(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筒状のゴム弾性体を備えており、車両ボデーに取り付けられるブラケットが該ゴム弾性体の外周面に装着されていると共に、該ゴム弾性体の内周面がスタビライザバーに接着されて用いられる接着用スタビライザブッシュにおいて、
前記ゴム弾性体と前記ブラケットの間には外周へ向けて凸となる形状の凹凸嵌合部が軸方向両側部分に設けられていると共に、該凹凸嵌合部の嵌合高さ寸法が周方向で異ならされて該ゴム弾性体における主たる径方向荷重の入力位置において小さくされていることを特徴とする接着用スタビライザブッシュ。
前記凹凸嵌合部の嵌合高さ寸法が前記ゴム弾性体における主たる径方向荷重の入力位置に向けて周方向の両側から次第に小さくなっている請求項1に記載の接着用スタビライザブッシュ。
それぞれ半筒状とされた第一の半割体と第二の半割体が互いに向かい合わせて組み合わされることで前記ゴム弾性体が構成されており、該ゴム弾性体に対する主たる径方向荷重の入力方向がそれら第一の半割体と第二の半割体の組み合わせ方向とされて、前記ブラケットと該第一の半割体の周方向中央部分との間に設けられる前記凹凸嵌合部の嵌合高さ寸法が、該ブラケットと該第二の半割体の該一対の側面との間に設けられる該凹凸嵌合部の嵌合高さ寸法よりも小さくされている請求項1又は2に記載の接着用スタビライザブッシュ。
前記ゴム弾性体の径方向中間部分には、該ゴム弾性体の周方向に延びる硬質の中間部材が配設されている請求項1〜3の何れか一項に記載の接着用スタビライザブッシュ。
前記ゴム弾性体の外周面に重ね合わされる前記ブラケットの軸方向両端部分が、軸方向外側に向けて内周へ傾斜するテーパ部を備えている請求項1〜4の何れか一項に記載の接着用スタビライザブッシュ。
請求項1〜5の何れか一項に記載された接着用スタビライザブッシュにおける前記ゴム弾性体の内周面が前記スタビライザバーの外周面に押し付けられて、該ゴム弾性体の内周面が該スタビライザバーの外周面に接着されていることを特徴とするスタビライザブッシュ付スタビライザバー。
【背景技術】
【0002】
従来から、スタビライザバーを車両ボデーに防振連結する接着用スタビライザブッシュが知られている。接着用スタビライザブッシュは、例えば、特開2017−149371号公報(特許文献1)に示されているように、スタビライザバーに外嵌状態で装着される筒状のゴム弾性体が、内周面においてスタビライザバーに接着されるようになっていると共に、サブフレームなどの車両ボデーに取り付けられるブラケットがゴム弾性体の外周面に装着された構造を有している。
【0003】
ところで、接着用スタビライザブッシュは、ゴム弾性体がスタビライザバーに対して接着されることから、ゴム弾性体のブラケットに対する相対的な動きが問題になり易い。具体的には、ゴム弾性体が変位や変形によってブラケットに対して軸方向で相対変位すると、ゴム弾性体がブラケットから軸方向で抜けてしまうおそれがある。
【0004】
そこで、特許文献1に示す接着タイプのスタビライザブッシュでは、ゴム弾性体の軸方向両側部分に外周へ向けて突出する山部が設けられており、山部がブラケットに設けられた溝状部に差し入れられている。そして、ゴム弾性体とブラケットの軸方向の相対変位に際して、ゴム弾性体の山部がブラケットの溝状部の軸方向壁部に軸方向で押し付けられることにより、ゴム弾性体のブラケットに対する軸方向抜け抗力が発揮されるようになっている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の構造では、ゴム弾性体の山部の軸方向内面とブラケットの溝状部の軸方向内側壁部とが、何れも径方向に対して傾斜していることから、径方向の入力によってブラケットの溝状部の軸方向内側壁部がゴム弾性体の山部に押し付けられると、山部に対して軸方向外向きの力が作用して、山部のブラケットに対する擦れなどによって異音が発生することが考えられる。特に、ゴム弾性体の山部がブラケットの溝状部から軸方向外側へ押し出されるように繰り返し変形すると、ゴム弾性体の山部のへたりによって山部とブラケットの溝状部との間に隙間が形成される場合があり、当該隙間に水などが入ることで異音が生じることも起こり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、スタビライザバーに接着されるゴム弾性体がブラケットに対して軸方向で相対変位するのを防止して、異音の発生や抜けなどを防ぐことができる、新規な構造の接着用スタビライザブッシュを提供することにある。
