特許第6948854号(P6948854)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948854
(24)【登録日】2021年9月24日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】錘片取替装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/00 20060101AFI20210930BHJP
   B66B 7/00 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   B66B11/00 B
   B66B7/00 G
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-125823(P2017-125823)
(22)【出願日】2017年6月28日
(65)【公開番号】特開2019-6589(P2019-6589A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 英嗣
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−177950(JP,A)
【文献】 実開昭60−033583(JP,U)
【文献】 特開2000−344445(JP,A)
【文献】 特開平07−125969(JP,A)
【文献】 特開平06−247679(JP,A)
【文献】 特開2010−006482(JP,A)
【文献】 特開2015−168571(JP,A)
【文献】 特開平08−198577(JP,A)
【文献】 特開平08−245159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/00
B66B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターにおいて、積み重ねられた複数の棒状の錘片と、前記複数の錘片を保持すると共に前記錘片を抜挿するための切欠を有する錘枠とを含む釣合錘から前記錘片を取り替えるときに用いられる錘片取替装置であって、
前記錘枠の上側に取り付け可能であり、高さ方向の下方側に取付部を有する紐状部材を巻き上げる巻上機と、
前記高さ方向の下側端部に前記錘片の底面を係止する係止部を含み、前記錘片の幅方向の両側を挟持する一対の挟持アームと、
前記取付部が着脱可能に取り付けられる被取付部、及び人が把持可能な把持部を含み、前記取付部と前記一対の挟持アームの夫々の前記高さ方向の上側部分を連結する取手部材と、を備え、
前記一対の挟持アームのうちの少なくとも一方における前記一対の挟持アームの他方側とは反対側の外側には、工具の先端側が挿入可能であると共に前記高さ方向の上側が開口する工具挿入室が設けられる、錘片取替装置。
【請求項2】
エレベーターにおいて、積み重ねられた複数の棒状の錘片と、前記複数の錘片を保持すると共に前記錘片を抜挿するための切欠を有する錘枠とを含む釣合錘から前記錘片を取り替えるときに用いられる錘片取替装置であって、
前記錘枠の上側に取り付け可能であり、高さ方向の下方側に取付部を有する紐状部材を巻き上げる巻上機と、
前記高さ方向の下側端部に前記錘片の底面を係止する係止部を含み、前記錘片の幅方向の両側を挟持する一対の挟持アームと、
前記取付部が着脱可能に取り付けられる被取付部、及び人が把持可能な把持部を含み、前記取付部と前記一対の挟持アームの夫々の前記高さ方向の上側部分を連結する取手部材と、を備え
前記把持部は、前記高さ方向に略直交する第1直交方向に略延在し、前記高さ方向及び前記第1直交方向の両方に直交する第2直交方向に略延在する貫通孔を有し、
前記取手部材は、
前記一対の挟持アームの夫々の前記高さ方向の上側が取り付けられ、前記把持部よりも前記高さ方向の下方側に位置して前記把持部に略平行に延在するアーム取付部と、
前記把持部の延在方向の両端部と前記アーム取付部の延在方向の両端部とを連結し、前記高さ方向に延在する一対の連結部と、を含み、
前記一対の挟持アームの夫々は、前記アーム取付部が通過する貫通孔を前記高さ方向の上側に有し、
前記アーム取付部は、中実の丸棒形状を有し、
前記一対の挟持アームの夫々は、前記アーム取付部に対して回転自在に連結され、
前記一対の挟持アームは、前記アーム取付部に対する前記釣合錘の幅方向の連結位置が互いに異なる、錘片取替装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の錘片取替装置において、
前記係止部は、先端側が先細りになっている2つの楔状部材を含み、
前記一対の挟持アームの夫々は、本体部と、前記楔状部材とを含み、
前記楔状部材は、前記先端側とは反対側が前記本体部の前記高さ方向の下側に前記本体部に対して回動可能に取り付けられ、
前記本体部は、前記楔状部材が前記錘片を係する係止位置よりも前記高さ方向の下側に回動することを禁止するストッパを有する、錘片取替装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の錘片取替装置において、
前記一対の挟持アームの一方に一端部が取り付けられ、前記一対の挟持アームの他方に他端部が取り付けられた付勢部材を備える、錘片取替装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の錘片取替装置において、
前記一対の挟持アームの夫々は、雄ねじが設けられた軸部を含み、
更に、上記各軸部の前記雄ねじに螺合して前記高さ方向に移動可能なナットを備える、錘片取替装置。
