特許第6948864号(P6948864)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948864
(24)【登録日】2021年9月24日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】構造物
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20210930BHJP
【FI】
   E04H9/02 321A
   E04H9/02 301
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-140318(P2017-140318)
(22)【出願日】2017年7月19日
(65)【公開番号】特開2019-19596(P2019-19596A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】小倉 史崇
(72)【発明者】
【氏名】麻生 直木
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 特公平01−027224(JP,B2)
【文献】 実開昭60−187201(JP,U)
【文献】 特開平01−163332(JP,A)
【文献】 特開平09−317246(JP,A)
【文献】 特開2002−004628(JP,A)
【文献】 特開平05−295796(JP,A)
【文献】 特開昭50−091911(JP,A)
【文献】 特開2000−179180(JP,A)
【文献】 特開平10−292664(JP,A)
【文献】 実開平07−021927(JP,U)
【文献】 国際公開第95/030814(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーナー部を形成する第一架構及び第二架構と、
前記コーナー部における前記第一架構と前記第二架構とに架設される上下の支持梁と、
前記第一架構及び前記第二架構から離れた状態で、上下の前記支持梁に連結される耐震部材又は制振部材と、
を備える構造物。
【請求項2】
外周部に前記第一架構及び前記第二架構が配置される吹抜け空間を備え、
前記耐震部材又は前記制振部材は、前記吹抜け空間に配置される、
請求項1に記載の構造物。
【請求項3】
吹抜け空間を挟んで互いに対向する一対の第一架構及び第二架構と、
前記一対の第一架構及び第二架構に架設される上下の支持梁と、
前記吹抜け空間に配置され、前記第一架構及び前記第二架構から離れた状態で、前記上下の支持梁に連結される耐震部材又は制振部材と、
を備える構造物。
【請求項4】
前記支持梁を支持する吊り材を備える、
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の構造物。
【請求項5】
前記耐震部材又は前記制振部材の設置階よりも上階に設けられ、前記設置階よりも剛性が高い高剛性階を備える、
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
吹き抜け空間を有する構造物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−179180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、構造物には、耐震部材や制振部材が設けられる。この場合、耐震部材や制振部材を支持する支持梁のスパン(支持スパン)が長いと、耐震部材や制振部材の重量等によって支持梁のたわみ量が大きくなる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、耐震部材又は制振部材を支持する支持梁のたわみ量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る構造物は、コーナー部を形成する第一架構及び第二架構と、前記コーナー部における前記第一架構と前記第二架構とに架設される上下の支持梁と、上下の前記支持梁に連結される耐震部材又は制振部材と、を備える。
【0007】
第1態様に係る構造物によれば、コーナー部を形成する第一架構及び第二架構を備える。このコーナー部における第一架構と第二架構とには、上下の支持梁が架設される。また、上下の支持梁には、耐震部材又は制振部材が連結される。これにより、構造物の耐震性能又は制振性能が向上する。
