特許第6948843号(P6948843)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948843
(24)【登録日】2021年9月24日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】缶の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 51/26 20060101AFI20210930BHJP
   B21D 41/02 20060101ALI20210930BHJP
   B21D 43/00 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   B21D51/26 Z
   B21D41/02 A
   B21D43/00 U
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-111054(P2017-111054)
(22)【出願日】2017年6月5日
(65)【公開番号】特開2017-217700(P2017-217700A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2020年3月10日
(31)【優先権主張番号】特願2016-112504(P2016-112504)
(32)【優先日】2016年6月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】ユニバーサル製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】山下 淳
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−541066(JP,A)
【文献】 特表2010−504857(JP,A)
【文献】 特表2015−506842(JP,A)
【文献】 特表2018−527194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 51/26
B21D 41/02
B21D 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶胴と缶底とを備え、前記缶胴の下部と前記缶胴の上部との外径差を前記下部の外径に対して2%以上18%以下とする有底筒状の缶の製造方法であって、
前記缶胴の前記缶底側に配置される下部と開口端部側に配置される上部との間に設けられる拡径予定部に、缶軸方向に沿って前記缶胴の下部側から上部側に向かうに従い漸次大径となる拡径部を成形する拡径部成形工程を備え、
前記拡径部成形工程は、
前記缶胴の内部に拡径用金型を進入して缶軸方向に相対移動させることにより、該缶胴の前記開口端部から拡径予定部までの領域全体を拡径する拡径加工を、前記拡径用金型の加工径を1.0mm以下の拡径量で段階的に大きくしながら複数回に分けて行い、
前記拡径加工を施す度に、各拡径用金型により成形される局部拡径部を下部側から上部側にかけて位置をずらしながら前記拡径部を成形することを特徴とする缶の製造方法。
【請求項2】
前記拡径部成形工程は、
複数回の各拡径加工において、前記缶胴の前記缶軸方向の高さを段階的に小さくしながら行うことを特徴とする請求項1に記載の缶の製造方法。
【請求項3】
前記拡径部成形工程において、
前記拡径加工を施す度に、前記拡径用金型により局部拡径部を成形するとともに、前回の拡径加工において成形された局部拡径部を整形することを特徴とする請求項1又は2に記載の缶の製造方法。
【請求項4】
前記拡径部成形工程において、
前記拡径用金型の先端部に、前記缶胴の下部の内周面と係合する係合軸部を設けておき、
前記係合軸部を前記缶胴の下部に挿通することにより、前記拡径用金型と前記缶胴との位置合わせを行うことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の缶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料等の内容物が充填される2ピース缶やボトル缶等の缶体に用いられる有底筒状の缶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料等の内容物が充填、密封される缶体として、缶胴(ウォール)と缶底(ボトム)を有する有底筒状の缶と、該缶の開口端部に巻締められる円板状の缶蓋と、を備えた2ピース缶が知られている。上記缶は、具体的にはDI缶であり、「DI」とはDrawing&Ironingの略称である。また、缶の開口端部にキャップが螺着されたボトル缶も周知である。
このような缶体に用いられる缶は、アルミニウム合金材料の板材にカッピング工程(絞り工程)及びDI工程(絞りしごき工程)を施すことにより、有底筒状に形成される。
【0003】
また、缶体には、缶軸方向に沿ってストレート状に設けられた缶胴を有する缶が広く用いられているが、缶体のデザイン性を高めたり、持ちやすさ(グリップ性)を向上するために、缶胴を部分的に変形させた缶が用いられるようになってきている。
例えば特許文献1には、金属缶の底部付近と肩部付近の外周に絞り加工を施して、缶胴の中間部よりも小径の下部絞り部と上部絞り部が形成された缶が開示されている。また、特許文献2には、缶(有底筒状体)の缶胴の軸方向所定位置より上方(開口端側)を縮径する縮径加工を施した後、その縮径部を残した状態で、その上方に拡径加工を施すことにより、該缶胴における他の部位よりも小径とされたくびれ部を有する缶が開示されている。さらに、特許文献3には、缶(容器)の缶胴(胴部)の一端から他端に向かって拡径加工を施した後、拡径部を残した状態で、その上方に絞り加工を施した缶が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000‐218333号公報
【特許文献2】特開2003‐305523号公報
【特許文献3】特開2008‐200755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1から3に記載されるように、缶胴を部分的に変形させた異形缶が製造されるようになってきているが、このような縮径加工や拡径加工を伴って製造される異形缶は、加工部分にしわや亀裂、破断が生じ易く、これに起因して加工が非常に困難であることから、成形可能な形状が限られていた。