【請求項6】
エレベーターにおいて、積み重ねられた複数の棒状の錘片と、前記複数の錘片を保持すると共に前記錘片を抜挿するための切欠を有する錘枠とを含む釣合錘から請求項1乃至のいずれか1つに記載の錘片取替装置を用いて前記錘片を取り替える錘片取替方法であって、
前記錘片取替装置の前記巻上機を前記錘枠の上側か又は昇降路の所定位置に取り付ける装置取付ステップと、
前記錘片取替装置の前記一対の挟持アームの係止部を、前記釣合錘に収容されている複数の前記錘片のうちで最上方に位置する錘片の底面に係止すると共に、前記一対の挟持アームでその錘片をその錘片の幅方向の両側から挟持する錘片挟持ステップと、
前記錘片挟持ステップの後、前記巻上機で前記紐状部材を引き上げることで前記一対の挟持アームが保持している前記錘片を上方に引き上げる錘片引上ステップと、
前記錘片引上ステップの後で、前記錘片が前記釣合錘の前記切欠よりも下方に位置している状態で前記巻上機による前記紐状部材の引上げを停止する錘片引上停止ステップと、
前記錘片引上停止ステップの後、人が前記把持部を持って前記一対の挟持アームを引き上げた後、前記錘片を、前記切欠を用いて前記釣合錘の前記錘枠から取り外す錘片取外ステップと、
を含む錘片取替方法。
【請求項7】
請求項に記載の錘片取替方法において、
前記錘片取外ステップの後、前記巻上機を前記取手部材から取り外す巻上機取外ステップと、
前記錘枠から取り外された1つの前記錘片の底面に前記係止部を係止させて前記一対の挟持アームで前記1つの錘片を前記幅方向の両側から挟持するか、又は前記錘枠から取り外された2以上の前記錘片が積み重ねられた状態で高さ方向の最下方に位置する前記錘片の底面に前記係止部を係止させて前記一対の挟持アームで前記2以上の錘片を前記幅方向の両側から挟持する錘片挟持ステップと、
前記巻上機取外ステップ及び前記錘片挟持ステップの後、人が前記取手部材の前記把持部を掴むことによって、前記一対の挟持アームで挟持された前記1つの錘片又は前記一対の挟持アームで挟持された前記2以上の錘片を移動させる、錘片移動ステップと、
を含む、錘片取替方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの釣合錘から錘片を取り替えるときに用いられる錘片取替装置に関する。また、本発明は、エレベーターの釣合錘から錘片を取り替える錘片取替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベーターの釣合錘としては、特許文献1に記載されているものがある。この釣合錘は、錘枠と、複数の棒状の錘片とを含み、錘枠は、一対のたて枠と、上枠と、下枠を有する。一対のたて枠は、釣合錘の幅方向に間隔をあけて配置され、上枠は、一対のたて枠の上端部同士を連結し、下枠は、一対のたて枠の下端部同士を連結する。
【0003】
複数の棒状の錘片は、釣合錘の高さ方向に積み重ねられた状態で錘枠に保持される。各錘片は、一方のたて枠と他方のたて枠との間を幅方向に延在する。各錘片の一端部は一方のたて枠に保持され、各錘片の他端部は他方のたて枠に保持される。
【0004】
釣合錘には、枠バンドが取り付けられる。枠バンドは、環状構造を有し、釣合錘の高さ方向の中央部付近に配設される。枠バンドは、一対のたて枠及び錘片を取り囲むようにたて枠に取り付けられる。枠バンドは、釣合錘の幅方向の剛性を高め、釣合錘を幅方向に補強するために設けられる。枠バンドは、地震等でたて枠に衝撃が加わっても、たて枠が幅方向外側に大きく広がらないようにし、錘片が落下することを抑制するために設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−125311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
釣合錘の構造によっては、釣合錘に枠バンドを取り付ける際に幾つかの錘片を取り替える必要が生じる。以下、図7図11を用いて、枠バンド7の取り付けの際に幾つかの錘片3の取り替えが必要になる釣合錘10の構造、及びその釣合錘10に対する枠バンド7の取り付けの際に生じる問題点について説明する。
【0007】
なお、釣合錘10は、幾つかの錘片を取り換えなければ枠バンド7を取り付けできない釣合錘であり、後で実施形態の説明の際にも用いる。また、実施形態での記載も含め以下の説明及び図面で、X方向は、所定位置に取り付けられた錘片取替装置の奥行き方向を表し、釣合錘10の奥行き方向に一致する。また、Y方向は、所定位置に取り付けられた錘片取替装置の幅方向を表し、釣合錘10の幅方向に一致する。また、Z方向は、所定位置に取り付けられた錘片取替装置の高さ方向を表し、釣合錘10の高さ方向に一致する。X方向、Y方向、及びZ方向は、互いに直交する。また、本明細書では、錘片3が取り換えられる前の釣合錘を、釣合錘10と表現し、幾つかの錘片3が別の錘片33に取り換えられて、枠バンド7が取り付け可能な状態の釣合錘を、錘片取替後釣合錘11と表現する。また、枠バンド7が取り付けられた錘片取替後釣合錘11をバンド付釣合錘1と表現する。
【0008】
図7は、釣合錘10を正面から見たときの正面図であり、図8は、釣合錘10を図7に矢印Dで示す下方向からみたときの図である。また、図9は、枠バンド7が取り付け可能になる錘片33と、たて枠21a,21bとの位置関係を示す平面図であり、図10は、錘片取替後釣合錘11を正面から見たときの正面図である。また、図11は、バンド付釣合錘1を正面から見たときの正面図である。なお、バンド付釣合錘1の構造を分かり易く説明するため、図8では、以下に説明する下枠23の図示を省略する。
