(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内燃機関であるエンジンのクランク軸を回転させるように駆動する電動モータに電力を供給するバッテリの電圧を検出する電圧検出部と、前記電動モータを駆動するためのデューティを制御する制御部と、を備え、前記バッテリから電力を供給されて作動をするエンジンの始動装置において、
前記制御部は、前記電圧検出部の検出する前記電圧を監視しながら、前記電圧の低下による前記作動の停止が発生しないように、前記デューティを制御するものであって、
前記制御部は、前記作動の停止を発生させる作動停止電圧よりも高い閾値電圧を設定し、前記デューティで前記電動モータの駆動を開始した後に前記電圧検出部の検出する前記電圧が前記閾値電圧よりも高い場合には前記デューティを増加させる一方で、前記デューティで前記電動モータの前記駆動を開始した後に前記電圧検出部の検出する前記電圧が前記閾値電圧に等しい又は前記閾値電圧未満である場合には前記デューティを減少させることにより、前記デューティを増加又は減少させた後に前記電圧検出部の検出する前記電圧が前記閾値電圧に近づくように、前記デューティを制御することを特徴とするエンジンの始動装置。
前記制御部は、前記電動モータの駆動を開始する前に、前記電動モータを駆動するための一時的なデューティを発生させ、前記一時的なデューティを発生させていないときの前記電圧である第1の電圧と、前記一時的なデューティを発生させているときの前記電圧の極小値である第2の電圧と、に基づき、前記電動モータの前記駆動を開始させるときの前記デューティの初期値を設定することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの始動装置。
前記制御部は、前記デューティを発生させていないときの前記電圧である第3の電圧と、前記閾値電圧と、に基づき、前記電動モータの前記駆動を開始させるときの前記デューティの初期値を設定することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの始動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者の検討によれば、特許文献1の構成においては、具体的には、エンジンを始動する際にPWM出力のデューティを徐々に高くしてエンジンを始動させるという構成を有するものであるが、エンジンの始動に時間がかかる傾向がある。また、デューティの設定によっては、デューティを高くする過程、又はデューティ出力直後にマイクロコンピュータの電源電圧がマイクロコンピュータの最低動作電圧を下回ることによってマイクロコンピュータのリセットが発生する可能性がある。また、第2リレーコイルのPWM制御を行うため、PWM制御のデューティを細かく設定できず、第2リレーコイルの完動時間より長くする必要がある。
【0007】
本発明は、以上の検討経てなされたものであり、簡便な構成で、エンジンの良好な始動性を実現しながら、不要なリセットの発生を回避可能なエンジンの始動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するべく、本発明は、内燃機関であるエンジンのクランク軸を回転させるように駆動する電動モータに電力を供給するバッテリの電圧を検出する電圧検出部と、前記電動モータを駆動するためのデューティを制御する制御部と、を備え、前記バッテリから電力を供給されて作動をするエンジンの始動装置において、前記制御部は、前記電圧検出部の検出する前記電圧を監視しながら、前記電圧の低下による前記作動の停止が発生しないように、前記デューティを制御
するものであって、前記制御部は、前記作動の停止を発生させる作動停止電圧よりも高い閾値電圧を設定し、前記デューティで前記電動モータの駆動を開始した後に前記電圧検出部の検出する前記電圧が前記閾値電圧よりも高い場合には前記デューティを増加させる一方で、前記デューティで前記電動モータの前記駆動を開始した後に前記電圧検出部の検出する前記電圧が前記閾値電圧に等しい又は前記閾値電圧未満である場合には前記デューティを減少させることにより、前記デューティを増加又は減少させた後に前記電圧検出部の検出する前記電圧が前記閾値電圧に近づくように、前記デューティを制御することを第1の局面とする。
【0010】
