸の安定性を維持することができる。FXRは、コレステロールの動的平衡、トリグリセリド合成及び脂肪生成の重要な調節因子である(Crawley、 Expert Opinion Ther. Patents (2010)、20(8) :1047−1057)。FXR関連疾患は、肝疾患、糖尿病、ビタミンD関連疾患、薬物の治療による副作用、肝炎を含む。
【0006】
TGR5受容体(Gタンパク質共役型胆汁酸受容体5)は、G−タンパク質共役型受容体であり、胆汁酸に応答する細胞表面受容体として同定される。TGR5は、発現及び機能で胆汁酸の核内受容体とは異なり、TGR5遺伝子は一般にヒト及び動物で発現する。それは、993個の塩基対により330個のアミノ酸を含むタンパク質をコードし、7つのGタンパク質共役型受容体ドメインを形成し、その相同性は、ヒト及び動物で高度に保存されている。ヒトでは、その遺伝子は染色体2q35に位置し、複数の組織で発現し、中でも、脾臓及び胎盤で最高レベルになり、肺、肝臓、小腸、骨髄で豊富に発現する。マウス肝臓では、TGR5受容体は、肝類洞内皮細胞の原形質膜、胆管細胞の頂端膜及び一次繊毛、胆管上皮細胞及びKupffer細胞に発現する。
TGR5受容体アゴニストは、胆汁酸代謝、糖及びエネルギー代謝、炎症、免疫、腫瘍と密接に関連しているため、関連疾患の治療に大きな潜在能力を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その解決しようとする技術問題は、代謝性疾患治療用化合物及びその製造方法、並びに応用を提供するとともに、FXR及び/又はTGR5受容体を標的にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、式(I)で表される構造を有する化合物、又はそのラセミ体、立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒和物、水和物、代謝物、薬学的に許容される塩又はそのプロドラッグを提供する。
【0009】
【化1】
【0010】
ここで、Rは、水素、置換又は非置換のアルキル基、又はハロゲンである。幾つかの実施態様において、前記Rは、水素、置換又は非置換のC1−5アルキル基、又はハロゲンであり;他の幾つかの実施態様において、前記Rは、水素、フッ素、塩素、臭素、置換又は非置換のメチル基、置換又は非置換のエチル基、置換又は非置換のプロピル基、置換又は非置換のイソプロピル基である。本発明のある具体的な実施例において、前記Rは、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基である。本発明の実施態様において、Rが置換のアルキル基である場合には、前記アルキル基は、直鎖アルキル基又は分岐鎖アルキル基であってもよく、前記Rの置換基は、D、F、Cl、Br、C1−3アルキル基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基又はC1−3アルコキシ基である。
【0011】
は、それぞれ独立して、置換又は非置換のアルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、ニトロ基、スルホン酸基、カルボキシ基のいずれか1種又は複数種から選ばれる。幾つかの実施態様において、前記Rは、それぞれ独立して、C1−5アルキル基、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基のいずれか1種又は複数種から選ばれる。幾つかの実施態様において、前記Rは、それぞれ独立して、フッ素、塩素、臭素、ニトロ基、シアノ基、置換又は非置換のメチル基、置換又は非置換のエチル基、置換又は非置換のイソプロピル基のいずれか1種又は複数種から選ばれる。本発明のある具体的な実施例において、前記Rは、それぞれ独立して、フッ素、塩素、ニトロ基、置換又は非置換のメチル基、置換又は非置換のエチル基のいずれか1種又は複数種から選ばれる。本発明の実施態様において、Rが置換のアルキル基である場合には、前記アルキル基は、直鎖アルキル基又は分岐鎖アルキル基であってもよく、前記Rの置換基は、D、F、Cl、Br、C1−3アルキル基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基又はC1−3アルコキシ基である。
【0012】
mは0〜4的整数であり、即ち、mは0、1、2、3又は4である。本発明のある具体的な実施例において、mは0又は1である。
【0013】
は、それぞれ独立して、置換又は非置換のアルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、アリール基から選ばれる1種又は複数種であり、幾つかの実施態様において、前記Rは、それぞれ独立して、フッ素、塩素、臭素、C1−5アルキル基又はC6−10アリール基から選ばれる。幾つかの実施態様において、前記Rは、それぞれ独立して、フッ素、塩素、臭素、置換又は非置換のメチル基、置換又は非置換のエチル基から選ばれる1種又は複数種である。本発明のある具体的な実施例において、前記Rは、それぞれ独立して、フッ素、塩素、臭素、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基のいずれか1種又は複数種から選ばれる。本発明に係る実施態様において、Rが置換のアルキル基である場合には、前記アルキル基は、直鎖アルキル基又は分岐鎖アルキル基であってもよく、前記Rの置換基はD、F、Cl、Br、C1−3アルキル基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基又はC1−3アルコキシ基である。
【0014】
nは0〜4の整数であり、即ち、mは0、1、2、3又は4である。本発明のある具体的な実施例において、nは0又は1である。
【0015】
本発明のある具体的な実施例において、前記式(I)に示される構造は、具体的には、以下の通りである。
【0016】
【化2】
【0017】
本発明は、式(II)で表される構造を有する代謝性疾患治療用化合物、又はそのラセミ体、立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒和物、水和物、代謝物、薬学的に許容される塩又はそのプロドラッグを提供する。
【0018】
【化3】
【0019】
ここで、Rは、水素、置換又は非置換のアルキル基、又はハロゲンである。幾つかの実施態様において、前記Rは、水素、置換又は非置換のC1−6アルキル基、又はハロゲンである。他の幾つかの実施態様において、前記Rは、水素、フッ素、塩素、臭素、置換又は非置換のメチル基、置換又は非置換のエチル基、置換又は非置換のプロピル基、置換又は非置換のイソプロピル基である。本発明のある具体的な実施例において、前記Rは、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基である。本発明の実施態様において、Rが置換のアルキル基である場合には、前記アルキル基は、直鎖アルキル基又は分岐鎖アルキル基であってもよく、前記Rの置換基は、D、F、Cl、Br、C1−3アルキル基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基又はC1−3アルコキシ基である。
【0020】
は、それぞれ独立して、置換又は非置換のアルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、スルホン酸基及びカルボキシ基から選ばれるいずれか1種又は複数種である。幾つかの実施態様において、前記Rは、それぞれ独立して、C1−5アルキル基、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基のいずれか1種又は複数種から選ばれる。幾つかの実施態様において、前記Rは、それぞれ独立して、フッ素、塩素、臭素、ニトロ基、シアノ基、置換又は非置換のメチル基、置換又は非置換のエチル基、置換又は非置換のイソプロピル基のいずれか1種又は複数種から選ばれる。本発明のある具体的な実施例において、前記Rは、それぞれ独立して、フッ素、塩素、ニトロ基、置換又は非置換のメチル基、置換又は非置換のエチル基のいずれか1種又は複数種から選ばれる。本発明の実施態様において、Rが置換のアルキル基である場合には、前記アルキル基は、直鎖アルキル基又は分岐鎖アルキル基であってもよく、前記Rの置換基は、D、F、Cl、Br、C1−3アルキル基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基又はC1−3アルコキシ基である。
【0021】
は、置換又は非置換のC1−5的アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシクロヘキシル基である。幾つかの実施態様において、前記Rは、置換又は非置換のメチル基、置換又は非置換のエチル基、置換又は非置換のプロピル基、置換又は非置換のイソプロピル基、フェニル基、ピリジル基又はシクロヘキシル基である。本発明の実施態様において、Rが置換のアルキル基である場合には、前記アルキル基は、直鎖アルキル基又は分岐鎖アルキル基であってもよく、前記Rの置換基は、D、F、Cl、Br、C1−3アルキル基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基又はC1−3アルコキシ基である。
【0022】
xは0〜4的整数であり、即ち、xは0、1、2、3又は4である。本発明のある具体的な実施例において、xは、0又は1である。
yは、0又は1である。
【0023】
本発明のある具体的な実施例において、前記式(II)の構造は、具体的には、以下のとおりである。
【0024】
【化4】
【0025】
本発明は、さらに、化合物(10)と化合物(16)とを反応させることにより、式(I)で表される化合物を得るステップを含む、式(I)で表される化合物の製造方法を提供する。
【0026】
【化5】
【0027】
ここで、R、R、R、m、nbの範囲は上記と同じであり、説明を省略する。
【0028】
本発明のある具体的な実施例において、前記反応は、tert-ブチルマグネシウムクロリドの触媒作用で行い、前記反応の溶媒は、1,4−ジオキサンである。
本発明のある具体的な実施例において、前記反応の温度は60〜80℃であり、反応時間は1〜3hである。
【0029】
本発明のある具体的な実施例において、前記化合物(10)の合成経路は、以下の通りである。
【0030】
【化6】
【0031】
本発明のある具体的な実施例において、前記化合物(16)の合成経路は、以下の通りである。
【0032】
【化7】
【0033】
本発明は、上記代謝性疾患治療用化合物又は上記製造方法で調製される化合物、及び薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、アジュバント、媒介物又はそれらの組み合わせを含む医薬組成物を提供する。
本発明に係る医薬組成物は、経口投入、注射投入、噴霧吸入、局所投与、経直腸投与、経鼻、舌下投与、又は埋込型薬液注入装置による投与であってもよい。
本発明に係る医薬組成物の剤形は、経口剤形、例えば、カプセル、錠剤、丸剤、粉末剤、顆粒剤、水性懸濁液及び溶液などである。
