(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1出口開口部と前記第2入口開口部及び第3入口開口部との相対変位に伴って、前記各開口比率がほぼ線形状態で変化するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3記載のいずれかの切換バルブ。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されるレーザ加工装置が知られている。このレーザ加工装置は付加加工装置に属するもので、適宜テーブル上にレーザ光を照射するレーザ光照射ヘッドを備え、このレーザ光照射ヘッドから照射されるレーザ光の集光部(焦点領域)に、付加材料となる粉体をキャリアガスとともに供給するように構成されている。レーザ光の集光部に粉体が供給されると、レーザ光のエネルギーにより粉体が加熱、溶融されて堆積される。この加工現象を一般的に「付加加工」と言う。
【0003】
そして、前記レーザ光照射ヘッドの近傍には、前記粉体を含んだキャリアガスを吐出する供給ノズルが配設されており、この粉体は、当該粉体及びキャリアガスが貯留される適宜供給源に一方が接続され、他方が前記供給ノズルに接続された供給路を介して、前記供給ノズルから前記レーザ光の集光部に供給される。
【0004】
また、レーザ光照射ヘッド及びテーブルは、少なくともその一方が適宜送り装置により駆動されて、当該レーザ光照射ヘッド及びテーブルが三次元空間内で相対的に移動し、この相対的な移動によって所定形状の堆積物が形成される。尚、前記供給ノズルは前記レーザ光照射ヘッドとともに前記テーブルに対して相対的に移動する。
【0005】
ところで、前記送り装置によって実現される、前記レーザ光照射ヘッド及び供給ノズルと前記テーブルとの相対的な移動(相対移動)は、移動を開始する際には停止状態から加速された後、定速となり、移動を停止する際には定速状態から減速されて、停止される。また、前記相対移動の移動方向は堆積物の形成に応じて変更され、移動方向が変更される際には、その変更前に定速状態から減速され、変更後に加速される場合がある。
【0006】
そして、供給ノズルの相対的な移動速度(以下、単に「移動速度」という)がこのように変化すると、供給ノズルから吐出される粉体の吐出レートが一定である場合には、テーブル上に設定された加工位置(即ち、粉体の供給位置であり、この供給位置は供給ノズルの移動によって刻々と変化する)への当該粉体の供給レート(言い換えれば、供給量)が変化することになり、このため、堆積物の形状を予定した形状に形成することができないという問題を生じる。
【0007】
そこで、従来、供給ノズルの移動速度が変化する場合を考慮し、当該移動速度と粉体の供給レートとの比率が一定となるように、供給ノズルの移動速度に応じて、粉体の供給レートを調整する試みがなされている。そして、粉体の供給レートを調整する方法として、前記供給ノズルの近傍において、粉体の供給路に所謂3方向弁(3方向切換バルブ)を設けて、粉体を含むキャリアガスの流れを供給ノズルに向かう流れと前記供給源に還流される流れとの2方向に分流するとともに、3方向弁の各流路の開度を調整することで、供給ノズルに向かう流量と供給源に戻る流量とを調整する、即ち、供給ノズルに供給される粉体の供給レート(供給量)を調整する方法が提案されている。尚、このように、3方向弁を供給ノズルの近傍に設けるのは、3方向弁を供給ノズルから遠くに設けると、供給ノズルへの供給レートの変動に応答遅れを生じるため、供給ノズルの移動速度に合わせた供給レートの適切な調整ができないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者等が鋭意研究したところによると、供給ノズルの移動速度と粉体の供給レートとの比率がほぼ一定となるように制御するには、前記3方向弁により、粉体の供給レート(供給量)を大きな脈動を伴うことなく滑らかに変化させる必要があり、より好ましくは、粉体の供給量を略線形状態で変化させる必要がある。これは、前記3方向弁の操作によって、粉体の供給量が大きく脈動したり、非線形に変化すると、供給ノズルの移動速度に合わせた粉体供給量の適切な調整ができないからである。