すなわち、従来の缶の製造方法においては、缶軸方向(缶胴の軸方向)に沿う長い変形領域で拡径させる加工や、径の変化量の大きな変形をさせる加工を行おうとすると、缶胴と金型との摩擦が大きくなるので、缶胴の肉が引き延ばされることにより加工部分に成形痕が生じたり、しわや亀裂等が生じたりすることが問題となっていた。また、内外面に施された塗膜にもダメージが発生するおそれがあった。さらに、缶体の軽量化が進められていることから、缶胴の薄肉化が求められ、拡径加工がますます困難なものになっている。したがって、成形を行うことができる缶の形状は非常に限定されており、缶体のデザインを行う上での制約となっていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、缶軸方向に沿う長い変形領域で、径の変化量の大きな変形をさせる拡径加工を安定して施すことができ、缶胴への成形痕やしわ等の発生を防止して美麗な外観を有する缶を提供可能な缶の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、缶胴と缶底とを備え、前記缶胴の下部と前記缶胴の上部との外径差を前記下部の外径に対して2%以上18%以下とする有底筒状の缶の製造方法であって、前記缶胴の前記缶底側に配置される下部と開口端部側に配置される上部との間に設けられる拡径予定部に、缶軸方向に沿って前記缶胴の下部側から上部側に向かうに従い漸次大径となる拡径部を成形する拡径部成形工程を備え、前記拡径部成形工程は、前記缶胴の内部に拡径用金型を進入して缶軸方向に相対移動させることにより、該缶胴の前記開口端部から拡径予定部までの領域全体を拡径する拡径加工を、前記拡径用金型の加工径を1.0mm以下の拡径量で段階的に大きくしながら複数回に分けて行い、前記拡径加工を施す度に、各拡径用金型により成形される局部拡径部を下部側から上部側にかけて位置をずらしながら前記拡径部を成形する。
【0008】
本発明に係る缶の製造方法では、拡径部成形工程において、複数回の拡径加工を繰り返して各成形用金型により局部拡径部を下部側から上部側にかけて位置をずらしながら成形し、これらの局部拡径部を繋げて拡径部を成形する。また、拡径部成形工程では、缶胴の外周面を何ら拘束することなく、拡径用金型の加工径を段階的に大きくしながら、異なる加工径の拡径用金型を順に用いて複数回の拡径加工を施す。このように、各拡径加工は、缶胴の外周面(外方)を拘束せずに行われるので、拡径用金型を缶胴の内部に進入させると、缶胴の肉が拡径用金型により周方向に引き延ばされて径方向の外側(拡径方向)に移動する一方で、その拡径用金型の缶軸方向への移動に伴って缶胴が圧縮される方向に力を受けて、缶胴の肉が缶軸方向の下部側に向かって寄せられることにより圧縮される。そして、拡径部成形工程では、複数回の拡径加工を施して拡径部を成形することとしており、1回の拡径加工における拡径量(加工量)を小さくすることで、缶胴の肉が径方向の外側に移動して周方向に引き延ばされることによる減肉と、缶胴の肉が缶軸方向の下部側に移動して寄せられることによる増肉とのバランスを図ることができ、拡径加工に伴う加工部分の缶胴の板厚(ウォール厚)の減肉を抑制できる。そして、複数回の拡径加工を繰り返すことにより、局部拡径部を繋げた拡径量の大きな拡径部を成形することができる。
1回の拡径加工において加工する缶胴の拡径量が1mmを超えると、缶胴の肉が周方向に引き延ばされることで減肉される量(減肉量)に対し、缶胴の肉が缶軸方向の下部側に寄せられることで増肉する量(増肉量)が追いつかなくなる。すなわち、径方向の加工量(拡径量)に対し、缶胴の高さの縮小量が追いつかなくなり、缶胴の加工部分が減肉されることにより、加工部分に亀裂が生じやすくなる。一方、1回の拡径量を1mm以下とすることで、径方向の加工量に対応した缶軸方向への缶胴の肉の移動量(増肉量)を十分に確保できるので、缶胴の肉が周方向に引き延ばされることによる減肉と、缶胴の肉が缶軸方向の下部側に移動して寄せられることによる増肉とのバランスを図ることができ、加工部分の缶胴の板厚が減肉されて加工部分に亀裂が発生することを回避できる。したがって、缶胴の上部と下部との外径差を下部の外径に対して2%以上18%以下とする拡径量の大きな拡径部も安定して成形できる。
【0009】
すなわち、本発明の缶の製造方法の前記拡径部成形工程においては、複数回の各拡径加工において、前記缶胴の前記缶軸方向の高さを段階的に小さくしながら行う。
【0010】
各拡径加工において、缶胴の肉を缶軸方向の下部側に向かって寄せることで、缶胴の高さ(缶軸方向の高さ)を段階的に小さくする。このように、缶胴の高さを段階的に小さくしながら拡径加工を行うことで、缶胴の肉が径方向の外側に移動して周方向に引き延ばされることによる減肉と、缶胴の肉が缶軸方向の下部側に移動して寄せられることによる増肉とのバランスを図ることができ、加工部分の缶胴の板厚が減肉されて加工部分に亀裂が入ることを回避できる。したがって、本発明に係る缶の製造方法では、加工部分にしわや亀裂等の損傷が生じることを回避でき、拡径量の大きな拡径部を安定して成形でき、大きく傾斜した拡径部や広範囲に傾斜した拡径部等、種々の形状の拡径部を成形できる。また、本発明に係る缶の製造方法では、縮径加工を伴わずに、拡径加工のみで拡径部を成形でき、工程を簡略化できる。
【0011】
本発明の缶の製造方法の前記拡径部成形工程において、前記拡径加工を施す度に、前記拡径用金型により局部拡径部を成形するとともに、前回の拡径加工において成形された局部拡径部を整形する。
【0012】
拡径加工を施す度に、前回の拡径加工において成形された局部拡径部も合わせて整形することで、缶胴に圧痕が残されることを防止できる。したがって、各局部拡径部の接続部分を滑らかに接続した拡径部を成形でき、缶の外観の美粧性を向上できる。
【0015】
本発明の缶の製造方法の前記拡径部成形工程において、前記拡径用金型の先端部に、前記缶胴の下部の内周面と係合する係合軸部を設けておき、前記係合軸部を前記缶胴の下部に挿通することにより、前記拡径用金型と前記缶胴との位置合わせを行うとよい。
【0016】
異なる拡径用金型のそれぞれについて係合軸部を設けておき、これらの係合軸部と拡径加工が施されない缶胴の下部とにおいて位置合わせを行うことで、繰り返し行われる複数回の拡径加工において、拡径用金型と缶胴とを正確に位置合わせができ、缶胴にズレのない高精度な加工を施すことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、缶軸方向に緩やかに拡径する拡径加工を安定して施すことができ、缶胴への成形痕やしわ等の発生を防止して、缶に美麗な外観を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係る缶の製造方法により製造される缶を示す半断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る缶の製造方法を説明するフローチャートである。
図3】本発明の第1実施形態に係る缶の製造方法のカッピング工程、DI加工及びトリミング加工を説明する模式図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る缶の製造方法において、拡径部成形工程を説明する要部断面図であり、拡径用金型を缶の上方に離間させて配置した状態を示す。
図5】本発明の第1実施形態に係る缶の製造方法において、拡径部成形工程を説明する要部断面図であり、1回目の拡径加工の状態を示す。
図6】本発明の第1実施形態に係る缶の製造方法において、拡径部成形工程を説明する要部断面図であり、2回目の拡径加工の状態を示す。
図7】本発明の第1実施形態に係る缶の製造方法において、拡径部成形工程を説明する要部断面図であり、3回目の拡径加工の状態を示す。
図8】本発明の第1実施形態に係る缶の製造方法において、拡径部成形工程を説明する要部断面図であり、4回目の拡径加工の状態を示す。
