特許第6948918号(P6948918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6948918
(24)【登録日】2021年9月24日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】電力変換装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20210930BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   H02M3/28 H
   H02M3/28 U
   H02M3/28 C
   H02M7/12 H
   H02M7/12 Q
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-217138(P2017-217138)
(22)【出願日】2017年11月10日
(65)【公開番号】特開2019-88171(P2019-88171A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】冨田 健児
(72)【発明者】
【氏名】居安 誠二
(72)【発明者】
【氏名】半田 祐一
【審査官】 土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−192543(JP,A)
【文献】 特開2016−019391(JP,A)
【文献】 特開2016−127608(JP,A)
【文献】 特開2015−119616(JP,A)
【文献】 特開2015−149822(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/109694(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0105056(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源(40)から供給される交流電圧を入力側スイッチ(Q1)の操作により直流電圧に変換する第1変換器(10)と、
前記第1変換器から供給される直流電圧により充電されるDCリンクコンデンサ(15)と、
出力側スイッチ(Q2〜Q5)を備える1次側回路(21)と、給電対象(50)が接続された2次側回路(23)と、前記1次側回路と前記2次側回路とを絶縁するトランス(22)とを有し、前記DCリンクコンデンサから供給される直流電圧を前記出力側スイッチの操作により降圧して前記給電対象に供給する第2変換器(20)と、
前記第2変換器の出力電圧を検出する電圧検出部(35)と、を備える電力変換装置(100)に適用される電力変換装置の制御装置(30)において、
前記電圧検出部により検出された出力電圧と、前記トランスの巻き数比と、前記出力側スイッチの1スイッチング周期に対するオン操作期間の比率とに基づいて、前記DCリンクコンデンサの端子間電圧の下限値を算出する下限値算出部と、
前記DCリンクコンデンサの端子間電圧であるリンク電圧を前記下限値よりも高い指令電圧に制御すべく、前記入力側スイッチを操作する制御部と、を備える電力変換装置の制御装置。
【請求項2】
前記下限値算出部は、前記第2変換器の出力電圧に、前記トランスの巻き数比を乗じ、前記第2変換器の前記出力側スイッチの1スイッチング周期に対するオン操作期間の比率の最大値で除した値を前記下限値として算出する請求項1に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項3】
前記DCリンクコンデンサの入力電力の予測値と、前記DCリンクコンデンサの静電容量とに基づいて、前記DCリンクコンデンサに生じるリップル電圧を推定するリップル推定部を備え、
前記制御部は、前記指令電圧を、推定された前記リップル電圧に前記下限値を加えた値よりも高い値とする請求項1又は2に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項4】
前記DCリンクコンデンサに生じるリップル電圧の実測値に基づいて、前記DCリンクコンデンサの静電容量を推定する容量推定部を備え、
前記リップル推定部は、前記容量推定部により推定された前記静電容量を用いて、前記リップル電圧を推定する請求項3に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項5】
前記DCリンクコンデンサの温度を取得する温度取得部を備え、
前記下限値算出部は、前記DCリンクコンデンサの温度が所定の温度閾値よりも高いと判定した場合に、前記DCリンクコンデンサの温度が前記温度閾値以下であると判定した場合よりも、前記下限値を高い値に算出する請求項1〜4のいずれか一項に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項6】
前記第2変換器において、出力電圧と、前記巻き数比と、前記出力側スイッチの1スイッチング周期に対する当該出力側スイッチに流れる電流のリンギング発生期間の比率とに基づいて、前記リンク電圧の上限値を算出する上限値算出部を備え、
前記制御部は、前記出力側スイッチに流れる電流をピーク電流モード制御により制御すべく、前記出力側スイッチを操作し、
前記制御部は、前記下限値よりも高い値であり、かつ前記上限値よりも低い値に前記リンク電圧を制御すべく、前記第1変換器の前記入力側スイッチを操作する請求項1〜5のいずれか一項に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項7】
前記1次側回路は、1組の前記出力側スイッチを接続した第1直列接続体と、1組の前記出力側スイッチを接続した第2直列接続体とが並列接続されて構成されており、
前記第1直列接続体の1組の前記出力側スイッチの接続点には、前記トランスの1次側巻線の第1端が接続され、前記第2直列接続体の1組の前記出力側スイッチの接続点には、前記1次側巻線の第2端が接続されており、