また、本発明は、第1の局面に加えて、前記制御部は、前記電動モータの駆動を開始する前に、前記電動モータを駆動するための一時的なデューティを発生させ、前記一時的なデューティを発生させていないときの前記電圧である第1の電圧と、前記一時的なデューティを発生させているときの前記電圧の極小値である第2の電圧と、に基づき、前記
電動モータの前記駆動を開始させるときの前記デューティの初期値を設定することを第2の局面とする。
【0011】
また、本発明は、第
2の局面に加えて、前記第2の電圧は、前記作動の停止を発生させない電圧値を呈する所定の電圧であり、前記制御部は、前記第1の電圧と前記第2の電圧との差又は比率に基づき、前記初期値を設定することを第
3の局面とする。
【0012】
また、本発明は、第
1の局面に加えて、前記制御部は、前記デューティを発生させていないときの前記電圧である第3の電圧と、前記閾値電圧と、に基づき、前記電動モータの前記駆動を開始させるときの前記デューティの初期値を設定することを第
4の局面とする。
【0013】
また、本発明は、第
4の局面に加えて、前記制御部は、前記第3の電圧と前記閾値電圧との差又は比率が大きいほど、前記初期値を大きく設定することを第
5の局面とする。
【発明の効果】
【0014】
以上の本発明の第1の局面にかかるエンジンの始動装置によれば、制御部が、電圧検出部の検出するバッテリの電圧を監視しながら、バッテリの電圧の低下によるエンジンの始動装置の作動の停止が発生しないように、電動モータを駆動するためのデューティを制御
するものであって、制御部が、作動の停止を発生させる作動停止電圧よりも高い閾値電圧を設定し、デューティで電動モータの駆動を開始した後に電圧検出部の検出する電圧が閾値電圧よりも高い場合にはデューティを増加させる一方で、デューティで電動モータの駆動を開始した後に電圧検出部の検出する電圧が閾値電圧に等しい又は閾値電圧未満である場合にはデューティを減少させることにより、デューティを増加又は減少させた後に電圧検出部の検出する電圧が閾値電圧に近づくように、デューティを制御するものであるため、簡便な構成で、エンジンの良好な始動性を実現しながら、不要なリセットの発生を回避することができる。つまり、詳しくは、本発明の第1の局面にかかるエンジンの始動装置によれば、マイクロコンピュータのリセットをより確実に回避することができる。また、かかるリセットが発生しない範囲でデューティを最も高く設定することができるため、エンジンの始動性が向上する。また、エンジンのフリクションは、エンジンの行程や回転数、周囲環境等の要因によって変化するが、エンジンのフリクションの大きさに応じて電圧降下が発生するため、これらの要因による影響を補正係数として考慮する必要がなくなる。
【0016】
また、本発明の第2の局面にかかるエンジンの始動装置によれば、制御部が、電動モータの駆動を開始する前に、電動モータを駆動するための一時的なデューティを発生させ、一時的なデューティを発生させていないときのバッテリの電圧である第1の電圧と、一時的なデューティを発生させているときのバッテリの電圧の極小値である第2の電圧と、に基づき、
電動モータの駆動を開始させるときのデューティの初期値を設定するものであるため、不要なリセットの発生をより確実に回避することができる。
【0017】
また、本発明の第
3の局面にかかるエンジンの始動装置によれば、第2の電圧が、エンジンの始動装置の作動の停止を発生させない電圧値を呈する所定の電圧であり、制御部は、第1の電圧と第2の電圧との差又は比率に基づき、デューティの初期値を設定するものであるため、不要なリセットの発生をより簡便かつ確実に回避することができる。
【0018】
また、本発明の第
4の局面にかかるエンジンの始動装置によれば、制御部が、デューティを発生させていないときのバッテリの電圧である第3の電圧と、閾値電圧と、に基づき、電動モータの駆動を開始させるときのデューティの初期値を設定するものであるため、不要なリセットの発生をより確実に回避することができる。
【0019】
また、本発明の第
5の局面にかかるエンジンの始動装置によれば、制御部が、第3の電圧と閾値電圧との差又は比率が大きいほど、デューティの初期値を大きく設定するものであるため、不要なリセットの発生をより簡便かつ確実に回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態におけるエンジンの始動装置につき、詳細に説明する。
【0022】
〔構成〕
まず、
図1を参照して、本実施形態におけるエンジンの始動装置の構成について、詳細に説明する。
【0023】
