【文献】
Mol. Nutr. Food Res.,2016年05月,Vol.60,p.1129-1138
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
肥満はからだの脂肪組織及び種々の臓器における異常な脂肪沈着によるものと考えられている。また、肥満により高脂血症を発症し、さらには高血圧、糖尿病、そして動脈硬化を発症する確率が高くなることが知られている。
【0003】
肥満は、体質的因子、食餌性因子、精神的因子、中枢性因子、代謝性因子、運動不足などが要因となり、結果的に摂取カロリーが消費カロリーを上回り、脂肪が蓄積して起こると言われている。体内では、生体内における個々の脂肪細胞に蓄積している脂肪、すなわちトリグリセリド量が増加し細胞が肥大化している。また近年、成人期以降でも脂肪細胞数が増加することが明らかとなり、前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化を抑制し、成熟脂肪細胞数の増加を抑制することや、成熟脂肪細胞の脂肪蓄積を抑制することにより肥満の進行を抑え、肥満を改善させることが期待される。
【0004】
脂肪細胞数の増加を抑制し抗肥満効果を示す食品、医薬、サプリメントまたは化粧料はあまり多くはなく、例えば前駆脂肪細胞分化抑制ペプチドを有効成分とするもの(特許文献1)や、活性化乳清を有効成分とするもの(特許文献2)がある。またω‐3系高度不飽和脂肪酸を有効成分として皮膚外用剤に適用させる(特許文献3)試みがある。
【0005】
一方、ウロリチン類と呼ばれるポリフェノールが存在することが知られている。ウロリチンAに代表されるウロリチン類は、ザクロ、ラズベリー、ブラックベリー、クラウドベリー、イチゴ、クルミなどに含まれるエラジタンニンに由来するエラグ酸の代謝物として知られている。エラジタンニンは加水分解性タンニンに分類され、摂取されると体内で加水分解され、エラグ酸に変換されることが知られている。
エラジタンニンやエラグ酸は体内の腸管吸収性は非常に低いと言われているが、これらが摂取された際、ヒト結腸微生物叢によって更に代謝されることによってウロリチン類に変換されることが知られている。このようにして生成されるウロリチン類は生体内で最も重要な化合物の1つである。近年、ウロリチン類を生成する腸内細菌としてGordonibacter urolithinfaciensが報告されている(非特許文献1)。
【0006】
生体におけるウロリチン類の生成については、ゲラニインなどのエラジタンニンを摂取させた後、尿中のウロリチン類を分析することによって、エラジタンニンの生体内における代謝物としてウロリチン類が生じることがラットを用いた試験で報告されている(非特許文献2)。また、非特許文献3では、ヒトにおいて、プニカラジンを主としたエラジタンニンを含むザクロ抽出物を摂取後、尿中においてウロリチン類縁体が検出され、特にウロリチンAが主な代謝物として機能することが報告されている。このほかにも、ウロリチンAには抗酸化作用や抗炎症作用など様々な有効性があることが報告されており(非特許文献4〜6)、肥満、新陳代謝速度低下、メタボリックシンドローム、糖尿病、高脂血症などの症状の治療または予防のためのウロリチンAを含有する食品等も報告されている(特許文献4)。しかし、ウロリチン類が前駆脂肪細胞の分化を抑制する作用は知られていない。
また、ウロリチン類を用いてミトコンドリア活性を亢進させることにより肥満を防止・改善すること(特許文献4)や、ウロリチン類を用いてオートファジーを亢進させ、脂肪
肝を予防・治療する試み(特許文献5)もある。しかしながら、未だ十分な効果がなく、新規な前駆脂肪細胞分化抑制剤が望まれている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ウロリチン類を含有する前駆脂肪細胞分化抑制剤に係る第一の実施態様を含む。
本発明の第一の実施態様は、下記一般式(1)で表されるウロリチン類を含有する前駆脂肪細胞分化抑制剤である。
【0015】
(ウロリチン類)
第一の実施態様におけるウロリチン類は特に限定されないが、その構造が上記一般式(1)で表される物質である。また、表1に示すように、ウロリチン類は化学式におけるR1〜R6によって、ウロリチンA、ウロリチンB、ウロリチンC、ウロリチンD、ウロリチンE、ウロリチンM3、ウロリチンM4、ウロリチンM5、ウロリチンM6、ウロリチンM7、及びイソウロリチンAなどを含む。
【0017】
このうち、前駆脂肪細胞分化抑制作用が高いことから、ウロリチンAが好ましい。
【0018】
ウロリチン類を得る方法は特段限定されず、市販されているものを用いてもよく、化学合成により合成してもよい。
市販のウロリチン類としては、例えば、ウロリチンA、ウロリチンB、ウロリチンC、
