(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
―第1の実施の形態―
以下、
図1〜
図7を参照して、本発明に係る二次電池パックの第1の実施の形態を説明する。
【0009】
(全体構成)
図1は、第1の実施の形態における二次電池パック1を示す図である。二次電池パック1は、ファン107と、電池モジュール101と、制御部910と、ファン107および電池モジュール101を接続する接続管路220とを備える。本実施の形態では、電池モジュール101を冷却する冷却媒体として空気を用いる。ファン107は回転方向を反転可能な冷却媒体の移送装置、たとえば送風機やポンプである。ファン107は、正転すると冷却媒体をファン107から電池モジュール101に圧送し、逆転すると冷却媒体を電池モジュール101からファン107に吸引する。本実施の形態では、ファン107が正転する場合の冷却媒体の流れをA方向と呼び、ファン107が逆転する場合の冷却媒体の流れをB方向と呼ぶ。
【0010】
ファン107には、大気解放される第1管路221、および電池モジュール101に接続される接続管路220が接続される。ファン107が正転する場合には、第1管路221から吸引された空気が接続管路220を介して電池モジュール101に圧送される。ファン107が逆転する場合には接続管路220を介して電池モジュール101から吸引した空気が第1管路221に圧送される。ファン107は、制御部910から制御信号を受けて動作し、回転の開始、回転の停止、および回転方向の反転が可能である。
【0011】
電池モジュール101は、複数の二次電池、2つの温度センサ、および冷却媒体の流路を有する。電池モジュール101には、ファン107と接続される空気の流路である接続管路220と、大気解放される空気の流路である第2管路222とが接続される。電池モジュール101に備えられる複数の二次電池には不図示の電力線が接続されており、二次電池は充電または放電により発熱する。2つの温度センサは複数の二次電池のいずれかの温度を測定し、測定した温度であるT1およびT2を制御部910に送信する。電池モジュール101の詳細な構成、および温度センサの位置は後述する。ただしそれぞれの電池モジュール101に温度センサがあらかじめ内蔵され、特定の電池モジュール101の温度センサの測定結果のみが出力される構成でもよい。
【0012】
制御部910は、中央演算装置であるCPU911、読み込み専用の記憶装置であるROM912、および読み書き可能な記憶装置であるRAM913を備える。CPU911は、ROM912に格納されたプログラムをRAM913に展開して実行することにより後述する機能を実現する。ただし制御部910は特定用途向け集積回路(ASIC)により実現されてもよいし、書き換え可能な論理回路により実現されてもよい。
【0013】
(電池モジュール101の構成)
図2は、電池モジュール101の透過図である。また
図2にはファン107が正転する場合であるA方向の空気の流れを矢印で示している。電池モジュール101は、複数のリチウムイオン二次電池(以下、「電池セル」)102と、複数の電池セル102を囲む筐体101aを備える。ただし
図2では筐体101aを透過させ、内部に収められる電池セル102を図示している。電池モジュール101の内部には、直方体状の電池セル102が8個で1セットを構成し、符号1021と符号1022で示す2セットが収められている。
【0014】
第1セット1021および第2セット1022を構成するそれぞれの電池セル102は直方体であり、それぞれの幅広面に空気の流れが接触するように束ねられる。第1セット1021は図示されているA方向の流れにおける上流側に配され、第2セット1022はA方向の流れにおける下流側に配される。すなわち電池セル102は、各セットにおける電池モジュール101の束ね方向である行方向、および空気の流れ方向である列方向に配列されている。
【0015】
筐体101aは、2セットの電池セル102を収める略直方体の形状を有し、その対角線の位置に2つ孔を有する。第1孔103aには図示左側の接続管路220が接続され、第2孔103bには図示右側の第2管路222が接続される。以下では、第1セット1021における最も右側の電池モジュール101を第1被測定電池102aと呼び、第2セット1022における最も左側の電池モジュール101を第2被測定電池102bと呼ぶ。
【0016】
