(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された蒸発燃料処理装置においては、ポンプがパージ通路に配置されているので、例えばポンプの前後の差圧からパージ濃度(パージガスに含まれる蒸発燃料の濃度)を推定することはできる。しかしながら、ポンプがパージ通路に配置されているので、大気通路を流れる空気によりポンプを冷却することができず、また、ポンプの駆動時の発熱によりキャニスタに流入する空気を加熱してキャニスタにおける蒸発燃料の脱離(パージ)を促進させることもできない。
【0005】
そこで、本開示は上記した問題点を解決するためになされたものであり、流体制御部についてパージ濃度を推定可能な配置としつつ、流体制御部の駆動を制御する部位(発熱部)の冷却およびキャニスタにおける蒸発燃料の脱離の促進を行うことが可能な蒸発燃料処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、パージガスが流れるパージ通路と、空気が流れる大気通路とに連通するキャニスタを有する蒸発燃料処理装置において、流体の流れを制御する流体制御部と、前記流体制御部の駆動を制御する部位であって、かつ、発熱する部位である発熱部と、を有し、前記発熱部の少なくとも一部は、前記大気通路内に露出するように配置され、前記流体制御部は、前記パージ通路に配置され、または、前記パージ通路に接続するように配置されていること、を特徴とする。
【0007】
この態様によれば、発熱部の冷却と、キャニスタに流入する空気の加熱によるキャニスタにおける蒸発燃料の脱離の促進と、を行うことができる。また、流体制御部にはパージガスが流れるので、流体制御部の前後の差圧をもとにパージ濃度の推定を行うことができる。
【0008】
上記の態様においては、前記発熱部と前記流体制御部と前記キャニスタが一体に設けられていること、が好ましい。
【0009】
この態様によれば、発熱部と流体制御部の設置を容易に行うことができる。また、キャニスタが流体制御部の駆動時の振動を抑制することができる。
【0010】
上記の態様においては、前記キャニスタのケース内に前記発熱部と前記流体制御部とが設けられていること、が好ましい。
【0011】
この態様によれば、発熱部と流体制御部の設置に伴う接続部品を少なく抑えることができ、コスト低減を図ることができる。
【0012】
上記の態様においては、前記キャニスタのケースの一部は、前記発熱部のハウジングで構成されていること、が好ましい。
【0013】
この態様によれば、大気通路を流れる空気と発熱部との間の熱交換の効率を向上させることができる。また、部品点数の削減を図ることができる。
【0014】
上記の態様においては、前記発熱部のハウジングの少なくとも一部に放熱部材が設けられていること、が好ましい。
【0015】
この態様によれば、放熱部材により発熱部からの放熱が促進されるので、発熱部の冷却と、大気通路からキャニスタに流入する空気の加熱とが促進される。
【0016】
上記の態様においては、前記発熱部は、当該発熱部の内部に前記大気通路を流れる空気が通過する空気通過用の流路を備えていること、が好ましい。
【0017】
この態様によれば、大気通路を流れる空気と発熱部との熱交換の効率を向上させることができる。また、空気の流れが発熱部により阻害されて大気通路内の流路抵抗が増大することを抑制できる。
【0018】
上記の態様においては、前記発熱部の内部の回路が保護材で覆われていること、が好ましい。
【0019】
この態様によれば、回路に空気が直接接触しないので、回路を保護することができる。
【0020】
上記の態様においては、前記キャニスタに接続する、または、前記大気通路における前記発熱部よりも前記キャニスタ側の部分にて前記大気通路から分岐する別通路と、前記キャニスタから前記別通路へ前記パージガスを流す一方で、前記キャニスタから前記大気通路へ前記パージガスを流さないようにする通路調整部と、を有すること、が好ましい。
【0021】
この態様によれば、給油時などの燃料タンクの圧抜き時にキャニスタからパージガスが発熱部に流れないようにして、パージガスに含まれる蒸発燃料による発熱部への影響を防止できる。
【0022】