【0008】
また、本発明は、接着用スタビライザブッシュがスタビライザバーに対して接着状態で取り付けられたスタビライザブッシュ付スタビライザバーを提供することも、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0010】
すなわち、本発明の第一の態様は、筒状のゴム弾性体を備えており、車両ボデーに取り付けられるブラケットが該ゴム弾性体の外周面に装着されていると共に、該ゴム弾性体の内周面がスタビライザバーに接着されて用いられる接着用スタビライザブッシュにおいて、前記ゴム弾性体と前記ブラケットの間には外周へ向けて凸となる形状の凹凸嵌合部が軸方向両側部分に設けられていると共に、該凹凸嵌合部の嵌合高さ寸法が周方向で異ならされて該ゴム弾性体における主たる径方向荷重の入力位置において小さくされていることを、特徴とする。
【0011】
このような第一の態様に従う構造とされた接着用スタビライザブッシュによれば、ゴム弾性体とブラケットが凹凸嵌合部において軸方向で係止されることによって、ゴム弾性体とブラケットが軸方向で位置決めされることから、スタビライザバーに接着されたゴム弾性体がブラケットから軸方向に抜けるのを防ぐことができる。
【0012】
また、凹凸嵌合部の嵌合高さ寸法がゴム弾性体における主たる径方向荷重の入力位置において小さくされていることから、主たる径方向荷重の入力に対して、ゴム弾性体において凹凸嵌合部を構成する部分に作用する軸方向外向きの力が小さくなって、ゴム弾性体の軸方向両側部分がブラケットに対して軸方向外側へ相対変位するのを防ぐことができる。それ故、ゴム弾性体とブラケットの擦れや、ゴム弾性体とブラケットの間に水が入った状態におけるゴム弾性体の軸方向両側部分とブラケットの相対変位などに起因する異音を防ぐことができる。
【0013】
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載された接着用スタビライザブッシュにおいて、前記凹凸嵌合部の嵌合高さ寸法が前記ゴム弾性体における主たる径方向荷重の入力位置に向けて周方向の両側から次第に小さくなっているものである。
【0014】
第二の態様によれば、凹凸嵌合部の嵌合高さ寸法が周方向で徐々に変化していることから、応力の分散化が図られて、例えば、凹凸嵌合部におけるゴム弾性体のへたりが生じ難くなることで、凹凸嵌合部においてゴム弾性体とブラケットの間に水などが入り込み難くなる。
【0015】
本発明の第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された接着用スタビライザブッシュにおいて、それぞれ半筒状とされた第一の半割体と第二の半割体が互いに向かい合わせて組み合わされることで前記ゴム弾性体が構成されており、該ゴム弾性体に対する主たる径方向荷重の入力方向がそれら第一の半割体と第二の半割体の組み合わせ方向とされて、前記ブラケットと該第一の半割体の周方向中央部分との間に設けられる前記凹凸嵌合部の嵌合高さ寸法が、該ブラケットと該第二の半割体の該一対の側面との間に設けられる該凹凸嵌合部の嵌合高さ寸法よりも小さくされているものである。
【0016】
第三の態様によれば、第一の半割体と第二の半割体の間にスタビライザバーを挟み込むことによって、ゴム弾性体をスタビライザバーに対して容易に取り付けることができる。また、主たる径方向荷重の入力方向が第一の半割体と第二の半割体の組み合わせ方向とされることで、主たる径方向荷重が相互に突き合わされる第一の半割体と第二の半割体の周方向端部に剪断力として作用し難く、主たる径方向荷重をそれら第一の半割体と第二の半割体によって安定して受けることができる。
【0017】
