(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
まず、
図1〜
図9を参照して、本発明の本実施形態によるガス濃縮装置1の全体構成について説明する。
【0020】
(ガス濃縮装置)
ガス濃縮装置1は、
図1および
図2に示すように、検知対象ガス成分G1(
図3参照)を濃縮し、濃縮した検知対象ガス成分G1をガス検知装置2に供給するように構成されている。具体的には、ガス濃縮装置1は、ガス流路3と、キャリアガス供給部4と、ガス捕集部5と、サンプルガス供給部6と、制御部7とを備えている。なお、ガス検知装置2は、特許請求の範囲の「検知部」の一例である。
【0021】
ガス流路3は、キャリアガス供給部4、ガス捕集部5、サンプルガス供給部6およびガス検知装置2を接続している。ガス流路3において、キャリアガス供給部4により供給されるキャリアガスが内部を流通する。また、ガス流路3において、サンプルガス供給部6により供給されるサンプルガスが内部を流通する。ガス流路3は、サンプルガスの流入口(サンプルガスIN)からガス捕集部5までの第1流路31と、キャリアガス供給部4からガス捕集部5までの第2流路32とを含んでいる。ガス流路3は、ガス捕集部5からサンプルガス供給部6までの第3流路33と、サンプルガス供給部6から第1流出口(OUT1)までの第4流路34を含んでいる。ガス流路3は、ガス捕集部5から第2流出口(OUT2)までの第5流路35を含んでいる。また、ガス流路3は、ガス捕集部5からガス検知装置2までの第6流路36を含んでいる。
【0022】
ガス流路3には、
図1に示すように、弁部8と、切換弁部9とが配置されている。弁部8は、通常時(白色により表示)において、サンプルガスおよびキャリアガスを流し、制御部7からの信号が印加されることにより、ガス流路3を遮断するように構成されている。切換弁部9は、通常時(白色により表示)において、一方側にサンプルガスまたはキャリアガスを流すように構成されている。また、切換弁部9は、制御部7からの信号が印加(以下、切換時、黒色により表示)されることにより、ガスの流通方向を切り換えて、他方側にサンプルガスまたはキャリアガスを流すように構成されている。
【0023】
弁部8は、
図1に示すように、第1開閉弁81と、第2開閉弁82とを有している。このように、弁部8は、ガス捕集部5近傍における、サンプルガスおよびキャリアガスの上流側または下流側への流通を遮断する機能を有している。なお、第2開閉弁82は、
図9に示すように、蛇行する内部流路83と、シャフト84と、ダイヤフラム85とを有している。第2開閉弁82では、シャフト84がX方向に進退(
図9の二点鎖線)することにより、ダイヤフラム85が伸縮(
図9の二点鎖線)し、内部流路83が開閉される。
【0024】
切換弁部9は、第1切換弁91と、第2切換弁92と、第3切換弁93とを有している。第1切換弁91は、通常時において、第2流路32にキャリアガスを流し、切換時において、第1流路31にサンプルガスを流すように構成されている。第2切換弁92は、通常時において、第5流路35または第6流路36にキャリアガスを流し、切換時において、第3流路33にサンプルガスを流すように構成されている。第3切換弁93は、通常時において、第6流路36にキャリアガスを流し、切換時において、第5流路35にキャリアガスを流すように構成されている。
【0025】
キャリアガス供給部4は、ガス流路3内にサンプルガスを流通させるため、ガス流路3内に不活性ガスであるキャリアガスを供給するように構成されている。具体的には、キャリアガス供給部4は、貯蔵部41と、第1流量制御部42と、第1バッファ43とを有している。貯蔵部41には、不活性ガスである窒素ガスが貯蔵されている。第1流量制御部42は、ガス流路3に供給する窒素ガスの流量を調節するように構成されている。第1バッファ43は、ガス流路3に供給する窒素ガスの圧力を一定に維持するため、第1流量制御部42から供給される窒素ガスを一時的に貯留するように構成されている。
【0026】
サンプルガス供給部6は、ガス濃縮装置1周辺の空気の一部をサンプルガスとして、流入口(サンプルガスIN)から導入してガス流路3内に供給するように構成されている。具体的には、サンプルガス供給部6は、ポンプ61と、第2流量制御部62と、第2バッファ63とを有している。ポンプ61は、ガス流路3内に供給されたサンプルガスを吸引することにより、ガス流路3内を流通させるように構成されている。第2バッファ63は、ポンプ61により吸引されたサンプルガスの圧力を一定に維持するため、サンプルガスを一時的に貯留するように構成されている。第2流量制御部62は、ガス流路3内を流通するサンプルガスの流量を調節するように構成されている。
