特許第6948682号(P6948682)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948682
(24)【登録日】2021年9月24日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】落下防止構造
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/10 20060101AFI20210930BHJP
   E01D 19/06 20060101ALI20210930BHJP
   E01D 1/00 20060101ALI20210930BHJP
   E01F 7/04 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   E01D19/10
   E01D19/06
   E01D1/00 Z
   E01F7/04
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-77885(P2017-77885)
(22)【出願日】2017年4月11日
(65)【公開番号】特開2018-178477(P2018-178477A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】517127285
【氏名又は名称】株式会社松下製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100198890
【弁理士】
【氏名又は名称】森戸 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕二
(72)【発明者】
【氏名】松下 昌司
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−149150(JP,A)
【文献】 特開2006−169771(JP,A)
【文献】 特開平08−027723(JP,A)
【文献】 実開昭63−014612(JP,U)
【文献】 特開2003−041515(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0113745(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/10
E01D 19/06
E01D 1/00
E01F 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う2つの橋梁の、一方の橋梁の地覆部と他方の橋梁の壁高欄との間から自然物または人工物が落下することを防止する落下防止構造であって、
前記地覆部に片持支持され上方へ延びる落下防止下板と、
前記壁高欄に片持支持され下方へ延びる落下防止上板とを備え、
該落下防止上板の一部が前記落下防止下板の一部を互いに隙間を空けた状態で覆うことを特徴とする落下防止構造。
【請求項2】
前記落下防止下板の一部および前記落下防止上板の一部は、前記覆う部分において、一定の距離だけ離れて重なり合うことを特徴とする請求項1に記載の落下防止構造。
【請求項3】
前記落下防止下板と前記落下防止上板は金属材料で形成され、
前記落下防止下板の一部および前記落下防止上板の一部は、それぞれ平坦であり、平行に重なり合うことを特徴とする請求項2に記載の落下防止構造。
【請求項4】
前記落下防止下板および前記落下防止上板は可撓性をそれぞれ有するものであり、
前記落下防止上板に外力が作用すると、前記落下防止上板の少なくとも下端が前記落下防止下板を押圧し、該落下防止下板の少なくとも上端が前記壁高欄に当接した状態で前記外力を受け止めることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の落下防止構造。
【請求項5】
前記落下防止上板下端の壁高欄奥行方向における一方の端に、隣り合う他の落下防止上板の他端が嵌合する折返し部を有し、該折返し部は該下端から延びた前記落下防止上板の一部が、該下端に沿って折返され、