第1被測定電池102aは、図示矢印の方向であるA方向の流れにおいて空気の流れが最も少ないと考えられる領域に位置する。第2被測定電池102bは、図示矢印とは逆方向の流れであるB方向の流れにおいて空気の流れが最も少ないと考えられる領域に位置する。本実施の形態では、第1被測定電池102aおよび第2被測定電池102bに温度センサが配される。第1被測定電池102aの温度がT1、第2被測定電池102bの温度がT2として制御部910に出力される。
【0017】
図3は、筐体101aの側面図である。ただし
図3でも筐体101aの壁面を透過させて図示している。また
図2とは視点が変化したので、
図3では第1被測定電池102aは第1セット1021の最下段の電池セル102であり、第2被測定電池102bは第2セット1022の最上段の電池セル102である。
図3において中心105は、第1セット1021および第2セット1022を含めたすべての電池セル102の幾何的な中心である。第1孔103aから第2孔103bまでを結ぶ仮想の線を第1仮想線103と呼び、第1被測定電池102aから第2被測定電池102bまでを結ぶ仮想の線を第2仮想線104と呼ぶ。また第1セット1021と第2セット1022とを隔てる仮想的な線を第3仮想線106と呼ぶ。
【0018】
第1仮想線103、第2仮想線104、および第3仮想線106は、中心105において交わる。換言すると、第1孔103aと第2孔103bは中心105を中心とした点対称の位置にあり、第1被測定電池102aと第2被測定電池102bは中心105を中心とした点対称の位置にある。第1被測定電池102aおよび第2被測定電池102bのそれぞれには、温度を測定する第1温度測定部104aおよび第2温度測定部104bが備えられる。なお第2仮想線104は、単に第1被測定電池102aから第2被測定電池102bまでを結ぶのではなく、温度測定箇所である第1温度測定部104aおよび第2温度測定部104bを結んでもよい。
【0019】
図4は、流れ方向ごとの主な被冷却領域を示す図である。
図4(a)は空気がA方向に流れる場合に主に冷却される領域を示し、
図4(b)は空気がB方向に流れる場合に主に冷却される領域を示す。空気がA方向に流れる場合は第2被測定電池102bを含む領域が主に冷却され、空気がB方向に流れる場合は第1被測定電池102aを含む領域が主に冷却される。
【0020】
(制御部910の動作)
図5は、第1の実施の形態における制御部910の動作を表すフローチャートである。以下に説明する各ステップの実行主体は、制御部910のCPUである。制御部910は、まずS301においてファン107の正転を開始する。続くS305において制御部910は、第1被測定電池102aの温度T1と第2被測定電池102bの温度T2を取得する。続くS310において制御部910は、S305において取得したT1とT2との差の絶対値が所定の閾値Tc以上であるか否かを判断する。閾値Tcは制御部910のROM912に格納される値である。制御部910は、差がTcよりも大きいと判断する場合はS315に進み、差がTc以下であると判断する場合はS305に戻る。S315では制御部910は、ファン107の回転方向を反転させてS305に戻る。
【0021】
たとえば、初回にS315が実行されるとファン107の回転方向は逆転して筐体101aの空気の流れがB方向となる。そしてその次にS315が実行されると、さらにファン107の回転方向は逆転して流れがA方向となる。すなわち制御部910は、T1とT2の温度差が閾値Tcより大きくなるごとに空気の流れ方向を反転させる制御を行う。
【0022】
(温度の経時変化)
図6は、T1およびT2の経時変化を示す図である。
図6において横軸は時間、縦軸は温度を表す。
図6において破線は第1被測定電池102aの温度であるT1の時間変化を表し、実線は第2被測定電池102bの温度であるT2の時間変化を表す。動作開始直後の空気の流れはA方向である。第1孔103aから流入した空気は直進するので、第1被測定電池102aの温度T1は第2被測定電池102bの温度T2より高く、その差は時間の経過とともに拡大する。時刻tm1においてT1とT2の差がTcより大きくなったので、制御部910は空気の流れ方向をB方向に反転させる。
【0023】
すると筐体101aには第2孔103bから空気が流入するので、第2被測定電池102bよりも第1被測定電池102aの方がより冷却され、T1とT2の温度差は小さくなり、その後逆転する。そして時刻tm2にはT1とT2の差がTcより大きくなり、流れ方向が再度反転されてA方向となる。このように温度差がTcを超えるたびに流れ方向が反転されるので、T1とT2の温度差ΔTは閾値Tcとゼロの間を往復する。