【0027】
ガス捕集部5は、ガス流路3に配置され、サンプルガスに含まれる検知対象ガス成分G1(トルエン、メチルベンゼン、メタキシレン、オルトキシレン)を捕集するとともに、検知対象ガス成分G1を濃縮するように構成されている。具体的には、
図3に示すように、ガス捕集部5は、ガス捕集管51と、加熱部52と、断熱材53とを含んでいる。ガス捕集管51は、
図3(a)に示すように、内部空間に充填される吸着材54により、サンプルガスに含まれる検知対象ガス成分G1を捕集するように構成されている。ガス捕集管51は、金属製であり円筒状に形成されている。吸着材54は、カーボンナノチューブにより形成され、検知対象ガス成分G1を捕集する機能を有している。
【0028】
加熱部52は、
図3(b)に示すように、ガス捕集管51に捕集された検知対象ガス成分G1を加熱することにより、吸着材54から脱離させる機能を有している。加熱部52は、ガス捕集管51の外周面に巻き付けることにより、ガス捕集管51に取り付けられている。加熱部52は、ガス捕集管51を介して吸着材54を約270℃まで加熱する。加熱部52は、検知対象ガス成分G1を加熱するためのフィルムヒーターを有している。断熱材53は、加熱部52により発生する熱をガス捕集管51に効率よく伝導させる機能を有している。断熱材53は、加熱部52の外周面に巻き付けることにより、ガス捕集管51に取り付けられている。断熱材53は、シリコンシートを有している。ここで、加熱部52の加熱により、吸着材54が検知対象ガス成分G1を脱離させる脱離状態とは、
図3(b)に示すように、吸着材54に吸着した検知対象ガス成分G1のすべてが脱離する状態だけでなく、
図3(c)に示すように、吸着材54に吸着したうちの多くの検知対象ガス成分G1が脱離し、その一方において、吸着材54へ検知対象ガス成分G1が吸着しているという状態を含む広い概念である。
【0029】
本実施形態のガス濃縮装置1は、検知対象ガス成分G1を加熱部52により加熱する前に、ガス捕集管51内の空気を不活性ガスである窒素ガスに置換するように構成されている。これにより、ガス濃縮装置1では、ガス捕集管51を加熱部52により加熱し、検知対象ガス成分G1を吸着材54から脱離させる際、検知対象ガス成分G1と空気中の酸素との化学反応に起因する、異質なガス成分の発生を抑制している。以下、ガス濃縮装置1における、ガス捕集管51内の空気を窒素ガスに置換する制御手段について説明する。なお、空気は、特許請求の範囲の「気体」の一例である。
【0030】
制御部7は、
図2に示すように、サンプル手段71、置換手段72、脱離手段73、検知手段74およびクリーニング手段75を制御する機能を有している。具体的には、制御部7は、ポンプ61、弁部8、切換弁部9、第1流量制御部42、第2流量制御部62および加熱部52に電気的に接続され、それぞれを制御している。
【0031】
サンプル手段71は、
図4に示すように、第1流路31、第3流路33および第4流路34の順にサンプルガスを流し、ガス捕集部5に検知対象ガス成分G1を捕集させるように構成されている。具体的には、
図2に示すように、サンプル手段71は、ポンプ61と、切換弁部9(第1切換弁91および第2切換弁92)と第2流量制御部62とを含んでいる。制御部7によりサンプル手段71は、
図4に示すように、第1切換弁91および第2切換弁92を、切換時の状態に切り換えて、サンプルガスを流す流路であるサンプルガス導入流路を形成する。これにより、ポンプ61の吸引によって、第1流路31にサンプルガスを流して、ガス捕集部5に検知対象ガス成分G1を吸着させることが可能となる。また、サンプル手段71は、第2流量制御部62により、サンプルガス導入流路内を流れるサンプルガスの流量を調節している。
【0032】
置換手段72は、
図5に示すように、ガス検知装置2(
図1参照)へ濃縮した検知対象ガス成分G1を流す前(吸着材54に捕集された検知対象ガス成分G1を加熱する前)に、ガス捕集部5内の空気を窒素ガスに置換するように構成されている。具体的には、置換手段72は、
図2に示すように、切換弁部9(第3切換弁93)と、第1流量制御部42とを含んでいる。制御部7により置換手段72は、
図5に示すように、第3切換弁93を切換時の状態に切り換えて、ガス検知装置2へ濃縮した検知対象ガス成分G1を流す前に、ガス捕集管51内の空気を窒素ガスに置換するための流路である不活性ガス導入流路を形成する。これにより、キャリアガス供給部4によって、第2流路32に窒素ガスを流して、ガス捕集部5のガス捕集管51内の空気を窒素ガスに置換させることが可能となる。また、置換手段72は、第1流量制御部42により不活性ガス導入流路内を流れる窒素ガスの流量を調節している。このように、置換手段72は、キャリアガス供給部4を用いて、ガス捕集部5内の空気を窒素ガスに置換しており、キャリアガス供給部4は置換手段72を兼ねるように構成されている。
