(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るゼリー飲料、ゼリー飲料の製造方法、及び、ゼリー飲料の分離性向上方法を実施するための形態(本実施形態)について説明する。
【0015】
[ゼリー飲料]
本実施形態に係るゼリー飲料は、液状部とゲル状のゼリー部とを含み、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、マグネシウム、乳化油脂を含有している。
【0016】
(ゲル化剤:ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム)
本実施形態に係るゼリー飲料は、ゲル化剤として、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガムの3種を含有する。
本発明者は、数多くのゲル化剤を用いて実験を行った結果、この3種の組合せのゲル化剤を用いた場合に、ゼリー飲料を液状部とゲル状のゼリー部とに適切に分離できることを見出した。詳細には、この3種の組合せのゲル化剤を用いた場合、ゲル化剤を含む原料を調合(50℃以下、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下で調合)した調合液を容器に充填し、加熱殺菌を施し、冷却するだけで、驚くべきことに、ゲル状となるゼリー部から液状部が好適に離水することで、液状、ゲル状の2つの状態を備えることとなる。つまり、本実施形態に係るゼリー飲料は、いわゆる1液充填法(複数ではなく1種類の調合液を使用する方法)によって製造できるだけでなく、調合液を容器に充填するまでに別途加熱処理を施してゲル化させるといった工程も必要ない。その結果、本実施形態に係るゼリー飲料は、製造工程を短縮化できるだけでなく、ゲル化した調合液が製造装置の配管等に付着すること等に伴う製造装置のメンテナンスも不要であり、製造適性に非常に優れた飲料といえる。
【0017】
ローカストビーンガムは、他の2つのゲル化剤と組み合わせて使用することにより、前記のとおり、液状部とゲル状のゼリー部とを適切に分離させるとともに、ゼリー部の固さに影響を与える。
【0018】
ローカストビーンガムの含有量は、0.50g/L以上が好ましく、0.55g/L以上がより好ましく、0.60g/L以上がさらに好ましく、0.65g/L以上が特に好ましい。ローカストビーンガムの含有量が所定量以上であることによって、液状部とゼリー部とをより適切に分離させるとともに、ゼリー部をより固めの状態にすることができる。
また、ローカストビーンガムの含有量は、3.00g/L以下が好ましく、2.50g/L以下がより好ましく、1.00g/L以下がさらに好ましく、0.90g/L以下が特に好ましい。ローカストビーンガムの含有量が所定量を超えると、固くなり2層分離しなくなるためである。
【0019】
カラギーナンは、他の2つのゲル化剤と組み合わせて使用することにより、液状部とゲル状のゼリー部とを適切に分離させるとともに、ゼリー部の固さに影響を与える。なお、カラギーナンは、κ−カラギーナン、ι−カラギーナン、λ−カラギーナンのいずれの種類でもよいが、ゼリー部の強度を確保する観点から、κ−カラギーナンが好ましい。
【0020】
カラギーナンの含有量は、0.10g/L以上が好ましく、0.20g/L以上がより好ましく、0.30g/L以上がさらに好ましく、0.35g/L以上が特に好ましい。カラギーナンの含有量が所定量以上であることによって、液状部とゼリー部とをより適切に分離させるとともに、ゼリー部をより固めの状態にすることができる。
また、カラギーナンの含有量は、0.75g/L以下が好ましく、0.60g/L以下がより好ましく、0.55g/L以下がさらに好ましく、0.50g/L以下が特に好ましい。カラギーナンの含有量が所定量を超えると、固くなり2層分離しなくなるためである。
【0021】
キサンタンガムは、他の2つのゲル化剤と組み合わせて使用することにより、液状部とゲル状のゼリー部とを適切に分離させるとともに、離水率(ゼリー飲料に占める液状部の割合)に影響を与える。
