(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リンス液供給工程が行われた後であって前記疎水化剤供給工程が行われる前に、基板の主面に保持されている液体を、前記第1の溶剤とは種類の異なる第2の溶剤に置換するために第2の溶剤を基板の主面に供給する第2の溶剤供給工程と、
前記第2の溶剤供給工程が行われた後であって前記疎水化剤供給工程が行われる前に、前記回転工程に並行して、基板の主面に保持されている液体を第1の溶剤に置換するために第1の溶剤を基板の主面に供給する第1の溶剤供給工程とをさらに含む、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
疎水化剤の吐出開始から基板の上面の全域を疎水化剤でカバレッジ(基板の上面の全域を覆う液膜を形成)するまでに要する時間は短いことが望ましい。これは、スループット向上の観点、および疎水化剤の省液の観点によるものである。そして、疎水化剤の吐出開始からカバレッジまでの時間を短縮するためには、疎水化剤の吐出流量が充分に多いことが望ましい。
【0006】
しかしながら、ノズルから疎水化剤を大流量で吐出すると、吐出が乱れるおそれがある。吐出が乱れると、基板の上面に疎水化剤が着液するときの衝撃力で基板の上面に振動が発生し、この振動が基板の上面に保持されている疎水化剤に伝わる。その結果、上面に保持されている疎水化剤に波立ちが生じてしまう。
基板の上面に保持されている疎水化剤に波立ちが生じると、疎水化剤とその周囲の雰囲気中の水分との接触面積が増大する。疎水化剤は水と反応し易く、雰囲気中の水分とでも反応してしまう。雰囲気中の水分との反応により、基板の上面に保持されている疎水化剤の疎水化力が低下してしまう。その結果、基板の主面(上面)を良好に疎水化処理できない場合がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、基板の主面に供給される疎水化剤の吐出の乱れを抑制または防止し、これにより、基板の主面を良好に疎水化処理することができる、基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明
の一実施形態は、水を含むリンス液を基板の主面に供給するリンス液供給工程と、基板の主面の中央部を通る回転軸線回りに基板を回転させる回転工程と、前記リンス液供給工程が行われた後に、前記回転工程に並行して、基板の主面に保持されている液体を、第1の溶剤を含む疎水化剤に置換するために疎水化剤を基板の主面に供給する疎水化剤供給工程とを含み、前記疎水化剤供給工程は、ノズルの吐出口か
ら基板保持ユニットに保持されている基板の主面に向けて、前記吐出口におけるレイノルズ数が1500以下で、疎水化剤の連続流を吐出する疎水化剤吐出工程を含む、基板処理方法を提供する。
【0009】
この方法によれば、基板の主面にリンス液が供給される。その後、ノズルの吐出口から基板の主面に向けて、吐出口におけるレイノルズ数が1500以下で、疎水化剤の連続流が吐出される。レイノルズ数が1500以下であれば、吐出口から吐出される連続流状の、第1の溶剤を含む疎水化剤が、乱れずに柱状をなす。すなわち、吐出の乱れが発生しないか、あるいは、発生しても少ない。したがって、基板の主面に供給される疎水化剤の吐出の乱れを抑制または防止することができる。これにより、基板の主面に供給された(主面に保持されている)疎水化剤における波立ちの発生を抑制または防止することができ、その結果、疎水化剤と雰囲気中の水分との接触面積を少なく抑えることが可能である。ゆえに、基板の主面を良好に疎水化処理することができる。
前記疎水化剤吐出工程において、前記吐出口におけるレイノルズ数が450以上1500以下であってもよい。
前記疎水化剤吐出工程は、疎水化剤の吐出流量を調整することにより、前記吐出口におけるレイノルズ数が450以上1500以下で、疎水化剤の連続流を前記吐出口から吐出してもよい。
【0010】
この発明
の一実施形態では、
前記基板処理方法が、前記リンス液供給工程が行われた後であって前記疎水化剤供給工程が行われる前に、基板の主面に保持されている液体を、前記第1の溶剤とは種類の異なる第2の溶剤に置換するために第2の溶剤を基板の主面に供給する第2の溶剤供給工程と、前記第2の溶剤供給工程が行われた後であって前記疎水化剤供給工程が行われる前に、前記回転工程に並行して、基板の主面に保持されている液体を第1の溶剤に置換するために第1の溶剤を基板の主面に供給する第1の溶剤供給工程
とをさらに含
む。
【0011】
この方法によれば、基板の主面にリンス液が供給された後、第1の溶剤とは種類の異なる第2の溶剤が基板の主面に供給される。これにより、基板からリンス液が除去される。また、基板の主面に第2の溶剤が供給された後、第1の溶剤が基板の上面に供給される。これにより、基板の主面に保持されている第2の溶剤が第1の溶剤に置換される。そして、第1の溶剤の供給が行われた後に、第1の溶剤を含む疎水化剤が基板の主面に供給される。これにより、基板の主面に保持されている第1の溶剤が、同じ第1の溶剤を含む疎水化剤で置換される。
【0012】
第1の溶剤を含む疎水化剤は、同じ第1の溶剤と親和性が高く置換し易い。一方、第1の溶剤や第2の溶剤の種類によっては、第1の溶剤を含む疎水化剤と第2の溶剤とは親和し難く、置換し難い場合がある(疎水化剤と第2の溶剤との粘度の相違に起因して、置換し難い場合もある)。したがって、異なる種類の第2の溶剤を、第1の溶剤を含む疎水化剤で置換する場合と比較して、同じ第1の溶剤を、第1の溶剤を含む疎水化剤で置換する方が、スムーズに置換することができる。これにより、基板の主面において疎水化剤の液膜をより容易に形成することが可能である。