上記の態様においては、前記キャニスタから前記パージガスを前記パージ通路へ送り出すパージ制御を行う条件が成立したときに、前記発熱部を急加熱する急加熱制御を実施する急加熱制御部を有すること、が好ましい。
【0023】
この態様によれば、大気通路からキャニスタへ流入する空気が急加熱されてキャニスタ内が急加熱されるので、キャニスタにおける蒸発燃料の脱離が促進される。そのため、キャニスタにおける蒸発燃料の脱離を短時間で完了させることができる。
【0024】
上記の態様においては、前記パージ通路内のパージ濃度が所定値以上であることを条件として、前記急加熱制御部に前記急加熱制御を実施させること、が好ましい。
【0025】
この態様によれば、キャニスタに吸着している蒸発燃料が多い状況に限って急加熱制御を行うので、短時間でキャニスタに吸着している蒸発燃料を脱離させることができるとともに、急加熱制御の実施頻度を低減させることもできる。
【0026】
上記の態様においては、前記キャニスタは、大気ポートからパージポートまでの前記キャニスタ内の流体の流れがU字となるように構成されていること、が好ましい。
【0027】
この態様によれば、発熱部と流体制御部の配置が容易となる。
【0028】
上記の態様においては、前記発熱部と前記流体制御部は、パージポンプの構成要素であること、が好ましい。
【0029】
上記の態様においては、前記流体制御部の前後の差圧をもとにパージ濃度を推定するパージ濃度推定部を有すること、が好ましい。
【0030】
この態様によれば、大気通路を流れる空気を加熱しつつ、パージ通路を流れるパージガスのパージ濃度を推定できる。
【発明の効果】
【0031】
本開示の蒸発燃料処理装置によれば、流体制御部についてパージ濃度を推定可能な配置としつつ、流体制御部の駆動を制御する部位(発熱部)の冷却およびキャニスタにおける蒸発燃料の脱離の促進を行うことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本開示の蒸発燃料処理装置の実施形態について説明する。
【0034】
<蒸発燃料処理装置の概要について>
まず、本実施形態の蒸発燃料処理装置1の概要について説明する。蒸発燃料処理装置1は、自動車等の車両に搭載される。
【0035】
ここで、
図1に示すように、車両に搭載されるエンジンEN(内燃機関)には、エンジンENに空気(吸入空気)を供給するための吸気通路IPが接続されている。吸気通路IPにおける上流側(吸入空気の流れ方向の上流側)には、吸気通路IPに流入する空気から異物を除去するエアクリーナACが設けられている。これにより、吸気通路IPでは、空気がエアクリーナACを通過してエンジンENに向けて吸入される。
【0036】
本実施形態の蒸発燃料処理装置1は、燃料タンクFT内の蒸発燃料を、吸気通路IPを介してエンジンENに供給する装置である。
図1に示すように、蒸発燃料処理装置1は、キャニスタ11と、パージ通路12と、パージポンプ13と、パージ弁14と、大気通路15と、圧力検出部16と、制御部17などを有する。
【0037】
キャニスタ11は、燃料タンクFTに接続されており、燃料タンクFTから流入される蒸発燃料を貯留する。また、キャニスタ11は、パージ通路12と大気通路15とに連通している。さらに、キャニスタ11は、活性炭18を備えている。
【0038】
本実施形態では、キャニスタ11は、大気通路15に接続する大気ポート11aから、パージ通路12に接続するパージポート11bまでのキャニスタ11内の流体の流れがU字となるように構成されている。
【0039】
パージ通路12はキャニスタ11と吸気通路IPに接続されている。これにより、キャニスタ11から流出するパージガス(蒸発燃料を含む気体)は、パージ通路12を流れて、吸気通路IPに導入される。
【0040】
パージポンプ13は、パージ通路12を流れるパージガスの流れを制御する流体制御ユニットである。すなわち、パージポンプ13は、キャニスタ11内のパージガスをパージ通路12に送出し、パージ通路12に送出されたパージガスを吸気通路IPに供給する。なお、パージ通路12と大気通路15はキャニスタ11を介して連通しているので、パージポンプ13によりパージ通路12においてパージガスの流れが生じると、大気通路15においても空気の流れが生じることになる。
