特許第6948897号(P6948897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948897
(24)【登録日】2021年9月24日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】先進ボーリング口元構造
(51)【国際特許分類】
   E21B 47/06 20120101AFI20210930BHJP
   G01V 9/02 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   E21B47/06
   G01V9/02
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-184340(P2017-184340)
(22)【出願日】2017年9月26日
(65)【公開番号】特開2019-60099(P2019-60099A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊本 創
(72)【発明者】
【氏名】山本 肇
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−066646(JP,A)
【文献】 特開2010−024787(JP,A)
【文献】 特開2015−203194(JP,A)
【文献】 特開2007−016394(JP,A)
【文献】 特開2017−128881(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0254687(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 47/06
G01V 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボーリングロッドを挿通した状態でボーリング孔の孔口に設けられた口元保護管と、前記ボーリング孔内の水圧を測定する圧力計と、を備える先進ボーリング口元構造であって、
前記口元保護管には、下向きに開口する削孔用排水管が接続されているとともに、上向きに立ち上げられた測定用排水管が接続されていることを特徴とする、先進ボーリング口元構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先進ボーリング口元構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事において、切羽前方の地質や地下水の状況(湧水量や地下水圧等)を把握することを目的として、切羽前方に向けて先進ボーリングを行う場合がある。
例えば、特許文献1には、先端に削孔ビットを備えるとともに内部に圧力計が配置された中空筒状の削孔ロッドを利用して、高圧水を供給しつつ削孔ビットを回転させることにより穿孔を行い、所定の深度(削孔長)毎に地下水圧および地下水量を計測する測定方法が開示されている。特許文献1の測定方法では、口元部分に口元保護管が設けられている。この口元保護管には、孔内に流入した地下水や、穿孔に利用した高圧水等とともに削孔によって発生する掘り屑(カッティングス)を排出するための排水口が形成されている。この排水口は、カッティングスを効率よく排出するために下向きに開口している。地下水圧の測定は、高圧水の供給を停止するとともに、排水口を閉塞した状態で実施する。また、湧水量の測定は、排水口を開口した状態で、排水口に設けられた流量計により行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−128881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
斜め上向きあるいは水平に先進ボーリングを穿孔した場合においては、下向きに開口する排水口から排出される湧水量が少なくなると、排水口から空気が入り込むおそれがある。排水口からボーリング孔内に空気が入り込むと、水圧測定の際、空気の圧縮性に起因して測定誤差が生じるおそれがある。
このような観点から、本発明は、斜め上向きあるいは水平方向に穿孔された先進ボーリングを利用して切羽前方の地下水状況を計測する場合において、ボーリング孔内への空気の混入を防止することでより正確な測定を行うことを可能とした先進ボーリング口元構造を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の先進ボーリング口元構造は、ボーリングロッドを挿通した状態でボーリング孔の孔口に設けられた口元保護管と、前記ボーリング孔内の水圧を測定する圧力計とを備えるものであって、前記口元保護管には、下向きに開口する削孔用排水管が接続されているとともに、上向きに立ち上げられた測定用排水管が接続されていることを特徴とする。
【0007】