【0024】
(比較例)
空気の流れ方向を反転させない構成を比較例として本実施の形態の構成と比較する。比較例の制御部の動作以外は上述した第1の実施の形態と同様である。
【0025】
図7は、
図6に示すT1およびT2の時間変化に加えて、比較例であるT1zおよびT2zの時間変化を点線で示す図である。T1zは比較例における第1被測定電池102aの温度を示し、T2zは比較例における第2被測定電池102bの温度を示す。比較例では冷却媒体である空気の流れ方向が変化しないので、第1被測定電池102aは第2被測定電池102bよりも排熱可能な熱量が少ない状態が継続し、T1zとT2zの温度差ΔTzは時間の経過とともに増大する。
【0026】
本実施の形態と比較例を比較する。動作を開始するtm0からtm1までの温度変化は、本実施の形態と比較例では違いがない。装置構成および動作が同一だからである。しかし時刻tm1以降では、本実施の形態では温度差ΔTが一旦は減少するのに対して、比較例では温度差ΔTzが増加を続ける。そのため本実施の形態と比較例では、時間の経過によりその差が顕著となる。また本実施の形態における温度T1およびT2は、比較例における温度T1zよりも低く、電池セル102の最高温度が比較例よりも本実施の形態の方が低いことがわかる。
【0027】
上述した第1の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)二次電池パック1は、行方向および列方向に配列される複数の電池モジュール101と、複数の電池モジュール101を収容し、対向する位置に設けられる第1孔103aおよび第2孔103bを有する筐体101aと、電池モジュール101を冷却する空気の流れを生成するファン107と、第1被測定電池102aおよび第2被測定電池102bの温度を測定する第1温度測定部104aおよび第2温度測定部104bとを備える。ファン107は、第1孔103aから第2孔103bへ向かうA方向の流れ、および第2孔103bから第1孔103aへ向かうB方向の流れを生成可能である。第1孔103aから第2孔103bまでを結ぶ第1仮想線103、および第1被測定電池102aから第2被測定電池102bまでを結ぶ第2仮想線104は、行方向および列方向のいずれに対しても斜めである。第1仮想線103および第2仮想線104は交差する。
【0028】
そのため二次電池パック1は、冷却媒体である空気を筐体101aに斜めに流入させ、
図4に示したように双方向の流れによって全体を冷却できる。またA方向の流れにおいて温度が上昇しやすい第1被測定電池102aと、B方向の流れにおいて温度が上昇しやすい第2被測定電池102bの温度を測定できる。すなわち二次電池パック1は、電池モジュール101を冷却する空気の流れ方向を反転させることを前提として、第1孔103aおよび第2孔103bにより冷却に適した空気の流れを作成するとともに、流れ方向の反転の判断に適した第1被測定電池102aと第2被測定電池102bの温度を測定できる。
【0029】
(2)二次電池パック1は、ファン107を制御することで冷媒の流れ方向を制御する制御部910を備える。制御部910は、第1被測定電池102aの温度および第2被測定電池102bの温度に基づき冷媒の流れ方向を反転させる。そのため冷却媒体である空気の流れを反転させることで筐体101aに含まれる全ての電池セル102を効率よく冷却できる。
【0030】
(3)第1被測定電池102aおよび第2被測定電池102bは、複数の二次電池の中心に対して点対称の位置に存在する。そのため温度分布に対して対称な位置で温度が測定されるので、流れ方向を変化させるべきタイミングを適切に判断できる。
【0031】
(4)第1孔103aおよび第2孔103bは、複数の電池セル102の中心105に対して点対称の位置に存在する。そのため流れ方向を反転させることを前提として、冷却されにくい箇所が少ない流路が形成される。仮に第1孔103aおよび第2孔103bが、
図3の高さ方向中央に存在する場合は、上下端に存在する電池セル102は流れ方向を問わず冷却されにくく、温度の上昇が避けられない。しかし本実施の形態の構成によれば、流れが反転されることで筐体101a内の電池セル102の温度を均一に近づけることができる。
【0032】