【0034】
本発明で提供される経口剤形は、圧縮錠剤、開発錠剤、チュアブルロゼンジ、インスタント錠剤、再圧縮錠剤、腸溶性錠剤、糖衣錠またはフィルムコーティング錠として提供することができる。腸溶性錠剤は、胃酸に耐性があるが腸で溶解または崩壊する物質でコーティングされた圧縮錠であり、それによって有効成分が胃の酸性環境に接触するのを防ぐ。腸溶性コーティングは、脂肪酸、脂肪、サリチル酸フェニル、ワックス、シェラック、アミノ化シェラック及び酢酸フタル酸セルロースを含むが、これらに限定されない。糖衣片は、糖衣で囲まれた圧縮錠剤であり、不快な味や臭いを隠し、錠剤の酸化を防ぐことができる。フィルムコーティング錠は、水溶性物質の薄層またはフィルムで覆われた圧縮錠剤である。フィルムコーティングは、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール4000及び酢酸フタル酸セルロースを含むが、これらに限定されない。フィルムコーティングは、糖衣と同じ一般的な特性を与える。再圧縮錠剤は、1回超えの圧縮サイクルを経て製造された圧縮錠剤であり、多層錠剤、圧縮コーティング錠または乾式コーティング錠が含まれる。錠剤剤形は、呈粉末、結晶又は顆粒状を示す活性成分から、単独で、又は本発明に記載の1種又は複数種の担体又は賦形剤と組み合わせて調製されることができ、前記担体及び賦形剤は、バインダー、崩壊剤、放出制御ポリマー、潤滑剤、希釈剤及び/又は着色剤が含まれる。本発明で提供される医薬組成物は、ゼラチン、メチルセルロース、デンプン又はアルギン酸カルシウムから調製できるソフトカプセル又はハードカプセルとして提供されることができる。経口投入用液体剤形は、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルが含まれるが、これらに限定されない。液体剤形は、活性化合物に加えて、水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤といった周知の一般的な不活性希釈剤、例えば、エタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ジメチルホルムアミド、油脂(特に綿実、落花生、トウモロコシ、微生物、オリーブ、ヒマシ油、ゴマ油)、グリセロール、2−テトラヒドロフランメタノール、ポリエチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、及びそれらの混合物が含まれる。経口組成物は、不活性希釈剤に加えて、アジュバント、例えば、湿潤剤、乳化剤又は懸濁剤、甘味料、調味料及び香料も含むことができる。
本発明の医薬組成物は、坐剤又は適切な注腸剤の形態で直腸内投与することもできる。又は、注射剤として投与される。
上記剤形のアジュバントは、当業者の技術常識に従って選択することができる。
【0035】
本発明の上記化合物、上記製造方法で調製される化合物又は上記医薬組成物は、FXR及び/又はTGR5介在性疾患を治療又は軽減する医薬品の調製に適用されるが、これらに限定されない。
本発明のある具体的な実施例において、前記FXR及び/又はTGR5介在性疾患は、慢性肝疾患、代謝性疾患又は門脈圧亢進症などの疾患から選ばれるが、これらに限定されない。
本発明のある具体的な実施例において、前記慢性肝疾患は、原発性胆汁うっ滞性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、肝線維症関連疾患、薬物による胆汁うっ滞、進行性家族性肝内胆汁うっ滞、妊娠中の胆汁うっ滞、アルコール性肝疾患及び非アルコール性脂肪性肝疾患の1種又は複数種を含み、前記門脈圧亢進症は、肝線維症、肝硬変、脾腫又は他の原因による門脈圧上昇から選ばれ、前記代謝性疾患は、高コレステロール血症、脂質異常症、コレステロール結石、及び高トリグリセリド血症を含む。
【0036】
本発明に係る化合物又は組成物は、上記慢性肝疾患、代謝性疾患又は門脈圧亢進症などの疾患を療または軽減するために、他の医薬品又は化合物と併用されることもできる。本発明の化合物は、単独した活性薬剤として投与されてもよく、又は他の治療剤と併用して投与されてもよく、同じまたは類似した治療活性を有し、そのような併用投与に対して安全且つ有効であると判定された他の化合物を含む。一つ側面では、本発明は、本発明に開示される化合物と1種又は複数種の治療活性剤との併用薬を安全な有効量で投与することを含む、疾患又は病状を治療、予防又は改善する方法を提供する。幾つかの実施態様において、併用薬は、1つ又は2つの他の治療剤を含む。
他の側面では、本発明は、本発明に開示される化合物、本発明の製造方法で調製される化合物又は本発明に開示される化合物の医薬組成物の治療有効量を、必要とする個体又は試料に投与することを含む、FXR及び/又はTGR5受容体を活性化する方法を提供する。本発明に係る化合物の「治療有効量」又は「有効量」は、2.5mg/kg〜100mg/kgであってもよい。幾つかの実施例では、本発明に係る化合物の「治療有効量」又は「有効量」は、0.4mg/kg〜4mg/kgであってもよく、他の幾つかの実施例では、本発明に係る化合物の「治療有効量」は、0.2mg/kg〜25mg/kgであってもよい。
他の側面では、本発明は、本発明に開示される化合物、本発明製造方法で調製される化合物又は本発明に開示される化合物の医薬組成物の治療有効量を、必要とする個体に投与することを含む、FXR及び/又はTGR5受容体介在性疾患を予防、治療又は軽減する方法を提供する。
【0037】
本発明のある具体的な実施例において、前記FXR及び/又はTGR5受容体介在性疾患は、慢性肝疾患、代謝性疾患又は門脈圧亢進症等疾患から選ばれるが、これらに限定されない。
本発明のある具体的な実施例において、前記慢性肝疾患は、原発性胆汁うっ滞性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、肝線維症関連疾患、薬物による胆汁うっ滞、進行性家族性肝内胆汁うっ滞、妊娠中の胆汁うっ滞、アルコール性肝疾患及び非アルコール性脂肪性肝疾患の1種又は複数種を含み、前記門脈圧亢進症は、肝線維症、肝硬変、脾腫或他の原因による門脈圧上昇から選ばれ、前記代謝性疾患は、高コレステロール血症、脂質異常症、コレステロール結石、及び高トリグリセリド血症を含む。
本発明で使用される「治療有効量」又は「治療有効用量」という用語は、個人の生物学的または医学的反応(例えば、酵素またはタンパク質の活性を低減又は阻害させるか、受容体を活性化するか、受容体を拮抗するか、症状を改善させるか、病状を緩和させるか、病気の進展を抑え遅らせるか、疾患を予防することなど)を引き起こすことができる本発明の化合物又は組成物の量を意味する。
【0038】
本発明に開示される化合物は、不斉又はキラル中心を含むことができるため、異なる立体異性体の形態で存在することができる。本発明は、ジアステレオマー、エナンチオマー、アトロプ異性体、及び幾何(或いは配座)異性体、及びそれらの混合物、例えば、ラセミ混合物を含むが、これらに限定されない。式(I)又は(II)で表される化合物の全ての立体異性体の形態を本発明の不可欠な部分にすることを目的とする。
本発明が開示される構造では、いずれか特定のキラル原子の立体化学が明示されていない場合には、該構造のいずれの立体異性体も本発明の範囲内にあると考えられるとともに、本発明に開示される化合物として本発明に含まれる。立体化学が特定の立体配置を示すくさび型線(solid wedge)又は破線で表記される場合には、該構造の立体異性体は、それに応じて明確、定義される。
式(I)又は(II)で表される化合物は、異なる互変異性体として存在してもよく、且つ、これらすべての互変異性体は、本発明に係る互変異性体のように、本発明の範囲内に含まれる。
【0039】
式(I)又は(II)で表される化合物は、塩として存在することができる。幾つかの実施態様において、前記塩とは、薬学的に許容される塩を指す。他の幾つかの実施態様において、前記塩は、式(I)又は(II)で表される化合物を調製及び/又は精製する、及び/又は本式(I)又は(II)で表される化合物のエナンチオマー中間体を分離するために適用することもできる。
本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、特に断りがない限り、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本発明に係るすべての特許及び刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。「包含」、「含み」という用語は、開放式の表記であり、即ち、本発明で指定された内容を含むが、他の側面の態様を除かない。
「立体異性体」とは、同じ化学構造を有するが、原子又は基の空間的な配置が異なる化合物を意味する。立体異性体は、エナンチオマー、ジアステレオマー、配座異性体(回転異性体)、幾何異性体(シス/トランス)異性体、アトロプ異性体などを含む。
【0040】
「キラル」とは、その鏡像と重ね合わすことができない性質を有する分子を指し、「アキラル」とは、その鏡像と重ね合わすことができる分子を指す。
「エナンチオマー」とは、化合物の2つの重ね合わすことができないが、互いに鏡像になる関係にある異性体を指す。
「ジアステレオマー」とは、2つ又は複数のキラル中心を持ちながら、それらの分子が互いに鏡像ではない立体異性体を指す。ジアステレオマーは、異なる物理的特性、例えば、融点、沸点、スペクトル特性及び反応性を有する。ジアステレオマー混合物は、例えば、電気泳動及びHPLCのようなクロマトグラフィーのような高分解能の分析手段により分離できる。
【0041】
本発明で用いられる立体化学の定義及び規則は、一般的にS.P.Parker、Ed.、McGraw−HillDictionary of Chemical Terms(1984)McGraw−Hill Book Company、New York;andEliel、E.and Wilen、S.、「Stereochemistry of Organic Compounds」、John Wiley&Sons、Inc.、New York、1994に従う。
多くの有机化合物は、光学的に活性な形態で存在し、即ち、それらは平面偏光の平面を回転させる能力を持つ。光学活性化合物の説明では、接頭辞D/L又はR/Sを使用して、1つ又は複数のキラル中心に関する分子の絶対配置を示す。接頭辞d/l又は(+)/(-)は、化合物による平面偏光の回転を指定するために使用される記号であり、ここで、(-)又はlは、化合物が左旋性であることを示す。接頭辞が(+)又はdである化合物は、右旋性である。具体的な立体異性体の1つは、エナンチオマーであり、このような異性体の混合物はエナンチオマーの混合物と呼ばれる。エナンチオマーの50:50の混合物は、ラセミ混合物又はラセミ体と呼ばれ、化学反応又はプロセスでは立体選択性または立体特異性がない場合には、このような状況が発生する可能性がある。
