(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータに搭載されるエンコーダは、各種ノイズの影響を受けるため、製品の使用環境により出力が変化して角度誤差の発生状況が変化するおそれがある。例えば、外乱磁界による磁気ノイズや電磁波ノイズの影響によって感磁素子の出力が変化する。また、感磁素子の出力、および、基板に搭載されたエンコーダ回路による感磁素子の出力の増幅値は、エンコーダが固定されるモータ本体のフレームグランドノイズや電源ノイズなどの電気的ノイズの影響を受けるおそれがある。
【0005】
このような電磁波ノイズ対策として、特許文献1では、基板を覆うカバー部材として鉄などの磁性体からなるものを用いており、カバー部材を磁気シールドとして機能させている。しかしながら、基板にはエンコーダケーブルが接続されており、エンコーダケーブルには、ESD(静電気放電)やEFT/B(電気的ファーストトランジェントバースト)などの電気的ノイズがのるため、エンコーダ回路の周囲に電気的ノイズが侵入するが、その対策は十分ではなかった。
【0006】
そこで、エンコーダケーブルをモータケースのフレームグランドと電気的に接続することにより、エンコーダケーブルにのる電気的ノイズを低減させることが提案されている。例えば、エンコーダケーブルの端部にフレームグランド線を引き出して、基板を支持するエンコーダホルダをモータケースの端面にねじ止めする際、フレームグランド線の端子を一緒に導電性の固定ねじを用いてねじ止めすることが提案されている。
【0007】
しかしながら、エンコーダケーブルから引き出したフレームグランド線をねじ止めする作業は、基板およびエンコーダホルダの周囲のスペースが狭い場合には作業性が悪いという問題点があった。例えば、モータの外形が小さい場合、エンコーダホルダのサイズを小さくしなければならず、ねじ止め用の固定孔を狭いスペースに設けなければならない。従ってねじ止め作業が困難であった。また、エンコーダケーブルから引き出したフレームグランド線をねじ止め位置まで引き回すスペースが狭く、ねじ止め後にフレームグランド線の端部に設けられた端子を変形させなければならないこともあった。
【0008】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、エンコーダを備えるモータにおいて、エンコーダケーブルをモータのフレームグランドと接続する際の作業性を向上させることにある
。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明のモータは、回転軸を備えるモータ本体と、前記回転軸の回転を検出するエンコーダとを有し、前記エンコーダは、前記回転軸と一体に回転する磁石と、前記磁石と対向する感磁素子および基板側コネクタが搭載される基板と、信号線およびフレームグランド線を備えるエンコーダケーブルと、前記基板上にエンコーダ回路と絶縁されて設けられているパターンと電気的に接続されるターミナル部材と、
前記基板と前記モータ本体との間に配置されるエンコーダホルダと、を備え、
前記基板は、前記エンコーダホルダを介して前記モータ本体に固定され、前記ターミナル部材の一端は、前記パターンを介して、前記基板側コネクタに接続された前記エンコーダケーブルの前記フレームグランド線と電気的に接続され、他端は、
前記エンコーダホルダおよび前記ターミナル部材を前記モータ本体に固定する導電性の固定部材を介して前記モータ本体のフレームグランドと電気的に接続され
、前記エンコーダホルダは、前記磁石が配置される磁石配置孔を備え、前記磁石配置孔の外周側に前記固定部材を通すための固定孔が設けられ、前記ターミナル部材の前記他端は、前記エンコーダホルダにおいて前記固定孔が開口する部位に配置され、前記ターミナル部材の前記一端は、前記磁石配置孔と対向する前記基板に向けて延びており、前記基板は、前記他端が挿入される第1貫通孔を備え、前記パターンは、前記第1貫通孔に挿入される前記一端を介して、前記ターミナル部材と電気的に接続されることを特徴とする。
【0010】
本発明では、このように、エンコーダを備えるモータにおいて、エンコーダは、磁石と対向する感磁素子が基板に搭載され、基板にはエンコーダケーブルが接続される。エンコーダケーブルはフレームグランド線を備えており、基板上のコネクタとエンコーダケーブルとを接続すると、フレームグランド線は、エンコーダ回路とは絶縁されたパターンを介して、ターミナル部材の一端と接続される。ターミナル部材の他端は導電性の固定部材を介してモータ本体のフレームグランドと電気的に接続されている。従って、エンコーダケーブルをモータ本体のフレームグランドと電気的に接続する作業として、基板上のコネクタへのエンコーダケーブルの接続を行うだけでよいので、作業性が良く、確実に接続することができる。
【0011】
また、本発明では、前記エンコーダは、前記基板と前記モータ本体との間に配置されるエンコーダホルダを備え、前記基板は、前記エンコーダホルダを介して前記モータ本体に固定され、前記固定部材は、前記エンコーダホルダおよび前記ターミナル部材を前記モータ本体に固定す
る。このようにすると、共通の固定部材によってエンコーダホルダおよびターミナル部材を固定することができ、且つ、この固定部材を介してモータ本体とターミナル部材とを電気的に導通させることができる。従って、部品点数を削減することができ、製造コストを低減させることができる。
【0012】
さらに、本発明では、前記エンコーダホルダは、前記磁石が配置される磁石配置孔を備え、前記磁石配置孔の外周側に前記固定部材を通すための固定孔が設けられ、前記ターミナル部材の
前記他端は、前記エンコーダホルダにおいて前記固定孔が開口する部位に配置され、
前記ターミナル部材の前記一端は、前記磁石配置孔と対向する前記基板に向けて延びており、前記基板は、前記他端が挿入される第1貫通孔を備え、前記パターンは、前記第1貫通孔に挿入される前記他端を介して、前記ターミナル部材と電気的に接続され