図1は、本実施形態におけるエンジンの始動装置の構成を示す回路図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態におけるエンジンの始動装置100は、典型的には、自動二輪車等の車両に搭載され、二次電池である鉛バッテリ101から供給される電力で作動すると共に内燃機関であるエンジンを始動する三相交流発電機110の動作を制御してエンジンを始動するECU(Electronic Control Unit)130を備えている。
【0025】
なお、図中の符号102は、鉛バッテリ101の正極と負極との電圧差を鉛バッテリ101の電圧として検出する電圧センサを示し、符号103は、エンジンのクランク軸の回転角度を検出するクランク角センサを示している。また、二次電池としては、鉛バッテリ以外に、ニッケル水素バッテリやリチウムイオンバッテリも利用可能である。また、鉛バッテリ101の電圧は、鉛バッテリ101の正極と負極との電圧差を直接検出したものに限らず、三相交流発電機110への通電時の電圧降下量が検出することができるものであれば、鉛バッテリ101及び三相交流発電機110を含む電気回路における正極側と負極側との電圧差を検出したものであってもよい。
【0026】
三相交流発電機110は、その詳細な構成は省略するが、U相のコイル110a、V相のコイル110b及びW相のコイル110cから成る3相の発電出力発生用のコイル(固定子巻線)が巻回された固定子と、これらの各相のコイル110a、コイル110b及び110cに対応する界磁束発生用の永久磁石が各々装着されると共に固定子の外周側を周回するように配設された回転子と、を備え、かかる回転子がエンジンのクランク軸に連結される。
【0027】
U相のコイル110aは、AC/DCコンバータ131の一方のU相のスイッチング素子131aの他方の端子と、AC/DCコンバータ131の他方のU相のスイッチング素子131bの一方の端子と、に電気的に接続する接続端子111aを有している。V相のコイル110bは、AC/DCコンバータ131の一方のV相のスイッチング素子131cの他方の端子と、AC/DCコンバータ131の他方のV相のスイッチング素子131dの一方の端子と、に電気的に接続する接続端子111bを有している。また、W相のコイル110cは、AC/DCコンバータ131の一方のW相のスイッチング素子131eの他方の端子と、AC/DCコンバータ131の他方のW相のスイッチング素子131fの一方の端子と、に電気的に接続する接続端子111cを有している。
【0028】
ここで、三相交流発電機110から出力される出力電圧の経時的変化は、エンジンのクランク軸によって駆動される三相交流発電機110の回転子の回転に同期している。詳しくは、回転子の回転方向の位相(回転位相:回転角)の1周期を360°(回転子の1回転)とすると、回転子の回転位相の1周期に対して、U相のコイル110a及びそれに対応する永久磁石の位相は、V相のコイル110b及びそれに対応する永久磁石の位相よりも120°ほど早く、V相のコイル110b及びそれに対応する永久磁石の位相は、W相のコイル110c及びそれに対応する永久磁石の位相よりも120°ほど早くなるように設定されている。これに対応して、U相のコイル110aから出力される出力電圧は、V相のコイル110bから出力される出力電圧よりも120°ほど位相が進み、V相のコイル110bから出力される出力電圧は、W相のコイル110cから出力される出力電圧よりも120°ほど位相が進むように設定されている。
【0029】
ECU130は、マイクロコンピュータ等を含む演算処理装置であり、電力変換器であるAC(Alternate Current)/DC(Direct Current)コンバータ131、制御部132及びメモリ133を備えている。なお、AC/DCコンバータ131は、ECU130外にパワーモジュール等として設けられていてもよい。
【0030】
AC/DCコンバータ131は、典型的には、3相ブリッジ接続されたスイッチング素子131a、131b、131c、131d、131e及び131fを有し、制御部132からの制御信号に従って、スイッチング素子131a、131b、131c、131d、131e及び131fの各々をオン状態又はオフ状態にして三相交流発電機110から供給された3相交流電流を直流電流に変換すると共に、鉛バッテリ101に直流電流を供給する。また、AC/DCコンバータ131は、制御部132からの制御信号に従って、スイッチング素子131a、131b、131c、131d、131e及び131fの各々をオン状態又はオフ状態にして鉛バッテリ101から供給された直流電流を3相交流電流に変換すると共に、三相交流発電機110に三相交流電流を供給するものであり、かかる場合には、AC/DCコンバータ131は、DC/ACコンバータとして機能する。なお、スイッチング素子131a、131b、131c、131d、131e及び131fは、典型的には各々トランジスタであり、