【0022】
キサンタンガムの含有量は、0.10g/L以上が好ましく、0.20g/L以上がより好ましく、0.25g/L以上がさらに好ましく、0.30g/L以上が特に好ましい。キサンタンガムの含有量が所定量以上であることによって、液状部とゼリー部とをより適切に分離させるとともに、離水率が多過ぎるといった事態を回避することができる。
また、キサンタンガムの含有量は、0.75g/L以下が好ましく、0.60g/L以下がより好ましく、0.50g/L以下がさらに好ましく、0.45g/L以下が特に好ましい。キサンタンガムの含有量が所定量以下であることにより、離水率が多過ぎるといった事態を回避することができる。
【0023】
なお、ゲル化剤であるローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガムの3種の合計の含有量は、特に限定されないものの、液状部とゲル状のゼリー部とをより明確に分離させ、より優れた食感とする(ゼリー部が固めの食感となる)という観点から、0.70g/L以上が好ましく、1.00g/L以上がより好ましく、1.30g/L以上がさらに好ましい。また、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガムの3種の合計の含有量は、固くなり2層分離しなくなるという観点から、4.50g/L以下が好ましく、4.00g/L以下がより好ましく、3.00g/L以下がさらに好ましい。
【0024】
(液状部)
液状部とは、ゼリー飲料のうち、前記したゲル化剤によってゲル化していない液状の部分、言い換えると、ゲル状のゼリー部から離水した部分であり、主にゲル化しなかった乳化油脂等を含んで構成される。なお、ゲル状のゼリー部にも乳化油脂由来の油脂分が含まれ、当該油脂分の全てが液状部に含まれるものではないが、乳化油脂は、出来る限り液状部に多く含まれている状態が好ましい。
液状部の割合(ゼリー飲料全体に占める割合:含有量、離水率とも言う)は、3質量%以上が好ましく、8.5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、11質量%以上が特に好ましい。液状部の割合が所定割合以上であることにより、消費者はゲル状の部分だけでなく液状の部分を十分に感じることができる。
また、液状部の割合は、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下が特に好ましい。液状部の割合が所定割合以下であることにより、液状の部分が多くなり過ぎてしまいゼリー飲料として好ましくない状態となってしまうのを回避することができる。
なお、本発明に係るゼリー飲料において、油脂分を含んだ液状部は、例えばコーヒーゼリーにおける液状のクリーム様の役割を果たす。
【0025】
(乳化油脂)
乳化油脂とは、乳化剤により乳化された油脂であり、乳化植物油脂(植物性乳化油脂)と乳化動物油脂(動物性乳化油脂)を用いることができる。そして、乳化油脂をゼリー飲料に含有させた場合、液状部として油脂分が適切にゼリー部から分離するとともに、液状部とゼリー部とが分離した状態を長く維持する経時安定性にも優れる。
乳化植物油脂とは、植物由来の油脂が乳化されたものであり、例えば、ナタネ油乳化油脂、米油乳化油脂、大豆油乳化油脂、紅花油乳化油脂、ヒマワリ油乳化油脂等が挙げられる。
乳化動物油脂とは、動物由来の油脂が乳化されたものであり、例えば、予め乳化剤で乳化した、バター、生クリーム、ラード等が挙げられる。
なお、乳化植物油脂と乳化動物油脂とを比較すると、乳化植物油脂を使用したゼリー飲料の方が、液状部が多くなる傾向があるため、ゼリー飲料に対するニーズに応じて両者を選択することができる。
【0026】
ゼリー飲料全体に対する乳化油脂の含有量は特に限定されないが、例えば、乳化油脂(油脂含量50%)の含有量は、10〜60g/Lであり、好ましくは12〜45g/Lであり、さらに好ましくは15〜40g/Lである。また、ゼリー飲料全体に対する乳化油脂として含有させる油脂の含有量は、5〜30g/Lであり、好ましくは6〜22.5g/Lであり、さらに好ましくは7.5〜20g/Lである。