る。このようにすると、フレームグランド線が接続されるパターンとモータ本体とを導通させる経路を短くすることができ、基板の外周側からパターンが形成された面にターミナル部材を回り込ませる必要がない。従って、ターミナル部材の形状を単純化し、且つ、小型化することができる。また、ターミナル部材がノイズの影響を受けにくいので、ノイズ耐性を高めることができる。
【0013】
本発明において、前記エンコーダホルダの外周部分を内周側に切り欠いた切り欠きを備え、前記固定部材および前記ターミナル部材は、前記切り欠きに配置されることが好ましい。このようにすると、固定部材およびターミナル部材を軸線方向から見た時のエンコーダホルダの内周側に配置でき、スペース効率がよい。よって、モータを小型化することができる。
【0014】
本発明において、前記磁石と対向する基板ホルダを備え、前記基板は前記磁石と反対側
から前記基板ホルダに固定され、前記基板ホルダは、前記基板のシグナルグランドと電気的に接続され、且つ、前記回転軸の中心軸線方向から見て前記第1貫通孔と重なる位置に前記第1貫通孔より大きい第2貫通孔が形成されていることが好ましい。このようにすると、シグナルグランド電位の基板ホルダによって磁石の側から基板を覆うことができるので、基板上に設けられた感磁素子の出力およびその増幅値に対する電磁波ノイズの影響を低減できる。また、フレームグランド電位のターミナル部材を基板ホルダと接触させないようにすることができる。
【0015】
本発明において、前記エンコーダホルダは、複数箇所で前記モータ本体に固定され、前記パターンは、前記基板上に設けられたランドと電気的に接続され、前記固定部材は、前記複数箇所のうちで前記ランドに最も近い1箇所を前記モータ本体に固定することが好ましい。このようにすると、固定部材とランドとの距離を短くすることができるので、ターミナル部材を小型化することができる。従って、ターミナル部材が低コストになるため、製造コストを低減させることができる。
【0016】
本発明において、前記ランドは、前記基板上において前記感磁素子より前記基板側コネクタに近い位置に配置されていることが好ましい。このようにすると、感磁素子をフレームグランド電位のパターンおよびランドから離すことができ、エンコーダ回路および感磁素子への影響を少なくすることができる。
【0017】
本発明において、前記基板側コネクタは、エンコーダケーブルの前記信号線および前記フレームグランド線のそれぞれと接続される複数の端子接続部を備え、前記複数の端子接続部のうちで前記フレームグランド線と接続される1箇所は、他の端子接続部よりも前記ランドに近いことが好ましい。このようにすると、フレームグランド電位のパターンを小さくすることができるため、基板上のパターンレイアウトが制限されにくく、設計の自由度が高まる。また、エンコーダケーブルの信号線と接続されるパターンをフレームグランド電位のパターンおよびランドから離すことができ、エンコーダ回路および感磁素子への影響を少なくすることができる。
【0018】
本発明において、前記エンコーダは、前記基板および前記磁石を覆う外側カバーを備え、前記エンコーダケーブルは、前記外側カバーに設けられた配線取り出し部で保持され、前記基板側コネクタは、前記基板の中心に対して前記配線取り出し部とは反対側に配置されることが好ましい。このようにすると、配線取り出し部から基板側コネクタまでの距離が長いため、コネクタの接続が容易であり、作業性が良い。また、コネクタの接続時にエンコーダケーブルを大きく撓ませる必要がないので、エンコーダケーブルに負荷がかかりにくい。
【0019】
この場合に、前記基板側コネクタの差し込み口は、前記配線取り出し部とは反対側を向いていることが好ましい。このようにすると、基板とは反対側からケーブル側コネクタが接続されるため、基板上にケーブル側コネクタの配置スペースおよびエンコーダケーブルを引き回すスペースを大きくとる必要がない。これにより、基板上のパターンレイアウトが制限されにくくなり、設計の自由度が高まる。また、エンコーダケーブルを逆向きに折り返して引き回すため、基板とエンコーダケーブルとの距離を大きくとることができる。従って、感磁素子およびエンコーダ回路に対するノイズの影響を抑制できる。
【0020】
本発明において、前記固定部材は、前記回転軸の中心軸線方向から見て前記基板と少なくとも一部が重なることが好ましい。このようにすると、基板の外周側に固定部材の配置スペースを大きくとる必要がないので、エンコーダの径方向のサイズを小さくすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、エンコーダを備えるモータにおいて、エンコーダは、磁石と対向する感磁素子が基板に搭載され、基板にはエンコーダケーブルが接続される。エンコーダケーブルはフレームグランド線を備えており、基板上のコネクタとエンコーダケーブルとを接続すると、フレームグランド線は、エンコーダ回路とは絶縁されたパターンを介して、ターミナル部材の一端と接続される。ターミナル部材の他端は導電性の固定部材を介してモータ本体のフレームグランドと電気的に接続されている。従って、エンコーダケーブルをモータ本体のフレームグランドと電気的に接続する作業として、基板上のコネクタへのエンコーダケーブルの接続を行うだけでよいので、作業性が良く、確実に接続することができる。
また、共通の固定部材によってエンコーダホルダおよびターミナル部材を固定することができ、且つ、この固定部材を介してモータ本体とターミナル部材とを電気的に導通させることができる。従って、部品点数を削減することができ、製造コストを低減させることができる。さらに、フレームグランド線が接続されるパターンとモータ本体とを導通させる経路を短くすることができ、基板の外周側からパターンが形成された面にターミナル部材を回り込ませる必要がない。従って、ターミナル部材の形状を単純化し、且つ、小型化することができる。また、ターミナル部材がノイズの影響を受けにくいので、ノイズ耐性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したモータの実施形態を説明する。