本発明に開示される化合物のいずれの不斉原子(例えば、炭素など)も、ラセミ又はエナンチオマーが濃化した形態で存在することができ、例えば、(R)−、(S)−又は(R,S)−配置として存在することができる。ある実施形態において、各不斉原子は(R)−又は(S)−配置で少なくとも50%のエナンチオマー過剰率であり、少なくとも60%のエナンチオマー過剰率であり、少なくとも70%のエナンチオマー過剰率であり、少なくとも80%のエナンチオマー過剰率であり、少なくとも90%のエナンチオマー過剰率であり、少なくとも95%のエナンチオマー過剰率であり、或いは少なくとも99%のエナンチオマー過剰率である。
【0042】
「未置換」という用語は、指定された基が置換基を持っていないことを意味する。「置換の」という用語は、特定の構造中の置換されてもよい水素原子の1つ又は複数が具体的な置換基で置換されることを意味する。特に明記しない限り、置換された基は、その基の各置換可能な位置で置換された置換基を有してもよい。特定の構造式では1つ以上の位置が具体的な基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置き換えられると、置換基は同じ又は異なる各位置で置換されることができる。本発明に係る置換基は、D、−OH、−NH、F、Cl、Br、C1−3アルキル基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、C1−3アルコキシ基を含むが、これらに限定されない。
本発明で使用される「各……は、独立して、……である」と「……は、それぞれ独立して、……である」と「……は、独立して、……である」という記述方式は、互換されることができ、いずれも広い意味で理解されるべきである。それらは、異なる基では、同じ符号の間で表現された特定の選択は相互に影響しないことを意味してもよく、同じ基では、同じ符号の間で表現された特定の選択は相互に影響しないことを意味してもよい。
「ハロゲン」という用語は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)を指す。
「アルコキシ基」という用語は、アルキル基が酸素原子を介して分子の残りの部分に連結していることを意味し、ここで、アルキル基は本発明に記載の意味を有する。前記アルコキシ基は、特に断りがない限り、1〜12個の炭素原子を含む。幾つかの実施態様において、アルコキシ基は、1〜6個の炭素原子を含み、他の幾つかの実施態様において、アルコキシ基は、1〜4個の炭素原子を含み、幾つかの実施態様において、アルコキシ基は、1〜3個の炭素原子を含む。前記アルコキシ基は、本発明に記載の置換基の1つ又は複数で任意に置換されることができる。
【0043】
本発明に記載されるように、置換基から結合を描き中心環と連結している環系(式aで示されるように)は、置換基が該環系でのすべての置換可能な位置から1つを選択して置換することを意味する。例えば、式aは、置換基Rがピリジン環でのすべての置換可能な位置から1つを選択して置換することを意味し、例えば、式b〜式dで示される。
【0044】
【化8】
【0045】
本発明に記載されるように、置換基は、単結合を介して中心環に連結し、下付き文字を付き、形成される環系(式eで示されるように)は、置換基が該環系でのすべての置換可能な位置で置換することを意味する。
【0046】
【化9】
【0047】
式中、nが0である場合には、置換基なし、即ち、未置換を意味する。
nが1である場合には、置換基が該環系でのすべての置換可能な位置から1つを選択して置換されることを意味する。
nが1を超え、例えば、2、3又は4である場合には、置換基が1つ以上であり、例えば、2個の置換基、3個の置換基又は4個の置換基を有し、各置換基は、異なる置換位置又は同じ置換位置を選択してもよく、且つ各置換基は、同じであっても異なっていてもよい。
上記波線は、連結する結合を示す。
【0048】
「薬学的に許容される」という用語は、物質又は組成物が、製剤を包含する他の成分及び/又はそれで治療される哺乳動物と化学的及び/又は毒理学的に適合しなければならないことを意味する。
本発明に係る「薬学的に許容される塩」は、通常の化学的方法により親化合物、塩基性又は酸性部分から合成することができる。一般的に、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸形態を化学量論量の適切な塩基(例えば、Na、Ca、Mg又はKの水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩など)と反応させるか、これらの化合物の遊離塩基形態を化学量論量の適切な酸と反応させることにより調製される。このような反応は、通常、水、有機溶媒又は両方の混合物で行う。一般的に、適当な場合には、非水性媒体、例えば、ジエチルエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール又はアセトニトリルを使用する必要がある。例えば、「Remington ′s Pharmaceutical Sciences」、第20版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、(1985);及び「医薬用塩のハンドブック:性質、選択及び応用(Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties、Selection、and Use)」、Stahl and Wermuth(Wiley−VCH、Weinheim、Germany、2002)には、他の適切な塩のリストを見つけることができる。
さらに、本発明に開示される化合物(それらの塩を含む)は、それらの水和物の形態又は溶媒(例えば、エタノール、DMSOなど)を含む形態で得られることができ、それらの結晶のために用いられる。本発明に開示される化合物は、本質的にまたは設計により薬学的に許容される溶媒(水を含む)と溶媒和物を形成することができるため、本発明は、溶媒和及び非溶媒和の形態を含むことを目的とする。
【0049】
さらに、本発明に開示される化合物は、プロドラッグとして投与されることができる。本発明において、本発明に開示される化合物の「プロドラッグ」は、患者に投与される時に、体内に本発明に開示される化合物を最終的に放出することができる機能的誘導体である。
本発明で使用される「プロドラッグ」という用語は、化合物がin vivoで式(I)又は式(II)で表される化合物に変換することを意味する。このような変換は、血液中のプロドラッグの加水分解、または血液または組織内の酵素による母体構造への変換の影響を受ける。本発明のプロドラッグ類化合物は、エステルであってもよく、従来の発明において、エステルのうち、プロドラッグとして使用できるものとして、フェニルエステル類、脂肪族(C−C24)エステル類、アシルオキシメチルエステル類、炭酸エステル、カルバメート類及びアミノ酸エステル類がある。例えば、本発明の化合物は、ヒドロキシ基を包含すると、それをアシル化してプロドラッグの形態の化合物を得ることができる。他のプロドラッグは、リン酸エステルを含み、これらのリン酸エステル類化合物は、母体のヒドロキシ基のリン酸化により得られるものである。
「代謝物」とは、特定の化合物又はその塩がin vivoで代謝することにより得られる生成物を意味する。化合物の代謝物は、当技術分野で周知の技術により同定することができ、その活性は、本発明に記載の実験方法により特徴付けることができる。このような生成物は、投与する化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、脱アミド化、エステル化、脱脂、及び酵素的分解などの方法により得られる。従って、本発明は、化合物の代謝物を含み、本発明の化合物と哺乳動物との一定期間での十分な接触により生成される代謝物を含む。
【0050】
本発明に係る「溶媒和物」とは、1つ又は複数の溶媒分子と本発明の化合物から形成される会合体を意味する。溶媒和物を形成する溶媒は、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、乙酸及びアミノエタノールを含むが、これらに限定されない。「水和物」という用語は、水である溶媒分子によって形成される会合体を意味する。前記溶媒が水である場合には、「水和物」という用語を使用することができる。幾つかの実施例では、本発明の化合物の分子は1つの水分子と結合することができ、例えば、一水和物であり、他の幾つかの実施例では、本発明の化合物の分子は、1つ以上の水分子と結合することができ、例えば、二水和物であり、さらに他の幾つかの実施例では、本発明に係る化合物の分子は、1つ未満の水分子と結合することができ、例えば、半水和物である。本発明に係る水和物は、非水合形態のかかる記化合物の生物学的有効性を保持することに留意すべきである。
本発明で使用される「薬学的に許容されるアジュバント」とは、投与する剤形又は医薬組成物の一致性に関連する薬学的に許容される材料、混合物又は溶媒を意味する。各々のアジュバントは、患者に投与される時に本発明に開示される化合物の効力の相互作用を大きく低減させ、薬学的に許容される医薬組成物ではない相互作用をもたらすことを避けるために、混合際に医薬組成物の他の成分と適合しなければならない。さらに、各種のアジュバントは、薬学的に許容されるものでなければならなく、例えば十分に高い純度である。適切な薬学的に許容されるアジュバントは、選ばれる具体的な剤形に応じて異なる。さらに、薬学的に許容されるアジュバントは、組成物での特定の機能に基づいて選択されることができる。例えば、均一な剤形の生成に寄与する特定の薬学的に許容されるアジュバントを選択することができる。安定な剤形の生成に寄与する特定の薬学的に許容されるアジュバントを選択することができる。患者に投与される時に本発明に開示される化合物を身体のある器官又は部分から身体の別の器官又は部分に運ぶまたは輸送するのに寄与する特定の薬学的に許容されるアジュバントを選択することができる。患者のコンプライアンスを増強させる特定の薬学的に許容されるアジュバントを選択することができる。適切な薬学的に許容されるアジュバントは、希釈剤、充填剤、バインダー、崩壊剤、潤滑剤、流動促進剤、造粒剤、コーティング剤、湿潤剤、溶媒、共溶媒、懸濁助剤、乳化剤、甘味料、矯味剤、苦味マスキング剤、着色剤、固化防止剤、保湿剤、キレート剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、防腐剤、安定剤、界面活性剤及び緩衝剤というアジュバントを含む。当業者は、ある薬学的に許容されるアジュバントが1つ以上の機能を与えるとともに、選択されてもよい機能も与えることができ、これは、製剤中に存在する該アジュバントの量及び製剤中にどの他のアジュバントが存在するかによるものであることを認識する。
【0051】
「アリール基」という用語は、6〜14個の環原子、又は6〜12個の環原子、又は6〜10個の環原子を含む単環式、二環式または三環式全炭素環系を意味し、ここで、少なくとも1つの環は、芳香族であり、且つ1つ又は複数の結合点が分子の残りの部分に連結する。アリール基の実例は、フェニル基、ナフチル基及びアントラセニル基を含むことができる。前記アリール基は、独立して、本発明に記載の置換基の1つ又は複数で任意に置換されることができる。