【0008】
また、上下の支持梁は、前述したように、コーナー部における第一架構及び第二架構に架設される。これにより、例えば、第一架構と、当該第一架構と対向する他の架構とに支持梁を架設する場合と比較して、支持梁のスパン(支持スパン)を短くすることができる。したがって、耐震部材又は制振部材の重量による支持梁のたわみ量を低減することができる。
【0009】
第2態様に係る構造物は、第1態様に係る構造物において、外周部に前記第一架構及び前記第二架構が配置される吹抜け空間を備え、前記耐震部材又は前記制振部材は、前記吹抜け空間に配置される。
【0010】
第2態様に係る構造物によれば、耐震部材又は制振部材は、吹抜け空間に配置される。このように吹抜け空間に耐震部材又は制振部材を配置することにより、構造物の内部スペースの有効利用を図ることができる。
【0011】
第3態様に係る構造物は、吹抜け空間を挟んで互いに対向する一対の第一架構及び第二架構と、前記一対の第一架構及び第二架構に架設される上下の支持梁と、前記吹抜け空間に配置され、前記上下の支持梁に連結される耐震部材又は制振部材と、を備える。
【0012】
第3態様に係る構造物によれば、一対の第一架構及び第二架構は、吹抜け空間を挟んで互いに対向する。この一対の第一架構及び第二架構には、上下の支持梁が架設される。また、上下の支持梁には、耐震部材又は制振部材が連結される。これにより、構造物の耐震性能又は制振性能が向上する。
【0013】
また、耐震部材又は制振部材は、吹抜け空間に配置される。このように吹抜け空間に耐震部材又は制振部材を配置することにより、構造物の内部スペースの有効利用を図ることができる。
【0014】
第4態様に係る構造物は、第1態様第3態様の何れか1つに係る構造物において、前記支持梁を支持する吊り材を備える。
【0015】
第4態様に係る構造物によれば、吊り材によって支持梁を支持することにより、支持梁のたわみ量を低減することができる。
【0016】
第5態様に係る構造物は、第1態様第4態様の何れか1つに係る構造物において、前記耐震部材又は前記制振部材の設置階よりも上階に設けられ、前記設置階よりも剛性が高い高剛性階を備える。
【0017】
第5態様に係る構造物によれば、耐震部材又は制振部材の設置階よりも上階には、高剛性階が設けられる。高剛性階は、耐震部材又は制振部材の設置階よりも剛性が高くされる。
【0018】
これにより、地震時に構造物が曲げ変形したときに、高剛性階の曲げ戻し作用によって耐震部材又は制振部材の設置階の層間変形量が大きくなる。したがって、耐震部材又は制振部材に、耐震性能又は制振性能を効率的に発揮させることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明に係る構造物によれば、耐震部材又は制振部材を支持する支持梁のたわみ量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第一実施形態に係る構造物を示す平断面図である。
図2図1の2−2線断面図である。
図3】第二実施形態に係る構造物を示す平断面図である。
図4】第二実施形態に係る構造物の変形例を示す図3の一部拡大図に相当する平断面図である。
図5】第一実施形態に係る構造物の変形例を示す図2に対応する断面図である。
図6】第一実施形態に係る構造物の変形例を示す図2に対応する断面図である。
図7】(A)及び(B)は、第一実施形態に係る構造物の変形例を示す平面図である。
図8】第一実施形態に係る構造物の変形例を示す図2に対応する断面図である。
図9】第一実施形態に係る構造物の変形例を示す図2に対応する断面図である。
図10】第一実施形態に係る構造物の変形例を示す図2に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る構造物について説明する。なお、図1に示される矢印X方向及び矢印Y方向は、互いに直交する水平二方向を示している。
【0022】
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について説明する。
【0023】
(構造物)
図1には、本実施形態に係る構造物10の所定階が示されている。構造物10は、複数階で構成されている。また、構造物10は、水平二方向(矢印X方向及び矢印Y方向)に配列された複数の柱12と、隣り合う柱12に架設された複数の梁14と、梁14に支持されたスラブ(床スラブ)16とを有している。この構造物10の中央部には、吹抜け空間20が形成されている。
