特許第6949035号(P6949035)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6949035
(24)【登録日】2021年9月24日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】積層体及び共重合体
(51)【国際特許分類】
   B32B 25/08 20060101AFI20210930BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   B32B25/08
   B32B27/30 D
【請求項の数】5
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2018-538262(P2018-538262)
(86)(22)【出願日】2017年7月21日
(86)【国際出願番号】JP2017026388
(87)【国際公開番号】WO2018047477
(87)【国際公開日】20180315
【審査請求日】2018年11月7日
【審判番号】不服2020-10116(P2020-10116/J1)
【審判請求日】2020年7月20日
(31)【優先権主張番号】特願2016-173671(P2016-173671)
(32)【優先日】2016年9月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑嶋 祐己
(72)【発明者】
【氏名】増井 利昭
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 剛志
【合議体】
【審判長】 井上 茂夫
【審判官】 藤井 眞吾
【審判官】 平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/099414(WO,A1)
【文献】 特開2013−099935(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/089200(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
C08F 214/00 - 216/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)とを含む積層体であって、
フッ素樹脂層(B)は、クロロトリフルオロエチレン単位、テトラフルオロエチレン単位及びパーフルオロアルキルビニルエーテル単位を含む共重合体を含み、
前記共重合体は、前記共重合体を構成する全単量体単位に対して、96.8〜97.3モル%のクロロトリフルオロエチレン単位及びテトラフルオロエチレン単位を含み、前記共重合体を構成する全単量体単位に対して、2.7〜3.2モル%の前記パーフルオロアルキルビニルエーテル単位を含む
ことを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記パーフルオロアルキルビニルエーテルは、一般式:
CF=CF−O−Rf
(式中、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す)で表されるものである請求項1記載の積層体。
【請求項3】
ゴム層(A)は、非フッ素ゴムを含む請求項1又は2記載の積層体。
【請求項4】
ゴム層(A)は、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムの水素化物、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴムおよびそれらを2種類以上ブレンドしたゴムからなる群より選択される少なくとも1種の非フッ素ゴムを含む請求項1、2又は3記載の積層体。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の積層体のフッ素樹脂層(B)を製造するために使用する共重合体であって、
前記共重合体を構成する全単量体単位に対して、96.8〜97.3モル%のクロロトリフルオロエチレン単位及びテトラフルオロエチレン単位を含み、前記共重合体を構成する全単量体単位に対して、2.7〜3.2モル%の前記パーフルオロアルキルビニルエーテル単位を含む
ことを特徴とする共重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及び共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリン等の燃料移送配管材には、加工性、防錆性、軽量化、経済性等の点からフッ素樹脂が用いられており、このフッ素樹脂には耐燃料クラック性及び耐燃料透過性が求められる。
【0003】
特許文献1には、耐燃料クラック性及び耐燃料透過性を有する含フッ素共重合体として、クロロトリフルオロエチレンに基づく重合単位、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位、単量体(A)に基づく重合単位、及び、単量体(B)に基づく重合単位を含み、クロロトリフルオロエチレンに基づく重合単位及びテトラフルオロエチレンに基づく重合単位が合計で80.0〜99.8モル%であり、単量体(A)に基づく重合単位が19.0〜0.1モル%であり、単量体(B)に基づく重合単位が10.0〜0.1モル%であり、単量体(A)は、一般式(i)
CX=CX(CF (i)
(式中、X、X及びXは、同一若しくは異なって、水素原子又はフッ素原子を表し、Xは水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは1又は2を表す。)で表されるフルオロオレフィン、及び、一般式(ii)
CF=CF−ORf (ii)
(式中、Rfは炭素数が1又は2のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種の単量体であり、単量体(B)は、一般式(iii)
CX=CX(CF (iii)
(式中、X、X及びXは、同一若しくは異なって、水素原子又はフッ素原子を表し、Xは水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、mは3〜10の整数を表す。)で表されるフルオロオレフィン、及び、一般式(iv)
CF=CF−ORf (iv)
(式中、Rfは炭素数が3〜8のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種の単量体であることを特徴とする含フッ素共重合体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011/099414号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フッ素樹脂の耐燃料クラック性及び耐燃料透過性の更なる改善が求められる。また、燃料輸送ゴムホースにおいて、柔軟性及び低燃料透過性を良好にするためにフッ素樹脂をバリア層とした積層ゴムホースが使用されている。従って、フッ素樹脂をゴムと強固に接着させる技術も求められる。
【0006】
本発明の目的は、上記現状に鑑み、フッ素樹脂層の燃料透過率が小さく、フッ素樹脂層にソルベントクラックが発生しにくく、フッ素樹脂層とゴム層とが強固に接着している積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)とを含む積層体であって、フッ素樹脂層(B)は、クロロトリフルオロエチレン単位、テトラフルオロエチレン単位及びパーフルオロアルキルビニルエーテル単位を含む共重合体を含み、前記共重合体は、前記共重合体を構成する全単量体単位に対して、96.0〜97.4モル%のクロロトリフルオロエチレン単位及びテトラフルオロエチレン単位を含み、前記共重合体を構成する全単量体単位に対して、2.6〜4.0モル%の前記パーフルオロアルキルビニルエーテル単位を含むことを特徴とする積層体である。
【0008】
パーフルオロアルキルビニルエーテルは、一般式:
CF=CF−O−Rf
(式中、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す)で表されるものであることが好ましい。
【0009】
ゴム層(A)は、非フッ素ゴムを含むことが好ましい。
【0010】
また、ゴム層(A)は、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムの水素化物、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、及びそれらを2種類以上ブレンドしたゴムからなる群より選択される少なくとも1種の非フッ素ゴムを含むことが好ましい。
【0011】
本発明はまた、上記積層体を製造するために使用する共重合体であって、前記共重合体を構成する全単量体単位に対して、96.0〜97.4モル%のクロロトリフルオロエチレン単位及びテトラフルオロエチレン単位を含み、前記共重合体を構成する全単量体単位に対して、2.6〜4.0モル%の前記パーフルオロアルキルビニルエーテル単位を含むことを特徴とする共重合体でもある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の積層体は、上記構成を有していることから、フッ素樹脂層の燃料透過率が小さく、フッ素樹脂層にソルベントクラックが発生しにくく、ゴム層とフッ素樹脂層とが強固に接着している。
【0013】
本発明の共重合体は、上記構成を有していることから、本発明の共重合体を使用すれば、ゴム層とフッ素樹脂層との積層体であって、フッ素樹脂層の燃料透過率が小さく、フッ素樹脂層にソルベントクラックが発生しにくく、ゴム層とフッ素樹脂層とが強固に接着している積層体を実現可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0015】