図1は本発明を適用したモータ1の外観斜視図である。また、
図2、
図3はエンコーダ10および第1軸受ホルダ42Aの分解斜視図であり、
図2は反出力側から見た分解斜視図、
図3は出力側から見た分解斜視図である。
図4はエンコーダ10、第1軸受ホルダ42A、および回転軸2の断面図である。
【0024】
(全体構成)
図1に示すように、モータ1は、回転軸2を備えるモータ本体3と、回転軸2の回転を検出するエンコーダ10を備える。モータ本体3は、ロータおよびステータ(図示省略)を収容するモータケース4を備える。ロータは回転軸2と一体に回転する。回転軸2の一方の端部は、モータケース4から外部へ突出する出力軸2aとなっている。本明細書において、回転軸2の中心軸線を符号Lで示す。また、モータケース4から出力軸2aが突出する方向を出力側L1とし、出力側L1の反対側を反出力側L2とする。エンコーダ10は、モータ本体3の反出力側L2の端部に固定される。また、本明細書において、XYZの3方向は互いに直交する方向であり、これら3方向の一方側をそれぞれX1、Y1、Z1とし、他方側をそれぞれX2、Y2、Z2とする。Z方向は中心軸線Lと平行であり、X方向およびY方向は中心軸線Lと直交する。
【0025】
(モータケース)
図1に示すように、モータケース4は、中心軸線L方向に延びる筒状ケース41と、筒状ケース41の反出力側L2の端部に固定される第1軸受ホルダ42Aと、筒状ケース41の出力側L1の端部に固定される第2軸受ホルダ42Bを備える。筒状ケース41、第1軸受ホルダ42A、および第2軸受ホルダ42Bは、中心軸線L方向に見た場合に略矩形である。筒状ケース41のX方向の一方側X1を向く側面には、配線取り出し部30が
設けられている。配線取り出し部30は、筒状ケース41の側面に形成された切り欠き(図示省略)と、切り欠きを覆う位置で側面に固定されたケーブルホルダ31を備える。モータ本体3には、給電用のモータケーブル(図示省略)が接続される。モータケーブルは、モータケース4の内側から筒状ケース41の切り欠きを通ってケーブルホルダ31の内側へ引き出され、ケーブルホルダ31の出力側L1の端部から外部へ取り出される。モータケーブルの先端には、図示しないモータアンプなどの制御装置に接続されるコネクタが設けられている。
【0026】
(第1軸受ホルダ)
エンコーダ10は、第1軸受ホルダ42Aに対して反出力側L2から固定される。
図2に示すように、第1軸受ホルダ42Aの反出力側L2の面には出力側L1に凹む円形凹部44が形成され、円形凹部44の外周側にはフランジ45が形成されている。円形凹部44の内周面には、外周側に凹む凹部441が等角度間隔の3箇所に形成されている。凹部441は、フランジ45の上端面から円形凹部44の底面まで延びている。また、フランジ45の内周縁には、凹部441が形成された周方向位置を除く範囲に、円形凹部44の縁に沿って反出力側L2に突出する環状壁46が形成されている。
【0027】
図2、
図3に示すように、円形凹部44の底部中央には軸受43が保持される。軸受43は、回転軸2の反出力側L2の端部を回転可能に支持する。また、円形凹部44の底部には、軸受43の外周部分を反出力側L2から押さえるように環状のプレート47が取り付けられる。回転軸2は、プレート47の中心に設けられた貫通孔48を通って反出力側L2に突出する。プレート47の外周縁には、等角度間隔の3箇所に突出部49が形成され、各突出部49は、第1軸受ホルダ42Aの凹部441に配置される。プレート47は、3箇所の突出部49が固定ねじ116によって円形凹部44の底部に固定される。
【0028】
(エンコーダ)
図2〜
図4に示すように、エンコーダ10は、第1軸受ホルダ42Aに固定される外側カバー11と、外側カバー11の内側に配置されるエンコーダカバー12と、エンコーダカバー12の内側に配置される基板ユニット13と、基板ユニット13を支持するエンコーダホルダ14と、エンコーダホルダ14の内周側に配置される磁石ホルダ15と、磁石ホルダ15に保持される磁石16を備える。
図4に示すように、磁石ホルダ15は、回転軸2の反出力側L2の先端に固定される。従って、磁石16は回転軸2と一体に回転する。基板ユニット13は、基板ホルダ50と、基板ホルダ50に固定される基板60とを備えており、基板60には、磁石16と対向する面に感磁素子17が搭載されている。本形態では、感磁素子17としてMR素子を用いる。
【0029】
(外側カバー)
外側カバー11は、中心軸線L方向に見た場合に略矩形の端板部111と、端板部111の外周縁から出力側L1へ立ち上がる筒状の側板部112を備える。
図1に示すように、側板部112のX方向の一方側X1を向く側面には、基板ユニット13に接続されるエンコーダケーブル5を通すための配線取り出し部113が設けられている。
図2、
図3に示すように、配線取り出し部113は、側板部112に形成された切り欠き117と、切り欠き117に取り付けられる保持部材118と、保持部材118および切り欠き117を覆うエンコーダケーブルホルダ119を備える。保持部材118およびエンコーダケーブルホルダ119には、それぞれ、エンコーダケーブル5を通して外側カバー11の内側へ引き込むための円形の保持穴118a、119aが形成されている。エンコーダケーブル5は、チューブが装着された部分が保持穴118a、119aに保持されている。エンコーダ10の外部において、エンコーダケーブル5の先端には、図示しないモータアンプなどの制御装置に接続されるコネクタ34が設けられている。
【0030】
外側カバー11と第1軸受ホルダ42Aは、側板部112の出力側L1の端面とフランジ45との間にシール部材114を介在させて、3箇所の角部に固定ねじ(図示省略)を締め込むことによって固定される。本形態では、外側カバー11およびモータケース4はアルミなどの非磁性材からなる。