【0041】
パージポンプ13は、ポンプ部19とモータ部20と回路部21を備えている。ポンプ部19は、流体の流れを制御する流体制御部である。本実施形態では、ポンプ部19は、パージ通路12に配置されており、パージガスの流れを制御する。また、モータ部20と回路部21は、ポンプ部19の駆動を制御する部位である。詳しくは、モータ部20は、ポンプ部19を駆動するモータ(駆動部)を備えている。また、回路部21は、モータ部20のモータの駆動を制御するための回路25(
図7参照)を備えている部分である。
【0042】
また、モータ部20と回路部21は、(例えば、ポンプ部19の駆動時に)発熱する発熱部である。そこで、以下の説明においては、適宜、モータ部20と回路部21を併せて発熱部22として説明する。すなわち、ポンプ部19と発熱部22とが、パージポンプ13の構成要素であるとする。なお、パージポンプ13についてはさらに後述する。
【0043】
パージ弁14は、パージ通路12において、パージポンプ13の下流側(パージガスの流れ方向の下流側)、すなわち、パージポンプ13と吸気通路IPとの間に設けられている。パージ弁14の閉弁時(弁が閉まった状態のとき)には、パージ通路12のパージガスは、パージ弁14によって停止され、吸気通路IPに向かって流れない。一方、パージ弁14の開弁時(弁が開いた状態のとき)には、パージガスは吸気通路IPに向かって流入する。
【0044】
大気通路15は、その一端が大気に開放され、その他端がキャニスタ11に接続されており、キャニスタ11を大気に連通させている。そして、大気通路15には、大気から取り込まれた空気が流れる。
【0045】
圧力検出部16は、パージ通路12に配置されており、ポンプ部19の前後の差圧(ポンプ部19に対して上流側と下流側のパージ通路12内の圧力差)を検出する。
【0046】
制御部17は、車両に搭載されたECU(不図示)の一部であり、ECUの他の部分(例えばエンジンENを制御する部分)と一体的に配置されている。なお、制御部17は、ECUの他の部分と別に配置されていてもよい。制御部17は、CPUとROM,RAM等のメモリを含む。制御部17は、メモリに予め格納されているプログラムに応じて、蒸発燃料処理装置1を制御する。
【0047】
例えば、制御部17は、パージポンプ13やパージ弁14を制御する。なお、制御部17は、パージ弁14を制御する際には、例えばデューティ制御を行う。すなわち、制御部17は、例えばパージ弁14に出力する信号のデューティ比を調整することによって、パージ弁14の開弁時間を調整する。また、制御部17は、圧力検出部16からポンプ部19の前後の差圧の検出結果を取得する。
【0048】
また、制御部17は、圧力検出部16により検出されるポンプ部19の前後の差圧をもとにパージ濃度(パージガスに含まれる蒸発燃料の濃度)を推定するパージ濃度推定部17aを備えている。
【0049】
このような構成の蒸発燃料処理装置1において、エンジンENの運転中にパージ条件が成立すると、制御部17は、パージポンプ13とパージ弁14を制御してパージ制御を実行する。「パージ制御」とは、パージガスをキャニスタ11からパージ通路12を介して吸気通路IPに導入する制御である。なお、このようにパージ制御が実行されるときには、大気から大気通路15を介して空気がキャニスタ11に流入する。
【0050】
そして、パージ制御が実行されている間、エンジンENには、吸気通路IPに吸入される空気と、燃料タンクFTからインジェクタ(不図示)を介して噴射される燃料と、パージ制御により吸気通路IPに供給されるパージガスと、が供給される。そして、制御部17は、インジェクタの噴射時間とパージ弁14のデューティ比を調整することによって、エンジンENの空燃比(A/F)を最適な空燃比(例えば理想空燃比)に調整する。
【0051】
<パージポンプについて>
次に、パージポンプ13について説明する。
【0052】
まず、パージポンプ13について、
図18に示すように、第1比較例として、パージポンプ13をパージ通路12に配置した場合を想定する。この場合、パージポンプ13のポンプ部19にはパージガスが流れるので、例えば圧力検出部16により検出されるポンプ部19の前後の差圧をもとにパージ濃度を推定できる。
【0053】