【0013】
この発明
の一実施形態は、基板を保持する基板保持ユニットと、前記基板保持ユニットに保持されている基板を、当該基板の主面の中央部を通る回転軸線回りに回転させる回転ユニットと、前記基板保持ユニットに保持されている基板に、水を含むリンス液を供給するリンス液供給ユニットと、吐出口を有するノズルを有し、前記基板保持ユニットに保持されている基板に第1の溶剤を含む疎水化剤を供給する疎水化剤供給ユニットと、制御装置とを含み、前記制御装置は、前記リンス液供給ユニットを制御して、リンス液を基板の主面に供給するリンス液供給工程と、前記回転ユニットを制御して、基板の主面の中央部を通る回転軸線回りに基板を回転させる回転工程と、前記疎水化剤供給ユニットを制御して、前記リンス液供給工程が行われた後に、前記回転工程に並行して、基板の主面に保持されている液体を、第1の溶剤を含む疎水化剤に置換するために疎水化剤を基板の主面に供給する疎水化剤供給工程とを実行し、前記疎水化剤供給工程において、前記制御装置は、
前記ノズルの
前記吐出口から前記基板保持ユニットに保持されている基板の主面に向けて、前記吐出口におけるレイノルズ数が1500以下で、疎水化剤の連続流を吐出する疎水化剤吐出工程を実行する、基板処理装置
を提供する。
【0014】
この構成によれば、基板の主面にリンス液が供給される。その後、ノズルの吐出口から基板の主面に向けて、吐出口におけるレイノルズ数が1500以下で、疎水化剤の連続流が吐出される。レイノルズ数が1500以下であれば、吐出口から吐出される連続流状の、第1の溶剤を含む疎水化剤が、乱れずに柱状をなす。すなわち、吐出の乱れが発生しないか、あるいは、発生しても少ない。したがって、基板の主面に供給される疎水化剤の吐出の乱れを抑制または防止することができる。これにより、基板の主面に供給された(主面に保持されている)疎水化剤における波立ちの発生を抑制または防止することができ、その結果、疎水化剤と雰囲気中の水分との接触面積を少なく抑えることが可能である。ゆえに、基板の主面を良好に疎水化処理することができる。
前記疎水化剤吐出工程において、前記吐出口におけるレイノルズ数が450以上1500以下であってもよい。
前記基板処理装置が、前記ノズルから吐出される疎水化剤の吐出流量を調整する流量調整バルブをさらに含んでいてもよい。そして、前記制御装置は、前記疎水化剤吐出工程において、前記流量調整バルブを制御して、疎水化剤の吐出流量を調整することにより、前記吐出口におけるレイノルズ数が450以上1500以下で、疎水化剤の連続流を前記吐出口から吐出させてもよい。
【0015】
この発明
の一実施形態では、
前記基板処理装置が、前記基板保持ユニットに保持されている基板に前記第1の溶剤とは種類の異なる第2の溶剤を供給する第2の溶剤供給ユニットと、前記基板保持ユニットに保持されている基板に第1の溶剤を供給する第1の溶剤供給ユニットとをさらに含
む。そして、前記制御装置は、前記リンス液供給工程が行われた後であって前記疎水化剤供給工程が行われる前に、基板の主面に保持されている液体を第2の溶剤に置換するために第2の溶剤を基板の主面に供給する第2の溶剤供給工程と、前記第2の溶剤供給工程が行われた後であって前記疎水化剤供給工程が行われる前に、前記回転工程に並行して、基板の主面に保持されている液体を第1の溶剤に置換するために第1の溶剤を基板の主面に供給する第1の溶剤供給工程とをさらに実行す
る。
【0016】
この構成によれば、基板の主面にリンス液が供給された後、第1の溶剤とは種類の異なる第2の溶剤が基板の主面に供給される。これにより、基板からリンス液が除去される。また、基板の主面に第2の溶剤が供給された後、基板の主面に疎水化剤が供給される前に、第1の溶剤が基板の上面に供給される。これにより、基板の主面に保持されている第2の溶剤が第1の溶剤に置換される。そして、第1の溶剤の供給が行われた後に、第1の溶剤を含む疎水化剤が基板の主面に供給される。これにより、基板の主面に保持されている第1の溶剤が、同じ第1の溶剤を含む疎水化剤で置換される。
【0017】
第1の溶剤を含む疎水化剤は、同じ第1の溶剤と親和性が高く置換し易い。一方、第2の溶剤の種類によっては、第1の溶剤を含む疎水化剤と第2の溶剤とは親和し難く、置換し難い場合がある(疎水化剤と第2の溶剤との粘度の相違に起因して、置換し難い場合もある)。したがって、異なる種類の第2の溶剤を、第1の溶剤を含む疎水化剤で置換する場合と比較して、同じ第1の溶剤を、第1の溶剤を含む疎水化剤で置換する方が、スムーズに置換することができる。これにより、基板の主面において疎水化剤の液膜をより容易に形成することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1を水平方向に見た図である。基板処理装置1は、処理液(薬液やリンス液等)を用いて半導体ウエハなどの円板状の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック(基板保持ユニット)2と、スピンチャック2に保持されている基板Wに処理液を供給する処理液供給ユニットと、スピンチャック2の上方に配置された遮断板3とを含む。
【0020】
スピンチャック2は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース4と、スピンベース4の上方で基板Wを水平な姿勢で保持する複数の挟持ピン5と、スピンベース4の中央部から下方に延びるスピン軸6と、スピン軸6を回転させることにより基板Wおよびスピンベース4を回転軸線A1まわりに回転させるスピンモータ(回転ユニット)7とを含む。スピンチャック2は、複数の挟持ピン5を基板Wの周端面に接触させる挟持式のチャックに限らず、非デバイス形成面である基板Wの裏面(下面)をスピンベース4の上面に吸着させることにより基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。