ウロリチンD、ウロリチンE(Dalton Pharma社製)などを挙げることができる。
また、化学合成による合成方法としては常法に従うことができ、例えば、本明細書の実施例で説明するように、2−ブロモ−5−メトキシ安息香酸と塩化アルミニウムとを原料に用いてウロリチンAを合成する方法が挙げられる。
【0019】
また、植物からエラジタンニンの一種であるプニカラジンを抽出し、これをエラグ酸に加水分解した後、もしくはエラグ酸を抽出し、微生物を用いてウロリチン類に変換してもよい。
植物の種類は特段限定されず、ザクロ、ラズベリー、ブラックベリー、クラウドベリー、ボイセンベリー、イチゴ、クルミ、ゲンノショウコ等が挙げられる。このうち、エラジタンニン及び/又はエラグ酸を高含有していることから、ザクロ、ボイセンベリー、ゲンノショウコが好ましく、ザクロがより好ましい。
これらの植物は、いずれか1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、該植物からの抽出方法及び抽出条件は特段限定されず、常法に従えばよい。例えば、水抽出、熱水抽出、温水抽出、アルコール抽出、超臨界抽出等の公知の抽出方法を用いることができる。
【0020】
溶媒抽出を行う場合、溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール等の低級アルコールや、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール等のアルコール類(無水、含水の別を問わない);アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチルエステル等のエステル類、キシレン等が挙げられ、好ましくは水、エタノール等である。これらの溶媒は、いずれか1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
抽出したプニカラジンなどのエラジタンニンをエラグ酸に加水分解する方法としては特段限定されないが、酸、酵素、微生物によって加水分解する方法が挙げられる。
微生物を用いてエラグ酸をウロリチン類に変換する方法としては特段限定されないが、例えば、Food Funct., 5, 8, 1779-1784 (2014)に記載にされている公知の方法を用いる
ことができる。
【0021】
得られたウロリチン類をそのままの状態で使用することもできるが、乾燥させて粉末状のものを用いてもよい。また、必要に応じて、得られたウロリチン類に精製、濃縮処理等を施してもよい。精製処理としては、濾過又はイオン交換樹脂や活性炭カラム等を用いた吸着、脱色といった処理を行うことができる。また、濃縮処理としては、エバポレーター等の常法を利用できる。
【0022】
また、得られたウロリチン類(又は精製処理物若しくは濃縮物)を凍結乾燥処理に供して粉末化する方法、デキストリン、コーンスターチ、アラビアゴム等の賦形剤を添加してスプレードライ処理により粉末化する方法等、公知の方法に従って粉末化してもよい。さらにその後に、必要に応じて純水、エタノール等に溶解して用いてもよい。
【0023】
ウロリチン類が、前駆脂肪細胞の分化抑制活性を有することは、従来から全く知られておらず、本発明により得られた新知見である。
ウロリチン類は、高い安全性で卓越した前駆脂肪細胞の分化抑制活性を有しており、前駆脂肪細胞分化抑制、脂肪蓄積阻害、肥満症の治療、肥満症の改善、肥満症の予防などの用途に好ましく用いられ、ウロリチン類を含有する好ましい形態としては、飲食品、医薬、サプリメント及び化粧料である。以下では、前駆脂肪細胞分化抑制用途の場合について記載するが、上記した他の用途の場合でも同様である。また、肥満症のほかには、前駆脂肪細胞分化抑制により予防又は改善される症状や疾患が挙げられ、例えば、高血糖、高脂血症、糖尿病、動脈硬化症などの生活習慣病が挙げられる。
【0024】
(前駆脂肪細胞分化抑制剤)
本実施態様に係る前駆脂肪細胞分化抑制剤とは、前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化を抑制するものである。体内における成熟脂肪細胞数の増加が抑制されることで、体内に蓄積される脂肪の量が小さく抑えられることから、肥満症を治療し、改善し、予防するものである。前駆脂肪細胞分化抑制活性は公知の方法に従って評価することができる。例えば、Oil Red O 染色液で染色し、蛍光測定法で定量することにより評価できる。
本実施態様に係る前駆脂肪細胞分化抑制剤はウロリチン類を含有することから、上記と同様に、脂肪蓄積阻害、肥満症の治療、肥満症の改善、肥満症の予防などの用途に好ましく用いられ、その好ましい形態としては、飲食品、医薬、サプリメント及び化粧料である。
【0025】