【0027】
乳化油脂の乳化剤については特に限定されないが、乳タンパク由来の乳化剤の使用量は少ない方が好ましい。乳タンパク由来の乳化剤の使用量が多いと、油脂分が液状部としてゼリー部から分離し難く、ゼリー部に油脂分が多く含有されてしまうからである。
ただし、乳タンパク由来の乳化剤の使用を排除するものではない。
【0028】
(ゲル状のゼリー部)
ゲル状のゼリー部とは、ゼリー飲料のうち、前記したゲル化剤によってゲル化しているゲル状(固体状又は半固体状)の部分である。
そして、ゲル状のゼリー部は、例えば、コーヒー、抹茶、紅茶、バナナ風味飲料、杏仁風味飲料、イチゴ風味飲料(果実風味飲料)、チーズ風味飲料、汁粉風味飲料(小豆汁)、トマト風味飲料(野菜風味飲料)、スープ類等といった様々な風味を呈する飲料をゲル化させたものである。
ゼリー部の含有量は、前記した液状部や後記する固形物質(具材)等を除いた量であって特に限定されない。
【0029】
(マグネシウム)
マグネシウムは、液状部をより明確にゲル状のゼリー部から分離(離水)させ、多くの乳化油脂を離水側である液状部とすることによって、液状部とゼリー部との色調(液状部の略白色とゼリー部の白以外の色)のコントラストを非常に強くすることができる物質であり、ゲル化剤によるゲル化を補助する役割を果たす物質(ゲル化補助剤)である。
また、マグネシウムは、原料を混合して調合液を調製した後、調合液に温度的負荷(容器に充填する前の所定の加熱負荷等)がかかろうとも、調合液を加熱してから容器に充填するまでの間に当該調合液に力学的負荷(ライン製造時におけるポンプによる圧力負荷等)がかかろうとも、最終的に得られるゼリー飲料の液状部とゼリー部とを明確に分離させることができる。つまり、マグネシウムは、調合液の状態における温度的負荷や力学的負荷に対する耐性を向上させ、結果として、液状部とゼリー部とが明確に分離した所望のゼリー飲料とすることができる。
【0030】
マグネシウムの含有量は、0.03g/L以上が好ましく、0.05g/L以上がより好ましく、0.1g/L以上がさらに好ましい。マグネシウムの含有量が所定量以上であることにより、液状部とゼリー部との色調の差をより強くすることができるとともに、調合液の温度的負荷や力学的負荷に対する耐性を向上させることができる。
また、マグネシウムの含有量は、前記した効果が飽和する観点、及び、香味が好適なものでなくなる(エグ味が強くなる)という観点から、0.5g/L以下が好ましく、0.4g/L以下がより好ましい。
【0031】
マグネシウム源としては、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、L−グルタミン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0032】
(pH)
本実施形態に係るゼリー飲料のpHは、5.0以上であることが好ましく、5.5以上であることがより好ましく、6.0以上であることがさらに好ましい。
ゼリー飲料のpHが所定値以上であることにより、ゼリー部が軟らか過ぎる、又は、固まらないといった事態を回避することができる。
本実施形態に係るゼリー飲料のpHの上限は特に限定されないものの、例えば7.5である。
なお、このゼリー飲料のpHの値は、製品中のpHを指し、詳細には、ゼリー飲料を振って液状部とゲル状のゼリー部とを混合させた後の状態のpHである。そして、pHの値は、市販のpH測定器で測定することができる。
【0033】
(温度)
本実施形態に係るゼリー飲料は、温度が高い状態が続くとゼリー部が溶解する可能性があるため、常温状態で保管・保存される製品として取り扱われるのが好ましく、言い換えると、ホット製品ではなくコールド製品として取り扱われるのが好ましい。
【0034】
(アルコール)
本実施形態に係るゼリー飲料は、アルコールを含有してもよい。
