(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジン等の内燃機関に燃料を供給するものとして、燃料を燃料タンクから吸い上げる機械式のフィードポンプを備える燃料ポンプ装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
フィードポンプは、燃料タンクに貯留されている燃料を、オリフィスが設けられた低圧燃料路を通じて吸い上げた後、燃料フィルタを介して燃料噴射ポンプへ供給する。
【0004】
機械式のフィードポンプの吸入側はその作動中において負圧となり、燃料タンク内の燃料に働く大気圧と当該負圧との間に圧力差が生じ、この圧力差により、燃料タンクからフィードポンプ方向に燃料が吸い上げられる。
【0005】
フィードポンプの下流側には、燃料噴射ポンプが接続されている。燃料噴射ポンプは、エンジンに取り付けられており、エンジンの駆動軸からの駆動力を当該燃料噴射ポンプのカムシャフトに伝達することにより燃料を加圧し、圧送するものである。
【0006】
ここで、
図5に示すように、機械式のフィードポンプを備える燃料ポンプ装置においては、フィードポンプから燃料噴射ポンプへ向けて供給される燃料の流量は、当該燃料噴射ポンプによって要求される最大要求流量f0よりも多く、且つ、燃料フィルタの許容通過流量よりも少なくなるように設定されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
機械式のフィードポンプは、燃料噴射ポンプの回転速度と同期するように駆動されているため、
図5に示すように、エンジンの駆動軸の回転速度の増加に比例して、フィードポンプから供給される燃料の流量も増大する、という特性を有している(
図5におけるFP理論吐出量を参照)。
【0009】
エンジンの駆動軸の回転速度が一定以上になった場合、フィードポンプから供給される燃料の流量が燃料フィルタの許容通過流量を超過しないように、燃料の流量を制限する目的で、燃料タンクとフィードポンプとの間の低圧燃料路には上述したオリフィスが設けられている。
【0010】
また、大気圧により圧力差は変るので、大気圧が低い場合には、高い場合に比べ圧力差は小さくなり、フィードポンプが吸い上げる燃料の流量は少なくなる。逆に、大気圧が高い場合には、低い場合に比べ圧力差は大きくなり、フィードポンプが吸い上げる燃料の流量は多くなる。例えば、標高の高い高地においては、標高の低い平地に比べて相対的に大気圧が低くなり、燃料タンク内の燃料に働く大気圧とフィードポンプの吸入側に生じる負圧との間の圧力差が小さくなり、フィードポンプが吸い上げる燃料の流量は少くなる。
図5に従来形式のオリフィスと機械式のフィードポンプの組み合わせにおける大気圧が高い場合における流量(f2)と低い場合における流量(f1)の特性の例を示す。
【0011】
前述の通り、フィードポンプから燃料噴射ポンプへ向けて供給される燃料の流量は、当該燃料噴射ポンプによって要求される最大要求流量f0よりも多くなるように設定されなければならない。これにしたがって、想定される大気圧が最も低い場合におけるフィードポンプから供給される燃料の流量が、燃料噴射ポンプの最大要求流量f0よりも多くなるように設定されるが、この結果、当該最低の大気圧に対して大気圧が高くなるにしたがってフィードポンプから供給される燃料の流量は燃料噴射ポンプの最大要求流量f0に比べ多くなってしまう。
このように、従来形式のオリフィスと機械式のフィードポンプを備える燃料ポンプ装置においては、ほとんどの大気圧領域で、フィードポンプから燃料噴射ポンプへ向け必要以上の燃料が供給されていた。過剰に供給された燃料は燃料還流路を通じて燃料タンクに戻される構造となっているので、燃費の悪化、燃料温度の上昇等の問題があった。
【0012】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、大気圧条件によって、過剰な燃料の供給がされない機械式のフィードポンプを備える燃料ポンプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の燃料ポンプ装置は、燃料タンク内に貯留される燃料に働く大気圧と、前記燃料タンクの下流側に生じる負圧との圧力差により前記燃料を吸い上げる機械式フィードポンプと、前記機械式フィードポンプから供給された前記燃料を高圧にして圧送する燃料噴射ポンプと、前記燃料タンクから前記機械式フィードポンプまでの間の燃料供給路