【0010】
ところが、従来、粉体を含むキャリアガスに適用可能な汎用の3方向弁は存在しておらず、また、付加加工装置向けに開発された専用の3方向弁についても、粉体の供給量を大きな脈動を伴うことなく滑らかに調整することができるものや、粉体の供給量をほぼ線形状態で変化させることができるものは存在しなかった。
【0011】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、粉体を含むキャリアガスの流れを2方向の流路に切り換えることが可能であり、且つ各流路における流量を滑らかに調整することができ、好ましくはほぼ線形状態で調整することが可能な切換バルブの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明は、粉体をキャリアガスによって供給する供給路に設けられ、該粉体を含むキャリアガスの流れを2方向に切り換える切換バルブであって、
予圧が付与された状態で摺接する第1本体及び第2本体と、
前記第1本体と第2本体とを相対的に摺動させる駆動機構とを備えて構成され、
前記第1本体は、前記供給路に接続される第1入口開口部と、前記第2本体との摺接面に開口する第1出口開口部と、前記第1入口開口部と第1出口開口部とを連通させる第1流路とを備え、
前記第2本体は、前記第1本体との摺接面に相互に隣接して開口し、且つ前記摺動によって前記第1出口開口部と重なり合うことが可能な位置に形成された第2入口開口部及び第3入口開口部と、前記第2入口開口部に対応する第2出口開口部と、前記第3入口開口部に対応する第3出口開口部と、前記第2入口開口部と前記第2出口開口部とを連通させる第2流路と、前記第3入口開口部と前記第3出口開口部とを連通させる第3流路とを備えてなり、
更に、前記第2本体の前記第2入口開口部及び第3入口開口部は長手方向が隣接方向、及び前記第1出口開口部との相対移動方向に対して交差するように形成された長穴から構成され、
前記駆動機構は、前記第1本体と第2本体とを相対的に摺動させることにより、前記第2入口開口部の前記第1出口開口部に対する開口比率と、第3入口開口部の前記第1出口開口部に対する開口比率を変化させることができるように構成された切換バルブに係る。
【0013】
この切換バルブによれば、前記駆動機構によって前記第1本体と第2本体とが相対的に摺動し、この摺動によって第1本体に形成された第1出口開口部と、第2本体に形成された第2入口開口部及び第3入口開口部とが重なり合った状態になるとともに、前記第1本体と第2本体との相対的な位置関係によって、第1出口開口部と第2入口開口部、及び第1出口開口部と第3入口開口部との重なり度合いがそれぞれ変化する。言い換えれば、第2入口開口部の第1出口開口部に対する開口比率、及び第3入口開口部の第1出口開口部に対する開口比率がそれぞれ変化する。
【0014】
第1本体の第1入口開口部は粉体を含むキャリアガス(以下、「流体」という)の供給路に接続しており、この供給路内の流体が第1入口開口部を通して第1流路内に流入し、更に、第1出口開口部と第2入口開口部とが重なり合った開口部を通して第1流路内の流体が第2流路内に流入し、また、第1出口開口部と第3入口開口部とが重なり合った開口部を通して第1流路内の流体が第3流路内に流入する。そして、第2流路内に流入した流体は第2出口開口部から吐出され、第3流路内に流入した流体は第3出口開口部から吐出される。
【0015】
本発明に係る切換バルブでは、相互に隣接する第2入口開口部及び第3入口開口部が長穴から構成され、それぞれの長手方向が隣接方向、及び第1出口開口部との相対移動方向に対して交差するように設けられている。したがって、第2入口開口部及び第3入口開口部をその長手方向が相互に平行になるように設けることで、これらの隣接する縁部間の間隔を可及的に小さくすることができ、このようにすることで、第1流路から第2流路及び第3流路への粉体の振り分けを滞留が生じることなくスムーズに行うことができ、結果、粉体の供給に脈動が生じるのを防止することができる。
【0016】