「ヘテロアリール基」という用語は、5〜12個の環原子、又は5〜10個の環原子、又は5〜6個の環原子を含む単環、二環または三環を意味し、ここで、少なくとも1つの環は、芳香族であり、且つ少なくとも1つの芳香族環は、1つ又は複数のヘテロ原子を含み、且つ1つ又は複数の結合点が分子の残りの部分に連結する。ヘテロアリール基の実例は、フリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基又はインドリル基等などを含むが、これらに限定されない。
【0052】
本発明は、従来技術と比較して、式(I)又は式(II)で表される構造を有する化合物、又はそのラセミ体、立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒和物、水和物、代謝物、薬学的に許容される塩又はそのプロドラッグである代謝性疾患治療用化合物を提供する。本発明で提供される上記化合物は、FXR及びTGR5を標的とし、in vivoで胆汁酸、コレステロール動的平衡、トリグリセリド合成及び脂肪生成を調節することができるため、胆汁酸、コレステロール、トリグリセリド代謝により引き起こす様々な疾患に適用でき、しかも、本発明の化合物は、肝臓標的化合物であり、類似化合物よりも高い効力を有し、副作用が低く、他の類似化合物の臨床的副作用を克服する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1図1は、実施例1の化合物14のマススペクトルである。
図2図2は、実施例1の化合物16のマススペクトルである。
図3図3は、実施例1の化合物16のH-NMRスペクトルである。
図4図4は、実施例1の化合物1のマススペクトルである。
図5図5は、実施例1の化合物1のH-NMRスペクトルである。
図6図6は、異なる群のラットの各時点での胆汁排出量を示す。
図7図7は、被験化合物1−Hの各用量群ラットの門脈圧の影響を示す。
図8図8は、被験化合物1−Hの各用量群ラットの門脈圧の平均変化百分率を示す。
図9図9は、被験化合物1−Hの各用量群ラットの肝臓及び脾臓の外観を示す。
図10図10は、被験化合物1−Hの各用量群ラットの血清学的パラメーターを示す。
図11図11は、被験化合物1−Hの各用量群ラットの肝臓病理切片のMasson染色及びHE染色を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明をさらに説明するために、以下、実施例を参照して本発明で提供される代謝性疾患治療用化合物及びその製造方法、並びに応用を詳しく説明する。以下の実施例における溶媒の割合は、特に断りがない限り、いずれも体積比である。例えば、酢酸エチル:石油エーテル=1:5とは、酢酸エチル:石油エーテルの体積比が1:5であることを意味する。
【0055】
実施例1 化合物1(即ち、化合物1−H)の合成
1、化合物2の合成
【0056】
【化10】
【0057】
1000mLの丸底フラスコに、テトラヒドロフラン 300mLを加え、その後、ケノデオキシコール酸(式aで表される)30g(76.42mmol)、過塩素酸3mLを加え、室温で撹拌しながらギ酸100mLを加えた。温度が50℃になるように制御し、15時間撹拌しながら反応させ、減圧下で濃縮して溶媒を除去した。残留物に水4Lを加えて希釈し、ろ過し、固体を収集し、ジクロロメタン2Lを加えて固体を溶解させた。無水硫酸ナトリウムを加えて溶液を乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。粗生成物に石油エーテル4Lを加えてスラリー化し、ろ過し、白色固体を収集し、化合物2 32.8gを収率98%で得た。
2、化合物3の合成
【0058】
【化11】
【0059】
アルゴンガス保護下で、5Lの丸底フラスコに、化合物2 100g(222.92mmol)、四塩化炭素溶解固体 3L、酢酸鉛 199.1g(446.41mmol)、ヨウ素 113.64g(447.40mmol)を順に加え、得られた反応液をタングステンランプ(250W)の照射下、20℃で24時間撹拌しながら反応させ、飽和チオ硫酸ナトリウム 3Lを加えて反応をクエンチし、ろ過し、固体を除去し、濾液にジクロロメタンを1回あたり3L加えて2回抽出した。有機相を合わせ、それぞれ飽和チオ硫酸ナトリウム2Lを加え、2回洗浄し、水2Lで1回洗浄し、飽和塩化ナトリウム水溶液2Lで1回洗浄した。有機相に無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。淡黄色の固体化合物3 110gを収率93%で得た。
3、化合物4の合成
【0060】
【化12】
【0061】
3Lの丸底フラスコに、室温で化合物3(250g,471.27mmol)、安息香酸カリウム150.9g(941.88mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド 2Lを順に加えた。反応液を80℃で15時間撹拌しながら反応させ、減圧下で濃縮した。残留物をジクロロメタン3Lに溶解させた。溶液は、順に水1.6Lで2回洗浄し、飽和チオ硫酸ナトリウム1.6Lで1回洗浄し、飽和塩化ナトリウム1.6Lで1回洗浄した。有機相に無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。茶色の化合物4を310g得、精製せずに次の反応を行った。
4、化合物5の合成
【0062】
【化13】
【0063】
2Lの丸底フラスコに、メタノール1Lを加え、粗生成物化合物4 35gをメタノール(1000mL)に溶解させた後、濃塩酸を20mL加え、反応液を20℃で24時間撹拌しながら反応させ、減圧下で濃縮した。残留物をジクロロメタン3Lに溶解させ、溶液をそれぞれ飽和重炭酸ナトリウム水溶液800mLで2回洗浄し、飽和塩化ナトリウム水溶液800mLで1回洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=80:1)により精製した。化合物5(収率60%、黄色固体)を22.8g得た。
5、化合物6の合成
【0064】
【化14】
【0065】
2Lの丸底フラスコに、順次にクロロホルム1Lを加え、化合物5 35g(74.68mmol)をクロロホルム溶媒(1050mL)に溶解させ、次いで、クロロクロム酸ピリジニウム(17.687g, 82.30mmol)とシリカゲル(140g)の混合物を加え、酢酸35mLを徐々に滴下した。反応液を20℃で24時間撹拌しながら反応させ、反応液をジクロロメタン4Lとメタノール40mLの混合溶液で希釈した。ろ過し、固体を得、濾液をそれぞれ水1.2Lで2回洗浄し、飽和塩化ナトリウム溶液1.2Lで1回洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=100:1)により精製し、化合物6(収率66%、白色固体)を23g得た。
6、化合物7の合成
【0066】
【化15】
【0067】
5Lの三つ口フラスコに、テトラヒドロフラン1.2Lを加え、ジイソプロピルアミン(182 g, 1.80 mol)をテトラヒドロフランに溶解させ、−78℃でn−ブチルリチウム2.5Mのテトラヒドロフラン溶液721mLを徐々に滴下し、滴下終了後、−78℃で30分間撹拌した後、さらに−78℃でトリメチルクロロシラン(160.3g,1.50mol)を徐々に滴下し、−78℃で30分間撹拌した。次に、−78℃で上記溶液に化合物6(70g,0.15mol)とテトラヒドロフラン(900mL)の混合溶液を徐々に滴下し、−78℃で30分間撹拌した。−78℃でトリエチルアミン(272.3g,2.70mol)を滴下し、次いで、20℃に昇温させ、2時間撹拌した。飽和重炭酸ナトリウム水溶液2.1Lでクエンチした。反応液を酢酸エチル6Lで抽出し、有機相を合わせ、それぞれ水1.2Lで2回洗浄し、飽和塩化アンモニウム水溶液1.2Lで5回洗浄し、飽和塩化ナトリウム水溶液1.2Lで1回洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した。化合物7粗生成物を145g得、直接に次の反応に使用した。
7、化合物8の合成
【0068】
【化16】
【0069】
アルゴンガス保護下で、三つ口フラスコに化合物7(40g,69.07mmol)とジクロロメタン(600mL)の混合溶液を加え、溶液にアセトアルデヒド(6.506g,147.86mmol)を加え、次いで、−60℃で三フッ化ホウ素ジエチルエーテル複合体(69.99g,492.89mmol)を滴下し、反応液を20℃で24時間撹拌した。飽和重炭酸ナトリウム水溶液で反応液のpH値が7〜8になるように調整し、水100mLで反応液を希釈し、その後、ジクロロメタン700mLで3回抽出し、有機相を合わせた。有機相をそれぞれ水1Lで2回洗浄し、飽和塩化ナトリウム水溶液1Lで1回洗浄し、さらに無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=100:1)により精製し、化合物8(収率37%、白色固体)を10g得た。
8、化合物9の合成
【0070】
【化17】
【0071】
窒素ガス保護下で、250mLの三つ口フラスコに、それぞれテトラヒドロフラン 100mL、化合物8(5g,12.87mmol)、メタノール25mL、三塩化セリウム七水和物(19.17g,51.46mmol)、水素化ホウ素ナトリウム(1.85g,51.39mmol)を加え、溶液を20℃で24時間反応させ、次いで、飽和塩化アンモニウム水溶液80mLでクエンチし、反応液を減圧下で濃縮した。残留物に水300mLを加えて希釈し、ジクロロメタン600mLで3回抽出し、有機相を合わせた。有機相をそれぞれ飽和重炭酸ナトリウム水溶液300mLで1回洗浄し、飽和塩化ナトリウム水溶液300mLで1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した。化合物9(収率96%、黄色固体)を4.8g得た。
9、化合物10の合成
【0072】
【化18】
【0073】
250mLの丸底フラスコに、メタノール80mL、化合物9(8g,20.48mmol)、10%Pd/C(4g,3.77mmol)を加え、水素ガスを導入し、40℃で24時間反応させた。反応液をろ過し、濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=100:1)により精製し、化合物10(収率70%、白色固体)を5.6g得た。
10、化合物11の合成
【0074】
【化19】
【0075】
アルゴンガス保護下で、5Lの三つ口フラスコに、(2S)−2−アミノ−3−フェニルプロピオン酸(250g,1.51mol)と水3.5Lの混合溶液を加え、さらにギ酸(491.75g,6.04mol)を加えた。20℃で4%Pd/C((250g,94.34mmol)を加えた。水素ガスを導入し、20℃で48時間反応させた後、ろ過し、濃縮した。粗生成物をメタノールで再結晶し、ろ過し、固体を収集し、化合物11(収率65%、白色固体)を190g得た。
H−NMR: (CDOD, 400MHz, ppm): 7.25−7.40(m,5H), 3.86(t, J=6.9Hz, 1H), 3.37−3.31(m, 1H), 3.24(dd, J=14.6, 6.8Hz, 1H), 2.85(s, 6H).