【0031】
(エンコーダホルダ)
図2、
図3に示すように、エンコーダホルダ14は中心軸線L方向で所定の厚さ(高さ)を持つ筒状部材であり、磁石16の外周側を囲むように配置される。エンコーダホルダ14の外周面は、反出力側L2の部分がテーパ面であり、出力側L1の部分は円筒面である。エンコーダホルダ14は、中心軸線L方向から見て円形であり、その中央には円形の磁石配置孔141が形成されている。エンコーダホルダ14は、第1軸受ホルダ42Aの径方向の中央で回転可能に保持される回転軸2の中心軸線Lと磁石配置孔141とが同軸に配置されるように位置決めされて、第1軸受ホルダ42Aの円形凹部44の外周側に設けられた環状凸部442に対して反出力側L2から当接して、3本の固定ねじ145によって環状凸部442にねじ止めされる。環状凸部442は、外側カバー11の配線取り出し部113が形成されたX方向の一方側X1を除いて、周方向に連続して延在する。
【0032】
エンコーダホルダ14の反出力側L2の端面143には、基板ユニット13が固定される。端面143には、等角度間隔の3箇所に固定孔144が形成されている。固定孔144は、エンコーダホルダ14を第1軸受ホルダ42Aに固定する固定ねじ145の角度位置とは異なる角度位置に形成されている。基板ユニット13をエンコーダホルダ14に固定する固定ねじ(図示省略)は、固定孔144にネジ止めされる。
【0033】
(磁石)
図2〜
図4に示すように、磁石ホルダ15は、略円板状の磁石保持部151と、磁石保持部151の中心から出力側L1に突出する筒状の固定部152を備える。固定部152には、回転軸2の先端が圧入、接着剤、および止めネジの何れか、あるいは、これらを併用して固定される。本形態では、固定部152を径方向に貫通するねじ孔に止めネジが締め込まれ、回転軸2を側面から固定する。
図2、
図4に示すように、磁石16は、磁石保持部151の中央に形成された凹部に嵌合する円形の第1磁石161、および、第1磁石の外周縁に形成された段部に嵌合する環状の第2磁石162を備える。第1磁石161は周方向にN極とS極が1極ずつ着磁されている。一方、第2磁石162はN極とS極が周方向に交互に複数極ずつ着磁されている。
【0034】
図4に示すように、エンコーダホルダ14が第1軸受ホルダ42Aに固定されると、エンコーダホルダ14の磁石配置孔141の中央に回転軸2の先端が配置される。従って、回転軸2の先端に固定される磁石ホルダ15は磁石配置孔141の中央に配置される。第1磁石161および第2磁石162は、磁石配置孔141内において反出力側L2を向いて配置されるとともに、回転軸2の中心軸線Lを中心として同軸に配置される。
【0035】
(エンコーダカバー)
図2、
図3に示すように、エンコーダカバー12は、基板ユニット13に対して磁石16とは反対側(反出力側L2)から対向する端板部121と、端板部121の外周縁から出力側L1へ立ち上がる筒状部122を備える。筒状部122には、径方向から見た場合に外側カバー11の切り欠き117と重なる位置に、エンコーダケーブル5を通すための切り欠き123が形成されている。エンコーダカバー12は、筒状部122の出力側L1の端部がエンコーダホルダ14の外周端部の外側に嵌まった状態に組み付けられる。従って、エンコーダカバー12の筒状部122の出力側L1の端部は、切り欠き123を除いてエンコーダホルダ14および基板ユニット13によって塞がれる。
【0036】
エンコーダカバー12は導電性を有する磁性材からなる。例えば、エンコーダカバー12は鉄、パーマロイなどで形成されている。本形態では、エンコーダカバー12は、SPCCやSPCEなどの磁性金属板をプレス加工して形成されている。このように、磁性材で形成されたエンコーダカバー12によって感磁素子17を保持する基板ユニット13を覆うことにより、磁性材によって外乱磁界などの磁気ノイズおよび電磁波ノイズを吸収し、感磁素子17およびエンコーダ回路を磁気ノイズおよび電磁波ノイズから遮蔽することができる。
【0037】
(基板ユニット)
図5は基板ユニット13を反出力側L2から見た分解斜視図であり、
図6は基板ユニット13を出力側L1から見た分解斜視図である。
図5、
図6に示すように、基板ユニット13は、基板ホルダ50と、基板ホルダ50に対して反出力側L2から当接する基板60と、基板ホルダ50に対して基板60を固定する導電性の固定部材70と、基板ホルダ50に出力側L1から固定されるシールド部材80を備える。基板60は、中心軸線L方向に見て略円形であり、X方向の他方側X2の縁に基板側コネクタ18が搭載されている。基板側コネクタ18は、基板60の縁を直線状に切り欠いた切り欠き61に沿って配置されている(
図4参照)。基板ホルダ50は、中心軸線L方向に見て基板60と略同一形状であり、基板60と基板ホルダ50は、中心軸線L方向に当接する。
図4に示すように、基板60には磁石16側の面に感磁素子17が搭載され、磁石16と反対側の面に基板側コネクタ18が搭載されている。シールド部材80は、感磁素子17を磁石16の側から覆うように取り付けられている。従って、感磁素子17は、シールド部材80を介して磁石16と対向する。
【0038】
基板60には、基板ホルダ50に対する固定用の固定孔62が2箇所に形成されている。2箇所の固定孔62は、基板ホルダ50の中心を挟んで反対側に配置されている。また、2箇所の固定孔62のうちの一方は、基板60に搭載されたエンコーダ回路のシグナルグランドと電気的に接続されたグランドスルーホール621である。なお、2箇所の固定孔のどちらをグランドスルーホール621にしても良い。また、固定孔62を3か所以上設け、3か所で基板60と基板ホルダ50を固定してもよい。
【0039】