に配置された流量制御機構とを備え、前記流量制御機構は、前記燃料に働く大気圧に応じて燃料通過断面積が変化する燃料絞り調整通路を有することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る燃料ポンプ装置において、前記負圧は、前記機械式フィードポンプの作動中に、前記機械式フィードポンプの燃料の吸入側に生じる負圧であることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る燃料ポンプ装置において、前記流量制御機構は、前記燃料に働く大気圧が低下した場合に、前記燃料絞り調整通路の前記燃料通過断面積を大きくすることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る燃料ポンプ装置において、前記流量制御機構は、内部が前記燃料の通路である中空の筒状体と、前記筒状体の内部を移動する移動体と、を備え、前記移動体の移動に基づいて、前記燃料絞り調整通路の前記燃料通過断面積が変化することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る燃料ポンプ装置において、前記流量制御機構は、前記筒状体内にバネ要素をさらに備え、前記燃料に働く前記大気圧と、前記負圧と、前記バネ要素の弾性力との力のバランスにより、前記移動体が移動することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る燃料ポンプ装置において、前記筒状体の中空部分の内周面に拡張部が設けられ、前記燃料絞り調整通路が、前記移動体と前記拡張部の間に形成されることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る燃料ポンプ装置において、前記筒状体の側面に前記中空部分まで貫通し、前記燃料の通路である貫通孔が設けられ、前記燃料絞り調整通路が、前記移動体と前記貫通孔の間に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、大気圧条件によって過剰な燃料の供給がされない機械式のフィードポンプを備える燃料ポンプ装置を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1の実施の形態>
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。ここでは、コモンレールシステムに使用される機械式のフィードポンプを備える燃料ポンプ装置の例を説明するが、本発明は、コモンレールシステムに使用される機械式のフィードポンプを備える燃料ポンプ装置に限定されることはなく、たとえば列型ポンプや分配型ポンプ等に使用することも可能である。
【0023】
<コモンレールシステムの全体構成>
図1に示すように、コモンレールシステム10は、主として、ディーゼルエンジンの気筒内に燃料を噴射するシステムとして用いられるものである。
【0024】
このコモンレールシステム10は、燃料タンク20と、燃料ポンプ装置30と、コモンレール90と、図示しない複数のインジェクタ等を主要な構成要素として備えている。
【0025】
燃料タンク20は、ディーゼルエンジンの燃料である軽油を貯留するものであり、当該燃料タンク20に、燃料供給路としての低圧燃料路11の一端および燃料還流路12の一端が接続されている。
【0026】
燃料還流路12は、図示しないインジェクタの下流側に配置される第1還流路12aに流出した燃料、圧力制御弁14の下流側に配置される第2還流路12bに流出した燃料、後述するオーバーフローバルブ80の下流側に配置される第3還流路12c及び第4還流路12dに流出した燃料、ベアリング78の下流側に配置される第5還流路12eに流出した燃料が合流し、これらの燃料を燃料タンク20に戻すための流路である。なお、燃料タンク20内に貯留される燃料には、大気圧P2が働く。
【0027】
燃料ポンプ装置30は、流量制御機構40、機械式フィードポンプとしてのフィードポンプユニット50、燃料メタリングユニット60、燃料噴射ポンプ70、および、オーバーフローバルブ80等を構成要素として有している。
【0028】
流量制御機構40は、燃料通路断面積が可変の絞りである燃料絞り調整通路46を有する機械式の構造体であり、燃料タンク20とフィードポンプユニット50の間に設けられており、必要に応じて燃料通路断面積が固定の絞りである燃料絞り通路47を有する。なお、流量制御機構40の詳細な構成については後述する。
