(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や特許文献2の技術では、リモートコントロールでスライドドアを自動的に開動作するように指令した際、スライドドアの側方に障害物があると、スライドドアが障害物と接触する虞がある。車両の後方に存在する障害物を検出する障害物検出手段やスライドドアの開方向端面に設けた非接触式センサでは、車両の側方に存在する障害物を検出することができないからである。一般に、スライドドアが開動作される場合、ほぼスライドドアの厚みと必要な隙間との合計分、一旦スライドドアが車両側方に突出してから後方へのスライド動作が行われる。そのため、スライドドアが開動作しているときには、既にスライドドアが車両の側方に突出した状態になっており、側方の障害物との接触を回避することができない。
【0005】
特に、近年では、スマートエントリーシステムにより、予約によるスライドドアの開錠と開動作(以下、単に予約オープンという。)が可能な車両もある。予約オープンは、スマートキーを持つユーザが車両の所定の範囲内に接近した際、予め設定したスライドドアを自動的に開錠して開動作させる機能である。このような機能を持った車両で、助手席側のスライドドアを開動作させるように予約した場合、ユーザが運転席側の車両側方に接近すると、助手席側のスライドドアが自動的に開動作されることになる。その際、助手席側のスライドドアの側方に障害物があっても、その障害物を運転席側のユーザが目視で確認することはできず、助手席側のスライドドアが障害物に接触する虞がある。運転席側のスライドドアを予約オープンするドアとして設定するつもりだったが、誤って助手席側のスライドドアを予約オープンするドアとして設定した場合も、同様に助手席側のスライドドアが側方の障害物と接触する虞がある。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、スライドドアが自動で開動作するように指令された際、側方の障害物に接触することを防止できる車両用スライドドアの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る車両用スライドドアの制御装置は、
車両の側方に設けられて前後方向にスライドすることで開閉されるスライドドアと、
開閉動作の指令に応じて前記スライドドアを自動的に開閉する駆動機構と、
全閉位置における前記スライドドアの側方の障害物を検知する障害物検知手段と、
前記開動作の指令を受けてから前記障害物検知手段が障害物を検知した際、前記スライドドアを開動作させないように前記駆動機構を制御するドア制御部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
スライドドアを開動作する前に、障害物検知手段によりスライドドアの側方の障害物の有無を検知し、障害物を検知した際には、ドア制御部の制御によりスライドドアを開動作させないようにすることができる。そのため、スライドドアを自動開動作しようとする場合に、スライドドアの側方に障害物があっても、その障害物にスライドドアが接触することがない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の車両用スライドドアの制御装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1、
図2において、車両の上方をUP、下方をLWR、前方をFR、後方をRR、左方をLH、右方をRHとして示している。なお、本発明は、これらの例示に限定されず、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0011】
<実施形態1>
≪全体構成≫
図1に示すように、実施形態に係る車両用スライドドアの制御装置は、車両100に設けられた自動開閉可能なスライドドア110と、その駆動機構120とを備える。この制御装置の特徴の一つは、全閉位置におけるスライドドア110の側方の障害物を検知する障害物検知手段130と、開動作の指令を受けてから障害物検知手段130が障害物を検知した際、スライドドア110を開動作させないように駆動機構120を制御するドア制御部140とを備えることにある。以下、各部の詳細を説明する。
【0012】
≪スライドドア≫
