特許第6948811号(P6948811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948811
(24)【登録日】2021年9月24日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】高枝切鋏
(51)【国際特許分類】
   A01G 3/02 20060101AFI20210930BHJP
   A01G 3/025 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   A01G3/02 501A
   A01G3/025
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-52100(P2017-52100)
(22)【出願日】2017年3月17日
(65)【公開番号】特開2018-153124(P2018-153124A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2020年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】517095098
【氏名又は名称】山根 庄作
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100140361
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 幸二
(72)【発明者】
【氏名】山根 庄作
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−025728(JP,U)
【文献】 実開昭49−077151(JP,U)
【文献】 特開2007−195469(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0045175(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 3/00 − 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
竿部の先端に設けられた鋏部と、前記竿部の基端に設けられた操作部とを備えた高枝切鋏であって、
前記竿部の先端に固定されたる固定刃と、前記操作部の操作に応じて開閉する可動刃とを備え、
前記固定刃は、軸方向に沿って弧状に形成された長孔と、該長孔の内周に沿って形成されたラックギアとを備える一方、
前記可動刃は、前記固定刃に軸部材を介して開閉自在に軸支され、前記長孔内で前記ラックギアと噛み合う第1ギアを備え、
前記操作部による前記可動刃の開閉時に前記第1ギアが前記ラックギアに係合したまま前記長孔の内周に沿って回転駆動する
ことを特徴とする高枝切鋏。
【請求項2】
前記可動刃は、前記第1ギアと同軸に軸支されて前記第1ギアと同期回転する第2ギアと、
前記第2ギアと係合する第3ギアと、
を備えることを特徴とする請求項1記載の高枝切鋏。
【請求項3】
前記第2ギアと前記第3ギアとのギア比は、5:1〜2:1の範囲に設定されていることを特徴とする請求項2記載の高枝切鋏。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高枝の剪定や果実の採集などに使用される高枝切鋏に関する。
【背景技術】
【0002】
果樹園などにおいては、樹木間の通気性を良くし、太陽光を広く当てることによって光合成を盛んさせ、かつ高い場所に果実が付かないようするなど種々の事情から剪定作業が必要不可欠である。
【0003】
また、街頭の樹木が生長して、標識などを覆ったり、隣接する建物に枝が伸びてしまうことがないように整枝作業が必要となる。このような作業には高枝切鋏が使用されている。
【0004】
図7に基づき説明すれば高枝切鋏1は、竿部2の先端部に設けられた鋏部3と、竿部2の基端部に設けられた図示省略の操作部とを備えている。この鋏部3は、竿部2の先端に固定される固定刃と、前記操作部の操作に応じて可動する可動刃とを備え、該可動刃はコイルばねにより常時開く方向に不勢されている。
【0005】
したがって、前記固定刃と前記可動刃との間に枝などを挟んだ状態で前記操作部を操作することで枝が切断されて剪定作業などが実施されている。この高枝切鋏1と同様な構成は特許文献1などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平7−25728
【特許文献2】特開2002−254402
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高枝切鋏1を用いた剪定作業や整枝作業などは、樹液の活動が鈍い冬の時期に実施されることが多く、また高枝切鋏1はその操作に比較的大きな力を必要とする。
【0008】
したがって、剪定作業時などに前記可動刃にがたつき等が生じると作業員の肉体的負担が増加し、特に特に女性や老人などの力の弱い者にとっては辛い作業となってしまう。そこで、特許文献2に示す原動機の回転駆動力を利用した高枝切鋏が提案されているものの、これでは装置自体が大掛かりとなり、却って重量的にもコスト的に手軽に作業できないおそれがある。
【0009】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされ、作業員の負担を軽減可能な高枝切鋏を簡易な構造で提供することを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、竿部の先端に設けられた鋏部と、前記竿部の基端に設けられた操作部と、を備えた高枝切鋏に関する。この鋏部は、前記竿部の先端に固定される固定刃と、前記操作部の操作に応じて開閉可動自在に取り付けられたに可動刃と、を備える。この固定刃は、孔部の内周に沿って形成されたラックギアを備える一方、前記可動刃は、前記ラックギアと噛み合う第1ギアを備える。
【0011】
(2)本発明の一態様としては、前記孔部を長孔として形成することができる。この場合に前記ラックギアは、前記孔部の軸方向の任意位置に形成すればよい。
【0012】
(3)本発明の他の態様としては、前記可動刃は、前記第1ギアと同期回転する第2ギアと、前記第2ギアと係合する第3ギアと、を備えてもよい。
【0013】
この場合の前記第2ギアと前記第3ギアとのギア比は、作業員の腕力などに応じて定めることができる。例えば前記ギア比は、5:1〜2:1の範囲に設定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、作業員の負担を軽減可能な高枝切鋏を簡易な構造で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る高枝切鋏の右側面図。