【0029】
フィードポンプユニット50は、流量制御機構40を介して燃料タンク20から燃料を吸い上げ、その燃料を燃料噴射ポンプ70へ供給する機械式のフィードポンプである。
【0030】
このフィードポンプユニット50は、機械式であれば如何なる形式であってもよく、その一例として所謂ギヤポンプがある。このギヤポンプは、例えば外接歯車型である。なお、ギヤポンプは、外接歯車型に限るものではなく、例えば内接歯車型であってもよい。
【0031】
フィードポンプユニット50と燃料噴射ポンプ70との間には、燃料フィルタ13が設けられている。燃料フィルタ13は、フィードポンプユニット50から燃料噴射ポンプ70へ供給される燃料に混入している異物を捕集するフィルタである。
【0032】
燃料メタリングユニット60は、燃料フィルタ13と燃料噴射ポンプ70との間に配設されている。燃料メタリングユニット60は、燃料噴射ポンプ70へ供給する燃料の流量を調整する比例制御式のバルブ機構である。
【0033】
燃料噴射ポンプ70は、燃料を高圧にして、コモンレール90に送るポンプであり、高圧燃料を圧送するための高圧燃料路79によってコモンレール90と接続されている。
【0034】
燃料噴射ポンプ70は、カム室71a、カムシャフト72、当該カムシャフト72の回転に応じて上下方向に移動するプランジャ74等からなり、当該プランジャ74の上下動により、燃料メタリングユニット60を介して加圧室76に供給された燃料を高圧化し、コモンレール90へ供給する。
【0035】
フィードポンプユニット50から送られた燃料で、高圧化されなかった燃料の多くは第2流入路11bを介して燃料噴射ポンプ70のカム室71aに供給され、カム室71a内の機械構成部品を潤滑する。カム室71a内を潤滑した燃料は、流出路11c、ベアリング78の下流側に配置される第5還流路12e等を通じて燃料噴射ポンプ70外に流出する。流出路11cから流出した燃料は、オーバーフローバルブ80に入り、その後第3還流路12cまたは第4還流路12dを通りオーバーフローバルブ80から出て、第1還流路12a、第2還流路12b、第5還流路12eからの燃料と、燃料還流路12に合流し、燃料タンク20に戻される。尚、オーバーフローバルブ80は、燃料噴射ポンプ70のカム室71aに供給される燃料の圧力を一定の圧力範囲に調圧する圧力調整弁である。
【0036】
コモンレール90は、燃料噴射ポンプ70から高圧燃料路79を介して圧送されてくる高圧燃料を蓄圧するものであり、高圧燃料路79を介して接続された複数のインジェクタ(図示せず)に対して高圧燃料を供給する。
【0037】
なお、コモンレール90には、レール圧センサ(図示せず)が取り付けられていると共に、コモンレール90と接続された第2還流路12b上には圧力制御弁14が取り付けられている。コモンレール90のレール圧制御は、燃料メタリングユニット60及び圧力制御弁14の少なくともいずれか一方を用いて行われる。
【0038】
<流量制御機構>
次に、
図2を用いて、第1の実施形態における流量制御機構40の具体的構成について説明する。
【0039】
流量制御機構40は、燃料タンク20とフィードポンプユニット50との間における低圧燃料路11のライン上に設けられている。流量制御機構40は、アイボルト41、アイジョイント42、往復動部材としての移動体であるオリフィスプレート43、および弾性部材としてのバネ44を備えている。
【0040】
アイボルト41は、有底の筒状体であり、長手方向の一方の端部が閉塞した円筒形状の本体部41a、および、当該本体部41aの他方の端部に設けられた円板状のバネ受け部41bを有している。
【0041】
アイボルト41の本体部41aには、当該本体部41aを径方向に貫く第1貫通孔41eが形成されている。
【0042】
バネ受け部41bの中央には、本体部41aの長手方向に沿って貫通する、流出用開口部としての第2貫通孔41fが形成されている。本体部41aの外周面41cのうち、バネ受け部41bから第1貫通孔41eの近傍までの範囲には雄ネジ部が形成されている。
【0043】
アイボルト41の内部には内周面41dを有する中空部が形成され、当該中空部はほぼ円筒状に形成されているが、当該内周面41dには、長手方向において第1貫通孔41eと第2貫通孔41fとの間であって、第1貫通孔41e近傍の一定の範囲に、いわゆる溝状の拡張部41gが形成されている。
【0044】