前記1次側巻線と磁気結合する2次側巻線の両端には、前記2次側回路を介して前記給電対象が並列接続されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の電力変換装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、AC・DCコンバータと、AC・DCコンバータの両出力端子に並列接続されたDCリンクコンデンサと、DCリンクコンデンサの両端子に接続された絶縁型のDC・DCコンバータとを備える電力変換装置が開示されている。電力変換装置では、AC・DCコンバータから供給される直流電圧によりDCリンクコンデンサが充電される。そして、DC・DCコンバータは、DCリンクコンデンサの端子間電圧であるリンク電圧を降圧し、給電対象に電力を供給する。
【0003】
特許文献1では、DC・DCコンバータが有するトランスの1次側巻線に、LC共振回路が設けられている。そのため、LC共振回路の共振周波数近傍において1次側巻線のインピーダンスが低減され、トランスの2次側巻線に接続された2次側回路に電流が流れ易くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012―85378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行文献1の電力変換装置の構成において、DC・DCコンバータを、LC共振回路を備えていないDC・DCコンバータに置換する場合、本願発明者は、DC・DCコンバータから給電対象への出力電流が安定して供給されない場合があることに着目した。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みたものであり、DCリンクコンデンサを備える電力変換装置において、出力電流を安定的に給電対象に供給することができる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る制御装置は、交流電源から供給される交流電圧を入力側スイッチの操作により直流電圧に変換する第1変換器と、前記第1変換器から供給される直流電圧により充電されるDCリンクコンデンサと、出力側スイッチを備える1次側回路と、給電対象が接続された2次側回路と、前記1次側回路と前記2次側回路とを絶縁するトランスとを有し、前記DCリンクコンデンサから供給される直流電圧を前記出力側スイッチの操作により降圧して前記給電対象に供給する第2変換器と、前記第2変換器の出力電圧を検出する電圧検出部と、を備える電力変換装置に適用される。制御装置は、前記電圧検出部により検出された出力電圧と、前記トランスの巻き数比と、前記出力側スイッチの1スイッチング周期に対するオン操作期間の比率とに基づいて、前記DCリンクコンデンサの端子間電圧の下限値を算出する下限値算出部と、前記DCリンクコンデンサの端子間電圧であるリンク電圧を前記下限値よりも高い指令電圧に制御すべく、前記入力側スイッチを操作する制御部と、を備える。
【0008】
本発明に係る電力変換装置は、交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換する第1変換器と、第1変換器から供給される直流電圧により充電されるDCリンクコンデンサと、DCリンクコンデンサから供給される直流電圧を1次側回路の出力側スイッチのオン・オフ操作により降圧して、給電対象に電力を供給する第2変換器とを備えている。
【0009】
このような電力変換装置において、本発明者は、第2変換器から給電対象への出力電流の供給が安定しない原因として、第1変換器と第2変換器との間に配置されたDCリンクコンデンサの端子間電圧が適正な値となっていない場合があることを突き止めた。具体的には、DCリンクコンデンサの端子間電圧が低いことで、第2変換器の入力電圧が低い値となり、2次側回路に接続された給電対象に十分な出力電流を供給できない場合がある。そこで、本発明では、第2変換器の出力電圧と、トランスの巻き数比と、第2変換器が備える出力側スイッチの1スイッチング周期に対するオン操作期間の比の最大値とに基づいて、DCリンクコンデンサの端子間電圧の下限値を算出する。そして、DCリンクコンデンサの端子間電圧であるリンク電圧を算出した下限値よりも高い値に制御すべく、入力側スイッチを操作することとした。この場合、第2変換器から給電対象への出力電圧が、給電対象にとって適正な印加電圧に制御されるため、第2変換器から給電対象へと出力電流を安定的に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】充電装置の構成図。
図2】リンク電圧V2rを制御する手順を説明するフローチャート。
図3】第2実施形態に係る、リンク電圧V2rを制御する手順を説明するフローチャート。
図4】第2実施形態の変形例に係る容量Cの推定手順を説明するフローチャート。
図5】第3実施形態に係る充電装置の構成図。
図6】第3実施形態に係るリンク電圧V2rを制御する手順を説明するフローチャート。
図7】第4実施形態に係る制御装置のうち、ピーク電流モード制御に関する機能を説明する機能ブロック図。
図8】比較例としてのリンギングを説明する図。
図9】第4実施形態の処理が実施される場合の補償後リアクトル電流AIqを説明する図。
図10】第4実施形態に係る、リンク電圧V2rを制御する手順を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
本実施形態では、電力変換装置の一実施例として充電装置を例に説明する。充電装置は、交流電源から供給される交流電力により、蓄電池を充電するのに用いられる。
【0012】
図1は、本実施形態に係る充電装置100の構成図である。充電装置100の第1入力端子IN1には交流電源40の第1端子が接続され、充電装置100の第2入力端子IN2には交流電源40の第2端子が接続されている。また、充電装置100の第1出力端子OUT1には給電対象としての蓄電池50のプラス端子が接続され、第2出力端子OUT2には蓄電池50のマイナス端子が接続されている。なお、本実施形態の蓄電池50は、例えば、複数のバッテリセルの直列接続体を備える組電池である。
【0013】
本実施形態において、交流電源40から供給される入力電圧が正の極性となるのは、交流電源40の第1端子の電圧が第2端子の電圧よりも高い値となる場合である。また、入力電圧が負の極性となるのは、交流電源40の第2端子の電圧が第1端子の電圧よりも高い値となる場合である。
【0014】