そして、前記駆動機構により前記第1本体と第2本体とを相対的に摺動させて、第2入口開口部の第1出口開口部に対する開口比率と、第3入口開口部の第1出口開口部に対する開口比率とを適宜調整することにより、第1流路から第2流路に流入する粉体の流量、及び第1流路から第3流路に流入する粉体の流量を適宜所望の流量に調整することができる。
【0017】
斯くして、この切換バルブを上述した従来の3方向切換バルブに代えて前記付加加工装置に適用し、前記供給ノズルに接続する供給路に第2出口開口部を接続させるとともに、前記供給源に接続する還流路に第3出口開口部を接続させることにより、供給ノズルに供給される粉体の流量を大きな脈動を伴うことなく滑らかに調整することができる。
【0018】
尚、第1本体及び第2本体は予圧が付与された状態で摺接するように構成されているので、この予圧を適宜調整することにより、第1本体と第2本体との摺接面から流体が流出するのを適切の防止することができる。
【0019】
上記切換バルブにおいて、前記第2
入口開口部及び第3
入口開口部の各周縁の内周面は、それぞれ内側に向かう傾斜面となっているのが好ましい。上述したように、第2
入口開口部及び第3
入口開口部は、隣接する縁部間の間隔を可及的に小さくすることで、第1流路から第2流路及び第3流路への粉体の振り分けを滞留が生じることなくスムーズに行うことができるが、第2
入口開口部及び第3
入口開口部を相互に接近させるのに合わせて、第2流路及び第3流路を相互に接近させると、第2流路及び第3流路を隔てる壁が薄くなって強度上の問題を生じる。そこで、第2
入口開口部及び第3
入口開口部の各周縁の内周面は、それぞれ内側に向かう傾斜面とすることで、第2
入口開口部及び第3
入口開口部を相互に可及的に接近させながらも、第2流路及び第3流路については、その隔壁の厚さが強度上の問題を生じない程度の厚さとなるように、両者を離隔させることができる。また、傾斜面とすることで、第1流路から第2流路及び第3流路への粉体の滑らかな流動を実現することができる。
【0020】
また、上記切換バルブにおいて、前記第1本体及び第2本体の各摺接部は、一方が他方よりも低い硬度となっているのが好ましい。このようにすることで、第1本体と第2本体との摺接面に粉体が噛み込んだ場合に、硬度の低い方が粉体により塑性変形し、この塑性変形によって第1本体と第2本体とは隙間の無い適切な摺接状態が維持される。この意味で、低い方の硬度は、粉体の硬度よりも低い硬度であることが好ましい。
【0021】
また、上記切換バルブでは、前記第1出口開口部と前記第2入口開口部及び第3入口開口部との相対変位に伴って、前記各開口比率がほぼ線形状態で変化するように構成されているのが好ましい。このようにすることで、上記の如く、この切換バルブを付加加工装置に適用した場合に、供給ノズルに供給される粉体の流量を、供給ノズルの移動速度の変動に合わせて、供給ノズルの移動速度と粉体の供給レートとの比率がほぼ一定となるように、適切に調整することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る切換バルブによれば、第1流路から第2流路及び第3流路の2つの流路に分流する際に、粉体の滞留を生じることなくスムーズに分流させることができ、この結果、粉体の供給に脈動が生じるのを防止することができる。斯くして、第1流路から第2流路に流入する粉体の流量、及び第1流路から第3流路に流入する粉体の流量を適宜所望の流量に滑らかに調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本例の付加加工装置1はレーザ加工装置であり、レーザ光照射ヘッド2、加工テーブルT、供給ノズル3、粉体タンク4、ガスタンク5、セパレータ9及び切換バルブ10などを備えて構成される。
【0025】
前記レーザ光照射ヘッド2は、図示しないレーザ発振器に接続されており、このレーザ発振器によって生成され、適宜伝送路を介して伝送されたレーザ光を前記加工テーブルTに向けて照射し、当該加工テーブルT上に集光させる。
【0026】