【0033】
脱離手段73は、
図6に示すように、ガス捕集管51内の気体を置換手段72により窒素に置換した後、吸着材54に捕集された検知対象ガス成分G1を吸着材54から脱離させるように構成されている。具体的には、脱離手段73は、
図2に示すように、弁部8(第1開閉弁81および第2開閉弁82)と、加熱部52とを含んでいる。制御部7により脱離手段73は、
図6に示すように、第1開閉弁81および第2開閉弁82を用いて、第2流路32および第5流路35のそれぞれを遮断し、加熱部52によりガス捕集管51を加熱する。脱離手段73は、加熱部52により検知対象ガス成分G1を加熱する際に、ガス捕集管51に捕集された検知対象ガス成分G1の、第1開閉弁81よりも上流側、および、第2開閉弁82よりも下流側への流出を妨げる機能を有している。このように、脱離手段73により、吸着材54に捕集された検知対象ガス成分G1を吸着材54から脱離(
図3(b)参照)させるとともに、ガス捕集管51内に脱離した検知対象ガス成分G1が留まることによって、検知対象ガス成分G1を濃縮させることが可能となる。
【0034】
検知手段74は、
図7に示すように、ガス検知装置2へ濃縮した検知対象ガス成分G1を流し、検知対象ガス成分G1をガス検知装置2に検知させるように構成されている。具体的には、検知手段74は、
図2に示すように、第1流量制御部42を含んでいる。制御部7により検知手段74は、
図7に示すように、切換弁部9を切り換えず、ガス検知装置2へ濃縮した検知対象ガス成分G1を流す検知流路を形成している。検知手段74は、第1流量制御部42により検知流路内を流れる窒素ガスの流量を調節している。そして、吸着材54から脱離した検知対象ガス成分G1を、ガス検知装置2において検知させることが可能となる。
【0035】
クリーニング手段75は、
図8に示すように、ガス検知装置2(
図1参照)へ濃縮した検知対象ガス成分G1を流した後に、ガス捕集管51を加熱部52により加熱しながら、ガス流路3およびガス捕集管51内に窒素ガスを流し、ガス流路3、ガス捕集管51、弁部8および切換弁部9内のクリーニングを行うように構成されている。具体的には、クリーニング手段75は、
図2に示すように、切換弁部9(第3切換弁93)と、加熱部52と、第1流量制御部42とを含んでいる。制御部7によりクリーニング手段75は、
図8に示すように、第3切換弁93を用いて、切換時の状態に切り換えて、ガス流路3およびガス捕集管51内に残存している検知対象ガス成分G1を排出するための流路であるクリーニング流路を形成している。
【0036】
クリーニング手段75は、
図9に示すように、クリーニング流路に窒素ガスを流すことにより、第2開閉弁82内の窒素ガスの流路に残存している検知対象ガス成分G1(D1〜D8)を排出する機能を有している。
【0037】
また、クリーニング手段75は、第1流量制御部42によりクリーニング流路内を流れる窒素ガスの流量を調節している。クリーニング手段75は、初期の窒素ガスの流量を他の時点の流量よりも大きくなるように、第1流量制御部42を制御することにより、ガス流路3およびガス捕集管51内に残存している検知対象ガス成分G1の排出効率を向上させることが可能となっている。
【0038】
(ガス検知装置)
ガス検知装置2は、
図1に示すように、ガス濃縮装置1により濃縮された検知対象ガス成分G1を検知するように構成されている。具体的には、ガス検知装置2は、複数の検知対象ガス成分G1のそれぞれを検知する検知部20と、複数の検知対象ガス成分G1のそれぞれが検知部20を通過するタイミングを異ならせる分離カラム21とを含んでいる。
【0039】
(ガス濃縮処理)
次に、
図10を参照して、本発明の一実施形態によるガス濃縮装置1のガス濃縮処理(ガス濃縮方法)について説明する。
【0040】
ガス濃縮装置1のガス濃縮処理では、ステップS1において、サンプル手段71を用いて、ガス流路3をサンプルガス導入流路(
図4参照)に切り換える。ステップS2において、サンプルガスをサンプルガス供給部6のポンプ61により吸引し、サンプルガス導入流路内にサンプルガスを流す。ステップS3において、サンプルガス導入流路内において、ガス捕集管51内の吸着材54に検知対象ガス成分G1を捕集させる。
【0041】
ステップS4において、置換手段72を用いて、ガス流路3を不活性ガス導入流路(