充電装置100は、AC・DCコンバータ10と、DCリンクコンデンサ15と、DC・DCコンバータ20とを備えている。AC・DCコンバータ10は、交流電源40から供給される交流電圧を直流電圧に変換してDCリンクコンデンサ15に供給する。DC・DCコンバータ20は、DCリンクコンデンサ15から供給されるリンク電圧を降圧して蓄電池50に供給する。本実施形態では、AC・DCコンバータ10が第1変換器に相当し、DC・DCコンバータ20が第2変換器に相当する。
【0015】
AC・DCコンバータ10は、ダイオードブリッジ回路11と、昇圧チョッパ回路13とを備えている。本実施形態では、充電装置100において、高圧側の電圧が印加される高圧側配線のうち、AC・DCコンバータ10を構成する配線を第1配線LP1と称す。また、低圧側の電圧が印加される低圧側配線のうち、AC・DCコンバータ10を構成する配線を第2配線LP2と称す。
【0016】
ダイオードブリッジ回路11は、第1ダイオードD1、第2ダイオードD2、第3ダイオードD3及び第4ダイオードD4を備えている。第1ダイオードD1のアノードが、第2ダイオードD2のカソードに接続されている。第3ダイオードD3のアノードが第4ダイオードD4のカソードに接続されている。そして、第1ダイオードD1及び第3ダイオードD3の各カソードが第1配線LP1に接続され、第2ダイオードD2及び第4ダイオードD4の各アノードが第2配線LP2に接続されている。
【0017】
第1ダイオードD1と第2ダイオードD2との接続点である第1接続点K1は、第1入力端子IN1に接続されている。第3ダイオードD3と第4ダイオードD4との接続点である第2接続点K2は、第2入力端子IN2に接続されている。
【0018】
昇圧チョッパ回路13は、第1リアクトル12と、第1駆動スイッチQ1と、第5ダイオードD5とを備えている。第1配線LP1において、第1リアクトル12の第1端は、ダイオードブリッジ回路11に接続され、第2端は第5ダイオードD5のアノードに接続されている。第5ダイオードD5のカソードは、第1配線LP1においてDCリンクコンデンサ15側に接続されている。本実施形態では、第1駆動スイッチQ1は、nチャネル型のMOSFETである。第1駆動スイッチQ1のドレインは、第1配線LP1において、第1リアクトル12と第5ダイオードD5との間に接続されており、ソースは、第2配線LP2に接続されている。なお、第1駆動スイッチQ1は、ボディダイオードDb1を備えている。本実施形態では、第1駆動スイッチQ1が入力側スイッチに相当する。
【0019】
高圧側配線及び低圧側配線のうち、AC・DCコンバータ10とDC・DCコンバータ20とを繋ぐ第3配線LP3及び第4配線LP4の間は、DCリンクコンデンサ15により接続されている。
【0020】
DC・DCコンバータ20は、1次側回路21と、2次側回路23と、1次側回路21及び2次側回路23を接続するトランス22とを備えている。本実施形態では、充電装置100において、高圧側配線のうち1次側回路21を構成する配線を第5配線LP5と称し、低圧側配線のうち1次側回路21を構成する配線を第6配線LP6と称す。高圧側配線のうち2次側回路23を構成する配線を第7配線LP7と称し、低圧側配線のうち2次側回路23を構成する配線を第8配線LP8と称す。
【0021】
1次側回路21は、第2駆動スイッチQ2、第3駆動スイッチQ3、第4駆動スイッチQ4及び第5駆動スイッチQ5で構成されたフルブリッジ回路である。本実施形態では、第2〜第5駆動スイッチQ1〜Q5はnチャネル型のMOSFETである。第2駆動スイッチQ2のソースと第3駆動スイッチQ3のドレインとが接続されることで第1直列接続体が構成されている。第4駆動スイッチQ4のソースと第5駆動スイッチQ5のドレインとが接続されることで第2直列接続体が構成されている。第2駆動スイッチQ2と第4駆動スイッチQ4の各ドレインが第3配線LP3に接続され、第3駆動スイッチQ3と第5駆動スイッチQ5との各ソースが第4配線LP4に接続されている。本実施形態では、第2〜第5駆動スイッチQ2〜Q5が出力側スイッチに相当する。
【0022】
第2駆動スイッチQ2のソースと第3駆動スイッチQ3のドレインとの接続点である第3接続点K3は、トランス22の1次側巻線L1の第1端に接続され、第4駆動スイッチQ4のソースと第5駆動スイッチQ5のドレインとの接続点である第4接続点K4は、1次側巻線L1の第2端に接続されている。なお、第2〜第5駆動スイッチQ2〜Q5は、それぞれ、ボディダイオードDb2〜Db5を備えている。
【0023】
2次側回路23は、第6ダイオードD6、第7ダイオードD7、第8ダイオードD8及び第9ダイオードD9により構成されたダイオードブリッジ回路24を備えている。ダイオードブリッジ回路24では、第6ダイオードD6のアノードが第7ダイオードD7のカソードに接続されている。第8ダイオードD8のアノードが第9ダイオードD9のカソードに接続されている。第6ダイオードD6及び第8ダイオードD8の各カソードが第7配線LP7に接続され、第7ダイオードD7及び第9ダイオードD9の各アノードが第8配線LP8に接続されている。
【0024】
第6ダイオードD6のアノードと第7ダイオードD7のカソードとの接続点である第5接続点K5が、トランス22の2次側巻線L2の第1端に接続され、第8ダイオードD8のアノードと第9ダイオードD9のカソードとの接続点である第6接続点K6が2次側巻線L2の第2端に接続されている。
【0025】
第7配線LP7と第8配線LP8とは、第2平滑コンデンサ26により接続されている。第7配線LP7のうち、ダイオードブリッジ回路24の接続点と、第2平滑コンデンサ26の接続点との間には、第2リアクトル25が直列接続されている。そして、第7配線LP7は第1出力端子OUT1に接続され、第8配線LP8は第2出力端子OUT2に接続されている。
【0026】
充電装置100は、第1電圧検出部31と、第2電圧検出部32と、第1電流センサ33と、第2電流センサ34と、第3電圧検出部35とを備えている。
【0027】
第1電圧検出部31の第1端は、第1配線LP1のうち、ダイオードブリッジ回路11と第1リアクトル12との間に接続され、第2端は、第2配線LP2のうち、ダイオードブリッジ回路11と第1駆動スイッチQ1のソースの接続点との間に接続されている。これにより、第1電圧検出部31は、ダイオードブリッジ回路11により全波整流された直流電圧を第1電圧V1rとして検出する。
【0028】
第2電圧検出部32は、DCリンクコンデンサ15に並列接続されている。具体的には、第2電圧検出部32は、第3配線LP3と第4配線LP4との間において、DCリンクコンデンサ15よりもDC・DCコンバータ20側に接続されている。これにより、第2電圧検出部32は、DCリンクコンデンサ15の端子間電圧を、リンク電圧V2rとして検出する。