また、前記供給ノズル3は、前記レーザ光照射ヘッド2から照射されたレーザ光が集光される前記加工テーブルT上の集光部(焦点領域)に、付加材料となる粉体を含んだキャリアガスを吐出する。斯くして、レーザ光の焦点領域に粉体が供給されると、当該粉体がレーザ光のエネルギにより加熱、溶融されて堆積され、所望の形状が形成される、即ち、付加加工される。
【0027】
尚、前記レーザ光照射ヘッド2と加工テーブルTとは、図示しない数値制御装置により制御される適宜送り装置によって少なくともその一方が駆動され、三次元空間内で相対的に移動する。数値制御される送り装置には従来公知の適宜送り機構を用いることができ、例えば、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構を用いることができる。また、供給ノズル3は前記レーザ光照射ヘッド2に付設され、このレーザ光照射ヘッド2とともに移動する。
【0028】
前記粉体タンク4には、本例のレーザ加工装置1で用いられる適宜金属粉体が貯留され、また、前記ガスタンク5には、金属粉体を流通させるためのキャリアガスであるアルゴンガスが貯留されている。尚、本例では、金属粉体を用いるが、この金属粉体以外にも付加加工の目的に合わせて適宜粉体を用いることができる。また、キャリアガスについても、不活性なガスであれば特に制限はなく、アルゴンガスの他に、例えば窒素ガス、ヘリウムガス、二酸化炭素ガスなどを用いることができ、或いはアルゴンガスを含めたこれらの混合ガスを用いることができる。
【0029】
前記粉体タンク4には供給管6aが接続され、また、前記ガスタンク5には供給管6bが接続されており、これら供給管6a及び6bは前記供給ノズル10に接続された供給管6に接続されている。斯くして、粉体タンク4から供給管6aを通じて供給される金属粉体(以下、単に「粉体」という)は、ガスタンク5から供給管6bを通じて供給されるキャリアガスと混合され、混合された粉体を含むキャリアガス(以下、「流体」という)が供給管6を通じて切換バルブ10に流通される。
【0030】
前記切換バルブ10は、前記供給ノズル3の手前であるその近傍において、前記供給管6に介在するように設けられ、供給管6を通じて流通した流体を、供給ノズル3に通じる供給管7と、前記粉体タンク4に通じる還流管8とに振り分ける。また、前記セパレータ9は還流管8に介在するように設けられ、前記流体をキャリアガスと粉体に分離し、分離した粉体を粉体タンク4に接続した還流管8aを通じて当該粉体タンク4に還流させ、また、分離したキャリアガスをガスタンク5に接続した還流管8bを通じて当該ガスタンク5に還流させる。
【0031】
図2に示すように、切換バルブ10は、架台11、この架台11に配設されたサーボモータ12、第1本体16及び第2本体25などを備えて構成される。そして、
図4に示すように、第1本体16は、下方に向かって順次小径となる、大径部17a、中径部17b及び小径部17cを有する段付き状の軸状部材17と、この軸状部材17の中径部17bに外嵌されたリング部材19とから構成される。軸状部材17の小径部17cは回転軸として機能し、その下端部にはプーリ15が設けられている。このプーリ15と、前記サーボモータ12の出力軸に設けられたプーリ13には、駆動ベルト14が掛け回されており、この駆動ベルト14を介してサーボモータ12の動力が軸状部材17に伝達され、当該軸状部材17及びリング部材19が前記小径部17cを中心に回転する。尚、サーボモータ12は前記数値制御装置(図示せず)によって制御されており、前記軸状部材17及びリング部材19はその回転角度位置が前記数値制御装置(図示せず)によって制御される。
【0032】
また、軸状部材17の小径部17cには、下端部にフランジ部23aを有するスリーブ23が外嵌され、更にこのスリーブ23には環状をした前記第2本体25が外嵌されている。そして、スリーブ23のフランジ部23aと第2本体25との間にはバネ体24が設けられ、また、スリーブ23は軸状部材17の小径部17cに係合されたスナップリング35によって下方への移動が制止されており、この結果、第2本体25はバネ体14の付勢力によってリング部材19側に付勢され、当該第2本体25の上面とリング部材19の下面とが摺接するようになっている。尚、第2本体25は架台11に固設されている。また、リング部材19は第2本体25よりも低い硬度の材料から構成されている。