基板ホルダ50は、基板60と対向する端板部53と、端板部53の外周縁から反出力側L2に立ち上がる側板部54を備える。基板ホルダ50は、基板60の切り欠き61と中心軸線L方向で重なる部位において、端板部53が直線状にカットされた形状になっており、側板部54は直線状に延在する。端板部53には、基板60の固定孔62に対応するボス部51が2箇所に形成されている。固定部材70が固定孔62およびボス部51に挿入されることにより、基板ホルダ50に基板60が固定される。固定部材70はスプリングピンである。固定部材70としてスプリングピンを用いることにより、基板ホルダ50に対する基板60のがたつきが防止される。また、固定部材70は導電性の金属、例えばSUSで形成され、基板ホルダ50は導電性の金属、例えばアルミで形成されている。従って、固定部材70を介して基板ホルダ50に基板60が取り付けられると、固定部材70およびグランドスルーホール621を介して、基板ホルダ50が基板60に搭載されたエンコーダ回路のシグナルグランドと電気的に接続される。
【0040】
基板ホルダ50には、エンコーダホルダ14の端面143に形成された固定孔144に対応する3か所に固定ねじ(図示省略)を通すためのボス部52が形成されている。ボス部52は側板部54と繋がっている。本形態では、ボス部52の先端面が、基板60と当接する当接面となっている。また、基板60には、ボス部52および固定孔144に対応する3か所に固定ねじ(図示省略)を通すための固定孔63が形成されている。
【0041】
基板ユニット13は、3本の固定ねじ(図示省略)をそれぞれ基板60の固定孔63お
よび基板ホルダ50のボス部52に通して、その先端をエンコーダホルダ14の固定孔144にねじ止めすることにより、エンコーダホルダ14に固定される。本形態では、エンコーダホルダ14は樹脂などの絶縁材で形成されている。従って、エンコーダホルダ14を介して第1軸受ホルダ42Aに基板ユニット13を固定すると、基板ホルダ50は第1軸受ホルダ42Aから絶縁される。
【0042】
基板60は、反出力側L2を向く反出力側基板面60a、および、出力側L1を向く出力側基板面60bを備える。
図5に示すように、反出力側基板面60aには、エンコーダ回路を構成する回路素子、エンコーダケーブル5を接続するための基板側コネクタ18、および、接続端子173などが搭載されている。接続端子173は、基板60の外周縁に配置され、基板60の中心を挟んで基板側コネクタ18とは反対側に配置されている。基板60の外周縁には、接続端子173の径方向外側に切り欠き64が形成されている。
図6に示すように、感磁素子17は、出力側基板面60bの中央に配置される第1感磁素子171、および、フレキシブル配線基板174を介して接続端子173と接続される第2感磁素子172を備える。フレキシブル配線基板174は、基板60の切り欠き64を通り、基板60の出力側L1に引き回されている。第1感磁素子171および第2感磁素子172は、それぞれ、基板60上に構成されたエンコーダ回路のシグナルグランドと接続されるグランド端子(図示省略)を備える。また、出力側基板面60bには、第1感磁素子171の近傍に2つのホール素子175が搭載されている。2つのホール素子175は、感磁素子17の位置を基準として90度離れた角度位置に配置されている。
【0043】
基板ホルダ50において、端板部53の中央には、円形の貫通孔56が形成されている。また、基板ホルダ50において、端板部53の出力側L1の面には、出力側L1に突出する段差部57が形成されている。段差部57は、貫通孔56を囲んで環状に形成された部分と、端板部53の外周縁まで一定幅で帯状に延びる部分を備える。段差部57の外周寄りの部分には、略矩形の貫通孔58が形成されている。基板ホルダ50に基板60を固定したとき、貫通孔56に第1感磁素子171およびホール素子175が配置される。また、貫通孔58には、フレキシブル配線基板174を介して基板60上の接続端子173と接続された第2感磁素子172が配置される。
【0044】
基板ユニット13をエンコーダホルダ14に対して固定すると、基板ホルダ50の貫通孔56に配置される第1感磁素子171と第1磁石161が対向する(
図4参照)。また、基板ホルダ50の貫通孔58に配置される第2感磁素子172と第2磁石162が対向する。エンコーダ10は、第1感磁素子の出力側L1の表面と第1磁石161との間、および、第2感磁素子172の出力側L1の表面と第2磁石162の間に所定のギャップが形成される。
【0045】
第1感磁素子171およびその近傍に配置される2個のホール素子175と第1磁石161は、1回転で得られる第1感磁素子171の出力の周期を2個のホール素子175により判別することでアブソリュートエンコーダとして機能する。一方、第2感磁素子172と第2磁石162は、1回転で複数周期の出力が得られるため、インクリメンタルエンコーダとして機能する。エンコーダ10は、これらの2組のエンコーダの出力を処理することにより、高分解能で、且つ、高精度な位置検出を行うことができる。
【0046】
(シールド部材)
シールド部材80は、基板ホルダ50の段差部57に反出力側L2から取り付けられている。シールド部材80は可撓性のシート材であり、段差部57に形成された貫通孔56および貫通孔58を完全に塞ぐ大きさである。段差部57は反出力側L2を向くシールド取付面59を備えており、シールド部材80はシールド取付面59に当接する。シールド部材80は、基板ホルダ50と同様に、導電性の非磁性金属、例えばアルミで形成されて
いる。そして、シールド部材80は、導電性接着剤を介してシールド取付面59に接着されている。このため、シールド部材80は、基板ホルダ50を介して、基板60に搭載されたエンコーダ回路のシグナルグランドと電気的に接続される。
【0047】