【0009】
図7に示すように、釣合錘10は、錘枠2、複数の棒状の錘片3、綱車4、4つのガイドシュー5、及び2つの外れ止め6を含む。錘枠2は、一対のたて枠21a,21bと、上枠22と、下枠23を有する。一対のたて枠21a,21bは、Y方向に間隔をあけて配置され、上枠22は、一対のたて枠21a,21bの上端部同士を連結し、下枠23は、一対のたて枠21a,21bの下端部同士を連結する。複数の棒状の錘片3は、Z方向に積み重ねられた状態で錘枠2に保持される。詳しくは、各錘片3は、一方のたて枠21aと他方のたて枠21bとの間をY方向に延在する。各錘片3の一端部は一方のたて枠21aに離脱不可能に保持され、各錘片3の他端部は他方のたて枠21bに離脱不可能に保持される。錘片3がたて枠21a,21bに対して離脱不可能になる構造については、後で説明する。
【0010】
綱車4は、上枠22に回動自在に取り付けられる。例えば、綱車4は、上枠22の裏側から昇降路奥側(奥側の壁側)にX方向に突出する円柱状の軸部(図示せず)に軸受を介して回転自在に取り付けられる。綱車4に巻回されたワイヤーロープ9の張力に基づいて釣合錘10がZ方向に昇降する。なお、綱車が錘枠に取り付けられない構成でもよく、ワイヤーロープの先端側が錘枠に固定される構成でもよい。
【0011】
ガイドシュー5は、錘枠2の四隅に取り付けられ、外れ止め6は、錘枠2のZ方向中央付近のY方向の両端部に取り付けられる。Y方向一方側に配置されるガイドシュー5は、釣合錘10のY方向一方側に位置してZ方向に延在する一方側レール8aに嵌合し、Y方向他方側に配置されるガイドシュー5は、釣合錘10のY方向他方側に位置してZ方向に延在する他方側レール8bに嵌合する。外れ止め6は、Z方向中央部付近で釣合錘10がレール8a,8bから外れることを抑制する。ガイドシュー5がレール8a,8bに案内されることで釣合錘10がY方向に大きく振れずにZ方向に昇降可能になる。
【0012】
図8に示すように、たて枠21a,21bは、XY平面に平行な切断面でコ字形状を有し、たて枠21a,21bのコ字の開口はY方向の錘片3側に向けられている。錘片3は、Y方向の両側にY方向外方に突出する突出部3a,3bを有し、突出部3aは、断面コ字状のたて枠21aの凹部内に配設され、突出部3bは、断面コ字状のたて枠21bの凹部内に配設される。係る構成によって、錘片3が錘枠2から離脱できなくなる。
【0013】
たて枠21a,21bのX方向長さ(幅方向長さ)は、錘片3のX方向長さ(幅方向長さ)よりも短くなっている。他方、後で詳述するが、枠バンド7(図11参照)は、鉄板等の金属製の板を環状に配設した構造を有し、たて枠21a,21bにおいてX方向両側に位置してY方向に延在する側壁部28a,28b,29a,29bにボルトにより取り付けられる。よって、図8に示す錘片3は、たて枠21a,21bよりもX方向に突出しているため、枠バンド7が、たて枠21a,21bに取り付けできない。そのため、枠バンド7が取り付けられるZ方向範囲(高さ範囲)に存在する錘片3は、X方向長さ(幅方向長さ)がたて枠21a,21bのX方向長さよりも短い錘片33(図9参照)に取り替えられる必要がある。
【0014】
従来、枠バンド7の取り付けZ方向範囲にある錘片3の錘片33への交換は、次のように行われる。詳しくは、図7に示すように、Y方向一方側にあるたて枠21aには、Z方向上方側にY方向内側に開口する切欠34が設けられる。切欠34は、YZ平面に平行な切断面で矩形の形状を有し、図7に示す正面図で、Y方向に延在する一対の縁と、Z方向に延在する1つの縁とを有する。切欠34のZ方向長さは、棒状の錘片3,33の高さよりも長い。
【0015】
取り替えられる錘片3は、一人又は二人の作業員によって切欠34形成高さまで持ち上げられ、その後、切欠34を用いて錘枠2から取り外される。枠バンド7の取り付け位置の下端よりも上方にある部分を含む錘片3は、全て外される。続いて、幅が短い錘片33(図9参照)を、切欠34を用いて錘枠2内に収容する。複数の錘片33を連続して錘枠2内に収容することによって枠バンド7のZ方向存在範囲に配置される錘片の全てが錘片33で構成されるようにする。その後、例えば、下端位置が枠バンド7のZ方向存在範囲の上端よりもZ方向上方に位置する全ての錘片を錘片3で構成するように、1以上の錘片3を、切欠34を用いて錘枠2内に収容する。このようにして、図10に示す錘片取替後釣合錘11を構成し、所定数の錘片3を錘片33へ交換する作業を終了する。
【0016】
その後、図11に示すように、錘片取替後釣合錘11に枠バンド7を取り付ける。詳述しないが、枠バンド7は、環状構造を有し、錘片取替後釣合錘11におけるZ方向の中央部付近に配設される。錘枠2は、一対のたて枠21a,21b及び錘片33(図10参照)を取り囲むように配設される。
【0017】
上述の複数の錘片3の錘片33への取り替えに関し、次の問題が存在する。すなわち、1つの錘片3は、重量物であり、重量が30kg程度にまで達するものまである。更には、作業員は、枠バンド7の取り付けの際に複数個の錘片3の取り替えを強いられる。したがって、錘片3の持ち上げで、作業員が重労働を強いられる。よって、作業員が、錘片3の取替作業の労力を軽減できれば大きな意義がある。更には、枠バンド7の取り付けで外された錘片3をより容易かつ円滑に現場から撤去できると好ましい。
【0018】