本発明の積層体は、ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)とを含む。
【0016】
フッ素樹脂層(B)は、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位、テトラフルオロエチレン(TFE)単位及びパーフルオロアルキルビニルエーテル単位を含む共重合体を含む層である。上記共重合体は、上記共重合体を構成する全単量体単位に対して、96.0〜97.4モル%のCTFE単位及びTFE単位を含み、かつ、上記共重合体を構成する全単量体単位に対して、2.6〜4.0モル%の上記パーフルオロアルキルビニルエーテル単位を含むことを特徴とする。すなわち、上記共重合体は、特定量のCTFE単位、TFE単位及びパーフルオロアルキルビニルエーテル単位を含むところに特徴があり、この特徴によって、フッ素樹脂層(B)は、燃料透過率が小さく、ソルベントクラックが発生しにくい。また、フッ素樹脂層(B)は、ゴム層(A)と強固に接着できる。
【0017】
上記共重合体は、上記共重合体を構成する全単量体単位に対して、96.5〜97.4モル%のCTFE単位及びTFE単位を含み、かつ、上記共重合体を構成する全単量体単位に対して、2.6〜3.5モル%の上記パーフルオロアルキルビニルエーテル単位を含むことが、低燃料透過率、耐ソルベントクラック性及び接着性に優れることから、好ましく、96.7〜97.4モル%のCTFE単位及びTFE単位を含み、かつ、上記共重合体を構成する全単量体単位に対して、2.6〜3.3モル%の上記パーフルオロアルキルビニルエーテル単位を含むことがより好ましく、96.7〜97.3モル%のCTFE単位及びTFE単位を含み、かつ、上記共重合体を構成する全単量体単位に対して、2.7〜3.3モル%の上記パーフルオロアルキルビニルエーテル単位を含むことが更に好ましく、96.8〜97.3モル%のCTFE単位及びTFE単位を含み、かつ、上記共重合体を構成する全単量体単位に対して、2.7〜3.2モル%の上記パーフルオロアルキルビニルエーテル単位を含むことが最も好ましい。
【0018】
上記共重合体において、CTFE単位とTFE単位とのモル比(CTFE単位/TFE単位)は、15〜90/85〜10が好ましく、15〜50/85〜50がより好ましく、15〜25/85〜75が更に好ましい。
【0019】
本明細書において、上記共重合体における各単量体単位の含有量は、19F−NMR分析、赤外分光光度計[IR]、元素分析、蛍光X線分析をモノマーの種類により適宜組み合わせて得られる値である。
【0020】
上記パーフルオロアルキルビニルエーテルとしては、一般式:
CF=CF−O−Rf
(式中、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す)で表されるものが好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)及びパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)が更に好ましい。
【0021】
上記共重合体は、上記共重合体を構成する全単量体単位に対して、0〜1.4モル%の範囲で、好ましくは0〜0.8モル%の範囲で、他の単量体に基づく単位を含むこともできる。他の単量体としては、エチレン、ビニリデンフルオライド、CX=CX(CF(式中、X、XおよびXは同一もしくは異なって、水素原子またはフッ素原子;Xは、水素原子、フッ素原子または塩素原子;nは、1〜10の整数)で表されるビニル単量体、CF=CF−OCH−Rf(式中、Rfは、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。
【0022】
上記共重合体は、ポリマーの主鎖末端および/または側鎖に、カルボニル基、ヒドロキシル基、ヘテロ環基、およびアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性官能基を導入したものであってもよい。
【0023】
本明細書において、「カルボニル基」は、炭素−酸素二重結合から構成される炭素2価の基であり、−C(=O)−で表されるものに代表される。上記カルボニル基を含む反応性官能基としては特に限定されず、たとえばカーボネート基、カルボン酸ハライド基(ハロゲノホルミル基)、ホルミル基、カルボキシル基、エステル結合(−C(=O)O−)、酸無水物結合(−C(=O)O−C(=O)−)、イソシアネート基、アミド基、イミド基(−C(=O)−NH−C(=O)−)、ウレタン結合(−NH−C(=O)O−)、カルバモイル基(NH−C(=O)−)、カルバモイルオキシ基(NH−C(=O)O−)、ウレイド基(NH−C(=O)−NH−)、オキサモイル基(NH−C(=O)−C(=O)−)など、化学構造上の一部としてカルボニル基を含むものがあげられる。
【0024】
アミド基、イミド基、ウレタン結合、カルバモイル基、カルバモイルオキシ基、ウレイド基、オキサモイル基などにおいては、その窒素原子に結合する水素原子は、たとえばアルキル基などの炭化水素基で置換されていてもよい。
【0025】
上記反応性官能基は、導入が容易である点、上記共重合体が適度な耐熱性と比較的低温での良好な接着性とを有する点から、アミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カーボネート基、カルボン酸ハライド基、酸無水物結合が好ましく、さらにはアミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、カーボネート基、カルボン酸ハライド基、酸無水物結合が好ましい。
【0026】
なかでも、国際公開第99/45044号に記載のカーボネート基および/またはカルボン酸ハライド基を有するものが特に好ましい。
【0027】
上記共重合体は、ポリマーの主鎖末端または側鎖のいずれかに反応性官能基を有する重合体からなるものであってもよいし、主鎖末端および側鎖の両方に反応性官能基を有する重合体からなるものであってもよい。主鎖末端に反応性官能基を有する場合、主鎖の両方の末端に有していてもよいし、いずれか一方の末端にのみ有していてもよい。上記反応性官能基は、エーテル結合も有する場合、該反応性官能基をさらに主鎖中に有するものであってもよい。
【0028】
上記共重合体は、主鎖末端に反応性官能基を有する重合体からなるものが、機械特性、耐薬品性を著しく低下させない理由で、または、生産性、コスト面で有利である理由で好ましい。
【0029】
上記反応性官能基の数は、積層するゴム層の種類、形状、接着の目的、用途、必要とされる接着力と隣接する層との接着方法などの違いにより適宜選択すればよい。
【0030】
主鎖末端および/または側鎖末端にある反応性官能基の数としては、主鎖炭素数1×10個あたり3〜800個であることが好ましい。主鎖炭素数1×10個あたり3個未満であると、接着性が低下することがある。より好ましい下限は15個、さらに好ましい下限は30個、特に好ましい下限は90個、最も好ましい下限は120個である。末端の反応性官能基数の上限は、生産性の観点からたとえば200個とすることがより好ましい。
【0031】
上記末端の反応性官能基の数は、上記共重合体の粉末をその融点より50℃高い成形温度、5MPaの成形圧力にて圧縮成形することにより得られる厚み0.25〜0.30mmのフィルムシートを、赤外分光光度計を用いて赤外吸収スペクトル分析し、既知のフィルムの赤外吸収スペクトルと比較して反応性官能基の特性吸収の種類を決定し、各差スペクトルから次式により算出する個数である。
【0032】
末端基の個数(前記主鎖炭素数1×10個あたり)=(l×K)/t
l:吸光度
K:補正係数
t:フィルム厚(mm)
対象となる末端反応性官能基の補正係数を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1の補正係数は、主鎖炭素数1×10個あたりの末端基を計算するためにモデル化合物の赤外吸収スペクトルから決定された値である。
【0035】
上記反応性官能基を主鎖および/または側鎖の末端に導入する方法としては、反応性官能基含有の単量体(β)を共重合して導入する方法、反応性官能基を有するまたは生ずる化合物を重合開始剤として用いる方法、反応性官能基を有するまたは生ずる化合物を連鎖移動剤として用いる方法、フッ素ポリマーに高分子反応で反応性官能基を導入する方法、これらの方法を併用する方法などが例示できる。
【0036】
共重合で反応性官能基を導入する場合の反応性官能基含有の単量体(β)としては、上記共重合体を与える単量体と共重合可能な単量体で上記反応性官能基を有するものであれば、特に制限されない。具体的には、たとえばつぎのものが例示できる。
【0037】
上記単量体(β)の第1としては、国際公開第2005/100420号に記載の脂肪族不飽和カルボン酸類があげられる。不飽和カルボン酸類は、重合性の炭素−炭素不飽和結合を1分子中に少なくとも1個有し、かつ、カルボニルオキシ基(−C(=O)−O−)を1分子中に少なくとも1個有するものが好ましい。
【0038】
上記脂肪族不飽和カルボン酸としては、脂肪族不飽和モノカルボン酸であってもよいし、カルボキシル基を2個以上有する脂肪族不飽和ポリカルボン酸であってもよい。脂肪族不飽和モノカルボン酸としては、たとえば(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの炭素数3〜6の不飽和脂肪族モノカルボン酸類があげられる。
【0039】