前記落下防止下板上端の壁高欄奥行方向における一方の端に、隣り合う他の落下防止下板の他端が嵌合する折返し部を有し、前記折返し部は該上端から延びた前記落下防止下板の一部が該上端に沿って折返される請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の落下防止構造。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣り合う橋梁間から自然物や人工物の落下を防止する落下防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高架道路においては、上下線のそれぞれに独立した橋梁を用いることが一般的である。両橋梁は走行車両が引き起こす振動により、それぞれが独立して振動する。そのため、両橋梁の間には、橋脚間の距離や道路幅等を考慮した適切な幅の隙間が設けられている。この隙間から雨水、雪、小石等の自然物やコンクリート片等の人工物が落下することを防止するために、この隙間を樹脂部材で閉塞または遮蔽することがある。また特許文献1には、両橋梁を遮蔽物で一体的に連結させて当該隙間から自然物や人工物の落下を防ぐ技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5388876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術の落下防止構造は樹脂部材で形成されることが多く、太陽光や排ガスの影響による経年劣化が著しい。特許文献1に記載の落下防止構造は、両橋梁の独立した振動のうち、垂直方向の振動成分のみを吸収するものである。しかし、現実の橋梁で発生する振動は垂直方向のみの単純な振動ではなく、道路の曲率半径、道路勾配、走行車両の影響等により生じる極めて複雑な振動である。この複雑な振動は経年劣化をより加速させる。更に両橋梁を一体的に連結し、隙間を閉塞、遮蔽する構造は地震に対し脆弱という問題もある。
【0005】
従って、従来の落下防止構造は点検と交換作業が多く発生し、事業者にとり負担が大きい。特に高速道路における交換作業は車線規制が必要であるが、社会からは渋滞の低減が要望されている。
【0006】
本発明の目的は、橋梁の振動や環境の影響による経年劣化を迎え、交換作業回数を極力低減させる落下防止構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、隣り合う2つの橋梁の、一方の橋梁の地覆部と他方の橋梁の壁高欄との間から自然物または人工物が落下することを防止する落下防止構造であって、地覆部に片持支持され上方へ延びる落下防止下板と、壁高欄に片持支持され下方へ延びる落下防止上板とを備え、落下防止上板の一部が落下防止下板の一部を互いに隙間を空けた状態で覆うことを特徴とする。
【0008】
ここで、本発明における 「自然物」とは、雨水、雪、雹、氷、石、岩等の自然環境において発生するものを広く意味する。「人工物」とはコンクリート片、ネジ、タバコ吸い殻、ガラス片等の人工的に作られたものすべてを意味する。
【0009】
また、上記「地覆部に片持支持」とは、地覆部上に固定される状態に限定されず、一部が地覆部に埋め込まれて固定されている状態を広く含む意味である。
【0010】
また、上記「壁高欄に片持支持 」とは、壁高欄壁面上や壁高欄上面に固定される状態に限定されず、一部が壁高欄に埋め込まれて固定されている状態を広く含む意味である。
【0011】
また、上記「上方へ延びる 」とは、上方向に成分を有して延びることを意味し、上記「下方へ延びる」とは、下方向に成分を有して延びることを意味する。
【0012】
また、上記「覆う」とは落下防止下板の上端が落下防止上板の下端より上方に位置する状態を意味する。
【0013】
本発明において、落下防止下板の一部および落下防止上板の一部は、覆う部分において、一定の距離だけ離れて重なり合ってもよい。
【0014】
ここで、上記「一定の距離だけ離れて重なり合う 」とは、覆う部分の一部が平面間、曲面間において平行関係を有するように離れて重なり合うことを意味する。
【0015】
本発明において、落下防止下板と落下防止上板は金属材料で形成され、落下防止下板の一部および落下防止上板の一部は、それぞれ平坦であり、平行に重なり合ってもよい。
【0016】
本発明において、落下防止下板および落下防止上板は可撓性をそれぞれ有するものであり、落下防止上板に外力が作用すると、落下防止上板の少なくとも下端が落下防止下板を押圧し、落下防止下板の少なくとも上端が壁高欄に当接した状態で前記外力を受け止めてもよい。
【0017】
ここで上記「外力」とは、雪や雹等の降雪や降雹による自然的な堆積物の作用に限定するものではなく、例えば除雪車等により人工的に生じる堆積物の作用によるものも含まれる。
【0018】
本発明において、落下防止上板の下端の壁高欄奥行方向における一方の端に、隣り合う他の落下防止上板の他端が嵌合する折返し部を有し、折返し部は下端から延びた落下防止上板の一部が、下端に沿って折返され、落下防止下板の上端の前記壁高欄奥行方向における一方の端に、隣り合う他の落下防止下板の他端が嵌合する折返し部を有し、前記折返し部は前記上端から延びた前記落下防止下板の一部が前記上端に沿って折返されてもよい。