【0021】
処理液供給ユニットは、スピンチャック2に保持されている基板Wに薬液を供給する薬液供給ユニット13を含む。薬液供給ユニット13は、スピンチャック2に保持されている基板Wの上面に向けて薬液を下方に吐出する薬液ノズル14と、薬液供給源からの薬液を薬液ノズル14に導く薬液配管15と、薬液配管15を開閉する薬液バルブ16とを含む。薬液は、たとえば、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、および界面活性剤、腐食防止剤の少なくとも1つを含む液であってもよい。薬液バルブ16が開かれると、薬液配管15から薬液ノズル14に薬液が供給される。薬液バルブ16が閉じられると、薬液配管15から薬液ノズル14への薬液の供給が停止される。薬液ノズル14を移動させることにより、基板Wの上面に対する薬液の着液位置を、基板Wの上面の中央部と、それ以外の部分(たとえば周縁部)との間で移動させる薬液ノズル移動装置を備えていてもよい。
【0022】
処理液供給ユニットは、スピンチャック2に保持されている基板Wにリンス液を供給するリンス液供給ユニット51を含む。リンス液供給ユニット51は、スピンチャック2に保持されている基板Wの上面に向けてリンス液を下方に吐出するリンス液ノズル8と、リンス液供給源からのリンス液をリンス液ノズル8に導くリンス液配管9と、リンス液配管9を開閉するリンス液バルブ10とを含む。リンス液は、たとえば、純水(脱イオン水:Deionized water)である。リンス液バルブ10が開かれると、リンス液配管9からリンス液ノズル8にリンス液が供給される。リンス液バルブ10が閉じられると、リンス液配管9からリンス液ノズル8へのリンス液の供給が停止される。リンス液は、純水に限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。リンス液ノズル8を移動させることにより、基板Wの上面に対するリンス液の着液位置を、基板Wの上面の中央部と、それ以外の部分(たとえば周縁部)との間で移動させるリンス液ノズル移動装置を備えていてもよい。
【0023】
遮断板3は、たとえば、円板状である。遮断板3の直径は、たとえば、基板Wの直径とほぼ同じ、または基板Wの直径よりもやや大きい。遮断板3は、遮断板3の下面が水平になるように配置されている。さらに、遮断板3は、遮断板3の中心軸線がスピンチャック2の回転軸線上に位置するように配置されている。遮断板3の下面は、スピンチャック2に保持された基板Wの上面に対向している。遮断板3は、水平な姿勢で支軸11の下端に連結されている。遮断板3および支軸11は、遮断板昇降ユニット12によって、鉛直方向に昇降される。遮断板昇降ユニット12は、遮断板3の下面がスピンチャック2に保持された基板Wの上面に近接する処理位置(
図1に示す位置)と、処理位置の上方に設けられた退避位置(図示しない)との間で遮断板3を昇降させる。
【0024】
処理液供給ユニットは、中心軸ノズル(ノズル)17と、疎水化剤供給源からの液体の疎水化剤を中心軸ノズル17に導く疎水化剤配管18と、疎水化剤配管18を開閉する疎水化剤バルブ19と、疎水化剤配管18内の液体の流量を調整する第1の流量調整バルブ20と、第1の溶剤の供給源からの液体の第1の溶剤を中心軸ノズル17に導く第1の溶剤配管21と、第1の溶剤配管21を開閉する第1の溶剤バルブ22と、第1の溶剤配管21内の液体の流量を調整する第2の流量調整バルブ23と、IPA供給源からの液体のIPAを中心軸ノズル17に導く第2の溶剤配管24と、第2の溶剤配管24を開閉する第2の溶剤バルブ25とを含む。図示はしないが、第1の流量調整バルブ20および第2の流量調整バルブ23は、弁座が内部に設けられたバルブボディと、弁座を開閉する弁体と、開位置と閉位置との間で弁体を移動させるアクチュエータとを含む。
【0025】
中心軸ノズル17は、遮断板3の中心軸線に沿って配置されている。中心軸ノズル17は、支軸11の内部で上下に延びている。中心軸ノズル17は、遮断板3および支軸11と共に昇降する。
中心軸ノズル17に供給された処理液は、中心軸ノズル17の下端に設けられた吐出口17aから下方に吐出される。そして、図
1に示すように、中心軸ノズル17から吐出された処理液は、遮断板3の中央部を上下に貫通する貫通穴(図示しない)を通って、遮断板3の下面中央部から下方に吐出される。これにより、スピンチャック2に保持された基板Wの上面の中央部に処理液が供給される。
【0026】
第1の溶剤バルブ22および第2の溶剤バルブ25を閉じながら疎水化剤バルブ19を開くことにより、中心軸ノズル17の吐出口17aから疎水化剤が吐出される。また、疎水化剤バルブ19および第2の溶剤バルブ25を閉じながら第1の溶剤バルブ22を開くことにより、中心軸ノズル17の吐出口17aから第1の溶剤が吐出される。また、疎水化剤バルブ19および第1の溶剤バルブ22を閉じながら第2の溶剤バルブ25を開くことにより、中心軸ノズル17の吐出口17aから
第2の溶剤が吐出される。
【0027】
疎水化剤供給ユニット52は、中心軸ノズル17と、疎水化剤配管18と、疎水化剤バルブ19と、第1の流量調整バルブ20とを含む。
疎水化剤は、金属を疎水化するメタル系の疎水化剤である。疎水化剤は、配位性の高い疎水化剤である。すなわち、疎水化剤は、主として配位結合によって金属を疎水化する溶剤である。疎水化剤は、たとえば、疎水基を有するアミン、および有機シリコン化合物の少なくとも一つを含む。疎水化剤は、シリコン系の疎水化剤であってもよいし、メタル系の疎水化剤であってもよい。