アルコールは飲用することができるアルコールであればよく、本発明の所望の効果が阻害されない範囲であれば、種類、製法、原料などに限定されることがないが、蒸留酒又は醸造酒であることが好ましい。蒸留酒としては、例えば、焼酎、ブランデー、ウォッカ、ウイスキー、ラム等の各種スピリッツ、原料用アルコール等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。醸造酒としては、例えば、ビール、発泡酒、果実酒、甘味果実酒、清酒などを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、前記した様々な酒類に果実等を漬け込んだ浸漬酒を使用してもよい。
なお、本明細書においてアルコールとは、特に明記しない限り、エタノールのことをいう。
【0035】
(その他)
本実施形態に係るゼリー飲料は、前記のとおり、ゼリー部(及び、液状部の一部)を構成する原料として、例えば、コーヒー、抹茶、紅茶、バナナ風味飲料、杏仁風味飲料、イチゴ風味飲料(果実風味飲料)、チーズ風味飲料、汁粉風味飲料(小豆汁)、トマト風味飲料(野菜風味飲料)、スープ類等の各種飲料(又は、各種飲料の一般的な素材・原料)を含有させればよい。
また、本実施形態に係るゼリー飲料は、前記のとおり、様々な風味(香味)を呈する飲料をゲル化させたゼリー部を含むが、当該ゼリー部の風味に適した固形物質(具材)を適宜含有させてもよい。例えば、ゼリー部として抹茶や汁粉風味飲料をゲル化させた場合は、白玉、白玉こんにゃく、小豆等を含有させてもよく、ゼリー部として果実風味飲料や野菜風味飲料をゲル化させた場合は、果実片、野菜片を含有させてもよい。
【0036】
また、本実施形態に係るゼリー飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類、食物繊維、消泡剤、着色料など(以下、適宜「添加剤」という)を添加することもできる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲンやデンプンなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL−酒石酸、L−酒石酸、DL−酒石酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL−リンゴ酸、DL−リンゴ酸ナトリウム、リン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。消泡剤としては、乳化剤、シリコン系消泡剤、液状油などを用いることができる。着色料としては、例えば、カラメル色素、アントシアニン、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素などを用いることができる。
そして、前記した各原料は、一般に市販されているものを使用することができる。
【0037】
[容器詰めゼリー飲料]
本実施形態に係るゼリー飲料は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器にゼリー飲料を詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器、樽容器、ガラス容器、パウチ容器などを適用することができる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0038】
[ゼリー飲料の製造方法]
次に、本実施形態に係るゼリー飲料の製造方法を説明する。
本実施形態に係るゼリー飲料の製造方法は、調製工程S1と、充填工程S2と、加熱殺菌工程S3と、を含む。
【0039】
調製工程S1では、混合タンクに、コーヒー等の各種飲料(又は、各種飲料の原料)、水、ゲル化剤、乳化油脂等の油脂原料、マグネシウム源、アルコール、pHを調製するための重ソウ、添加剤などを適宜投入して調合液を製造する。
なお、調製工程S1において、マグネシウム源は他の原料と一緒に混合するよりも、別途最後に混合した方が液状部とゼリー部とが適切に分離する。よって、調製工程S1では、マグネシウム源を最後に混合する、つまり、調製工程S1で調製した調合液に対してマグネシウム源(マグネシウム)を混合するのが好ましい。