(5)制御部910は、第1被測定電池102aの温度と第2被測定電池102bの温度との差が所定値以上の場合に冷媒の流れ方向を反転させる。そのため第1被測定電池102aの温度と第2被測定電池102bの温度の差を所定値以内に抑えることができる。
【0033】
(6)ファン107は、空気の双方向の流れを生成可能な1台のハードウエアである。そのためハードウエア構成を簡潔にできる。
【0034】
上述した第1の実施の形態は、以下のように変形してもよい。
(1)二次電池パック1は、第1管路221および第2管路222を備えなくてもよい。
(2)第1管路221および第2管路222を接続する閉鎖系の構成とし、管路内に空気を冷却する熱交換装置を備えてもよい。
(3)冷却冷媒には空気以外の気体を用いてもよいし、液体を用いてもよい。ただし電気伝導性を有する液体を用いる場合は、電池セル102が冷却媒体を介してショートしないように適切な処置を施す。
【0035】
―第2の実施の形態―
図8〜
図9を参照して、本発明に係る二次電池パックの第2の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、2つのファンを備える点で、第1の実施の形態と異なる。
【0036】
(全体構成)
図8は、第2の実施の形態における二次電池パック1Aを示す図である。二次電池パック1Aは、第1の実施の形態におけるファン107の代わりに第1ファン107aおよび第2ファン107bを備える。電池モジュール101および制御部910の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0037】
第1ファン107aおよび第2ファン107bは、所定の方向にのみ回転が可能な冷却媒体の移送装置、たとえば送風機やファンである。第1ファン107aおよび第2ファン107bは、電池モジュール101を挟んで逆側に設けられる。第1ファン107aは冷却媒体である空気をA方向に圧送し、第2ファン107bは冷却媒体である空気をB方向に圧送する。すなわち第1ファン107aは、電池モジュール101の第1孔103aから第2孔103bへ向かう流れを生成する。また第2ファン107bは、電池モジュール101の第2孔103bから第1孔103aへ向かう流れを生成する。
【0038】
第1ファン107aおよび第2ファン107bは、制御部910からの動作指令、すなわち運転開始指令と停止指令を受けて動作する。第1ファン107aおよび第2ファン107bは、制御部910から運転開始指令を受けると羽根車を回転して空気を圧送する運転状態に移行し、制御部910から停止指令を受けると羽根車の回転を停止する停止状態に移行する。なお以下では、第1ファン107aおよび第2ファン107bにおいて、運転状態から停止状態への移行や停止状態から運転状態への移行を「動作状態の反転」と呼ぶ。
【0039】
制御部910の構成は第1の実施の形態と同様である。制御部910の動作は、電池モジュール101内の空気の流れ方向を反転させるための動作指令の出力方法が第1の実施の形態と次の点が異なる。すなわち制御部910は、電池モジュール101内の空気の流れ方向を反転させるために、第1ファン107aおよび第2ファン107bに動作指令を出力する。また、電池モジュール101内の空気の流れは第1の実施の形態と同様である。第1ファン107aが生じさせる空気の流れ方向と第2ファン107bが生じさせる空気の流れ方向とは逆なので、制御部910は第1ファン107aおよび第2ファン107bのいずれか一方のみを運転状態とする。
【0040】
(制御部910の動作)
図9は、第2の実施の形態における制御部910の動作を表すフローチャートである。
図9は第1の実施の形態における
図5と比べると、S301がS301Aに変更され、S315がS315Aに変更されている。そのほかのステップの処理は同様である。S301Aでは制御部910は、第1ファン107aに運転開始指令を出力し、第2ファン107bに停止指令を出力する。ただし第2ファン107bへの停止指令は念のために行うだけであり、省略してもよい。
【0041】
S315Aでは制御部910は、第1ファン107aおよび第2ファン107bの動作状態を反転させてS305に戻る。すなわち制御部910は、第1ファン107aが運転状態にある場合は第1ファン107aに停止指令を送信して第2ファン107bに運転開始指令を送信し、第2ファン107bが運転状態にある場合は第2ファン107bに停止指令を送信して第1ファン107aに運転開始指令を送信する。他のステップの動作は第1の実施の形態と同様である。