さらに、第一の半割体の周方向中央部分において凹凸嵌合部の嵌合高さ寸法が小さくされていることで、主たる径方向荷重の入力による径方向の圧縮量が大きくなり易い第一の半割体において、凹凸嵌合部を構成する軸方向両側部分に作用する軸方向外向きの力を低減することができる。一方、第二の半割体において凹凸嵌合部の嵌合高さ寸法が大きくされていることで、主たる径方向荷重の入力による径方向の圧縮量が第一の半割体の周方向中央部分よりも小さくなる第二の半割体の側方において、ゴム弾性体のブラケットに対する軸方向の抜き抗力を凹凸嵌合部によって有効に得ることができる。
【0018】
本発明の第四の態様は、第一〜第三の何れか1つの態様に記載された接着用スタビライザブッシュにおいて、前記ゴム弾性体の径方向中間部分には、該ゴム弾性体の周方向に延びる硬質の中間部材が配設されているものである。
【0019】
第四の態様によれば、径方向の硬いばね特性とねじり方向の柔らかいばね特性を効率的に実現することができる。しかも、ブラケットの押付けによって径方向に圧縮されるゴム弾性体の実質的なゴムボリュームが、中間部材がない場合に比して小さくなって、ゴム弾性体の軸方向外側への変形量が低減される。
【0020】
本発明の第五の態様は、第一〜第四の何れか1つの態様に記載された接着用スタビライザブッシュにおいて、前記ゴム弾性体の外周面に重ね合わされる前記ブラケットの軸方向両端部分が、軸方向外側に向けて内周へ傾斜するテーパ部を備えているものである。
【0021】
第五の態様によれば、ゴム弾性体の軸方向外側への変形をテーパ部によって制限することができる。また、ゴム弾性体の軸方向両端部分の径方向予圧縮量がテーパ部によって大きくなることで、軸方向端面の膨らみによってばね特性が柔らかくなり易いゴム弾性体の軸方向両端部分において、目的とする硬さのばね特性を設定することができる。
【0022】
また、本発明の第六の態様は、スタビライザブッシュ付スタビライザバーにおいて、第一〜第五の何れか1つの態様に記載された接着用スタビライザブッシュにおける前記ゴム弾性体の内周面が前記スタビライザバーの外周面に押し付けられて、該ゴム弾性体の内周面が該スタビライザバーの外周面に接着されていることを、特徴とする。
【0023】
このような第六の態様に従う構造とされたスタビライザブッシュ付スタビライザバーによれば、スタビライザバーに接着されたゴム弾性体がブラケットに対して軸方向に抜け難く、スタビライザバーを目的とする車両への装着状態に安定して保持することができる。また、ゴム弾性体がブラケットとスタビライザバーの間で径方向に圧縮される際に、ゴム弾性体の軸方向両側部分がブラケットに対して軸方向に相対変位するのを防ぐことで、異音の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ゴム弾性体の軸方向両側部分とブラケットの軸方向両側部分との間に設けられた凹凸嵌合部において、ゴム弾性体とブラケットが軸方向で係合されることにより、ゴム弾性体とブラケットが軸方向で位置決めされることから、スタビライザバーに接着されたゴム弾性体がブラケットから軸方向に抜けるのを防ぐことができる。また、凹凸嵌合部の嵌合高さ寸法が主たる径方向荷重の入力位置において小さくされていることによって、主たる径方向荷重の入力に対して、凹凸嵌合部のゴム弾性体に作用する軸方向外向きの力が小さくなることから、ゴム弾性体の軸方向両側部分がブラケットに対して軸方向外側へ相対変位することで生じる異音を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1〜4には、本発明の第一の実施形態としてのスタビライザブッシュ付スタビライザバー10が、車両への装着状態で示されている。スタビライザブッシュ付スタビライザバー10は、本発明に係る接着用スタビライザブッシュ12が、スタビライザバー14に外挿状態で取り付けられた構造を有している。以下の説明において、原則として、上下方向とは
図1中の上下方向を、前後方向とは軸方向である
図2中の左右方向を、左右方向とは
