特許第6948758号(P6948758)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948758
(24)【登録日】2021年9月24日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】動弁装置
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/18 20060101AFI20210930BHJP
   F01M 1/06 20060101ALI20210930BHJP
   F01M 1/08 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   F01L1/18 B
   F01L1/18 G
   F01L1/18 P
   F01M1/06 H
   F01M1/08 D
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-82198(P2018-82198)
(22)【出願日】2018年4月23日
(65)【公開番号】特開2019-190333(P2019-190333A)
(43)【公開日】2019年10月31日
【審査請求日】2020年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】貴志 正輝
(72)【発明者】
【氏名】長田 和富
(72)【発明者】
【氏名】畔上 恵一朗
【審査官】 楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−107310(JP,U)
【文献】 実開昭63−182208(JP,U)
【文献】 実開昭52−037129(JP,U)
【文献】 特開2004−076707(JP,A)
【文献】 特開2012−047113(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0229554(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/18
F01M 1/06〜 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
該ハウジングに軸支されると共に回転するカムシャフトと、
該カムシャフトに固定されたカムと、
上記ハウジングに軸支されると共に上記カムに押圧されて揺動するロッカアームと、を有し、
上記ロッカアームは、上記ハウジングに軸支された被軸支部と、該被軸支部よりも上側において上記カムが当接する被当接面を備えた揺動端部とを有し、
上記ハウジングは、上記ロッカアームの上記被軸支部の周囲に、潤滑油が溜まるオイルバスを形成してなり、
該オイルバスは、上方に開口した噴射口を有し、
上記ロッカアームの上記被軸支部の外面と、上記オイルバスの内面との間に、潤滑油が溜まるよう構成されており、
上記ロッカアームの回動に伴い、上記被軸支部の外面の一部が、上記オイルバス中の潤滑油の少なくとも一部を圧縮することで、潤滑油を上記噴射口から噴射させるよう構成されている、動弁装置。
【請求項2】
上記ロッカアームは、上記ハウジングに取り付けられたロッカシャフトに、回動可能に軸支されており、上記ロッカシャフトは、軸方向に沿って形成された軸方向通路を内部に有すると共に、上記ロッカアームの上記被軸支部へ向かって開口した、シャフト径方向孔を有し、上記被軸支部は、上記ロッカシャフト側と上記オイルバス側とに貫通したアーム径方向孔を有し、上記シャフト径方向孔と上記アーム径方向孔とは、上記ロッカアームの回動範囲の一部において、互いに連通するよう構成されている、請求項1に記載の動弁装置。
【請求項3】
上記ロッカアームは、上記被軸支部の外周面に、外周側へ突出した突出部を有する、請求項1又は2に記載の動弁装置。
【請求項4】
上記オイルバスは、上記ロッカアームを挟んで、上記噴射口と反対側において、上方へ開口した上方開口部を有し、該上方開口部は、上記噴射口よりも開口面積が大きい、請求項1〜3のいずれか一項に記載の動弁装置。
【請求項5】
上記噴射口は、上記ハウジングに穿設された細孔である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の動弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カムとロッカアームとを有する動弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車エンジン等の内燃機関における、吸気弁や排気弁等を動作させる動弁装置として、カムとロッカアームとを用いたものがある。