しかし、パージポンプ13はキャニスタ11の下流側に配置されるため、パージポンプ13の発熱部22(モータ部20と回路部21)における発熱を利用してキャニスタ11内を加熱してキャニスタ11における蒸発燃料の脱離を促進させることができない。なお、「キャニスタ11における蒸発燃料の脱離」とは、キャニスタ11において活性炭18に吸着された蒸発燃料を活性炭18から脱離させることである。
【0054】
また、
図19に示すように、第2比較例として、パージポンプ13を大気通路15に配置した場合を想定する。この場合、パージポンプ13の発熱部22における発熱を利用してキャニスタ11内を加熱してキャニスタ11における蒸発燃料の脱離を促進させることができる。すなわち、大気通路15を流れる空気(パージエア)と発熱部22との間で熱交換を行って、大気通路15からキャニスタ11へと流れる空気を加熱して、キャニスタ11内を加熱してキャニスタ11における蒸発燃料の脱離を促進させることができる。
【0055】
しかし、パージポンプ13のポンプ部19には空気が流れるので、ポンプ部19の前後の差圧をもとにパージ濃度を推定することは困難である。また、パージポンプ13の作動時に燃料タンクFT内が過度に加圧されることを防止して燃料タンクFTを保護するために、キャニスタ11と燃料タンクFTとの間において、燃料タンクFT内が加圧されることを防止するタンク加圧防止バルブTVを設ける必要がある。
【0056】
これに対し、本実施形態では、
図1に示すように、パージ通路12と大気通路15とが並ぶ部位において、パージポンプ13がパージ通路12と大気通路15の両方に亘って配置されている。具体的には、パージポンプ13は、以下の実施例で説明するように配置されている。
【0057】
(第1実施例)
本実施例では、
図2に示すように、パージポンプ13のポンプ部19は、パージ通路12に配置されている。具体的には、ポンプ部19は、パージ通路12におけるパージ弁14の上流側(パージガスの流れ方向の上流側)に配置されている。
【0058】
これにより、キャニスタ11から流出してパージ通路12を流れるパージガス(
図2にて「Air+HC」と表記)は、ポンプ部19の内部を流れてパージ弁14の方向へ流れる。このようにしてポンプ部19にはパージガスが流れるので、パージ濃度推定部17aは、圧力検出部16により検出されるポンプ部19の前後の差圧をもとにパージ濃度を推定できる。特に、パージポンプ13は、パージ弁14から離れたキャニスタ11に近い位置に配置されているので、パージ弁14の脈動の影響を受け難い。そのため、パージ濃度を推定する精度の向上が図られている。
【0059】
また、パージポンプ13の発熱部22の少なくとも一部は、大気通路15内に露出するように配置されている。
図2に示す例では、モータ部20の一部と回路部21の全体が、大気通路15内に配置されている。
【0060】
これにより、大気通路15内を流れる空気(
図2にて「Air」と表記)は、発熱部22の外壁22a(ハウジング)に接触して加熱される。すなわち、大気通路15を流れる空気と発熱部22との間で熱交換が行われ、大気通路15を流れる空気により発熱部22が冷却されるとともに、発熱部22からの放熱により大気通路15からキャニスタ11に流入する空気が加熱される。そのため、キャニスタ11内が加熱されて、キャニスタ11における蒸発燃料の脱離が促進される。また、発熱部22が冷却されるので、パージポンプ13に対する熱負荷を低減でき、パージポンプ13の信頼性(例えば、軸受などの構成部品の寿命)の向上を図ることができる。
【0061】
なお、
図2および後述する
図3〜
図7、
図12において、説明の便宜上、加熱状態となっている部分(発熱部22や加熱された空気)には、ドットのハッチングを付している。
【0062】
次に、第2実施例〜第8実施例について説明するが、各実施例においては、第1実施例と異なる点を中心に説明する。
【0063】
(第2実施例)
本実施例では、
図3に示すように、パージポンプ13の発熱部22の外壁22aの少なくとも一部に、ヒートシンク23(放熱部材)が設けられている。
図3に示す例では、大気通路15内において、回路部21の外壁にヒートシンク23が設けられている。
【0064】