本実施態様に係る前駆脂肪細胞分化抑制剤は、上記したウロリチン類のうち一種を含有してもよく、複数種を含有してもよい。また、ウロリチン類を単独で含有してもよいが、ウロリチン類以外に公知の賦形剤、香料、着色料、乳化剤、安定化剤、増粘剤、酵素、防腐剤、滑沢剤、界面活性剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、結合剤、吸収促進剤、吸着剤、保湿剤、可溶化剤、保存剤、風味剤、甘味剤等を、本実施態様の効果を損なわない範囲で必要に応じて配合することができる。
【0026】
本実施態様に係る前駆脂肪細胞分化抑制剤全量に対するウロリチン類の含有量は、本実施態様による所望の効果が奏される限り特に限定されないが、ウロリチン類の総量として、通常0.00001質量%以上、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは
0.001質量%以上であり、また、通常20質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
また、通常40μM以上、好ましくは50μM以上、より好ましくは60μM以上であり、細胞生存率を顕著に低下させないことから、通常1000μM以下、好ましくは500μM以下、より好ましくは200μM以下である。
【0027】
(医薬)
ウロリチン類を前駆脂肪細胞分化抑制用医薬の素材として用いる場合、医薬としての適用方法は、経口投与又は非経口投与のいずれも採用することができる。投与に際しては、有効成分を経口投与、直腸内投与、注射などの投与方法に適した固体又は液体の医薬用無毒性担体と混合して、慣用の医薬製剤の形態で投与することができる。このような製剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤などの固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤などの液剤、凍結乾燥製剤などが挙げられ、これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。上記の医薬用無毒性担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングルコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食塩水などが挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤などの慣用の添加剤を適宜添加することもできる。
【0028】
前駆脂肪細胞分化抑制用医薬全量に対するウロリチン類の含有量は、所望の効果が奏される限り特に限定されないが、ウロリチン類の総量として、通常0.0001質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であり、また、通常10質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。
【0029】
有効投与量は、患者の年齢、体重、症状、患者の程度、投与経路、投与スケジュール、製剤形態、素材の阻害活性の強さなどにより、適宜選択・決定されるが、例えば、経口投
与の場合、一般に1日当たり、ウロリチン類の総量として、0.001〜1000mg/kg体重程度、1日に数回に分けて投与してもよい。
【0030】
(飲食品)
ウロリチン類を前駆脂肪細胞分化抑制用飲食品の素材として用いる場合、一般の飲食品の他、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品、病者用食品、食品添加物等(これらには飲料も含まれる。本明細書において同じ。)として使用できる。飲食品の形態としては、ウロリチン類を含有する植物自体や動物自体ではなく、例えば、適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペーストなどに成形して食用に供してもよく、また種々の食品、例えば、ハム、ソーセージなどの食肉加工食品、かまぼこ、ちくわなどの水産加工食品、パン、菓子、バター、粉乳、発酵乳製品に添加して使用したり、水、果汁、牛乳、清涼飲料などの飲料に添加して使用してもよい。
【0031】