【0029】
第1電流センサ33は、第2配線LP2のうち、ダイオードブリッジ回路11と昇圧チョッパ回路13との間に接続されている。これにより、第1電流センサ33は、第1リアクトル12、又は第1駆動スイッチQ1に流れる電流を第1電流I1rとして検出する。
【0030】
第2電流センサ34は、DC・DCコンバータ20の第6配線LP6のうち、1次側回路21よりもDCリンクコンデンサ15側に接続されている。これにより、第2電流センサ34は、1次側回路21に流れる電流を第2電流I2rとして検出する。具体的には、第2電流センサ34は、1次側巻線L1に流れる電流を第2電流I2rとして検出する。そのため、第2電流I2rにトランス22の巻数比Nrを掛けた値が、2次側回路23の第2リアクトル25に流れる電流となる。本実施形態では、トランス22の巻数比Nrは、2次側巻線L2の巻数N2に対する1次側巻線L1の巻数N1の比(=N1/N2)として算出される。
【0031】
第7配線LP7と第8配線LP8との間には、第3電圧検出部35が第2平滑コンデンサに並列接続されている。具体的には、第3電圧検出部35は、第2平滑コンデンサ26よりも第1,第2出力端子OUT1,OUT2側で、第2平滑コンデンサ26に並列接続されている。これにより、第3電圧検出部35は、第2平滑コンデンサ26の端子間電圧を出力電圧V3rとして検出する。
【0032】
充電装置100は、制御装置30を備えている。制御装置30は、周知のマイクロコンピュータにより構成されており、第1〜第5駆動スイッチQ1〜Q5をオン・オフ操作するための操作信号を生成する。本実施形態では、制御装置30は、リンク電圧V2rを第2指令電圧V2*に制御すべく、第1駆動スイッチQ1を操作するための第1操作信号GS1を生成する。詳しくは、制御装置30は、リンク電圧V2rを第2指令電圧V2*にフィードバック制御するための操作量として第1指令電流I1*を算出する。そして、制御装置30は、算出した第1指令電流I1*に第1電流I1rをフィードバック制御するための第1操作信号GS1を生成する。
【0033】
また、制御装置30は、出力電圧V3rを第3指令電圧V3*に制御すべく、第2〜第5駆動スイッチQ2〜Q5を操作するための第2〜第5操作信号GS2〜GS5を生成する。詳しくは、制御装置30は、出力電圧V3rを第3指令電圧V3*にフィードバック制御するための操作量として第2指令電流I2*を算出する。そして、制御装置30は、算出した第2指令電流I2*に第2電流I2rをフィードバック制御するための第2〜第5操作信号GS2〜GS5を生成する。
【0034】
なお、制御装置30が提供する機能は、例えば、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ハードウェア、又はそれらの組み合わせによって提供することができる。
【0035】
次に、AC・DCコンバータ10の動作を説明する。AC・DCコンバータ10は、制御装置30から出力される第1操作信号GS1により、第1リアクトル12に磁気エネルギが蓄えられる第1状態と、第1リアクトル12から電流が流れ出る第2状態とに繰り返し制御される。
【0036】
第1状態では、第1操作信号GS1がハイ状態となる期間であり、第1駆動スイッチQ1がオン操作される。そのため、ダイオードブリッジ回路11、第1リアクトル12、第1駆動スイッチQ1を含む閉回路が形成され、この閉回路に電流が流れることで、第1リアクトル12には磁気エネルギが充電される。
【0037】
第1状態に続く第2状態では、制御装置30から出力される第1操作信号GS1がロー状態となる期間であり、第1駆動スイッチQ1がオフ操作される。そのため、第1リアクトル12から第5ダイオードD5を通じて電流が流れ、DCリンクコンデンサ15が充電される。
【0038】
次に、DC・DCコンバータ20の動作を説明する。DC・DCコンバータ20は、制御装置30から出力される第2〜第5操作信号GS2〜GS5により、トランス22の1次側巻線L1に正極性の電流が流れる第3状態と、1次側巻線L1に負極性の電流が流れる第4状態とに繰り返し制御される。第3状態及び第4状態において、DC・DCコンバータ20には、リンク電圧V2rが入力電圧として供給される。本実施形態では、第3接続点K3から第4接続点K4の向きに1次側巻線L1に流れる電流を正極性の電流とする。また、第4接続点K4から第3接続点K3の向きに1次側巻線L1に流れる電流を負極性の電流とする。
【0039】
第3状態では、第2,第5操作信号GS2,GS5がハイ状態となり、第3,第4操作信号GS3,GS4がロー状態となることで、1次側巻線L1には正極性の電流が流れる。そのため、2次側巻線L2には、第6接続点K6から第5接続点K5の向きに電流が流れる。2次側巻線L2から流れ出た電流は、ダイオードブリッジ回路24により整流された後、第2リアクトル25を通じて第1出力端子OUT1に流れる。
【0040】
第4状態では、第3,第4操作信号GS3,GS4がハイ状態となり、第2,第5操作信号GS2,GS5がロー状態となることで、1次側巻線L1には、負極性の電流が流れる。そのため、2次側巻線L2には、第5接続点K5から第6接続点K6の向きに電流が流れる。2次側巻線L2から流れ出た電流は、ダイオードブリッジ回路24により整流された後、第2リアクトル25を通じて、第1出力端子OUT1に流れる。
【0041】
充電装置100において、第2〜第5駆動スイッチQ2〜Q5のスイッチング損失を低減するためには、DC・DCコンバータ20に供給されるリンク電圧V2rを低い値に制御することが望ましい。一方で、リンク電圧V2rが低すぎると、以下の問題が生じるおそれがある。具体的には、DC・DCコンバータ20の2次側回路23に設けられた第2リアクトル25の両端の電圧差が小さくなり、第2リアクトル25から蓄電池50に向けて流れる電流値が低い値となる。また、蓄電池50のプラス端子の電圧が2次側巻線L2から第2リアクトル25に供給される電圧よりも高くなることで、蓄電池50に電流を供給できなくなる。これら2つの問題が生じる場合、蓄電池50に十分な出力電流を供給できず、蓄電池50を適正に充電できなくなるおそれがある。
【0042】