スライドドア110は、車両100の側方を前後にスライドすることで、車両側面に設けられた開口部を開閉する。このようなスライドドア110は、例えば、開口部の上下と、全閉位置のスライドドア110よりも後方の車両側面とに設けられたスライドレール112にスライド自在に支持され、後述する駆動機構120で自動的に開閉可能に構成される。一般に、スライドドア110は後席に乗降するための開口部を開閉するものが多いが、前席ドアを廃止して、後席に乗降するための開口部と前席に乗降するための開口部とを一体化し、この一体化された開口部を開閉するものとしてもよい。これらのスライドドア110は、全閉状態(
図2の実線参照)から開動作を行う際、スライドドア110のほぼ厚みと必要な隙間に相当する長さ分、車両100の側方に突出し、その状態で車両100の側面に沿って移動される。スライドドア110の全開状態を
図2に二点鎖線で示す。スライドドア110の開閉は、手動で行えることは勿論、上述のように、自動的に開閉することもできる。
【0013】
自動開閉は、車内側面に設けられたインナスイッチ114又は車外側面に設けられたアウタスイッチ116により行ったり、ワイヤレスリモコン150(
図1)により無線で開閉指令を送信して行ったりすることができる。いずれにおいても、上記各スイッチ114,116又はワイヤレスリモコン150からの開閉指令は、後述するドア制御部140に送られて、ドア制御部140の制御によりスライドドア110の開閉が行われる。
【0014】
さらに本例では、予約オープンを行うことができるスライドドア110としている。つまり、スマートキー152(
図1)を持つユーザが車両100の所定の範囲内に接近した際、予め設定したスライドドア110を自動的に開錠して開動作させることができる。この場合、スマートキー152を持つユーザが車両100とスマートキー152とが交信できる範囲内まで車両100に接近したことをトリガとして、ドア制御部140にスライドドア110の開動作が指令される。
【0015】
なお、図示していないが、スライドドア110には、そのドア110を施錠するドアロックと、ドアロックを施錠・開錠するためのドアロックモータも設けられている。ドアロックモータの制御も、後述するドア制御部140により行われる。
【0016】
≪駆動機構≫
上記スライドドア110の開閉には、駆動機構120が用いられる。駆動機構120は、スライドドア110の自動開閉を可能にするための機構で、スライドドア110の駆動源となるアクチュエータ122と、その動力をスライドドア110に伝達する動力伝達機構124とを有する。
【0017】
アクチュエータ122の具体例には、正逆両方向に回転可能なモータ122Mが好適に利用できる。このモータ122Mの動作の制御は、後述するドア制御部140により行われる。
【0018】
動力伝達機構124は、アクチュエータ122の駆動動力をスライドドア110のスライド動作として伝達できる構成であればよく、公知のものが利用できる。図示は省略するが、例えば、モータ122Mの回転軸に繋がる減速機、減速機に同期して回転される駆動プーリー、駆動プーリーに連動される前方プーリー及び後方プーリー、駆動プーリーと前方・後方プーリーとに架け渡される無端ワイヤ、並びに無端ワイヤとスライドドア110とを繋ぐブラケットを備える動力伝達機構124が挙げられる。前方・後方プーリーは、互いにスライドドア110のスライドストロークにほぼ対応する長さ分、車両の前後に離れて配置されている。無端ワイヤはブラケットを介してスライドドア110のインナパネルに連結されており、モータ122Mの駆動により、駆動プーリー及び前方・後方プーリーを回転させることで無端ワイヤを走行させ、その走行に連動してスライドドア110をスライドさせる。前方プーリー側にスライドドア110が移動した状態が全閉状態で、後方プーリー側にスライドドア110が移動した状態が全開状態である。
【0019】
≪障害物検知手段≫
障害物検知手段130は、全閉位置におけるスライドドア110の側方の障害物を検知する(
図1、
図2)。スライドドア110は、開動作の指令により、まずは一旦車両の側方に突出してから車両の前後方向に沿って後方に移動される。そのため、少なくとも全閉位置におけるスライドドア110の側方の障害物を検知できる障害物検知手段130を用い、後述するドア制御部によりスライドドア110の動作を適切に制御すれば、スライドドア110が側方の障害物に接触することを回避することができる。
【0020】