図1中では、一例として、N型のMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)として各々示している。
【0031】
具体的には、AC/DCコンバータ131は、U相、V相及びW相の3相の各相に対して、一対のスイッチング素子131a、131b、131c、131d、131e及び131fを各々対応して有している。
【0032】
つまり、AC/DCコンバータ131では、U相の一対のスイッチング素子131aとスイッチング素子131bとが電気的に接続されており、スイッチング素子131aがオン状態で、且つ、スイッチング素子131bがオフ状態の場合にU相の出力電圧をハイレベルにし、スイッチング素子131aがオフ状態で、且つ、スイッチング素子131bがオン状態の場合にU相の出力電圧をローレベルにする。
【0033】
また、AC/DCコンバータ131では、V相の一対のスイッチング素子131cとスイッチング素子131dとが電気的に接続されており、スイッチング素子131cがオン状態で、且つ、スイッチング素子131dがオフ状態の場合にV相の出力電圧をハイレベルにし、スイッチング素子131cがオフ状態で、且つ、スイッチング素子131dがオン状態の場合にV相の出力電圧をローレベルにする。
【0034】
更に、AC/DCコンバータ131では、W相の一対のスイッチング素子131eとスイッチング素子131fとが電気的に接続されており、スイッチング素子131eがオン状態、且つ、スイッチング素子131fがオフ状態の場合にW相の出力電圧をハイレベルにし、スイッチング素子131eがオフ状態、且つ、スイッチング素子131fがオン状態の場合にW相の出力電圧をローレベルにする。
【0035】
ここで、スイッチング素子131aは、制御部132に電気的に接続された制御端子と、鉛バッテリ101の高電位側に電気的に接続された一方の入力端子と、スイッチング素子131b及び三相交流発電機110の接続端子111aに電気的に接続された他方の入力端子と、を有している。かかるスイッチング素子131aは、その制御端子に対して制御部132から印加される所定の制御信号に従って、オン/オフ動作し、それがオン状態のときは、一方の入力端子から他方の入力端子へ電流が流れる。
【0036】
また、スイッチング素子131bは、制御部132に電気的に接続された制御端子と、スイッチング素子131a及び三相交流発電機110の接続端子111aに電気的に接続された一方の入力端子と、鉛バッテリ101の低電位側に電気的に接続された他方の入力端子と、を有している。かかるスイッチング素子131bは、その制御端子に対して制御部132から印加される所定の制御信号に従って、オン/オフ動作し、それがオン状態のときには、一方の入力端子から他方の入力端子へ電流が流れる。
【0037】
また、スイッチング素子131cは、制御部132に電気的に接続された制御端子と、鉛バッテリ101の高電位側に電気的に接続された一方の入力端子と、スイッチング素子131d及び三相交流発電機110の接続端子111bに電気的に接続された他方の入力端子と、を有している。かかるスイッチング素子131cは、その制御端子に対して制御部132から印加される所定の制御信号に従って、オン/オフ動作し、それがオン状態のときには、一方の入力端子から他方の入力端子へ電流が流れる。
【0038】
また、スイッチング素子131dは、制御部132に電気的に接続された制御端子と、スイッチング素子131c及び三相交流発電機110の接続端子111bに電気的に接続された一方の入力端子と、鉛バッテリ101の低電位側に電気的に接続された他方の入力端子と、を有している。かかるスイッチング素子131dは、その制御端子に対して制御部132から印加される所定の制御信号に従って、オン/オフ動作し、それがオン状態のときには、一方の入力端子から他方の入力端子へ電流が流れる。
【0039】
また、スイッチング素子131eは、制御部132に電気的に接続された制御端子と、鉛バッテリ101の高電位側に電気的に接続された一方の入力端子と、スイッチング素子131f及び三相交流発電機110の接続端子111cに電気的に接続された他方の入力端子と、を有している。かかるスイッチング素子131eは、その制御端子に対して制御部132から印加される所定の制御信号に従って、オン/オフ動作し、それがオン状態のときには、一方の入力端子から他方の入力端子へ電流が流れる。