図5参照)に切り換える。ステップS5において、キャリアガス供給部4により窒素ガスを不活性ガス導入流路に流し、ガス捕集管51内の空気を窒素ガスに置換する。ステップS6において、ガス流路3を脱離手段73を用いて、弁部8を閉じる(
図6参照)。ステップS7において、ガス捕集管51を加熱部52により加熱することにより、検知対象ガス成分G1を吸着材54から脱離させ、検知対象ガス成分G1を濃縮する。ステップS8において、脱離手段73を用いて、弁部8を開くことにより、ガス捕集管51を開放する。これにより、吸着材54から脱離した検知対象ガス成分G1が第2開閉弁82よりも下流側に流れることが可能となる。
【0042】
ステップS9において、検知手段74を用いて、ガス流路3を検知流路(
図7参照)に切り換える。ステップS10において、キャリアガス供給部4を用いて検知流路に窒素ガスを流し、ガス検知装置2に濃縮した検知対象ガス成分G1を流す。これにより、ガス検知装置2は、
図11および
図12に示すように、検知対象ガス成分G1を検知する。
【0043】
ステップS11において、クリーニング手段75を用いてガス流路3をクリーニング流路(
図8参照)に切り換える。ステップS12において、クリーニング手段75を用いて加熱部52によりガス捕集管51を加熱しながら、ガス捕集管51およびクリーニング流路内に窒素ガスを流すことにより、ガス流路3およびガス捕集管51内のクリーニングを行う。その後、ガス濃縮装置1のガス濃縮処理が終了される。
【0044】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0045】
本実施形態では、上記のように、ガス濃縮装置1は、検知対象ガス成分G1を捕集するとともに濃縮するガス捕集部5と、検知部20へ濃縮した検知対象ガス成分G1を流す前に、ガス捕集部5内の気体を窒素ガスに置換する置換手段72とを備えている。これにより、ガス捕集部5に捕集された検知対象ガス成分G1を濃縮させる際、置換手段72によりガス捕集部5内の気体が窒素ガスに置換されているので、ガス捕集部5内の気体と検知対象ガス成分G1との反応を抑制することができる。この結果、ガス捕集部5内の気体と検知対象ガス成分G1との化学反応により異質なガスが発生しにくくなるので、サンプルガス中に含まれる検知対象ガス成分G1の検知精度の低下を抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態では、上記のように、ガス捕集管51内の吸着材54において、捕集された検知対象ガス成分G1が、加熱部52の加熱により吸着材54から脱離したとしても、ガス流路3において第1開閉弁81よりも上流側および第2開閉弁82よりも下流側に、流出することを抑制することができる。これにより、加熱部52により脱離した検知対象ガス成分G1の濃度の低下を抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態では、上記のように、濃縮された検知対象ガス成分G1をガス検知装置2に流した後、加熱部52により加熱されているガス捕集管51およびガス流路3内に、クリーニング手段75により窒素ガスを流している。これにより、ガス捕集管51、ガス流路3および弁部8に残存している、検知対象ガス成分G1を第2流出口から排出することができる。この結果、ガス捕集管51、ガス流路3、弁部8および切換弁部9における、検知対象ガス成分G1の残存量を減少させることができるので、次回の検知対象ガス成分G1の検知において、サンプルガス中に含まれる検知対象ガス成分G1の検知精度の低下を抑制させることができる。
【0048】
また、本実施形態では、上記のように、キャリアガス供給部4が置換手段72を兼ねているので、キャリアガス供給部4とは別に、窒素ガスをガス捕集管51に供給する手段を設ける必要がなくなり、ガス濃縮装置1の構成を簡略化することができる。
【0049】
本実施形態では、上記のように、ガス検知装置2へ濃縮した検知対象ガス成分G1を流す前に、ガス捕集管51内の気体を窒素ガスに置換している。これにより、ガス捕集管51の吸着材54に捕集された検知対象ガス成分G1を濃縮させる際、ガス捕集管51内の気体が窒素ガスに置換されているので、ガス捕集管51内の気体と検知対象ガス成分G1との反応を抑制することができる。この結果、ガス捕集管51内の気体と検知対象ガス成分G1との反応により異質なガスが発生しにくくなるので、サンプルガス中に含まれる検知対象ガス成分G1の検知精度の低下を抑制することが可能なガス濃縮方法を得ることができる。
【0050】