これにより、大気通路15を流れる空気は、発熱部22の外壁22aとヒートシンク23に接触して加熱される。そして、このとき、ヒートシンク23により発熱部22からの放熱が促進されるので、大気通路15を流れる空気と発熱部22との間の熱交換が促進される。そのため、発熱部22の冷却と、大気通路15からキャニスタ11に流入する空気の加熱とが促進される。
【0065】
(第3実施例)
本実施例では、
図4に示すように、パージポンプ13の発熱部22の一部が、キャニスタ11の活性炭18(詳しくは、活性炭18における大気通路15側の部位)に接触している。
図4に示す例では、回路部21の外壁の一部が、活性炭18に接触している。
【0066】
これにより、活性炭18が発熱部22により直接的に加熱されるので、キャニスタ11における蒸発燃料の脱離がさらに促進される。
【0067】
(第4実施例)
本実施例では、
図5に示すように、発熱部22の外壁22a(ヒートシンク23)が、熱伝達部材24を介して、キャニスタ11の活性炭18に接触している。熱伝達部材24は、活性炭18の吸着性能や空気の流れを阻害しないように、通気性を持つ部材であり、例えば、多数の穴を持つヒートシンクである。
【0068】
これにより、活性炭18が熱伝達部材24を介して発熱部22により加熱されるので、キャニスタ11における蒸発燃料の脱離がさらに促進される。
【0069】
(第5実施例)
本実施例では、
図6に示すように、空気がパージポンプ13の発熱部22の内部を流れる。すなわち、発熱部22は、当該発熱部22の内部に大気通路15を流れる空気が通過する(流れる)空気通過用の流路22bを備えている。
図6に示す例では、回路部21に流路22bが設けられている。
【0070】
これにより、大気通路15を流れる空気と発熱部22との間の熱交換の効率を向上させることができる。また、空気の流れが発熱部22により阻害されることが抑制されるので、大気通路15における流路抵抗の増大が抑制される。
【0071】
(第6実施例)
本実施例では、空気がパージポンプ13の発熱部22の内部を流れるが、回路部21内の回路25が保護されている。具体的には、
図7に示すように、回路部21内において、回路基板26上の回路25が保護材27で覆われている。
【0072】
これにより、空気(特に水を含んだ空気)が回路25に直接接触することで回路25が錆びることを抑制できる。そのため、回路25が保護される。
【0073】
(第7実施例)
前記の実施例のように発熱部22が流路22bを備えている場合には、給油時などに燃料タンクFTの圧抜きを行うときに、燃料タンクFTからキャニスタ11内に蒸発燃料が流入する。そのため、蒸発燃料(パージガス)がキャニスタ11から大気通路15を介して、発熱部22の流路22bに流れ込むおそれがある。そうすると、発熱部22の内部において、蒸発燃料による影響として、着火したり、劣化が進んだりすることが懸念される。
【0074】
そこで、本実施例では、
図8に示すように、蒸発燃料処理装置1は、キャニスタ11に接続する通路30(別通路)を有する。そして、大気通路15におけるキャニスタ11と発熱部22との間に一方弁28(第1の一方弁)が設けられている。この一方弁28は、発熱部22からキャニスタ11に流入する一方向のみ流体(空気)を流すことができる弁である。また、通路30に一方弁29(第2の一方弁)が設けられている。この一方弁29は、キャニスタ11から流出する一方向のみ流体(蒸発燃料)を流すことができる弁である。
【0075】
このようにして、車両走行時などパージ制御を行うときには、
図9に示すように、大気通路15を流れる空気は、発熱部22の内部(流路22b)を流れて、一方弁28を介して、キャニスタ11に流入する。また、給油時など燃料タンクFTの圧抜きを行うときには、
図10に示すように、パージガスは、キャニスタ11から一方弁29を介して通路30へ流れる一方で、一方弁28により大気通路15を介して発熱部22の内部(流路22b)には流れない。このように一方弁28と一方弁29は、キャニスタ11から通路30へパージガスを流す一方で、キャニスタ11から大気通路15へパージガスを流さないようにする通路調整部の一例である。
【0076】