この拡張部41gは、アイボルト41の長手方向に対して直交する方向に拡張する壁面部41jと、この壁面部41jの外周側の端部から傾斜した傾斜部41kとにより画成されている。なお、傾斜部41kは、アイボルト41の軸方向で第2貫通孔41fの方向に向かって、内周面41dが次第に縮径するように形成されている。
【0045】
この場合の拡張部41gは、本体部41aの内周面41dの周方向にわたって連続した傾斜部41kにより形成されているが、これに限るものではなく、本体部41aの内周面41dに対し、周方向にわたって断続的に形成された部分的な傾斜部41kにより形成されていてもよい。
【0046】
オリフィスプレート43は、アイボルト41の中空部内をアイボルト41の長手方向に移動可能に設けられた円板状部材であり、その中央にアイボルト41の長手方向へ貫通する連通孔43aを有している。この連通孔43aの直径は、従来形式のオリフィスの直径よりも小さい。オリフィスプレート43の下面には、バネ44が固定されており、当該バネ44の他端がバネ受け部41bに固定されている。バネ44は、オリフィスプレート43を第2貫通孔41fから第1貫通孔41eに向かう方向へ付勢している。
【0047】
オリフィスプレート43は、低圧燃料路11、第1貫通孔41e等を介して燃料タンク20に連通する第1内部空間41hの側の面に働く内部圧力P3と、その逆側の面に働く圧力P1及びバネ44の復元力とが釣り合う位置に保持される。例えば車両が、平地から高地に移動し、燃料タンク20に作用する大気圧P2が低下した場合、大気圧P2の低下に応じて内部圧力P3が低下する。この内部圧力P3の低下により、オリフィスプレート43前後での力のバランスが変り、オリフィスプレート43は、第1貫通孔41eの側へ変位する。
【0048】
このような構成の流量制御機構40において、アイボルト41の外周面41cに設けられた雄ネジ部は、フィードポンプユニット50の吸入側管路52に設けられた雌ネジ部に螺合される。このとき、アイボルト41の外周に形成されたフランジ部41nが、アイジョイント42の上面に当接するまで螺合する。このようにして、アイジョイント42は、アイボルト41のフランジ部41nとフィードポンプユニット50の上面との間で挟持され、流量制御機構40がフィードポンプユニット50に取り付けられ、第2貫通孔41fは、フィードポンプユニット50の吸入側管路52と連通する。吸入側管路52はフィードポンプユニット50における燃料の吸入側にある管路で、吸入側管路52にはフィードポンプユニット50の作動中において負圧が発生する。
【0049】
<動作および効果>
図3、
図4、
図6を用いて、第1の実施形態における流量制御機構40の動作及び効果について説明する。
【0050】
コモンレールシステム10では、フィードポンプユニット50を駆動すると、吸入側管路52と連通する流量制御機構40のアイボルト41の第2内部空間41mには圧力P1(負圧)が生じる。一方、燃料タンク20内の燃料に作用する大気圧P2に応じた内部圧力P3がアイボルト41の第1内部空間41hに生じる。尚内部圧力P3は圧力P1よりも高いので、燃料は、第1内部空間41hから第2内部空間41mの方向に流れる。すなわち、燃料タンク20の燃料がフィードポンプユニット50の方向に流れる。
【0051】
図3では、大気圧P2が高い場所において、流量制御機構40のオリフィスプレート43が保持されている状態を示している。大気圧が高い場所とは、例えば平地であり、標高の低い場所である。この場合、オリフィスプレート43における第2内部空間41mの側の面が、アイボルト41の傾斜部41kと内周面41dの円筒状部分との交差部41z近傍の位置であることが好ましい。
尚、オリフィスプレート43の連通孔43aは燃料通過断面積が固定の絞りである燃料絞り通路47を構成し、オリフィスプレート43の外周と内周面41dの間隔は、燃料通過断面積が可変の絞りである燃料絞り調整通路46を構成するが、この時点では、オリフィスプレート43の外周と内周面41dの間隔は極狭いので、第1内部空間41hからの燃料の大部分は、連通孔43aを通過して、第2内部空間41mへ流れる。連通孔43aの直径は、従来形式のオリフィスよりも小さく、かつ、燃料噴射ポンプの最大噴射流量f0を上回る流量を確保できる大きさに設定される。この結果
図6に示すように、大気圧の高い場所においてフィードポンプユニット50から燃料噴射ポンプ70へ供給される燃料の流量f3は、流量制御機構40を有さない場合の燃料の流量f2に比べて低減され、無駄な燃料の供給が低減される。
【0052】