11、化合物12の合成
【0076】
【化20】
【0077】
窒素ガス保護下で、3Lの三つ口フラスコに、テトラヒドロフラン700mLとジイソプロピルアミン(188.6g)の混合溶液を加え、−78℃で30分間以内にn-ブチルリチウム(2.5Mのテトラヒドロフラン溶液,746mL)を滴下した。反応を20℃に昇温させ、20分間撹拌した。次いで、−78℃で30分間かけて酢酸エチル(164.4g,1.87mol)とテトラヒドロフラン(200mL)の混合溶液を滴下し、溶液を−78℃で1時間撹拌した。溶液に、−78℃で25分間以内に4−ピリジルホルムアルデヒド(100g,933.62mmol)とテトラヒドロフラン250mLの混合溶液を滴下し、反応を0℃に昇温させて1.5時間撹拌し、反応を濃度が1Nの塩酸3.6Lでクエンチした。溶液を酢酸エチル1Lで3回抽出し、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濾液を濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:石油エーテル=1:1)により精製し、黄色の油状化合物12(収率80%、146g)を得た。
化合物13の合成
【0078】
【化21】
【0079】
窒素ガス保護下で、1Lの三つ口フラスコに、化合物12(29.7g,153.69mmol)とジクロロメタン(300mL)の混合溶液を加え、さらに、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(36.9g,192.49mmol)、4,4−ジメチルアミノピリジン(1.56g,12.77mmol)、化合物11(25g,128.06mmol)を順に加えた。溶液を20℃で5時間撹拌し、反応終了後、ジクロロメタン300mLで反応液を希釈した。反応混合物を飽和炭酸ナトリウム水溶液500mLで2回洗浄し、水500mLで1回洗浄し、飽和塩化ナトリウム水溶液500mLで1回洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:石油エーテル=1:5)により精製し、得られた粗生成物を、さらにFlash−Prep−HPLCにより精製し、石油エーテル(0.1%トリエチルアミン含有)/酢酸エチル(0.1%トリエチルアミン含有)=35:65、酢酸エチル(0.1%トリエチルアミン含有)まで極性を増加させ、黄色固体として化合物13(収率32%、15g)を得た。
13、化合物14の合成
【0080】
【化22】
【0081】
窒素ガス保護下で、2Lの三つ口フラスコに、ジエチルエーテル900mLを加え、−20℃まで降温し、水素化アルミニウムリチウム(18.5g,487.48mmol)を加え、次いで、−20℃で化合物13(30g,80.98mmol)とジエチルエーテル(300mL)の混合溶液を加えた。反応液を−20℃で3時間撹拌し、反応を酢酸エチル400mLでクエンチし、その後、飽和硫酸ナトリウム水溶液40mL、メタノール150mLを加えた。20℃で1時間撹拌し、ろ過し、濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=20:1)により精製し、粗生成物を酢酸エチルで再結晶し、白色固体として化合物14(PH−MKA−MT2002−8、7.74g、収率62%)を得た。
LCMS: (ES,m/z): 154[M+H]
そのマススペクトルは、図1に示した。
そのHPLCデータは、以下の表1に示した。
【0082】
【表1】
【0083】
14、化合物15の合成
【0084】
【化23】
【0085】
アルゴンガス保護下で、3Lの三つ口フラスコに、テトラヒドロフラン400mL、ジエチルエーテル250mLを加え、塩化ホスホリル(77.2g,503.49mmol,1.00 eq.)を三つ口フラスコに加えた。−78℃で4−ニトロフェノール(70g,503.20mmol)とトリエチルアミン(50.96g,503.61mmol)とテトラヒドロフラン(400mL)とジエチルエーテル(250mL)の混合溶液を反応系に徐々に加え、反応液を20℃に昇温させ、24時間反応させ。固体をろ過し、濾液を濃縮した。粗生成物を減圧蒸留(5mm Hg)により精製し、180℃の留分を収集し、明るい黄色の油状化合物15(38g、収率29%)を得た。
P−NMR: (CDCl,121.5MHz,ppm):3.35。
15、化合物16の合成
【0086】
【化24】
【0087】
窒素ガス保護下で、1000mLの三つ口フラスコに、化合物14(27g,176.27mmol)とピリジン(210mL)とトリエチルアミン(3.024g,29.88mmol)との混合溶液を加え、0℃〜5℃で化合物15(45g,175.79mmol)とピリジン(360mL)との混合溶液を滴下し、反応液を20℃で5時間撹拌した。原料が消失した後、4−ニトロフェノールナトリウム(113.4g,704.35mmol,4.00 equiv)を加えた後、40℃で4時間撹拌し、20℃に移し、さらに16時間撹拌した。反応液を濃縮し、残留物を塩酸(2mol/L)1.5Lに溶解させ、酢酸エチル1.5Lで2回洗浄した。分離された水相を炭酸水素ナトリウムでpH7〜8に調整し、その後、ジクロロメタン1.2Lで3回抽出し、有機相を合わせた。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した。残留物をFlash−Prep−HPLCにより精製し、類白色固体として化合物16(35g、収率59%)を得た。
LC−MS:(ES,m/z):337[M+H]
H−NMR:(DMSO,400MHz,ppm):8.62−8.62(m、2H)、8.35−8.31(m、2H)、7.59−7.57(m、2H)、7.44−7.42(m、2H)、5.91(dd,J=10.1、3.7Hz、1H)、4.71−4.56(m、2H)、2.32−2.17(m、2H)。
P−NMR: (DMSO、162MHz、ppm): -14.08。
そのマススペクトルは、図2に示した。
そのHPLCデータは、以下の表2に示した。
【0088】
【表2】
1H NMRスペクトルは、図3に示した。
【0089】
16、化合物1(即ち、化合物1−H)の合成
【0090】
【化25】
【0091】
アルゴンガス保護下で、在25mLの三つ口フラスコに、化合物10(500mg,1.27mmol)と1,4−ジオキサン(6mL)の混合溶液を加え、20℃でtert-ブチルマグネシウムクロリド(6.37mL、1mol/L)を滴下し、20℃で4時間撹拌し、その後、65℃で化合物16(855.8mg,2.55mmol)と1,4−ジオキサン(15mL)の混合溶液を滴下し、65℃で2時間撹拌した。反応を飽和塩化アンモニウム溶液100mLでクエンチし、ジクロロメタン100mLで2回抽出し、有機相を合わせた。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液150mLで1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=20:1)により精製し、粗生成物をFlash−Prep−HPLCで精製し、類白色固体として化合物1(即ち、化合物1−H,30mg)を純度96.8%で得た。
LC−MS: (ES,m/z):590.2[M+H]
H−NMR:(CDOD,400MHz,ppm):8.60−8.58(m,2H),7.51−7.49(m,2H),5.76(m,1H),4.68(ddt,J=15.0,7.2,4.4Hz,1H),4.58−4.44(m,1H),4.30−4.19(m,2H),3.45(tt,J=10.6,4.5Hz,1H),3.12−3.02(m,1H),2.34−2.23(m,2H),2.08−1.77(m,6H),1.74−1.41(m,9H),1.41−1.02(m,10H),1.01(d,J=6.4Hz,3H),0.95(s,3H),0.86(t,J=7.4Hz,3H),0.70(s,3H)。
P−NMR:(CDOD,162MHz,ppm): −4.998。
そのマススペクトルは、図4に示した。
そのHPLCデータは、以下の表3に示した。
【0092】
【表3】
1H NMRスペクトルは、図5に示した。
【0093】
実施例2 化合物2−0の合成
1.化合物2−1の合成
【0094】
【化26】
【0095】
三つ口フラスコに、一定体積の無水ジエチルエーテルを加え、その後、フェノール(1000g、1.0 eq)及びトリエチルアミン(1070g,1.0 eq)を加え、0℃で撹拌しながら塩化ホスホリル(1600g、1.0 eq)を滴下し、窒素ガス保護下で3h反応させた。次いで、自然に室温まで戻し、一晩静置した。反応終了後、トリエチルアミン塩を迅速に濾別し、濾液を収集して濃縮し、乾燥させ、油状生成物2−1 800gを得、さらに精製せずに、次の反応に直接使用された。
2.化合物PH−MIK−001−21の合成
【0096】
【化27】
【0097】
三つ口フラスコに、一定体積の無水ジクロロメタン20Lを加えた後、トリエチルアミン(770g,2.0 eq.)を加え、該反応系を−78℃の環境でセットし、化合物2−1(800g,1.0 eq)を無水ジクロロメタンに溶解した溶液及び(S)−3−(クロロアミノ)−1−イソプロポキシブタン−2−オン(685g,1.0 eq)を滴下し、滴下終了後、2h反応させ、その後、自然に室温まで戻し、一晩静置した。溶媒を除去し、残留物を酢酸エチルで洗浄した後、ろ過し、濾液を濃縮して乾燥させ、化合物PH−MIK−001−21(800g)を得、次の反応に直接使用した。
3.化合物2−3の合成
【0098】
【化28】
【0099】
テトラヒドロフラン溶媒に、化合物2−2 (700g,1.73mol,1.00 eq.)を加え、−25℃、窒素ガス雰囲気の保護下でTMSCl (840g,7.79mol,4.5 eq)を滴下し、1h反応させた後、LDA (5.2L,2.0MのTHF溶液,1.00 eq.)を約1hかけて滴下した。滴下終了後、同温度で2h反応させた。反応終了後、予め冷却されたクエン酸水溶液で反応をクエンチした。水相を廃棄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して化合物2−3の黄色油状粗生成物820gを得、さらに精製せずに、次の反応に直接使用した。