図9】各拡径用金型と缶との関係を説明する缶胴の要部断面図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る缶の製造方法により製造される缶を示す半断面図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る缶の製造方法において、拡径部成形工程を説明する要部断面図であり、5回目の拡径加工の状態を示す。
図12】本発明の第3実施形態に係る缶の製造方法により製造される缶を示す半断面図である。
図13】本発明の第3実施形態に係る缶の製造方法において、拡径部成形工程を説明する要部断面図であり、5回目の拡径加工の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る缶の製造方法において製造される缶は、例えば0.30mm〜0.50mmのアルミニウム製の板を成形してなるものであり、飲料等の内容物が充填・密封される2ピース缶やボトル缶の缶体に用いられるものである。本実施形態では、このうちの2ピース缶に用いられる缶30(図1参照)を例にして説明を行う。
【0020】
2ピース缶の缶体は、図1に二点鎖線で示されるような有底筒状の缶30と、この缶30の開口端部に巻締められる円板状の缶蓋(不図示)とを備えるものである。缶30は、具体的にはDI缶であり、「DI」とはDrawing&Ironingの略称である。なお、本実施形態の缶の製造方法により製造される缶30は、缶胴径/開口径が公称径で211/204径缶に用いられるものであるが、これに限定されるものではなく、それ以外の例えば211/206径缶や、それよりも缶の外径が小さい204/200径缶、204/202径缶等に適用してもよい。
【0021】
図1に実線で示される缶20は、後述する拡径部成形工程を経たものであるとともに、ネッキング工程前の状態を表しており、この缶20の開口端部11aにネッキング工程及びブランジング工程を施すことにより、図1に二点鎖線で示されるように、上方に向かうに従い小径となるネック部13と、ネック部13の上方に配置される円環状のフランジ部15とを有する缶30に形成される。
【0022】
図1に示されるように、缶20は、円筒状をなす缶胴(ウォール)11と、ドーム状をなす缶底(ボトム)12とを備えている。図1において、缶胴11及び缶底12は、互いに同軸に配置されており、本実施形態において、これらの共通軸を缶軸Oと称して説明を行う。また、缶軸Oに沿う方向(缶軸O方向)のうち、缶胴11の開口端部11aから缶底12側へ向かう方向を下方、缶底12から開口端部11a側へ向かう方向を上方という。また、缶軸Oに直交する方向を径方向といい、径方向のうち、缶軸Oに接近する向きを径方向の内側(内方)といい、缶軸Oから離間する向きを径方向の外側(外方)という。また、缶軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0023】
缶胴11における上端部は、缶20の外部に開口する開口端部11aとなっている。内容物は、この開口端部11aを通して缶20内に充填される。また、缶胴11における下端部は、缶底12により閉じられている。
【0024】
缶胴11は、図1に示されるように、その缶胴の缶底12側に配置される下部23の外径Dbよりも、開口端部11a側に配置される上部21の外径Dtが大径に設けられており、下部23と上部21との間に、缶軸O方向に沿って缶胴11の下部23側から上部21側に向かうに従い漸次大径となる拡径部22が形成されている。つまり、缶胴11の上部21と拡径部22は、缶胴11の下部23よりも径方向の外側に向けて膨らんで形成されており、周方向に沿って缶胴11の全周に延びる環状をなしている。また、図1に示される缶20の縦断面視において、拡径部22の下端側は、缶胴11の内側(径方向の内側)へ向けて凹となる凹曲面状の凹曲面部25とされ、拡径部22の上端側は、缶胴11の外側(径方向の外側)へ向けて凸となる凸曲面状の凸曲面部24とされている。そして、缶胴11の下部23の上端は、凹曲面部25の下端に接続し、拡径部22の下端から連続して下方に向かって直線状に設けられている。また、缶胴11の上部21の下端は、凸曲面部24の上端に接続し、拡径部22の上端から連続して上方に向かって直線状に設けられている。
【0025】
また、缶胴11の下部23、拡径部22(凹曲面部25及び凸曲面部24)、上部21は、互いに滑らかに連なっており、互いの間に段差を形成することなく滑らかに接続され
ている。具体的には、図1に示される縦断面視において、下部23の上端が、拡径部22の凹曲面部25の下端と接して設けられ、下部23が凹曲面部25の接線となっている。また、上部21の下端が、拡径部22の凸曲面部24の上端と接して設けられ、上部21が凸曲面部24の接線となっている。
【0026】
そして、缶胴11の下部23の外径Dbは、例えば52〜67mmとされる。また、缶胴11の上部21と下部23との外径差、すなわち下部23に対して上部21が径方向の外側に拡径する幅は2%以上18%以下であり、上部21の外径Dtは例えば53mm〜79mmとされる。本実施形態の缶10では、拡径率(外径差)は14%程度(直径差で8mm程度、径の片側幅g0で4mm程度)とされている。
【0027】
また、図1に示される缶20の縦断面視において、製品となる拡径部22の凹曲面部25の曲率半径(凹曲面部25の外周面における曲率半径)は、例えば50mm〜200mmの範囲とされており、拡径部22の凸曲面部24の曲率半径(凸曲面部24の外周面における曲率半径)は、例えば100〜500mmの範囲とされている。ただし、上記曲率半径は、上記数値範囲に限られるものではなく、拡径部22を曲面ではなく、缶軸O方向の上方に向かうに従い拡径するテーパ状に設けても良い。
図1に示す第1実施形態の缶20の場合、缶胴11の拡径部22における凹曲面部25の曲率半径が100mm、凸曲面部24の曲率半径が300mmとされており、凹曲面部25は、缶胴11の下部23との接続端から拡径部22の下端部の部分に形成されており、この下端部を除き拡径部22の大部分は凸曲面部24により形成される。
【0028】
缶底12は、缶軸O上に位置するとともに、上方(缶胴11の内部)に向けて膨出するように形成されたドーム部12aと、該ドーム部12aの外周縁部と缶胴11の下端部とを接続するヒール部12cとを備えている。
図1に示される縦断面視で、ヒール部12cは、缶胴11の下端部から下方に向かうに従い漸次径方向の内側へ向けて傾斜している。またこの縦断面視で、ヒール部12cにおける缶胴11下端部との接続部分(つまりヒール部12cの上端部)は、缶胴11の外側へ向けて突出する凸曲線状をなしている。
【0029】
また、缶底12におけるドーム部12aとヒール部12cとの接続部分は、この缶20が正立姿勢(図1に示される、缶胴11の開口端部11aが上方を向く姿勢)となるように接地面(載置面)上に載置されたときに、接地面に接する接地部12bとなっている。接地部12bは、缶底12において最も下方に向けて突出しているとともに、周方向に沿って延びる環状をなしている。
【0030】
なお、図1において符号Hで示される直線(2点鎖線)は、ヒール部12cの上端部がなす凸曲線の曲率半径の中心を通り、缶軸Oに垂直な仮想の水平面を表している。