【0019】
ここで、上記「折返し部」とは製造時において折り返し工程を必要とする意味に限られず、例えば樹脂成型によって製造され、折り返された形状の外観を有するものでもよい。
【0020】
また、上記「折返し部」は必ずしも180度折り返す必要は無く、上記「嵌合」において、隣り合う落下防止上板または落下防止下板が、連動して可撓できる角度であればよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、落下防止下板と落下防止上板は物理的に分離しているから、落下防止上板は壁高欄側の橋梁からの振動のみ、落下防止下板は地覆部側の橋梁からの振動のみをそれぞれうける。よって経年劣化を抑えて落下防止機能を維持することができる。
【0022】
本発明によれば、落下防止下板を落下防止上板で覆う部分で、一部が一定の距離だけ離れて重なり合うことで、自然物、人工物の落下防止機能を向上させることができる。
【0023】
本発明によれば、落下防止上板と落下防止下板を金属材料で形成し、平坦な落下防止下板の一部と平坦な落下防止上板の一部を平行に重ね合わせることで、材料、加工コストを低減し、落下防止機能を向上させることができる。
【0024】
本発明によれば、落下防止上板の下端が落下防止下板を押圧し、落下防止下板の上端が壁高欄に当接するため、落下防止下板と落下防止上板の平行に重なりあう部分へ自然物、人工物が入りこむことを防ぐことができる。
【0025】
本発明によれば、外力の作用の際、落下防止上板、落下防止下板はそれぞれ隣り合う他の落下防止上板、落下防止下板と連動して可撓するため、自然物、人工物の落下防止機能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】落下防止構造の斜視図
図2】車両通行方向から見た落下防止構造の断面図
図3】落下防止上板の固定位置に関する変形例を示す断面図
図4】片持支持方法の変形例を示す断面図
図5】下方延出板と上方延出板についての変形例を示す断面図
図6】下方延出板と上方延出板についての変形例を示す断面図
図7】下方延出板と上方延出板についての変形例を示す断面図
図8】落下防止構造に外力が作用した場合を示す断面図
図9】落下防止上板の連結部を示す斜視図
図10】落下防止下板の連結部を示す斜視図
図11】落下防止構造の連結部を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の落下防止構造に係る好適な実施形態について図1から図11を参照して詳細に説明する。
【0028】
図1は、落下防止構造の斜視図である。橋梁1と橋梁2は、隙間3を保持しながら隣り合うように架設される。橋梁1の壁高欄4には、落下防止上板6がアンカーボルト9によって固定されており、橋梁2の地覆部5には、落下防止下板7がアンカーボルト9によって固定されている。なお、アンカーボルト9とは、アンカーボルト本体と、アンカーボルト本体と螺合するナットの組み合わせを意味する。
【0029】
落下防止上板6と落下防止下板7は、適切な隙間を保ちながら対向している。よって、落下防止上板6は、橋梁1の振動の影響は受けるが、橋梁2の振動の影響は受けない。同様に、落下防止下板7は、橋梁2の振動の影響は受けるが橋梁1の振動の影響は受けない。
【0030】
これにより、落下防止上板6と落下防止下板7は、橋梁1と橋梁2が独立して振動した場合においても、経年劣化による破損や変形を抑えて、隙間3からの物の落下を防止する機能を維持し続ける。
【0031】
落下防止上板6と落下防止下板7は、壁高欄4の奥行方向において、敷設や運搬等の取扱いを考慮して200mmから1000mmの間の長さで選択される。しかしこの長さの幅に限定されるものではない。落下防止上板6は連結部11a、落下防止下板7は連結部11bにおいて、それぞれアンカーボルト9によって連結して固定され、落下防止に必要な壁高欄4の奥行方向の長さで敷設される。なお壁高欄4の奥行方向とは車道15における車両通行方向でもある。
【0032】
以下、本実施形態において図9図10を除き、紙面上下方向は落下防止構造の上下方向、紙面に対して垂直方向を壁高欄4奥行方向と定義する。また特に指定のない限り落下防止上板6、落下防止下板7における面、平面、曲面、曲げとは、それぞれの板の厚み方向を含まない2つの面に対して用いられるものである。
【0033】
図2は、壁高欄4奥行方向と直行する平面から見た落下防止構造の断面図である。落下防止上板6は、アンカーボルト9で壁面4xに固定される片持支持部20a、片持支持部20aから連続する曲げ部21a、曲げ部21aから連続し下方へ延出する下方延出板22aにより一体で構成される。
【0034】