上記脂肪族不飽和ポリカルボン酸としては、たとえばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アコニット酸、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物またはシトラコン酸無水物などの炭素数3〜6の不飽和脂肪族ポリカルボン酸類があげられる。
【0040】
上記単量体(β)の第2としては、式:
CX=CY−(Rf−Z
(式中、Zは、前記反応性官能基;XおよびYは、同一または異なって、水素原子もしくはフッ素原子;Rfは、炭素数1〜40のアルキレン基、炭素数1〜40の含フッ素オキシアルキレン基、エーテル結合を有する炭素数2〜40の含フッ素アルキレン基またはエーテル結合を有する炭素数2〜40の含フッ素オキシアルキレン基;nは、0または1)で表される不飽和化合物があげられる。
【0041】
共重合により導入される反応性官能基含有の単量体(β)単位の含有率は、0.05モル%以上が好ましく、0.1モル%以上がより好ましい。多すぎると、加熱溶融時にゲル化や加硫反応が発生しやすいため、官能基含有モノマーの上限としては5モル%が好ましく、3モル%がさらに好ましく、1.4モル%が特に好ましい。
【0042】
上記共重合体は、ポリマーの主鎖末端または側鎖末端にヘテロ環基またはアミノ基を有するものであってもよい。
【0043】
ヘテロ環基とは、そのヘテロ環部位の環内にヘテロ原子(例えば、窒素原子、イオウ原子、酸素原子)を持つものであり、飽和環であっても、不飽和環であってもよく、単環であっても縮合環であってもよい。ヘテロ環基の中では、オキサゾリル基が好ましい。
【0044】
アミノ基とは、アンモニア、第一級または第二級アミンから水素を除去した1価の官能基である。具体的には、例えば、式:
−NR
(式中、RおよびRは、同じであっても異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜20の1価の有機基である。)で示される基などが挙げられる。アミノ基の具体例としては、−NH、―NH(CH)、−N(CH、―NH(CHCH)、―N(C、―NH(C)などがあげられる。
【0045】
上記共重合体は、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、塊状重合等、従来公知の重合方法により得ることができる。上記重合において、温度、圧力などの各条件、重合開始剤やその他の添加剤は、上記共重合体の組成や量に応じて適宜設定することができる。
【0046】
上記共重合体の融点は特に限定されないが、160〜270℃であることが好ましい。
【0047】
上記共重合体の融点は、DSC装置(セイコー社製)を用い、10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度として求める。MFRは、メルトインデクサー(東洋精機製作所社製)を用い、各温度、5kg荷重下で直径2mm、長さ8mmのノズルから単位時間(10分間)に流出するポリマーの重量(g)を測定する。
【0048】
また上記共重合体の分子量は、得られる成形体が良好な機械特性や燃料低透過性などを発現できるような範囲であることが好ましい。たとえば、メルトフローレート(MFR)を分子量の指標とする場合、フッ素ポリマー一般の成形温度範囲である約230〜350℃の範囲の任意の温度(例えば、297℃)におけるMFRは、0.5〜100g/10分であることが好ましい。
【0049】
上記重合開始剤としては、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート(NPP)等のパーオキシカーボネート類に代表される油溶性ラジカル重合開始剤や、例えば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸のアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性ラジカル重合開始剤等を使用できる。これらのなかでも、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート(NPP)が好ましい。
【0050】
上記連鎖移動剤としては、反応系内で分散性及び均一性が良好である点で、炭素数1〜4の水溶性アルコール、炭素数1〜4の炭化水素及び炭素数1〜4のフッ化炭化水素、及び過硫酸塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記連鎖移動剤は、メタン、エタン、n−ブタン、イソブタン、メタノール、n−プロピルアルコール、HFC−134a、HFC−32、DSP、APS及びKPSよりなる群から選択される少なくとも1つであることがより好ましく、n−プロピルアルコール、メタノール及びイソブタンからなる群より選択される少なくとも1つであることが更に好ましい。
【0051】
フッ素樹脂層(B)は、上記共重合体を1種含有するものであってもよいし、2種以上含有するものであってもよい。
【0052】
フッ素樹脂層(B)は、燃料透過率が10g・mm/m/day以下であることが好ましく、1.0g・mm/m/day以下であることがより好ましく、0.6g・mm/m/day以下であることがさらに好ましく、0.5g・mm/m/day以下であることが最も好ましい。
【0053】
上記燃料透過率は、イソオクタン、トルエンおよびエタノールを45:45:10の容積比で混合したイソオクタン/トルエン/エタノール混合溶媒を投入した燃料透過率測定用カップに測定対象樹脂から得たシートを組み入れ、60℃において測定した質量変化から算出される値である。
【0054】
なお、上記共重合体がパーハロポリマーである場合、耐薬品性および燃料低透過性がより優れたものとなる。パーハロポリマーとは、重合体の主鎖を構成する炭素原子の全部にハロゲン原子が結合している重合体である。
【0055】
フッ素樹脂層(B)は、さらに、目的や用途に応じてその性能を損なわない範囲で、無機質粉末、ガラス繊維、炭素粉末、炭素繊維、アラミド繊維、金属酸化物などの種々の充填剤を配合したものであってもよい。
【0056】
たとえば、燃料透過性をさらに低減させるために、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ノントロナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなどのスメクタイト系の層状粘度鉱物や、雲母等の高アスペクト比を有する微小層状鉱物を添加してもよい。
【0057】
また、導電性を付与するために、導電性フィラーを添加してもよい。導電性フィラーとしては特に限定されず、たとえば金属、炭素などの導電性単体粉末または導電性単体繊維;酸化亜鉛などの導電性化合物の粉末;表面導電化処理粉末などがあげられる。導電性フィラーを配合する場合、溶融混練して予めペレットを作製することが好ましい。
【0058】
上記導電性単体粉末または導電性単体繊維としては特に限定されず、たとえば銅、ニッケルなどの金属粉末;鉄、ステンレススチールなどの金属繊維;カーボンブラック、炭素繊維、特開平3−174018号公報等に記載の炭素フィブリル、カーボンナノチューブなどがあげられる。
【0059】
上記表面導電化処理粉末は、ガラスビーズ、酸化チタンなどの非導電性粉末の表面に導電化処理を施して得られる粉末である。
【0060】
表面導電化処理の方法としては特に限定されず、たとえば金属スパッタリング、無電解メッキなどがあげられる。
【0061】
導電性フィラーのなかでもカーボンブラックは、経済性や静電荷蓄積防止の観点で有利であるので好適に用いられる。
【0062】
導電性フィラーを配合してなるフッ素樹脂層(B)の体積抵抗率は、1×10〜1×10Ω・cmであることが好ましい。より好ましい下限は、1×10Ω・cmであり、さらに好ましい下限は、1×10Ω・cmであり、特に好ましい下限は、1×10Ω・cmであり、最も好ましい上限は、1×10Ω・cmである。
【0063】
また、充填剤以外に、熱安定化剤、補強剤、紫外線吸収剤、顔料、その他任意の添加剤を配合してもよい。
【0064】
ゴム層(A)は、少なくともゴムを含む層であり、フッ素ゴム又は非フッ素ゴムを含むものであってもよい。上記ゴムは、未架橋ゴムを架橋することにより得られたものであることが好ましい。
【0065】
上記非フッ素ゴムとしては、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)またはその水素化物(HNBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)などのジエン系ゴム、エチレン−プロピレン−ターモノマー共重合体ゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴムおよびそれらを2種類以上ブレンドしたゴムなどがあげられる。
【0066】
上記非フッ素ゴムとしては、耐熱性、耐油性、耐候性、押出成形性が良好な点から、ジエン系のゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴムおよびそれらを2種類以上ブレンドしたゴムからなる群より選択される少なくとも1種の非フッ素ゴムが好ましく、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムの水素化物、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴムおよびそれらを2種類以上ブレンドしたゴムからなる群より選択される少なくとも1種の非フッ素ゴムがより好ましく、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴムおよびそれらを2種類以上ブレンドしたゴムからなる群より選択される少なくとも1種の非フッ素ゴムが更に好ましく、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム及びアクリロニトリル−ブタジエンゴムとアクリル系ゴムとのブレンド物からなる群より選択される少なくとも1種の非フッ素ゴムが最も好ましい。