図4は
図3に比べて大気圧P2が低い場所において、流量制御機構40のオリフィスプレート43が保持されている状態を示している。大気圧が低い場所とは、例えば高地であり、標高の高い場所である。大気圧P2が低いので内部圧力P3も低く、これに伴って流量制御機構40のオリフィスプレート43は、第1内部空間41hの方向に移動する。オリフィスプレート43の移動により、オリフィスプレート43の外周と内周面41dの一部である拡張部41gにおける傾斜部41kとの間隔が広がり、燃料絞り調整通路46の燃料通過断面積が増大する。大気圧P2の低下に伴う内部圧力P3の低下により、オリフィスプレート43前後の差圧が小さくなり、連通孔43aを通過する流量は減るが、燃料絞り調整通路46を通過する流量が増え、結果大気圧P2が高い場合と同等の燃料f4を燃料噴射ポンプ70へ供給することが可能となる。
【0053】
オリフィスプレート43は、燃料タンク20内の燃料に作用する大気圧P2の低下に応じて、第1内部空間41hの側へ移動するが、想定される大気圧P2の最低値に対応する位置は、オリフィスプレート43の上面と拡張部41gの壁面部41jとによって形成される第1距離a1が、オリフィスプレート43の下面と拡張部41gの傾斜部41kとによって形成される第2距離a2より長い位置とすることが好ましい。尚、当該位置にストッパ部材を設けオリフィスプレート43が当接するようにしてもよい。
【0054】
図6に示すように、当該コモンレールシステムを搭載した車両が例えば平地から高地に向けて移動し、大気圧P2が低下した場合にも、流量制御機構40が作動することにより、大気圧の変化に影響されず、フィードポンプユニット50から燃料噴射ポンプ70へ同等の燃料流量を供給することができる。
【0055】
以上のように、従来形式のオリフィスと機械式のフィードポンプを備える燃料ポンプ装置においては、ほとんどの大気圧領域で、フィードポンプから燃料噴射ポンプへ向け必要以上の燃料が供給されていたが、本発明を適用した燃料ポンプ装置30は、流量制御機構40を用いることにより、大気圧条件によって過剰な燃料を供給することがなくなり、燃料還流路12を介して燃料タンク20に戻される燃料の量を低減することができる。燃料還流路12を介して燃料タンク20に戻される燃料は、その流れの過程で高温化されるため、燃料タンク20に戻される燃料の量を低減することで、燃料温度の上昇を抑制することができ、ひいては燃料の酸化による劣化を抑制することができる。更に、燃料の流量を低減することができるので、低圧燃料路11及び燃料還流路12について、圧力損失の少ない内径の大きな配管を必要とせず、配管の選択肢が増えるためコスト低減を達成することができる。
【0056】
また、燃料ポンプ装置30は、流量制御機構40を用いることにより、フィードポンプユニット50をエンジンの駆動軸によって必要以上に駆動する必要がなくなり、エンジンの駆動トルクを無駄に消費しなくて済み、結果として燃費を改善することができる。
【0057】
更に、燃料ポンプ装置30は、流量制御機構40を用いることにより、燃料フィルタ13を通過する低圧燃料の流量を抑制することができる。このため、無駄に許容通過流量が大きく且つ無駄に高い耐圧性能を有する燃料フィルタ13を必要としないため、燃料フィルタ13のサイズを小型にすることができ、結果として、コストアップを抑制することができる。
【0058】
<第2の実施形態>
図7を用いて、第2の実施形態における流量制御機構40′の具体的構成について説明する。なお、
図7において、
図2と対応する部分には同一符号を付している。以下では、主として第1の実施形態との相違点を説明する。
【0059】
第2の実施形態においては、
図7に示すように、アイボルト41は、供給用貫通孔としての第1貫通孔41eに加え、当該第1貫通孔41eよりも長手方向の一方の端部寄りの位置において外周面41cから内周面41dにまで貫通された、圧力形成用貫通孔としての第3貫通孔41pを有している。
【0060】
また、流量制御機構40′は、連通孔43aを有するオリフィスプレート43に換えて、往復動部材としてのピストン部材45を有する。ピストン部材45によって、アイボルト41の内部空間は、第3貫通孔41pと連通する第1内部空間41hと、第1貫通孔41eと連通する第2内部空間41mとに仕切られている。ピストン部材45は、アイボルト41の内周面41dに沿って往復動する移動体である。
【0061】