片持支持部20aは、壁高欄4奥行方向を長手方向とする略長方形の平坦な板であり、板厚方向に貫通する孔23aを複数有する。片持支持部20aは、壁高欄4の壁面のうち、隙間3側に位置する壁面4xに対して、壁の厚み方向と板厚方向が同じになるように対向して配置される。
【0035】
片持支持部20a下方側には、曲げ部21aが連続する。曲げ部21aにて、片持支持部20aを除く部分が壁面4xから起こす方向に曲げられている。曲げ部21aの曲率半径は特に限定されない。
【0036】
下方延出板22aは、壁面4xから起こされている部分で、曲げ部21aから連続する。曲げ部21aから地覆部5の方向に延びる平面、曲面または両複合面で構成される。下方延出板22aは、壁面4xを正面とする方向から見て、壁高欄4奥行方向を長手方向とする略長方形である。下方延出板22aは、その下端に壁高欄4奥行方向に渡って略水平に下端24aを有し、下端24aは外力が作用しない限りどこにも接触をしない。
【0037】
落下防止下板7は、アンカーボルト9で地覆部上面5xに固定される片持支持部20b、片持支持部20bから連続する曲げ部21b、曲げ部21bから連続し上方に延出する上方延出板22bにより一体で構成される。
【0038】
片持支持部20bは、壁高欄4奥行方向を長手方向とする略長方形の平坦な板であり、板厚方向に貫通する孔23bを複数有する。片持支持部20bは、地覆部5の上面である地覆部上面5xに対して、地覆部5の垂直厚み方向と板厚方向が同じになるように対向して配置される。
【0039】
片持支持部20bの壁高欄4側には、曲げ部21bが連続する。曲げ部21bにて、片持支持部20bを除く部分が地覆部上面5xから起こす方向に曲げられている。曲げ部21bの曲率半径は特に限定されない。
【0040】
上方延出板22bは、地覆部上面5xから起こされている部分で、曲げ部21bから連続する。曲げ部21bから略上方向に延びる平面、曲面または両複合面で構成される。上方延出板22bは、壁面4xを正面とする方向から見て、壁高欄4奥行方向を長手方向とする略長方形である。上方延出板22bは、その上端に壁高欄4奥行方向に渡って略水平に上端24bを有し、上端24bは外力が作用しない限りどこにも接触をしない。
【0041】
片持支持部20a、20bと壁面4x、地覆部上面5xとの間は、片持支持部20a、20bを覆う長方形の止水シール10により封止されている。止水シール10は、壁面4x、地覆部上面5xを伝って流れる雨水等の止水をするものであり、吸水性のある材質であれば特に限定されず、例えばスポンジ等であってもよい。また、雨水等の止水が可能な任意のサイズを選択できる。
【0042】
片持支持部20a、20bとアンカーボルト9との間には、押え金具8が挟持されている。押え金具8は、片持支持部20a、20bをそれぞれアンカーボルト9で固定する際に用いる矩形の板状補強部品であり、いくつかの孔23a、23bと同位置に略同形状の孔を有する。
【0043】
落下防止上板6と落下防止下板7とは、下方延出板22aの一部が上方延出板22bの一部を、隙間を空けて覆う位置関係を有する。隙間は、橋梁1、橋梁2が独立して振動をしても互いに接触をしない程度である。また上方延出板22bの上端24bは、下方延出板22aの下端24aより上方に位置する。
【0044】
それにより、降雨や降雪だけでなく、車道15を走行する車両に起因する泥はねや、水はね、小石等の車道15下方からの飛散物、飛翔物に対しても落下防止機能を確保することができる。
【0045】
落下防止上板6と落下防止下板7の材質は経年劣化を考慮して、SUS等の金属やFRP等の樹脂を選択することができる。また、落下防止上板6と落下防止下板7の面には、例えば太陽光等の反射防止や腐食防止等を目的とする、メッキやエンボス加工等のさまざまな表面処理を施すことができる。
【0046】
以下、図2との差異のみを詳細に説明し、図2と同様な構造や、形状に関する説明は省略する。
【0047】
図3は、落下防止上板6の固定位置に関する変形例を示す断面図である。落下防止上板6の重量を壁高欄4の上面である壁高欄上面4yで支えながら敷設作業を行うことができるため施工しやすいという利点がある。
【0048】
落下防止上板6は、アンカーボルト9で壁高欄上面4yに固定される片持支持部30a、片持支持部30aから連続する曲げ部31a、曲げ部31aから連続し下方へ延出する下方延出板32aにより一体で構成される。
【0049】
片持支持部30aは、壁高欄4奥行方向を長手方向とする略長方形の平坦な板である。片持支持部30aの全部または一部は、壁高欄上面4yに対して、壁高欄4高さ方向と板厚方向が同じになるように対向して配置される。片持支持部30aの一部が、壁高欄上面4yに対して、壁高欄4高さ方向と板厚方向が同じになるように対向して配置された場合、片持支持部30aの残部は壁面4xに対して、垂直方向で空中に突き出る。