【0024】
(吹抜け空間)
吹抜け空間20は、スラブ16が設けられていない空間とされており、構造物10の複数階に亘って形成されている。また、吹抜け空間20は、構造物10の所定階から最上階に亘って形成されている。なお、本実施形態の吹抜け空間20は、屋根が設けられた屋内空間とされても良いし、屋根が設けられていない屋外空間とされている。
【0025】
吹抜け空間20は、平面視にて矩形状に形成されている。この吹抜け空間20は、4つのコーナー部20Cを有している。また、吹抜け空間20の外周部には、複数の第一架構30X及び複数の第二架構30Yが配置されている。これらの第一架構30X及び第二架構30Yは、吹抜け空間20の各コーナー部20Cを形成している。
【0026】
具体的には、吹抜け空間20の一辺は、複数の第一架構30Xによって形成されている。各第一架構30Xは、一対の柱12と、一対の柱12に架設された梁14とを有している。また、吹抜け空間20の他辺は、複数の第二架構30Yによって形成されている。各第二架構30Yは、一対の柱12と、一対の柱12に架設された梁14とを有している。
【0027】
第一架構30Xと第二架構30Yとは、平面視にて、互いに交差する方向に沿って配置されている。そして、隣り合う第一架構30Xと第二架構30Yとは、吹抜け空間20のコーナー部20Cにおいて接続されており、当該コーナー部20Cの頂部に設置された柱(隅柱)12を共有している。
【0028】
なお、本実施形態では、第一架構30Xと第二架構30Yとは、平面視にて、互いに直交又は略直交する方向(矢印X方向及び矢印Y方向)に沿って配置されている。
【0029】
(跳出しスラブ)
吹抜け空間20の外周部には、跳出しスラブ18が配置されている。跳出しスラブ18は、吹抜け空間20を囲むように、矩形の環状に形成されている。この跳出しスラブ18は、第一架構30X及び第二架構30Yの梁14から跳ね出している。なお、跳出しスラブ18は、例えば、共用廊下とされる。
【0030】
(支持梁)
第一架構30Xと第二架構30Yとには、制振壁50を支持する支持梁40が架設されている。支持梁40は、第一架構30Xと第二架構30Yとに亘るように、平面視にて第一架構30X及び第二架構30Yに斜めに架設されている。換言すると、支持梁40は、第一架構30Xと第二架構30Yとに火打ち状に架設されている。
【0031】
また、支持梁40は、平面視にて、第一架構30X及び第二架構30Y(矢印X方向及び矢印Y方向)に対して傾斜されている。これにより、平面視にて、支持梁40、第一架構30X、第二架構30Yが三角形状を成している。この支持梁40によって第一架構30Xと第二架構30Yとを連結することにより、第一架構30X及び第二架構30Yの一体性が高められている。
【0032】
図2に示されるように、支持梁40は、構造物10の所定階と、当該所定階の上階に設けられている。各支持梁40の一端部は、第一架構30Xの梁14の側面に、アンカー部材42によって接合されている。また、支持梁40の他端部は、第二架構30Yの梁14の側面にアンカー部材42によって接合されている。なお、本実施形態の支持梁40は、H形鋼等の鋼材によって形成されている。
【0033】
(制振壁)
上下方向に隣り合う支持梁40は、吹抜け空間20に配置された鋼製の制振壁50によって連結されている。制振壁50は、鋼板を補強リブ等によって補強することにより形成されている。また、制振壁50は、上下の支持梁40の間に配置されており、その上端部が上側の支持梁40の中間部に接合されるとともに、その下端部が下側の支持梁40の中間部に接合されている。
【0034】
また、本実施形態の制振壁50は、構造物10の複数階に連続して設けられている。つまり、制振壁50は、連層壁とされている。これらの制振壁50は、地震時におけるせん断変形に伴って降伏することにより、振動エネルギーを吸収する。なお、以下では、制振壁50が設置された構造物10の階を設置階FAという。また、制振壁50は、連層壁に限らず、例えば、一層飛ばしで(一階おきに)設けられても良い。
【0035】
(頂部梁)
支持梁40は、頂部梁(トップビーム)60に吊り下げ支持されている。具体的には、構造物10の頂部には、頂部梁60が設けられている。頂部梁60は、例えば、H形鋼等の鋼材によって形成されている。