そこで、本発明の目的は、錘片取替の労力を軽減でき、外された錘片の現場からの撤去も容易かつ円滑に実行できる錘片取替装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、本開示の錘片取替装置は、エレベーターにおいて、積み重ねられた複数の棒状の錘片と、前記複数の錘片を保持すると共に前記錘片を抜挿するための切欠を有する錘枠とを含む釣合錘から前記錘片を取り替えるときに用いられる錘片取替装置であって、前記錘枠の上側に取り付け可能であり、高さ方向の下方側に取付部を有する紐状部材を巻き上げる巻上機と、前記高さ方向の下側端部に前記錘片の底面を係止する係止部を含み、前記錘片の幅方向の両側を挟持する一対の挟持アームと、前記取付部が着脱可能に取り付けられる被取付部、及び人が把持可能な把持部を含み、前記取付部と前記一対の挟持アームの夫々の前記高さ方向の上側部分を連結する取手部材と、を備える。
【0020】
開示によれば、例えば、巻上機を錘枠の上側に取り付けた上で、一対の挟持アームの係止部を錘枠内で最上方に位置する錘片の底面に係止できる。そして、巻上機で紐状部材を引き上げるだけで、一対の挟持アームに挟持された錘片を錘枠内で作業し易い高さまで引き上げることができる。そして、その後、保守作業員等が、把持部を掴んで手動で錘片を切欠を介して錘枠から容易に取り外しできる。したがって、錘片取替の労力を軽減できる。
【0021】
また、不必要になった複数の錘片を錘枠から取り外した後、巻上機を取手部材から取り外し、取手部材につながる一対の挟持アームで不必要となった1以上の錘片を挟持できる。そして、一対の挟持アームがその不必要になった1以上の錘片を挟持している状態で、1人以上の保守作業員が把持部を掴んで当該1以上の錘片をより容易かつ円滑に運搬できる。よって、外された錘片の現場からの撤去も容易かつ円滑に実行できる。
【0022】
また、本開示において、前記把持部は、前記高さ方向に略直交する第1直交方向に略延在し、前記高さ方向及び前記第1直交方向の両方に直交する第2直交方向に略延在する貫通孔を有し、前記取手部材は、前記一対の挟持アームの夫々の前記高さ方向の上側が取り付けられ、前記把持部よりも前記高さ方向の下方側に位置して前記把持部に略平行に延在するアーム取付部と、前記把持部の延在方向の両端部と前記アーム取付部の延在方向の両端部とを連結し、前記高さ方向に延在する一対の連結部と、を含み、前記一対の挟持アームの夫々は、前記アーム取付部が通過する貫通孔を前記高さ方向の上側に有してもよい。
【0023】
上記構成によれば、取手部材を簡単安価に構成できる。
【0024】
また、本開示において、前記係止部は、先端側が先細りになっている2つの楔状部材を含み、前記一対の挟持アームの夫々は、本体部と、前記楔状部材とを含み、前記楔状部材は、前記先端側とは反対側が前記本体部の前記高さ方向の下側に前記本体部に対して回動可能に取り付けられ、前記本体部は、前記楔状部材が前記錘片を係する係止位置よりも前記高さ方向の下側に回動することを禁止するストッパを有してもよい。
【0025】
上記構成によれば、楔状部材の先細りの先端側を積み重ねられた2つの錘片の間に挿入し易いので、係止部で錘片の底面を係止し易い。また、各挟持アームが、楔状部材が錘片の係止位置よりも高さ方向の下側に移動することを禁止するストッパを有するので、一対の挟持アームによる錘片の挟持中に錘片が一対の挟持アームから落下することを抑制できる。
【0026】
また、本開示において、前記一対の挟持アームの一方に一端部が取り付けられ、前記一対の挟持アームの他方に他端部が取り付けられた付勢部材を備えてもよい。
【0027】
上記構成によれば、一対の挟持アームが錘片を挟持している最中に互いに離れる方向に移動することを抑制できる。したがって、錘片が一対の挟持アームから落下することを抑制できる。
【0028】
また、本開示において、前記一対の挟持アームの夫々は、雄ねじが設けられた軸部を含み、更に、上記各軸部の前記雄ねじに螺合して前記高さ方向に移動可能なナットを備えてもよい。
【0029】
上記構成によれば、不必要となった(取り外した)1以上の錘片を一対の挟持アームに挟持する際、軸部に対してナットを下降させることができ、運搬する1以上の錘片をナットで上から押圧できる。よって、不必要となった1以上の錘片を上下方向に確実に係止でき、当該1以上の錘片が運搬時に一対の挟持アームから落下することを抑制できる。
【0030】
また、本開示において、前記一対の挟持アームのうちの少なくとも一方における前記一対の挟持アームの他方側とは反対側の外側には、工具の先端側が挿入可能であると共に前記高さ方向の上側が開口する工具挿入室が設けられてもよい。
【0031】
上記構成によれば、積み重なった錘片の間に係止部を挿入する際に、先端側を工具挿入室に挿入した工具で挟持アームに力を付与でき、係止部を上下方向に繰り返し微小移動させることができる。よって、係止部の先端側を上記錘片の間に挿入し易くなる。
【0032】
また、本開示の錘片取替方法は、エレベーターにおいて、積み重ねられた複数の棒状の錘片と、前記複数の錘片を保持すると共に前記錘片を抜挿するための切欠を有する錘枠とを含む釣合錘から本開示の錘片取替装置を用いて前記錘片を取り替える錘片取替方法であって、前記錘片取替装置の前記巻上機を前記錘枠の上側か又は昇降路の所定位置に取り付ける装置取付ステップと、前記錘片取替装置の前記一対の挟持アームの係止部を、前記釣合錘に収容されている複数の前記錘片のうちで最上方に位置する錘片の底面に係止すると共に、前記一対の挟持アームでその錘片をその錘片の幅方向の両側から挟持する前記錘片挟持ステップと、前記錘片挟持ステップの後、前記巻上機で前記紐状部材を引き上げることで前記一対の挟持アームが保持している前記錘片を上方に引き上げる錘片引上ステップと、前記錘片引上ステップの後で、前記錘片が前記釣合錘の前記切欠よりも下方に位置している状態で前記巻上機による前記紐状部材の引上げを停止する錘片引上停止ステップと、前記錘片引上停止ステップの後、人が前記把持部を持って前記一対の挟持アームを引き上げた後、前記錘片を、前記切欠を用いて前記釣合錘の前記錘枠から取り外す錘片取外ステップと、を含む。