図1中の左右方向を、それぞれ言う。また、本実施形態において、接着用スタビライザブッシュ12における主たる径方向荷重の入力位置は、後述するゴム弾性体16の上面の左右中央部分であり、主たる径方向荷重の入力方向は、ゴム弾性体16の上面の左右中央部分に上下方向の圧縮変形を生ぜしめる上下方向である。
【0028】
より詳細には、接着用スタビライザブッシュ12は、筒状のゴム弾性体16の外周面にブラケット18が装着された構造を有しており、ゴム弾性体16は、
図1,2に示すように、第一の半割体20と第二の半割体22によって構成されている。
【0029】
第一の半割体20は、
図5〜8に示すように、略半円柱形状とされているとともに下面に開口して略半円形断面で前後方向に貫通する第一の凹溝24が形成されていることにより、全体として上向きに凸の略半円筒形状とされている。また、第一の半割体20の径方向中間部分には、第一の中間部材26が固着されている。第一の中間部材26は、金属などで形成された硬質の部材であって、上向きに凸の略半円筒形状とされていると共に、軸方向両端部分が軸方向中間部分よりも小径とされている。更に、第一の中間部材26の軸方向両端部分は、第一の半割体20の軸方向端面から軸方向外側に突出しており、第一の半割体20と一体形成された第一の被覆ゴム28によって覆われていると共に、周方向の両端部分と中央部分が第一の被覆ゴム28から露出している。
【0030】
さらに、第一の半割体20は、軸方向の両端部分において外周へ向けて突出する第一の山部30を備えている。第一の山部30は、周方向両端から周方向中央に向けて高さ寸法が次第に小さくなっており、第一の半割体20の周方向中央部分において、第一の山部30の高さ寸法が略0とされている。本実施形態では、第一の山部30が設けられた第一の半割体20の軸方向両端部分の外周面が、少なくとも第一の山部30の軸方向中央部分において周方向の全長に亘って略同一円弧上に位置しており、第一の山部30,30の軸方向間に形成される第一の溝状部32の深さ寸法が、第一の半割体20の周方向両端から周方向中央に向けて次第に小さくなっていることによって、第一の山部30の高さ寸法が周方向中央に向けて次第に小さくなっている。そして、第一の山部30の高さ寸法が略0とされた第一の半割体20の周方向中央部分の外周面は、軸方向に直線的に延びる平坦受圧部34を軸方向の全長に亘って備えている。
【0031】
なお、第一の山部30の軸方向内側の端縁部が面取り状の第一の内側傾斜面36を有しており、第一の内側傾斜面36の幅寸法が第一の半割体20の周方向端に向けて次第に大きくなっている。更に、第一の山部30の軸方向外側の端縁部には、第一の半割体20の周方向両端部分において面取り状の第一の外側傾斜面38が設けられている。
【0032】
一方、第二の半割体22は、
図9〜12に示すように、略矩形ブロック状とされているとともに上面に開口して略半円形断面で前後方向に貫通する第二の凹溝40が形成されていることにより、全体として上向きに凹となる異形の半筒状とされている。また、第二の半割体22は、径方向中間部分に第二の中間部材42が固着されている。第二の中間部材42は、金属などで形成された硬質の部材であって、上向きに凹の略半円筒形状とされていると共に、軸方向両端部分が軸方向中間部分よりも小径とされている。また、第二の中間部材42の軸方向両端部は、第二の半割体22の軸方向端面から軸方向外側に突出しており、第二の半割体22と一体形成された第二の被覆ゴム44によって覆われていると共に、周方向の両端部分と中央部分が第二の被覆ゴム44から露出している。
【0033】
さらに、第二の半割体22は、軸方向の両端部分において外周へ向けて突出する第二の山部46を備えている。第二の山部46は、第二の半割体22の左右の側面に突出形成されており、
図11,12に示すように、上下方向の全長に亘って略一定の高さ寸法で連続的に設けられている。第二の山部46は、高さ寸法が第一の半割体20の周方向両端における第一の山部30の高さ寸法と略同じとされていると共に、横断面形状が第一の半割体20の周方向両端における第一の山部30の横断面形状と略同じとされている。なお、軸方向両端部分に設けられた第二の山部46,46の軸方向間には、左右外側に向けて開口して上下方向に延びる第二の溝状部48が形成されており、第二の溝状部48の深さ寸法が上下方向の全長に亘って略一定とされている。