本明細書では、缶20の周壁(外周壁)のうち、仮想の水平面Hの上方に位置する部位が缶胴11とされ、仮想の水平面Hの下方に位置する部位が缶底12とされている。具体的には、缶20の周壁において、仮想の水平面Hの下方に位置する缶底12の部分が、ヒール部12cとなっている。
【0031】
なお、缶20にネッキング工程とフランジング工程とを施して成形される缶30のネック部13は、上方に向かうに従い漸次小径となるテーパ部51と、テーパ部51の下方に隣接配置されて缶胴11の外側へ向けて凸となる凸曲面部52と、テーパ部51の上方に隣接配置されて缶胴11の内側へ向けて凹となる凹曲面部53とを有する。また、テーパ部51、凸曲面部52及び凹曲面部53は、それぞれ缶胴11の周方向全周にわたって延びる環状をなしている。これらの凸曲面部52、テーパ部51及び凹曲面部53は、互いに滑らかに連なっている。具体的に、図1に示される缶30の縦断面視において、テーパ部51は、凸曲面部52及び凹曲面部53に接してこれらを繋ぐ接線となっている。
【0032】
そして、上部21の下端側の直線状の部分と、ネック部13の凸曲面部52とは、滑らかに連なっている。また、ネック部13の凹曲面部53と、該凹曲面部53の上方に隣接配置されるフランジ部15も、滑らかに連なっている。
また、缶胴11の下部は、缶底12の後述するヒール部12cの上端部に対して、滑らかに連なっている。
【0033】
次に、図2図8を参照して、本実施形態の缶の製造方法によりアルミニウム合金材料の板材から拡径部22を有する有底筒状の缶20を製造する方法の一例を説明する。
図2に示されるように、缶20は、打ち抜き及びカッピング工程、DI工程、トリミング工程、印刷工程、塗装工程、拡径部成形工程をこの順に経て、製缶される。また、缶30は、拡径部成形工程を経て製造された缶20に、ネッキング工程及びフランジング工程をこの順に施すことにより、製缶される。
【0034】
[打ち抜き工程及びカッピング工程(絞り工程)]
アルミニウム合金材料からなる鋳塊に熱間圧延、冷間圧延及び焼鈍を施して所定板厚の中間板材を形成した後に、該中間板材に冷間仕上げ圧延を施すことにより最終板厚とされた圧延材を用意し、この圧延材をカッピングプレスによって打ち抜きながら絞り加工(カッピング加工)することにより、図3(a)に示されるように、比較的大径で浅いカップ状体W1を成形する。
【0035】
[DI工程(絞りしごき工程)]
次に、DI加工装置によって、カップ状体W1にDI加工(再絞りしごき加工)を施して、図3(b)に示されるように、缶胴11と缶底12を備える有底筒状の缶W2に成形する。このDI加工により、缶W2の缶底12は、最終の缶20の缶底形状に成形される。
【0036】
詳述すると、DI加工装置は、再絞り加工するための円形の貫通孔を有する一枚の再絞りダイと、この再絞りダイと同軸に配列される円形の貫通孔を有する複数枚(例えば、3枚)のアイアニング・ダイ(しごきダイ)と、アイアニング・ダイと同軸とされ、上記それぞれのアイアニング・ダイの各貫通孔の内部に嵌合可能とされ、ダイの軸方向に移動自在とされる円筒状又は円柱状のパンチスリーブと、このパンチスリーブの外側に嵌合された円筒状のカップホルダースリーブと、を備えている。
【0037】
DI加工装置による再絞り加工は、カップ状体W1をパンチスリーブと再絞りダイとの間に配置し、カップホルダースリーブ及びパンチスリーブを前進させて、カップホルダースリーブが、再絞りダイの端面にカップ状体W1の底面を押し付けてカップ押し付け動作を行いながら、パンチスリーブがカップ状体W1を再絞りダイの貫通孔内に押し込むことにより行われる。
その結果、所定の内径を有する再絞り加工されたカップ状体(不図示)が成形される。引き続き、再絞り加工されたカップ状体を複数のアイアニング・ダイを順次通過させて徐々にしごき加工をして、カップ状体の周壁をしごいて該周壁を延伸させ、周壁高さを高くするとともに壁厚を薄くして、有底筒状の缶W2を成形する。
【0038】
しごき加工が終了した缶W2は、パンチスリーブがさらに前方に押し出して底部(缶底12となる部分)をボトム成形金型に押圧することにより、底部が、上述のドーム形状に形成される。この缶W2は、上述のように周壁がしごかれることで加工硬化され、強度が高められる。
【0039】
図3(b)に示されるように、カッピング工程及びDI工程を経た缶W2の開口端部11aは、周方向に向かうに従い上下に波打つような凹凸形状(凹凸波形状)に形成されている。なお、この凹凸波形状は、板材Wをカップ状体W1に成形したときから付与されるものである。
開口端部11aの凹凸波形状をなす上端縁のうち、上方に突出する山となっている部分(凸部)は、耳19と呼ばれる。耳19は、開口端部11aにおいて周方向に沿って複数形成される。これらの耳19は、例えばアルミニウム合金の結晶学的異方性に起因して生じるものである。
【0040】
[トリミング工程]
次に、缶W2の開口端部11aをトリミング加工する。
すなわち、上記DI加工装置によって形成された缶W2の開口端部11aは、耳19が形成されて高さが不均一であるため、この缶W2の開口端部11aを切断してトリミングすることにより、図3(c)に示されるように、缶胴11の開口端部11aにおける缶軸O方向に沿う周壁の高さを、全周にわたって均等に揃える。これにより、缶胴11の開口端部11aに耳19を有さない(耳19が切除された)、トリミング加工後の缶10が得られる。なお、このトリミング工程は、DI工程の成形終了時に行われる。
この缶10における缶軸O方向の高さ(缶底12の下端(接地部12b)から開口端部11aの上端までの高さ)は、例えば、350ml缶の場合には124mm程度であり、500ml缶の場合には168mm程度である。
【0041】
[印刷工程、塗装工程]
この缶10を洗浄し、潤滑油等を除去した後に、表面処理を施して乾燥し、次いで外面印刷、外面塗装を施し、その後内面塗装を施す。具体的に、印刷工程では、印刷用インクを使用して、缶10の缶胴11に外面印刷を施す。
次に、塗装工程では、外面塗装を施した後、内面塗装を施す。詳しくは、例えば、ポリエステル系塗料を使用して、缶10の缶胴11の外面に塗装をし、この外面塗装がされた缶10をオーブンで加熱乾燥する。なお、オーブンにより加熱乾燥する際は、缶胴11の開口端部11aから内部へ向けて、略水平方向に延在する搬送用ピンが挿入され、該搬送用ピンが缶10を支持しつつ、チェーンやモータ等を備えた駆動機構により、移動させられる。次いで、缶10の缶胴11及び缶底12の内面に、例えば、エポキシ系塗料を使用して塗装をし、この内面塗装がされた缶10をコンベアで搬送しながらオーブンで加熱乾燥する。
【0042】
[拡径部成形工程]
次に、図4に示されるように、缶10の缶胴11のうち下部23と上部28との間に位置する拡径予定部29に、図1に示されるように、缶軸O方向に沿って下部23側から上部21側へ向かうに従い大径となる拡径部22を成形するとともに、拡径部22に隣接配置される上部28を径方向の外側に拡径した上部21を成形する。
【0043】