シールド部材80は、貫通孔56に配置された第1感磁素子171、および、貫通孔58に配置された第2感磁素子172を覆うように基板ホルダ50に取り付けられる。基板ホルダ50にシールド部材80を取り付けたことにより、第1感磁素子171と第2感磁素子172は、シグナルグランド電位の部材(基板ホルダ50およびシールド部材80)によってモータ本体3から遮蔽される。従って、第1磁石161および第2磁石162との隙間から回り込んでくるフレームグランドノイズや電源ノイズなどを効果的に遮蔽できる。なお、第1感磁素子171と第2感磁素子172は、シールド部材80を介して第1磁石161および第2磁石と対向するが、シールド部材80は非磁性金属であるため、電磁波ノイズについては良好に遮蔽しつつ、磁気式のエンコーダとしての機能を損なわないようにすることができる。
【0048】
(エンコーダケーブルの接続構造)
図4に示すように、基板側コネクタ18は、基板60の中心を挟んで外側カバー11の配線取り出し部113と径方向で反対側(X方向の他方側X2)に配置されており、基板側コネクタ18の差し込み口181は配線取り出し部113とは反対側を向いている。エンコーダケーブル5は、エンコーダカバー12と基板60との間を通って切り欠き123へ引き回されている。エンコーダケーブル5は、基板側コネクタ18の外周側で反転するように撓んでおり、エンコーダケーブル5の先端に設けられたケーブル側コネクタ6は、配線取り出し部113とは反対側から基板側コネクタ18の差し込み口181に接続される。
【0049】
(ターミナル部材によるフレームグランド線の接地構造)
図7は外側カバー11を取り外したエンコーダ10および第1軸受ホルダ42Aの斜視図である。また、
図8、
図9は外側カバー11を取り外したエンコーダ10および第1軸受ホルダ42Aの分解斜視図であり、
図8は反出力側L2から見た分解斜視図、
図9は出力側L1から見た分解斜視図である。
図10はエンコーダホルダおよびターミナル部材の分解斜視図である。
図10に示すように、エンコーダホルダ14には、磁石配置孔141の外周側に、基板ユニット固定用の固定孔144とは異なる角度位置で等角度間隔の3箇所に固定孔147が形成されている。エンコーダホルダ14の外周部分には、出力側L1に凹んだ凹部142が周方向に離間した2箇所に形成され、各凹部142の底面に固定孔147が形成されている。従って、固定ねじ145のうちの2本は、凹部142に配置される。また、エンコーダホルダ14の外周部分には、X方向の一方側X1および他方側に切り欠き部148、149が形成されている。3本目の固定ねじ145は、X方向の他方側X2に位置する切り欠き部149に配置されている。
【0050】
図7〜
図10に示すように、エンコーダホルダ14を第1軸受ホルダ42Aに固定する3本の固定ねじ145のうちの1本は、エンコーダホルダ14とターミナル部材9とを重ねて固定するターミナル固定ねじ145Aとなっている。ターミナル固定ねじ145Aは、基板60の切り欠き61の周方向の中央に配置され、エンコーダホルダ14の切り欠き部149に配置されている。ターミナル部材9およびターミナル固定ねじ145Aは導電性である。従って、ターミナル部材9は、ターミナル固定ねじ145Aを介して第1軸受ホルダ42Aと電気的に接続されるため、ターミナル部材9は、モータケース4のフレームグランドと電気的に接続される。
【0051】
図5〜
図9に示すように、基板60には、基板側コネクタ18と周方向で並ぶ位置に第1貫通孔7が形成されている。また、基板ホルダ50には、基板60の第1貫通孔7と中
心軸線L方向で重なる位置に第2貫通孔8が形成されている。エンコーダホルダ14の外周部分に形成された切り欠き部148、149は、エンコーダホルダ14の外周部分の周方向の一部を径方向と交差する平面で切り欠いて形成されている。ターミナル固定ねじ145Aが配置された切り欠き部149は、基板60の切り欠き61および基板側コネクタ18と平行に延在する第1切り欠き面149aと、第1切り欠き面149aと周方向で隣り合う第2切り欠き面149bを備えており、第2切り欠き面149bは、第1切り欠き面149aと鈍角をなすように繋がっている。
【0052】
第1切り欠き面149aは、基板60の切り欠き61より中心軸線Lに近い位置に配置されている。従って、切り欠き部149に配置されたターミナル固定ねじ145Aは、その一部が基板60および基板ホルダ50の外周部分と中心軸線Lに見て重なる位置に設けられ、ターミナル固定ねじ145Aは、その一部が基板60および基板ホルダ50の外周部分によって反出力側L2から覆われている。同様に、エンコーダホルダ14の凹部142に配置される他の2本の固定ねじ145は、基板60および基板ホルダ50の外周部分によって反出力側L2から覆われている。また、第2切り欠き面149bは、第1貫通孔7および第2貫通孔8が形成された周方向位置に形成されており、第1貫通孔7および第2貫通孔8よりも中心軸線Lに近い位置に配置されている。つまり、エンコーダホルダ14は、第1貫通孔7および第2貫通孔8を出力側L1から塞ぐ部分が切り欠かれている。
【0053】
ターミナル部材9は導電性であり、本形態では、銅製である。ターミナル部材9は環状の圧着端子91と、圧着端子91と同一面上で直線状に延在する第1部分92と、第1部分92の圧着端子91とは反対側の端部から略直角に屈曲して反出力側L2に延びる第2部分93を備える。第1部分92および第2部分93は、1本の直線状の板材を屈曲させることにより形成されている。第2部分93は、第1部分92と繋がる部分は第1部分92と同じ幅であり、第2部分93の反出力側L2の先端部94は、第1部分92より幅が狭い。先端部94は、第1貫通孔7へ挿入可能な細さに形成されている。
【0054】