【0034】
また、第二の山部46の軸方向内側の端縁部には、左右方向外側に向けて軸方向外側へ傾斜する第二の内側傾斜面50が形成されていると共に、第二の山部46の軸方向外側の端縁部には、軸方向外側に向けて左右方向内側へ傾斜する第二の外側傾斜面52が形成されている。なお、第二の山部46の第二の内外の傾斜面50,52は、上下方向の全長に亘って略一定の幅寸法で形成されている。
【0035】
そして、第一の半割体20と第二の半割体22が、
図1〜3に示すように、上下方向で互いに向かい合わせに組み合わされることによって、筒状のゴム弾性体16が構成される。なお、第一の半割体20と第二の半割体22が向かい合わせに配されるとは、第一の半割体20の周方向端部と第二の半割体22の周方向端部が相互に突き合わされる向きに配されることを言う。これにより、ゴム弾性体16には、前後方向に貫通する略円形断面の挿通孔54が、第一の半割体20の第一の凹溝24と、第二の半割体22の第二の凹溝40とによって形成されている。
【0036】
さらに、第一の半割体20と第二の半割体22は、スタビライザバー14を上下に挟んだ状態で組み合わされており、スタビライザバー14が、挿通孔54に挿通された状態でゴム弾性体16を貫通して配されている。ゴム弾性体16は、内周面がスタビライザバー14の外周面に押し付けられていると共に、第一の半割体20の第一の凹溝24の溝内面および第二の半割体22の第二の凹溝40の溝内面と、スタビライザバー14の外周面との少なくとも一方に接着剤が塗布されることにより、スタビライザバー14に接着状態で取り付けられるようになっている。
【0037】
このように、ゴム弾性体16が第一の半割体20と第二の半割体22を組み合わせて構成されていることによって、ゴム弾性体16をスタビライザバー14に対して容易に外挿状態で取り付けることが可能とされている。また、第一の半割体20と第二の半割体22が、ゴム弾性体16に対する主たる径方向荷重の入力方向である上下方向に組み合わされることから、主たる径方向荷重が第一の半割体20と第二の半割体22の各周方向端部に剪断力として作用するのを回避することができて、スタビライザバー14の安定した支持や目的とするばね特性の安定した発現、耐久性の向上などが実現される。
【0038】
さらに、第一の半割体20と第二の半割体22を組み合わせてなるゴム弾性体16の外周面において、第一の半割体20の第一の山部30と第二の半割体22の左右の第二の山部46,46が周方向で直列的に配されており、それら第一の山部30と左右の第二の山部46,46が上下方向に連続している。
【0039】
また、ゴム弾性体16には、ブラケット18が装着されている。ブラケット18は、金属などで形成された高剛性の部材であって、
図13〜18に示すように、略半円筒形状とされた装着部56の周方向両側に取付部58,58を一体形成した構造を有している。
【0040】
装着部56は、全体として略半円筒形状を有していると共に、軸方向両端部分には、内周に向けて凹となる溝状の凹部60が周方向に延びて形成されている。より具体的には、凹部60は、略円弧状断面で周方向に延びる底壁部62と、底壁部62の軸方向外側に位置して軸方向外側に向けて内周側へ傾斜するように広がる外側壁部64と、底壁部62の軸方向内側に位置して軸方向内側に向けて内周側へ傾斜するように広がる内側壁部66とを、備えている。
【0041】
さらに、凹部60は、深さ寸法が装着部56の周方向両端から周方向中央に向けて次第に小さくなっており、装着部56の周方向中央部分において深さ寸法が略0とされている。これにより、装着部56の周方向中央部分に平坦当接部68が設けられており、この平坦当接部68は、
図17に示すように、軸方向中間部分が凹部60の底壁部62と略同じ直径で軸方向に直線的に延びていると共に、軸方向両端部分が外側壁部64によって構成されて軸方向外側に向けて内周側へ傾斜している。なお、装着部56の軸方向両端部分には、軸方向外側に向けて内周へ傾斜するテーパ部が、平坦当接部68の軸方向両端部分を含む凹部60の外側壁部64によって構成されている。