4.化合物2−4の合成
【0100】
【化29】
【0101】
粗生成物化合物2−3(820g,1.49mol,1.00 eq.)を無水ジクロロメタン4.5Lに加え、該反応系を撹拌しながら−60℃でアセトアルデヒド(120g,2.72mol,1.8 eq.)を約1hかけて滴下し、その後、BF.EtO (695mL,3.6 eq.)を約1.5hかけて滴下した。滴下終了後、該反応系にその温度で2h反応させ、その後、室温で3h反応し続けた。次いで、0℃に冷却して50%の水酸化ナトリウム水溶液(320mL)で反応をクエンチし、10min十分に撹拌した。最後に、水相を廃棄し、有機相を収集し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して化合物2−4の黄色油状粗生成物750gを得、さらに精製せずに、次の反応に直接使用した。
5.化合物2−5の合成
【0102】
【化30】
【0103】
粗生成物2−4をメタノール/水(2.5/0.5L)の混合溶液に溶解させ、室温で撹拌しながら水酸化ナトリウム溶液(50%水酸化ナトリウム水溶液,180mL)に加えた。該反応系は50℃で4h反応した。反応終了後、メタノール溶液を濃縮し、クエン酸で酸性化し、酢酸エチルで2回抽出した。有機相を収集し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて濃縮した。最後に、酢酸エチルで再結晶し、黄色固体2−5 440gを得、3つのステップの総収率が60%である。
LC−MS: (ES,m/z):415 [M−H]
6.化合物2−6の合成
【0104】
【化31】
【0105】
化合物2−5(100g,0.24mol,1.00 eq.)を水(1000mL)に溶解させ、撹拌しながら水酸化ナトリウム(18g,0.45mol,1.88eq.)を加え、よく撹拌して完全に溶解させた後、窒素ガス保護下でPd/C (10%,10g,0.1 eq.)を加えた後、水素ガスで置き換えて水素圧5atmに維持して反応させ、100℃で4h反応させ、反応終了後、固体を濾別し、濾液を塩酸で酸性化し、酢酸エチルで2回抽出し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。最後に、メチルtert−ブチルエーテル:n−ヘキサン=1:2で再結晶し、白色固体2−6を75g(収率70%)得た。
LC−MS: (ES,m/z):417 [M−H]
7.化合物2−7の合成
【0106】
【化32】
【0107】
化合物2−6(215g,0.514mol,1.0 eq.)をギ酸(2L)に溶解させ、撹拌しながら過塩素酸15mLを滴下した。該反応は45℃で16h行った。反応終了後、室温まで冷却し、無水酢酸1.5Lを約1.0hかけて滴下し、滴下終了後、30minよく撹拌した。該混合物をを氷水浴に注ぎ、ジエチルエーテルで2回抽出した。収集された有機相を水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して黄色固体2−7 220gを得、さらに精製せずに、次の反応に直接使用した。
LC−MS: (ES,m/z):445 [M−H]
8.化合物2−8の合成
【0108】
【化33】
【0109】
粗生成物2−7(220g,0.49mol,1.0eq.)をトリフルオロ酢酸1.5Lに溶解させ、撹拌しながら無水トリフルオロ酢酸(425mL,3.67mol,7.5eq.)を滴下した。該反応系は0〜5℃で1.5h反応した後、亜硝酸ナトリウム(103g,1.48mmol,3.0eq.)を少しずつ加えた後、反応混合物を0〜5℃で1.5h反応させ、次いで、40℃で一晩静置した。反応終了後、反応系に2Mの水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応を中和し、酢酸エチルで2回抽出し、収集された有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、黄色固体として化合物2−8 160gを得た。
9.化合物2−9の合成
【0110】
【化34】
【0111】
粗生成物2−8(160g,0.39mol,1.0 eq.)をメタノール:水=1:1の溶液に溶解させ、40%水酸化カリウム水溶液を滴下し、滴下完后、該反応系は90℃で72h反応し、反応終了後、6Nの塩酸水溶液で反応系を中和し、減圧下で濃縮し、メタノールを除去し、残留物を酢酸エチルで3回抽出し、収集された有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、類白色粗生成物として固体2−9 150gを得、さらに精製せずに、次の反応に直接使用した。
LC−MS: (ES,m/z):403 [M−H]
10.化合物2−10の合成
【0112】
【化35】
【0113】
粗生成物2−9 (150g,0.38mol,1.0 eq.)をテトラヒドロフラン/水(2.5L、v/v=4/1)に溶解させ、0℃で水素化ホウ素ナトリウム(72g,1.90mol,5.0eq.)を少しずつ加えた後、該反応系を室温で2h反応させた。反応終了後、0℃で水及びメタノールを滴下して反応系をクエンチし、溶媒を濃縮し、水洗し、1N塩酸で酸性化し、酢酸エチルで3回抽出し、有機相を収集した。飽和塩化ナトリウム水溶液で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、黄色固体として粗生成物2−10 135gを得、さらに精製せずに、次の反応に直接使用した。
LC−MS: (ES,m/z):405 [M−H]
11.化合物2−11の合成
【0114】
【化36】
【0115】
粗生成物2−10(135g,0.33mol,1.0eq.)を乾燥メタノール(2.5L)に加え、p-トルエンスルホン酸(227g,1.32mol,4.0 eq.)が加えられた。該反応混合物は、一晩よく撹拌された。反応終了後、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を中和した。溶媒を濃縮し、残留物を酢酸エチルで2回抽出し、有機相を収集し、炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、黄色粘稠粗生成物2−11 120gを得、さらに精製せずに、次の反応に直接使用した。
LC−MS: (ES,m/z):421 [M+H]
12.化合物2−12の合成
【0116】
【化37】
【0117】
粗生成物2−11(120g,0.286mol,1.0 eq.)をジクロロメタン(2L)に溶解させ、0℃で2,6−ジメチルピリジン(160mL,1.43mol,5.0 eq.)及びトリフルオロメタンスルホン酸tert-ブチルジメチルシリル(190mL,0.86mol,3.0 eq.)をそれぞれ滴下した。該反応系は、室温で24h撹拌し、反応終了後、中性になるまで硫酸水素ナトリウム水溶液でクエンチした。水相を分離し、ジクロロメタンで2回抽出し、有機相を硫酸水素ナトリウム水溶液、飽和重炭酸ナトリウム水溶液及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、黄色粘稠粗生成物2−12を135g得た。
13.化合物2−13の合成
【0118】
【化38】
【0119】
粗生成物2−12(135g,0.2mol,1.0 eq.)を乾燥テトラヒドロフラン(1.2L)に溶解させ、0℃、窒素ガス保護下で乾燥されたメタノール(24mL)が加えられ、次いで、水素化ホウ素リチウム(290mL,2MのTHF溶液,0.6mol,3 eq.)を少しずつ加えた。該混合反応物は、室温で一晩反応した。反応終了後、該反応系に1m水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応をクエンチし、酢酸エチルで3回抽出し、有機相を収集し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、黄色油状粗生成物2−13 120gを得た。さらに精製せずに、次の反応に直接使用した。
14.化合物2−14の合成
【0120】
【化39】
【0121】
粗生成物2−13(120g,193mmol,1.0 eq.)及びN−メチルイミダゾール(126g,8.0 eq)を無水テトラヒドロフラン(1400mL)に加え、よく撹拌しながら無水テトラヒドロフランに溶解した化合物PH−MIK−001−21(382.5g,6.5eq)の溶液を滴下し、滴下終了後、該反応系は、室温で一晩撹拌した。反応終了後、減圧下で濃縮し、溶媒を除去し、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、黄色油状物2−14 80gを得た。
15.化合物2−0の合成
【0122】
【化40】
【0123】
化合物2−14(80g,88mmol,1.0 eq.)を乾燥メタノール(1200mL)に溶解させ、濃塩酸(242mL,2.9mol,20 eq.)を上記反応系に滴下し、滴下終了後、該反応は、室温で4日行い、反応終了後、減圧下で濃縮し、メタノールを除去し、残りの反応系を水及び炭酸水素ナトリウムで中和し、ジクロロメタンで3回抽出し、有機相を収集し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。残留物をFlash−Prep−HPLCにより精製し、類白色固体として化合物2−0 35g(純度97.3%)を得た。
【0124】
実施例3
1.化合物PH−MIK−001−22の合成
【0125】
【化41】
【0126】
三つ口フラスコに、一定体積の無水ジクロロメタン20Lを加えた後、トリエチルアミン(770g、2.0 eq.)を加え、該反応系は、−78℃の環境でセットし、化合物2−1(実施例2の製造方法で調製、800g,1.0 eq.)を無水ジクロロメタンに溶解した溶液及び(S)−3−(クロロアミノ)−1−イソプロポキシブタン−2−オン(631g,1.0 eq.)を滴下し、滴下終了後、2h反応させ、次いで、自然に室温まで戻し、一晩静置した。溶媒を除去し、残留物を酢酸エチルで洗浄し、ろ過し、濾液を濃縮して乾燥させ、化合物PH−MIK−001−22(760g)を得、次の反応に直接使用した。
2.化合物3−1の合成
【0127】
【化42】
【0128】