かかる先進ボーリング口元構造によれば、測定用排水管が上向きに立ち上げられているため、湧水量が少ない場合であっても、ボーリング孔内に空気が入り込むことがない。そのため、空気の混入に起因する水圧の測定誤差の発生を防止することができる。また、下向きに開口する削孔用排水口からは排水とともに切削屑が排出されるため、ボーリング孔および口元保護管内に切削屑が溜まることが防止されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の先進ボーリング口元構造によれば、斜め上向きあるいは水平方向に穿孔された先進ボーリングを利用して切羽前方の地下水状況を計測する場合において、より正確な測定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る先進ボーリング口元構造を示す断面図である。
図2】他の形態に係る先進ボーリング口元構造を示す断面図である。
図3】その他の形態に係る先進ボーリング口元構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態では、トンネルの切羽前方の地山状況を把握することを目的として実施する先進ボーリングにおいて、斜め上向きに形成されたボーリング孔内への空気の混入を防止することができ、ひいては、切羽前方の地下水状況を正確に測定することができる地下水状況測定方法およびこれに使用する先進ボーリング口元構造について説明する。
本実施形態の先進ボーリング口元構造1は、図1に示すように、口元保護管2と、削孔用排水管3と、測定用排水管4と、圧力計5と、プリペンダー6とを備えている。先進ボーリング口元構造1には、ボーリングロッド7が挿通されている。先進ボーリング口元構造1は、ボーリング孔BHの孔口を保護するとともに、孔口からの高圧水等の噴出を防止する。
【0011】
口元保護管2は、ボーリング孔BHの孔口部分を保護する管材であって、ボーリング孔BHの孔口部分に先端部が挿入されているとともに、基端部が当該ボーリング孔BHから突出している。口元保護管2は、ボーリングロッド7を挿通可能な内径を具備したケーシングであって、ボーリング孔BHと連通している。口元保護管2とボーリング孔BHとの隙間は、充填材9により密閉されている。なお、充填材9を構成する材料は限定されるものではないが、例えばセメント系材料を使用すればよい。
【0012】
口元保護管2には、削孔用排水管3が接続されている。削孔用排水管3は、口元保護管2の下部に取り付けられていて、下向きに開口している。本実施形態の削孔用排水管3は、口元保護管2よりも小さい内径の管材からなる。削孔用排水管3は、口元保護管2の内空と連通している。また、削孔用排水管3にはバルブ10が設けられていて、削孔用排水管3の内空を遮蔽可能である。なお、削孔用排水管3の配管方法は限定されるものではなく、例えば、口元保護管2の基端側に接続された接続管に取り付けてもよい。また、削孔用排水管3の内径は限定されるものではない。
【0013】
口元保護管2の基端部(ボーリング孔BHから突出している側の端部)には、第一接続管11が連結されている。第一接続管11は、口元保護管2と同じ内径の管材からなる。なお、第一接続管11の内径は、必ずしも口元保護管2と同一である必要はない。また、第一接続管11の長さは、適宜決定すればよい。第一接続管11には、上向きに立ち上げられた測定用排水管4が取り付けられている。測定用排水管4は、第一接続管11よりも細径の管材からなり、第一接続管11の内空と連通している。測定用排水管4にはバルブ10が設けられていて、測定用排水管4の内空を遮蔽可能である。また、測定用排水管4には、図示しない流量計が設置されている。なお、本実施形態の測定用排水管4は、第一接続管11の上部に接続されているが、測定用排水管4の少なくとも一部分が上向き(上下方向)に立設されていれば、測定用排水管4の接続箇所は限定されるものではなく、第一接続管11の側部や下部に接続してもよい。測定用排水管4の開口端は、口元保護管2よりも高い位置にあるのが望ましい。また、測定用排水管4は、口元保護管2に直接取り付けられていてもよい。また、第一接続管11には、削孔用排水管3と測定用排水管4との2種類の排水管が上下に接続されていてもよい。また、測定用排水管4の内径は、第一接続管11の内径以下であれば限定されない。さらに、流量計は、必要に応じて設置すればよい。例えば、ストップウォッチとバケツ等を利用して、手動により時間当たりの流量を計測する場合には、流量計は省略してもよい。
【0014】
第一接続管11の基端(口元保護管2と反対側の端部)には、第二接続管12が連結されている。第二接続管12は、口元保護管2および第一接続管11と同じ内径の管材からなる。なお、第二接続管12の内径は、必ずしも口元保護管2と同一である必要はない。また、第二接続管12の長さは、適宜決定すればよい。第二接続管12の基端部(第一接続管11と反対側の端部)には、ボーリングロッド7と第二接続管12との隙間を遮蔽するためのプリペンダー6が設けられている。なお、口元保護管2に接続管(第一接続管11や第二接続管12)が接続されていない場合には、プリペンダー6を口元保護管2に直接設ければよい。また、プリペンダー6は、第一接続管11の基端部に設けられていてもよい。