エンコーダホルダ14の切り欠き部149は、第1切り欠き面149aおよび第2切り欠き面149bの外周側に拡がるフランジ149cを備える。ターミナル固定ねじ145Aを通す固定孔147は、フランジ149cに形成されている。エンコーダホルダ14をモータケース4に固定する際、ターミナル部材9の圧着端子91をフランジ149cの固定孔147に重ねて配置し、固定ねじ145のうちの1本(ターミナル固定ねじ145A)を用いてエンコーダホルダ14とともに圧着端子91を第1軸受ホルダ42Aに固定する。これにより、圧着端子91は、フランジ149cとターミナル固定ねじ145Aの頭部との間に挟まれて固定される。また、ターミナル部材9の第1部分92は圧着端子91から第2切り欠き面149bに沿って延びており、ターミナル部材9の第2部分93は、第2切り欠き面149bのL2方向に沿って基板60側へ延びて、第1貫通孔7および第2貫通孔8と対応する位置に位置決めされる。この状態で、基板ユニット13を周方向に位置決めし、エンコーダホルダ14の反出力側L2の端面143に基板ユニット13を固定すると、ターミナル部材9の第2部分93の先端部94は、基板ユニット13の第1貫通孔7および第2貫通孔8を通って基板60から反出力側L2に突出する状態となる。
【0055】
基板60は、第1貫通孔7の縁に形成されたランド7aを備える。本形態では、ランド7aは基板60のエンコーダホルダ14とは反対側を向く面である反出力側基板面60aに形成され、第1貫通孔7の縁に沿って環状に形成されている。ターミナル部材9の第2部分93の先端部を第1貫通孔7に半田付けすると、ターミナル部材9は、第1貫通孔7の縁に設けられたランド7aと電気的に接続される。
【0056】
エンコーダケーブル5は、複数の信号線5aを金属製の網状のシールドで覆ったシールドケーブルである。
図7〜
図9に示すように、エンコーダケーブル5の端部には、複数の
信号線5aが互いに絶縁された状態で引き出されている。また、エンコーダケーブル5の端部には、信号線5aから絶縁されて信号線5aを覆うシールドと接続されたフレームグランド線5bが複数の信号線5aと並んで引き出されている。複数本の信号線5aおよびフレームグランド線5bは、ケーブル側コネクタ6に接続されている。ケーブル側コネクタ6は、複数の信号線5aおよびフレームグランド線5bのそれぞれに対応する端子を備えており、これらの端子は、ケーブル側コネクタ6の幅方向に一列に並んで設けられている。フレームグランド線5bに対応する端子6bは、ケーブル側コネクタ6の幅方向の一方側の端部に配置されている。
【0057】
図5に示すように、基板側コネクタ18には、ケーブル側コネクタ6に設けられた複数の端子に対応して、複数の端子接続部182が基板側コネクタ18の幅方向に一列に並んで設けられている。複数の端子接続部182のうちの1箇所の端子接続部182bは、基板60に設けられたパターンを介して、第1貫通孔7の縁に設けられたランド7aと電気的に接続されている。また、他の端子接続部182aの一部あるいは全部が、基板60上に設けられたエンコーダ回路と接続されている。ここで、ランド7aと端子接続部182bとを接続するパターンは、エンコーダ回路および他の端子接続部182aからは絶縁され、エンコーダ回路のシグナルグランドとは絶縁されている。なお、第1貫通孔7は、パターンと電気的に接続されたスルーホールであってもよい。
【0058】
ランド7aと電気的に接続される端子接続部182bは、基板側コネクタ18の幅方向の一方側の端部に設けられており、他の端子接続部182aよりもランド7aに近い位置に配置されている。
図7に示すように、本形態では、基板側コネクタ18はY方向に延在し、基板側コネクタ18の端子接続部182はY方向に並んでいる。そして、第1貫通孔7およびランド7aは、基板側コネクタ18に対してY方向の一方側Y1で隣り合う位置に配置され、ランド7aとパターンを介して接続される端子接続部182bは、基板側コネクタ18のY方向の一方側Y1の端部に配置されている。
【0059】
ケーブル側コネクタ6を基板側コネクタ18に接続すると、エンコーダケーブル5のフレームグランド線5bに対応する端子6bは、基板側コネクタ18のY方向の一方側Y1の端部に配置される端子接続部182bと接続される。従って、エンコーダケーブル5のフレームグランド線5bは、ランド7aおよび基板60上のパターンを介して、第1貫通孔7に半田付けされたターミナル部材9と電気的に接続され、ターミナル部材9を介して、モータケース4のフレームグランドと接続される。一方、基板ホルダ50に形成された第2貫通孔8は基板60の第1貫通孔7より一回り大きく、ターミナル部材9は第2貫通孔8の縁とは接触しない。従って、基板ホルダ50は、ターミナル部材9を介してモータケース4のフレームグランドと電気的に接続されることはない。
【0060】
このように、本形態では、エンコーダケーブル5を基板ユニット13に接続する際に、ケーブル側コネクタ6を基板側コネクタ18に差し込むだけで、エンコーダケーブル5がモータケース4のフレームグランドと電気的に接続される。エンコーダケーブル5をモータケース4のフレームグランドと電気的に接続することにより、エンコーダケーブル5の外部から侵入する電気的ノイズの遮蔽効果を高めることができる。従って、エンコーダ10のノイズ耐性を高めることができる。
【0061】
(本形態の主な作用効果)
以上のように、本形態のモータ1では、エンコーダ10の基板60に接続されるエンコーダケーブル5の端部に信号線5aと共にフレームグランド線5bが引き出されており、ケーブル側コネクタ6は、信号線5aおよびフレームグランド線5bのそれぞれに対応する端子を備えている。また、基板60には、導電性のターミナル部材9の一端と基板側コネクタ18とを接続するパターンが形成され、ターミナル部材9の他端はモータ本体3の
フレームグランドと電気的に接続されている。従って、エンコーダケーブル5をモータ本体3のフレームグランドと電気的に接続する作業として、基板側コネクタ18へのエンコーダケーブル5の接続を行うだけでよいので、作業性が良く、確実に接続することができる。また、コネクタ以外に接続端子を設ける必要がないので、スペース効率が良く、モータ1の小型化に有利である。
【0062】