【0050】
片持支持部30aの地覆部5側には、曲げ部31aが連続する。曲げ部31aにて、片持支持部30aを除く部分が、下方に向かって曲げられている。曲げ部31aの曲率半径は特に限定されない。
【0051】
下方延出板32aは、曲げ部31aから連続し、地覆部5の方向へ延びる平面、曲面または両複合面で構成される。下方延出板32aは、壁面4xを正面とする方向から見て、壁高欄4奥行方向を長手方向とする略長方形である。下方延出板32aは、その下端に壁高欄4奥行方向に渡って略水平に下端34aを有し、下端34aは外力が作用しない限りどこにも接触をしない。
【0052】
落下防止下板7の構造、下方延出板32aと上方延出板22bの位置関係、下端34aと上端24bの位置関係は、前述の実施形態と同様であり省略する。アンカーボルト9や押え金具8等を用いた固定方法についても同様であり省略する。
【0053】
図4は、片持支持部40a、40bを、それぞれ壁高欄4、地覆部5の内部に埋め込むことにより、落下防止上板6、落下防止下板7を固定する変形例である。 止水性能向上のメリットを有する。なお、「壁高欄4の内部」とは、壁面4xを境界として、壁面4xから壁の厚み方向内側のことをいう。「地覆部5の内部」とは、地覆部上面5xを境界として、地覆部上面5xから、鉛直方向下側のことをいう。
【0054】
落下防止上板6は、壁高欄4の内部にその一部が埋め込まれた片持支持部40a、片持支持部40aから連続する曲げ部41a、曲げ部41aから連続し下方へ延出する下方延出板42aにより一体で構成される。
【0055】
片持支持部40aは、壁高欄4から落下防止上板6が抜け落ちることを防ぐため、壁高欄4奥行方向と直行する平面から見て、端部が90度下向きに折り曲げられている。端部以外の片持支持部40aは、壁高欄4奥行方向を長手方向とする略長方形の平坦な板であり、後述する板支持部品422aに対して、板支持部品422aの上面と、端部以外の片持支持部40aの下面が向かい合うように配置される。なお、片持支持部40aは、後述する板支持部品421a、422aで挟持可能な任意の形状をとることができる。
【0056】
片持支持部40aの地覆部5側で連続する曲げ部41aは、壁高欄4から露出しているが、壁高欄4の内部にあってもよい。曲げ部41aにて、片持支持部40aを除く部分が下方に向かって曲げられている。曲げ部41aの曲率半径は、特に限定されない。下方延出板42aについては、図3の実施形態の下方延出板32aと同様であり省略する。
【0057】
壁面4xには、壁高欄4奥行方向に、連結する落下防止上板6の長さと略同じ長さに渡って、壁高欄4奥行方向と直行する平面から見て、コ字状の溝45aを有する。溝45aには、片持支持部40aを上下方向から挟持する上方側の板支持部品421aと下方側の板支持部品422aが嵌め込まれる。
【0058】
板支持部品421aは、壁高欄4奥行方向と直行する平面から見て、矩形である。壁高欄4奥行方向長さは、後述する落下防止上板6の連結部11aを考慮して、1枚の落下防止上板6のそれよりやや短い。板支持部品422aの上面は、挟持する片持支持部40aの曲げ形状に合わせた形状を有する。板支持部品421aと板支持部品422aを組み合わせて片持支持部40aを挟持したとき、その上下方向の高さは、溝45aの幅と略同じである。
【0059】
板支持部品422aの上面以外の面は、平面であり、各平面は、直角で連続する。ただし、溝45aの角R部を逃げるための面取り加工が、対応する角に施されていてもよい。板支持部品421a、422aの壁高欄4奥行方向と直行する平面から見たときの水平方向の長さは、溝45aの深さと略同じである。また、板支持部品422aの壁高欄4奥行方向の長さは、板支持部品421aのそれと略同じである。
【0060】
板支持部品421a、422aは押え金具43aとアンカーボルト9で壁高欄4に固定する。板支持部品421a、422aは、後述する隣り合う落下防止上板6同士の連結部11aにおいて、落下防止上板6を支持しない。また、押え金具43aは板支持部品421a、422aを固定できるものであればどのようなものでもよい。例えば押え金具8と同様、アンカーボルト9用の孔が複数有する矩形の板を選択できる。
【0061】
落下防止下板7は、地覆部5の内部に埋め込まれた片持支持部40b、片持支持部40bから連続する曲げ部41b、曲げ部41bから連続し上方へ延出する上方延出板42bにより一体で構成される。落下防止下板7の構造は、アンカーボルト9用の孔23bを有さないことを除き、図2における実施形態の構造と同様であり省略する。