【0040】
更に、スイッチング素子131fは、制御部132に電気的に接続された制御端子と、スイッチング素子131e及び三相交流発電機110の接続端子110cに電気的に接続された一方の入力端子と、鉛バッテリ101の低電位側に電気的に接続された他方の入力端子と、を有している。かかるスイッチング素子131fは、その制御端子に対して制御部132から印加される所定の制御信号に従って、オン/オフ動作し、それがオン状態のときには、一方の入力端子から他方の入力端子へ電流が流れる。
【0041】
制御部132は、メモリ133から必要な制御プログラム及び制御データを読み出して、制御プログラムを実行することによって、ECU130全体の動作を制御する。制御部132は、電圧センサ102及びクランク角センサ103に接続され、電圧センサ102によって検出された鉛バッテリ101の電圧を示す電気信号及びクランク角センサ103によって検出されたクランク軸の回転角度を示す電気信号が入力されるように構成されている。また、制御部132は、電圧検出部132aを機能ブロックとして備えている。
【0042】
更に、かかる制御部132は、詳細は後述するデューティ決定処理及びエンジン始動処理を実行するものであり、かかる処理においては、電圧検出部132aが、電圧センサ102を介して鉛バッテリ101の電圧を検出し、制御部132が、電圧検出部132aの検出する鉛バッテリ101の電圧を監視しながら、その電圧の低下によるエンジンの始動装置100の作動の停止が発生しないように、三相交流発電機110を駆動するためのデューティを制御するものである。
【0043】
メモリ133には、必要な制御プログラム及び制御データが記憶されている。
【0044】
このような構成を有するエンジンの始動装置100では、三相交流発電機110を用いてエンジンのクランク軸を回転させることによりエンジンを始動する際、制御部132が以下に示すデューティ決定処理及びエンジン始動処理を実行することにより、簡便な構成で、エンジンの良好な始動性を実現しながら、不要なリセットの発生を回避する。以下、
図2(a)及び
図2(b)に示すフローチャート、並びに
図3に示すタイミングチャートを参照して、デューティ決定処理及びエンジン始動処理を実行する際の制御部132の動作について説明する。
【0045】
図2(a)は、本実施形態におけるエンジンの始動装置100が実行するデューティ決定処理の流れの一例を示すフローチャートであり、
図2(b)は、本実施形態におけるエンジンの始動装置100が実行するエンジン始動処理の流れの一例を示すフローチャートである。また、
図3は、本実施形態におけるエンジンの始動装置100が実行するデューティ決定処理及びエンジン始動処理の流れの一例を説明するためのタイミングチャートである。
【0046】
〔デューティ決定処理〕
図2(a)に示すデューティ決定処理は、車両のイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り換えられてエンジンの始動装置100のECU130が稼働したタイミングで開始となり、デューティ決定処理はステップS1の処理に進む。
【0047】
ステップS1の処理では、電圧検出部132aが、電圧センサ102を介してデューティ(駆動信号電圧)出力前の鉛バッテリ101の電圧を第1の電圧V0として検出し、検出された第1の電圧V0の値をメモリ133中に記憶する等して保持する(
図3に示す時刻t=t1)。これにより、ステップS1の処理は完了し、デューティ決定処理はステップS2の処理に進む。
【0048】
ステップS2の処理では、制御部132が、鉛バッテリ101の電力を利用して三相交流発電機110(電動モータ)の駆動を開始することによりクランク軸を正方向に回転させるためのデューティであって、リセットが発生しない程度の一時的なデューティ(低デューティであり、
図3に示す例では基本デューティの5%のデューティ)の出力を開始する(
図3に示す時刻t=t2)。具体的には、制御部132が、かかるデューティで三相交流発電機110の駆動を開始することを指示する制御信号をAC/DCコンバータ131に出力する。これにより、ステップS2の処理は完了し、デューティ決定処理はステップS3の処理に進む。
【0049】