この調製工程S1において、各原料を前記した所定範囲の量となるように混合し、調製すればよい。
【0040】
充填工程S2では、調製工程S1で得られた調合液を容器に充填する。
充填工程S2での充填方法は、ホットパック充填、アセプティック充填等、公知の方法で行うこともできるが、調合液を50〜85℃まで加熱してから容器に充填する方法が好好ましく、60〜85℃がより好ましく、60〜70℃が更に好ましい。
充填時の調合液の加熱温度が50℃以上であることによって、調合液中の残存酸素を適切に脱気することができるとともに、調合液を加熱した後に容器に陰圧充填する充填方法に好適に適用することもできる。また、充填時の調合液の加熱温度が85℃以下であることによって、調合液のゲル化を防止できるため、調合液が製造装置の配管等に付着すること等に伴う製造装置のメンテナンスも不要となる。
なお、本実施形態に係るゼリー飲料は、調合液の状態における温度的負荷に対する耐性に優れることから、この50〜85℃での充填という方法を適用するのが好適である。
また、この充填工程S2において、ホモジナイズを行っても行わなくてもよいが、ゲル強度の観点から行わないほうが望ましい。
【0041】
加熱殺菌工程S3では、容器に充填された調合液を加熱殺菌(例えば、レトルト殺菌)する。加熱の温度については、例えば、F0=4以上(例えば、35程度)の殺菌であればよく、温度は110℃以上であればよい。加熱の温度は、好ましくは121〜125℃であり、加熱の時間については、例えば、10〜30分であればよい。
この加熱殺菌工程S3の加熱処理によって、調合液のゲル化剤が溶解する。そして、加熱殺菌工程S3の後、容器に充填された調合液の温度が低下する過程において、液状部とゲル状のゼリー部とに分離することになる。
なお、このようにして製造されたゼリー飲料は、容器内部の下側にゲル状のゼリー部が形成され、ゼリー部の上側に液状部が形成される。よって、消費者は、ゼリー飲料を消費する前に、容器を適宜振ることにより、ゼリー部が所望のサイズとなるように破砕させることができる。
【0042】
調製工程S1、充填工程S2、加熱殺菌工程S3にて行われる各処理は、各種飲料を製造するために一般的に用いられている設備にて行うことができる。
【0043】
[ゼリー飲料の分離性向上方法]
次に、本実施形態に係るゼリー飲料の分離性向上方法を説明する。
本実施形態に係るゼリー飲料の分離性向上方法は、ゼリー飲料の液状部とゲル状のゼリー部とを明確に分離させる方法であって、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、マグネシウム、乳化油脂を含む原料を混合して調合液を調製し、前記調合液を容器に充填した後、前記容器に充填された前記調合液を加熱殺菌する。
なお、本実施形態に係るゼリー飲料の分離性向上方法における各処理は、前記した「ゼリー飲料の製造方法」において説明した内容と同じであり、各成分の含有量等については、前記した「ゼリー飲料」において説明した内容と同じである。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係るゼリー飲料(ゼリー飲料の製造方法、ゼリー飲料の分離性向上方法)は、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、マグネシウム、乳化油脂を含有することから、液状部とゲル状のゼリー部とが明確に分離することとなる。詳細には、ゼリー飲料の液状部とゼリー部との色調の差をより強くすることができる。
また、本実施形態に係るゼリー飲料(ゼリー飲料の製造方法、ゼリー飲料の分離性向上方法)は、原料を混合して調合液を調製した後、調合液を加熱してから容器に充填するまでの間に当該調合液に温度的負荷や力学的負荷がかかろうとも、ゼリー飲料の液状部とゼリー部とを明確に分離させることができる。
【0045】