【0062】
片持支持部40bと曲げ部41bは、壁高欄4奥行方向と直行する平面から見て、略矩形のブロック421bに埋め込まれている。そのとき、上方延出板42bの一部は、ブロック421b上面から露出し、その露出した部分は、上方に向かって延出する。ブロック421bの壁高欄4奥行方向長さは、後述する落下防止下板7の連結部11bを考慮して、1枚の落下防止下板7のそれよりやや短い。なお、ブロック421bの上面には、後述する押え金具43bの一部を嵌合させるための溝を壁高欄4奥行方向に有していてもよい。
【0063】
地覆部5の壁高欄4側の角には、壁高欄4奥行方向に、連結する落下防止下板7の長さと略同じ長さに渡って、切欠き45bを有する。壁高欄4奥行方向と直行する平面から見て、切欠き45bの深さと幅は、ブロック421bの高さおよび幅と略同じであって、切欠き45bには落下防止下板7が固定されたブロック421bが敷設される。
【0064】
ブロック421bは、押え金具43bとアンカーボルト9で地覆部5に固定される。またブロック421bと地覆部5の間には、シール材等により止水処理が施される。押え金具43bはブロック421bを固定できるものであればどのようなものでもよい。例えばブロック421bの壁高欄4方向への動きを規制するために、断面形状がL型である押え金具43bを選択することができる。
【0065】
板支持部品421a、422a、ブロック421bの材質は、コンクリートや樹脂等を選択することができる。また、片持支持部40aの固定にブロック421bを使用しても良く、片持支持部40bの固定に板支持部品421a、422aを使用してもよい。
【0066】
更に、片持支持部40a、40bを支持するために、板支持部品421a、422a、ブロック421bを用いることなく、直接、壁高欄4、地覆部5の内部に埋め込むこともできる。また、落下防止上板6と落下防止下板7は、曲げ部41a、41bを有さない平板の形状で、露出部がそれぞれ下方、上方に延出するように、壁高欄4、地覆部5の内部にその一部を埋め込む形態でもよい。
【0067】
図5は、落下防止上板6の下方延出板50aと落下防止下板7の上方延出板50bに関する変形例である。下方延出板50aと上方延出板50bは曲面で構成され、その一部が互いに重なり合う。重なり合う部分は一定の距離で離れた、平行関係にある。
【0068】
その他の構成は図2の実施形態と同様のため省略する。なお、特に道路下方からの飛散物、飛翔物に対する落下防止機能の向上には、重なりあう部分において、平行関係にある部分の占める割合が大きいほど望ましい。
【0069】
図6は、落下防止上板6と落下防止下板7が、曲げ部を除き平面によって構成され、また落下防止上板6は、2か所の曲げ部を有する変形例である。よりコンパクトに落下防止機能を確保できる利点がある。落下防止上板6と落下防止下板7は、板金加工が可能で耐腐食性の高いSUS等の金属材料によって形成されている。
【0070】
落下防止上板6は、アンカーボルト9で壁面4xに固定される片持支持部60a、片持支持部60aから順に、曲げ部61a、中間面62a、曲げ部63a、下方傾斜面64aが一体となって連続する。なお、片持支持部60aと曲げ部61aの構成は、図2における実施形態と同様であり省略する。
【0071】
落下防止上板6は、曲げ部61aの曲げによって壁面4xから起こされる平坦な中間面62aを有する。中間面62aは曲げ部61aを上側として、下方に傾斜している。中間面62aは、片持支持部60aの面に対し、130度の角度で下方に傾斜する。しかし角度は任意に選択でき、中間面62aは、下方に傾斜する形態に限られず水平でもよい。中間面62aは、壁面4xを正面とする方向から見て、壁高欄4奥行方向を長手方向とする略長方形である。
【0072】
落下防止上板6は、中間面62a下側の曲げ部63aにおいて、曲げ部61aと逆側に折り返される平坦な下方傾斜面64aを有する。下方傾斜面64aは、壁面4xを正面とする方向から見て、壁高欄4奥行方向を長手方向とする略長方形である。
【0073】
下方傾斜面64aは、その下端に壁高欄4奥行方向に渡って略水平に下端65aを有し、曲げ部63aが上側で、下端65aが下側になる傾斜をしている。中間面62aと下方傾斜面64aの下側の角度は、148度である。しかし、下端65aが、曲げ部63aより壁面4xから遠方、または等しい位置となるように、角度は選択できる。また曲げ部61a、63aのそれぞれの曲率半径は特に限定されない。
【0074】
落下防止下板7は、アンカーボルト9で地覆部上面5xに固定される片持支持部60b、片持支持部60bから連続する曲げ部61b、曲げ部61bから連続し斜め上方に延出する上方傾斜面64bにより一体で構成される。なお、片持支持部60bと曲げ部61bの構成は図2における実施形態と同様であり省略する。