【0042】
上述した第2の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(7)二次電池パック1Aは、第1孔103aから第2孔103bへ向かう流れを生成する第1ファン107aと、第2孔103bから第1孔103aへ向かう流れを生成する第2ファン107bとを含む。そのため一方向にしか冷却媒体の流れを発生できない装置を用いても、第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0043】
(第2の実施の形態の変形例)
上述した第2の実施の形態では、第1ファン107aおよび第2ファン107bは冷却媒体である空気を電池モジュール101に圧送した。しかし第1ファン107aおよび第2ファン107bは電池モジュール101から空気を吸引する構成としてもよい。
【0044】
―第3の実施の形態―
図10を参照して、本発明に係る二次電池パックの第3の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、第1被測定電池102aおよび第2被測定電池102bを変更する点で、第1の実施の形態と異なる。ファン107および制御部910の構成、ならびに制御部910の動作は第1の実施の形態と同様である。
【0045】
図10は、第3の実施形態における筐体101aの側面図である。第1の実施の形態では第1被測定電池102aは第1セット1021の最下段の電池モジュール101であったが、第3の実施の形態では
図10に示すように下から2番目の電池モジュール101である。また第1の実施の形態では第2被測定電池102bは第2セット1022の最上段の電池モジュール101であったが、第3の実施の形態では
図10に示すように上から2番目の電池モジュール101である。
【0046】
二次電池パック1の両端に位置する電池セル102、すなわち筐体101aと広く接触する第1セット1021と第2セット1022の上下端の電池セル102は、冷媒の流れによらず特異的に温度が低くなることがある。原因としては熱伝導による熱の移動が挙げられる。このような場合に特異的に温度が低い電池セル102の温度を制御に利用することは好ましくないため、
図10に示すように筐体101aと直接は接触しない電池セル102の温度を利用する。すなわち第1セット1021の下から2番目の電池モジュール101を第1被測定電池102aとし、第2セット1022の上から2番目の電池モジュール101を第2被測定電池102bとする。
【0047】
上述した第3の実施の形態によれば、特異的に低温の電池セル102を避けることができ、適切な温度管理が可能となる。
【0048】
―第4の実施の形態―
図11を参照して、本発明に係る二次電池パックの第4の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、ファン107の回転方向の頻繁な変更を避ける点で、第1の実施の形態と異なる。二次電池パック1のハードウエア構成は第1の実施の形態と同様なので説明を省略する。ただし制御部910のROM912に格納されるプログラムが第1の実施の形態と異なる。
【0049】
(制御部910の動作概要)
本実施の形態では制御部910は、ROM912に反転最小時間TLを記憶する。制御部910は、頻繁なファン107の回転方向の変更を防止するために、ファン107の回転方向を変更した時刻を記憶し、少なくとも反転最小時間TLを経過するまでは回転方向を変更しない。なお反転最小時間TLは、ファン107が電池モジュール101に送る単位時間当たりの空気量、電池モジュール101内の流路の体積、および、電池モジュール101内の流路の構造などの影響を受ける値であり、あらかじめ定められている。反転最小時間TLは、たとえば100秒である。
【0050】
(制御部910の動作)
図11は、第4の実施の形態における制御部910の動作を表すフローチャートである。以下に説明する各ステップの実行主体は、制御部910のCPUである。制御部910は、まずS301においてファン107の正転を開始する。続くS302において制御部910は、現在時刻をs1として記録する。続くS305において制御部910は、第1被測定電池102aの温度T1と第2被測定電池102bの温度T2を取得する。
【0051】