また、本実施形態に係るゼリー飲料(ゼリー飲料の製造方法、ゼリー飲料の分離性向上方法)は、消費者が飲む前に振り崩しの作業を要するゼリー飲料(ゼリー部を振り崩すことで飲用に適した状態となる飲料)に適しており、消費者が適宜ゼリー部の大きさを調整可能である。そして、この振り崩しの作業によって、ゼリー部を不均一な形状・大きさとすることができ、液状のクリームが当該ゼリー部に絡み合うこととなる。その結果、従来のムース状のクリームがゼリー部の上に載っているだけのものと比較して、液状部(液状のクリーム)とゼリー部とがしっかりと絡み合い、ゼリー飲料として非常に好適なものとなる。また、消費者による振り崩しが行われるまでは液状部(液状のクリーム)とゼリー部とが混ざり合うことがなく、消費者による振り崩しによって混ざるため、あたかも消費者が当該ゼリー飲料を飲む直前に液状のクリームをかけたような斬新な見た目と本物感を容器詰めゼリー飲料において演出することができる。
【0046】
また、本実施形態に係るゼリー飲料の製造方法は、いわゆる1液充填法であるとともに、調合液を容器に充填するまでにゲル化させるといった工程も必要ない。その結果、本実施形態に係るゼリー飲料の製造方法は、製造工程を短縮化できるだけでなく、ゲル化した調合液が製造装置の配管等に付着すること等に伴う製造装置のメンテナンスも不要であり、製造適性に非常に優れる。
【実施例】
【0047】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
【0048】
[実施例1]
まず、実施例1では、充填工程での加熱温度が各評価に与える影響について確認する。
【0049】
(サンプルの準備)
下記表に示すような含有量となるように、インスタントコーヒー(粉末状)、グラニュー糖、乳化植物油脂(ナタネ油乳化油脂、油脂含量約50%)、ローカストビーンガム、κ−カラギーナン、キサンタンガム、乳化剤、重ソウ、水を混合し、最後に、硫酸マグネシウム(硫酸マグネシウム1g中、マグネシウム0.099g)、又は、乳酸カルシウム(乳酸カルシウム1g中、カルシウム0.13g)を混合してサンプル液を準備した。ここまで、冷調合(50℃以下)で準備した。
そして、サンプル液を表に示す温度となるように加熱し、容器(広口缶)に充填した後、容器に対して、123℃、20分の加熱殺菌を施した。なお、充填時において、ホモジナイズは行わなかった。
その後、常温まで冷却した後、容器を数回振り、容器内のサンプル液を透明のコップに移した。
【0050】
(試験内容)
(離水率)
各サンプルの内容量(質量)を計測した後、各サンプルから液体のみを採取し、離水量(液体部分の質量)を計測した。そして、各サンプルの離水率(=離水量/内容量×100)を算出した。
【0051】
表に、各サンプルの規格を示すとともに、各評価の結果を示す。
なお、表中の「調合Bx」とは、冷調合後の状態のサンプルを糖度計(RX−5000:ATAGO社製)で測定したBx値であり、「調合pH」とは、冷調合後の状態のサンプルをpH測定器(HM−30G:東亜ティーケーケー社製)で測定したpH値である。
また、表中の「殺菌後Bx」とは、加熱殺菌後、常温のゲル化したゼリー飲料を振って液状部とゼリー部とを混合させた後の状態のサンプルを前記した糖度計で測定したBx値であって、「殺菌後Bx(ゼリー部)」はゼリー部のBx値、「殺菌後Bx値(液状部)」とは液状部のBx値である。
また、「殺菌後pH」とは、加熱殺菌後、常温のゲル化したゼリー飲料を振って液状部とゼリー部とを混合させた後の状態のサンプルを前記したpH測定器で測定したpH値である。
そして、表中の「−」は、測定していない、又は、評価していない旨を示す。
【0052】
【表1】
【0053】
(結果の検討)
カルシウムを含有するサンプル1−1〜1−4は、充填時にサンプル液が加熱されると離水率が14%から8%へ大幅に低下してしまうことが確認できた。一方、マグネシウムを含有するサンプル1−5〜1−8は、充填時にサンプル液が加熱されようとも離水率の大幅な低下は確認できなかった。
以上より、原料にマグネシウムを含有するゼリー飲料は、サンプル液(調合液)の状態において温度的負荷に対する耐性があることが確認できた。
【0054】
[実施例2]
次に、実施例2では、調合液を容器に充填するまでの力学的負荷が各評価に与える影響について確認する。