粗生成物2−13(120g,1.0 eq.)及びN−メチルイミダゾール(126g,8.0 eq.)を無水テトラヒドロフランに加え、よく撹拌しながら無水テトラヒドロフランに溶解した化合物PH−MIK−001−22(401g,6.5 eq.)溶液を滴下し、滴下終了後、この反応系を室温下で一晩撹拌した。反応終了後、減圧下で濃縮して溶媒を除去した、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製し黄色油状物3−1を75g得た。
3. 化合物3−0の合成
【0129】
【化43】
【0130】
化合物3−1(75g,88mmol,1.0 eq.)を乾燥メタノール(1200mL)に溶解させ、濃塩酸(242mL,2.9mol,20 eq.)を上記反応系に滴下し、滴下終了後、該反応は、室温で4日行い、反応終了後、減圧下で濃縮し、メタノールを除去し、残りの反応系を水及び炭酸水素ナトリウムで中和し、ジクロロメタンで3回抽出し、有機相を収集し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。残留物をFlash−Prep−HPLCにより精製し、類白色固体として化合物3−0 35g(純度96.9%)を得た。
LC−MS: (ES,m/z):662.21 [M+H]
【0131】
以上の具体的な調製手順を示した化合物の以外は、以下の表4における実施例化合物も、以上の実施例1〜3の製造方法に従って調製されたものであり、具体的な実験手順は省略され、必要な原料及び試薬は市場で購入できる。
【0132】
【表4】
【0133】
実施例4 応用実施例
(一)17α−エチニルエストラジオール(E2−17α)により誘発されるラットの胆汁うっ滞に対する本発明の化合物の作用
1、被験品溶液及び試薬の調製
1.0%CMC−Na溶液の調製:CMC−Na粉末1pを秤量し、(50℃)蒸留水100mLを加え、撹拌機で1hすばやく撹拌し、十分に膨潤させ、1%CMC−Na溶液を調製した。
E2−17αプロピレングリコール溶液の調製:E2−17αを54/0.98=56mpで秤量し、1,2−プロピレングリコール9mLに溶解させ、シェーカーで1h振とうし、7mp/mL E2−17α懸濁液を調製した。
【0134】
2、群分け及び投与方法
Sprague Dawley ラットは、体重範囲250〜350gであり、空白対照群、E2−17α群(モデル群)及び被験化合物群に無作為に分けられ、E2−17α+化合物1−H(5mg/Kg)群、E2−17α+化合物1−IP(5.1mg/Kg)群、E2−17α+化合物1−Cl(5.3mg/Kg)群、E2−17α+化合物1−Me1(5.1mg/Kg)群、E2−17α+化合物2−0(5.1mg/Kg)群、E2−17α+化合物6−0(5.9mg/Kg)群、以及陽性対照E2−17α+UDCA(15mg/kg)群及びオベチコール酸(OCA,6mg/kg+10mg/kg)群を含む。UDCAは、ウルソデスオキシコール酸であって、胆石、胆汁うっ滞性肝疾患、脂肪肝、及びさまざまなタイプの肝炎の治療のために販売されている胆汁酸誘導体薬物である。
【0135】
17α−エチニルエストラジオール(E2−17α)は、首の皮下に注射され、モデルを7日間かけて構築し、被験化合物を1%CMC−Na溶液に懸濁し、7日間胃内投与し、E2−17αの投与によるモデル構築と同期させた。群分けは、以下の表5に示した。
【0136】
【表5】
(注:s.c、皮下注射; i.g、胃内投与)注:以上の各投与群は、同時に17α−エチニルエストラジオール(E2−17α)も投与された。
【0137】
3、実験手順:
ラットにE2−17αプロピレングリコールを7日間連続投与してモデルを構築し、異なる被験品のCMC−Na溶液を胃内投与し、8日目にラットを空腹時に1mL採血して血清生化学検査を行い、E2−17αプロピレングリコールを引き続き投与してモデルを構築し、異なる被験品のCMC−Na溶液を胃内投与した。9日目に投与後0.5時間でラットの体重を秤量し、10%ウレタン(10mL/kg)を腹腔内に投与して麻酔した。麻酔後、ラットをコンソールに固定し、上腹部の剣状突起から下向きに腹部で正中切開を行い、切開部は、2〜3cm程度である。実験中、室内温度を維持し、ラットの体温を維持し、胆汁の流出を促進する必要がある。十二指腸と胃の接合部を見つけるために、眼科用鉗子のハンドルを使用して肝臓を上げた。接合部に糸(0号糸)を引き、用意した。十二指腸の幽門から約2cm程度の箇所に、十二指腸に垂直な黄色がかった透明な細い管が膵臓中を通過していることを見つけ、その細い管は、総胆管である。総胆管と十二指腸の接合部で、眼科用鉗子で総胆管を分離し、胆管の周りの小さな血管を壊さないように注意し、手で膵臓組織を刺激しないようにした。分離後、2本の糸を引き、腸端に近い糸を結紮し、牽引糸とし、眼科用ハサミを使用して管壁に斜めに小さな開口部を切り、作製された膵液収集チューブを小さな開口部に挿入し、挿入後、すぐに、黄色の胆汁と膵液の混合物が見られた。結紮し固定し、このチューブは胆汁を収集するために使用した。挿管完了後、皮膚が縫合され、胆管挿管の他の一方の端が引き出され、固定された0.5mLの遠心チューブに流し込んだ。胆汁を8回連続収集し、15分間ごとに1回採取し、合計120分間である。
【0138】
4、指標の測定:
1)胆汁の収集
挿管完了後、腹腔内の水分が蒸発しないように皮膚を縫合し、胆管挿管の他の一方の端が引き出され、固定された0.5mLの収集チューブに流し込んだ。胆汁を8回連続収集し、15分間ごとに1回採取し、合計120分間採取し、実験前に、分析天びんで胆汁収集チューブの重量を精密に秤量して記録し、実験の胆汁収集後に胆汁と収集チューブの全重を秤量し、減算してチューブ内の胆汁の重量を計算し、1g/mLで体積に換算した。胆汁収集後、下大静脈から血液を採取し、血清生化学的指標を測定した。
2)血清及び肝臓試料中の指標検出
血液サンプルを水浴中に37℃で10min静置し、3000 rpm(1368g)×10minで遠心し、血清を常法に従い分離し、分注し、−20℃で凍結保存した。血清試料の検査指標は、ALT、AST、ALPを含み、上記指標の検出方法は、いずれもキットの関連する説明書に従って実行した。
【0139】
5、統計処理
SPSS18.0統計ソフトウェアを使用してデータを分析し、t検定を使用して2つのグループ間で測定データを比較し、複数グループの平均値の比較は、単一因子分散分析(ANOVA)及びグループ間の多重比較を採用し、データの平均値±標準偏差(Mean±SEM.)又は平均値±標準偏差(Mean±SD.)で表された。
6、試験結果
異なる時点での各群ラットの胆汁排泄速度は、表6に示した。
【0140】
【表6】
注:以上の各投与群は、同時に17α−エチニルエストラジオール(E2−17α)も投与された。
【0141】
図6には、被験化合物1−Hの異なる用量群ラットの各時点での胆汁排出量を比較した。表6及び図6より示すように、対照群と比較して、モデル群の胆汁流速が低減し、E−17α群と比較して、化合物1−H、化合物1−IP、化合物1−Cl、化合物1−Me1、化合物2−0及び化合物6−0群の胆汁流速は有意に向上した(E−17α群と比較して、*P<0.05)。
表6のデータによれば、本発明の化合物の胆汁排泄促進作用は、現在市販されているウルソデスオキシコール酸(UDCA)と比較して、本発明の被験化合物は、5mg/kg〜5.6mg/kgの用量でウルソデスオキシコール酸の15mg/kgの用量での胆汁排出量に相当し、投与後105分間後に、本発明の被験化合物1−H群及び化合物1−Cl群の胆汁排出量は、ウルソデスオキシコール酸群より有意に高くなる。本発明の化合物の胆汁排泄促進作用は、現在市販されているオベチコール酸(OCA)と比較して、本発明の被験化合物は、5mg/kg〜5.6mg/kgの用量での胆汁排出量は、オベチコール酸の10mg/kgの用量での胆汁排出量より高く、投与後の時間が長くなると、オベチコール酸の胆汁排泄促進作用は徐々に弱まりが、本発明の化合物の胆汁排出量は、投与後120分間後に、依然としてはモデル群(E−17α群)より高かった。本発明の化合物の胆汁排泄促進作用強度である胆汁排泄量は、オベチコール酸及びウルソデスオキシコール酸より良く、本発明の化合物の胆汁排泄促進作用時間はオベチコール酸及びウルソデスオキシコール酸よりも長い。
【0142】
各群ラットの胃内投与後の血清生化的ALT、AST、ALPレベルは表7に示した。
【0143】
【表7】
【0144】
表7より示すように、化合物1−H、化合物1−IP、化合物1−Cl、化合物1−Me1、化合物2−0は、それぞれALT、AST、ALPの値を低減させたことを分かった。
【0145】
7、結論:本発明の実施例化合物1−H、化合物1−IP、化合物1−Cl、化合物1−Me1、化合物2−0及び化合物6−0は、肝内胆汁うっ滞に対して明らかな改善効果を有し、胆汁排泄を促進できるため、胆汁排泄障害関連性疾患に対して治療作用を有し、本発明の実施例化合物は、同時にそれに応じてALT、AST、ALPの値を低減させることができるのは、本発明に係る実施例化合物が肝臓損傷の修復に一定の効果を有することを証明する。
【0146】
(二)肝硬変の門脈圧亢進に対する本発明の化合物の作用
1.被験品及び溶液の調製
1)TAA生理塩水溶液の調製:チオアセトアミド(TAA)10gを秤量し、生理塩水100mLに溶解させた後、0.22μm滅菌微多孔膜フィルターを通して滅菌ボトルにろ過した。
2)被験化合物の0.5%CMC−Na懸濁液の調製:化合物1−H、化合物1−IP、化合物1−Cl、化合物1−Me1及び化合物2−0を400mg秤量して0.5%CMC−Na溶液100mLに溶解させ、シェーカーで30min振とうし,20mg/Kg(高用量)群で与える医薬品を作製した。即ち、4mg/mLの化合物1−H、1−IP、1−Cl、1−Me1及び2−0のCMC−Na懸濁液であった。中・低用量群については、医薬品の調製方法が同じであった。
【0147】
2.群分け及び投与方法
1)モデルの構築方法
TAAの腹腔内注射によりラット肝硬変の門脈圧亢進モデルを構築した。空白対照群に生理塩水を腹腔内注射する以外は、残りの動物に10%チオアセトアミド(TAA)の生理塩水溶液を腹腔内注射(i.p.)してモデルを構築した。用量200mg/Kg、投与容積2mL/Kgであった。すべての実験動物に、TAA又は同体積の生理塩水を3日ごとに1回腹腔内注射し、各回投与前に、ラットの削りくず状床敷きを事前にすっきり取り替え、ラットの体重は、モデル構築・投与の2回ごとに1回秤量し、ラット体重は、前回よりも10%増加又は減少し、TAA注射用量は対応して50%増加又は減少し、個別の投与で毎匹の体重の変化を厳密に制御することにより、モデル構築の成功率及びモデルの均一性を効果的に向上させることができる。
