特許第6948857号(P6948857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948857
(24)【登録日】2021年9月24日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 1/00 20060101AFI20210930BHJP
   A21B 1/33 20060101ALI20210930BHJP
   F23N 5/00 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   F24C1/00 370P
   F24C1/00 370N
   F24C1/00 370Q
   A21B1/33
   F23N5/00 D
   F23N5/00 G
   F23N5/00 N
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-136090(P2017-136090)
(22)【出願日】2017年7月12日
(65)【公開番号】特開2019-19992(P2019-19992A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】大橋 龍成
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−220637(JP,A)
【文献】 特開平04−106315(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/118867(WO,A1)
【文献】 特開2009−008339(JP,A)
【文献】 特開昭63−131925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 1/00−1/16
F24C 7/08−7/10
A21B 1/33
F23N 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱庫と、加熱庫内に空気を循環させる循環ファンと、前記空気を加熱するバーナと、加熱庫内の温度を検出する温度検出手段と、循環ファンおよびバーナを制御する加熱制御手段とを備えた加熱調理器であって、
加熱制御手段は、バーナの燃焼および非燃焼と、循環ファンによる加熱庫内の空気の循環量の調整とを行うことで、被加熱物を加熱する加熱工程と、
加熱工程の前に加熱庫内の温度を予熱温度に調整する予熱工程とを有し、
予熱工程では、バーナを燃焼させ且つ前記循環量を初期循環量とすることで、加熱庫内の温度を予熱温度まで上昇させる初期加熱動作と、
初期加熱動作後、温度検出手段の検出温度に基づき、バーナを燃焼させ且つ前記循環量を燃焼循環量とすることと、バーナを非燃焼とし且つ前記循環量を燃焼循環量より低い非燃焼循環量とすることとを切り替えることで、加熱庫内の温度を予熱温度に維持する温度維持動作とを行う、加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、
温度維持動作では、循環ファンを燃焼回転数で作動させることで、前記循環量を燃焼循環量とし、循環ファンを燃焼回転数より低い制限回転数で作動させることで、前記循環量を非燃焼循環量とする、加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器、特に、加熱庫内に熱気を循環させて食材や調理容器などの被加熱物を加熱するオーブン機能を備えた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バーナから放出される燃焼排ガス(熱気)を循環ファンによって加熱庫内に循環させることで、加熱庫内に収容された食材や調理容器などの被加熱物を加熱するガスオーブンなどの加熱調理器において、加熱運転を開始する前の予熱運転時に、加熱庫内を設定温度より高い目標加熱温度まで加熱することで、バーナの点火および消火を切り替える回数を少なくし、ガス消費量の低減を図ったものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−008339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の加熱調理器では、加熱庫内を一旦設定温度よりも高い目標加熱温度まで加熱した後、加熱庫内の温度(庫内温度)が設定温度に下がるのを待って加熱庫内の温度を設定温度に維持する温度維持動作に移行するから、その間、加熱庫内に蓄積された熱エネルギーが無駄に外部に放出され、熱損失が大きかった。また、庫内温度が目標加熱温度になるまでバーナを燃焼させ続ける必要もあるため、ガス消費量の低減も十分には図られていなかった。