【0055】
(サンプルの準備)
下記表に示すような含有量となるように、インスタントコーヒー(粉末状)、グラニュー糖、乳化植物油脂(ナタネ油乳化油脂、油脂含量約50%)、ローカストビーンガム、κ−カラギーナン、キサンタンガム、乳化剤、重ソウ、水を混合し、最後に、硫酸マグネシウム(硫酸マグネシウム1g中、マグネシウム0.099g)、又は、乳酸カルシウム(乳酸カルシウム1g中、カルシウム0.13g)を混合してサンプル液を準備した。ここまで、冷調合(50℃以下)で準備した。
そして、サンプル液を表に示す温度となるように加熱し、表に示す回数だけ、カスケード(遠心)ポンプ(愛知興業製、MC−32S4、口径32mm)によって循環ホース(約2m、配管内径15mm)を流量約6L/分にて循環させ、容器(広口缶)に充填した後、容器に対して、123℃、20分の加熱殺菌を施した。なお、充填時において、ホモジナイズは行わなかった。
その後、常温まで冷却した後、容器を数回振り、容器内のサンプル液を透明のコップに移した。
【0056】
(試験内容)
実施例1と同様の「離水率」に関する試験だけでなく、以下の試験も行った。
【0057】
(官能評価)
各サンプルについて、訓練された専門のパネル5名が下記評価基準に則って「2層分離」、「食感」、「色調」について、4段階評価で各々評価を行い、最終的な評価を各パネルがディスカッションして決定した。
なお、2層分離、色調は、目視にて評価を行い、食感は、飲んで評価を行った。
【0058】
(2層分離:評価基準)
◎:2層(液状部とゲル状のゼリー部)に非常に明確に分離。
○:2層に明確に分離。
△:2層に分離しているが、あまり明確ではなかった。
×:2層に分離しない。
【0059】
(食感:評価基準)
◎:ゲル状のゼリー部が固く、非常にしっかりとしたゲル状の食感を感じられた。
○:ゲル状のゼリー部がやわらかすぎず、しっかりとしたゲル状の食感を感じられた。
△:ゲル状のゼリー部がやわらかいものの、ゲル状の食感を感じられた。
×:ゲル状の食感を感じられなかった、又は、全体がゲル状になってしまった。
【0060】
(色調:評価基準)
◎:液状部とゼリー部との色のコントラストが非常に明確であった。
○:液状部とゼリー部との色のコントラストが明確であった。
△:液状部とゼリー部との色のコントラストがあまり明確ではなかった。
×:液状部とゼリー部との色のコントラストがなかった。
【0061】
(液状部の色の確認)
各サンプルの液状部を直径35mmの円筒セルに投入し、分光測色計(ZE6000 日本電色工業株式会社製)を用いた透明物体色測定(ZE6000の取扱説明書に沿った測定)によって、L
*値、a
*値、b
*値、YI値を求めた。
なお、L
*値は明度を示し、値が大きいほど明るいことを示す。また、a
*値、b
*値は色度(色相と彩度)を示すとともにそれぞれ色の方向を示しており、a
*は赤方向、−a
*は緑方向を示し、b
*は黄方向、−b
*は青方向を示す。そして、YI値は、黄色度を示している。
【0062】
(味の評価)
各サンプルについて、訓練された専門のパネル5名が下記評価基準に則って「ゼリー部コーヒー感」、「ゼリー部クリーム感」、「液状部コーヒー感」、「液状部クリーム感」、「ゼリー部と液状部との味覚差」について、5段階評価で各々評価を行い、最終的な評価を各パネルがディスカッションして決定した。
【0063】
(コーヒー感、クリーム感の評価:評価基準)
5:非常に強い。
4:強い。
3:普通である。
2:弱い。
1:非常に弱い。
【0064】
(味覚差の評価:評価基準)
5:非常に大きい。
4:大きい。
3:普通である。
2:小さい。
1:非常に小さい。
【0065】
【表2】
【0066】
(結果の検討)
カルシウムを含有するサンプル2−1〜2−5は、液状部のL
*値が40台であり、乳化植物油脂由来の白色がそこまで明るくなかった。一方、マグネシウムを含有するサンプル2−6〜2−15は、液状部のL
*値が60台であり、乳化植物油脂由来の白色が明るく鮮明となることが確認できた。なお、これらの結果は、官能評価における色調の結果とほぼ適合する結果となった。