【0067】
上記アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)を使用することにより、耐寒性、耐熱性、耐油性、耐候性、押出成形性が良好なものとすることができる。また、コスト面でも有利である。上記NBRは、結合アクリロニトリル含有量が18〜50質量%であることが好ましい。より好ましくは、25〜50質量%である。結合アクリロニトリル含有量が少なすぎると耐ガソリン性が不十分となるおそれがあり、多すぎるとコスト面で不利になるおそれがある。
【0068】
上記エピクロルヒドリンゴム(ECO)は、エピクロルヒドリンに基づく重合単位を有するものであれば特に限定されず、実質的にエピクロルヒドリンに基づく重合単位のみからなる1元重合体であってもよいし、エピクロルヒドリンに基づく重合単位と、エピクロルヒドリン以外の他の単量体に基づく重合単位と、からなる2元以上の重合体であってもよい。
【0069】
エピクロルヒドリン以外の他の単量体としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びアリルグリシジルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の単量体が好ましい。上記エピクロルヒドリンゴムは、エピクロルヒドリンに基づく重合単位と、エチレンオキサイドに基づく重合単位と、を有する重合体であることが好ましく、エピクロルヒドリンに基づく重合単位と、エチレンオキサイドに基づく重合単位と、アリルグリシジルエーテルに基づく重合単位と、を有する重合体であることがより好ましい。
【0070】
上記エピクロルヒドリンゴムとしては、例えば、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、及び、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体が好ましい。より好ましくは、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体及びエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体である。これらを単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0071】
上記エピクロルヒドリンゴムとしては、耐熱性の点で、エピクロルヒドリンに基づく重合単位を20モル%以上含有することが好ましく、30モル%以上含有することがより好ましく、40モル%以上含有することが特に好ましい。エピクロルヒドリンに基づく重合単位については、塩素含有量等より算出することができる。塩素含有量はJIS K7229に記載の方法に従い、電位差滴定法によって求めることができる。
【0072】
ゴム層(A)としては、上記ゴムの未架橋ゴム(b1)を含む加硫用ゴム組成物から形成されたものであることが好ましい。
【0073】
上記加硫用ゴム組成物としては、例えば、特開2012−126015号公報、国際公開第2011/001756号、特開2010−89479号公報、特開2012−61644号公報、特開2012−81682号公報、国際公開第2012/063893号、特開2013−176961号公報、特開2013−099935号公報、国際公開第2013/089200号に開示される加硫用ゴム組成物が挙げられる。
【0074】
上記加硫用ゴム組成物は、必須成分として未加硫ゴム(b1)、化合物(b2)、及び、受酸剤(b3)を含み、更に、任意成分として、シリカ(b4)、加硫剤(b5)及び金属塩(b6)の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
特に、加硫用ゴム組成物が未加硫ゴム(b1)及び化合物(b2)に加えて、加硫剤(b5)及び金属塩(b6)を含むものであると、隣接する層と一層強固に接着する。また、エポキシ樹脂(b7)を含むことも好ましい。
【0075】
加硫用ゴム組成物は、未加硫ゴム(b1)とは別の特性をゴム層(A)に付与するために、樹脂を含有してもよい。樹脂としては、たとえばPVC、塩素化ポリスチレン、クロロスルホン化ポリスチレンエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などがあげられる。たとえば、加硫用ゴム組成物がNBRとPVCとを含有する場合、耐オゾン性を向上させることができる。この場合、PVCの配合量は、NBR100質量部に対し10〜70質量部が好ましい。
【0076】
化合物(b2)は、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7塩(DBU塩)、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5塩(DBN塩)、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7(DBU)、及び、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5(DBN)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。化合物(b2)を含むことによって、加硫用ゴム組成物の加硫特性を改善できる。
【0077】
DBU塩およびDBN塩としては、DBU又はDBNの炭酸塩、長鎖脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、オルトフタル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、フェノール塩、フェノール樹脂塩、ナフトエ酸塩、オクチル酸塩、オレイン酸塩、ギ酸塩、フェノールノボラック樹脂塩などがあげられ、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセニウムクロライド(DBU−B)、ナフトエ酸塩、オルトフタル酸塩、フェノール塩、及び、ギ酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0078】
より具体的には、化合物(b2)は、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセニウムクロライド、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のナフトエ酸塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のフェノール塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のオルトフタル酸塩、及び、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のギ酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0079】
化合物(b2)としては、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセニウムクロライド、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のフェノール塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のオルトフタル酸塩、及び、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のギ酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることがより好ましい。更に好ましくは、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセニウムクロライド、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のギ酸塩、及び、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のフェノール塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。
【0080】
また、化合物(b2)としては、DBU−B、DBUのフェノール塩、DBUのオルトフタル酸塩及びDBUのギ酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることも好ましい形態の一つである。
【0081】
化合物(b2)は、未加硫ゴム(b1)100質量部に対して0.3質量部を超え、5質量部以下であることが好ましい。化合物(b2)は、未加硫ゴム(b1)100質量部に対して、0.5質量部以上であることがより好ましい。化合物(b2)が少なすぎると接着力が充分でないおそれがある。また、化合物(b2)は、未加硫ゴム(b1)100質量部に対して、4質量部以下であることがより好ましく、3.5質量部以下であることが更に好ましく、3質量部以下であることが特に好ましい。
【0082】