【0033】
開示によれば、錘片取替の労力を軽減できる。
【0034】
また、本開示の錘片取替方法において、前記錘片取外ステップの後、前記巻上機を前記取手部材から取り外す巻上機取外ステップと、前記錘枠から取り外された1つの前記錘片の底面に前記係止部を係止させて前記一対の挟持アームで前記1つの錘片を前記幅方向の両側から挟持するか、又は前記錘枠から取り外された2以上の前記錘片が積み重ねられた状態で高さ方向の最下方に位置する前記錘片の底面に前記係止部を係止させて前記一対の挟持アームで前記2以上の錘片を前記幅方向の両側から挟持する錘片挟持ステップと、前記巻上機取外ステップ及び前記錘片挟持ステップの後、人が前記取手部材の前記把持部を掴むことによって、前記一対の挟持アームで挟持された前記1つの錘片又は前記一対の挟持アームで挟持された前記2以上の錘片を移動させる、錘片移動ステップと、を含んでもよい。
【0035】
上記構成によれば、外された錘片の現場からの撤去を容易かつ円滑に実行できる。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る錘片取替装置及び方法によれば、錘片取替の労力を軽減でき、外された錘片の現場からの撤去も容易かつ円滑に実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の一実施形態に係る第1及び第2錘片取替装置を用いて錘片を釣合錘から抜き出している最中の状態を示す図である。
図2】巻上機及び紐状部材の構成を説明する模式図であり、巻上機及び紐状部材を、図1に矢印Aで示す方向から見たときの模式図である。
図3】第1錘片取替装置部における取手部材と一対の挟持アームを図1に矢印Aで示す方向から見たときの概略構成図である。
図4】取手部材及び一対の挟持アームの連結部周辺の正面図である。
図5】一方側挟持アームを図3に矢印Bで示す方向から見たときの模式図である。
図6】人が不必要になった1以上の錘片3を運搬する際の状態を表す図である。
図7】釣合錘を正面から見たときの正面図である。
図8】釣合錘を図7に矢印Dで示す下方向からみたときの図である。
図9】枠バンドが取り付け可能になる錘片と、たて枠との位置関係を示す平面図である。
図10】錘片取替後釣合錘を正面から見たときの正面図である。
図11】バンド付釣合錘を正面から見たときの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。
【0039】
なお、本実施形態で説明に使用する釣合錘10は、図7を用いて説明したものと同一であり、錘片取替後釣合錘11は、図10を用いて説明したものと同一である。また、バンド付釣合錘1は、図11を用いて説明したものと同一である。釣合錘10、錘片取替後釣合錘11、及びバンド付釣合錘1の構造は、上述の説明をもって省略する。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態に係る第1及び第2錘片取替装置50a,50bを用いて錘片3を釣合錘10から抜き出している最中の状態を示す図である。また、図2は、巻上機51及び紐状部材52の構成を説明する模式図であり、巻上機51及び紐状部材52を、図1に矢印Aで示す方向から見たときの模式図である。この実施形態では、2つの錘片取替装置、すなわち第1及び第2錘片取替装置50a,50bを用いて錘片3の取り替えを行う。第1錘片取替装置50aは、錘枠2の上側に含まれる上枠22のY方向一方側に取り付けられ、第2錘片取替装置50bは、上枠22のY方向他方側に取り付けられる。第1錘片取替装置50aは、第2錘片取替装置50bと同一である。以下、第2錘片取替装置50bの構造及び動作の説明を、これと同一の第1錘片取替装置50aの構造及び動作の説明をもって省略する。
【0041】
第1錘片取替装置50aは、巻上機51、紐状部材52、取手部材53、及び一対の挟持アーム54を備える。図2に示すように、巻上機51は、第1ウインチ61、第2ウインチ62、断面略コ字状の上枠取付部63、及び2つのボルト67,68を有する。また、紐状部材52は、第1紐状部分64a、第2紐状部分64b、第3紐状部分64c、及び取付部65を有する。巻上機51と紐状部材52からなる統合体は、上枠取付部63を垂直に2等分するYZ平面Pに対して略面対称になっている。第1紐状部分64aは、第1ウインチ61からZ方向下側領域に延び、第2紐状部分64bは、第2ウインチ62からZ方向下側領域に延びる。第1紐状部分64a、第2紐状部分64b、及び第3紐状部分64cは、紐状部を構成し、略Y字状の形状を有する。詳しくは、第1紐状部分64aと、第2紐状部分64bは、交点69で一体化され、第3紐状部分64cは、重力により交点69からZ方向下側に延在する。紐状部は、例えば、繊維で構成される紐やワイヤーロープ等で構成される。
【0042】
第1ウインチ61は、第2ウインチ62と同一であり、第1ウインチ61と、第2ウインチ62は、例えばリモートコントローラ等で同一のタイミングで同一の動作を行う。第1及び第2ウインチ61,62は、上枠取付部63の天板部63aの上面に、取付手段、例えば締結部材や溶接等により取り付けられる。第1ウインチ61は、回動部(図示せず)の回転力を歯車機構などで適宜減速してドラムに伝え、回転するドラム(図示せず)で第1紐状部分64aを巻き取る等して、第1紐状部分64aに張力を付与する。また、第2ウインチ62も、回動部(図示せず)の回転力を歯車機構などで適宜減速してドラムに伝え、回転するドラム(図示せず)で第2紐状部分64bを巻き取る等して、第2紐状部分64bに張力を付与する。