なお、通路30は、大気通路15における発熱部22よりもキャニスタ11側の部分にて大気通路15から分岐するように形成されていてもよい。また、通路調整部の一例として、一方弁28と一方弁29の代わりに、キャニスタ11に連通させる通路を大気通路15または通路30に切り替える通路切替弁を用いてもよい。
【0077】
(第8実施例)
本実施例では、
図11に示すように、パージポンプ13(ポンプ部19と発熱部22)とキャニスタ11は、一体に設けられている。具体的には、キャニスタ11のケース31内に、パージポンプ13が設けられている。これにより、パージポンプ13の設置を容易に行うことができる。また、キャニスタ11がパージポンプ13の駆動時の振動を抑制することができる。なお、キャニスタ11のケース31とパージポンプ13のハウジング32(ケース)は、同一の材料によって完全に一体成形されていてもよい。
【0078】
また、
図11に示す例では、ポンプ部19は、パージ通路12に接続するように配置されているが、これに限定されず、例えばケース31の内側まで入り込むように形成されたパージ通路12に配置されていてもよい。
【0079】
そして、キャニスタ11のケース31の一部は、発熱部22の外壁22aで構成されている。これにより、パージポンプ13の設置に伴う接続部品を少なく抑えることができ、コスト低減を図ることができる。
【0080】
また、変形例として、
図12に示すように、パージポンプ13は、キャニスタ11内に嵌合されるようにして一体化されていてもよい。具体的には、パージポンプ13は、嵌合手段33(例えば、スナップフット)によりキャニスタ11に嵌合されている。なお、キャニスタ11内におけるパージポンプ13の設置部にはシール手段34(例えば、Oリング)を備えておく。
【0081】
このようにして、パージポンプ13はキャニスタ11に一体化されているので、パージポンプ13をパージ通路12や大気通路15に配置するための部品(例えば、ブラケットや両側クイックコネクタ付きの配管)を廃止して、コストを低減できる。
【0082】
また、発熱部22を、最も加熱させたい活性炭18における大気通路15側の部位に近づけることが可能な為、大気通路15への放熱が減り(キャニスタ11への熱伝効率が向上し)、よりキャニスタ11における蒸発燃料の脱離が促進する。
【0083】
また、パージポンプ13を嵌合手段33によりキャニスタ11内に嵌合させればよいので、容易にパージポンプ13の交換が可能な為、故障部品交換時のサービス性向上や、異なる仕様組合せが必要となった場合にフレキシブルな対応(仕様変更)が可能となる。
【0084】
<発熱部における急加熱制御について>
ところで、パージ制御を行うときに、発熱部22を急加熱することにより大気通路15からキャニスタ11へ流入する空気を急加熱してキャニスタ11内を急加熱すれば、キャニスタ11における蒸発燃料の脱離が促進される。そのため、キャニスタ11における蒸発燃料の脱離を短時間で完了させることができる。
【0085】
そこで、本実施形態の蒸発燃料処理装置1は、前記の第1実施例〜第8実施例に示したようにパージポンプ13を配置して発熱部22により大気通路15を流れる空気を加熱する場合に、さらに、発熱部22を急加熱する急加熱制御部17bを有していてもよい。なお、「急加熱する」とは、例えば通常エンジンENが駆動した際に用いられる熱エネルギー以上の熱エネルギーで加熱するということである。
【0086】
そして、このように蒸発燃料処理装置1が急加熱制御部17bを有する場合に、制御部17は、例えば
図13に示すフローチャートに基づく制御を行う。
図13に示すように、制御部17は、エンジンENの駆動を開始して(ステップS1)、パージポンプ13を駆動させた(ステップS2)後、パージ制御条件が成立してパージ制御の実行が許可されているか否かを判断する(ステップS3)。そして、制御部17は、パージ制御条件が成立してパージ制御の実行が許可されている場合(ステップS3:YES)には、パージ弁14を開弁して(開弁状態にして)(ステップS4)、パージ制御を行う。
【0087】
そして、本実施形態では、制御部17は、パージ制御を行う条件が成立して実際にパージ制御を行うときに、急加熱制御部17bにより発熱部22を急加熱する急加熱制御を実施する(ステップS5)。これにより、大気通路15からキャニスタ11へ流入する空気が急加熱されてキャニスタ11内が急加熱されるので、キャニスタ11における蒸発燃料の脱離が促進される。そのため、キャニスタ11における蒸発燃料の脱離を短時間で完了させることができる。