障害物検知手段130は、障害物の検知ができるものであれば特に限定されず、その具体例としてはレーダー(例えばミリ波レーダー)やレーザー、カメラなどが挙げられる。本例では超音波センサ130Sを障害物検知手段130として用いている。超音波センサ130Sは、所定の出力の超音波を発信する発信器と、発信された超音波を受信する受信器とを有する。超音波センサ130Sの検知領域に障害物がある場合、発信器から発信された超音波は障害物により反射され、反射波が受信器で受信される。発信された超音波に対する反射波の減衰率から超音波センサ130Sから障害物までの距離を求めることができる。
【0021】
障害物検知手段130の設置箇所は、全閉位置のスライドドア110のできるだけ広い範囲の側方を検知領域とできる位置とすることが好ましい。特に、スライドドア110の窓枠の下縁よりも低い範囲の側方を検知領域とすることが好ましい。この範囲は、車両100の反対側の側方から死角になり、目視による障害物の認識が困難な箇所だからである。本例では、各ドアミラー160の先端部から後方側に向けて超音波センサ130Sを設けている。
図2で破線と車両100の側面で囲まれる領域が超音波センサ130Sの障害物検知領域である。この構成によれば、全閉位置のスライドドア110の側方は勿論、ドアミラー160の直後から車両後端を含む広範囲に亘って障害物の検知を行うことができる。検知領域の車幅方向の境界距離は、例えば、車両100の側面から外方に1.0〜2.0m程度の範囲までカバーできるように設定すればよい。
【0022】
≪ドア制御部≫
ドア制御部140は、障害物検知手段130の検知情報に応じて、スライドドア110の開閉を制御する。具体的には、ドア制御部140は、障害物検知手段130の検知情報に応じて全閉位置のスライドドア110の側方における障害物の有無を判断する判定部142と、判定部142で障害物があると判断された場合にスライドドア110を開動作させないアクチュエータ制御部144と、上述したドアロックモータを制御するロック制御部(図示略)とを有する。上述のように、超音波センサ130Sは障害物までの距離を求めることができるため、判定部142は、ドアミラーの直後から車両後端を含む広範囲のうち、スライドドア110の移動軌跡内に障害物がある場合に、全閉位置のスライドドア110の側方に障害物があると判定することができる。判定部142で障害物があると判断された場合、ロック制御部はドアロックモータへの電力供給を行わないことでドアロックを施錠したままとし、かつアクチュエータ制御部144はモータ122Mへの電力供給を行わないことで、スライドドア110の開動作を無効にする。逆に、判定部142で障害物がないと判断された場合、ロック制御部はドアロックモータを動作してドアロックを開錠すると共に、アクチュエータ制御部144はモータ122Mを駆動してスライドドア110の開動作を行う。但し、ドアロックの開錠やスライドドア110の開動作は、開動作の指令が行われてから一定時間経過後に開始されるようにしてもよい。このドア制御部140には、ECU(Electronic Control Unit)を利用することができる。
【0023】
≪動作手順≫
上記の車両用スライドドア110の制御装置の動作手順を
図3のフローチャートに基づいて説明する。車両100の各部は
図1又は
図2を参照する。
【0024】
(1)ステップS1において、スライドドア110の自動開動作の指令がなされる。この指令は、インナスイッチ114又はアウタスイッチ116からの動作指令、ワイヤレスリモコン150からの動作指令、或いはスマートキー152を持ったユーザが車両100の所定範囲内に接近したことに伴う動作指令のいずれであってもよい。
【0025】
(2)ステップS2において、全閉状態のスライドドア110の側方に障害物が存在するか否かを判定する。この判定は、ドア制御部140の判定部142により行われる。超音波センサ130Sは、ドアミラー160の直後から車両後端を含む広範囲を障害物の検知領域としている。上述のように、超音波センサ130Sは障害物までの距離も検知できるため、スライドドア110の全閉位置から全開位置までの移動軌跡を予め設定しておけば、上記検知領域のうち、スライドドア110の移動軌跡内に障害物がある場合に、全閉位置のスライドドア110の側方に障害物があると判定することができる。
【0026】
(3)ステップ2において障害物があると判定されれば、ステップ3において、スライドドア110の開動作は行わない。すなわち、ドア制御部140のアクチュエータ制御部144は、モータ122Mへの駆動電力の供給を行わないことで、スライドドア110の開動作を無効にし、スライドドア110の全閉状態を維持する。