【0036】
頂部梁60は、吹抜け空間20の上方に配置されており、その両端部が基礎部62を介して構造物10の屋根部22に支持されている。また、頂部梁60は、支持梁40と同様に、平面視にて、第一架構30X及び第二架構30Y(矢印X方向及び矢印Y方向)に対して傾斜されている。この頂部梁60に、複数の吊り材64を介して支持梁40が支持されている。
【0037】
(吊り材)
吊り材64は、例えば、H形鋼等の鋼材によって形成されている。各吊り材64は、頂部梁60の中間部から下方へ延出し、吹抜け空間20に配置されている。また、各吊り材64の下端部は、支持梁40の中間部に接合されている。この吊り材64によって、支持梁40が支持されている。
【0038】
また、上下方向の隣り合う支持梁40同士も吊り材64によって連結されている。これにより、各支持梁40が、吊り材64を介して頂部梁60に支持されている。なお、本実施形態では、平面視にて制振壁50の幅方向の両側に、一対の吊り材64が配置されている。
【0039】
(作用)
次に、第一実施形態の作用について説明する。
【0040】
本実施形態に係る構造物10の中央部には、吹抜け空間20が形成されている。吹抜け空間20の各コーナー部20Cは、第一架構30X及び第二架構30Yによって形成されている。
【0041】
コーナー部20Cにおける第一架構30Xと第二架構30Yとには、上下の支持梁40が架設されている。また、上下の支持梁40には、制振壁50が連結されている。この制振壁50が、地震時に降伏することにより、振動エネルギーが吸収される。したがって、構造物10の制振性能が向上する。
【0042】
ここで、制振壁50を支持する支持梁40は、前述したように、コーナー部20Cにおける第一架構30X及び第二架構30Yに斜め(火打ち状)に架設されている。これにより、例えば、矢印X方向に互いに対向する第一架構30Xに支持梁40を架設する場合と比較して、支持梁40のスパン(支持スパン)を短くすることができる。したがって、制振壁50の重量による支持梁40のたわみ量を低減することができる。
【0043】
さらに、支持梁40は、吊り材64を介して頂部梁60に支持されている。これにより、支持梁40のたわみ量がさらに低減される。
【0044】
また、コーナー部20Cを形成する第一架構30X及び第二架構30Yに支持梁40を斜めに架設することにより、第一架構30X及び第二架構30Yの一体性が高められる。これにより、構造物10の耐震性能が向上する。また、地震時における吹抜け空間20の変形が抑制される。
【0045】
さらに、制振壁50は、吹抜け空間20に配置されている。このように吹抜け空間20に制振壁50を配置することにより、構造物10の内部スペースの有効利用を図ることができる。
【0046】
しかも、支持梁40及び制振壁50の施工は、基本的に吹抜け空間20で行うことができる。したがって、構造物10の内部スペースを利用しながら、支持梁40及び制振壁50によって構造物10を補強することができる。また、支持梁40及び制振壁50のメンテナンス性も向上する。
【0047】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態において、第一実施形態と同じ構成の部材等には、同符号を付して説明を適宜省略する。
【0048】
図3には、本実施形態に係る構造物55の所定階が示されている。この構造物55は、吹抜け空間20の両側(矢印Y方向の両側)に配置される一対の架構30Xと、吹抜け空間20の両側(矢印X方向の両側)に配置される一対の架構30Yとを備えている。
【0049】
一対の架構30Xは、吹抜け空間20を挟んで所定方向(矢印Y方向)に互いに対向して配置されている。この一対の架構30Xには、上下の支持梁56が架設されている。上下の支持梁56は、吹抜け空間20を所定方向に横切るように配置されている。また、上下の支持梁56は、一対の架構30Xの柱12に架設されている。この上下の支持梁56には、制振壁50が連結されている。制振壁50は、吹抜け空間20に配置されている。
【0050】
一対の架構30Yは、吹抜け空間20を挟んで所定方向(矢印X方向)に互いに対向して配置されている。の一対の架構30Yには、上下の支持梁58が架設されている。上下の支持梁58は、吹抜け空間20を所定方向に横切るように配置されている。また、支持梁58は、一対の架構30Yの柱12に架設されている。この上下の支持梁58には、制振壁50が連結されている。制振壁50は、吹抜け空間20に配置されている。