【0028】
シリコン系の疎水化剤は、シリコン(Si)自体およびシリコンを含む化合物を疎水化させる疎水化剤である。シリコン系疎水化剤は、たとえば、シランカップリング剤である。シランカップリング剤は、たとえば、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)、TMS(テトラメチルシラン)、フッ素化アルキルクロロシラン、アルキルジシラザン、および非クロロ系疎水化剤の少なくとも一つを含む。非クロロ系疎水化剤は、たとえば、ジメチルシリルジメチルアミン、ジメチルシリルジエチルアミン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、N,N−ジメチルアミノトリメチルシラン、N−(トリメチルシリル)ジメチルアミンおよびオルガノシラン化合物の少なくとも一つを含む。
【0029】
メタル系の疎水化剤は、たとえば高い配位性を有し、主として配位結合によって金属を疎水化する溶剤である。この疎水化剤は、たとえば、疎水基を有するアミン、および有機シリコン化合物の少なくとも一つを含む。
より具体的には、疎水化剤として、たとえば、OSRA−A004、OSRA−7801、PK−HP−S、PK-HUS等を例示することができる。
【0030】
疎水化剤は、第1の溶剤を溶媒とし、一定濃度を有している。疎水化剤供給源は、疎水化剤の原液(100%の疎水化剤)と、第1の溶剤とを一定割合で混合することにより、一定濃度の疎水化剤を保持している。
第1の溶剤供給ユニット53は、中心軸ノズル17と、第1の溶剤配管21と、第1の溶剤バルブ22と、第2の流量調整バルブ23とを含む。第1の溶剤は、水酸基を含まない溶剤である。すなわち、第1の溶剤は、水酸基を含まない化合物からなる溶剤である。第1の溶剤は、疎水化剤を溶解可能である。第1の溶剤は、水を含んでおらず、水よりも表面張力が低いことが好ましい。第1の溶剤は、ケトン類の溶剤、またはエーテル類の溶剤である。第1の溶剤の具体例としては、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)や、アセトンが挙げられる。ケトン類またはエーテル類の溶剤は、疎水化剤の原液の溶解度が高く、疎水化剤の原液をケトン類またはエーテル類の溶剤に混合すると、疎水化剤は、ケトン類またはエーテル類の溶剤に十分に分散する。
【0031】
第2の溶剤供給ユニット54は、中心軸ノズル17と、第2の溶剤配管24と、第2の溶剤バルブ25とを含む。第2の溶剤は、水よりも表面張力が低い溶剤である。第2の溶剤は、水を含んでいてもよい。第2の溶剤は、第1の溶剤よりも水に対する溶解度(すなわち、水溶性)が高い。第1の溶剤は、第2の溶剤を溶解可能である。第2の溶剤の具体例としては、アルコールや、フッ素系溶剤とアルコールの混合液が挙げられる。アルコールは、たとえば、メチルアルコール、エタノール、プロピルアルコール、およびIPAの少なくとも一つを含む。フッ素系溶剤は、たとえば、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)の少なくとも一つを含む。以下の説明では、第2の溶剤がIPAである場合を例に挙げる。
【0032】
図2は、基板処理装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である
基板処理装置1は、制御装置26を備えている。制御装置26はCPU等の演算ユニット、固定メモリデバイス、ハードディスクドライブ等の記憶ユニット、および入出力ユニットを有している。記憶ユニットには、演算ユニットが実行するプログラムが記憶されている。
【0033】
制御装置26には、制御対象として、スピンモータ7、遮断板昇降ユニット12等が接続されている。また、制御装置26は、予め定められたプログラムに従って、スピンモータ7、遮断板昇降ユニット12等の動作を制御する。また、制御装置26は、予め定められたプログラムに従って、リンス液バルブ10、薬液バルブ16、疎水化剤バルブ19、第1の溶剤バルブ22、第2の溶剤バルブ25等を開閉する。また、制御装置26は、予め定められたプログラムに従って、第1の流量調整バルブ20および第2の流量調整バルブ23等の開度を調整する。
【0034】
以下では、デバイス形成面である表面にパターンが形成された基板Wを処理する場合について説明する。
図3は、基板処理装置1の処理対象の基板Wの表面を拡大して示す断面図である。処理対象の基板Wは、たとえばシリコンウエハであり、そのパターン形成面である表面(上面32)にパターンPが形成されている。パターンPは、たとえば微細パターンである。パターンPは、
図3に示すように、凸形状(柱状)を有する構造体31が行列状に配置されたものであってもよい。この場合、構造体31の線幅W1はたとえば10nm〜45nm程度に、パターンPの隙間W2はたとえば10nm〜数μm程度に、それぞれ設けられている。パターンPの膜厚Tは、たとえば、1μm程度である。また、パターンPは、たとえば、アスペクト比(線幅W1に対する膜厚Tの比)が、たとえば、5〜500程度であってもよい(典型的には、5〜50程度である)。
【0035】
また、パターンPは、微細なトレンチにより形成されたライン状のパターンが、繰り返し並ぶものであってもよい。また、パターンPは、薄膜に、複数の微細穴(ボイド(void)またはポア(pore))を設けることにより形成されていてもよい。
パターンPは、たとえば絶縁膜を含む。また、パターンPは、導体膜を含んでいてもよい。より具体的には、パターンPは、複数の膜を積層した積層膜により形成されており、さらには、絶縁膜と導体膜とを含んでいてもよい。パターンPは、単層膜で構成されるパターンであってもよい。絶縁膜は、シリコン酸化膜(SiO