【0005】
しかも、予熱運転の開始後、加熱運転を行うにあたって、庫内温度が目標加熱温度から設定温度に下がるのを待つ必要があるため、速やかに加熱運転を開始できない問題もあった。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、バーナから放出された熱気を循環ファンによって加熱庫内に循環させて被加熱物を加熱するオーブン機能を備えた加熱調理器において、エネルギー消費量の低減および使い勝手の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、加熱庫と、加熱庫内に空気を循環させる循環ファンと、前記空気を加熱するバーナと、加熱庫内の温度を検出する温度検出手段と、循環ファンおよびバーナを制御する加熱制御手段とを備えた加熱調理器であって、加熱制御手段は、バーナの燃焼および非燃焼と、循環ファンによる加熱庫内の空気の循環量の調整とを行うことで、被加熱物を加熱する加熱工程と、加熱工程の前に加熱庫内の温度を予熱温度に調整する予熱工程とを有し、予熱工程では、バーナを燃焼させ且つ前記循環量を初期循環量とすることで、加熱庫内の温度を予熱温度まで上昇させる初期加熱動作と、初期加熱動作後、温度検出手段の検出温度に基づき、バーナを燃焼させ且つ前記循環量を燃焼循環量とすることと、バーナを非燃焼とし且つ前記循環量を燃焼循環量より低い非燃焼循環量とすることとを切り替えることで、加熱庫内の温度を予熱温度に維持する温度維持動作とを行うものである。
【0008】
このものでは、予熱工程が開始されてから加熱庫内の温度が予熱温度に達すれば、速やかに加熱庫内の温度を予熱温度で維持する温度維持動作に移行するから、ガス消費量を低減できる。また、加熱庫内の温度が予熱温度になるまでの間に、加熱庫内から熱エネルギーが無駄に放出されるのも抑制できるから、熱損失も低減できる。
【0009】
さらに、このものでは、予熱工程において加熱庫内が予熱温度よりもさらに高温状態になるまで加熱されることもないから、予熱工程が開始されてから温度維持動作に移行するまでに要する時間を短縮できる。よってその分、早い段階で加熱工程を開始することもできる。
【0010】
好ましくは、上記温度維持動作では、循環ファンを燃焼回転数で作動させることで、前記循環量を燃焼循環量とし、循環ファンを燃焼回転数より低い制限回転数で作動させることで、前記循環量を非燃焼循環量とするものである。
【0011】
予熱工程にて加熱庫内の温度を予熱温度に維持するにあたり、循環ファンを停止させれば、加熱庫内で空気が対流しなくなり、温度分布に偏りが生じてしまう。従って、この時点で加熱工程が開始された場合に、被加熱物の配置や部位によって加熱度合にばらつきが生じ、料理の完成度に影響を与えてしまう虞がある。
【0012】
しかしながら、本発明に係る加熱調理器によれば、予熱工程にて加熱庫内の温度を予熱温度で維持するにあたって、循環ファンの回転数を制限回転数に下げて作動状態を維持するから、予熱工程中、加熱庫内の空気を常に対流させておくことができる。よって、加熱工程が開始される時点で、加熱庫内の温度分布に偏りが生じ難く、加熱工程にて被加熱物をより均一に加熱することができる。従って、料理の完成度をより高く保つことが可能である。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、ガス消費量を低減できるし、熱損失も低減できるから、加熱調理器全体のエネルギー消費量の低減を図ることができる。また、予熱工程が開始されてから比較的早い段階で加熱工程を開始することもできるから、使い勝手も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の概略構成図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の予熱運転および加熱運転時の動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、上記した本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳述する。
【0016】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る加熱調理器1は、バーナ13から放出される燃焼排ガス(熱気)を循環ファン14によって加熱庫10内に循環させることで、加熱庫10内の食材や調理容器等の被加熱物Fを加熱するガスオーブンである。尚、本明細書では、本体ケース11の前面(以下、「本体前面」という)111を加熱調理器1の正面とし、加熱調理器1を正面側から見たときの本体ケース11の奥行き方向を前後方向、幅方向を左右方向、高さ方向を上下方向という。