【0075】
上方傾斜面64bは、曲げ部61bの曲げによって地覆部上面5xから起こされ、壁面4xを正面とする方向から見て、壁高欄4奥行方向を長手方向とする略長方形である。上方傾斜面64bは、その上端に壁高欄4奥行方向に渡って略水平に上端65bを有する。上方傾斜面64bは、上端65bが上側、曲げ部61bが下側になるように、壁面4xに向かって傾斜をしている。片持支持部60aの面と上方傾斜面64bが成す角度は、108度である。しかし角度は任意に選択でき、例えば90度の角度でもよい。上端65bは外力が作用しない限りどこにも接触をしない。
【0076】
落下防止上板6と落下防止下板7は、落下防止上板6の一部が落下防止下板7の一部を覆うように敷設される。下方傾斜面64aの一部と上方傾斜面64bの一部は距離を空けて平行な位置関係を有し、上方傾斜面64bの上端65bは下方傾斜面64aの下端65aより上方に位置する。本実施形態では、下方傾斜面64aの一部と上方傾斜面64bの一部は、その平行間隔が15mmであり、上端65bは下端65aより50mm鉛直上方に位置する。しかし、これらの数値は橋梁1、橋梁2の揺れ幅を考慮して決定するものであり、これらの数値に限定されるものではない。
【0077】
図7は、図6の下端65aの位置と下方傾斜面64aの傾斜角を維持させた状態で、下方傾斜面64a上側を壁面4x近傍まで延伸させて、曲げを1回の構成とした場合の図である。そうすると、片持支持部70aは、片持支持部60aより上方に位置される。
【0078】
片持支持部70aが、壁面4xの高い位置にあると、例えば、地震等により落下防止上板6が捲れるような変形を起こしたときに、走行車両が、落下防止上板6に接触する危険性がある。図6の変形例では、落下防止上板6を2回曲げることで片持支持部60aの高さ位置を低くできるため、上述の危険性を小さくすることができる。また、部材のコンパクト化と板金加工製造により、材料および製造コストを抑えることができる。
【0079】
図8は、落下防止上板6と落下防止下板7に雪による外力が作用したときに、落下防止上板6と落下防止下板7が、それぞれ可撓するところを表した図である。落下防止上板6と落下防止下板7には、降雪による積雪88の他、除雪車89の除雪作業による積雪88が外力として作用する。
【0080】
一定の外力により、落下防止上板6の片持支持部60aを除く部分は、曲げ部61a、63aを支点として壁面4x側に可撓する。可撓により落下防止上板6の下端65aは、落下防止下板7の上方傾斜面64bを押圧する。下端65aから押圧による外力を受けた落下防止下板7の上方傾斜面64bは、曲げ部61bを支点として壁面4x側に可撓し、落下防止下板7の上端65bが壁面4xに当接する。
【0081】
落下防止下板7の上端65bが、壁面4xに当接することで、上方傾斜面64bは、上端65bと曲げ部61bの両端で支持された状態で外力を受け止める。なお、落下防止上板6の下端65aは、上方傾斜面64bの曲げ部61bと上端65b間の中心より下側で当接することが望ましい。また上端65bが、壁面4xに当接したときに、上方傾斜面64bと壁面4xが成す角度は、45度以下であることが望ましい。落下防止上板6と落下防止下板7は、板厚がそれぞれ0.4mm以上あれば、上記の条件下において、積雪88による外力に対し剛性を保てることが経験的に解っている。
【0082】
図9は、壁高欄4奥行方向において、隣り合う落下防止上板6Lと落下防止上板6Rの連結部11aを示した図である。落下防止上板6Lに設けられた孔のうち、壁高欄4奥行方向において最も端側に位置する孔231aと、落下防止上板6Rの他端側に位置する孔232aが重なるように、落下防止上板6Lと落下防止上板6Rは、連結する。そのとき、落下防止上板6Rにおける下端65aの壁高欄4奥行方向の隅は、後述する折返し部110aに嵌め込まれる。
【0083】
図10は、壁高欄4奥行方向において、隣り合う落下防止下板7Lと落下防止下板7Rの連結部11bを示した図である。落下防止下板7Lに設けられた孔のうち、壁高欄4奥行方向において最も端側に位置する孔231bと、落下防止下板7Rの他端側に位置する孔232bが重なるように、落下防止下板7Lと落下防止下板7Rは、連結する。そのとき、落下防止下板7Rにおける上端65bの壁高欄4奥行方向の隅は、後述する折返し部110bに嵌め込まれる。
【0084】
押え金具8の長手方向長さは、落下防止下板7L、7Rの重ね合わせ部分の壁高欄4奥行方向長さと、逃げ部91bを考慮して、落下防止下板7の長手方向長さより短い。逃げ部91bは、隣り合う押え金具8間の隙間であり、排水のために設けられている。なお落下防止上板6用の押え金具8も同じ長さでよい。