拡径部成形工程では、下部23と上部21との間を接続する外径差(拡径率)の大きな拡径部22を成形するため、缶10の缶胴11の内部に加工径の異なる複数個の拡径用金型を加工径の小さい側から順に嵌合して複数回の拡径加工を施す。この際、1回の拡径加工は、1mm以下の拡径量で行う。例えば、下部23に対して上部21を径方向の外側に拡径量を6mm(拡径率10%)とする拡径を行う際に、1回の拡径加工により拡径される拡径量を0.5mmに設定した場合には、合計12回の拡径加工を経ることにより、外径差(拡径量)が6mmの拡径部22を成形することができる。以下、本実施形態では、説明の簡略化のため、図4図8に示されるように、加工径の異なる4個の拡径用金型40A〜40Dを用い、拡径部22を4回に分けて、すなわち4回の拡径加工を経て拡径部22及び上部21を成形する場合を例にして、説明を行う。
【0044】
各拡径用金型40A〜40Dは、具体的には缶胴11の内部に嵌合する第1パンチ40A、第2パンチ40B、第3パンチ40C及び第4パンチ40Dにより構成され、拡径加工は、缶胴11の外周面を何ら拘束することなく、加工径を段階的に大きくしたパンチ40A〜40Dを順に用いて行われる。以下、パンチに拡径用金型と同一の符号40A〜40Dを用いる。
各パンチ40A〜40Dにより拡径加工される1回の缶胴11の拡径量は1mm以下とされ、パンチ40A〜40Dによる加工径を1mm以下の拡径量で段階的に大きくしながら拡径加工を行う。
【0045】
詳しくは、各拡径加工では、図4図8に示すように、缶10と各パンチ40A〜40Dを缶軸O方向に相対的に接近移動(相対移動)させつつ、缶胴11の内部に各パンチ40A〜40Dを進入させることにより、缶胴11の開口端部11aから拡径予定部29までの領域全体(上部28及び拡径予定部29)を拡径加工する。そして、この拡径加工を、パンチ40A〜40Dの加工径を段階的に大きくしながら複数回に分けて行い、1回の成形で加工される局部拡径部を符号31から符号34の順に示すように、缶胴11の下部23側から上部28側にかけて位置をずらしながら成形する。
【0046】
また、図9に示すように、パンチ40A〜40Dの中心軸は、缶軸Oと同軸に配置されている。そして、各パンチ40A〜40Dのそれぞれの先端部には、缶胴11の下部23の内周面と係合する円柱状の係合軸部41が設けられており、係合軸部41を缶胴11の下部23に挿通することにより、各パンチ40A〜40Dと缶胴11との位置合わせがなされるようになっている。また、各パンチ40A〜40Dには、係合軸部41に連続して局部拡径部31〜34に対応する成形部42a〜42dが周方向全周にわたって形成されており、さらにこの成形部42a〜42dに連続して円柱状の直線成形部43a〜43dが設けられている。
【0047】
各パンチ40A〜40Dの成形部42a〜42dは、拡径部22の凹曲面部25を成形する部分が凹曲面状に形成されており、拡径部22の凸曲面部24を成形する部分が凸曲面状に形成されている。具体的に、成形部42a〜42dの凹曲面部25を成形する部分の曲率半径が100mm程度の大きな凹Rに設定され、凸曲面部24を成形する部分の曲率半径が300mm程度の大きな凸Rに設定される。また、各パンチ40A〜40Dのうち、パンチ40A〜40Cの成形部42a〜42cは、直線成形部43a〜43cとの接続部が、曲率半径10mm〜15mmのR面46a〜46cに形成され、R面46a〜46cにより滑らかに接続されている。また、各パンチ40A〜40Dのうち、最も大きい加工径を有する第4パンチ40Dの成形部42dは、直線成形部43dと連続して滑らかに接続されている。そして、各パンチ40A〜40Dの直線成形部43a〜43dの外径差g1〜g4は1mm以下に設けられている。
【0048】
なお、係合軸部41の下端に隣接配置される各パンチ40A〜40Dの先端側は、缶軸O方向に下方に向かうに従い漸次縮径するテーパ状の先端逃げ部44が設けられており、係合軸部41と先端逃げ部44との間は、曲率半径10mm〜15mmのR面47により滑らかに接続されている。一方、直線成形部43a〜43dの上端に隣接配置されるパンチ40A〜40Dの基端側は、直線成形部43a〜43dよりも径方向の内側に縮径して設けられた基端逃げ部45a〜45dが形成されている。
【0049】
パンチ40A〜40Dのうち、局部拡径部31の成形を行う第1パンチ40Aは、図5及び図9に示すように、成形部42aの全域が局部拡径部31を成形する拡径成形部48aとされており、拡径成形部48aの成形面は、局部拡径部31に対応して上方に向かうに従い漸次拡径し、凹面から凸面に変化する湾曲面状に設けられている。一方、局部拡径部31に連続する局部拡径部32の成形を行う第2パンチ40Bは、図6及び図9に示すように、成形部42bの上部側に局部拡径部32を成形する拡径成形部48bが設けられており、下部側に既に第1パンチ40Aにより成形された局部拡径部31を整形する整形部49bが設けられている。拡径成形部48bの成形面は、局部拡径部32に対応して上方に向かうに従い漸次拡径する凸面状に設けられ、整形部49bの整形面は、局部拡径部31に対応する湾曲面状に設けられている。つまり、整形部49bの整形面は、第1パンチ40Aの拡径成形部48aの成形面と同一の形状に形成されている。これにより、第2パンチ40Bにより局部拡径部32を成形する際に、拡径成形部48bにより拡径予定部29に局部拡径部32を成形するとともに、整形部49bが前回の拡径加工において成形された局部拡径部31の内周面に当接して、局部拡径部31の形状が整えられる。したがって、局部拡径部32が局部拡径部31に滑らかに接続され、局部拡径部31と局部拡径部31との接続部分に圧痕が残されることを防止できる。
【0050】
また同様に、第3パンチ40Cの成形部42cは、図7及び図9に示すように、上部側に局部拡径部33を成形する成形面を有する拡径成形部48cが設けられており、下部側に第2パンチ40Bの拡径成形部48bの成形面と同一形状の整形面を有する整形部49cが設けられている。拡径成形部48cの成形面は、局部拡径部33に対応して上方に向かうに従い漸次拡径する凸面状に設けられ、整形部49cの整形面は、局部拡径部31〜32までの領域に対応する湾曲面状に設けられている。
【0051】
さらに、第4パンチ40Bの成形部42dは、図8及び図9に示すように、上部側に局部拡径部34を成形する成形面を有する拡径成形部48dが設けられており、下部側に第3パンチ40Cの拡径成形部48cの成形面と同一形状の整形面を有する整形部49dが設けられている。拡径成形部48dの成形面は、局部拡径部34に対応して上方に向かうに従い漸次拡径する凸面状に設けられ、整形部49dの整形面は、局部拡径部31〜33までの領域に対応する湾曲面状に設けられている。
【0052】
そして、拡径加工は、まず、図4に示すように加工径の最も小さい第1パンチ40Aを缶10の上方に離間させて配置した状態から、缶10と第1パンチ40Aとを缶軸O方向に相対的に接近移動(相対移動)させつつ、図5に示すように、缶10の缶胴11内にその開口端部11aから第1パンチ40Aを進入させて行う。この際、第1パンチ40Aによる拡径加工では、缶胴11の缶軸O方向の高さ(缶の高さ、ハイト)を小さくしながら、缶胴11の開口端部11aから拡径予定部29までの領域の全体を拡径する
【0053】