【0017】
本体前面111には、加熱庫10内に被加熱物Fを出し入れするための被加熱物出入口100と、本体ケース11の下辺部を軸として前後に回動可能な状態で連結支持され、被加熱物出入口100を前方から被閉する前扉12とが設けられている。
【0018】
本体ケース11の内部には、被加熱物Fを載置するトレー2を上下に複数並べて収容可能な加熱庫10と、バーナ13を配する燃焼室20とが上下に区画分離して設けられている。本体ケース11内における加熱庫10の上部には、被加熱物Fから放出された油煙や臭気成分、循環ファン14によって加熱庫10内に導入された空気等を本体ケース11の上部に開設された排気口300へ導く排気通路30が設けられている。本体ケース11内における加熱庫10の後部には、加熱庫10内や燃焼室20内の空気を、循環ファン14の配設部(ファンケース)34へ導く熱気通路31が設けられている。ファンケース34は、熱気通路31の後部に設けられている。
【0019】
図示しないが、燃焼室20内におけるバーナ13の炎孔形成部の近傍位置には、ガスの燃焼炎の有無を検出する炎検知センサと、炎孔形成部の近傍位置にて火花放電する点火プラグとが設けられている。また、本体ケース11内には、バーナ13へのガスの供給量を調整する電磁開閉弁や火力調整弁からなるバルブユニットが設けられており、上記バルブユニットによってバーナ13へのガスの供給量、即ち、火力が調整される。
【0020】
本体前面111における被加熱物出入口100の下方位置には、本体ケース11の外部空間と燃焼室20とを連通する空気取込口200が開設されている。燃焼室20の上壁後部には、熱気通路31に繋がる熱気出口21が開設されている。熱気通路31の後壁には、ファンケース34の内部空間に繋がる吸込口22が開設されている。
【0021】
加熱庫10の後壁には、ファンケース34の内部空間に繋がる熱気吹出口23と、熱気通路31に繋がる熱気吸込口24とが開設されている。加熱庫10の上壁には、排気通路30に繋がる排気導出口25が開設されている。
【0022】
従って、循環ファン14の駆動モータ(以下、「ファンモータ」という)15を作動させて循環ファン14を回転させると、本体ケース11の外部空気がバーナ13の燃焼用空気として空気取込口200から燃焼室20内に取り込まれると共に、バーナ13で生成された熱気が燃焼室20から熱気出口21を通って熱気通路31へ導かれた後、さらに吸込口22を通ってファンケース34内に取り込まれ、熱気吹出口23から加熱庫10内へ導出される。
【0023】
そしてさらに、熱気吹出口23から加熱庫10内に導出された熱気は、一部が熱気吸込口24から熱気通路31へ導出された後、吸込口22を通ってファンケース34に取り込まれ、再び熱気吹出口23から加熱庫10内へ導出される。また、加熱庫10内に導出された熱気の一部は、排気導出口25から排気通路30へ導出された後、排気口300を通って本体ケース11の外部へ排出される。このように、バーナ13で生成される熱気は、加熱庫10とファンケース34との間で循環されつつ、一部が被加熱物Fから放出された油煙や臭気成分と共に排気通路30を通じて本体ケース11の外部へ排出される。
【0024】
排気通路30内における排気導出口25の近傍位置には、加熱庫10内の温度(以下、「庫内温度」という)として加熱庫10内から排気通路30に排出される空気の温度を検出する温度検出手段としての庫内温度センサ16が配設されている。本体前面111における前扉12との対向位置は、前扉12の開閉に連動してオンオフする開閉スイッチ17が配設されている。
【0025】
本体前面111には、加熱調理器1の電源をオンオフするための電源スイッチや、加熱調理器1の運転の開始や停止を指示するための運転スイッチ、加熱温度や加熱時間など加熱調理器1の動作条件を任意に設定するための設定操作スイッチ、加熱調理器1の動作状態や設定された動作条件を表示する表示部などからなる操作パネル18が設けられている。
【0026】
本体ケース11の内部には、操作パネル18で設定された動作条件に基づいてバーナ13の点火や消火、火力調整、循環ファン14の作動、停止、回転数の調整など、加熱調理器1全体の動作を制御する制御回路4が組み込まれている。
【0027】
ファンモータ15、庫内温度センサ16、開閉スイッチ17、操作パネル18、図示しない炎検知センサ、点火プラグに高電圧を印加して火花放電させるイグナイタ、バルブユニットの弁駆動部等は何れも、電気配線を通じて制御回路4に接続されている。