かかる動弁装置は、ハウジングに軸支されると共に回転するカムシャフトと、カムシャフトに固定されたカムと、カムに押圧されて揺動するロッカアームと、を有する。揺動するロッカアームによって、吸気弁や排気弁等を、進退させる。
【0003】
動弁装置においては、例えば、ハウジングとカムシャフトとの間の摺動面(カムジャーナル部)等、摺動部分に潤滑油が供給される。それとともに、カムとロッカアームとの摺動面にも、潤滑油を供給することが必要である。その一方で、改めてカムとロッカアームとの摺動面への潤滑油の供給経路を改めて配設することは、コスト面等において不利となる。
【0004】
例えば、特許文献1には、ロッカアームに、油溜まり部として凹部を設けた構成が開示されている。この文献に開示された構成は、ロッカアームの揺動に伴って、凹部に溜まった潤滑油が飛散することで、その一部がカムやロッカアームに付着することを期待している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2860723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された構成によると、潤滑油の飛散方向はランダムであり、カムやロッカアームの所望の位置に、潤滑油を充分に付着させることが困難となるおそれがある。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、効率的に潤滑油をカムに付着させることができる動弁装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、ハウジングと、
該ハウジングに軸支されると共に回転するカムシャフトと、
該カムシャフトに固定されたカムと、
上記ハウジングに軸支されると共に上記カムに押圧されて揺動するロッカアームと、を有し、
上記ロッカアームは、上記ハウジングに軸支された被軸支部と、該被軸支部よりも上側において上記カムが当接する被当接面を備えた揺動端部とを有し、
上記ハウジングは、上記ロッカアームの上記被軸支部の周囲に、潤滑油が溜まるオイルバスを形成してなり、
該オイルバスは、上方に開口した噴射口を有し、
上記ロッカアームの上記被軸支部の外面と、上記オイルバスの内面との間に、潤滑油が溜まるよう構成されており、
上記ロッカアームの回動に伴い、上記被軸支部の外面の一部が、上記オイルバス中の潤滑油の少なくとも一部を圧縮することで、潤滑油を上記噴射口から噴射させるよう構成されている、動弁装置にある。
【発明の効果】
【0009】
上記動弁装置においては、上記ハウジングが、上記噴射口を備えた上記オイルバスを有する。そして、上記ロッカアームの回動に伴い、上記被軸支部の外面の一部が、オイルバス中の潤滑油の少なくとも一部を圧縮することで、潤滑油を上記噴射口から噴射させるよう構成されている。これにより、ロッカアームの回動に伴い、オイルバス中の潤滑油が、噴射口から所定の方向へ噴射されることとなる。それゆえ、効率的にオイルバスの上方、すなわち、カムに向って、潤滑油を噴射することができる。その結果、カムの表面における所望の位置に、効率的に、潤滑油を供給することができる。
【0010】
以上のごとく、上記態様によれば、効率的に潤滑油をカムに付着させることができる動弁装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1における、動弁装置の平面図。
図2図1のII矢視図。
図3図1のIII−III線矢視断面図。
図4】実施形態1における、図3の状態に続く、カムの回転とロッカアームの揺動を示す断面説明図。
図5】実施形態1における、図4の状態に続く、カムの回転とロッカアームの揺動を示す断面説明図。
図6図2のVI−VI線矢視断面斜視図。
図7】実施形態1における、ロッカアーム及びオイルバスの断面説明図。
図8図7のVIII−VIII線矢視断面図。
図9】実施形態1における、潤滑油が圧縮され始める状態の、ロッカアーム及びオイルバスの断面説明図。
図10】実施形態1における、潤滑油が噴射される状態の、ロッカアーム及びオイルバスを示す断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記ロッカアームは、上記ハウジングに取り付けられたロッカシャフトに、回動可能に軸支されており、上記ロッカシャフトは、軸方向に沿って形成された軸方向通路を内部に有すると共に、上記ロッカアームの上記被軸支部へ向かって開口した、シャフト径方向孔を有し、上記被軸支部は、上記ロッカシャフト側と上記オイルバス側とに貫通したアーム径方向孔を有し、上記シャフト径方向孔と上記アーム径方向孔とは、上記ロッカアームの回動範囲の一部において、互いに連通するよう構成されているものとすることができる。