【0033】
第1本体16を構成する軸状部材17及びリング部材19には、それぞれを上下に貫通するように第1流路となる円孔18,20が穿設されている。そして、軸状部材17及びリング部材19の接合部には円孔18,20を囲むようにシール21が設けられている。また、軸状部材17の上面に開口する円孔18の開口部(第1入口開口部)には、供給管6が接続されたジョイント22が設けられ、このジョイント22を介して前記第1流路と供給管6の流路とが連通されている。また、リング部材19の下面に開口する円孔20の開口部(第1出口開口部)の内周面は、内側に向かう傾斜面となったテーパ状の面取りが施されている。
【0034】
前記第2本体25には、第2流路となる貫通穴27、及び第3流路となる貫通穴30がそれぞれ上下に貫通するように形成されており、その上部側及び下部側はそれぞれ上下方向に穿孔された円孔となっており、また、
図3に示すように上部側と下部側とはそれぞれ中間流路によって連通されている。尚、各中間流路は、第2本体25の外周面に形成した横溝部25aの底部から加工されており、各中間流路は横溝部25aの底部に設けられた封止部材26によって封止されている(
図4参照)。
【0035】
図5に示すように、第2本体25の上面に開口する貫通穴27,30の各開口部(第2入口開口部及び第3入口開口部)は前記円孔20の第1出口開口部と同一のピッチ円上に設けられ、それぞれ長穴に形成されるとともに、その長手方向が平行になり、且つ相互間の中間位置を長手方向に沿って延伸させた線が第2本体25の中心と一致するように形成されている。また、第2入口開口部及び第3入口開口部の各内周面28,31は、面取り加工によって内側に向かうテーパ状の傾斜面に形成されており、更に、貫通穴27,30の各円孔部と前記内周面28,31とが傾斜面29,32によって接続されている。尚、貫通穴27の第2入口開口部及び貫通穴30の第3入口開口部の長手方向の直線部分は、円孔20の第1出口開口部の直径よりも長い寸法を有している。また、貫通穴27と貫通穴30とは、その内周面28と内周面31との間隔が可及的に小さくなるように接近して設けられている。
【0036】
以上のように、貫通穴27の第2入口開口部及び貫通穴30の第3入口開口部と円孔20の第1出口開口部とはそれぞれ上下に重なり合うことができるように配置され、貫通穴27の第2入口開口部と円孔20の第1出口開口部とが重なり合うことによって第1流路と第2流路とが連通され、これにより第1流路内を流通する流体が第2流路内に流入する。また、貫通穴30の第3入口開口部と円孔20の第1出口開口部とが重なり合うことによって第1流路と第3流路とが連通され、これにより第1流路内を流通する流体が第3流路内に流入する。斯くして、このような作用により切換バルブ10は第1流路内の流体を第2流路及び第3流路に分流させる。
【0037】
そして、上述の如く、軸状部材17及びリング部材19の回転角度位置は前記サーボモータ12を制御する数値制御装置(図示せず)によって制御されており、この数値制御装置(図示せず)による制御の下で、軸状部材17及びリング部材19の回転角度位置を制御することにより、貫通穴27の第2入口開口部と円孔20の第1出口開口部との重なり度合い、及び貫通穴30の第3入口開口部と円孔20の第1出口開口部との重なり度合いを調整、即ち、第1出口開口部に対する第2入口開口部の開口比率、及び第1出口開口部に対する第3入口開口部の開口比率を調整することができ、これにより、第1流路から第2流路及び第3流路に分流される各流量を調整することができる。
【0038】
因みに、本例の切換バルブ10では、
図8に示すように、第1出口開口部の角度に応じて、第2流路及び第3流路における粉体の流量が変化する。尚、図中、第1出口開口部の角度は、
図5において、貫通穴27と貫通穴30との中間位置が0°、この中間位置より反時計回りが正、時計回りが負の値である。また、■でプロットされた細い破線が第2流路における実際の粉体の流量であり、●でプロットされた細い実線が第3流路における実際の粉体の流量である。また、太い破線は第2流路における設計上の粉体の流量であり、太い実線は第3流路における設計上の粉体の流量である。