【0028】
制御回路4は、バーナ13の点火や消火、火力調整を行うバーナ制御部、循環ファン14の作動や停止、回転数の調整を行なうファン制御部、炎検知センサの出力値に基づいてバーナ13の点火や消火を判定する点消火判定部、庫内温度センサ16の検出温度(以下、「庫内温度」という)に基づいて加熱庫10内の温度状態を判定する庫内温度判定部、開閉スイッチ17のオンオフ状態に基づいて前扉12が開かれたか否かを判定する開閉判定部、バーナ13の火力および循環ファン14による加熱庫10内の空気の循環量を制御して加熱庫10内の温度を調整する加熱制御部等の回路構成を有している。
【0029】
尚、ファン制御部は、図示しない回転数検出手段によって循環ファン14の実回転数を検出し、その実回転数が設定回転数(後述する点火回転数、燃焼回転数、制限回転数等)となるようファンモータ15を制御することで、循環ファン14の回転数を調整するように構成されたものであってもよいし、設定回転数に対応する電流値が予め設定されており、ファンモータ15の駆動電流を上記電流値とすることで、循環ファン14の回転数を調整するように構成されたものであってもよい。
【0030】
上記加熱制御部は、バーナ13の燃焼および非燃焼の切り替えと、循環ファン14による加熱庫10内の空気の循環量の調整とを行うことで被加熱物Fを設定加熱温度で加熱する加熱工程の動作制御部と、上記加熱工程が開始される前に、庫内温度が予め設定された予熱温度になるようバーナ13の燃焼および非燃焼の切り替えと、循環ファン14による加熱庫10内の空気の循環量の調整とを行うことで加熱庫10内を予熱温度に加熱する予熱工程の動作制御部とを備えている。
【0031】
上記予熱工程の動作制御部は、バーナ13を燃焼させると共に、循環ファン14を作動させて加熱庫10内の空気の循環量を所定の燃焼循環量とすることで、加熱庫10内の温度を予熱温度まで上昇させる初期加熱動作の動作制御部と、初期加熱動作の実行後、バーナ13を燃焼させ且つ上記循環量を燃焼循環量とする動作、および、バーナ13を非燃焼とし且つ上記循環量を燃焼循環量より低い非燃焼循環量とする動作を切り替えることで、加熱庫10内の温度を予熱温度で維持する温度維持動作の動作制御部とを備えている。
【0032】
上記制御回路4による加熱調理器1の制御動作を、図2のタイムチャートに従って説明する。尚、図示しないが、以下の制御動作が実行されるにあたって、操作パネル18の電源スイッチにて電源のオン操作がなされると、制御回路4に組み込まれた加熱調理器1の主制御プログラムが起動し、予熱運転や加熱運転が実行可能な状態となる。そしてこの状態で、操作パネル18の設定操作スイッチにて加熱運転時の設定温度の設定操作および加熱時間の設定操作がなされれば、加熱運転時の設定温度(設定加熱温度)Tsおよび加熱時間(設定加熱時間)Csが設定される。
【0033】
上記のように電源のオン操作がなされた後、操作パネル18の運転スイッチによって予熱運転の開始を指示する操作がなされると、加熱庫10内を予熱温度(ここでは、設定加熱温度と同一の温度)Tsまで加熱する予熱工程の初期加熱動作が開始される。具体的には、まず、循環ファン14のファンモータ15を所定の点火回転数(ここでは、強回転数)にて作動させ、燃焼室20内への外部空気の取り込みを開始する。また、点火プラグから火花放電させると共に、バルブユニットを点火時の開度に調整し、バーナ13へ点火に適した量の燃料ガスを供給する。これにより、バーナ13が点火される。
【0034】
炎検知センサにてバーナ13の点火、即ち、燃焼炎が検知されると、循環ファン14のファンモータ15を所定の燃焼回転数(ここでは、点火回転数と同一の回転数)に設定すると共に、バルブユニットを初期加熱動作時の開度に調整し、バーナ13の火力を初期加熱火力(ここでは、強火力)に設定する。これにより、バーナ13で生成された熱気が加熱庫10内に供給されて、加熱庫10内で燃焼循環量の熱気が循環され、加熱庫10内の温度を上昇させていく(P1)。
【0035】
尚、初期加熱動作時のファンモータ15の回転数(燃焼回転数)は、点火回転数と同一に設定されているが、点火回転数と異なる回転数(例えば、点火回転数が弱回転数、燃焼回転数が強回転数)に設定されたものとしてもよい。同様に、初期加熱動作時のバーナ13の火力(初期加熱火力)は、バーナ13の点火時の火力と同一に設定されているが、バーナ13の点火時の火力と異なる火力(例えば、点火時の火力が弱火力、初期加熱火力が強火力)に設定されたものとしてもよい。また、予熱工程における予熱温度は、加熱工程における設定加熱温度と同一に設定されているが、加熱工程における設定加熱温度と異なる温度(例えば、前扉12が開かれたときの温度降下を考慮して、設定加熱温度Tsより所定値高い温度)に設定されたものとしてもよい。