【0051】
なお、支持梁56と支持梁58とは、吹抜け空間20内において、平面視にて十字状に交差(接合)されている。また、一対の架構30Xは、一対の第一架構及び第二架構の一例である。また、一対の架構30Yは、一対の第一架構及び第二架構の一例である。
【0052】
(作用)
次に、第二実施形態の作用について説明する。
【0053】
本実施形態に係る構造物55によれば、一対の架構30Xは、吹抜け空間20の両側に配置される。この一対の架構30Xには、上下の支持梁56が架設される。また、上下の支持梁56には、制振壁50が連結される。これにより、構造物55の制振性能が向上する。
【0054】
また、制振壁50は、吹抜け空間20に配置されている。このように吹抜け空間20に制振壁50を配置することにより、構造物55の内部スペースの有効利用を図ることができる。
【0055】
さらに、吹抜け空間20内において、支持梁56と支持梁58とを十字状に接合することにより、支持梁56,58のたわみ量が低減されるとともに、地震時における吹抜け空間20の変形が抑制される。
【0056】
なお、図4に示される変形例のように、隣り合う支持梁56と支持梁58とに斜めに支持梁59を架設し、当該支持梁59に制振壁50を連結することも可能である。この場合、支持梁59のスパン(支持スパン)が短くなるため、支持梁59のたわみ量が低減される。
【0057】
また、支持梁56,58,59は、上記第一実施形態と同様に、吊り材によって支持しても良い。
【0058】
(変形例)
次に、上記第一実施形態及び第二実施形態の変形例について説明する。なお、以下では、第一実施形態を例に各種の変形例について説明するが、これらの変形例は第二実施形態にも適宜適用可能である。
【0059】
上記第一実施形態では、支持梁40が吊り材64を介して頂部梁60に支持されるが、上記実施形態はこれに限らない。例えば、図5に示されるように、支持梁40は、当該支持梁40の設置階FAよりも上階FBの梁14等の躯体に、斜めの吊り材65を介して支持させても良い。また、吊り材64は、適宜省略可能である。
【0060】
また、図6に示される変形例のように、制振壁50の設置階FAよりも上階FBを、高剛性階FB1としても良い。高剛性階FB1は、制振壁50の設置階FAよりも、剛性が高くされている。
【0061】
具体的には、構造物10の最上階は、高剛性階FB1とされている。この高剛性階FB1は、ブレース66や間柱68等の耐震部材によって適宜補強されている。これにより、高剛性階FB1の剛性が、制振壁50の設置階FAよりも高くされている。
【0062】
この結果、地震時に構造物10が曲げ変形したときに、高剛性階FB1の曲げ戻し作用によって制振壁50の設置階FAの層間変形量が大きくなる。したがって、制振壁50に制振性能を効率的に発揮させることができる。なお、ここでいう高剛性階FB1の剛性とは、せん断剛性や曲げ剛性を意味する。
【0063】
なお、高剛性階FB1は、構造物10の最上階に限らず、制振壁50の設置階FAよりも上階に設定することができる。
【0064】
次に、上記第一実施形態では、吹抜け空間20の一辺が複数の第一架構30Xによって形成されるが、上記実施形態はこれに限らない。吹抜け空間20の一辺は、少なくとも1つの第一架構30Xによって形成することができる。これと同様に、上記実施形態では、吹抜け空間20の他辺が複数の第二架構30Yによって形成されるが、上記実施形態はこれに限らない。吹抜け空間20の他辺は、少なくとも1つの第二架構30Yによって形成することができる。
【0065】
また、上記第一実施形態では、吹抜け空間20が平面視にて正方形状に形成されるが、吹抜け空間は、平面視にて長方形状であっても良い。また、吹抜け空間20は、平面視にて矩形状に限らず、三角形状や五角形状の多角形状であっても良い。さらに、吹抜け空間は、構造物10における所定の複数階に適宜設けることができる。
【0066】
また、上記第一実施形態では、吹抜け空間20のコーナー部20Cを形成する第一架構30X及び第二架構30Yに支持梁40が架設されるが、上記実施形態はこれに限らない。例えば、図7(A)には、平面視にてコの字状に形成された構造物70が示されている。この構造物70は、その中央部に2つのコーナー部70Cを有している。各コーナー部70Cは、第一架構70X及び第二架構70Yによって形成されている。これらの第一架構70Xと第二架構70Yとに、制振壁50を支持する支持梁40を架設しても良い。