【0039】
この
図8から分かるように、本例の切換バルブ10では、第1出口開口部の角度位置が−3°〜3°の範囲で、第2流路及び第3流路における粉体の流量がほぼ線形状態で変化するように、言い換えれば、第1出口開口部に対する第2入口開口部の開口比率、及び第1出口開口部に対する第3入口開口部の開口比率がほぼ線形状態で変化するように設計されており、実際にも第1出口開口部の角度位置が−1°〜2°の範囲で、第2流路及び第3流路における粉体の流量がほぼ線形状態で変化し、また、各粉体の流量が脈流を生じることなく変化する。これは、貫通穴27の第2入口開口部及び貫通穴30の第3入口開口部が長穴から構成され、第2入口開口部及び第3入口開口部の長手方向が相互に平行になるように設けられるとともに、その内周面が内側に向う傾斜面に形成され、更に、これらの隣接する縁部間の間隔を可及的に小さくしていることによるものであり、このようにすることで、第1流路(円孔20)から第2流路(貫通穴27)及び第3流路(貫通穴30)への粉体の振り分けを滞留が生じることなくスムーズに行うことができ、この結果、粉体の流通に脈動が生じるのが防止される。
【0040】
尚、第2本体25の下面に開口する貫通穴27の開口部(第2出口開口部)には、供給管7が接続されたジョイント33が設けられ、このジョイント33を介して前記第2流路と供給管7の流路とが連通されている。更に、第2本体25の下面に開口する貫通穴30の開口部(第3出口開口部)には、還流管8が接続されたジョイント34が設けられ、このジョイント34を介して前記第3流路と還流管8の流路とが連通されている。
【0041】
以上の構成を備えた本例の付加加工装置1によれば、レーザ発振器(図示せず)から適宜伝送路を介してレーザ光照射ヘッド2にレーザ光が伝送され、伝送されたレーザ光が当該レーザ光照射ヘッド2から加工テーブルTに向けて照射され、照射されたレーザ光が当該加工テーブルT上に集光される。一方、粉体タンク4から供給される粉体と、ガスタンク5から供給されるキャリアガスとが供給管6において混合され、混合された粉体を含むキャリアガス(流体)が供給ノズル3に供給される。そして、この供給ノズル3から加工テーブルT上のレーザ光集光部(焦点領域)に向けて流体が吐出され、吐出された流体に含まれる粉体がレーザ光のエネルギにより加熱、溶融されてその場に堆積される。
【0042】
レーザ光照射ヘッド2と加工テーブルTとは、数値制御装置(図示せず)による制御の下で、適宜送り装置(図示せず)により駆動されて三次元空間内で相対的に移動しており、このような移動によって、加工テーブルT上で付加加工が実行され、所望の立体形状の造形物が形成される。
【0043】
また、供給ノズル3への流体の供給量は、数値制御装置(図示せず)による制御の下で、切換バルブ10によって調整される。即ち、切換バルブ10のサーボモータ12は数値制御装置(図示せず)により制御されており、当該数値制御装置(図示せず)による制御の下で、指令された角度位置に第1本体16を回転させる。これにより、第1出口開口部に対する第2入口開口部の開口比率、及び第1出口開口部に対する第3入口開口部の開口比率が第1本体16の角度位置に応じて調整され、第1流路(円孔18,20)から第2流路(貫通穴27)及び第3流路(貫通穴30)に分流される各流量が調整される。そして、このようにして流量調整された一方の流体が供給管7を通じて供給ノズル3に供給され、他方の流体は還流管8を通じて還流され、セパレータ9によりキャリアガスと粉体に分離された後、分離された粉体は還流管8aを通じて粉体タンク4に還流され、キャリアガスは還流管8bを通じてガスタンク5に還流される。
【0044】
上述したように、レーザ光照射ヘッド2と加工テーブルTとの相対移動において、移動を開始したり、或いは移動を停止し、更には移動方向を変える際には、その相対移動の速度が変化し、レーザ光照射ヘッド2に付設される供給ノズル3の移動速度も変化する。そして、供給ノズル3の移動速度が変化すると、供給ノズル3から吐出される粉体の吐出レートが一定である場合には、加工テーブルT上に設定された加工位置への当該粉体の供給レートが変化するため、堆積物の形状を予定した形状に形成することができないという問題を生じる。