【0042】
取付部58は、板状とされており、厚さ方向である上下方向に貫通するボルト孔70が形成されている。そして、取付部58は、装着部56の周方向端部から左右外側に延び出して設けられている。なお、本実施形態のブラケット18は、板材をプレス加工することで形成されており、装着部56の左右両側が折り曲げられて左右の取付部58,58が一体形成されることにより、ブラケット18の変形剛性が効率的に確保されている。更に、装着部56と左右の取付部58,58の接続部分は、軸方向両端部分が軸方向外側へ向けて上傾するように曲げられた補強リブ72を一体的に備えていることから、装着部56と取付部58,58の接続部分の強度の向上も図られている。
【0043】
そして、ブラケット18は、
図1〜4に示すように、ゴム弾性体16に装着されている。即ち、ブラケット18の装着部56がゴム弾性体16に対して上側から被せ付けられて、装着部56が第一の半割体20の外周面と第二の半割体22の左右側面の上部とに当接状態で重ね合わされている。
【0044】
さらに、ゴム弾性体16の外周面に装着されたブラケット18は、左右の取付部58,58がサブフレームなどの車両ボデー74に取り付けられている。即ち、取付部58,58の各ボルト孔70に挿通されるボルト76が車両ボデー74に螺着されることにより、ブラケット18が取付部58,58において車両ボデー74に固定されている。これにより、スタビライザバー14は、接着用スタビライザブッシュ12を介して、車両ボデー74に防振連結されている。
【0045】
ブラケット18は、車両ボデー74に固定されることによって、ゴム弾性体16の外周面に対して非接着で嵌合装着されるようになっている。そして、スタビライザバー14に外挿状態で接着されたゴム弾性体16に対して、ブラケット18が非接着で装着されることにより、接着用スタビライザブッシュ12をスタビライザバー14に装着したスタビライザブッシュ付スタビライザバー10が、車両ボデー74への装着状態で構成される。
【0046】
このような接着タイプのスタビライザブッシュ12では、スタビライザバー14へ非接着で装着される非接着タイプのスタビライザブッシュに比べて、軸方向両端部におけるスタビライザバー14への当接力を大きくしなくてもスタビライザバー14との間への異物の侵入が防止されて耐久性の向上が図られ得ることから、ばね特性の設計自由度が向上されると共に、こじり方向の低ばね化も容易となる。
【0047】
また、ブラケット18の取付部58,58が車両ボデー74に取り付けられることによって、ゴム弾性体16の第一の半割体20がブラケット18とスタビライザバー14の間で径方向に予圧縮されていると共に、ゴム弾性体16の第二の半割体22がスタビライザバー14と車両ボデー74の間で径方向に予圧縮されている。本実施形態では、第一の半割体20に第一の中間部材26が固着されており、第一の半割体20における第一の中間部材26よりも外周側と内周側がそれぞれ径方向に予圧縮される。同様に、第二の半割体22に第二の中間部材42が固着されており、第二の半割体22における第二の中間部材42よりも外周側と内周側がそれぞれ径方向に予圧縮される。なお、図中には明示されていないが、ゴム弾性体16が上記のように径方向に予圧縮されることによって、ゴム弾性体16の軸方向端面は軸方向外側へ僅かに膨らむように変形し得る。
【0048】
ここにおいて、ゴム弾性体16の第一の山部30と左右の第二の山部46,46が、ブラケット18の装着部56に設けられた凹部60に嵌め入れられており、第一の山部30と左右の第二の山部46,46が凹部60の内外側壁部66,64に対して当接状態で軸方向に重ね合わされている。そして、ゴム弾性体16は、第一の山部30と左右の第二の山部46,46がブラケット18における凹部60の内外側壁部66,64に対して軸方向で当接係止されることにより、ブラケット18に対して軸方向で相対的に位置決めされている。
【0049】