また、本実施形態では、上記のように、ガス検知装置2に濃縮した検知対象ガス成分G1を流した後、ガス捕集管51およびガス流路3内に窒素ガスが流される。これにより、ガス捕集管51およびガス流路3に残存している、検知対象ガス成分G1を第2流出口から排出することができる。この結果、ガス捕集管51およびガス流路3における、検知対象ガス成分G1の残存量を減少させることができるので、サンプルガス中に含まれる検知対象ガス成分G1の検知精度の低下を抑制することができる。
【0051】
[実施例]
次に、
図11および
図12を参照して、上記実施形態のガス濃縮装置1とガス検知装置2とを用いて、実際の所定の濃度のトルエン、メチルベンゼン、メタキシレンおよびオルトキシレンを含むのミキシングガスを検知した実験について簡単に説明する。
【0052】
<第1実施例>
まず、第1実施例について説明する。第1実施例では、ミキシングガス(サンプルガス)を複数回(4回)濃縮および検出を行った場合でも、ガス濃縮装置1により濃縮された検知対象ガス成分G1を、ガス検知装置2において精度よく検知できるかを確認するのを目的としている。ミキシングガスは、総量が400mlであり、ミキシングガスの検知対象ガス成分G1である、トルエン、メチルベンゼン、メタキシレンおよびオルトキシレンの濃度を、100ppbとした。このような、ミキシングガスを4回計測した。具体的には、ガス濃縮装置1を用いてミキシングガスを濃縮させ、ガス検知装置2を用いて濃縮した検知対象ガス成分G1を検知した。その後、ガス濃縮装置1において、クリーニング手段75によりクリーニングを行い、同濃度かつ同量のミキシングガスを、同様にガス濃縮装置1を用いて濃縮させ、ガス検知装置2を用いて濃縮した検知対象ガス成分G1を検知した。これらの、ガス濃縮装置1による濃縮、ガス検知装置2による検知、および、クリーニング手段75によるクリーニングを計4回行い、それぞれの検知結果を比較した。
【0053】
(測定結果)
1回目〜4回目のミキシングガスの検知結果を
図11に示す。
【0054】
検知結果としては、1回目〜4回目のいずれにおいても、ガス検知装置2の検知結果は同じような波形を検知している。これは、連続的にガス濃縮装置1を使用しても、濃縮したトルエン、メチルベンゼン、メタキシレンおよびオルトキシレンの濃度が同程度であったことを示しており、その結果、検知に再現性があることが確認できた。また、ガス濃縮装置1において、ガス流路3およびガス捕集管51内に残存したトルエン、メチルベンゼン、メタキシレンおよびオルトキシレンを、クリーニング手段75により毎回排出させることが可能なことが確認できた。
【0055】
<第2実施例>
次に、第2実施例について説明する。第2実施例では、複数(3種類)のミキシングガスの異なる総量に応じて、ガス検知装置2により検知される検知対象ガス成分G1の量が、異なるか否かを調べるのを目的としている。複数のミキシングガスのそれぞれは、総量が1600ml、800mlおよび400mlであり、ミキシングガスの検知対象ガス成分G1である、トルエン、メチルベンゼン、メタキシレンおよびオルトキシレンの濃度を、100ppbとした。このような、複数のミキシングガスをそれぞれ計測した。
【0056】
(測定結果)
総量の異なる3種類のミキシングガスの検知結果を
図12に示す。
【0057】
検知結果としては、3種類のミキシングガスの検知結果では、ガス検知装置2の検知結果は異なる波形を検知している。すなわち、3種類のミキシングガスの検知結果は、ミキシングガスの総量が少なくなるにしたがい、検知したトルエン、メチルベンゼン、メタキシレンおよびオルトキシレンの検知電圧が一定の割合で小さくなっている。これにより、ミキシングガスの量が小さくなったとしても、トルエン、メチルベンゼン、メタキシレンおよびオルトキシレンをガス濃縮装置1を用いて濃縮することにより、正確な量を測定可能なことが確認できた。
【0058】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0059】
たとえば、上記実施形態では、脱離手段73が、吸着材54から検知対象ガス成分G1を脱離させるため加熱部52を有しているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、脱離手段が、ガス捕集管内の空気を圧縮し、ガス捕集管内を高温にする圧縮部を有していてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、キャリアガス供給部4が、ガス捕集管51内の空気を窒素ガスに置換するための置換手段72を兼ねているが、本発明はこれに限定されない。本発明では、キャリアガス供給部が、置換手段を兼ねていなくともよい。