本実施形態では、第1パンチ40Aを缶10に対して缶軸O方向に接近(前進)移動させる。この際、第1パンチ40Aの係合軸部41が先ず缶胴11内部に嵌合し、缶10の缶軸と第1パンチ40Aの中心軸の位置合わせがなされる。そして、このように缶10と第1パンチ40Aとの位置合わせがなされた状態で、図5に示すように、さらに第1パンチ40Aを前進移動させて缶胴11の内部に進入させることにより、係合軸部41から連続して設けられる拡径成形部48aに沿って、缶胴11の開口端部11aから拡径予定部29の下端までの領域が径方向外方に拡げられて拡径加工が施されていく。そして、拡径予定部29の下端に、下部23に連続する局部拡径部31が成形される。
【0054】
この際、缶胴11の外周面(外方)は何ら拘束されていないので、第1パンチ40Aを缶胴11の内部に進入させて前進移動させると、缶胴11の肉が周方向に引き延ばされて径方向の外側(拡径方向)に移動する一方で、その第1パンチ40Aの前進移動に伴って缶胴11が缶軸O方向の下部23に向けて圧縮される方向に力を受けて、缶胴11の肉が缶軸O方向の下部23側に向かって寄せられる。これにより、缶胴11が圧縮され、その分だけ、拡径加工前よりも加工後の方が、缶胴11の高さ(缶の高さ)が小さくなる。また、第1パンチ40Aによる加工量(拡径量g1)は径方向の外側に1mm以下とされる僅かな拡径量であるので、缶胴11の肉が径方向の外側に移動して周方向に引き延ばされることによる減肉と、缶胴11の肉が缶軸O方向の下部23側に移動して寄せられることによる増肉とが相まって、加工部分の缶胴11の板厚が減肉されることが抑制される。したがって、第1パンチ40Aによる拡径加工では、缶胴11の高さを小さくしながら、加工部分の缶胴11の板厚に極端な減肉を生じさせることなく、局部拡径部31を成形できる。
なお、第1パンチ40Aによる拡径加工後は、第1パンチ40Aを缶10に対して缶軸O方向に離間(後退)移動させる。そして、第1パンチ40Aは缶胴11の内部から離脱させられ、元の位置(加工準備位置、待機位置)に戻される。
【0055】
局部拡径部31を成形した後、第1パンチ40Aよりも拡径量g2だけ加工径が大きい第2パンチ40Bを缶胴11の内部に進入させ、上述の第1パンチ40Aと同様の拡径加工を施し、図6に示すように、拡径成形部48bにより局部拡径部31から上部側にずれた位置の局部拡径部32を成形するとともに、前回の拡径加工により成形された局部拡径部31の内周面に整形部49bを当接させて形状を整えることにより、局部拡径部31と局部拡径部32とを滑らかに接続する。この場合、加工時に缶10の外周面は押圧されないので、第1パンチ40Aで成形される拡径部22の凹曲面部25は、縦断面が直線状の円錐面に成形されやすいが、次の第2パンチ40Bで加工する際に、拡径成形部48bにより缶10の肉が押圧されて、図6及び図9において白抜き矢印Mで表すように、時計回りのモーメントが作用し、これにより拡径成形部48bの前方(下方)部分が、整形部49bの外周面に押圧されて、湾曲面状に整形される。
【0056】
続いて、第2パンチ40Bよりも拡径量g3だけ加工径が大きい第3パンチ40Cにより、図7に示すように、局部拡径部32から上部側にずれた位置の局部拡径部33を成形するとともに、局部拡径部31から隣接する局部拡径部32までの領域を整形し、局部拡径部32〜33までを滑らかに接続する。さらに、第3パンチ40Cよりも拡径量g4だけ加工径が大きい第4パンチ40Dにより、図8に示すように、局部拡径部33から上部側にずれた位置の局部拡径部34を成形するとともに、局部拡径部31〜33までの領域を整形し、局部拡径部31〜局部拡径部34が滑らかに接続された拡径部22を成形する。
【0057】
このように、拡径部成形工程では、拡径予定部29に、缶胴11の外周面を拘束せずに、パンチ40A〜40Dの加工径を段階的に大きくしながら複数回の拡径加工が施される。各拡径工程においては、缶胴11の外周面を拘束することなく、1回に加工される拡径量を小さくしているので、パンチ40A〜40Dを缶胴11の内部に進入させると、缶胴11の肉がパンチ40A〜40Dにより周方向に引き延ばされて径方向の外側に移動する一方で、パンチ40A〜40Dの缶軸O方向の移動に伴って、缶胴11が圧縮される方向に力を受けて、缶胴11の肉が缶軸O方向の下部23側に向かって寄せられ、缶胴11の高さを段階的に小さくしながら、拡径加工が行われる。そして、局部拡径部31〜34を下部側から上部側にかけて位置をずらしながら段階的に複数回に分けて成形することで、これらの局部拡径部31〜34が繋げられた拡径量の大きい拡径部22を成形できる。
【0058】
また、各拡径加工における1回の拡径量を1mm以下としているので、それぞれの拡径加工の際に、拡径に伴って缶胴11の肉が周方向に引き延ばされることによる減肉と、缶胴11の肉が缶軸O方向の下部23側に寄せられることによる増肉とのバランスを図ることができ、径方向の加工量(拡径量)に対応した缶軸O方向への缶胴11の肉の移動量(増肉量)を確保できる。すなわち、これら減肉と増肉とを相殺させることができ、加工部分の缶胴11の板厚が減肉されて加工部分に亀裂が発生することを回避できる。
【0059】
なお、1回の拡径加工において加工する缶胴11の拡径量が1mmを超えると、缶胴11の肉が周方向に引き延ばされることで減肉される量(減肉量)に対し、缶胴11の肉が缶軸O方向の下部23側に寄せられることで増肉する量(増肉量)が追いつかなくなる。すなわち、径方向の加工量(拡径量)に対し、缶胴11の高さ(ハイト)の縮小量が追いつかなくなり、缶胴11の加工部分が減肉されることにより、加工部分に亀裂が生じやすくなる。
なお、各拡径加工において缶胴11の肉を缶軸方向に移動させることで、缶胴11の減肉を抑制していることから、拡径部成形工程前よりも工程後の方が、缶の高さ(缶胴11の高さ)が小さくなる。
【0060】
また、本実施形態の例では、2回目以降の拡径加工に用いられるパンチ40B〜40Dの成形部42b〜42dは、拡径成形部48b〜48dの前方部分が、それまでの拡径加工に用いられたパンチ40A〜40Cの成形部42a〜42cを繋げた形状と同一の形状(つまり、拡径部22のうち、前の加工までに成形された部分と同一の形状)に設けられた整形部49b〜49dを含む形状に形成されており、各パンチ40B〜40Dにより新たな局部拡径部32〜34を成形する際に、予め加工された局部拡径部31〜33を整形できる。これにより、直前の拡径加工で加工された局部拡径部31〜33に後から加工される局部拡径部32〜34を滑らかに接続できる。このように、各パンチ40A〜40Dにより複数回の拡径加工を施す度に、それよりも前の拡径加工において成形された局部拡径部も合わせて整形できるので、缶胴11に圧痕が残されることを防止でき、局部拡径部31〜34が滑らかに繋げられた拡径部22を有する美粧性の高い缶20を製造できる。
【0061】
[ネッキング工程]
次いで、缶20にネッキング加工を施す。
本実施形態では、ネッキング用金型(縮径用金型)を用いて、缶胴11の開口端部11aに、滑らかな傾斜形状を備えたネック部13をネッキング加工により成形する。図示は省略するが、具体的には、缶20の缶胴11の内部及び外部にネッキング用金型(パンチとダイス)を嵌合し、パンチとダイスとの間で、缶胴11の開口端部11aに上方へ向かうに従い小径となる縮径加工を施して、ネック部13を成形する。また、この縮径加工により、ネック部13の上方に円筒状をなすフランジ予定部を成形する。