【0036】
庫内温度が予熱温度Tsに達するまでの間、ファンモータ15の回転数を燃焼回転数で維持すると共に、バーナ13の火力を初期加熱火力で維持する。その後、庫内温度が予熱温度Tsに達すれば、庫内温度を予熱温度Tsで維持する予熱工程の温度維持動作が開始される。具体的には、まず、庫内温度が予熱温度Tsに達していれば、循環ファン14のファンモータ15を燃焼回転数より低い制限回転数(ここでは、弱回転数)に設定すると共に、バルブユニットの電磁開閉弁を閉じてバーナ13を消火させる。これにより、バーナ13から加熱庫10内への熱気の供給が停止され、加熱庫10内で燃焼循環量より低い非燃焼循環量の空気の循環のみ行なわれる。
【0037】
尚、初期加熱動作を開始してから庫内温度が予熱温度Tsに達し、バーナ13を消火させた後も、加熱庫10内の温度は、内部の保有熱によって予熱温度Tsからさらに所定温度上昇する。但し、このとき、循環ファン14は、燃焼回転数より低い制限回転数にて回転されているため、加熱庫10内の空気は、初期加熱動作中(P1)よりも緩やかに対流し攪拌される。同時に、加熱庫10内には、本体ケース11の外部空気が空気取込口200から燃焼室20を通じて導入され、且つ、加熱庫10内の空気の一部は、排気通路30を通じて本体ケース11の外部に排出される。そのため、加熱庫10内の温度は、顕著な高温状態になる前に緩やかに降下していく(図2の「庫内温度」を示すグラフ参照)。
【0038】
その後、庫内温度が予熱温度Tsを下回れば、再び上記のように循環ファン14を燃焼回転数にて回転させると共に、バーナ13を点火させ、初期加熱火力と同一の設定火力(ここでは、強火力)にて燃焼させる。このように、初期加熱動作を行なった結果、庫内温度が予熱温度Tsに達すれば、それ以降は、庫内温度が予熱温度Tsとなるよう、バーナ13の点火(燃焼)および消火(非燃焼)を適宜繰り返すと共に、バーナ13の点火に合わせて循環ファン14を燃焼回転数にて作動させ、バーナ13の消火に合わせて循環ファン14を制限回転数にて作動させる。これにより、バーナ13で生成された熱気が加熱庫10内に適宜供給されると共に、加熱庫10内の空気の循環量が調整され、加熱庫10内の温度を予熱温度Ts付近で維持させる(P2)。
【0039】
尚、上記温度維持動作において、バーナ13を点火したときの循環ファン14の回転数は、バーナ13の燃焼性能に影響のない範囲で且つ加熱庫10内への熱気の供給量を十分に確保できる範囲で、燃焼回転数より低い下限回転数にて作動させるようにしてもよい。これにより、温度維持動作時に加熱庫10内から熱気が必要以上に排出されるのを抑制できるから、熱損失を低減できる。
【0040】
上記温度維持動作の実行中に、例えば、加熱庫10内に被加熱物Fを収容すべく、前扉12が開かれて開閉スイッチ17がオフになった場合は、その時点で速やかにバルブユニットの電磁開閉弁を閉じてバーナ13を消火させると共に、ファンモータ15を停止させる。これにより、加熱庫10内への熱気の循環供給が停止される。
【0041】
そして、加熱庫10内への被加熱物Fの収容が完了し、前扉12が閉じられて開閉スイッチ17がオンになった場合は、上記温度維持動作に戻り、加熱庫10内の温度を予熱温度Ts付近で維持させる。即ち、前扉12が開かれたことで加熱庫10内に外部空気が流入し、庫内温度が予熱温度Tsを下回った場合は、前扉12が閉じられた時点より、循環ファン14を燃焼回転数にて回転させると共に、バーナ13を点火させ、設定火力にて燃焼させる。
【0042】
上記のように加熱庫10内に被加熱物Fが収容され、前扉12が閉じられた後、操作パネル18の運転スイッチによって加熱運転の開始を指示する操作がなされた場合は、庫内温度が設定加熱温度Tsとなるよう、バーナ13の点火(燃焼)および消火(非燃焼)を適宜繰り返すと共に、循環ファン14を所定の加熱回転数(ここでは、燃焼回転数と同一回転数)にて常時作動させる加熱工程を開始する。これにより、バーナ13で生成された熱気が加熱庫10内に適宜供給されつつ、加熱庫10内の空気の循環量が調整され、加熱庫10内の被加熱物Fを加熱していく。即ち、加熱庫10内の温度が設定加熱温度Tsに近い状態から被加熱物Fの加熱が開始される(P3)。
【0043】
尚、加熱工程におけるファンモータ15の回転数(加熱回転数)は、燃焼回転数と同一に設定されているが、燃焼回転数と異なる回転数(例えば、燃焼回転数が強回転数、加熱回転数が所定の加熱制御シーケンスに基づいて設定される複数の異なる回転数)に設定されるものとしてもよい。同様に、加熱工程におけるバーナ13の火力(設定火力)は、予熱工程の温度維持動作時の火力と同一に設定されているが、温度維持動作時の火力と異なる火力(例えば、温度維持動作時の火力が強火力、加熱工程時の火力が所定の加熱制御シーケンスに基づいて設定される複数の異なる火力)に設定されたものとしてもよい。