加硫用ゴム組成物は、受酸剤(b3)を含むことが好ましい。受酸剤(b3)としては、金属酸化物、塩基性亜リン酸鉛、Ca−Mg−Zn、Ba−Mg−Zn、Ca−Zn−Sn系、Ba−Zn系の複合安定剤、脂肪酸金属石けん、無機酸塩類、有機すず化合物、ハイドロタルサイト、ハイドロタルサイト焼成物、無機マイクロポーラス・クリスタル等があげられ、これらを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
より具体的には、受酸剤(b3)は、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸カルシウム、Ca−Mg−Zn系複合受酸剤、Ba−Zn系複合受酸剤、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、ケイ酸マグネシウム等を用いることができ、これらを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。受酸剤(b3)は、酸化マグネシウムであることが好ましい。
受酸剤(b3)の配合量は、接着性、ゴム物性の点から、未加硫ゴム(b1)100質量部に対して0.1〜50質量部が好ましく、特に好ましくは1〜20質量部である。本発明の特定の構造を有する積層体は、受酸剤(b3)を必須とすることによって優れた接着性を有することができる。
【0083】
加硫用ゴム組成物は、シリカ(b4)を含むことが好ましい。シリカ(b4)としては、塩基性シリカ、酸性シリカを用いることができ、接着性の観点から、塩基性シリカを用いる方が好ましい。塩基性シリカとしては、カープレックス1120(DSLジャパン社製)が挙げられる。また、接着性、ゴム物性の観点から、未加硫ゴム(b1)100質量部に対して10〜100質量部が好ましく、特に好ましくは15〜70質量部である。
【0084】
加硫剤(b5)は、加硫用ゴム組成物の加硫系に合わせて、従来公知のものが使用できる。未加硫ゴム(b1)を加硫することにより、得られる加硫ゴム層の引張強度などの機械的強度が向上し、良好な弾性も獲得できる。
【0085】
本発明で用いられ得る加硫系としては、硫黄加硫系、ポリアミン加硫系、ポリオール加硫系、パーオキサイド加硫系、イミダゾール加硫系、トリアジン加硫系、オキサゾール加硫系、チアゾール加硫系のいずれも採用できるが、未加硫ゴムに加硫性基(キュアサイト)が含まれる場合はキュアサイトの種類によって、または加硫された積層体に付与する特性や用途により適宜選択すればよい。
【0086】
加硫剤(b5)としては、加硫系に合わせて硫黄加硫系加硫剤、ポリアミン加硫系加硫剤、ポリオール加硫系加硫剤、パーオキサイド加硫系加硫剤、イミダゾール加硫系加硫剤、トリアジン加硫系加硫剤、オキサゾール加硫系加硫剤、チアゾール加硫系加硫剤のいずれも採用でき、単独で使用または併用してもよい。
【0087】
たとえば、未加硫ゴム(b1)がジエン系の非フッ素ゴム(NBR、SBR、BRなど)の場合は硫黄加硫系およびパーオキサイド加硫系が通常採用されるので、加硫剤としても硫黄加硫系加硫剤及びパーオキサイド加硫系加硫剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0088】
硫黄加硫系加硫剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、ポリスルフィド化合物などが例示できる。
【0089】
硫黄加硫系加硫剤の配合量は、未加硫ゴム(b1)100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。少なすぎると接着性が不充分となり、多すぎると硬くなりすぎる傾向にある。
【0090】
パーオキサイド加硫系加硫剤としては、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生する有機過酸化物が好ましいものとしてあげられる。
【0091】
有機過酸化物としては、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロキシパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどを例示することができる。そのなかでも好ましいものはジアルキル化合物である。一般に活性−O=O−の量、分解温度などから種類ならびに配合量が選ばれる。配合量は通常、未加硫ゴム100質量部に対して0.1〜15質量部、好ましくは0.3〜5質量部である。
【0092】
加硫剤(b5)としては、硫黄加硫系加硫剤及びパーオキサイド加硫系加硫剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、硫黄加硫系加硫剤がより好ましく、その添加量は未加硫ゴム(b1)100質量部に対して0.5〜5質量部であることが好ましく、特に好ましくは1.0〜3質量部である。
【0093】
金属塩(b6)は、カルバミン酸金属塩及びチアゾール系金属塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0094】
上記カルバミン酸金属塩としては、例えば、ジメチルジチオカルバメートの亜鉛塩(ZnMDC)、ジエチルジチオカルバメートの亜鉛塩(ZnEDC)、ジブチルジチオカルバメートの亜鉛塩(ZnBDC)、ジメチルジチオカルバメートの鉄塩(FeMDC)、エチルフェニルジチオカルバメートの亜鉛塩(ZnEPDC)、N−ペンタメチレンジチオカルバメートの亜鉛塩、ジベンジルジチオカルバメートの亜鉛塩、ジメチルジチオカルバメートのナトリウム塩(NaMDC)、ジエチルジチオカルバメートのナトリウム塩(NaEDC)、ジブチルジチオカルバメートのナトリウム塩(NaBDC)、ジメチルジチオカルバメートの銅塩(CuMDC)、ジブチルジチオカルバメートのニッケル塩(NiMDC)、ジエチルジチオカルバメートのテルリウム塩(TeEDC)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併用して用いられる。これらのなかでも、接着性、ゴム物性の点で、ZnMDC、ZnEDC、NiMDC、CuMDC、又は、ZnBDCが好適に用いられる。
【0095】
上記チアゾール系金属塩としては、メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩(ZnMBT)が好適に用いられる。
【0096】
金属塩(b6)の配合量は、未加硫ゴム(a1)100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましく、0.01〜3質量部がより好ましく、特に好ましくは0.05〜2質量部である。金属塩(b6)の配合量が少なすぎると加硫ゴム物性が悪くなる傾向がみられ、多すぎると未加硫物性が悪くなる傾向がみられる。
【0097】
加硫用ゴム組成物は、加硫特性を阻害したりゴムの物性を損なったりするため、アミン化合物を含有しないことが好ましい。
【0098】
また本発明においては、目的または必要に応じて、一般の加硫用ゴム組成物に配合する通常の添加物、たとえば充填剤、加工助剤、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、着色剤、安定剤、接着助剤、離型剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、表面非粘着剤、粘着付与剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤、紫外線吸収剤、耐油性向上剤、発泡剤、スコーチ防止剤、滑剤、エポキシ樹脂などの各種添加剤を配合することができる。また、上記のものとは異なる常用の加硫剤や加硫促進剤を1種または2種以上配合してもよい。
【0099】
充填剤としては、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどの炭酸塩;ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムなどのケイ酸塩;硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩;合成ハイドロタルサイト、二硫化モリブデン、硫化鉄、硫化銅などの金属硫化物;ケイ藻土、アスベスト、リトポン(硫化亜鉛/硫化バリウム)、グラファイト、カーボンブラック、フッ化カーボン、フッ化カルシウム、コークス、石英微粉末、亜鉛華、タルク、雲母粉末、ワラストナイト、炭素繊維、アラミド繊維、各種ウィスカー、ガラス繊維、有機補強剤、有機充填剤などがあげられる。
【0100】
加工助剤としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛などの高級脂肪酸塩;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの高級脂肪酸アミド;オレイン酸エチルなどの高級脂肪酸エステル、ステアリルアミン、オレイルアミンなどの高級脂肪族アミン;カルナバワックス、セレシンワックスなどの石油系ワックス;エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールなどのポリグリコール;ワセリン、パラフィンなどの脂肪族炭化水素;シリコーン系オイル、シリコーン系ポリマー、低分子量ポリエチレン、フタル酸エステル類、リン酸エステル類、ロジン、(ハロゲン化)ジアルキルアミン、(ハロゲン化)ジアルキルスルフォン、界面活性剤などがあげられる。
【0101】
可塑剤としては、たとえばフタル酸誘導体やセバシン酸誘導体、軟化剤としては、たとえば潤滑油、プロセスオイル、コールタール、ヒマシ油、ステアリン酸カルシウム、老化防止剤としては、たとえばフェニレンジアミン類、フォスフェート類、キノリン類、クレゾール類、フェノール類、ジチオカルバメート金属塩などがあげられる。
【0102】