【0013】
この場合には、潤滑油を、上記ロッカシャフトにおける軸方向通路及びシャフト径方向孔とアーム径方向孔とを介して、オイルバスに効率的に集めることができる。その結果、ロッカアームの回動に伴い、効率的に潤滑油をカムに付着させることができる。
【0014】
また、上記ロッカアームは、上記被軸支部の外周面に、外周側へ突出した突出部を有する。この場合には、オイルバスにおいて、より多くの潤滑油を圧縮すると共に噴射口から噴射させやすくなる。すなわち、被軸支部とオイルバスの内面との間のクリアランスが、突出部が設けてある箇所と、それ以外の箇所とにおいて、差が設けられる。そうすると、ロッカアームの回動に伴う、突出部の回動によって、潤滑油を効率的に圧縮し、噴射させることができる。
【0015】
また、上記オイルバスは、上記ロッカアームを挟んで、上記噴射口と反対側において、上方へ開口した上方開口部を有し、該上方開口部は、上記噴射口よりも開口面積が大きいものとすることができる。この場合には、上方開口部から、効率的に、潤滑油をオイルバスに導入することができる。
【0016】
また、上記噴射口は、上記ハウジングに穿設された細孔であるものとすることができる。この場合には、ロッカアームの回動に伴って、噴射口から潤滑油を勢いよく噴射しやすくなる。
【0017】
(実施形態1)
動弁装置の実施形態につき、図1図10を参照して、説明する。
本実施形態の動弁装置1は、図1図3に示すごとく、ハウジング2と、カムシャフト3と、カム4と、ロッカアーム5と、を有する。
【0018】
カムシャフト3は、ハウジング2に軸支されると共に回転する。カム4は、カムシャフト3に固定されている。ロッカアーム5は、図2図6に示すごとく、ハウジング2に軸支されると共にカム4に押圧されて揺動する。
【0019】
図3図5に示すごとく、ロッカアーム5は、ハウジング2に軸支された被軸支部51と、被軸支部51よりも上側においてカム4が当接する被当接面521を備えた揺動端部52とを有する。
ハウジング2は、ロッカアーム5の被軸支部51の周囲に、潤滑油gが溜まるオイルバス7を形成してなる。
オイルバス7は、上方に開口した噴射口71を有する。
【0020】
ロッカアーム5の被軸支部51の外面と、オイルバス7の内面との間に、潤滑油gが溜まるよう構成されている。
ロッカアーム5の回動に伴い、被軸支部51の外面の一部が、オイルバス7中の潤滑油gの少なくとも一部を圧縮することで、潤滑油gを噴射口71から噴射させるよう構成されている。
【0021】
動弁装置1においては、回転するカム4に押圧されて、ロッカアーム5が揺動する。揺動するロッカアーム5の揺動端部52によって、図示を省略するバルブを押圧することで、バルブを進退させることができるよう構成されている。すなわち、ロッカアーム5は、揺動端部52における、カム4が当接する被当接面521と反対側の面において、バルブを押圧する。バルブとしては、例えば、内燃機関の吸気弁、排気弁等とすることができる。なお、本形態においては、バルブの進退方向は、略水平方向となる。
【0022】
図2図6に示すごとく、ロッカアーム5は、ハウジング2に取り付けられたロッカシャフト6に、回動可能に軸支されている。ロッカシャフト6は、軸方向に沿って形成された軸方向通路61を内部に有する。また、ロッカシャフト6は、ロッカアーム5の被軸支部51へ向かって開口した、シャフト径方向孔62を有する。
【0023】
被軸支部51は、ロッカシャフト6側とオイルバス7側とに貫通したアーム径方向孔511を有する。シャフト径方向孔62とアーム径方向孔511とは、図3図7に示すごとく、ロッカアーム5の回動範囲の一部において、互いに連通するよう構成されている。
【0024】
ロッカアーム5は、被軸支部51の外周面に、外周側へ突出した突出部53を有する。突出部53は、ロッカアーム5の回動方向における、噴射口71側を向いた押圧面531を有する。突出部53の突出端は、オイルバス7の内周面に近接している。ただし、突出部53とオイルバス7の内周面とは、互いに接触しないように構成してある。
【0025】
オイルバス7は、ロッカアーム5の回動軸の方向から見たとき、略半円形状となる形状を有する。このオイルバス7の内側に、ロッカアーム5の被軸支部51の少なくとも一部が配置されている。本形態においては、ロッカシャフト6が、オイルバス7の上面(開口面)よりも下側に配置されている。
【0026】