ウロリチン類を含有する前駆脂肪細胞分化抑制用飲食品は、水、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン類、ミネラル類、有機酸、有機塩基、果汁、フレーバー類等を主成分として使用することができる。タンパク質としては、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳、部分脱脂粉乳、カゼイン、大豆タンパク質、鶏卵タンパク質、肉タンパク質等の動植物性タンパク質、及びこれらの加水分解物、バターなどが挙げられる。糖質としては、糖類、加工澱粉(デキストリンのほか、可溶性澱粉、ブリティッシュスターチ、酸化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテル等)、食物繊維などが挙げられる。脂質としては、例えば、ラード、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の植物性油脂などが挙げられる。ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、カロチン類、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、ビタミンP、ビタミンQ、ナイアシン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、コリン、葉酸などが挙げられ、ミネラル類としては、例えば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレン、乳清ミネラルなどが挙げられる。有機酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸などが挙げられる。これらの成分は、2種以上を組み合わせて使用してもよく、合成品及び/又はこれらを多く含む飲食品を用いてもよい。
【0032】
ウロリチン類を含有する前駆脂肪細胞分化抑制用飲食品は、常法に従って製造することができる。また、ウロリチン類の飲食品への配合量、配合方法、配合時期は適宜選択することができる。さらに、必要に応じて、瓶、袋、缶、箱、パック等の適宜の容器に封入することができる。
【0033】
前駆脂肪細胞分化抑制用飲食品全量に対するウロリチン類の含有量は、所望の効果が奏される限り特に限定されないが、ウロリチン類の総量として、通常0.0001質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であり、また、通常10質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。
【0034】
有効摂取量は、摂取者の年齢、体重、症状、摂取者の程度、摂取経路、摂取スケジュール、加工形態、素材の阻害活性の強さなどにより、適宜選択・決定されるが、例えば、一般に1日当たり、ウロリチン類の総量として、0.001〜1000mg/kg体重程度、1日に数回に分けて摂取してもよい。
【0035】
(サプリメント)
サプリメントとは、dietary supplementからなる飲食品区分の1つであり、本明細書では、前駆脂肪細胞分化抑制作用等を発揮する機能補助物質をいう。
本実施態様に係る前駆脂肪細胞分化抑制剤をサプリメントの素材として用いる場合、固形物、ゲル状物、液状物の何れの形態とすることができる。サプリメントの形態としては、例えば、各種加工飲食品、粉末、錠剤、丸剤、カプセル、ゼリー、顆粒等の形態にすることができる。
【0036】
ウロリチン類を前駆脂肪細胞分化抑制用サプリメントの素材として用いる場合、デキストリン等の賦形剤、ビタミンC等の保存剤、バニリン等の嬌味剤、ベニバナ色素等の色素、単糖、オリゴ糖および多糖類(例、グルコース、フルクトース、スクロース、サッカロース、およびこれらを含有する糖質)、酸味料、香料、油脂、乳化剤、全脂粉乳、または寒天などの添加剤を含有していてもよい。これらの成分は、2種以上を組み合わせて使用してもよく、合成品及び/又はこれらを多く含んでもよい。
【0037】
ウロリチン類を前駆脂肪細胞分化抑制用サプリメントの素材として用いる場合、常法に従って製造することができる。また、サプリメントへの配合量、配合方法、配合時期は適宜選択することができる。さらに、必要に応じて、瓶、袋、缶、箱、パック等の適宜の容器に封入することができる。
【0038】
前駆脂肪細胞分化抑制用サプリメント全量に対するウロリチン類の含有量は、上記効果が発揮される限り特段限定されないが、ウロリチン類として、総量で、通常0.0001質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であり、また、通常10質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。
【0039】
(化粧料)
ウロリチン類を前駆脂肪細胞分化抑制用化粧料の素材として使用する場合、例えば、ウロリチン類を小麦胚芽油あるいはオリーブ油に添加して前駆脂肪細胞分化抑制剤含有組成物とし、これを化粧料素材として使用することができる。ウロリチン類の添加量は、特に限定されるものではないが、一例としてあげると、小麦胚芽油あるいはオリーブ油に対して、ウロリチン類の総量として、0.1質量%以上60質量%以下、好ましくは0.5質量%以上50質量%以下である。