つまり、ガス流路にキャリアガスを供給するキャリアガス供給部とは別に、ガス捕集管内の空気を不活性ガスに置換する不活性ガス供給部を備えていてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、キャリアガス供給部4が、ガス流路3およびガス捕集管51内に残存している検知対象ガス成分G1をクリーニングするため、窒素ガスをガス流路3およびガス捕集管51に流すクリーニング手段75を兼ねているが、本発明はこれに限定されない。本発明では、キャリアガス供給部が、クリーニング手段を兼ねていなくともよい。つまり、ガス流路にキャリアガスを供給するキャリアガス供給部とは別に、ガス捕集管内の残存しているサンプルガスをクリーニングするため、不活性ガスをガス流路に供給する不活性ガス供給部を備えていてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、加熱部52は、ガス捕集管51を約270℃により加熱しているが、本発明はこれに限定されない。本発明では、加熱部は、270℃よりも低い温度によりガス捕集管を加熱してもよいし、270℃よりも高い温度によりガス捕集管を加熱してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、不活性ガスが、窒素ガスとなっているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、反応性の乏しい、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスなどであってもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、検知対象ガス成分G1が、トルエン、メチルベンゼン、メタエチレン、オルトキシレンとなっているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、検知対象ガス成分は、アンモニア、硫化水素などでもよい。
【0065】
また、上記実施例では、サンプルガスが、4種類の検知対象ガス成分G1を含んだミキシングガスとなっているが、本発明はこれに限定されない。本発明では、1〜3種類、または、5種類以上の検知対象ガス成分を含んだサンプルガスとなっていてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、吸着材54が、カーボンナノチューブとなっているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、吸着材はシリカゲル、ゼオライトなどの、検知対象ガス成分を吸着可能、かつ、加熱部の加熱により、検知対象ガス成分を脱離可能な吸着材であればよい。
【0067】
また、上記実施形態では、加熱部52は、フィルムヒーターであるが、本発明はこれに限定されない。たとえば、加熱部は、ニクロム線などであってもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、断熱材53は、シリコンシートであるが、本発明はこれに限定されない。たとえば、断熱材は、エラストマーシートなどであってもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、吸着材54への検知対象ガス成分G1の捕集は常温において行われているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、捕集管にペルチェ素子を取り付け、検知対象ガス成分の捕集を常温よりも低い温度においておこない、捕集効率を向上させてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、クリーニング手段75は、加熱部52によりガス捕集管51を加熱しながら、第1開閉弁81および第2開閉弁82を開いた状態において、ガス流路3およびガス捕集管51内に窒素ガスを流し、ガス流路3、ガス捕集管51、弁部8および切換弁部9内のクリーニングを行っているが、本発明はこれに限定されない。本発明では、第1開閉弁81および第2開閉弁82のそれぞれを開閉しながら、ガス流路3およびガス捕集管51内に窒素ガスを流してもよい。これにより、第1開閉弁81および第2開閉弁82内のデッドスペースに残存している、検知対象ガス成分G1の排出を容易にすることができる。
【0071】
上記実施形態では、説明の便宜上、制御部7の処理動作を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部7の処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。