【0044】
その後、加熱工程が開始されてからの経過時間が設定加熱時間Csに達すれば、ファンモータ15を停止させると共に、バルブユニットの電磁開閉弁を閉じてバーナ13を消火させる。これにより、加熱庫10内への熱気の循環供給が停止され、被加熱物Fの加熱を終了する。
【0045】
尚、図示しないが、本体ケース11には、前扉12を閉じられた状態で保持する自動ロック装置が設けられており、前扉12は、予熱工程における初期加熱動作が開始されてから終了するまでの間、および、加熱工程が開始されてから終了するまでの間、操作パネル18の運転スイッチによって予熱運転や加熱運転の中止を指示する操作がなされた場合を除いて、常に自動ロック装置によって閉じられた状態で保持される。
【0046】
このように、上記加熱調理器1によれば、予熱工程が開始されてから庫内温度が予熱温度Tsに達すれば、速やかに加熱庫10内の温度を予熱温度Tsで維持する温度維持動作に移行するから、運転中の燃料ガスの消費量を低減できる。また、加熱庫10内の温度が予熱温度Tsになるまでの間に、加熱庫10内から熱エネルギーが無駄に放出されるのも抑制できるから、熱損失も低減できる。これにより、加熱調理器1全体のエネルギー消費量の低減を図ることが可能となる。
【0047】
さらに、このものでは、予熱工程が開始されてから庫内温度が予熱温度Tsに達すれば、そのまま温度維持動作に移行するから、初期加熱動作の終了後、加熱工程が開始される時期が異なっても、被加熱物Fの加熱度合にばらつきが生じ難い。また、加熱庫10内が予熱温度Tsを大幅に超えて顕著な高温状態になることもなく、加熱庫10内の温度が予熱温度Tsに達してから温度維持動作に移行するまでの間、循環ファン14を常時作動させているから、加熱工程が開始される時点で加熱庫10内の温度分布に顕著な偏りも生じない。これにより、加熱工程にて被加熱物Fを均一に加熱することができ、料理の完成度を高く保つことが可能である。よって、調理性能も向上する。
【0048】
また、予熱工程が開始されてから温度維持動作に移行するまでに要する時間を短縮することもできるから、全体の加熱時間が冗長にならないし、比較的早い段階で加熱工程を開始させることもできる。よって、使い勝手も向上する。
【0049】
特に、このものでは、予熱工程にて加熱庫10内の温度を予熱温度Tsで維持するにあたって、バーナ13の火力が制限火力に減少されても、循環ファン14のファンモータ15の回転数を制限回転数に下げて作動状態を維持するから、予熱工程中、加熱庫10内の空気を常に対流させておくことができる。これにより、加熱工程が開始される時点で、加熱庫10内の温度分布に偏りが生じ難く、加熱工程にて被加熱物Fをより均一に加熱することができるから、料理の完成度をより高く保つことが可能である。よって、調理性能が一層向上する。
【0050】
尚、上記実施の形態では、予熱工程および加熱工程において、庫内温度が設定温度(予熱温度又は設定加熱温度)Tsを超えた場合に、バーナ13を消火させるものを説明したが、庫内温度が設定温度Tsを超えた場合に、バルブユニットの開度を調整してバーナ13の火力を設定火力より小さい制限火力(例えば、弱火力)に減少させるものとしてもよい。
【0051】
また、上記実施の形態では、予熱工程の温度維持動作において、バーナ13の消火(火力の減少)に合わせて循環ファン14を燃焼回転数より低い制限回転数にて作動させるものを説明したが、バーナ13の消火(火力の減少)に合わせて循環ファン14を停止させるものとしてもよい。このものでは、ファンモータ15を駆動させるための電流の消費量を抑制できるから、より一層エネルギー消費量の低減を図ることが可能となる。
【0052】
本発明は、バーナ13で生成された熱気を循環ファン14によって加熱庫10内に循環させることで、加熱庫10内に収容された被加熱物Fを加熱するガスオーブンに限らず、本体上面に単数又は複数のコンロバーナを有するガスコンロであって、本体内に、被加熱物Fを収容する加熱庫と、熱気を生成するオーブンバーナと、上記熱気を加熱庫内に導入し循環させる循環ファンとを備え、オーブンバーナから放出された熱気を循環ファンによって加熱庫内に循環させて、被加熱物Fを加熱するオーブン機能を備えたものにも適用できる。
【符号の説明】
【0053】
1 加熱調理器
10 加熱庫
13 バーナ
14 循環ファン
16 庫内温度センサ(温度検出手段)
4 制御回路
図1
図2