【0062】
なお、ネッキング工程では、上述のネッキング用金型を用いたネッキング加工に代えて、缶胴11の開口端部11aをスピンフローネッキング加工により成形してもよい。
スピンフローネッキング装置は、予めダイネッキングにより缶胴11の開口端部11a周辺にプレネックが施された缶20の缶底12を吸着支持するベースパッドと、該ベースパッドにより缶20を缶軸O回りに回転させながら缶20の開口端部11a周辺に嵌入されるスライドロールと、該スライドロールより小径で缶20の内部に挿入される内部ロールと、缶の外部に配置され缶20の径方向に往復移動可能に設けられる成形ロール(外部ロール)と、を備える。
このスピンフローネッキング装置により、缶20の缶胴11を内部ロールと成形ロールとの間に挟んで開口端部11aの上端に向けて縮径し、ネック部13及びフランジ予定部を成形する。
【0063】
[フランジング工程]
次いで、缶胴11の開口端部11aに位置するフランジ予定部をフランジング加工して、ネック部13の上端から径方向外側へ向けて突出するとともに周方向に沿って延びる環状のフランジ部15を成形する。
本実施形態では、フランジ予定部をスピンフロー成形によりフランジング加工して、フランジ部15を形成している。ただしこれに限定されるものではなく、スピンフロー成形に代えて、金型(パンチ)を用いてフランジ予定部をフランジング加工して、フランジ部15を形成してもよい。
【0064】
このようにして缶30が製造され、フランジング工程の後工程へと搬送される。この後工程では、缶30の内部に飲料等の内容物が充填され、フランジ部15に缶蓋が巻締めら
れて、缶体が密封される。
【0065】
以上説明した本実施形態に係る缶30の製造方法によれば、複数回の拡径加工を繰り返して各成形用金型(パンチ)40A〜40Dにより成形される局部拡径部31〜34を、下部23側から上部21側にかけて位置をずらしながら成形し、これらの局部拡径部31〜34を繋げて拡径部22を成形する。そして、缶胴11の外周面を何ら拘束することなく、拡径用金型40A〜40Dの加工径を段階的に大きくしながら、異なる加工径の拡径用金型40A〜40Dを順に用いて複数回の拡径加工を施す。このように、缶胴11の外周面を拘束せずに、また1回の拡径量g1〜g4(加工量)を小さくした拡径用金型40A〜40Dを缶胴11の内部に進入させることで、各拡径用金型40A〜40Dの移動に伴って、缶胴11の肉が径方向の外側(拡径方向)に移動して周方向に引き延ばされることによる減肉と、缶胴11の肉が缶軸O方向の下部側に移動して寄せられることによる増肉とのバランスを図ることができ、各拡径加工に伴って加工部分の缶胴11の板厚が減肉されることを抑制できる。そして、複数回の拡径加工により、局部拡径部31〜34を段階的に成形して、これらの局部拡径部31〜34を繋げた拡径部22を成形できる。このように、本実施形態に係る缶の製造方法によれば、加工部分にしわや亀裂等の損傷が生じることを回避でき、拡径加工を繰り返すことで、拡径量の大きな拡径部22を安定して成形できる。よって、大きく傾斜した拡径部や広範囲に傾斜した拡径部等、種々の形状の拡径部を成形できる。
【0066】
なお、1回の拡径加工において加工する缶胴の拡径量は、1mm以下で、好ましくは0.3mm以上で行うことが望ましい。1回の拡径量が1mmを超えると、缶胴の肉が周方向に引き延ばされることで減肉される量(減肉量)に対し、缶胴の肉が缶軸方向の下部側に寄せられることで増肉する量(増肉量)が追いつかなくなる。すなわち、径方向の加工量(拡径量)に対し、缶胴の高さ(ハイト)の縮小量が追いつかなくなり、缶胴の加工部分が延びて減肉されることにより、加工部分に亀裂が生じやすくなる。一方、1回の拡径量を1mm以下とすることで、径方向の加工量に対応した缶軸方向への缶胴の肉の移動量(増肉量)を確保できるので、缶胴の肉が周方向に引き延ばされることによる減肉と、缶胴の肉が缶軸方向の下部側に移動して寄せられることによる増肉とのバランスを図ることができ、加工部分の缶胴の板厚が減肉されて加工部分に亀裂が発生することを回避できる。したがって、缶胴の上部と下部との外径差を下部の外径に対して2%以上18%以下とする拡径量の大きな拡径部も安定して成形できる。なお、1回の拡径量が0.3mm未満では、スプリングバックが生じ易くなるため、拡径量は0.3mm以上に設定することが望ましい。
【0067】
また、本発明に係る缶の製造方法では、上述したように、縮径加工を伴わずに拡径加工のみで拡径部22を成形できるので、工程を簡略化できる。さらに、本発明に係る缶の製造方法では、缶胴11の肉を缶軸O方向の下部側に向かって寄せることにより、缶胴11の高さを小さくし(縮め)ながら拡径加工を行うことで、拡径加工に伴う缶胴の減肉を抑制できるので、缶胴のウォール厚を部分的に肉厚に設けた缶等を加工する際にも対応できる。また、缶胴11の下部23には拡径加工が施されないことから、缶胴11のウォール厚のうち、下部23の板厚(下部ウォール厚)を拡径予定部29や上部28よりも薄肉化して設けることもできる。
【0068】
なお、本発明は、上記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前述の実施形態では、拡径部22が形成された缶10は、その開口端部11aに缶蓋が巻締められる2ピース缶(缶体)に用いられるとしたが、これに限定されるものではなく、缶10は、その開口端部11aにキャップが螺着されるボトル缶(缶体)に用いられるものであってもよい。
【0069】
(第2実施形態)
図10は、本発明の第2実施形態に係る缶の製造方法において製造される缶を示す図1同様の半断面図である。図1と同様、実線で示す缶201が拡径部成形工程を経たネッキング工程前の缶、二点鎖線で示す缶301が缶201の開口端部11aにネッキング工程及びフランジング工程を施した後の缶である。以下、この第2実施形態及び第3実施形態において、第1実施形態と共通部分には同一符号を付して説明を簡略化する。
第1実施形態の製造方法で製造される缶20の缶胴111は、図1に示すように、拡径部22が、その下端部(下部23との接続部付近)では凹曲面部25に形成され、拡径部22の大部分は凸曲面部24により形成されている。これに対して、第2実施形態で製造される缶201は、図10に示すように、拡径部22の上端部(上部21との接続部付近)が凸曲部24に形成されているが、拡径部22の大部分は凹曲面部25により形成されている。また、第1実施形態の缶20よりも、拡径部22が長く形成されている。
【0070】
この第2実施形態においては、図11に示すように、拡径部22が長い分、拡径用金型として第1パンチ400Aから第5パンチ401Eの5つのパンチによって成形するものとして図示している。これらパンチ401A〜401Eは、第1実施形態のものと異なり係合軸部41を有していない。