図7に示すごとく、ロッカアーム5の被軸支部51の外周面のうち、回動方向における押圧面531よりも噴射口71側の部分は、回動中心からの距離が、突出部53よりも小さい。これにより、この部分における被軸支部51の外周面とオイルバス7の内周面との間に、クリアランスが形成されている。このクリアランスは、回動方向における、押圧面531と噴射口71の下端部との間に形成される。このクリアランスによる空間を、便宜的に、オイル充填空間73という。オイル充填空間73は、ロッカアーム5の回動に伴って、大きさが変動することとなる。
【0027】
ロッカアーム5の被軸支部51の外周面は、突出部53の突出端から、ロッカアーム5の回動方向における噴射口71と反対側へ向かって、徐々に回動中心に近づくような曲面状に形成されている。
【0028】
ロッカアーム5は、回動方向において、突出部53よりも噴射口71側となる位置に、アーム径方向孔511が形成されている。また、図7に示すごとく、ロッカアーム5がバルブ側へ押圧されていない状態においては、突出部53が、鉛直方向の下側を向くよう構成されている。すなわち、この状態においては、突出部53がオイルバス7の下端部付近に配置されている。
【0029】
オイルバス7は、ロッカアーム5を挟んで、噴射口71と反対側において、上方へ開口した上方開口部72を有する。図8に示すごとく、上方開口部72は、噴射口71よりも開口面積が大きい。上方開口部72は、オイルバス7の内面の一部の上端とロッカアーム5の輪郭の一部とによって、輪郭が形成される。それゆえ、ロッカアーム5の揺動に伴い、上方開口部72の大きさは、多少変動する。ただし、本形態においては、その変動は小さい。
【0030】
一方、図7図8に示すごとく、噴射口71は、ハウジング2に穿設された細孔である。細孔からなる噴射口71は、オイルバス7の本体部につながるように、ハウジング2の一部に形成されている。そして、噴射口71は、ハウジング2から上方に開口している。図3図5に示すごとく、噴射口71における、上側の延長線上に、カム4の外周面が配置されている。なお、本形態においては、噴射口71を構成する細孔は、鉛直方向に沿って穿設されている。
【0031】
図1図2に示すごとく、ハウジング2は、カムシャフト3を保持したカムキャリア211を備えた本体部21と、ロッカアーム5(ロッカシャフト6)を保持したロッカ保持部22とを有する、本体部21とロッカ保持部22とは、図示を省略するボルト等によって互いに固定されている。ロッカ保持部22は、ロッカシャフト6を固定してなり、ロッカシャフト6に対して、ロッカアーム5が回転可能に軸支されている。
【0032】
本形態においては、図6に示すごとく、一つのロッカシャフト6に、2つのロッカアーム5が軸支されている。2つのロッカアーム5は、互いに独立して回動することができるよう取り付けられている。ロッカシャフト6は、軸方向が水平方向となるように配設されている。
【0033】
上述のように、ロッカシャフト6には、軸方向通路61が形成されている。ロッカシャフト6は、略円筒形状を有する。そして、軸方向通路61の両端部は閉塞されている。また、ロッカシャフト6は、軸方向の両端部の間において、上方に開口した上面切欠部63を有する。上面切欠部63は、ハウジング2におけるロッカ保持部22から上面側に露出している。
【0034】
そして、図1に示すごとく、上面切欠部63の上方に、カムシャフト3を保持するカムキャリア211が配置されている。そして、カムシャフト3におけるカムジャーナルと、ハウジング2におけるカムキャリア211との摺動部が、上面切欠部63の上方に配置されている。これにより、カムジャーナルとカムキャリア211との間から漏れた潤滑油gが、図6に示すごとく、カムキャリア211の表面を伝って、上面切欠部63に落下する。そして、潤滑油gは、上面切欠部63からオイルバス7に導入される。
【0035】
ただし、カムシャフト3(カムジャーナル)の位置は、上面切欠部63に対して、鉛直方向に重なる位置ではなく、斜め上方の位置に配置されている。そこで、カムキャリア211の表面には、潤滑油gを上面切欠部63へ向かわせる溝やリブなどの凹凸を設けることも考えられる。
【0036】
ロッカアーム5は、ロッカシャフト6における両端部付近における外周面に取り付けられている。すなわち、ロッカアーム5の被軸支部51は、ロッカシャフト6の両端部付近を、外周から囲むように配設されている。ロッカシャフト6のシャフト径方向孔62は、ロッカアーム5が取り付けられた箇所に形成されている。そして、シャフト径方向孔62は、軸方向通路611に対して、鉛直方向の下側に配設されている。
【0037】
次に、本形態の動弁装置1における、潤滑油gの循環経路につき、説明する。
上述のように、カムシャフト3のカムジャーナルとカムキャリア211との間の摺動部には、潤滑油gが供給されている。そして、この摺動部から漏れた潤滑油gは、図6に示すごとく、カムキャリア211の表面を伝って、下方へ落下する。