エポキシ樹脂(b7)としては、たとえばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂などがあげられる。これらのうちビスフェノールA型エポキシ樹脂が耐薬品性、接着性が良好な点から好ましく、さらに式(1):
【0103】
【化1】
【0104】
で表わされるエポキシ樹脂が特に好ましくあげられる。ここで、式(1)において、nは平均値であり、0.1〜3が好ましく、0.1〜0.5がより好ましく、0.1〜0.3がさらに好ましい。nが0.1未満であると、隣接する層との接着力が低下する傾向がある。一方、nが3を超えると、エポキシ樹脂自体の粘度が高くなり、加硫用ゴム組成物中での均一な分散が困難になる傾向がある。
【0105】
エポキシ樹脂を配合する場合の含有量は、隣接する層との接着力をより向上させる点から、未加硫ゴム100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上が特に好ましい。ゴム層が硬くなりすぎないようにする点から、未加硫ゴム100質量部に対して、25質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下が特に好ましい。
【0106】
加硫用ゴム組成物は、未加硫ゴム(b1)、化合物(b2)、及び、受酸剤(b3)、さらに要すれば、シリカ(b4)、加硫剤(b5)、金属塩(b6)並びにその他の添加剤を混練することにより調製される。
【0107】
混練は、たとえば100℃以下の温度でオープンロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダーなどを用いて行うことができる。
【0108】
加硫用ゴム組成物は、最適加硫時間(T90)が18分以下であることが好ましい。より好ましくは15分以下であり、更に好ましくは13分以下であり、特に好ましくは、11分以下である。T90の下限は特に限定されないが、例えば、1分以上である。上記加硫用ゴム組成物は、上記構成であることによって、加硫時間を短くし、生産性を向上させることができる。T90は、160℃にて最大トルク値(M)と最小トルク値(M)を測定することにより得られる値であり、{(M)−(M)}×0.9+Mで求める値である。M及びMは、JIS K 6300−2に準じて測定した値である。
【0109】
未加硫ゴム(b1)が、エピクロルヒドリンゴムの場合、加硫用ゴム組成物は、必須成分としてエピクロルヒドリンゴム(b1−1)、化合物(b2−1)、受酸剤(b3−1)、及び、エポキシ樹脂(b7−1)を含有し、更に、任意成分として、シリカ(b4−1)、酸化亜鉛(b8)、及び加硫剤(b5−1)の少なくともいずれかを含む、又は、エピクロルヒドリンゴム(b1−1)、化合物(b2−1)、エポキシ樹脂(b7−1)、及び、水担持物質(b9)を含むことが好ましい。特に、加硫用ゴム組成物がエピクロルヒドリンゴム(b1−1)及び化合物(b2−1)に加えて、加硫剤(b5−1)を含むものであると、隣接する層と大きな接着強度で接着できる。
【0110】
エピクロルヒドリンゴム(b1−1)としては、例えば、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、及び、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体が好ましい。より好ましくは、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、及びエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体である。これらを単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0111】
化合物(b2−1)は、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7塩(DBU塩)、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5塩(DBN塩)、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7(DBU)、及び、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5(DBN)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0112】
また、化合物(b2−1)は、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のp−トルエンスルホン酸塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のフェノール塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のフェノール樹脂塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のオルトフタル酸塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のギ酸塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のオクチル酸塩、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5のp−トルエンスルホン酸塩、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5のフェノール塩、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5のフェノール樹脂塩、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5のオルトフタル酸塩、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5のギ酸塩、及び、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5のオクチル酸塩、からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。化合物(b2−1)を含むことによって、加硫用ゴム組成物の加硫特性を改善でき、接着性を向上させることができる。
【0113】
化合物(b2−1)は、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセニウムクロライド、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のp−トルエンスルホン酸塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のフェノール塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のフェノール樹脂塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のオルトフタル酸塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のギ酸塩、及び、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のオクチル酸塩、からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0114】
接着性を向上させる観点からは、化合物(b2−1)は、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセニウムクロライド、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のオクチル酸塩、又は、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のフェノール塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のオルトフタル酸塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のギ酸塩であることがより好ましい。
【0115】
また、加硫用ゴム組成物は、更に、ホスホニウム塩を含有することも好ましい形態の一つである。化合物(b2−1)に加えて、更に、ホスホニウム塩を併用することによって、より接着性を向上させることができる。
【0116】
具体的には、例えば、化合物(b2−1)は、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセニウムクロライド、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のフェノール塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のオルトフタル酸塩、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のギ酸塩、及び、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のオクチル酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、加硫用ゴム組成物は、更に、ホスホニウム塩を含有することが好ましい。
【0117】
また、化合物(b2−1)としては、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7のフェノール塩が最も好ましい。