【0027】
(4)一方、ステップ2において障害物がないと判定されれば、アクチュエータ制御部144は、モータ122Mへの駆動電力の供給を行い、ステップ4において、スライドドア110の開動作を行う。
【0028】
≪作用効果≫
以上の車両用スライドドア110の制御装置によれば、次の効果を奏することができる。
【0029】
(1)スライドドア110が閉じられた状態でスライドドア110の側方の障害物の有無を検知し、障害物を検知した際には、ドア制御部140の制御によりスライドドア110を開動作させないようにすることができる。そのため、スライドドア110を自動開動作しようとする場合に、スライドドア110の側方に障害物があっても、その障害物にスライドドア110が接触することを回避できる。特に、予約オープンが可能な車両100において、予約オープンによりスライドドア110が自動開動作される場合に、スライドドア110が、その側方に存在する障害物に接触することを回避することに有効である。
【0030】
(2)検知する障害物は、車両側方に位置するポールや壁面などの静止物や動物・人など車両以外の物の他、車両100の側面に設けられたフューエルリッド170(
図1)も含まれる。よって、スライドドア110の移動軌跡上に位置するフューエルリッド170が開放状態とされていた場合、このフューエルリッド170を障害物として検知すれば、スライドドア110の開動作を行わないようにできる。
【0031】
(3)ドアロックの開錠やスライドドア110の開動作を、開動作の指令が行われてから一定時間経過後に開始するようにすれば、障害物を検知する時間が確保できると共に、スライドドア110の開動作の指令をキャンセルすることも可能になる。
【0032】
≪変形例≫
(1)スライドドア110の側方に障害物を検知してスライドドア110の開動作を行わない場合、その旨をユーザに対して報知するようにしてもよい。例えば、ハザードの点灯や報知音を鳴らすことが挙げられる。それにより、スライドドア110の制御装置の故障と誤解されることを防止できる。
【0033】
(2)上記の実施形態では、全閉状態から開動作が指令された際にスライドドア110の動作を制御する構成について説明したが、開状態から閉動作が指令された際もドア制御部140により閉動作を行わないようにすることができる。スライドドア110が全開状態を含む開状態にある場合、その状態から全閉状態に移行する過程で、スライドドア110がさらに車両100の側方に突出することはないが、障害物がある状態で閉動作を行うと、スライドドア110の表面が障害物に擦れたり、スライドドア110の閉方向端面が障害物に接触する虞があるからである。
【0034】
(3)アラウンドビューモニターなど、車両の側方の画像を取得できるカメラを備える車両の場合、このカメラを障害物検知手段130として利用することが期待される。例えば、ドアミラー160に車両100の左右側方の各々を視野に収めるカメラが設けられている場合、このカメラを障害物検知手段130として利用することが挙げられる。より具体的には、カメラの画像を画像処理することで、色相や明度が局所的に異なることを利用して、画像から輪郭が抽出できる領域があることで障害物の存在を検知することが挙げられる。その他、駐車時の車両100の側方の画像を取得しておき、駐車時の画像と、次の乗車時にスライドドア110を自動開動作させる直前の画像とを比較して、画像の差異から障害物を検知してもよい。特に、障害物が動物などの移動体であれば、単位時間内に多数枚の静止画像をカメラで取得し、各画像の変化から移動体の存在を検知することとしてもよい。これらの構成であれば、スライドドア110の側方の障害物を検知する超音波センサ130Sをドアミラー160に設けなくてもよい。
【0035】
(4)さらに、駐車時などに車両が障害物に接近していることを知らせるコーナーセンサ(超音波センサやレーダーセンサなど)を車両100の各コーナーに備えていれば、駐車時などで車両100が障害物の側方を通過する際に、コーナーセンサで駐車後の車両に隣接する障害物(隣の車両や側壁など)までの距離及び位置を計測してメモリに記憶しておくことができる。よって、次の乗車時にスライドドア110の自動開動作が指令されても、判定部142でメモリから読み出した側方の障害物の位置がスライドドア110の移動軌跡に干渉するか否かを判断し、干渉すると判定された場合、ドア制御部140の制御によりスライドドア110の開動作を行わないようにすることができる。