2膜)やシリコン窒化膜(SiN膜)であってもよい。また、導体膜は、低抵抗化のための不純物を導入したアモルファスシリコン膜であってもよいし、金属膜(たとえば金属配線膜)であってもよい。
【0036】
また、パターンPは、親水性膜であってもよい。親水性膜として、TEOS膜(シリコン酸化膜の一種)を例示できる。
図4は、基板処理装置1による基板処理例を説明するための流れ図である。
図1〜
図4を参照しながら、第1の基板処理例について説明する。
図5〜
図9については適宜参照する。
【0037】
未処理の基板Wは、図示しない搬送ロボットによって搬送されチャンバに搬入され、チャンバ内に収容されているスピンチャック2に、デバイス形成面である表面をたとえば上に向けた状態で受け渡され、スピンチャック2に基板Wが保持される(
図4のS1:基板搬入)。基板Wの搬入に先立って、遮断板3は、退避位置に退避させられている。
その後、制御装置26は、スピンモータ7によって基板Wの回転を開始させる(
図4のステップS2。回転工程)。基板Wは予め定める液処理速度(300〜1500rpmの範囲内で、たとえば500rpm)まで上昇させられ、その液処理速度に維持される。
【0038】
基板Wの回転が液処理速度に達すると、制御装置26は、基板Wの表面に薬液を供給する薬液工程(
図4のステップS3)を実行する。具体的には、制御装置26は、薬液バルブ16を開く。それにより、回転状態の基板Wの上面に向けて、薬液バルブ14から薬液が供給される。供給された薬液は遠心力によって基板Wの上面の全域に行き渡り、基板Wに薬液を用いた薬液処理が施される。薬液の吐出開始から予め定める期間が経過すると、制御装置26は、薬液バルブ16を閉じて、薬液ノズル14からの薬液の吐出を停止する。これにより、薬液工程(S3)が終了する。
【0039】
次いで、制御装置26は、基板W上の薬液をリンス液に置換して基板W上から薬液を排除するためのリンス工程(
図4のステップS4)を実行する。具体的には、制御装置26は、リンス液バルブ10を開く。それにより、回転状態の基板Wの上面に向けて、リンス液ノズル8からリンス液が吐出される。吐出されたリンス液は遠心力によって基板Wの上面の全域に行き渡る。このリンス液によって、基板W上に付着している薬液が洗い流される。
【0040】
次いで、基板Wの上面にIPAを供給するIPA供給工程(第2の溶剤供給工程)が行われる(
図4のステップS5)。具体的には、制御装置26は、遮断板3を下降させて処理位置に位置させ、さらに、スピンチャック2によって基板Wを回転させながら、第2の溶剤バルブ25を開いて、中心軸ノズル17から基板Wの上面の中央部に向けてIPAを吐出させる。基板の上面の中央部に着液したIPAは、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板の上面の周縁部に向けて流れる。これにより、
図5に示すように、基板Wの上面に、基板Wの上面の全域を覆うIPAの液膜41が形成される(基板Wの上面がIPAでカバレッジされる。第2の溶剤液膜形成工程)。これにより、基板Wに保持されていたリンス液がIPAに置換される。IPAの吐出開始から所定期間が経過すると、制御装置26は、第2の溶剤バルブ25を閉じてIPAの吐出を停止させる。IPA供給工程が行われることにより、基板Wから水が除去される。
【0041】
次いで、第1の溶剤(たとえばPGMEA等)を基板Wの上面に供給する第1の溶剤供給工程が行われる(
図4のステップS6)。具体的には、制御装置26は、遮断板3を処理位置に位置させ、さらに、スピンチャック2によって基板Wを回転させながら、第1の溶剤バルブ22を開いて、中心軸ノズル17の吐出口17aから基板Wの上面の中央部に向けて第1の溶剤を吐出させる。基板の上面の中央部に着液した第1の溶剤は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板の上面の周縁部に向けて流れる。そして、基板Wに保持されていた液膜41に含まれているIPAが、第1の溶剤に置換される(第1の溶剤供給工程)。これにより、
図6に示すように、基板Wの上面に、基板Wの上面の全域を覆う第1の溶剤の液膜42が形成される(基板Wの上面が第1の溶剤でカバレッジされる。第1の溶剤液膜形成工程)。そして、第1の溶剤の吐出開始から所定期間が経過すると、制御装置26は、第1の溶剤バルブ22を閉じて第1の溶剤の吐出を停止させる。
【0042】
次いで、液体の疎水化剤を基板Wの上面に供給する疎水化剤供給工程が行われる(
図4のステップS7)。具体的には、制御装置26は、遮断板3を処理位置に位置させ、さらに、スピンチャック2によって基板Wを回転させながら、疎水化剤バルブ19を開いて、中心軸ノズル17の吐出口17aから基板Wの上面の中央部に向けて疎水化剤(すなわち、第1の溶剤を溶媒とする疎水化剤)を吐出させる。
【0043】
基板Wの上面の中央部に着液した疎水化剤は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板の上面の周縁部に向けて流れる。そして、基板Wに保持されていた液膜42に含まれている第1の溶剤が、疎水化剤に置換される(
疎水化剤供給工程)。これにより、
図7に示すように、基板Wの上面に、基板Wの上面の全域を覆う疎水化剤の液膜43が形成される(基板Wの上面が疎水化剤でカバレッジされる。疎水化剤液膜形成工程)。
【0044】
第1の溶剤を含む疎水化剤は、同じ第1の溶剤と親和性が高く置換し易い。一方、第1の溶剤の種類によっては、第1の溶剤を含む疎水化剤とIPAとは親和し難く、置換し難い場合がある。
PGMEAとIP