そのため、本実施形態では、スイッチング損失を低減し、蓄電池50に適正に出力電流を供給すべく、リンク電圧V2rの適正な電圧範囲を設定することとした。具体的には、制御装置30は、DC・DCコンバータ20の出力電圧V3r、巻数比Nr、及びオン操作期間の時比率により、リンク電圧V2rの下限閾値を算出する。そして、リンク電圧が下限閾値よりも大きくなるように、AC・DCコンバータ10の第1駆動スイッチQ1を操作することとした。
【0043】
次に、図2を用いて、制御装置30がリンク電圧V2rを制御する手順を説明する。図2に示す処理は、制御装置30により所定周期で繰り返し実施される。
【0044】
ステップS11では、DC・DCコンバータ20の出力電圧V3rを取得する。
【0045】
ステップS12では、DC・DCコンバータ20のオン操作期間Tonの最大時比率Drを取得する。本実施形態において、時比率は、各駆動スイッチQ2〜Q5の1スイッチング周期Tsw1に対するオン操作期間Tonの比率(=Ton/Tsw1)である。この時比率の最大値である最大時比率Drは、1スイッチング周期Tsw1に対するオン操作期間Tonの取り得る値の最大値の比率である。
【0046】
ステップS13では、ステップS11で取得した出力電圧V3r、ステップS12で取得した最大時比率Dr、及びトランス22の巻数比Nrに基づいて、第1下限閾値THV1を算出する。本実施形態では、第1下限閾値THV1を下記式(1)に基づいて算出する。本実施形態において、ステップS13が下限値算出部に相当する。
【0047】
THV1 = V3r/Dr×Nr … (1)
ステップS14では、ステップS13で算出した第1下限閾値THV1よりも高い値となるように、AC・DCコンバータ10の第2指令電圧V2*を設定する。例えば、第1下限閾値THV1に、マージン電圧ΔVを考慮した値を加えた値を、リンク電圧V2rの第2指令電圧V2*として設定する。
【0048】
ステップS15では、リンク電圧V2rを第2指令電圧V2*に制御すべく、AC・DCコンバータ10の第1駆動スイッチQ1を操作する。具体的には、ステップS14で設定した第2指令電圧V2*に応じて、1スイッチング周期に対するオン操作期間を定める第1操作信号GS1を設定する。そして、設定した第1操作信号GS1により、第1駆動スイッチQ1を操作する。本実施形態では、ステップS15が制御部に相当する。
【0049】
ステップS16では、出力電圧V3rを第3指令電圧V3*に制御すべく、DC・DCコンバータ20の第2〜第5駆動スイッチQ2〜Q5を操作する。具体的には、第3指令電圧V3*に応じて、第2〜第5操作信号GS2〜GS5のオン操作期間を設定する。そして、設定した第2〜第5操作信号GS2〜GS5により、第2〜第5駆動スイッチQ2〜Q5を操作する。
【0050】
ステップS16の処理を終了すると、図2の処理を一旦終了する。
【0051】
以上説明した本実施形態では以下の効果を奏する。
【0052】
・制御装置30は、DC・DCコンバータ20における、出力電圧V3r、トランス22の巻数比Nr及びオン操作期間Tonの最大時比率Drに基づいて、第1下限閾値THV1を算出する。そして、リンク電圧V2rを第1下限閾値THV1よりも高い値に制御すべく、AC・DCコンバータ10の第1駆動スイッチQ1を操作する。そのため、DC・DCコンバータ20において、2次側巻線L2から2次側回路23に印加される電圧が低い値となることを防止でき、蓄電池50に出力電流を安定的に供給することができる。
【0053】
<第2実施形態>
第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明する。なお、第1実施形態と同一の符号を付した構成は同一の構成を示し、その説明は繰り返さない。
【0054】
DCリンクコンデンサ15にリップル電圧が生じていると、第1下限閾値THV1に応じて第2指令電圧V2*を設定した場合でも、リップル電圧により実際のリンク電圧V2rが第2指令電圧V2*よりも小さくなる場合がある。この場合、リンク電圧V2rが第1下限閾値THV1よりも小さくなることで、蓄電池50に出力電流が流れなくなるおそれがある。そのため、第2実施形態では、第2指令電圧V2*を、リップル電圧を考慮した値に設定する。
【0055】
図3は、第2実施形態において、制御装置30がリンク電圧V2rを制御する手順を説明するフローチャートである。図3に示す処理は、制御装置30により所定周期で繰り返し実施される。
【0056】
ステップS13において第1下限閾値THV1を算出すると、ステップS21に進む。ステップS21では、DCリンクコンデンサ15のリップル電圧VRiを推定する。本実施形態では、AC・DCコンバータ10からDCリンクコンデンサ15への入力電力の予測値と、DCリンクコンデンサ15の静電容量Cとを用いて、リップル電圧VRiを推定する。具体的には、下記式(2)によりリップル電圧VRiを推定する。
【0057】
VRi = EPin*/(2πf×V2ave×C) … (2)
ここで、EPin*は、AC・DCコンバータ10からDC・DCコンバータ20への入力電力の予測値を示し、下記式(3)により算出される。
【0058】
EPin* =I1*×V1* … (3)
また、fは、第1駆動スイッチQ1のスイッチング周波数を示す。V2aveは、第1駆動スイッチQ1の1スイッチング周期Tsw2(=1/f)におけるリンク電圧V2rの平均値を示す。本実施形態では、DCリンクコンデンサ15の静電容量Cを固定値としている。なお、第1駆動スイッチQ1のスイッチング周期Tsw2と、第2〜第5駆動スイッチQ2〜Q5のスイッチング周期Tsw1とは、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。また、ステップS21がリップル推定部に相当する。
【0059】
ステップS22では、ステップS21で推定したリップル電圧VRiにより、ステップS13で算出した第1下限閾値THV1を補正した値を第2下限閾値THV2として算出する。具体的には、第1下限閾値THV1にリップル電圧VRiを加えた値を、第2下限閾値THV2として算出する。
【0060】
ステップS23では、第2指令電圧V2*を、ステップS22で設定した第2下限閾値THV2よりも高い値に設定する。そのため、ステップS23により設定される第2指令電圧V2*は、第1下限閾値THV1にリップル電圧VRiを加えた値よりも高い値に設定される。
【0061】