【0045】
本例の付加加工装置1では、供給ノズル3に供給される流体の供給量を切換バルブ10によって調整することができ、また、切換バルブ10は、円孔20の第1出口開口部と貫通穴27の第2入口開口部及び貫通穴30の第3入口開口部との各開口比率をほぼ線形状態で変化させるように構成されているので、供給ノズル3に供給される流体の供給量を、当該供給ノズル3の移動速度と流体の供給レートとの比率がほぼ一定となるように、適切且つ容易に調整することができ、これにより、付加加工における加工形状を予定した形状に高精度に仕上げることが可能となる。また、上述したように、本例の切換バルブ10では、供給ノズル3に供給される粉体の流量を、脈動を生じさせることなく滑らかに調整することができ、このような作用によっても、付加加工における加工形状を予定した形状に高精度に仕上げることができる。
【0046】
また、本例の切換バルブ10では、第2本体25がバネ体24によってリング部材20側に付勢され、第2本体25とリング部材20とが予圧を付与された状態で摺接するように構成されているので、この予圧を適宜調整することにより、リング部材20と第2本体25との摺接面から流体が流出するのを適切に防止することができる。
【0047】
また、本例の切換バルブ10では、貫通穴27の内周面28及び貫通穴30の内周面31を内側に向かう傾斜面としているので、相互間の間隔を可及的に小さくしても、貫通穴27及び貫通穴30との間の隔壁の厚さを強度上の問題が生じない程度の厚さとすることができる。また、傾斜面とすることで、第1流路から第2流路及び第3流路への粉体の滑らかな流動を実現することができる。
【0048】
また、本例の切換バルブ10では、リング部材20が第2本体25よりも低い硬度の材料から構成されているので、リング部材20と第2本体25との摺接面に粉体が噛み込んだ場合に、リング部材20が粉体により塑性変形し、この塑性変形によってリング部材20と第2本体25とは隙間の無い適切な摺接状態が維持される。尚、この意味で、リング部材20の硬度は、粉体の硬度よりも低い硬度であることが好ましい。
【0049】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明が採り得る態様は何ら上例のものに限定されるものではない。
【0050】
例えば、上例では切換バルブ10の第1本体16と第2本体25とを回転によって摺動させるように構成したが、このような構成に限られるものではなく、第1本体と第2本体とを直線方向に摺動させる構成としても良い。このような切換バルブの一例を
図9及び
図10に示す。尚、
図9はこの切換バルブを示した斜視図であり、
図10は、
図9における矢視E−E方向の断面図である。
【0051】
図9及び
図10に示すように、この切換バルブ50は、サーボモータ12’、第1本体16’並びに下部ブロック25’及び上板25”から構成される第2本体などを備えて構成される。第1本体16’は縦断面がアルファベットの逆T字状をした形状を有し、その下側の両側部が鉤状をした押え部材52,52により保持された状態で前記上板25”上に配設されている。尚、押え部材52,52と第1本体16’との間には適宜バネ体(図示せず)が設けられており、このバネ体(図示せず)によって第1本体16’が上板25”側に付勢され、第1本体16’は当該バネ体(図示せず)の付勢力によって予圧が付与された状態で上板25”に当接している。
【0052】
前記上板25”にはブラケット51が設けられ、このブラケット51にサーボモータ12’が取り付けられている。また、サーボモータ12’の出力軸にはねじ軸54が連結され、このねじ軸54がブラケット51を貫通して、前記第1本体16’に固設されたナット部材53に螺合している。尚、上例と同様に、サーボモータ12’は適宜数値制御装置(図示せず)によって制御される。斯くして、数値制御装置(図示せず)によりサーボモータ12’が駆動されると、ねじ軸54とナット部材53との螺合関係によって、第1本体16’がねじ軸54に沿って矢示方向に進退する。