【0067】
また、例えば、図7(B)には、平面視にてL字状に形成された構造物80が示されている。この構造物80は、1つのコーナー部80Cを有している。このコーナー部80Cは、第一架構80X及び第二架構80Yによって形成されている。これらの第一架構80X及び第二架構80Yに、制振壁50を支持する支持梁40を架設しても良い。
【0068】
また、上記第一実施形態では、平面視にて、第一架構30Xと第二架構30Yとが成す角度が直交又は略直交とされるが、上記実施形態はこれに限らない。第一架構と第二架構とが成す角度は適宜変更であり、例えば、鈍角であっても良いし、鋭角であっても良い。つまり、第一架構と第二架構とは互い交差する方向に沿って配置されており、コーナー部を形成していれば良い。
【0069】
また、上記第一実施形態では、支持梁40が第一架構30X及び第二架構30Yの梁14に架設されるが、上記実施形態はこれに限らない。支持梁は、例えば、第一架構30X及び第二架構30Yの柱12に架設されても良い。
【0070】
また、支持梁40を跳出しスラブ18に接合し、支持梁40の軸力や曲げを補剛しても良い。これにより、例えば、支持梁40を梁14に固定するアンカー部材42の本数を低減することができる。また、跳出しスラブ18は、適宜省略可能である。
【0071】
また、上記第一実施形態では、吹抜け空間20に複数の制振壁50が設置されるが、上記実施形態はこれに限らない。吹抜け空間20には、少なくとも一つの制振壁50を設置することができる。また、図8に示されるように、1つの制振壁52を構造物10の複数階(複数の設置階FA)に亘って配置することも可能である。なお、図8に示される例では、制振壁52が鉄骨架台54を介して上下の支持梁40に連結されている。
【0072】
また、図9に示される変形例のように、上下の支持梁90の梁成を高くしても良い。この場合、支持梁90のたわみ量が低減されるため、上下の支持梁90を支持する吊り材を省略し易くなる。これと同様に、図10に示される変形例のように、複数階に亘る制振壁52を支持する支持梁90の梁成を高くすることも可能である。
【0073】
また、上記第一実施形態では、上下の支持梁40に制振壁50が連結されるが、上記実施形態はこれに限らない。上下の支持梁40には、制振壁及び制振ダンパ(オイルダンパー及びアンボンドブレースを含む)等の制振部材、又は耐震壁及びブレース等の耐震部材を連結しても良い。また、上下の支持梁40には、制振部材及び耐震部材を適宜組み合わせて連結しても良い。
【0074】
また、制振部材及び耐震部材は、構造物10の変形モードに応じて適宜設けることができる。例えば、曲げ変形が卓越するような構造物では、構造物の下層階に制振壁等を集中的に配置することにより、制振効果を高めることができる。また、例えば、構造物の同じ階に、履歴系ダンパ及び速度依存系ダンパ等の制振ダンパを適切に混在させ、大地震時と中小地震時の双方に効果を発揮させても良い。
【0075】
また、上記第一実施形態では、支持梁40が鉄骨造とされるが、支持梁は、例えば、鉄筋コンクリート造や鉄筋鉄骨コンクリート造等であっても良い。
【0076】
また、上記第一実施形態では、第一架構30X及び第二架構30Yが鉄筋コンクリート造とされるが、第一架構及び第二架構は、鉄筋鉄骨コンクリート造や鉄骨造とされても良い。
【0077】
さらに、上記実施形態は、既存構造物の耐震補強、制振補強等に限らず、新築構造物にも適宜適用可能である。
【0078】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0079】
10 構造物
20 空間
20C コーナー部
30X 第一架構
30Y 第二架構
40 支持梁
50 制振壁(制振部材)
52 制振壁(制振部材)
55 構造物
56 支持梁
58 支持梁
64 吊り材
65 吊り材
70 構造物
70C コーナー部
70X 第一架構
70Y 第二架構
80 構造物
80C コーナー部
80X 第一架構
80Y 第二架構
FA 設置階
FB1 高剛性階
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10