ステップS15において、リンク電圧V2rをステップS14で設定した第2指令電圧V2*に制御すべく、第1駆動スイッチQ1を操作する。
【0062】
以上説明した本実施形態では、以下の効果を奏する。
【0063】
・制御装置30は、AC・DCコンバータ10からDCリンクコンデンサ15への入力電力の予測値EPinと、DCリンクコンデンサ15の静電容量Cとに基づいて、DCリンクコンデンサ15に生じるリップル電圧VRiを推定する。そして、第2指令電圧V2*を、推定したリップル電圧VRiに第1下限閾値THV1を加えた値よりも高い値とする。この構成によれば、DCリンクコンデンサ15にリップル電圧が生じる場合であっても、DC・DCコンバータ20から蓄電池50へ出力電流が流れにくくなることを防止することができる。
【0064】
・DCリンクコンデンサ15の入力電力の予測値EPin*を用いることで、第1指令電流I1*及び第1指令電圧V1*が変更されるタイミングに合わせて、リンク電圧V2rを変更することができる。仮に、入力電力の実測値を用いる場合、リンク電圧V2rが変更されるのは、AC・DCコンバータ10からDCリンクコンデンサ15に供給される入力電力が既に変更された後となる。この場合、入力電力の変更に伴いリンク電圧V2rが第1下限閾値THV1を下回った後に、リンク電圧V2rが変更されるおそれがある。これに対して、入力電力の予測値EPin*を用いる場合、第1指令電流I1*及び第1指令電圧V1*の変更に合わせて、リンク電圧V2rが変更される。このため、DCリンクコンデンサ15からのリンク電圧V2rが第1下限閾値THV1を下回る前に、第2下限閾値THV2を変更することが可能となる。
【0065】
<第2実施形態の変形例>
DCリンクコンデンサ15のリップル電圧VRiは、DCリンクコンデンサ15が経年劣化することで変化する。そのため、第2実施形態の変形例では、リップル電圧VRiの推定に用いるDCリンクコンデンサ15の静電容量Cを所定周期で更新する。そして、ステップS21では更新した静電容量Cを用いてリップル電圧VRiを推定する。
【0066】
図4は、DCリンクコンデンサ15の静電容量Cを推定する手順を説明するフローチャートである。図4に示す処理は、制御装置30により所定周期で繰り返し実施される。
【0067】
ステップS31では、DCリンクコンデンサ15の静電容量Cの更新周期が経過しているか否かを判定する。更新周期は、リップル電圧VRiの推定に用いるDCリンクコンデンサ15の静電容量Cを更新するタイミングを定め、例えば、一月以上の期間とすることができる。更新周期が経過していなければ、図4の処理を一旦終了する。
【0068】
ステップS32では、DCリンクコンデンサ15の入力電力の実測値を、実測電力Pinrとして取得する。本実施形態では、第1電流センサ33により検出された第1電流I1rと、第1電圧検出部31により検出された第1電圧V1rとに基づいて、下記式(4)により実測電力を算出する。
【0069】
Pinr = I1r×V1r … (4)
ここで、Pinrは実測電流である。
【0070】
ステップS33では、ステップS32で算出した実測電力PinrからDCリンクコンデンサ15の静電容量Cを推定する。本実施形態では、下記式(5)により、静電容量Cの推定値を算出する。ステップS33が容量推定部に相当する。
【0071】
C=Pinr/(2πf×V2ave×VRir) … (5)
ここで、VRirは、リップル電圧VRirの実測値であり、本実施形態では、第2電圧検出部32により検出されるリンク電圧V2rの最大値又は最小値から、リンク電圧V2rの平均値を引いた値の絶対値である。
【0072】
ステップS33の処理が終了すると、図4の処理を一旦終了する。そのため、制御装置30は、図3のステップS21において、図4の処理により更新された静電容量Cを用いてリップル電圧VRiを推定する。
【0073】
以上説明した第2実施形態の変形例では、以下の効果を奏する。
【0074】
・制御装置30は、DCリンクコンデンサ15に生じるリップル電圧VRiの実測値に基づいて、DCリンクコンデンサ15の静電容量Cを所定周期で更新する。そして、更新した静電容量Cを用いて、リップル電圧VRiを推定する。この場合、DCリンクコンデンサ15の経年劣化に伴うリップル電圧VRiの変化を精度良く推定することができる。その結果、DCリンクコンデンサ15の経年劣化に伴い、DC・DCコンバータ20から蓄電池50への出力電流が流れにくくなるのを抑制することができる。
【0075】
<第3実施形態>
第3実施形態では、第2実施形態と異なる構成を主に説明する。なお、第2実施形態と同一の符号を付した構成は同一の構成を示し、その説明は繰り返さない。
【0076】
DCリンクコンデンサ15にリップル電流が流れる際、DCリンクコンデンサ15の温度が高い場合は、DCリンクコンデンサ15の温度が低い場合と比べてDCリンクコンデンサ15の劣化が促進されるおそれがある。そのため、第3実施形態では、温度条件を加味して、リンク電圧V2rを設定している。
【0077】
図5は、第3実施形態に係る充電装置100の構成図である。本実施形態では、充電装置100は、DCリンクコンデンサ15の温度を検出する温度センサ36を備えている。温度センサ36は、DCリンクコンデンサ15の近傍に配置されており、DCリンクコンデンサ15の周囲温度を、コンデンサ温度TCとして検出する。温度センサ36により検出されたコンデンサ温度TCは制御装置30に入力される。
【0078】
図6は、第3実施形態において、リンク電圧V2rを制御する手順を説明するフローチャートである。図6に示す処理は、制御装置30により所定周期で繰り返し実施される。
【0079】
ステップS13において第1下限閾値THV1を設定すると、ステップS21に進み、リップル電圧VRiを推定する。ステップS31では、温度センサ36により検出されているコンデンサ温度TCを取得する。ステップS31が温度取得部に相当する。
【0080】
ステップS32では、ステップS31で取得したコンデンサ温度TCが温度閾値THTよりも高いか否かを判定する。例えば、温度閾値THTは、リップル電流が流れる場合に、DCリンクコンデンサ15の劣化が促進されると想定される温度の下限値である。
【0081】