ステップS3の処理では、電圧検出部132aが、電圧センサ102を介して一時的なデューティの出力期間中(
図3に示す時刻t=t2から時刻t=t3までの期間中)における鉛バッテリ101の電圧の極小値を第2の電圧V1として検出する。ここで、かかる第2の電圧V1は、エンジンの始動装置100のECU130中のマイクロコンピュータの作動を停止させる作動停止電圧Vrよりも大きな電圧値、換言すれば、エンジンの始動装置100のECU130中のマイクロコンピュータの作動の停止を発生させない電圧値である。これにより、ステップS3の処理は完了し、デューティ決定処理はステップS4の処理に進む。なお、このように一時的なデューティの出力期間中における鉛バッテリ101の電圧の極小値を求める代わりに、その期間中の最小値を求めてもよい。
【0050】
ステップS4の処理では、制御部132が、第1の電圧V0と第2の電圧V1との差を電圧落ち込み量ΔVとして計算する。これにより、ステップS4の処理は完了し、デューティ決定処理はステップS5の処理に進む。なお、このように第1の電圧V0と第2の電圧V1との差を電圧落ち込み量ΔVとして計算する代わりに、第1の電圧V0と第2の電圧V1との比率を電圧落ち込み量ΔVとして計算してもよい。
【0051】
ステップS5の処理では、制御部132が、第1の電圧V0からエンジン始動時の基本デューティを決定し、電圧落ち込み量ΔVから鉛バッテリ101の劣化具合に合わせた補正比率を算出する。そして、制御部132は、基本デューティに補正比率を乗じた値をエンジン始動時のデューティの初期値(始動開始デューティであり、
図3に示す例では基本デューティの80%のデューティ)として算出し、かかる初期値を決定する。これにより、ステップS5の処理は完了し、今回の一連のデューティ決定処理は終了する。
【0052】
〔エンジン始動処理〕
図2(b)に示すエンジン始動処理は、デューティ決定処理が終了したタイミングで開始となり、エンジン始動処理はステップS11の処理に進む。
【0053】
ステップS11の処理では、制御部132が、デューティ決定処理において算出された始動開始デューティにて三相交流発電機110を駆動するためのPWM出力を開始する(
図3に示す時刻t=t5)。具体的には、制御部132が、かかるデューティで三相交流発電機110の駆動を開始することを指示する制御信号をAC/DCコンバータ131に出力する。これにより、ステップS11の処理は完了し、エンジン始動処理はステップS12の処理に進む。
【0054】
ステップS12の処理では、制御部132が、クランク角センサ103の出力信号に基づいてエンジンの回転数が始動時回転数に到達しているか否かを判別することにより、エンジンが始動済みであるか否かを判別する。判別の結果、エンジンが始動済みである場合(ステップS12:Yes、
図3に示す時刻t=t8以後)、制御部132は、エンジン始動処理をステップS17の処理に進める。一方、エンジンが始動済みでない場合には(ステップS12:No)、制御部132は、エンジン始動処理をステップS13の処理に進める。
【0055】
ステップS13の処理では、電圧検出部132aが、電圧センサ102を介して現在の鉛バッテリ101の電圧を電源電圧として検出する。これにより、ステップS13の処理は完了し、エンジン始動処理はステップS14の処理に進む。
【0056】
ステップS14の処理では、制御部132が、ステップS13の処理において検出された電源電圧の値がエンジンの始動装置100の作動の停止を発生させる作動停止電圧Vrの値よりも高い値に設定されたリセット回避閾値電圧Vtより高いか否かを判別する。判別の結果、電源電圧がリセット回避閾値電圧Vtより高い場合(ステップS14:Yes)、制御部132は、エンジン始動処理をステップS15の処理に進める。一方、電源電圧がリセット回避閾値電圧Vtより高くない場合には(ステップS14:No)、制御部132は、エンジン始動処理をステップS16の処理に進める。
【0057】
ステップS15の処理では、制御部132が、電源電圧がリセット回避閾値電圧Vtに近づくように三相交流発電機110を駆動するためのデューティを増加させる(
図3に示す時刻t=t7から時刻t=t8までの期間)。これにより、ステップS15の処理は完了し、エンジン始動処理はステップS12の処理に戻る。
【0058】
ステップS16の処理では、制御部132が、電源電圧がリセット回避閾値電圧Vtに近づくように三相交流発電機110を駆動するためのデューティを減少させる(