Aとはそもそも親和性が低い。それに加えて、両者の粘度の相違も問題になる。具体的には、疎水化剤としてはPGMEAを用いる場合、その粘度はたとえば約1cpである。一方、IPAの粘度は約2.4cpであ
る。粘度の高いIPAの液膜41を粘度の低いPGMEAで置換するのは時間を要する。そのため、第1の溶剤を含む疎水化剤でIPAを置換する場合と比較して、同じ第1の溶剤を第1の溶剤を含む疎水化剤で、置換する方が、スムーズに置換することができる。したがって、IPA供給工程(S5)と疎水化剤供給工程(S7)との間に第1の溶剤供給工程(S6)を介在させることにより、IPA供給工程(S5)から疎水化剤供給工程(S7)に直接移行する場合と比較して、基板Wの上面の全域を覆う疎水化剤の液膜43を、短時間で形成することができる(すなわち、基板Wの上面の全域を疎水化剤でカバレッジするまでに要する時間を短くすることができる)。疎水化剤の消費量をできるだけ低減させることが望まれている。基板Wの上面の全域を疎水化剤でカバレッジするまでに要する時間を短くすることができるので、非常に高価である疎水化剤(とくに疎水化剤の原液)の消費量の低減を図ることができる。
【0045】
基板Wの上面に疎水化剤の液膜43が形成されることにより、疎水化剤がパターンPの奥深くにまで入り込んで、基板Wの上面が疎水化される(疎水化処理)。
疎水化剤供給工程(S7)において、中心軸ノズル17の吐出口17aから基板Wの上面に向けて、吐出口17aにおけるレイノルズ数が1500以下の所定の値で、疎水化剤の連続流が吐出され続ける。具体的には、制御装置26は、吐出口17aからの疎水化剤の吐出に先立って、吐出口17aにおけるレイノルズ数が1500以下の所定の値になるように、第1の流量調整バルブ20の開度を調整する。
【0046】
吐出口17aにおけるレイノルズ数が1500を超えると(すなわち、吐出口17aからの吐出流量が多くなると)、
図8に示すように、吐出口17aから吐出される連続流状の疎水化剤が乱れる。吐出が乱れると、基板Wの上面に疎水化剤が着液するときの衝撃力で基板Wの上面に振動が発生し、この振動が基板Wの上面に保持されている疎水化剤(すなわち、疎水化剤の液膜43)に伝わる。その結果、
図8に示すように基板Wの上面に保持されている疎水化剤に波立ち44が生じてしまう。
【0047】
基板Wの上面に保持されている疎水化剤(すなわち、疎水化剤の液膜43)に波立ち44が生じると、疎水化剤とその周囲の雰囲気中との接触面積が増大する。疎水化剤は水と反応し易く、雰囲気中の水分とでも反応してしまう。雰囲気中の水分との反応により、基板Wの上面に保持されている疎水化剤の疎水化力が低下してしまう。その結果、基板Wの上面を良好に疎水化処理できない場合がある。
【0048】
さらに、疎水化剤と水分との反応によりパーティクルが発生するおそれがある。この観点からも、疎水化剤と雰囲気との接触面積が少ないことが望ましい。
これに対し、疎水化剤供給工程(S7)において、吐出口17aにおけるレイノルズ数が1500以下であるので、
図9に示すように、吐出口17aから吐出される連続流状の疎水化剤が、乱れずに柱状をなす。すなわち、吐出の乱れが発生しないか、あるいは、発生しても少ない。したがって、基板Wの上面に供給される疎水化剤の吐出の乱れを抑制または防止することができる。これにより、基板Wの上面に供給された(上面に保持されている)疎水化剤における波立ち44(
図8参照)の発生を抑制または防止することができ、その結果、疎水化剤と雰囲気中の水分との接触面積を少なく抑えることが可能である。ゆえに、基板Wの上面を良好に疎水化処理することができ、かつパーティクルの発生を抑制または防止することができる。
【0049】
さらに、疎水化剤供給工程(S7)において、吐出口17aにおけるレイノルズ数が450以上でかつ1500以下の所定の値であることがさらに好ましい。吐出口17aにおけるレイノルズ数が450以上であるので、吐出口17aからの疎水化剤の吐出流量が充分に多い(決して少なくはない)。そのため、疎水化剤の吐出開始からカバレッジまでの時間を短縮することができる。
【0050】
逆に言えば、疎水化剤供給工程(S7)において、吐出口17aにおけるレイノルズ数が450未満であると、吐出口17aからの疎水化剤の吐出流量が少な過ぎ、その結果、基板Wの上面の全域を疎水化剤でカバレッジすることができないか、あるいはカバレッジできるとしても、そのカバレッジに極めて長時間を要し、スループットが悪化するおそれがある。さらに、吐出流量が少ないとしても、カバレッジに極めて長時間を要して吐出期間が延びる結果、処理全体における疎水化剤の消費量が増大するおそれもある。 疎水化処理が所定時間にわたって行われると、制御装置26は、疎水化剤バルブ20を閉じて中心軸ノズル17からの疎水化剤の吐出を停止させる。
【0051】
次いで、乾燥剤としてのIPAを基板Wの上面に供給するIPA供給工程が行われる(
図4のステップS8)。具体的には、制御装置26は、遮断板3を下降させて処理位置に位置させ、さらに、スピンチャック2によって基板Wを回転させながら、第2の溶剤バルブ25を開いて、中心軸ノズル17から基板Wの上面の中央部に向けてIPAを吐出させる。これにより、中心軸ノズル17から吐出されたIPAが基板Wの上面全域に供給される。したがって、基板Wに保持されている疎水化剤の大部分は、IPAによって洗い流される。そして、IPAの吐出開始から所定期間が経過すると、制御装置26は、第2の溶剤バルブ25を閉じてIPAの吐出を停止させる。
【0052】
次いで、制御装置26は、スピンドライ工程(