図8では、大気圧P2が高い場所において、流量制御機構40′のピストン部材45が保持されている状態を示している。大気圧が高い場所とは、例えば平地であり、標高の低い場所である。この場合、ピストン部材45がアイボルト41の内周面41dにおいて第1貫通孔41eを部分的に塞ぐことによりアイボルト41の本体部41aとピストン部材45との間に第1隙間s1を形成し、燃料は、当該隙間s1を通過して、第2内部空間41mへ流れる。第1隙間s1の大きさは従来形式のオリフィスよりも小さく、かつ、燃料噴射ポンプの最大噴射流量f0を上回る流量を確保できる大きさに設定される。この結果
図6に示すように、大気圧の高い場所においてフィードポンプユニット50から燃料噴射ポンプ70へ供給される燃料の流量f3は、流量制御機構40′を有さない場合の燃料の流量f2に比べて低減され、無駄な燃料の供給が低減される。
尚、第1貫通孔41eにおいてピストン部材45によって塞がれない部分が燃料通過断面積可変の絞りである燃料絞り調整通路46を構成する。
【0062】
図9は
図8に比べて大気圧P2が低い場所において、流量制御機構40′のピストン部材45が保持されている状態を示している。大気圧が低い場所とは、例えば高地であり、標高の高い場所である。大気圧P2が低いので内部圧力P3も低く、これに伴って流量制御機構40′のピストン部材45は、第1内部空間41hの方向に移動する。ピストン部材45とともに、上述の第1隙間s1が第2隙間s2に拡大され、燃料絞り調整通路46の燃料通過断面積は大きくなる。大気圧P2の低下に伴う内部圧力P3の低下により、差圧が小さくなるが、燃料絞り調整通路46の燃料通過断面積が拡大するので、大気圧P2が高い場合と同等の燃料f4を燃料噴射ポンプ70へ供給することが可能となる。
【0063】
ピストン部材45は、燃料タンク20内の燃料に作用する大気圧P2の低下に応じて、第1内部空間41hの側へ移動するが、想定される大気圧P2の最低値に対応する位置は、ピストン部材45の上面が、第3貫通孔41pに達しない位置とすることが好ましい。尚、当該位置にストッパ部材を設けピストン部材45が当接するようにしてもよい。
【0064】
以上のように、従来形式のオリフィスと機械式のフィードポンプを備える燃料ポンプ装置においては、ほとんどの大気圧領域で、フィードポンプから燃料噴射ポンプへ向け必要以上の燃料が供給されていたが、本発明を適用した燃料ポンプ装置30は、流量制御機構40を用いることにより、大気圧条件によって過剰な燃料を供給することがなくなり、燃料還流路12を介して燃料タンク20に戻される燃料の量を低減することができる。
燃料還流路12を介して燃料タンク20に戻される燃料は、その流れの過程で高温化されるため、燃料タンク20に戻される燃料の量を低減することで、燃料温度の上昇を抑制することができ、ひいては燃料の酸化による劣化を抑制することができる。更に、燃料の流量を低減することができるので、低圧燃料路11及び燃料還流路12について、圧力損失の少ない内径の大きな配管を必要とせず、配管の選択肢が増えるためコスト低減を達成することができる。
【0065】
また、燃料ポンプ装置30は、流量制御機構40′を用いることにより、フィードポンプユニット50をエンジンの駆動軸によって必要以上に駆動する必要がなくなり、エンジンの駆動トルクを無駄に消費しなくて済み、結果として燃費を改善することができる。
【0066】
更に、燃料ポンプ装置30は、流量制御機構40′を用いることにより、燃料フィルタ13を通過する低圧燃料の流量を抑制することができる。このため、無駄に許容通過流量が大きく且つ無駄に高い耐圧性能を有する燃料フィルタ13を必要としないため、燃料フィルタ13のサイズを小型にすることができ、結果として、コストアップを抑制することができる。
【0067】
<他の実施の形態>
第1の実施形態では、拡張部41gをアイボルト41の内周面41dに形成し、オリフィスプレート43およびバネ44をアイボルト41内に配置したが、これらの構成部材(拡張部41g、オリフィスプレート43およびバネ44)は、フィードポンプユニット50よりも上流側であれば任意の位置に設けることができる。
【0068】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に係るコモンレールシステム10に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題および効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。