【0043】
断面略コ字状の上枠取付部63は、錘枠2の上枠22(図1参照)に取り付けられる。断面略コ字状の上枠取付部63は、天板部63aの他に、第1側板部63bと、第2側板部63cとを有する。第1側板部63bは、天板部63aのX方向一方側の端部からYZ平面上をZ方向下方側に広がり、第2側板部63cは、天板部63aのX方向他方側の端部からYZ平面上をZ方向下方側に広がる。
【0044】
第1側板部63bと、第2側板部63cとのX方向の間隔は、上枠22のX方向寸法よりも僅かに大きい。天板部63aの底面を、上枠22の上面に当接させた状態で、第1側板部63bを上枠22のX方向一方側の裏側面にボルト67で固定し、第2側板部63cを、上枠22のX方向一方側の表側面にボルト68で固定する。このようにして、第1錘片取替装置50aを上枠22に固定する。
【0045】
第3紐状部分64cの交点69側とは反対側の端部は、取付部65に取り付けられる。詳しくは、取付部65は、一体の金属製の部材であり、ワッカ65aと、フック65bを有し、フック65bは、ワッカ65aの外周部からワッカ65aの径方向の外方に延びる。第3紐状部分64cの交点69側とは反対側の端部は、ワッカ65aに取り付けられる。
【0046】
次に取手部材53と一対の挟持アーム54の構造について説明する。図1に示すように、取手部材53は、略矩形の枠状の形状を有する。詳しくは、取手部材53は、把持部80、アーム取付部81、及び一対の連結部82,83を含む。把持部80は、Z方向に略直交する第1直交方向に延在し、Z方向及び前記第1直交方向の両方に垂直な第2直交方向に略延在する貫通孔84(図3参照)を有する。図1に示す例では、第1直交方向は、略Y方向に一致し、第2直交方向は、略X方向に一致する。また、アーム取付部81は、把持部80よりもZ方向の下方側に位置して把持部80に略平行に延在する。一対の連結部82,83は、Z方向に延在し、把持部80の延在方向の両端部とアーム取付部81の延在方向の両端部を連結する。
【0047】
図3は、第1錘片取替装置50aにおける取手部材53と一対の挟持アーム54を図1に矢印Aで示す方向から見たときの概略構成図である。図3に示すように、フック65bは、把持部80の貫通孔84に係止される。貫通孔84は被取付部の一例である。貫通孔84に対するフック65bの係止で、紐状部材52を取手部材53に連結する。また、アーム取付部81には、一対の挟持アーム54の上側の端部が取り付けられる。
【0048】
次に、図4を用いて取手部材53に対する一対の挟持アーム54の連結構造について説明する。図4は、取手部材53及び一対の挟持アーム54の連結部周辺の正面図である。図4を参照して、アーム取付部81は、中実の丸棒構造を有する。また、一対の挟持アーム54の一方側挟持アーム54aは、上側端部にY方向に延在する貫通孔87aを含み、一対の挟持アーム54の他方側挟持アーム54bは、上側端部にY方向に延在する貫通孔87bを含む。
【0049】
2つの貫通孔87a,87bの夫々は、棒状のアーム取付部81の直径よりも大きい。アーム取付部81は、一方側挟持アーム54aの貫通孔87aと、他方側挟持アーム54bの貫通孔87bとを通過する。アーム取付部81が2つの貫通孔87a,87bを通過している状態で、アーム取付部81の一端部は一方側の連結部82の下方側に溶接や接着剤等の接合手段で固定され、アーム取付部81の他端部は他方側の連結部83の下方側に溶接や接着剤等の接合手段で固定される。係る構造により、一方側及び他方側挟持アーム54a,54bの夫々は、棒状のアーム取付部81に対して回動自在に連結される。
【0050】
再度、図3を参照して、一方側挟持アーム54aは、本体部60と、係止部の一例としての楔状部材73とを含む。本体部60は、一体構造を有し、第1延在部60a、第2延在部60b、及び工具挿入部60cを含む。第1延在部60aは、一方向に直線状に延在し、延在方向の一方側の端部に貫通孔87a(図4参照)が設けられる。また、第2延在部60bは、第1延在部60aの貫通孔87a側とは反対側の端部から他方向に直線状に延在する。第2延在部60bは、両端部以外の中央部に雄ねじ97が設けられた丸棒状の部分を含む。雄ねじ97には、ナット75が螺合している。ナット75を時計回りか又は反時計回りに所望量回転させることで、ナット75は、雄ねじ97が設けられたZ方向の範囲を移動可能になっている。なお、第2延在部は、雄ねじが設けられた丸棒状の部分を有さなくてもよく、錘片取替装置が、ナットを有さなくてもよい。
【0051】
第1延在部60aと、第2延在部60bとは、鈍角θ1で交差する。鈍角θ1は、好ましくは、100°〜130°の範囲の角度に設定される。楔状部材73は、第2延在部60bの第1延在部60a側とは反対側の端部に回動自在に取り付けられる。楔状部材73は、先細りの先端部が第2延在部60bの先端側からX方向の一方側領域に突出する。
【0052】
図5は、一方側挟持アーム54aを図3に矢印Bで示す方向から見たときの模式図である。次に、図5を用いて本体部60に対する楔状部材73の取付構造について説明する。なお、図5においては、当該取付構造に無関係な工具挿入部60cの図示を省略する。図5に示すように、第2延在部60bは、第1延在部60a側とは反対側の端部に延在方向の外方側に凹部79を有し、凹部79の側面は、凹部のY方向両側に位置する第1側壁部88と第2側壁部89とで画定される。また、第2延在部60bは、軸部材90を有し、軸部材90は、凹部79を横切るように第1側壁部88と第2側壁部89との間をY方向に延在する。