【0085】
図11は、図9のA―A断面と図10のB−B断面を結合した図である。落下防止上板6Lにおける下端65aの壁高欄4奥行方向の隅には、折返し部110aを有する。
【0086】
折返し部110aは、下端65aから下方に略10mm延出した下方傾斜面64aの一部が、壁高欄4側へ略180度折り返されている。折返し部110aの壁高欄4奥行方向の長さは、略40mmである。折り返された下方傾斜面64aの一部と、下方傾斜面64aとの間には、隣り合う落下防止上板6Rを嵌め込むことができる1mm弱の隙間を有する。
【0087】
折返し部110aには、落下防止上板6Rの下端65aの壁高欄4奥行方向の隅部111aが嵌め込まれる。隅部111aは、壁高欄4奥行方向において、折返し部110aと対向する隅に位置し、壁高欄4奥行方向長さ略30mm、下端65aから高さ方向略8mmの領域である。なお、片持支持部60aは、前述の孔231a、232aを重ねて、アンカーボルト9で壁面4xに固定される。
【0088】
従って、落下防止上板6L、6Rは、互いに隙間なく連結されるため、落下防止上板6L、6Rの間から物の落下を抑えることができる。更に雪による外力が作用したとき、可撓方向において両板は連動して可撓することで、雪の落下防止機能を向上させることができる。
【0089】
落下防止下板7Lにおける上端65bの壁高欄4奥行方向の隅には、折返し部110bを有する。折返し部110bは、上端65bから上方に略10mm延出した上方傾斜面64bの一部が、壁高欄4側へ略180度折り返されている。折返し部110bの壁高欄4奥行方向の長さは、略40mmである。折り返された上方傾斜面64bの一部と、上方傾斜面64bとの間には、隣り合う落下防止下板7Rを嵌め込むことができる1mm弱の隙間を有する。
【0090】
折返し部110bには、落下防止下板7Rの上端65bの壁高欄4奥行方向の隅部111bが嵌め込まれる。隅部111bは、壁高欄4奥行方向において、折返し部110bと対向する隅に位置し、壁高欄4奥行方向長さ略30mm、上端65bから下方向略8mmの領域である。なお、片持支持部60bは、前述の孔231b、232bを重ねて、アンカーボルト9で地覆部上面5xに固定される。
【0091】
従って、落下防止下板7L、7Rは、互いに隙間なく連結されるため、落下防止下板7L、7Rの間から物の落下を抑えることができる。更に雪による外力が作用したとき、可撓方向において両板は連動して可撓することで、雪の落下防止機能を向上させることができる。
【0092】
以上、詳細に説明した通り本実施形態によれば、落下防止上板6と落下防止下板7は物理的に分離しているから、落下防止上板6は、壁高欄4側の橋梁1からの振動のみ影響をうける。また落下防止下板7は、地覆部5側の橋梁2からの振動のみ影響をうける。よって経年劣化を抑えて落下防止機能を維持することができる。
【0093】
また、落下防止下板7を落下防止上板6で覆う部分において、お互いに重なり合うことで、自然物、人工物の落下防止機能を向上させることができる。
【0094】
また、落下防止上板6と落下防止下板7を金属材料で構成し、平坦な落下防止下板7の一部と平坦な落下防止上板6の一部を平行に重ね合わせることで、材料および加工コストを低減し、自然物、人工物の落下防止機能を向上させることができる。
【0095】
また、外力が作用したとき、落下防止上板6の下端65aが落下防止下板7を押圧し、落下防止下板7の上端65bが壁高欄4の壁面4xに当接するため、落下防止下板7と落下防止上板6の平行に重なり合う部分へ自然物、人工物が入りこむことを防ぐことができる。
【0096】
また、外力が作用したとき、落下防止上板6と落下防止下板7は、それぞれ隣り合う他の落下防止上板6、落下防止下板7と連動して可撓するため、自然物、人工物の落下防止機能を向上させることができる。
【0097】
以上、本発明の落下防止構造における実施形態について説明したが、本発明は説明した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲において各種変形を行うことができる。
【符号の説明】
【0098】
1 橋梁
2 橋梁
3 隙間
4 壁高欄
5 地覆部
6 落下防止上板
7 落下防止下板
8 押え金具
10 止水シール
20a 片持支持部
20b 片持支持部
21a 曲げ部
21b 曲げ部
22a 下方延出板
22b 上方延出板
24a 下端
24b 上端
110a 折返し部
110b 折返し部
111a 隅部
111b 隅部






図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11