【0053】
図10に示すように、第1本体16’には、上下に貫通するように第1流路となる円孔18’が穿設されており、上面に開口する円孔18’の開口部(第1入口開口部)には、供給管6が接続されたジョイント22が設けられ、このジョイント22を介して前記第1流路と供給管6の流路とが連通されている。また、第1本体16’の下面に開口する円孔18’の開口部(第1出口開口部)の内周面は、内側に向かう傾斜面となったテーパ状の面取りが施されている。
【0054】
前記第2本体を構成する下部ブロック25’及び上板25”には、それぞれ第2流路となる貫通穴27’,27”、及び第3流路となる貫通穴30’,30”がそれぞれ上下に貫通するように形成されており、その上部側及び下部側はそれぞれ上下方向に穿孔された円孔となっており、また、上部側と下部側とはそれぞれ中間流路によって連通されている。尚、各中間流路は、下部ブロック25’の側面に形成した横溝部25a’の底部から加工されており、各中間流路は横溝部25a’の底部に設けられた封止部材26’によって封止されている。また、下部ブロック25’及び上板25”の接合部には、貫通穴27’,27”及び貫通穴30’,30”をそれぞれ囲むようにシール56,57設けられている。
【0055】
上板25’の上面に開口する貫通穴27”,30”の各開口部(第2入口開口部及び第3入口開口部)は、前記矢示方向に進退する第1本体16’の円孔18’と重なり合うことができる位置に設けられており、それぞれ長穴に形成されるとともに、その長手方向が平行になり、且つ第1本体16’の進退方向と直交するように形成されている。また、上例と同様に、第2入口開口部及び第3入口開口部の各内周面28’,31’は、面取り加工によって内側に向かうテーパ状の傾斜面に形成されており、更に、貫通穴27”,30”の各円孔部と前記内周面28’,31’とが傾斜面によって接続されている。また、貫通穴27”の第2入口開口部及び貫通穴30”の第3入口開口部の長手方向の直線部分は、円孔18’の第1出口開口部の直径よりも長い寸法を有している。また、貫通穴27”と貫通穴30”とは、その内周面28’と内周面31’との間隔が可及的に小さくなるように接近して設けられている。
【0056】
また、下部ブロック25’の下面に開口する貫通穴27’の開口部(第2出口開口部)には、供給管7が接続されたジョイント33が設けられ、このジョイント33を介して前記第2流路と供給管7の流路とが連通されている。更に、下部ブロック25’の下面に開口する貫通穴30’の開口部(第3出口開口部)には、還流管8が接続されたジョイント34が設けられ、このジョイント34を介して前記第3流路と還流管8の流路とが連通されている。
【0057】
斯くして、以上の構成を有する切換バルブ50では、上例の切換バルブ10と同様の効果が奏される。即ち、数値制御装置(図示せず)による制御の下で、第1本体16’の矢示方向における位置を制御することにより、貫通穴27”の第2入口開口部と円孔18’の第1出口開口部との重なり度合い、及び貫通穴30”の第3入口開口部と円孔18’の第1出口開口部との重なり度合いが調整され、即ち、第1出口開口部に対する第2入口開口部の開口比率、及び第1出口開口部に対する第3入口開口部の開口比率が調整され、これにより、第1流路から第2流路及び第3流路に分流される各流量を調整することができる。
【0058】
また、上例では、貫通穴27,30の各開口部(第2入口開口部及び第3入口開口部)は、その長手方向がリング部材20の回転方向と略直交するように設けたが、これに限られるものではなく、前記長手方向がリング部材20の回転方向と交差するように設けられていれば良い。
【0059】
また、上例では、リング部材19を第2本体25よりも低い硬度の材料から構成したが、逆に、第2本体25をリング部材19よりも低い硬度の材料から構成しても良い。同様に、
図9及び
図10に示した例において、第1本体16’及び上板25’のいずれか一方を他方よりも低い硬度の材料から構成することができる。
【0060】
繰り返しになるが、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。