コンデンサ温度TCが温度閾値THTよりも高ければ、ステップS33に進む。ステップS33では、ステップS21で推定したリップル電圧VRi、及びステップS13で算出した第1下限閾値THV1に応じて、第3下限閾値THV3を算出する。第3下限閾値THV3は、第2下限閾値THV2よりも高い値である。上記式(3)より、リンク電圧V2rの平均値V2aveが高い値となるほど、リップル電圧VRiを小さな値とすることができる。そのため、本実施形態では、リップル電圧VRiを低減すべく、リンク電圧V2rの下限値を第2下限閾値THV2よりも高い値である第3下限閾値THV3としている。
【0082】
ステップS34では、第2指令電圧V2*を第3下限閾値THV3よりも高い値に設定する。
【0083】
一方、ステップS32において、コンデンサ温度TCが温度閾値THT以下であれば、ステップS22に進む。この場合、DCリンクコンデンサ15にリップル電流が流れても、DCリンクコンデンサ15の劣化は促進されにくい。そのため、スイッチング損失の低減を優先すべく、ステップS21で推定したリップル電圧VRi、及びステップS13で算出した第1下限閾値THV1に応じて、第2下限閾値THV2を算出する。すなわち、リンク電圧V2rの下限値を、第3下限閾値THV3よりも小さな値である第2下限閾値THV2とする。
【0084】
ステップS23では、第2指令電圧V2*を第2下限閾値THV2よりも高い値に設定する。本実施形態では、第2指令電圧V2*を第2下限閾値THV2よりも大きく、かつ第3下限閾値THV3よりも小さい値に設定する。
【0085】
ステップS15では、リンク電圧V2rを第2指令電圧V2*に制御すべく、AC・DCコンバータ10の第1駆動スイッチQ1を操作する。
【0086】
以上説明した本実施形態では、以下の効果を奏する。
【0087】
・制御装置30は、DCリンクコンデンサ15の温度を示すコンデンサ温度TCが温度閾値THTよりも高いと判定した場合に、第2指令電圧V2*を第3下限閾値THV3よりも高い値とする。一方、コンデンサ温度TCが温度閾値THT以下と判定した場合に、第2指令電圧V2*を、第2下限閾値THV2よりも高い値であって、かつ第3下限閾値THV3よりも低い値とする。この場合、DCリンクコンデンサ15を劣化させにくくすることができる。また、DCリンクコンデンサ15の劣化が促進され易くなる温度に限って、リンク電圧V2rを第3下限閾値THV3よりも高い値とすることで、一律に、第2指令電圧V2*を第3下限閾値THV3よりも高い値にする場合と比べて、充電装置100のスイッチング損失の低減効果を高めることができる。
【0088】
<第4実施形態>
第4実施形態では、第1実施形態と異なる構成を主に説明する。なお、第1実施形態と同一の符号を付した構成は同一の構成を示し、その説明は繰り返さない。
【0089】
本実施形態では、制御装置30は、DC・DCコンバータ20の第2〜第5駆動スイッチQ2〜Q5に流れる電流を指令電流IL*に制御すべく、周知のピーク電流モード制御を実施する。
【0090】
まずは、図7を用いて、制御装置30の機能のうち、ピーク電流モード制御に用いられる指令電流IL*の算出について説明する。制御装置30は、定電圧制御部301と、上限電流設定部302と、最小値選択部303と、第1電流制御部304と、第2電流制御部305と、切替制御部306とを備えている。
【0091】
定電圧制御部301は、出力電圧V3rを第3指令電圧V3*にフィードバック制御すべく定電圧制御を実施する。本実施形態では、定電圧制御部301は、出力電圧V3rを第3指令電圧V3*にフィードバック制御するための操作量として、DC・DCコンバータ20の出力電流の目標値である目標電流値Iref1を算出する。
【0092】
上限電流設定部302は、上限電流値Iref2を設定する。上限電流値Iref2はDC・DCコンバータ20の定格電流に応じて設定されている。例えば、トランス22の巻数比Nr、第2リアクトル25に流れる電流などを考慮し、上限電流値Iref2が定められている。
【0093】
最小値選択部303は、定電圧制御部301から出力される目標電流値Iref1と、上限電流設定部302から出力される上限電流値Iref2とを比較し、いずれか小さい方の値を指令電流IL*として出力する。
【0094】
第1電流制御部304は、DA変換器351と、コンパレータ352と、加算器353と、RSフリップフロップ357とを備えている。指令電流IL*は、DA変換器351に入力される。DA変換器351は、入力された指令電流IL*をデジタル値からアナログ値に変換する。アナログ値に変換された指令電流IL*は、コンパレータ352の反転入力端子に入力される。加算器353は、第2電流センサ34により検出された第2電流I2rとスロープ補償信号Slopeとを加算し、補償後リアクトル電流AIqとして出力する。加算器353からの出力は、コンパレータ352の非反転入力端子に入力される。なお、スロープ補償信号Slopeは、第1リアクトル12に流れる電流の変動に伴う発振を抑制するものである。
【0095】
コンパレータ352は、指令電流IL*と補償後リアクトル電流AIqとを比較し、補償後リアクトル電流AIqが指令電流IL*より小さい期間において、ロー状態の信号をRSフリップフロップ357のR端子に入力する。また、コンパレータ352は、補償後リアクトル電流AIqが指令電流IL*より大きい期間において、ハイ状態の信号をRSフリップフロップ357のR端子に入力する。更に、RSフリップフロップ357のS端子には、クロック信号が入力される。
【0096】
第2電流制御部305は、第1電流制御部304と同様、DA変換器351と、コンパレータ352と、加算器353と、RSフリップフロップ357とを備えている。
【0097】
切替制御部306は、第2,第5駆動スイッチQ2,Q5への第2,第5操作信号GS2,GS5の出力と、第3,第4駆動スイッチQ3,Q4への第3,第4操作信号GS3,GS4の出力とを切り替える。切替制御部306は、周期判定部381と、第1AND回路382と、第2AND回路383とを備えている。
【0098】
周期判定部381は、第2,第5駆動スイッチQ2,Q5のオン操作期間であると判定した場合に、第2,第5操作信号GS2,GS5を第2,第5駆動スイッチQ2,Q5のゲートに出力すべくハイ状態の第1選択信号AQ1を出力する。周期判定部381は、第3,第4駆動スイッチQ3,Q4のオン操作期間であると判定した場合に、第3,第4操作信号GS3,GS4を第3,第4駆動スイッチQ3,Q4のゲートに出力すべくハイ状態の第2選択信号AQ2を出力する。
【0099】