図4のステップS9)を実行する。具体的には、制御装置26は、液処理速度よりも大きい所定のスピンドライ速度(たとえば数千rpm)まで基板Wを加速させ、そのスピンドライ速度で基板Wを回転させる。これにより、大きな遠心力が基板W上の液体に加わり、基板Wに付着している液体が基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wから液体が除去され、基板Wが乾燥する。
【0053】
基板Wの高速回転の開始から予め定める期間が経過すると、制御装置26は、スピンモータ7を制御して、スピンチャック2による基板Wに対する回転を停止させる(
図4のステップS10)。
その後、処理済みの基板Wが、搬送ロボットによってスピンチャック2から搬出される(
図4のステップS11)。
【0054】
以上によりこの実施形態によれば、疎水化剤供給工程(S7)において、中心軸ノズル17の吐出口17aから基板Wの上面に向けて、吐出口17aにおけるレイノルズ数が1500以下で、疎水化剤の連続流が吐出される。レイノルズ数が1500以下であれば、吐出口17aから吐出される連続流状の、第1の溶剤を含む疎水化剤が、乱れずに柱状をなす。すなわち、吐出の乱れが発生しないか、あるいは、発生しても少ない。したがって、基板Wの上面に供給される疎水化剤の吐出の乱れを抑制または防止することができる。これにより、基板Wの上面に供給された(上面に保持されている)疎水化剤における波立ちの発生を抑制または防止することができ、その結果、疎水化剤と雰囲気中の水分との接触面積を少なく抑えることが可能である。ゆえに、基板Wの上面を良好に疎水化処理することができる。
【0055】
また、基板Wの上面にリンス液が供給された後、IPAが基板Wの上面に供給されて、基板Wの上面に、基板Wの上面の全域を覆うIPAの液膜41が形成される。また、基板Wの上面にIPAが供給された後、第1の溶剤が基板Wの上面に供給される。これにより、IPAの液膜41に含まれる液体が第1の溶剤に置換されて、基板Wの上面の全域を覆う第1の溶剤の液膜42が形成される。そして、第1の溶剤の供給が行われた後に、第1の溶剤を含む疎水化剤が基板Wの上面に供給される。これにより、第1の溶剤の液膜42に含まれる液体が、同じ第1の溶剤を含む疎水化剤に置換されて、基板Wの上面の全域を覆う疎水化剤の液膜43が形成される。
【0056】
第1の溶剤を含む疎水化剤は、同じ第1の溶剤と親和性が高く置換し易い。したがって、IPA供給工程(S5)と疎水化剤供給工程(S7)との間に第1の溶剤供給工程(S6)を介在させることにより、IPA供給工程(S5)から疎水化剤供給工程(S7)に直接移行する場合と比較して、基板Wの上面の全域を覆う疎水化剤の液膜43を、短時間で形成することができる(すなわち、基板Wの上面の全域を疎水化剤でカバレッジするまでに要する時間を短くすることができる)。
【0057】
疎水化剤の消費量をできるだけ低減させることが望まれている。基板Wの上面の全域を疎水化剤でカバレッジするまでに要する時間を短くすることができるので、非常に高価である疎水化剤(とくに疎水化剤の原液)の消費量の低減を図ることができる。
<第1の試験>
次に、第1の試験について説明する。第1の試験では、基板処理装置1において、吐出口17aから疎水化剤(SMT)を吐出させたときの、吐出の安定度合いを調べた。吐出口17aから吐出される疎水化剤の種類を、SMT1(OSRA−A004)、SMT2(OSRA−7801)およびSMT3(PK−HP−S)で異ならせた。また、吐出口17aからの疎水化剤の吐出流量を変化させた。その結果を、
図10および
図11に示す。
図10では、吐出が安定しているものを、「〇」で示し、吐出がやや乱れているものを、「△」で示し、吐出が大きく乱れているものを、「×」で示している。
図11は、疎水化剤の吐出流量と吐出口17aにおけるレイノルズ数との関係を示すが、吐出が安定しているものを、「●」で示し、吐出がやや乱れているものを、「★」で示し、吐出が大きく乱れているものを、「■」で示している。
【0058】
図11に示す結果より、吐出口17aにおけるレイノルズ数が1500以下であれば、吐出口17aから吐出される連続流状の、第1の溶剤を含む疎水化剤が、乱れずに柱状をなすことがわかる。
<第2の試験>
次に、第2の試験について説明する。第2の試験では、基板処理装置1に
図4に示す一連の処理を施した。疎水化剤供給工程(
図4のS7)における、疎水化剤の吐出流量を、120ml/min、150ml/min、300ml/minで変化させると共に、
基板Wの回転速度を、300rpm、500rpm、800rpmで変化させた。基板Wはベアシリコンであり、第1の溶剤としてPGMEAを用い、疎水化剤の原液としてOSRA−A004を用いた。このような処理を施した後の、基板Wの表面の複数箇所において接触角を調べ、その平均値を求めた。その結果を
図12に示す。
【0059】
図12に示す結果より、吐出流量が120ml/min(レイノルズ数が710)および150ml/min(レイノルズ数が888)であるとき、接触角は92°以上であった。これに対し、吐出流量が300ml/min(レイノルズ数が1775)であるとき、接触角は92未満であった。吐出流量が300ml/minであるときは、吐出が乱れた結果、基板Wの上面に保持されている疎水化剤に波立ち44(
図8参照)が生じ、疎水化剤が雰囲気中の水分と反応することにより疎水化剤の疎水化力が低下し、その結果、基板Wの上面を良好に疎水化処理できなかったものと推察される。
<第3の試験>
次に、第3の試験について説明する。
【0060】
実施例:第3の試験では、実施例として
、図4に示す一連の処理を
基板Wに施した。疎水化剤の吐出流量は120ml/min、基板Wの回転速度は300rpmとした。基板Wはベアシリコンであり、第1の溶剤としてPGMEAを用い、疎水化剤の原液としてOSRA−A004を用いた。
比較例:第3の試験では、比較例として、基板処理装置1に