【0118】
化合物(b2−1)は、接着性が良好な観点から、エピクロルヒドリンゴム(b1−1)100質量部に対して0.5質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。より好ましくは1質量部以上、4質量部以下である。また、接着性が良好であるとともに、加硫特性が良好な点から、化合物(b2−1)は、エピクロルヒドリンゴム(b1−1)100質量部に対して、1質量部以上、3質量部以下であることが好ましい。
【0119】
加硫用ゴム組成物は、受酸剤(b3−1)を含むことが好ましい。受酸剤(b3−1)の配合量は、接着性、ゴム物性の点から、エピクロルヒドリンゴム(b1−1)100質量部に対して3〜20質量部が好ましく、特に好ましくは5〜15質量部である。本発明の特定の構造を有する積層体は、受酸剤(b3−1)を必須とすることによって優れた接着性を有するものとなる。受酸剤(b3−1)としては、受酸剤(b3)で挙げた好適な受酸剤が好ましい。
【0120】
加硫用ゴム組成物は、シリカ(b4−1)を含むことが好ましい。シリカ(b4−1)としては、塩基性シリカ、酸性シリカを用いることができ、接着性の観点から、塩基性シリカを用いることが好ましい。塩基性シリカとしては、カープレックス1120(DSLジャパン社製)が挙げられる。また、接着性、ゴム物性の観点から、エピクロルヒドリンゴム(b1−1)100質量部に対して5〜40質量部が好ましく、特に好ましくは10〜25質量部である。
【0121】
加硫用ゴム組成物は、エポキシ樹脂(b7−1)を含むことが好ましい。エポキシ樹脂(b7−1)としては、上述したエポキシ樹脂(b7)と同様のものが挙げられる。
【0122】
エポキシ樹脂(b7−1)は、接着力をより向上させる点から、エピクロルヒドリンゴム(b1−1)100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.3〜3質量部がより好ましい。また、加硫用ゴム組成物に添加される、化合物(b2−1)、受酸剤(b3−1)、シリカ(b4−1)等の添加量にもよるが、接着力を向上させる観点からは、エポキシ樹脂(b7−1)は、エピクロルヒドリンゴム(b1−1)100質量部に対して、0.5質量部を超えることが好ましい。1質量部を超えることも好ましい形態の一つである。
【0123】
また、加硫用ゴム組成物は、化合物(b2−1)とエポキシ樹脂(b7−1)との合計が、エピクロルヒドリンゴム(b1−1)100質量部に対して、2質量部を超えることも好ましい形態の一つである。
【0124】
加硫用ゴム組成物は、更に、酸化亜鉛(b8)を含むことが好ましい。酸化亜鉛(b8)の配合量は、接着性、ゴム物性の点から、エピクロルヒドリンゴム(b1−1)100質量部に対して1〜20質量部が好ましく、特に好ましくは3〜15質量部である。本発明の特定の構造を有する積層体は、酸化亜鉛(b8)を含むことによって、より優れた接着性を有するものとなる。
【0125】
加硫用ゴム組成物は、加硫剤(b5−1)を含むことが好ましい。加硫剤は、加硫用ゴム組成物の加硫系に合わせて、従来公知のものが使用できる。エピクロルヒドリンゴム(b1−1)を加硫することにより、得られる加硫ゴム層の引張強度などの機械的強度が向上し、良好な弾性も獲得できる。
【0126】
加硫剤(b5−1)としては、塩素原子の反応性を利用する公知の加硫剤、例えば、ポリアミン系加硫剤、チオウレア系加硫剤、チアジアゾール系加硫剤、メルカプトトリアジン系加硫剤、ピラジン系加硫剤、キノキサリン系加硫剤、ビスフェノール系加硫剤等を挙げることができる。
【0127】
塩素原子の反応性を利用する公知の加硫剤を例示すれば、ポリアミン系加硫剤としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミン、p−フェニレンジアミン、クメンジアミン、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、エチレンジアミンカーバメート、ヘキサメチレンジアミンカーバメート等があげられる。
【0128】
チオウレア系加硫剤としては、エチレンチオウレア、1,3−ジエチルチオウレア、1,3−ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア等があげられる。
【0129】
チアジアゾール系加硫剤としては、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−5−チオベンゾエート等があげられる。
【0130】
メルカプトトリアジン系加硫剤としては、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン、1−メトキシ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−ヘキシルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−ジエチルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−シクロヘキサンアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−ジブチルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、2−アニリノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、1−フェニルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン等があげられる。
【0131】
ピラジン系加硫剤としては、2,3−ジメルカプトピラジン誘導体等があげられ、2,3−ジメルカプトピラジン誘導体を例示すると、ピラジン−2,3−ジチオカーボネート、5−メチル−2,3−ジメルカプトピラジン、5−エチルピラジン−2,3−ジチオカーボネート、5,6−ジメチル−2,3−ジメルカプトピラジン、5,6−ジメチルピラジン−2,3−ジチオカーボネート等があげられる。
【0132】
キノキサリン系加硫剤としては、2,3−ジメルカプトキノキサリン誘導体等があげられ、2,3−ジメルカプトキノキサリン誘導体を例示すると、キノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−エチル−2,3−ジメルカプトキノキサリン、6−イソプロピルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、5,8−ジメチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート等があげられる。
【0133】
ビスフェノール系加硫剤としては、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールS)、1,1−シクロヘキシリデン−ビス(4−ヒドロキシベンゼン)、2−クロロ−1,4−シクロヘキシレン−ビス (4−ヒドロキシベンゼン)、2,2−イソプロピリデン−ビス(4−ヒドロキシベンゼン)(ビスフェノールA)、ヘキサフルオロイソプロピリデン−ビス(4−ヒドロキシベンゼン)(ビスフェノールAF)および2−フルオロ−1,4−フェニレン−ビス(4−ヒドロキシベンゼン)等があげられる。
【0134】
加硫用ゴム組成物は、加硫剤と共に公知の加硫促進剤、遅延剤を本発明においてそのまま用いることができる。塩素原子の反応性を利用する公知の加硫剤に併用される加硫促進剤としては、1級、2級、3級アミン、該アミンの有機酸塩もしくはその付加物、グアニジン系促進剤、チウラム系促進剤、ジチオカルバミン酸系促進剤等を挙げることができる。また、遅延剤としてはN−シクロヘキサンチオフタルイミド、ジチオカルバミン酸類の亜鉛塩等を挙げることができる。
【0135】
加硫促進剤を例示すれば、1級、2級、3級アミンとしては、特に炭素数5〜20の脂肪族又は環式脂肪酸の第1、第2もしくは第3アミンが好ましく、このようなアミンの代表例は、n−ヘキシルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ヘキサメチレンジアミン等である。
【0136】
アミンと塩を形成する有機酸としては、カルボン酸、カルバミン酸、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジチオリン酸等が例示される。また上記アミンと付加物を形成する物質としては、アルコール類、オキシム類等が例示される。アミンの有機酸塩もしくは付加物の具体例としては、n−ブチルアミン・酢酸塩、ヘキサメチレンジアミン・カルバミン酸塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのジシクロヘキシルアミン塩等が挙げられる。
【0137】
グアニジン系促進剤の例としては、ジフェニルグアニジン、ジトリルグアニジン等が挙げられる。
【0138】
チウラム系加硫促進剤の具体例としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
【0139】
ジチオカルバミン酸系促進剤の例としては、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン塩等が挙げられる。
【0140】
塩素原子の反応性を利用する公知の加硫剤に併用される加硫促進剤又は遅延剤の配合量は、ゴム成分100重量部に対して0〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。
【0141】