また、ウロリチン類を直接、化粧料成分として使用し、前駆脂肪細胞分化抑制作用を有する化粧料を製造することができる。
【0040】
化粧料としては特に限定されるものではないが、機能面からは、例えばフェイス又はボディ用乳液、化粧液、クリーム、ローション、エッセンス、パック、シートなどが好ましい。このような化粧料は、常法に従って製造することができる。ウロリチン類の添加量は、特に限定されるものではないが、一例としてあげると、前駆脂肪細胞分化抑制用化粧料全量に対して、ウロリチン類の総量として、0.01質量%以上20質量%以下である。
【0041】
ウロリチン類を含有する前駆脂肪細胞分化抑制用化粧料は、常法に従って製造することができる。また、化粧料への育毛剤の配合量、配合方法、配合時期は適宜選択することができる。さらに、必要に応じて、瓶、袋、缶、スプレー缶、噴霧容器、箱、パック等の適宜の容器に封入することができる。
【0042】
また、一部上記と重複するが、通常用いられる公知の成分を適宜加えて用いることができる。
例えば、アニオン性界面活性剤(脂肪酸石鹸、スルホン酸塩型アニオン性界面活性剤、硫酸エステル型アニオン性界面活性剤、リン酸エステル型アニオン性界面活性剤、アシルメチルタウリン塩、モノアルキルリン酸塩、アシルグルタミン酸塩、イセチオン酸エステル塩等)、カチオン性界面活性剤(アミン塩型カチオン性界面活性剤、第四アンモニウム
型カチオン性界面活性剤(テトラアルキルアンモニウム型、ピリジニウム型))、非イオン性界面活性剤(グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル等)、両性界面活性剤(イミダゾリン型、ベタイン型、アミノ酸型)、フッソ系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の天然、合成界面活性剤、
アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アラビアガム、キサンタンガム、ペクチン、トラガント、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カチオン化セルロース、カチオン化デキストラン、カチオン化デキストリン、キトサン、カチオン化ビニルピロリドンポリマー、塩化N,N−ジメチル−3,5−メチレンピペリジニウムポリマー、乳タンパク、大豆タンパク、ゼラチン、卵タンパク、カゼインナトリウム、ホエータンパク等の水溶性高分子、
イチョウ、ツボクサ、トウヤク、ニンジン、シコッピ、カイカ、インチコウ、ヤシャジツ、甘草分画物、ゴカヒ、センプクカ、ヒカイ、ユズリハ、カミツレ、マロニエ、エスシン、テルミナリア、ルスコゲニン、ブッチャーブルーム、コラ、ガラナ、マテ、コーヒー、カカオ、プレクトランタス、タンジン、ビスナガ、シリマリン、ロイコシアニン、オトギリ草、クマハゼ、シソ、オウゴン、ケイガイ、ローズマリー、セージ、タイム、ヨモギ、カワラヨモギ、ソウジュツ、セイヨウノコギリソウ、シコン、ウイキョウ、オウバク、ショウキョウ、トウキ、センキュウ、チンビ、カノコソウ、ビャクシ、トウヒ、芍薬、紅花、菖蒲、ブクリョウ、ハッカ等の植物成分、
コハク酸、フマル酸、クエン酸、ピルビン酸、グルクロン酸、2−ヒドロキシ酪酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、タルトロン酸、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ビタミンA酸、ビタミンC誘導体、ビタミンD、ビタミンE、オリゴペプチド、トラネキサム酸エステル等の活性成分、・多価アルコール、アミノ酸、ムコ多糖類、蛋白質、生体抽出物、発酵代謝物、多糖類、植物抽出物、リン脂質、セラミドなどの保湿剤、
油脂類(大豆油、ヌカ油、ホホバ油、アボガド油、アーモンド油、カカオ油、オリーブ油、ゴマ油、パーシック油、ヒマシ油、ヤシ油、ミンク油、牛脂、豚脂等の天然油脂、これらの天然油脂を水素添加して得られる硬化油およびミリスチン酸グリセリド、2−エチルヘキサン酸グリセリド等の合成トリグリセリド、ジグリセリド等)、ロウ類(カルナウバロウ、鯨ロウ、ミツロウ、ラノリン等)、炭化水素類(流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、スクワラン、プリスタン等)、高級脂肪酸類(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラノリン酸、イソステアリン酸等)、高級アルコール類(ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、コレステロール、2−ヘキシルデカノール等)、エステル類(オクタン酸セチル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸デシル、イソステアリン酸コレスチール等)、精油類(ハッカ油、ジャスミン油、シヨウ脳油、ヒノキ油、トウヒ油、リュウ油、テレピン油、ケイ皮油、ベルガモット油、ミカン油、シヨウブ油、パイン油、ラベンダー油、ベイ油、クローブ油、ヒバ油、バラ油、ユーカリ油、レモン油、ペパーミント油、タイム油、ローズ油、セージ油、メントール、シネオール、オイゲノール、シトラール、シトロネラール、ボルネオール、リナロール、ゲラニオール、カンファー、チモール、スピラントール、ピネン、リモネン、テルペン系化合物等)、シリコーン油類等の油脂成分(エモリエント成分)、
炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、ホウ砂、硫酸ナトリウム、硫化ナトリウム、硝酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、り
ん酸ナトリウム、塩化カリウム、硫化カリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機塩類、
ホウ酸、メタケイ酸、無水ケイ酸等の無機酸類、
黄色4号、青色1号、黄色202号、クロロフィル、リボフラビン、紅花、クロシン、アントラキノン等の色素類、
香料類、
アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリテトラフルオロエタン等の高分子、これらの高分子のコポリマー、ケイ酸、ケイ酸カルシウム、天然ケイ酸アルミニウム、合成ケイ酸アルミニウム、ゼオライト、酸化チタン、タルク、カオリン、マイカ、ベントナイト等の微粉体、
硫黄、湯の花、鉱砂、雲母末、中性白土、いり糠、殺菌剤、防腐剤、
をはじめ、その他製剤上必要な成分などが挙げられる。
【0043】
(表示)
ウロリチン類を含有する前駆脂肪細胞分化抑制剤、前駆脂肪細胞分化抑制用飲食品、前駆脂肪細胞分化抑制用医薬、前駆脂肪細胞分化抑制用サプリメント、前駆脂肪細胞分化抑制用化粧料は、前駆脂肪細胞分化抑制のために用いられるものである旨の表示を付した飲食品、医薬、サプリメント、化粧料として販売することができる。
尚、必ずしも、「前駆脂肪細胞分化抑制のために用いられるものである旨」の表示である必要はなく、例えば、「前駆脂肪細胞分化抑制用」や「前駆脂肪細胞の分化を抑制する旨」等の表示であってもよく、さらに、前駆脂肪細胞分化抑制によって生じる効果の表示も含まれる。
【0044】
また、上記用途が表示される対象や媒体としては、例えば、商品等の本体をはじめ、包装、説明書、販促物(パネルやPOP、音声や動画を用いたもの等を含む。)、宣伝物(カタログやチラシ、パンフレット等を含む。)、営業資料(カタログやパンフレット、価格表、取引書類等を含む。)などが挙げられ、上記用途を表示できる対象や媒体であれば特段限定されない。
【0045】
さらに、前駆脂肪細胞分化抑制用飲食品には、一般的な飲食品のほか、例えば、健康食品、機能性食品、保健機能食品、特別用途食品、医薬部外品など、医薬品以外で健康の維持や増進を目的として摂取できる飲食品が含まれる。「健康食品」等の「食品」には「飲料」も含まれる。
健康食品としては、例えば、栄養補助食品、健康補助食品、美容飲食品の名称で提供される食品が挙げられる。また、保健機能食品とは、食品衛生法又は健康増進法により定義されるものであり、特定の保健の効果や栄養成分の機能、疾病リスクの低減などが表示できる。保健機能食品には、特定保健用食品(トクホ;条件付き特定保健用食品を含む。)及び栄養機能食品(トクホと異なり、個別に消費者庁長官の許可を受けている食品ではない。)が含まれる。
本発明における「表示」には、このような飲食品や医薬部外品としての表示が含まれる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例を挙げて具体的に説明するが、これに限定されるものではない。本実施例において、作用効果の比較にはダネット検定を用いた。データは、平均値±SD(標準偏差)で表し、有意水準1%未満を有意差ありと判定した。
【0047】
(ウロリチン類の分析方法)
ウロリチン類の一例としてウロリチンAを用いた場合を説明する。ウロリチンAの分析
はHPLCを用いて行った。即ち、ウロリチンA(Dalton Farma社製)を適当な溶媒に溶解させて調製した溶液を下記のHPLC条件下で分析し、純度(%)(A)およびHPLCにおけるピーク面積値(B)を用いて、下記算出式(1)及び算出式(2)によりウロリチンAのファクター及びサンプルのウロリチンA濃度を算出した。
【0048】
(ウロリチンAのファクター算出式)
ウロリチンAのファクター=(B)/(ウロリチンAの標準液の濃度(mg/L)×(A)/100) ・・・(1)
(サンプルのウロリチンA濃度算出式)
サンプルのウロリチンA濃度(mg/L)=サンプル中のウロリチンAのピーク面積値/ウロリチンAのファクター ・・・(2)