【0148】
2)動物群分け
モデル化に成功した動物をランダムに群分けし、各群あたり12匹であり、空白対照群は、20匹のラットであり、群分けは、下表に示した。ラットTAAは、門脈圧亢進症を誘発し、13週間後に門脈圧亢進症モデルを作成し、被験化合物は、10日間、1日1回投与し、具体的な群分けは、以下の通りである。
【0149】
【表8】
【0150】
3)投与方法
胃内投与を採用し、具体的な操作は、胆汁うっ滞の実施例の胃内投与と同じである。
3.試験手順
試験期間では、動物のバイタルサイン及び行動を毎日観察し、胃腸反応の点で動物の一般的な状態の異常の有無を観察し、注射部位を毎日観察し、紅斑、浮腫、出血または塊状物などの症状があるかどうかを観察した。すべての動物は、投与前に1回秤量し、モデル構築及び投与期間のラット体重の全体的な変化を観察した。
投与終了、血液をラットの眼窩から採取し、37℃で10min水浴し、3000r/min(1370g)で10min遠心し、上層血清を採取し、検査に直接送ったり、−80℃にセットして短時間保存し、血清学的指標の測定のために用いられた。採血後に、3日間給餌・給水し、血液量を徐々に回復させ、その後の圧力測定のために用意した。
【0151】
1)門脈圧の測定
実験前にラットを12時間絶食させ、10%の抱水クロラールで腹腔内注射して麻酔し、麻酔剤の用量は、2.5mL/Kgであった。動物を麻酔した后、手術台に固定した。腹部に白線に沿って約3cm程度の切開部を切出した。腹部を開いた後、十二指腸を裏返し、門脈を見つけ、No.4静脈内注射針を使用して圧力変換器を接続し、変換器のすべてのバルブを開き、針を静脈に刺し、血液が戻るのを待ち、約1cmを挿入し続け、圧力が安定した後に、すべてのバルブを閉じ、安定化後の門脈圧力を測定した。圧力変換器は、生物学的機能テストシステム(BL−420F)に接続した。
2)平均動脈圧の測定。
ハサミで正中線に沿って首の皮膚を切り、片側の総頸動脈を分離し、総頸動脈に押管し、平均動脈圧を測定し、測定方法は門脈と同じである。
【0152】
4.検査指標
1)実験前に、血液1.5mLを眼窩から採取し、上記の手順のように、血清ALT、AST、ALP、γ−GT及びTBA含有量を測定した。
2)ラット肝臓の同一部位で、0.7cm程度の小片を切り取り、10%ホルムアルデヒド溶液に入れて固定し、組織切片の病理学的観察に使用した。肝臓を適切なサイズに切り取り、表面の血液を通常の生理食塩水ですばやくすすぎ、滅菌したEPチューブに入れ、液体窒素で冷凍保存し、後の実験に用意した。
【0153】
5.試験結果
1)門脈圧:空白対照群と比較して、TAA群(モデル群)の門脈圧は、上昇し(∇P<0.01)、肝硬変の門脈圧亢進症がすでに現れていることを示し、TAA群と比較して、各被験化合物の5mg/Kg群、10mg/Kg群、20mg/Kg群の門脈圧は有意に低減した(#P<0.05,ΔP<0.01)。
図7は、異なる群のラット門脈圧に対する被験化合物1−Hの各用量群の影響を示す。
TAA群の平均門脈圧に対する差の百分率を算出し、投与群の各成分の平均変化百分率(%)を得た。門脈圧の低下百分率≧10%であり、臨床的意義があり、門脈圧亢進症のリスクに関連すると考えられる。図面から、化合物1−Hを投与して治療し、TAA+化合物1−H 5mg/Kg群、TAA+化合物1−H 10mg/Kg群、TAA+化合物1−H 20mg/Kg群の門脈圧平均変化百分率は、いずれも10%を超えるため、化合物1−Hは門脈圧亢進症を減少させ、臨床的意義(P<0.01、P<0.05)があると考えることができる。図8は、被験化合物1−Hの各用量群におけるラットの門脈圧の平均変化百分率である。
2)肝臓の外観:被験化合物1−Hの各用量群のラット肝臓及び脾臓の外観は、図9に示した。図9(A)は、Control(空白対照)群であり、空白対照群のラット肝臓が鮮やかな赤い色になり、表面が滑らかで光沢のあり、境界が明瞭で、サイズ及び肝臓湿重量が正常である。図9(B)は、TAA(模型)群であり、TAA群のラットの肝臓は、赤褐色であり、境界が不明瞭であり、肝臓の表面が粗く不均一で、ラット肝臓の表面の一部が結節性過形成になり、多くの球状突起を形成し、肝硬変ラットの一部で肝葉のサイズが異常であり、主な表現としては、左外側葉、中葉、及び2つの円板状乳頭葉の体積が増加し、また、左中葉及び尾状葉が異なる程度で萎縮するが、全体的な体積が増加し、且つ湿重量が増加し、ほとんどのラットの脾臓のサイズは正常またはわずかに萎縮した。図9(E)は、TAA+5mg/Kg 化合物1−H群であり、化合物1−Hを投与した後、TAA群と比較して、TAA+5mg/Kg 化合物1−H群は、ラット肝臓の肝硬変・結節性過形成がより軽く、突起が有意に減少し、肝葉の萎縮または過形成の変化が軽いが、空白対照群よりも表面がまだ平滑ではない。図9(F)は、TAA+10mg/Kg 化合物1−Hであり、図9(G)は、TAA+20mg/Kg 化合物1−H群であり、肝脾の外観はTAA+5mg/Kg 化合物1−H群と類似した。
【0154】
3)血生化指標:被験化合物1−Hの各用量群のラット血清学的パラメーターは図10に示した。図10(A)は、各群のラットの血清ALTレベル(Mean ± SEM,n=12)であり、空白対照群と比較して、TAA群のALTレベルは増加し(*P<0.05)、化合物1−H 5mg/Kg群、化合物1−H 10mg/Kg群、化合物1− 20mg/Kg群のALTレベルが低減した(#P<0.05)。図10(B)は、各群ラットの血清ASTレベル(Mean ± SEM,n=12)である。空白対照群と比較して、TAA群のASTレベルが増加し(*P<0.05)、化合物1−H 5mg/Kg群、化合物1−H 10mg/Kg群、化合物1−H 20mg/Kg群のASTレベルが低減した(#P<0.05)。図10(C)は、各群ラットの血清ALPレベル(Mean ± SEM,n=12)である。空白対照群と比較して、TAA群のALPレベルは増加し(∇P<0.01)、すべての投与成分のALTレベルは低減した(#P<0.05,ΔP<0.01)。図10(D)は、各群ラットの血清ALB含有量(Mean ± SEM,n=12)である。図10(E)は、各群ラットの血清γ−GTレベル(Mean ± SEM,n=12)である。空白対照群と比較して、TAA群のγ−GTレベルは増加し(∇P<0.01)、全部の投与治療群のγ−GTレベルはいずれも低減した(#P<0.05,ΔP<0.01)。図10(F)は、各群ラットの血清TBA含有量(Mean ± SEM,n=12)である。空白対照群と比較して、TAA群のTBAレベルは増加し(∇P<0.01)、全部の投与群のTBAレベルはいずれも低減した(ΔP<0.01)。
【0155】
4)肝臓組織切片:被験化合物1−Hの各用量群のラット肝臓病理切片のMasson染色及びHE染色画像は図11に示した。(1)〜(3)は、それぞれ同一試料のMasson染色(100×視野)、HE染色(100×視野)及びHE染色(200×視野)である。ここで、図11(A)は、Control(空白対照)群の顕微鏡写真である。空白対照群は、肝線維組織の明らかな過形成はなく、門脈領域の形状は正常であり、胆管の過形成はなく。肝細胞の形態及び構造は正常であり、細胞壊死及び炎症性細胞浸潤は見られなかった。図11(B)は、TAA(モデル)群の顕微鏡写真である。空白対照群と比較して、TAA群は、線維組織が増生して偽小葉を形成し、門脈領域の胆管に過形成が現れ、円形リンパ球浸潤を伴い、肝線維症の症状を示した。図11(C)は、TAA+5mg/Kg 化合物1−H群の顕微鏡写真である。該群は、主に線維組織の隙間がより薄く、細胞の形態構造が基本的に正常であり、炎症細胞の浸潤が少なく、門脈領域の胆管に多数の過形成が見られないことを示し、肝線維症の症状が軽減されたことを証明した。図11(D)は、TAA+10mg/Kg 化合物1−H群の顕微鏡写真である。該群の病理形態学的構造は、TAA+5mg/Kg 化合物1−H群と類似した。図11(E)は、TAA+20mg/Kg 化合物1−H群の顕微鏡写真である。該群の病理形態学的構造は、TAA+5mg/Kg 化合物1−H群と類似した。病理学的指標は、化合物1−Hが線維組織の増生及び偽小葉の形成に一定の改善作用があり、主な表現として線維組織の隙間が薄くなることを示した。
【0156】
6.結論
TAAの腹腔内注射の方法は、ラット肝硬変の門脈圧亢進を誘導することに成功し、モデル構築を完了した後、本発明の実施例で調製された被験化合物を投与した。実験結果は、被験化合物は5mg/Kg、10mg/Kg及び20mg/Kgの3つの用量でいずれも(1)ラットの門脈圧を低減させ、門脈圧の低下百分率≧10%であり;(2)肝硬変の結節過形成、肝葉の萎縮または過形成を改善し;(3)ラットの血液中の各指標のレベルを改善し、ALT、AST、ALP、ALB、γ−GT及びTBAはいずれも低減し;(4)組織形態が改善し、肝線維化病変が減少することができる。
上記の結果は、本発明の被験化合物がFXR及びTGR5受容体を活性化することにより、肝臓内血管収縮などの機能を緩和する機能では、肝臓内の高血流抵抗を改善するとともに、肝線維症などの器質的病変もある程度改善し、肝臓内の血流抵抗の低下を促進する。同時に、そのものの胆汁の分泌・排泄を増加させる作用により血清TBA、ALP及びγ−GTレベルを低減させ、胆汁うっ滞後の毒性物質によって引き起こされる肝細胞への更なる損傷が減少し、ALT及びASTのレベルを低減させる。
【0157】
以上、本発明の化合物は、ラット肝硬変の門脈圧亢進をよく改善させるとともに、肝線維症などの器質的病変もある程度改善することができる。
上記の実施例の説明は、本発明の方法及び主旨の理解を助けるためにのみ使用される。当業者にとっては、本発明の原理から逸脱することなく、本発明にもいくつかの改良及び修飾を行うことができ、これらの改良及び修飾も本発明の特許請求の範囲に含まれることを理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11