第1AND回路382には、第1電流制御部304のRSフリップフロップ357の出力信号と、周期判定部381からの第1選択信号AQ1とが入力される。第1AND回路382の出力側は、第1駆動スイッチQ1のゲートに接続されている。第2AND回路383には、第2電流制御部305のRSフリップフロップ357の出力信号と、周期判定部381からの第2選択信号AQ2とが入力される。第2AND回路383の出力側は、第2駆動スイッチQ2のゲートに接続されている。
【0100】
ハイ状態の第1選択信号AQ1とハイ状態のRSフリップフロップ357の出力信号とが入力されることで、第1AND回路382は、ハイ状態の第2操作信号GS2と、ハイ状態の第5操作信号GS5と出力する。これにより、第2,第5駆動スイッチQ2,Q5がオン操作される。また、ハイ状態の第2選択信号AQ2とハイ状態のRSフリップフロップ357の出力信号とが入力されることで、第2AND回路383は、ハイ状態の第3操作信号GS3と、ハイ状態の第4操作信号GS4とを出力する。これにより、第3,第4駆動スイッチQ3,Q4がオン操作される。
【0101】
第2〜第5駆動スイッチQ2〜Q5がターンオンしてからの所定期間において、第2〜第5駆動スイッチQ2〜Q5に流れる電流値が変動するリンギングが生じる場合がある。図8は、比較例でのリンギングを説明する図である。第2〜第5駆動スイッチQ2〜Q5におけるオン操作期間Tonの時比率が低い場合、第2電流I2rをスロープ補償した補償後リアクトル電流AIqが指令電流IL*まで上昇した時点においても、リンギングが収束していない場合がある。オン操作期間Tonの開始から所定期間において、補償後リアクトル電流AIqを検出しない期間であるマスク期間Tmが設けられており、図8ではマスク期間Tmの経過後においてもリンギングが収束していない。このような場合、短い期間において補償後リアクトル電流AIqが指令電流IL*を上下することとなり、第2〜第5駆動スイッチQ2〜Q5を安定して操作させることができなくなるおそれがある。
【0102】
ここで、DC・DCコンバータ20の入力電圧であるリンク電圧V2rを高くするほど、第2〜第5駆動スイッチQ2〜Q5のオン操作期間Tonが短くなる。また、リンク電圧V2rを高くするほど、第2電流I2rの増加速度も大きくなる。そのため、リンク電圧V2rが高い値となることで、オン操作期間Tonが短くなり、図8に示したように、補償後リアクトル電流AIqが指令電流IL*に達するまでにリンギングが収束していない可能性が高まる。
【0103】
そこで、本実施形態では、補償後リアクトル電流AIqが指令電流IL*に上昇するまでにリンギングが収束するように、リンク電圧V2rの上限値を定めている。図9は、本実施形態に係る補償後リアクトル電流AIqの波形を示している。
【0104】
リンク電圧V2rの上限値が制限されることで、図8の比較例に示す場合と比べて、補償後リアクトル電流AIqが指令電流IL*まで上昇するのに要する時間が長くなり、オン操作期間Tonが長くなる。また、補償後リアクトル電流AIqの増加速度を示す傾きも緩やかとなる。その結果、補償後リアクトル電流AIqが指令電流IL*に上昇するまでにリンギングが収束し易くなる。
【0105】
図10は、第4実施形態において、制御装置30がリンク電圧V2rを制御する手順を説明するフローチャートである。図10に示す処理は、制御装置30により、所定周期で繰り返し実施される。
【0106】
ステップS13において、第1下限閾値THV1を算出すると、ステップS41に進む。ステップS41では、リンク電圧V2rの上限値を定める上限閾値THV4を算出する。本実施形態では、下記式(6)により上限閾値THV4を算出する。ステップS41が上限値算出部に相当する。
【0107】
THV4 = V3r/RL×Nr … (6)
ここで、RLは、第2〜第5駆動スイッチQ2〜Q5における1スイッチング周期Tsw1に対する、オン操作期間Tonの開始タイミングからリンギングが収束するまでの期間の比率(=Te/Tsw1)を示す。ここで、Teは、オン操作期間Tonの開始タイミングからリンギングが収束するまでの期間を示すリンギング発生期間である。例えば、比率RLは、第2〜第5駆動スイッチQ2〜Q5のオン操作期間Tonのうち、リンギング発生期間をそれぞれ実測し、実測値のうち最長の値を用いればよい。
【0108】
ステップS42では、DC・DCコンバータ20の第2指令電圧V2*を、ステップS13で設定した第1下限閾値THV1とステップS41で設定した上限閾値THV4との間の値となるように設定する。
【0109】
ステップS15では、リンク電圧V2rを第2指令電圧V2*に制御すべく、AC・DCコンバータ10の第1駆動スイッチQ1を操作する。
【0110】
以上説明した本実施形態では以下の効果を奏する。
【0111】
・制御装置30は、DC・DCコンバータ20の出力電圧V3rと、巻数比Nrと、駆動スイッチQ2〜Q5の1スイッチング周期Tsw1に対するリンギングの発生期間の比率RLとに基づいてリンク電圧V2rの上限閾値THV4を算出する。制御装置30は、リンク電圧V2rを第1下限閾値THV1よりも高い値であり、かつ上限閾値THV4よりも低い値に制御すべく、AC・DCコンバータ10の第1駆動スイッチQ1を操作する。この場合、第2〜第5駆動スイッチQ2〜Q5に流れる補償後リアクトル電流AIqが指令電流IL*に達するまでにリンギングを収束させ易くすることができる。その結果、リンギングに伴う出力電圧V3rの変動を抑制し、蓄電池50に出力電流を安定的に供給することができる。
【0112】
<その他の実施形態>
・ステップS13における第1下限閾値THV1の算出において、オン操作期間Tonの時比率として最大時比率Dr以外の値を用いてもよい。この場合において、例えば、DC・DCコンバータ20におけるオン操作期間Tonの時比率の平均値を用いて、第1下限閾値THV1を算出してもよい。
【0113】
・AC・DCコンバータ10の昇圧チョッパ回路13は、駆動スイッチを2個以上有する構成としてもよい。
【0114】
・第2下限閾値THV2の設定において、リップル電圧の実測値を用いてもよい。
【符号の説明】
【0115】
10…AC・DCコンバータ、15…DCリンクコンデンサ、20…DC・DCコンバータ、22…トランス、30…制御装置、35…第3電圧検出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10