【0015】
圧力計5は、口元保護管2に取り付けられている。圧力計5は、口元保護管2の内部の圧力を測定することにより、ボーリング孔BH内の水圧を測定する。なお、圧力計5の取り付け個所は、ボーリング孔BH内の水圧を測定することが可能であれば、限定されるものではなく、例えば、ボーリング孔BH内に配置してもよいし、第一接続管11に取り付けてもよい。
【0016】
本実施形態の地下水状況測定方法は、穿孔工程と、測定工程とを繰り返すことにより行う。
穿孔工程では、図1に示すように、ボーリングロッド7を利用してボーリング孔BHを穿孔する。本実施形態のボーリング孔BHは、基端側(孔口側)よりも先端側が高くなるように、斜め上向きに形成する。なお、ボーリング孔BHは水平であってもよい。ボーリングロッド7は中空の筒状部材からなり、ボーリングロッド7の先端にはビット8が固定されている。ボーリングロッド7が図示しないボーリングマシンの動力により中心軸を中心に回転すると、ビット8が地山を切削する。このとき、ボーリングロッド7を通じて、ビット8(ボーリング孔BHの先端部)に高圧水Wを送水する。なお、ボーリングロッド7を介してビット8に供給される液体は、必ずしも高圧水Wである必要はない。
ボーリング孔BHを穿孔する際には、削孔用排水管3のバルブ10を開いた状態とし、ボーリング孔BH内の水分(高圧水Wや湧水W)を削孔用排水管3を通して排水するとともに、地山の切削により発生したカッティングスを削孔用排水管3を通してボーリング孔BHから排出する。なお、穿孔工程では、測定用排水管4のバルブ10は閉じた状態にしておく。
【0017】
ボーリング孔BHの先端が所定の位置に到達したら、ボーリングロッド7による穿孔を停止して、測定工程を開始する。このとき、ボーリングロッド7を介したボーリング孔BHの先端部への高圧水Wの供給も停止する。なお、測定工程は、ボーリングロッド7のビット8を交換するタイミング、昼夜勤務の交代のタイミング、休工日において実施してもよい。
測定工程では、ボーリング孔BH内の水圧および湧水量を測定する。測定工程では、湧水量測定作業と、水圧測定作業とを実行する。
湧水量測定作業では、削孔用排水管3を閉塞した状態(削孔用排水管3のバルブ10を閉じた状態)で、測定用排水管4から排水させた湧水量を流量計により測定する。湧水量の測定は、測定用排水管4から流出する排水が安定した状態(高圧水Wの排出が終了した段階)で行う。
水圧測定作業では、削孔用排水管3のバルブ10および測定用排水管4のバルブ10を閉じた状態で、ボーリング孔BH内の水圧を圧力計5により測定する。
【0018】
以上、本実施形態の先進ボーリング口元構造1およびこれを利用した地下水状況測定方法によれば、測定用排水管4が上向きに立ち上げられているため、湧水量が少ない場合であっても、ボーリング孔BH内に空気が入り込むことがない。そのため、空気の混入に起因する水圧の測定誤差が生じることを防止することができる。
また、削孔用排水管3は、下向きに開口しているため、排水とともに切削屑(カッティングス)が排出される。そのため、ボーリング孔BHおよび先進ボーリング口元構造1内にカッティングスが溜まることを防止することができる。カッティングスの滞留を防止することで、ボーリングロッド7またはビット8とボーリング孔BHの孔壁との間などにカッティングスが詰まる(引っかかる)ことによって穿孔不能になることを防止することができる。また、滞留したカッティングスに起因する測定誤差が生じることを防止することもできる。
【0019】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、接続管(第一接続管11および第二接続管12)を介して測定用排水管4やプリペンダー6が設けられている場合について説明したが、測定用排水管4やプリペンダー6は、図2に示すように、口元保護管2に直接設けられていてもよい。接続管を省略することで、先進ボーリング口元構造1の設置時の作業工程を少なくすることが可能となる。
また、前記実施形態では、削孔用排水管3が口元保護管2に取り付けられている場合について説明したが、図3に示すように、口元保護管2に接続された接続管(第一接続管11)に削孔用排水管3が取り付けられていてもよい。このようにすることで、各管材(口元保護管2および接続管)の軽量化を図り、ひいては、作業性の向上を図ることができる。なお、口元保護管2に接続される接続管の本数は限定されるものではなく、例えば、1本(第一接続管11のみ)であってもよいし、3本以上であってもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 先進ボーリング口元構造
2 口元保護管
3 削孔用排水管
4 測定用排水管
5 圧力計
6 プリペンダー
7 ボーリングロッド
8 ビット
9 充填材
10 バルブ
11 第一接続管
12 第二接続管
図1
図2
図3