続くS310において制御部910は、S305において取得したT1とT2との差の絶対値が所定の閾値Tc以上であるか否かを判断する。閾値Tcは制御部910のROM912に格納される値である。制御部910は、差がTcよりも大きいと判断する場合はS311に進み、差がTc以下であると判断する場合はS305に戻る。S311では制御部910は、S302において記録した時刻s1からの経過時間Uを算出する。
【0052】
続くS312では制御部910は、経過時間Uが閾値TLよりも長いか否かを判断する。制御部910は、経過時間Uが閾値TLよりも長いと判断する場合はS315に進み、経過時間Uが閾値TL以下であると判断する場合はS313に進む。閾値TLは制御部910のROM912に格納される値である。S313では制御部910は、TL−Uの時間だけ待機してS315に進む。S315では制御部910は、ファン107の回転方向を反転させてS305に戻る。
【0053】
上述した第4の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(8)制御部910は、あらかじめ定められた時間である反転最小時間TLを記憶するROM912を備える。制御部910は、冷媒の流れ方向を反転させてから次に冷媒の流れ方向を反転させるまでに、少なくとも反転最小時間TLの経過を待つ(
図11のS313)。そのため頻繁な流れ方向の変更を防止できる。仮に頻繁に流れ方向が変更されると、ある方向への空気の流れが生じる前に流れ方向が変更され、流量がほぼゼロ、または流量が非常に少ない状態となってしまう。本実施の形態によれば、そのような問題を回避することができる。
【0054】
―第5の実施の形態―
図12〜
図13を参照して、本発明に係る二次電池パックの第5の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、電池モジュール101の構成が第1の実施の形態と異なる。ファン107および制御部910の構成、および制御部910の動作は第1の実施の形態と同様なので説明を省略する。
【0055】
(電池モジュール101Bの構成)
図12は、第5の実施の形態に係る電池モジュール101Bの透過図である。電池モジュール101Bは、複数の円筒形の電池セル111と、筐体110とを備える。筐体110は第1孔112aおよび第2孔112bを備える。電池セル111は行方向に7個、列方向に2個が配列される。そして電池セル111の列方向の延長に第1孔112aおよび第2孔112bが存在する。図示左下の行方向および列方向に端部に位置する電池セル111が第1被測定電池113aである。また第1被測定電池113aとは逆側の行方向および列方向の端部に存在する、図示右上の電池セル111が第2被測定電池113bである。
【0056】
図13は、第5の実施の形態における筐体110の側面図である。ただし
図13でも筐体110の壁面を透過させて図示している。
図13において中心114は、配置されたすべての電池セル111の幾何的な中心である。第1孔112aから第2孔112bまでを結ぶ仮想の線を第1仮想線112と呼び、第1被測定電池113aから第2被測定電池113bまでを結ぶ仮想の線を第2仮想線113と呼ぶ。また電池セル111の列方向の中心位置を示す仮想的な線を第3仮想線115と呼ぶ。
【0057】
第1仮想線112、第2仮想線113、および第3仮想線115は、中心114において交わる。換言すると、第1孔112aと第2孔112bは中心114を中心とした点対称の位置にあり、第1被測定電池113aと第2被測定電池113bは中心105を中心とした点対称の位置にある。また第1被測定電池113aは筐体110に最も近い位置の温度が測定され、第2被測定電池113bは筐体110に最も近い位置の温度が測定される。そのため、第2仮想線113が測定位置同士を結ぶ場合でも、第1被測定電池113aと第2被測定電池113bの中心同士を結ぶ場合でも、前述のように第1仮想線112、第2仮想線113、および第3仮想線115は、中心114において交わる。
【0058】
上述した第5の実施の形態によれば、電池セル111が円筒形の場合でも第1の実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0059】
―第6の実施の形態―
図14〜