また、マグネシウムを含有するサンプル2−6〜2−15は、カルシウムを含有するサンプル2−1〜2−5と比較して、ゼリー部のコーヒー感が強いとともに液状部のクリーム感が強く感じられ、その結果、ゼリー部と液状部との味覚差が大きく感じられた。
そして、マグネシウムを含有するサンプル2−6〜2−15のいずれもが、L
*値、及び、ゼリー部と液状部との味覚差について好ましい結果が得られただけでなく、離水率も殆ど変化していないことから、ポンプによってサンプル液を配管内で循環させても結果は変わらない、言い換えると、サンプル液(調合液)の状態において力学的負荷に対する耐性があることが確認できた。
【0067】
[実施例3]
次に、実施例3では、硫酸マグネシウム(マグネシウム)の含有量が、各評価に与える影響について確認する。
【0068】
(サンプルの準備)
下記表に示すような含有量となるように、インスタントコーヒー(粉末状)、グラニュー糖、乳化植物油脂(ナタネ油乳化油脂、油脂含量約50%)、ローカストビーンガム、κ−カラギーナン、キサンタンガム、乳化剤、重ソウ、水を混合し、最後に、硫酸マグネシウム(硫酸マグネシウム1g中、マグネシウム0.099g)、又は、乳酸カルシウム(乳酸カルシウム1g中、カルシウム0.13g)を混合してサンプル液を準備した。ここまで、冷調合(50℃以下)で準備した。
そして、サンプル液を表に示す温度となるように加熱し、容器(広口缶)に充填した後、容器に対して、123℃、20分の加熱殺菌を施した。なお、充填時において、ホモジナイズは行わなかった。
その後、常温まで冷却した後、容器を数回振り、容器内のサンプル液を透明のコップに移した。
【0069】
(試験内容)
実施例2と同様の試験を行った。
【0070】
【表3】
【0071】
(結果の検討)
サンプル3−1〜3−6の結果より、所定の範囲内でマグネシウムを含有させることにより、全ての官能評価(2層分離、食感、色調、ゼリー部と液状部との味覚差等)の結果が好ましく、L
*値も高く、離水率も好ましい範囲となることが確認できた。
なお、サンプル3−7は、乳化植物油脂の含有量を変化させたサンプルであるが、所定の範囲内でマグネシウムを含有していたため、全ての官能評価(2層分離、食感、色調、ゼリー部と液状部との味覚差等)の結果が好ましく、L
*値も高く、離水率も好ましい範囲であった。
【0072】
[実施例4]
次に、実施例4では、本発明がコーヒー以外のタイプの飲料に適用可能か否かについて確認する。
【0073】
(サンプルの準備)
下記表に示すような含有量となるように、抹茶エキス(長岡香料社製)、グラニュー糖、乳化植物油脂(ナタネ油乳化油脂、油脂含量約50%)、ローカストビーンガム、κ−カラギーナン、キサンタンガム、乳化剤、重ソウ、塩化カリウム(KCl)、水を混合し、最後に、硫酸マグネシウム(硫酸マグネシウム1g中、マグネシウム0.099g)、又は、乳酸カルシウム(乳酸カルシウム1g中、カルシウム0.13g)を混合してサンプル液を準備した。ここまで、冷調合(50℃以下)で準備した。
そして、サンプル液を表に示す温度となるように加熱し、容器(広口缶)に充填した後、容器に対して、123℃、20分の加熱殺菌を施した。なお、充填時において、ホモジナイズは行わなかった。
その後、常温まで冷却した後、容器を数回振り、容器内のサンプル液を透明のコップに移した。
【0074】
(試験内容)
実施例2と同様の試験を行った。
【0075】
【表4】
【0076】
(結果の検討)
サンプル4−1〜4−5の結果より、コーヒー以外のタイプの飲料であっても、所定の範囲内でマグネシウムを含有させることにより、殆ど全ての官能評価(2層分離、食感、色調、ゼリー部と液状部との味覚差等)の結果が好ましく、L
*値も高く、離水率も好ましい範囲となることが確認できた。
なお、サンプル4−6は、抹茶エキス、乳化植物油脂、ゲル化剤の含有量を変化させたサンプルであるが、所定の範囲内でマグネシウムを含有していたため、全ての官能評価(2層分離、食感、色調、ゼリー部と液状部との味覚差等)の結果が好ましく、L
*値も高く、離水率も好ましい範囲であった。