【0088】
なお、その後、制御部17は、パージ制御の停止が許可される(ステップS6:YES)と、パージ弁14を閉弁して(閉弁状態にして)(ステップS7)、急加熱制御部17bにより発熱部22を急加熱させることを停止した(ステップS8)後に、ステップS3の処理に戻る。また、制御部17は、ステップS3において、パージ制御の実行が許可されない場合(ステップS3:NO)には、エンジンENの駆動を停止した(ステップS9)後に、パージポンプ13を停止させる(ステップS10)。
【0089】
ここで、ステップS5において急加熱制御部17bにより発熱部22を急加熱させる具体的な手法について説明する。
【0090】
まず、第1の手法として、急加熱制御部17bは、発熱部22を構成するモータ部20への通電を制御して発熱部22を急加熱することが考えられる。
【0091】
そこで、例えば、急加熱制御部17bは、
図14(A)に示す通常運転時の電圧波形とは異なり、
図14(B)に示すようにDuty信号による駆動回路のON−OFFを繰り返して電圧を上下させることにより、発熱部22を急加熱する。また、例えば、急加熱制御部17bは、
図15(A)に示す通常運転時の電圧波形とは異なり、
図15(B)に示すようにモータ部20へ通電する電気進角を変化させ電流を増加させることにより、発熱部22を急加熱する。なお、
図14と
図15の電圧波形においては、縦軸を電圧とし、横軸を時間としている。また、例えば、急加熱制御部17bは、モータ部20のモータが惰性回転しているときに、瞬間的にモータが停止する方向への通電とモータが回転する方向への通電を繰り返し行うことで発熱部22を急加熱する。
【0092】
また、第2の手法として、急加熱制御部17bは、モータ部20内に設けられた軸受などの摺動部品が摺動する際に生じる摩擦力(摩擦抵抗)を増加させることにより、要求トルクを増加させ、モータに流す電流を増加させる。これにより、発熱部22を急加熱することも考えられる。例えば、
図16に示すように、ソレノイドコイル35に通電する。そして、これにより、コア36が下方に移動しようとして、スラストピン37(モータ軸)とこれに対応する部品との接触面圧が上がる。そのため、スラストピン37に取り付けられた摺動部品の摩擦抵抗が発生するので、モータ20aの電流値が上昇して、急加熱が実施される。
【0093】
また、制御部17は、変形例として
図17に示すフローチャートに基づく制御を行ってもよい。
図17に示すように、
図13と異なる点として、制御部17は、パージ濃度が所定値(一定)以上である場合(ステップS15:YES)に、急加熱制御部17bにより発熱部22を急加熱させる(ステップS16)。一方、制御部17は、パージ濃度が所定値未満である場合(ステップS15:NO)に、急加熱制御部17bにより発熱部22を急加熱させない(ステップS17)。このようにして、変形例においては、制御部17は、パージ通路12内のパージ濃度が所定値以上であることを条件として、急加熱制御部17bによる急加熱制御を実施させる。これにより、パージ濃度が高い場合には、発熱部22が急加熱されるので、キャニスタ11における蒸発燃料の脱離が促進される。また、急加熱制御の実施頻度を低減させることもできる。
【0094】
なお、その後、制御部17は、エンジンENが停止した(ステップS18:YES)後、パージポンプ13を停止させる(ステップS19)。また、制御部17は、パージ制御の実行が許可されない場合(ステップS13:NO)には、パージ弁14を閉弁する(ステップS20)。
【0095】
<本実施形態の作用効果について>
以上のように本実施形態の蒸発燃料処理装置1において、パージポンプ13の発熱部22の少なくとも一部は、大気通路15に露出するように配置されている。また、パージポンプ13のポンプ部19は、パージ通路12に配置され、または、パージ通路12に接続するように配置されている。
【0096】