さらに、ゴム弾性体16の第一,第二の山部30,46,46がブラケット18の凹部60に嵌め入れられることにより、それらゴム弾性体16とブラケット18の間に軸方向で当接係止される凹凸嵌合部78が設けられている。この凹凸嵌合部78は、接着用スタビライザブッシュ12の軸方向両端部分にそれぞれ設けられている。また、凹凸嵌合部78の嵌合高さ寸法は、第一の山部30の高さ寸法が第一の半割体20の周方向中央において小さくなっていると共に、凹部60の深さ寸法が装着部56の周方向中央において小さくなっていることからも明らかなように、第一の半割体20および装着部56の周方向中央において周方向両側よりも小さくなっている。特に本実施形態では、凹凸嵌合部78の嵌合高さ寸法が、第一の半割体20の周方向両端から周方向中央に向けて連続的に小さくなっている。なお、第一の半割体20の周方向両端における第一の山部30の高さ寸法と第二の山部46の高さ寸法が略同じとされており、第一の半割体20の周方向中央における凹凸嵌合部78の嵌合高さ寸法は、第二の半割体22における凹凸嵌合部78の嵌合高さ寸法よりも小さくされている。
【0050】
特に本実施形態では、ブラケット18において、装着部56の軸方向両端部分が軸方向外側に向けて内周側へ傾斜する外側壁部64,64とされており、ゴム弾性体16の外周端部がそれら外側壁部64,64の軸方向間に配されている。これにより、ゴム弾性体16は、外側壁部64,64に対する軸方向での当接係止によっても、ブラケット18に対して軸方向で相対的に位置決めされている。
【0051】
これらによって、ゴム弾性体16のブラケット18に対する軸方向の抜け抗力が十分に確保されており、ゴム弾性体16がブラケット18に対して軸方向に相対変位するのを防ぐことができる。
【0052】
また、接着用スタビライザブッシュ12の車両への装着状態において、ゴム弾性体16における第一の半割体20の周方向中央部分に上下方向の圧縮力が入力される際に、第一の半割体20に作用する圧縮力が軸方向外向きの分力を生じ難くなっている。
【0053】
すなわち、第一の山部30が凹部60に嵌め合わされることで構成される凹凸嵌合部78の嵌合高さ寸法が、第一の半割体20および装着部56の周方向中央部分において小さくされている。特に本実施形態では、主たる径方向荷重が及ぼされる第一の半割体20の外周面の周方向中央部分が平坦受圧部34を備えており、平坦受圧部34において第一の山部30の高さ寸法が略0とされて第一の山部30が実質的になくなっており、凹凸嵌合部78の嵌合高さ寸法が第一の半割体20の周方向中央部分において略0とされている。それ故、第一の半割体20の周方向中央部分に及ぼされる上下方向の圧縮力に対して、ブラケット18の凹部60の内側壁部66が第一の山部30に押し付けられることによる第一の山部30の軸方向外側への押出しが、大きく圧縮される第一の半割体20の周方向中央部分において生じ難く、ゴム弾性体16がブラケット18に対して軸方向外側に変形乃至は変位し難くなっている。従って、ゴム弾性体16がブラケット18から軸方向に抜け難くなっていると共に、ゴム弾性体16がブラケット18に対して軸方向に相対変位することで生じる異音が防止されており、特にゴム弾性体16とブラケット18の間に水が入り込んだ場合に、ゴム弾性体16がブラケット18に対して軸方向で変位することによる異音が生じ難い。
【0054】
要するに、上下方向に入力される主たる径方向荷重に対して弾性変形量が小さくなるゴム弾性体16の左右両側部分において、第一の山部30および左右の第二の山部46,46と凹部60とによって構成された凹凸嵌合部78を設けることで、ゴム弾性体16とブラケット18が軸方向で位置決めされている。一方、上下方向に入力される主たる径方向荷重に対して弾性変形量が大きくなり易いゴム弾性体16の上部において、第一の山部30の高さが略0とされた平坦受圧部34を設けることで、第一の山部30がブラケット18に対して軸方向で変形乃至は変位し難くされて、耐久性の向上や異音の防止などが図られている。
【0055】
また、第一の山部30の高さ寸法が、周方向両端から周方向中央部分の平坦受圧部34に向けて徐々に小さくなっていることから、第一の山部30を含むゴム弾性体16の弾性変形に際して、応力の局所的な集中が防止されて、耐久性の向上が図られる。
【0056】