【0053】
再度、図3を参照して、楔状部材73は、軸部材90が通過すると共にY方向に延在する貫通孔92を肉厚側の端部に有する。貫通孔92の直径は、軸部材90の直径よりも僅かに小さい。この構成により、楔状部材73が、軸部材90に対して回動自在になる。楔状部材73が図3に矢印Cに示す反時計回りに所定以上回動すると、楔状部材73の肉厚側部分におけるZ方向上側の角部が、凹部79の底面93に接触する。この接触により、楔状部材73が更に反時計回りへ回動することを禁止している。凹部79の底面93は、ストッパを構成する。楔状部材73と、第2延在部60bとがなす角度θ2の最大は、例えば、80°〜110°の範囲の角度に設定されると好ましいが、それ以外の角度に設定されてもよい。
【0054】
工具挿入部60cは、第2延在部60bにおける楔状部材73の突出側とは反対側の側面に取り付けられる。工具挿入部60cは、Z方向の上側のみが開口する工具挿入室95を画定する。工具挿入室95には、スパナ等の工具99の先端部を挿入可能となっている。他方側挟持アーム54bは、工具挿入部60cを有さない点のみが一方側挟持アーム54aと異なる。なお、工具挿入部は、一方側及び他方側挟持アームの両方に設けられてもよく、一方側及び他方側挟持アームのいずれにも設けられなくてもよい。一方側挟持アーム54aと類似の構造を有する他方側挟持アーム54bの説明は省略する。
【0055】
第1錘片取替装置50aは、付勢部材の一例としてのつる巻きばね71を備える。つる巻きばね71の一端部は、一方側挟持アーム54aの第1延在部60aに取り付けられ、つる巻きばね71の他端部は、他方側挟持アーム54bの第1延在部60aに取り付けられる。つる巻きばね71の一端部及び他端部は、一方側挟持アーム54aと他方側挟持アーム54bで同じ高さに取り付けられ、つる巻きばね71は、略Y方向に延在する。つる巻きばね71の配置により、一方側挟持アーム54aの第2延在部60bと、他方側挟持アーム54bの第2延在部60bとのX方向隙間の寸法が、つる巻きばね71が自然長になっている状態よりも、長くなりにくくなると共に短くなりにくくなる。つる巻きばね71が自然長になっている状態か又は伸びている状態において、一方側及び他方側挟持アーム54a,54bの第2延在部60b間の隙間のY方向長さが、錘片3の長さと一致していると好ましい。
【0056】
なお、一方側挟持アームの第1延在部と、他方側挟持アームの第1延在部との間には、つる巻きばね以外の如何なる付勢部材を配置してもよく、例えば、湾曲した板ばねを凸部がZ方向の上側又は下側に向くように配置してもよい。又は、付勢部材は、一方側挟持アームの第2延在部と、他方側挟持アームの第2延在部との間に配置してもよい。又は、一方側挟持アームと他方側挟持アームとの間に如何なる付勢部材も配置されなくてもよい。
【0057】
上記構成において、例えば釣合錘10からの所定数の錘片3の取り出しを次のように行う。
【0058】
先ず、第1錘片取替装置50aの巻上機51を錘枠2の上枠22のY方向一方側に取り付け、第2錘片取替装置50bの巻上機51を錘枠2の上枠22のY方向他方側に取り付ける。その後、第1錘片取替装置50aの一対の挟持アーム54の楔状部材73を、釣合錘10に収容されている複数の錘片3のうちで最上方に位置する錘片3の底面に係止すると共に、一対の挟持アーム54でその錘片3をその錘片3のX方向両側から挟持する。また、第2錘片取替装置50bの一対の挟持アームの楔状部材を、釣合錘10に収容されている複数の錘片3のうちで最上方に位置する錘片3の底面に係止すると共に、一対の挟持アームでその錘片3をその錘片3のX方向両側から挟持する。紐状部がY字形状を有するので、X方向の中心にフック65bを位置させることができ、バランス良く錘片3を係止できる。
【0059】
続いて、第1及び第2錘片取替装置50a,50bの夫々の巻上機51で、紐状部材52の第1紐状部分64aと第2紐状部分64bを同じタイミングで同じ速度で引き上げることで、第1及び第2錘片取替装置50a,50bの夫々における一対の挟持アーム54が保持している錘片3を上方に引き上げる。
【0060】
その後、錘片3が釣合錘10の切欠34よりも下方に位置している状態で2つの巻上機51による紐状部材52の引上げを停止し、続いて、人が第1及び第2錘片取替装置50a,50bの把持部80を持って2つの一対の挟持アーム54を引き上げた後、錘片3を、切欠34を用いて釣合錘10の錘枠2から取り外す。
【0061】
図7図11を用いて説明した所定数の錘片3を錘片33に取り換える従来方法との違いは、装置を一切用いずに人力で全てを行っていた錘片3の取出作業の一部を第1及び第2錘片取替装置50a,50bを用いて行う点である。所定数の錘片3を錘片33に取り換えた後、錘片33が配置されたZ方向範囲に枠バンド7を取り付けると作業が終了する。なお、錘片33及び錘片3を入れ込む際にも、錘枠2内で錘片33及び錘片3を下降させるときに第1及び第2錘片取替装置50a,50bを用いてもよい。
【0062】
枠バンド7の取付作業の終了後、取り換えられて不要となった複数の錘片3を現場から撤去する。この撤去は、例えば次のように実行できる。先ず、各錘片取替装置50a,50bにおいて、取手部材53から巻上機51を取り外す。
【0063】
次に、各錘片取替装置50a,50bにおいて、錘枠2から取り外された1つの錘片3の底面に楔状部材73を係止させて一対の挟持アーム54で当該1つの錘片3をその幅方向の両側から挟持するか、又は錘枠2から取り外された2以上の錘片3が積み重ねられた状態で高さ方向の最下方に位置する錘片3の底面に楔状部材73を係止させて一対の挟持アーム54で当該2以上の錘片3をその幅方向の両側から挟持する。