本形態では、エンコーダ10の基板60は、基板ホルダ50およびエンコーダホルダ14を介してモータケース4に固定されており、絶縁性のエンコーダホルダ14によって基板ホルダ50がモータケース4から絶縁されている。そして、エンコーダホルダ14をモータケース4に固定するための固定ねじ145の1本(ターミナル固定ねじ145A)をターミナル部材9の固定用として兼用し、且つ、ターミナル固定ねじ145Aを介してターミナル部材9をフレームグランドと導通させている。従って、部品点数を削減することができ、製造コストを低減させることができる。また、ターミナル固定ねじ145Aは、3本の固定ねじ145の中で、ターミナル部材9が半田付けされるランド7aと最も近いねじである。従って、ターミナル固定ねじ145Aとランド7aとの距離を短くすることができ、ターミナル部材9を小型化することができる。従って、ターミナル部材9が低コストになるため、製造コストを低減させることができる。
【0063】
本形態では、ターミナル部材9が半田付けされるランド7aは、基板60上において感磁素子17より基板側コネクタ18に近い位置に配置されている。すなわち、第1感磁素子171は基板60の中央に配置され、第2感磁素子172は基板60のX方向の一方側X1の縁に配置されているが、基板側コネクタ18およびランド7aは、基板60のX方向の他方側X2の縁に配置されている。従って、感磁素子17をフレームグランド電位のパターンおよびランド7aから離すことができるので、フレームグランド電位のパターンから感磁素子17への影響を少なくすることができる。
【0064】
本形態では、基板側コネクタ18に設けられる複数の端子接続部182のうちで、エンコーダケーブル5のフレームグランド線5bと接続される1箇所の端子接続部182bは、他の端子接続部182aよりもランド7aに近い位置に配置されている。これにより、基板60上に設けるフレームグランド電位のパターンを小さくすることができる。従って、基板60上のパターンレイアウトが制限されにくくなり、設計の自由度が高まる。また、エンコーダケーブル5の信号線5aと接続されるパターンをフレームグランド電位のパターンおよびランド7aから離すことができるため、フレームグランド電位のパターンからエンコーダ回路への影響を少なくすることができる。
【0065】
本形態では、エンコーダホルダ14には、磁石配置孔141の外周側に切り欠き部149が設けられ、ターミナル固定ねじ145Aおよびターミナル部材9は切り欠き部149に配置されている。切り欠き部149は基板60の外周縁より内周側に位置しており、ターミナル部材9およびターミナル固定ねじ145Aは、少なくとも一部が中心軸線L方向から見て基板60と重なっている。また、他の2本の固定ねじ145も凹部142に配置されているため、同様に、少なくとも一部が中心軸線L方向から見て基板60と重なっている。従って、基板60の外周側に固定ねじ145およびターミナル部材9の配置スペースを大きくとる必要がないので、エンコーダ10の径方向のサイズを小さくすることができ、モータ1を小型化することができる。
【0066】
また、エンコーダホルダ14の切り欠き部149は固定孔147が形成されたフランジ149cを備えており、ターミナル部材9は、圧着端子91および第1部分92がフランジ149c上で延在し、第1部分92に対して屈曲して繋がる第2部分93は、第2切り欠き面149bのL2方向に沿って延在して、基板ホルダ50の第2貫通孔8、および、基板60の第1貫通孔7に挿入されている。このように、エンコーダホルダ14の外面に
沿わせてターミナル部材9を配置し、エンコーダホルダ14の磁石配置孔141と対向するように配置された基板60に向けてターミナル部材9を延ばして基板60を貫通させると、基板60の外周側から反出力側L2の面にターミナル部材9を回り込ませる必要がないので、モータケース4と基板60の反出力側L2の面に設けられたパターンとを導通させる経路を短くすることができる。従って、ターミナル部材9の形状を単純化し、且つ、小型化することができる。また、ターミナル部材9がノイズの影響を受けにくいので、ノイズ耐性を高めることができる。
【0067】
本形態では、感磁素子17が搭載される基板60は、基板60上のエンコーダ回路のシグナルグランドと電気的に接続された基板ホルダ50によって磁石16側から覆われている。従って、磁石16側からの磁気ノイズや電磁波ノイズの影響、および、モータ1のフレームグランドや電源ケーブル等にのってくる電気的ノイズの影響を低減できる。また、基板ホルダ50には、基板60の第1貫通孔7よりも1回り大きい第2貫通孔8が形成されているため、フレームグランド電位のターミナル部材9をシグナルグランド電位の基板ホルダ50と接触させないようにすることができる。
【0068】
本形態では、エンコーダケーブル5は、外側カバー11に設けられた配線取り出し部113で保持され、基板側コネクタ18は、基板60の中心に対して配線取り出し部113とは反対側に配置されている。また、基板側コネクタ18の差し込み口181は配線取り出し部113とは反対側(X2方向)を向いているので、エンコーダケーブル5のケーブル側コネクタ6は、配線取り出し部113とは反対側から基板側コネクタ18に接続される。従って、配線取り出し部113から基板側コネクタ18までの距離が長いため、コネクタ同士の接続が容易であり、作業性が良い。また、コネクタ同士の接続時にエンコーダケーブル5を大きく撓ませる必要がないので、エンコーダケーブル5に負荷がかかりにくい。また、差し込み口181が基板60の外周側を向いているため、ケーブル側コネクタ6は基板60の外周側に飛び出した状態に接続される。従って、基板60上に、ケーブル側コネクタ6およびエンコーダケーブル5を引き回すスペースを大きくとる必要がないので、基板上のパターンレイアウトが制限されにくく、設計の自由度が高まる。また、エンコーダケーブル5を逆向きに折り返して引き回すため、基板60とエンコーダケーブル5との距離を大きくとることができる。従って、感磁素子17およびエンコーダ回路に対するノイズの影響を抑制できる。