図15を参照して、本発明に係る二次電池パックの第6の実施の形態を説明する。以下の説明では、第5の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第5の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、二次電池パックが温度センサをさらに備え、中心と下流の温度を用いてファンを制御する点で、第5の実施の形態と異なる。
【0060】
(構成)
ファン107および制御部910の構成は第1の実施の形態と同様である。電池モジュール101Cの構成は、第5の実施の形態における電池モジュール101Bに温度センサが1つ追加されている。また電池モジュール101Cに含まれる電池セル111の数は、第5の実施の形態における電池モジュール101Bに含まれる電池セル111の数よりも多い。
【0061】
図14は、第6の実施の形態における電池モジュール101Cの側面図である。電池セル111は行方向に12個、列方向に2個が配列される。そして電池セル111の列方向の延長に第1孔112aおよび第2孔112bが存在する。図示左下の行方向および列方向に端部に位置する電池セル111が第1被測定電池113aである。また第1被測定電池113aとは逆側の行方向および列方向の端部に存在する、図示右上の電池セル111が第2被測定電池113bである。そして列方向の中央に存在する4つの電池セル111のいずれか、すなわち符号116a、116b、116c、および116dのいずれかの電池セル111が第3被測定電池113cである。
【0062】
ただし筐体110に含まれるすべての電池セル111の幾何的な中心を中心114とする場合に、中心114までの距離が最も近い電池セル111が2つのみの場合は、その2つの電池セル111のいずれかが第3被測定電池113cである。また、中心114が特定の電池セル111の内部に存在する場合は、その電池セル111が第3被測定電池113cである。第3被測定電池113cには温度センサである第3温度測定部が備えられ、第3被測定電池113cの温度は、温度T3として制御部910に送信される。
【0063】
(制御部910の動作)
図15は、第6の実施の形態における制御部910の動作を表すフローチャートである。
図15は第1の実施の形態における
図5と比べると、S305がS305Aに変更され、S310がS310Aに変更されている。そのほかのステップの処理は同様である。S305Aでは制御部910は、中心温度Tmと下流温度Tdを取得する。ただし中心温度Tmとは第3被測定電池の温度T3であり、下流温度Tdとは第3被測定電池よりも下流に位置する第1被測定電池113aまたは第2被測定電池113bの温度である。すなわち制御部910は、ファン107が正転している場合は第2被測定電池113bの温度を下流温度Tdとし、ファン107が逆転している場合には第1被測定電池113aの温度を下流温度Tdとする。
【0064】
続くS310Aでは制御部910は、S305Aにおいて取得したTmとTdとの差の絶対値が所定の閾値Tcより大きいか否かを判断する。閾値Tcは制御部910のROM912に格納される値である。ただし閾値Tcの値は第1の実施の形態と同じ値でもよいし、第1の実施の形態とは異なる値でもよい。制御部910は、差がTcよりも大きいと判断する場合はS315に進み、差がTc以下であると判断する場合はS305Aに戻る。S315では制御部910は、ファン107の回転方向を反転させてS305Aに戻る。
【0065】
上述した第6の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(9)二次電池パックは、ファン107を制御することで空気の流れ方向を制御する制御部910と、複数の二次電池の中心近傍に配される第3被測定電池102cの温度を測定する第3温度測定部104cを備える。制御部910は、第3被測定電池102cの温度と、第3被測定電池よりも冷媒の流れにおける下流側に位置する第1被測定電池102aおよび第2被測定電池102bのいずれかの温度との差が閾値Tcより大きい以上の場合に空気の流れ方向を反転させる。そのため、
図14に示すように流れ方向に配置される電池セル111の数が増えると中心付近の電池セル111は冷却されにくい傾向にあるので、中心付近の電池セル111の温度を用いてファン107の動作を制御することで電池モジュール011Cを構成する電池セル111の温度差を低減できる。
【0066】
上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。