最初の局部拡径部31の成形を行う第1パンチ401Aは、拡径成形部48aが凸面に形成されている。この拡径成形部48aはわずかな長さの範囲で形成されており、その先端は逃げ面44とされている。局部拡径部31は、第1パンチ401Aの拡径成形部48aによって上部が拡径され、その下部においては第1パンチ401Aが接触していないが、拡径成形部48aにより拡径された上部から下部にかけて全体として滑らかな凹状面に形成される。次に、この局部拡径部31に連続する局部拡径部32の成形を行う第2パンチ401Bは、第1パンチ401Aの拡径成形部48aに連続するように長い拡径成形部48bを有しており、長い範囲で局部拡径部32を成形する。この拡径成形部48bの成形面は、局部拡径部32に対応して上方に向かうに従い漸次拡径する凹面状に形成されている。
【0071】
次いで、この局部拡径部32に連続する局部拡径部33の成形を行う第3パンチ401Cは、その上部に、第2パンチ401Bの拡径成形部48bに連続するように拡径成形部48cが形成され、下部に、第2パンチ401Bにより成形された局部拡径部32を整形する整形部49cが設けられている。拡径成形部48cの成形面は、局部拡径部33に対応して上方に向かうに従い漸次拡径する凹面状に形成され、整形部49bの整形面は、第2パンチ401Bの拡径成形部48bの成形面と同一の形状に形成されている。
以降、第4パンチ401D、第5パンチ401Eは、第3パンチ401Cと同様の構成であり、順次、拡径成形部48d,48eによって局部拡径部33に連続する局部拡径部34,35を形成しながら、先に成形した局部拡径部33,34を整形部49d,49eによって整形することにより、拡径部22全体を成形する。
【0072】
(第3実施形態)
図12は、本発明の第3実施形態に係る缶の製造方法において製造される缶を示す図1同様の半断面図である。実線で示す缶202が拡径部成形工程を経たネッキング工程前の缶、二点鎖線で示す缶302が缶202の開口端部11aにネッキング工程及びフランジング工程を施した後の缶であることは、図1及び図10と同様である。
この第3実施形態で製造される缶202の缶胴112は、図12に示すように、拡径部22の上端部(上部21との接続部付近)は上部21との接続のため凸曲面部24に形成され、拡径部22の下端部(下部23との接続部付近)は下部23との接続のため凹曲面部25に形成されているが、これらの間の拡径部22の大部分は缶軸方向に沿う縦断面が直線状のテーパ面部26に形成されている。
【0073】
この第3実施形態においても、第2実施形態と同様、拡径用金型として第1パンチ402Aから第5パンチ402Eの5つのパンチによって拡径部22を成形するものとして図示している。これらパンチ402A〜402Eが係合軸部41を有していない点も第2実施形態と同様である。
また、最初の局部拡径部31の成形を行う第1パンチ402Aは、拡径成形部48aがわずかな長さの範囲で凸面に形成されており、その先端は逃げ面44とされている。局部拡径部31は、第1パンチ402Aの拡径成形部48aによって上部が拡径され、その下部においては第1パンチ402Aが接触していないが、拡径成形部48aにより拡径された上部から下部にかけて凹曲面部25が形成される。次に、この局部拡径部31に連続する局部拡径部32の成形を行う第2パンチ402Bは、第1パンチ402Aの拡径成形部48aに連続するように長い拡径成形部48bを有しており、長い範囲で局部拡径部32を成形する。この拡径成形部48bの成形面は、局部拡径部32に対応して上方に向かうに従い漸次拡径するテーパ面状に形成されている。
【0074】
そして、この局部拡径部32に連続する局部拡径部33の成形を行う第3パンチ402Cは、その上部に、第2パンチ402Bの拡径成形部48bに連続するように拡径成形部48cが形成され、下部に、第2パンチ402Bにより成形された局部拡径部32を整形する整形部49cが設けられている。拡径成形部48cの成形面は、局部拡径部33に対応して上方に向かうに従い漸次拡径するテーパ面状に形成され、整形部49bの整形面は、第2パンチ402Bの拡径成形部48bの成形面と同一の形状に形成されている。
以降、第4パンチ402D、第5パンチ402Eは、第3パンチ402Cと同様の構成であり、順次、拡径成形部48d,48eによって局部拡径部33に連続する局部拡径部34,35を形成しながら、先に成形した局部拡径部33,34を整形部49d,49eによって整形することにより、拡径部22全体を成形する。
【0075】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例及びなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0076】
次に、本実施形態の缶の製造方法について、その効果を確認するために実験を行った。
図4に示されるように、板厚0.475mmのアルミニウム合金材料(3104系アルミニウム合金)からなる板材を加工し、缶軸O方向の高さ(ハイト)が157mm、缶胴11の外径D0が57mm、缶胴11の拡径予定部29の下端から開口端部11aまでの間(拡径予定部29及び上部28)の上部ウォール厚が0.23mm、下部23の下部ウォール厚が0.16mmとされる有底円筒状の缶10を形成し、この缶10に対し、表1に示す条件で拡径部成形工程を施して、図1に示されるように、拡径部22を有する缶20を製造した。また、表1に示す各条件において、それぞれ50缶ずつ缶20を製造した。そして、製造された缶20について、缶胴11の下部23と上部21との外径差、缶の高さ(ハイト)、缶胴の板厚(上部ウォール厚)を測定するとともに、成形性の確認を行った。「成形性」の評価は、各条件において製缶された50缶の缶20の外観を観察し、クラック(亀裂)が1缶以上発生した場合を「×」、1缶もクラックが発生しなかった場合を「○」とした。
結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1の結果からわかるように、拡径量を1mm以下として複数回の拡径加工を施すことにより、缶胴を損傷させることなく、缶胴の下部と上部との拡径率(外径差)を下部の外径Dbに対して2%以上18%以下の範囲内で種々の大きさの拡径部を成形した缶を製造できる。
なお、全体の拡径率が18%を超える比較例1や、1回の拡径量が1mmを超える比較例2では、加工部分にクラックが生じた。
【符号の説明】
【0079】
10,20,30,201,202,301,302 缶
11,111,112 缶胴
11a 開口端部
12 缶底
13 ネック部
15 フランジ部
19 耳
21 上部
22 拡径部
23 下部
24 凸曲面部
25 凹曲面部
26 テーパ面部
28 上部
29 拡径予定部
31,32,33,34,35 局部拡径部
40A,401A,402A 第1パンチ(拡径用金型)
40B,401B,402B 第2パンチ(拡径用金型)
40C,401C,402C 第3パンチ(拡径用金型)
40D,401D,402D 第4パンチ(拡径用金型)
401E,402E 第5パンチ(拡径用金型)
41 係合軸部
42a,42b,42c,42d 成形部
43a 直線成形部
44 先端逃げ部
45 基端逃げ部
46a,46b,46c R面
48a,48b,48c,48d,48e 拡径成形部
49b,49c,49d,49e 整形部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13