おいて、図4に示す処理か
ら第1の溶剤供給工程(
図4のS6)を省略した処理例を実行した。すなわち、IPA供給工程(
図4のS5)から疎水化剤供給工程
図4の(S7)に直接移行させた。疎水化剤の吐出流量は120ml/min、基板Wの回転速度は300rpmとした。基板Wはベアシリコンであり、第1の溶剤としてPGMEAを用い、疎水化剤の原液としてOSRA−A004を用いた。
【0061】
そして、基板Wの上面における疎水剤の広がりを肉眼により観察した。
実施例では、疎水化剤の液膜43は、円形のまま拡がった。基板Wの上面を完全にカバレッジするまで、約1秒間しか要さなかった。
比較例では、疎水化剤の液膜には、
図13に示すように、放射状に延びる筋(Radial Streak)RSが発生した。筋RSが疎水化剤の液膜43の拡がりを阻害し、その結果、基板Wの上面を疎水化剤で完全にカバレッジするまで、約8秒間要した。
【0062】
第3の試験の結果から、IPA供給工程(
図4のS5)と疎水化剤供給工程(
図4のS7)との間に第1の溶剤供給工程(
図4のS6)を介在させることにより、IPA供給工程(
図4のS5)から疎水化剤供給工程(
図4のS7)に直接移行する場合と比較して、基板Wの上面の全域を覆う疎水化剤の液膜43を短時間で形成することができることがわかった。
【0063】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は他の形態で実施することもできる。
たとえば、IPA供給工程(
図4のS5)において、乾燥剤としてIPAを例に挙げて説明したが、乾燥剤は、アルコールや、フッ素系溶剤とアルコールの混合液が挙げられる。アルコールは、たとえば、メチルアルコール、エタノール、プロピルアルコール、およびIPAの少なくとも一つを含む。フッ素系溶剤は、たとえば、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)の少なくとも一つを含む。
【0064】
また、
図4に示す基板処理例において、第1の溶剤供給工程(
図4のS6)を省略して、IPA供給工程(
図4のS5)から疎水化剤供給工程(
図4のS7)に直接移行させてもよい。
また、IPA供給工程(
図4のS5)を省略してもよい。
また、前述の実施形態では、疎水化剤を吐出するノズルが、遮断板3に一体移動する中心軸ノズル
17である場合について説明した。しかし、遮断板3とは別に設けられたノズルから、疎水化剤を吐出するようにしてもよい。この場合、ノズルを移動させることにより、基板Wの上面に対する薬液の疎水化剤の着液位置を、基板Wの上面の中央部と、それ以外の部分(たとえば周縁部)との間で移動させるノズル移動装置を備えていてもよい。
【0065】
また、前述の実施形態では、疎水化剤と、第1の溶剤とが共通のノズル(中心軸ノズル
17)から吐出される場合について説明した。しかし、疎水化剤と、第1の溶剤とが、それぞれ専用のノズルから吐出されてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。
この明細書および添付図面からは、特許請求の範囲に記載した特徴以外にも、以下のような特徴が抽出され得る。これらの特徴は、課題を解決するための手段の項に記載した特徴と任意に組み合わせ可能である。
【0066】
A1.水平姿勢に保持されている基板を、基板の上面の中央部を通る鉛直な回転軸線回
りに回転させる回転工程と、
前記回転工程に並行して、水を含むリンス液を基板の上面に供給するリンス液供給工程と、
前記リンス液供給工程が行われた後に、前記回転工程に並行して、基板の上面に第2の溶剤を供給することにより前記基板の上面に保持されているリンス液を第2の溶剤に置換して、前記基板の上面の全域を覆う第2の溶剤の液膜を形成する第2の溶剤液膜形成工程と、
前記第2の溶剤の液膜形成工程が行われた後に、前記回転工程に並行して、基板の上面に第
1の溶剤を供給することにより前記第2の溶剤の液膜に含まれる液体を、前記第2の溶剤とは種類の異なる第1の溶剤に置換して、前記基板の上面の全域を覆う第1の溶剤の液膜を形成する第1の溶剤液膜形成工程と、
前記第1の溶剤の液膜形成工程が行われた後に、前記回転工程に並行して、基板の上面に第1の溶剤を含む疎水化剤を供給することにより前記第1の溶剤の液膜に含まれる液体を疎水化剤に置換して、前記基板の上面の全域を覆う疎水化剤の液膜を形成する疎水化剤液膜形成工程とを含む。
【0067】
A1に記載の発明によれば、基板の上面にリンス液が供給された後、第2の溶剤が基板の上面に供給されて、基板の上面に、当該上面の全域を覆う第2の溶剤の液膜が形成される。また、基板の上面に第2の溶剤が供給された後、第1の溶剤が基板の上面に供給される。これにより、第2の溶剤の液膜に含まれる液体が第1の溶剤に置換されて、当該上面の全域を覆う第1の溶剤の液膜が形成される。そして、第1の溶剤の供給が行われた後に、第1の溶剤を含む疎水化剤が基板の上面に供給される。これにより、第1の溶剤の液膜に含まれる液体が、同じ第1の溶剤を含む疎水化剤に置換されて、当該上面の全域を覆う疎水化剤の液膜が形成される。
【0068】
第1の溶剤を含む疎水化剤は、同じ第1の溶剤と親和性が高く置換し易い。一方、第1の溶剤の種類や第2の溶剤の種類によっては、第1の溶剤を含む疎水化剤と第2の溶剤とは親和し難く、置換し難い場合がある(疎水化剤と第2の溶剤との粘度の相違に起因して、置換し難い場合もある)。したがって、異なる種類の第2の溶剤を、第1の溶剤を含む疎水化剤で置換する場合と比較して、同じ第1の溶剤を、第1の溶剤を含む疎水化剤で置換する方が、スムーズに置換することができる。したがって、基板の上面の全域を覆う疎水化剤の液膜を短時間で形成することができる。