また、ゴム弾性体16の径方向中間部分に第一の中間部材26と第二の中間部材42が固着されていることにより、ゴム弾性体16の径方向と軸方向とねじり方向のばね特性が調節されている。しかも、ゴム弾性体16の外周部分の上部が第一の中間部材26とブラケット18の間で径方向に圧縮されることから、ゴム弾性体16が上下方向で圧縮される際に、ブラケット18に重ね合わされたゴム弾性体16の外周面がブラケット18に対する相対変位量を低減されて、異音の防止や耐久性の向上などがより有利に実現される。
【0057】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、ゴム弾性体は、必ずしも第一の半割体と第二の半割体が組み合わされた構造に限定されず、ゴム弾性体が一体的に形成された筒状とされていると共に、ゴム弾性体が切込みによって周方向の一部で分断されており、切込みを通じてスタビライザバーがゴム弾性体の挿通孔に差し入れられるようにしても良い。
【0058】
前記実施形態では、主たる径方向荷重の入力位置である第一の半割体20の周方向中央部分において、第一の山部30の高さ寸法が略0とされている構造を例示したが、第一の山部30の高さ寸法が主たる径方向荷重の入力位置において他の部分よりも小さくなっていれば良く、高さ寸法は必ずしも0になっていなくても良い。要するに、前記実施形態において、第一の山部30は、第一の半割体20の全周に亘って高さ寸法が0より大きくなるように連続して設けられ得て、この場合には、周方向中央部分における第一の山部30の高さ寸法が、周方向両側部分における第一の山部30の高さ寸法よりも小さくされる。
【0059】
尤も、本発明における凹凸嵌合部の嵌合高さ寸法は相対的なものであり、ゴム弾性体16の軸方向中央部分の両側に周方向に延びる谷部を設けることで軸方向両側部分を軸方向中央部分よりも相対的に山部とする他、ゴム弾性体16の軸方向両側部分を軸方向中央部分よりも外周へ突出させることによって周方向に延びる山部を設けることも可能である。
【0060】
また、前記実施形態では、第一の山部30の高さ寸法が、周方向両端から周方向中央に向けて次第に小さくなっており、凹凸嵌合部78の嵌合高さ寸法が周方向中央に向けて次第に小さくなっている例を示したが、凹凸嵌合部78の嵌合高さ寸法は、例えば、主たる径方向荷重の入力位置において部分的に小さくなっていても良いし、主たる径方向荷重の入力位置に向けて段階的に小さくなっていても良い。
【0061】
さらに、凹凸嵌合部78は、ゴム弾性体16の周方向に延びるように設けられることが望ましいが、ゴム弾性体16とブラケット18が嵌合によって軸方向で係止されるようになっていれば、必ずしも周方向に延びていなくても良い。更にまた、凹凸嵌合部78は、ゴム弾性体16およびブラケット18の軸方向両側に設けられていれば軸方向両端に設けられる必要はなく、例えば、前記実施形態において、凹凸嵌合部78を構成する第一,第二の山部30,46よりも軸方向外側にゴム弾性体16の突出部分が設けられていても良いし、凹凸嵌合部78を構成する凹部60よりも軸方向外側にブラケット18の突出部分が設けられていても良い。
【0062】
また、前記実施形態に示した主たる径方向荷重の入力位置や入力方向は、あくまでも例示であって、例えば、左右中央部分を外れた位置に上下方向に対して傾斜する径方向で入力されるようになっていても良い。
【0063】
また、前記実施形態において示した第一の中間部材26と第二の中間部材42のような中間部材は、必須ではない。更に、中間部材は、前記実施形態のように第一の中間部材26と第二の中間部材42に分かれている必要はなく、例えば、ゴム弾性体16の周方向に一周に満たない長さで延びるC字断面を有する中間部材を採用することもできる。
【0064】
前記実施形態では、スタビライザバー14に外挿状態で取り付けられたゴム弾性体16が、ブラケット18と車両ボデー74の上下間に配設される構造について説明したが、例えば、ブラケットが上ブラケットと下ブラケットを備えており、それら上下のブラケットがゴム弾性体の外周面における上下各一方の半周を覆うように装着されて、ゴム弾性体がそれら上下のブラケットの間で予圧縮される構造なども採用され得る。