図2】同 可動刃を開き動作させたときの鋏部の左側斜視図。
図3】同 鋏部の右側面図。
図4】同 可動刃を閉じ動作させたときの鋏部の左側斜視図。
図5】同 鋏部の右側面図。
図6】他例を示す左側斜視図。
図7】高枝切鋏の使用状態図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る高枝切鋏を説明する。この高枝切鋏は、例えば高枝の剪定や果実の採集などに使用される。
【0017】
≪構成例≫
(1)図1に基づき前記高枝切鋏の全体構成を説明する。この高枝切鋏11は、従来と同様に、一本状の竿部(ポール)12と、竿部12の先端部に設けられた鋏部13と、竿部12の基端部に設けられた操作部14とを備え、竿部12の略中央の外周には持ち手15が取り付けられている。
【0018】
鋏部13は、竿部12の先端にねじ止めされた固定刃20と、操作部4の操作に応じて開閉動作が可能に竿部12の先端に取り付けられた可動刃21とを備えている。
【0019】
この可動刃21の後端には、竿部12内に入り込んだ操作ロッド22の先端が連結されている。この操作ロッド22の後端に取り付けたジョイント金具23と竿部12の先端との間には可動刃21を常時開く方向に付勢するコイルばね24が介装されている。
【0020】
操作部14は、竿部12の後端に固定される固定レバー25と、固定レバー25に軸部26を介して回動自在に取り付けられた可動レバー27とを備え、可動レバー27は、軸部26に取り付けた巻きばね28により常時開く方向に付勢されている。
【0021】
そして、竿部12内には鋼線ワイヤーや合成樹脂製ロープなどの柔軟性および屈曲可能な連結部材28が挿通され、連結部材28の一端がジョイント金具23を介して操作ロッド22に連結されている一方、連結部材28の他端が可動レバー27に連結されている。ここまでは従来と同様な構成であるが、高枝切鋏11は、固定刃20および可動刃21の構成において従来と顕著に相違する。
【0022】
(2)図2図4に基づき固定刃20および可動刃21の構成を説明する。まず、固定刃20は、図2に示すように、竿部12の先端に固定される固定部20aと、可動刃21を開閉自在に支持する基部20bと、切断用の受部20cとを有し、各部20a〜20cが一体に形成されている。
【0023】
この固定部20aは、図示省略のボルトを取付孔20fに挿通してナットを締結することで竿部12の先端に固定されている。また、基部20bは、軸方向に沿って弧状の長孔20dが貫通形成され、長孔20dの内周にラックギア20eが形成されている。
【0024】
つぎに可動刃21は、図2および図3に示すように、固定刃20に回動自在に支持される基部21aと、受部20cと対向する刃部20bとを有し、両部21a,21bが一体に形成されている。ここでは両基部20b,21aには図示省略の連通孔が形成され、該連通孔にはボルト31が連通され、軸ボルト31の両端にナット32,39が締結され、これにより可動刃21が開閉動作可能に軸支されている。
【0025】
また、基部21aにはラックギア20eに係合するピニオンギア35と、ピニオンギア35と同期回転する減速ギア36と、減速ギア36と係合するピニオンギア37とが軸支されている。
【0026】
すなわち、基部21aには図示省略の貫通孔およびねじ孔が形成され、前記貫通孔と両ギア35,36に軸ボルト38が挿通されている。この軸ボルトの一端にはナット40が締結され、軸ボルト38の他端には図示省略のナットが締結され、これにより両ギア35,36が基部21aに回転自在に取り付けられている。
【0027】
さらに基部21aの前記ねじ孔にボルト39を締結する際には、該ボルト39の軸部にピニオンギア37が回転自在に取付られる。このとき減速ギア36とピニオンギア37とのギア比は、ユーザの腕力に応じて設定することができる。例えば女性や老人などの腕力の弱いユーザであれば、減速ギア36とピニオンギア37とのギア比は、「5:1〜2:1」の範囲内に設定されることが好ましい。
【0028】
≪使用方法≫
以下、高枝切鋏11の使用方法を説明する。まず、剪定作業や整枝作業などの際、図2および図3に示す鋏部13の開状態のまま両刃20,21の受部20cと刃部21bとの間に樹木の枝などを挟み込む。
【0029】
この状態のまま可動レバー27を閉じれば、可動刃21が引っ張られて矢印Pの閉じる方向に動作する。これにより可動刃21が、図4および図5に示す鋏部13の閉じ状態に移行し、刃部21bにより樹木の枝などが切断される。このとき高枝切鋏11によれば、ピニオンギア37の回転力(トルク)が減速ギア36によって増幅されるため、樹木などの切断に必要な力を軽減することができる。
【0030】
また、ピニオンギア35は、ラックギア20eに係合した状態のまま長孔20dの内周に沿って回転駆動するため、可動刃21の切断時におけるがたつき等が抑制でき、この点で作業員の肉体的負担を軽減することができる。
【0031】
その結果、高枝切鋏11によれば、女性や老人などの腕力の弱いユーザであっても容易に高所の枝切作業を行うことができる。この場合に高枝切鋏11は、特許文献2のような大掛かりな装置は用いていなく、手軽に剪定作業や整枝作業を行うことを可能にする。
【0032】
これによりユーザの肉体的負担を軽減可能な高枝切鋏を簡易な構造で提供することができる。また、切断後に可動レバー27を戻して開けば、コイルばね24の付勢によって可動刃21が引き込まれて矢印Qの開方向に動作し、刃部20c,21b間が引き離され、図2および図3に示す鋏部13の開状態に戻る。
【0033】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載された範囲内で変形して実施することができる。例えば図6に示すように、固定刃20,可動刃21にジャケット(カバー)45,46を取り付けて使用することもできる。ここでは固定刃20にねじ孔を形成してジャケット46を取り付けている一方、ジャケット45を軸ボルト31にナット32,39を締結している。
【符号の説明】
【0034】
11…高枝切鋏
12…竿部
13…鋏部
14…操作部
20…固定刃
20d…長孔(孔部)
20f…ラックギア
21…可動刃
35,37…ピニオンギア(第1ギア,第3ギア)
36…減速ギア(第2ギア)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7