【0038】
カムキャリア211の下方には、上述のように、ロッカシャフト6の上面切欠部63が配置されている。それゆえ、カムキャリア211から落下した潤滑油gは、上面切欠部63からロッカシャフト6の軸方向通路61に導入される。軸方向通路61に導入された潤滑油gは、シャフト径方向孔62に達する。
【0039】
シャフト径方向孔62は、ロッカアーム5の回動範囲の一部において、アーム径方向孔511と連通する。すなわち、図7に示すごとく、ロッカアーム5の回動範囲のうち、突出部53が噴射口71から最も遠い位置となる状態において、シャフト径方向孔62とアーム径方向孔511とが繋がる。これにより、軸方向通路61における潤滑油gは、シャフト径方向孔62及びアーム径方向孔511を通過して、オイルバス7のオイル充填空間73に供給される。また、潤滑油gは、上方開口部72からもオイルバス7に供給される。
【0040】
次いで、図9図10に示すごとく、ロッカアーム5の揺動に伴い、突出部53が噴射口71側へ近づく。これにより、アーム径方向孔511とシャフト径方向孔62とが連通しなくなる。すなわち、軸方向通路61とオイル充填空間73とが分離される。それとともに、オイル充填空間73の容積が小さくなる。オイル充填空間73は、噴射口71を介して外部と繋がっているものの、噴射口71は狭いため、ロッカアーム5の回動に伴うオイル充填空間73の体積減少によって、オイル充填空間73における潤滑油gが圧縮される。
【0041】
この加圧状態の潤滑油gが、図10に示すごとく、噴射口71から上方へ噴射されることとなる。噴射された潤滑油gは、噴射口71の上方に位置するカム4(図5参照)の表面に付着することとなる。そして、カム4とロッカアーム5の被当接面521との間に、潤滑油gが供給され、両者間の潤滑が、効果的に実現される。
【0042】
次に、本実施形態の作用効果につき説明する。
上記動弁装置1においては、ハウジング2が、噴射口71を備えたオイルバス7を有する。そして、ロッカアーム5の回動に伴い、被軸支部51の外面の一部が、オイルバス7中の潤滑油gの少なくとも一部を圧縮することで、潤滑油gを噴射口71から噴射させるよう構成されている。これにより、上述のように、ロッカアーム5の回動に伴い、オイルバス7中の潤滑油gが、噴射口71から所定の方向へ噴射されることとなる。それゆえ、効率的にオイルバス7の上方、すなわち、カム4に向って、潤滑油gを噴射することができる。その結果、カム4の表面における所望の位置に、効率的に、潤滑油gを供給することができる。
【0043】
また、ロッカシャフト6は、軸方向通路61とシャフト径方向孔62とを有し、被軸支部51は、アーム径方向孔511を有する。そして、シャフト径方向孔62とアーム径方向孔511とは、ロッカアーム5の回動範囲の一部において、互いに連通するよう構成されている。これにより、潤滑油gを、軸方向通路61及びシャフト径方向孔62とアーム径方向孔511とを介して、オイルバス7に効率的に集めることができる。その結果、ロッカアーム5の回動に伴い、効率的に潤滑油gをカム4に付着させることができる。
【0044】
また、ロッカアーム5は、被軸支部51の外周面に突出部53を有する。これにより、オイルバス7において、より多くの潤滑油gを圧縮すると共に噴射口71から噴射させやすくなる。すなわち、被軸支部51とオイルバス7の内面との間のクリアランスが、突出部53が設けてある箇所と、それ以外の箇所とにおいて、差が設けられる。そうすると、ロッカアーム5の回動に伴う、突出部53の回動によって、潤滑油gを効率的に圧縮し、噴射させることができる。
【0045】
また、オイルバス7は、上方開口部72を有する。上方開口部72は、噴射口71よりも開口面積が大きい。これにより、上方開口部72から、効率的に、潤滑油gをオイルバス7に導入することができる。また、噴射口71は、ハウジング2に、垂直方向に穿設された細孔である。これにより、ロッカアーム5の回動に伴って、噴射口71から潤滑油gを勢いよく噴射しやすくなる。
【0046】
以上のごとく、本実施形態によれば、効率的に潤滑油をカムに付着させることができる動弁装置を提供することができる。
【0047】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 動弁装置
2 ハウジング
3 カムシャフト
4 カム
5 ロッカアーム
51 被軸支部
52 揺動端部
521 被当接面
7 オイルバス
71 噴射口
g 潤滑油
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10