【0064】
その後、人が取手部材53の把持部80を掴むことによって、一対の挟持アーム54で挟持された1つの錘片3又は一対の挟持アーム54で挟持された2以上の錘片3を移動させて現場から撤去する。
【0065】
上記実施形態によれば、各錘片取替装置50a,50bの巻上機51を錘枠2の上側に取り付けた上で、各錘片取替装置50a,50bの一対の挟持アーム54の楔状部材73を錘枠2内で最上方に位置する錘片3の底面に係止できる。そして、各巻上機51で紐状部材52を引き上げるだけで、各一対の挟持アーム54に挟持された錘片3を錘枠2内で作業し易い高さまで引き上げることができる。そして、その後、保守作業員等が、把持部80を掴んで手動で錘片3を切欠34を介して錘枠2から容易に取り外しできる。したがって、錘片取替の労力を軽減できる。
【0066】
また、図6、すなわち、人が不必要になった1以上の錘片3を運搬する際の状態を表す図に示すように、不必要になった複数の錘片3を錘枠から取り外した後、巻上機51を取手部材53から取り外し、取手部材53につながる一対の挟持アーム54で不必要となった1以上の錘片3を挟持できる(図6では、2つの錘片3を挟持している例を示す)。そして、一対の挟持アーム54がその不必要になった1以上の錘片3を挟持している状態で、1人以上の保守作業員が把持部80を掴んで当該1以上の錘片3をより容易かつ円滑に運搬できる。よって、外された錘片3の現場からの撤去も容易かつ円滑に実行できる。
【0067】
また、一対の挟持アーム54の夫々が、先端側が先細りになっている2つの楔状部材73を含むので、楔状部材73の先細りの先端側を積み重ねられた2つの錘片3の間に挿入し易く、係止部で錘片3の底面を係止し易い。また、各挟持アーム54a,54bが、楔状部材73が錘片3の係止位置よりも高さ方向の下側に移動することを禁止するストッパ(凹部79の底面93)を有するので、一対の挟持アーム54による錘片3の挟持中に錘片3が一対の挟持アーム54から落下することを抑制できる。
【0068】
また、一対の挟持アーム54の一方に一端部が取り付けられ、一対の挟持アーム54の他方に他端部が取り付けられた、つる巻きばね71を備えるので、一対の挟持アーム54が錘片3を挟持している最中に互いに離れる方向に移動することを抑制できる。したがって、錘片3が一対の挟持アーム54から落下することを抑制できる。
【0069】
また、一対の挟持アーム54の夫々は、雄ねじ97が設けられた軸部を含み、更に、各軸部の雄ねじ97に螺合して高さ方向に移動可能なナット75を備える。したがって、図6に示すように、不必要となった(取り外した)1以上の錘片3を一対の挟持アーム54に挟持する際、軸部に対してナット75を下降させることができ、運搬する1以上の錘片3をナット75で上から押圧できる。よって、不必要となった1以上の錘片3を上下方向に確実に係止でき、当該1以上の錘片3が運搬時に一対の挟持アーム54から落下することを抑制できる。
【0070】
更には、一対の挟持アーム54のうちの少なくとも一方における他方側とは反対側の外側に、工具の先端側が挿入可能であると共に高さ方向の上側が開口する工具挿入室95が設けられる。したがって、積み重なった錘片3の間に楔状部材73を挿入する際に、先端側を工具挿入室95に挿入した工具99で挟持アーム54に力を付与でき、楔状部材73を上下方向に繰り返し微小移動させることができる。よって、楔状部材73の先端側を上記錘片の間に挿入し易くなる。
【0071】
尚、本発明は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0072】
例えば、上記実施形態では、2つの錘片取替装置50a,50bを用いて錘片3を持ち上げる場合について説明したが、1つの錘片取替装置のみを用いて錘片を持ち上げてもよく、この場合、1つの錘片取替装置を、釣合錘の錘枠における上枠の幅方向中央部に取り付けると好ましい。
【0073】
また、各錘片取替装置50a,50bが2つの第1及び第2ウインチ61,62を有する場合について説明したが、錘片取替装置は、1つのみのウインチを有してもよい。また、紐状部材52のフック65bを取手部材53の貫通孔84に係止する場合について説明したが、紐状部材の先端部を、環状構造(例えば矩形の枠構造)を有する取手部材の上側にくくり付けることで、紐状部材を取手部材に取り付けてもよい。また、錘片取替装置50a,50bの巻上機51を錘枠2の上枠22に固定する場合について説明したが、錘片取替装置の巻上機は、昇降路内に設けられた係止部、例えば昇降路内に設置されたアングル等に固定されてもよく、錘枠以外の箇所に固定されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
2 錘枠、 3 錘片、 10 釣合錘、 22 上枠、 34 切欠、 50a,50b 錘片切替装置、 51 巻上機、 52 紐状部材、 53 取手部材、 54 一対の挟持アーム、 60 挟持アームの本体部、 65 取付部、 71 つる巻きばね、 73 楔状部材、 75 ナット、 80 把持部、 81 アーム取付部、 82,83 連結部、 84 把持部の貫通孔、 87a,87b 一対の挟持アームの貫通孔、 93 凹部の底面(ストッパ)、 95 工具挿入室、 97 雄ねじ、 Z方向 高さ方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11