【0049】
(分析条件)
分析カラム:Inertsil ODS−3(250×4.6mm)(GL Science社製)
検出波長:305nm
移動相:水/アセトニトリル/酢酸 = 74/25/1
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/min
上記条件下、ウロリチンAは保持時間を16.5分とした。
【0050】
(ウロリチンAの調製)
2−ブロモ−5−メトキシ安息香酸5g(和光純薬工業株式会社製)と塩化アルミニウム15gを150mLのクロロベンゼン中で2.5時間還流した。冷却後、反応液を氷水に移し、250mLのジエチルエーテルを用いて3回抽出を行った。得られた抽出液を減圧濃縮してジエチルエーテルを留去し、2−ブロモ−5−ヒドロキシ安息香酸4.2gを得た。得られた2−ブロモ−5−ヒドロキシ安息香酸3.9gとレゾルシノール3.9g(東京化成工業株式会社製)を9mLの4M NaOH水溶液中で60℃、30分間加熱した。この反応液に10%硫酸銅水溶液1.8mLを加えた後、更に80℃、10分間の加熱を行った。生成した沈殿物をろ過によって回収し、ウロリチンAの白色粉末を得た。
【0051】
<前駆脂肪細胞分化抑制活性の評価>
[脂肪蓄積率の測定]
(実施例1)
96ウェルプレートに、3T3−L1細胞を1.5×10
3細胞/ウェルで播種し、48時間培養することでコンフルエントとした(0day)。その後、1μg/mL INS、1μM DEX、0.5mM IBMX、D‐(+)‐グルコース(SIGMA社)を加えた培地(Dulbecco's Modified Eagle Medium (DMEM)(Gibco(登録商標),Thermo Fisher Scientific Inc.)に交換し、2日間分化誘導刺激を加えた(2day)。こ
のとき血清は、細胞の過剰な増殖を防ぐため、5%ウシ胎児血清に変更した。それ以降は通常の培養培地(DMEM)に1μg/mL INS、5%ウシ胎児血清、D‐(+)‐グルコースを加えた培地に交換し、5日間培養した後、Oil Red O 染色を行った(7day)。また、この5日間の培地交換は毎日行った。また、同様の方法で、最終濃度が10、30、又は100μMとなるようにウロリチンAを−1dayから7dayまで継続的に添加した。
Oil Red O染色液は、Oil Red O(SIGMA社)をイソプロパノール(Wako社)に30%の濃度で溶解させたものを原液とし、原液を純水で60%に希釈したものを用いた。
【0052】
培養終了後、乾燥による細胞の剥離を防ぐため、ウェル中の培地を半量取り除き、取り
除いた量だけ10%ホルマリン(Wako社)を添加して、20分間静置した。その後、10%ホルマリンで20分間静置することで細胞を固定し、純水によって2回洗浄した。純水で60%に希釈したイソプロパノールを細胞に3分間馴染ませ、調製したOil Red O染色液を添加して60分間静置した。60分後、60%イソプロパノール、純水の順に洗浄を行い、顕微鏡で観察を行った。その後、48時間室温で乾燥させ、乾燥後100%イソプロパノールを添加して60分間静置し、染色した脂肪滴の抽出を行った。抽出した脂肪滴の定量として、Spectra Max(日本モレキュラーデバイス株式会社)を用いて波長510nmにおける吸光度を測定した。
【0053】
(比較例1)
ウロリチンAを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にした。
【0054】
試料無添加群の吸光度(比較例1)に対する試料添加群の吸光度(実施例1)の割合を百分率で求め、脂肪蓄積率(%)とした。得られた各試料の脂肪蓄積率を表2及び
図1に示す。脂肪蓄積率の低いものほど、脂肪細胞の分化を抑制していると見ることができる。
【0055】
【表2】
【0056】
[細胞生存率の測定]
(実施例2)
96ウェルプレートに、3T3−L1細胞を1.5×10
3細胞/ウェルで播種し、24時間培養した(−1day)。その後、最終濃度が10、30、又は100μMとなるように培地(DMEM)にウロリチンAを添加し、24時間後にWST−1(Roche社)10%含有血清培地(DMEM)に交換した。WST−1試薬添加から1時間後に、Spectra Maxを用いて波長440nmにおける吸光度を測定した。
【0057】
(比較例2)
ウロリチンAを添加しなかったこと以外は実施例2と同様にした。
【0058】
試料無添加群の吸光度(比較例2)に対する試料添加群の吸光度(実施例2)の割合を百分率で求め、細胞生存率(%)とした。得られた各試料の細胞生存率を表3及び
図2に示す。ウロリチン濃度が100μM以下であれば分化前の3T3−L1細胞に対して毒性がないことが少なくともわかった。
【0059】
【表3】