図3に示す時刻t=t6から時刻t=t7までの期間)。これにより、ステップS16の処理は完了し、エンジン始動処理はステップS12の処理に戻る。
【0059】
ステップS17の処理では、制御部132が、三相交流発電機110を駆動するためのデューティの出力を停止する。これにより、ステップS17の処理は完了し、今回の一連のエンジン始動処理は終了する。
【0060】
以上の説明から明らかなように、本実施形態におけるエンジンの始動装置100では、制御部132が、電圧検出部132aの検出する鉛バッテリ101の電圧を監視しながら、鉛バッテリ101の電圧の低下によるエンジンの始動装置100の作動の停止が発生しないように、三相交流発電機110を駆動するためのデューティを制御するので、簡便な構成で、エンジンの良好な始動性を実現しながら、不要なリセットの発生を回避することができる。つまり、詳しくは、本実施形態におけるエンジンの始動装置100によれば、マイクロコンピュータのリセットをより確実に回避することができる。また、リセットが発生しない範囲でデューティを最も高く設定することができるため、エンジンの始動性が向上する。また、エンジンのフリクションは、エンジンの行程や回転数、周囲環境等の要因によって変化するが、エンジンのフリクションの大きさに応じて電圧降下が発生するため、これらの要因による影響を補正係数として考慮する必要がなくなる。
【0061】
また、本実施形態におけるエンジンの始動装置100では、制御部132が、エンジンの始動装置100の作動の停止を発生させる作動停止電圧Vrよりも高いリセット回避閾値電圧Vtを設定し、電圧検出部132aの検出する電圧がリセット回避閾値電圧Vtに近づくように、デューティを制御するので、簡便な構成で、エンジンの良好な始動性を実現しながら、不要なリセットの発生を確実に回避することができる。
【0062】
また、本実施形態におけるエンジンの始動装置100では、制御部132が、三相交流発電機110の駆動を開始させる前に、三相交流発電機110を駆動するための一時的なデューティを発生させ、一時的なデューティを発生させていないときの電圧である第1の電圧V0と、一時的なデューティを発生させているときの電圧の極小値である第2の電圧V1と、に基づき、三相交流発電機110の駆動を開始させるときのデューティの初期値を設定するので、不要なリセットの発生をより確実に回避することができる。
【0063】
また、本実施形態におけるエンジンの始動装置100では、第2の電圧V1が、作動の停止を発生させない電圧値を呈する所定の電圧であり、制御部132は、第1の電圧V0と第2の電圧V1との差又は比率に基づき、初期値を設定するので、不要なリセットの発生をより簡便かつ確実に回避することができる。
【0064】
〔変形例〕
さて、本実施形態におけるエンジンの始動装置100が実行するデューティ決定処理及びエンジン始動処理については、種々の変形例が考えられる。そこで、以下、
図4をも参照して、エンジンの始動装置100が実行するデューティ決定処理及びエンジン始動処理の変形例について説明する。
【0065】
図4は、本実施形態におけるエンジンの始動装置100が実行するデューティ決定処理及びエンジン始動処理の変形例の流れを説明するためのタイミングチャートである。
【0066】
図4に示すように、本変形例のデューティ決定処理においては、制御部132は、第1の電圧V0とリセット回避閾値電圧Vtとに基づき、エンジン始動時のデューティの初期値(始動開始デューティであり、
図4に示す例では基本デューティの70%のデューティ)を設定する。これにより、不要なリセットの発生をより確実に回避することができる。また、この場合、制御部132は、第1の電圧V0とリセット回避閾値電圧Vtとの差又は比率が大きいほど、始動開始デューティを大きく設定することが望ましい。これにより、不要なリセットの発生をより簡便かつ確実に回避することができる。なお、始動開始デューティについては、上述した方法で決定するのではなく、リセットが発生しない程度の低いデューティから始動を開始してデューティを徐々に上げるようにしてもよい。
【0067】
そして、本変形例では、このように設定した始動開始デューティを用いて、制御部132は、
図2(b)に示すエンジン始動処理を実行することになる。
【0068】
なお、本発明は、構成要素の種類、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、かかる構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。