これにより、発熱部22の冷却と、キャニスタ11に流入する空気の加熱によるキャニスタ11における蒸発燃料の脱離の促進と、を行うことができる。また、ポンプ部19にはパージガスが流れるので、ポンプ部19の前後の差圧をもとにパージ濃度の推定を行うことができる。
【0097】
また、パージポンプ13(ポンプ部19と発熱部22)とキャニスタ11が一体に設けられている。これにより、パージポンプ13の設置を容易に行うことができる。また、キャニスタ11がパージポンプ13の駆動時の振動を抑制することができる。
【0098】
また、キャニスタ11のケース31内にパージポンプ13(ポンプ部19と発熱部22)が設けられていてもよい。これにより、パージポンプ13の設置に伴う接続部品を少なく抑えることができ、コスト低減を図ることができる。
【0099】
また、キャニスタ11のケース31の一部は、発熱部22の外壁22aで構成されていてもよい。これにより、大気通路15を流れる空気と発熱部22との間の熱交換の効率を向上させることができる。また、部品点数の削減を図ることができる。
【0100】
また、発熱部22の外壁22aの少なくとも一部にヒートシンク23が設けられていてもよい。これにより、ヒートシンク23により発熱部22からの放熱が促進されるので、発熱部22の冷却と、大気通路15からキャニスタ11に流入する空気の加熱とが促進される。
【0101】
また、発熱部22は、当該発熱部22の内部に大気通路15を流れる空気が通過する流路22bを備えていてもよい。これにより、大気通路15を流れる空気と発熱部22との熱交換の効率を向上させることができる。また、空気の流れが発熱部22により阻害されて大気通路15内の流路抵抗が増大することを抑制できる。
【0102】
また、発熱部22の内部の回路25が保護材27で覆われていてもよい。これにより、回路25に空気が直接接触しないので、回路25を保護することができる。
【0103】
また、蒸発燃料処理装置1は、キャニスタ11から通路30へパージガスを流す一方で、キャニスタ11から大気通路15へパージガスを流さないようにする通路調整部として、一方弁28と一方弁29を有していてもよい。
【0104】
これにより、給油時などの燃料タンクFTの圧抜き時にキャニスタ11からパージガスが発熱部22に流れないようにして、パージガスに含まれる蒸発燃料による発熱部22への影響(着火や劣化)を防止できる。
【0105】
また、蒸発燃料処理装置1は、パージ制御条件が成立したときに発熱部22を急加熱する急加熱制御部17bを有してもよい。これにより、大気通路15からキャニスタ11へ流入する空気が急加熱されてキャニスタ11内が急加熱されるので、キャニスタ11における蒸発燃料の脱離が促進される。そのため、キャニスタ11における蒸発燃料の脱離を短時間で完了させることができる。したがって、アイドリングストップ車やハイブリット車などの車両では、1回のエンジンENの駆動時間が短いためパージ制御が行われる時間が短くなるが、キャニスタ11内の活性炭18に吸着されている蒸発燃料を素早く脱離させることができる。
【0106】
そこで、急加熱制御部17bは、パージ通路12内のパージ濃度が所定値以上であることを条件として、急加熱制御を実施してもよい。
【0107】
これにより、キャニスタ11に吸着している蒸発燃料が多い状況に限って急加熱制御を行うので、短時間でキャニスタ11に吸着している蒸発燃料を脱離させることができるとともに、急加熱制御の実施頻度を低減させることもできる。
【0108】
また、キャニスタ11は、大気通路15との接続部である大気ポートからパージ通路12との接続部であるパージポートまでのキャニスタ11内の流体の流れがU字となる構造に形成されている。これにより、パージポンプ13の配置が容易となる。
【0109】
また、蒸発燃料処理装置1は、ポンプ部19の前後の差圧をもとにパージ濃度を推定するパージ濃度推定部17aを有する。これにより、大気通路15を流れる空気を加熱しつつ、パージ通路12を流れるパージガスのパージ濃度を推定できる。
【0110】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【0111】
例えば、ポンプ部19と発熱部22は、一体ではなく、別個に設けられていてもよい。また、例えば、パージ濃度推定部17aは、制御部17とは別に設けられていてもよい。