また、エピクロルヒドリンゴム(b1−1)がエピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体などの二重結合を有する重合体である場合には、ニトリル系ゴムの加硫に通常用いられている公知の加硫剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、加硫促進助剤、架橋助剤等を用いることができる。加硫剤としては、硫黄、モルホリンジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラムジスルフィド、ジペンタンメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド等の硫黄系加硫剤、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキサイド系加硫剤、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂等の樹脂系加硫剤、p−キノンジオキシム、p−p’−ジベンゾイルキノンジオキシム等のキノンジオキシム系加硫剤等を挙げることができる。これらの加硫剤は単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、加硫促進剤、加硫遅延剤、加硫促進助剤、架橋助剤としては、例えば、アルデヒドアンモニア系促進剤、アルデヒドアミン系促進剤、チオウレア系促進剤、グアニジン系促進剤、チアゾール系促進剤、スルフェンアミド系促進剤、チウラム系促進剤、ジチオカルバミン酸塩系促進剤、キサントゲンサン塩系促進剤等の各種加硫促進剤、N−ニトロソジフェニルアミン、無水フタル酸、N−シクロヘキシルチオフタルイミド等の加硫遅延剤、亜鉛華、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛等の加硫促進助剤、キノンジオキシム系架橋助剤、メタクリレート系架橋助剤、アリル系架橋助剤、マレイミド系架橋助剤等の各種架橋助剤等を挙げることができる。
【0142】
エピクロルヒドリンゴム(b1−1)の耐熱性や、層(A)と層(B)との接着性の観点から、加硫剤としては、チオウレア系加硫剤、キノキサリン系加硫剤、硫黄系加硫剤、パーオキサイド系加硫剤、及びビスフェノール系加硫剤からなる群より選択される少なくとも1種の加硫剤(b5−1)が好ましく、チオウレア系加硫剤、キノキサリン系加硫剤、及びビスフェノール系加硫剤からなる群より選択される少なくとも1種の加硫剤がより好ましく、特に好ましくはキノキサリン系加硫剤である。これらの加硫剤は単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0143】
加硫用ゴム組成物は、エピクロルヒドリンゴム(b1−1)100重量部に対して、0.1〜10重量部の加硫剤(b5−1)を含むことが好ましい。より好ましくは、0.5〜5重量部である。加硫剤が0.1重量部未満であると、架橋効果が不十分となるおそれがあり、10重量部を超えると、本発明の積層体を成形して得られる成形体が剛直になりすぎて、実用的なゴム物性が得られないおそれがある。
【0144】
加硫用ゴム組成物は、チオウレア系加硫剤、キノキサリン系加硫剤、及びビスフェノール系加硫剤からなる群より選択される少なくとも1種の加硫剤に加えて、更に、パーオキサイド系加硫剤を含有することも好ましい形態の一つである。パーオキサイド系加硫剤としては、ジクミルパーオキサイドが好ましい。パーオキサイド系加硫剤は、エピクロルヒドリンゴム(b1−1)100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましい。また、5質量部以下であることが好ましい。例えば、加硫用ゴム組成物において、化合物(b2−1)やエポキシ樹脂(b7)の含有量が少ない場合、良好な接着性が得られないおそれがあるが、パーオキサイド系加硫剤を含有することによって、化合物(b2−1)やエポキシ樹脂(b7)の含有量が少ない場合であっても、隣接する層との接着性を良好なものとすることができる。
【0145】
加硫用ゴム組成物は、更に受酸剤を含んでもよい。受酸剤の例としては、周期表第(II)族金属の酸化物(但し、酸化マグネシウムを除く)、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、亜リン酸塩、周期表第(IV)族金属の酸化物、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜リン酸塩、塩基性亜硫酸塩等、及び下記一般式(2):
MgZnAl(OH)2(x+y)+3z−2CO・wHO (2)
(xとyは0〜10の実数、ただしx+y=1〜10、zは1〜5の実数、wは0〜10の実数を表す。)で示される合成ハイドロタルサイト類、及び一般式(C):
〔AlLi(OH)X・mHO (C)
(式中Xは、無機又は有機のアニオンであり、nはアニオンXの価数であり、mは3以下の数である。)で示されるLi−Al系包接化合物が挙げられる。
【0146】
受酸剤の具体的な例としては、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フタル酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、酸化錫、塩基性亜リン酸錫をあげることができる。
【0147】
さらに、一般式(2)で示される合成ハイドロタルサイト類については、例えば、MgZnAl (OH)12CO・wHO等を挙げることができる。また、一般式(2)に含まれる下記一般式(D):
MgAl(OH)2x+3y−2CO・wHO (D)
(但しxは1〜10、yは1〜10、wは正の整数を表す)で表される化合物であってもよい。更に具体的に例示すれば、Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、Mg4.5Al(OH)13CO、MgAl(OH)12CO・3.5HO、MgAl(OH)16CO・4HO、MgAl(OH)10CO・1.7HO等を挙げることができる。
【0148】
さらに、一般式(C)で示されるLi−Al系包接化合物については、〔AlLi(OH)CO・HO等が挙げられる。
【0149】
また、Li−Al系包接化合物のアニオン種としては、炭酸、硫酸、過塩素酸、リン酸のオキシ酸、酢酸、プロピオン酸、アジピン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、p−オキシ安息香酸、サリチル酸、ピクリン酸等が挙げられる。また、これらの受酸剤は単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0150】
受酸剤のうちエピハロヒドリン系ゴムの耐熱性の観点から、好ましく用いられる受酸剤は金属酸化物、金属水酸化物、無機マイクロポーラスクリスタルである。これらの受酸剤は、隣接する層との接着力を損なわない範囲の量で配合する。
【0151】
加硫用ゴム組成物は、加硫特性を阻害したりゴムの物性を損なったりするおそれがあるため、アミン化合物を、含有しないことが好ましい。
【0152】
加硫用ゴム組成物はまた、水担持物質(b9)を含むことが好ましい。
水担持物質(b9)は、吸水物及び含水物から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0153】
水担持物質(b9)の吸水物としては、ポリエーテル化合物、金属化合物などが吸水してなる吸水物が挙げられる。化合物への吸水については、水分との接触(例えば、含浸等)に行われ、特に限定されることはない。
【0154】
ポリエーテル化合物としては、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0155】
金属化合物は金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、塩酸塩、硫化塩、硫酸塩、珪酸塩、合成ハイドロタルサイドなどが挙げられる。
【0156】
金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛、水酸化鉄、水酸化銅、水酸化マンガンなどが挙げられる。
金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化銅などが挙げられる。
金属炭酸塩としては、炭酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸銅などが挙げられる。
金属塩酸塩としては、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅などが挙げられる。
金属硫化塩としては、硫化亜鉛、硫化カルシウム、硫化マグネシウム、硫化銅、硫化亜鉛などが挙げられる。
金属硫酸塩としては、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸銅などが挙げられる。
金属珪酸塩としては、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸ナトリウム、珪酸銅などが挙げられる。
【0157】
接着性を向上させる観点からは、水担持物質(b9)の吸水物は、吸水保持率が5質量%以上の化合物であることが好ましい。さらに好ましくは、吸水保持率が10質量%以上の化合物である。吸水保持率は吸水物が保持する水分量の割合であり、下記から算出される。
吸水保持率(質量%)=(吸水物が保持する水分量(質量))/吸水物(質量))×100
【0158】
水担持物質(b9)の含水物としては、金属塩水和物が挙げられる。
金属塩水和物としては、カルシウム、アルミニウム、亜鉛、マンガン、ランタン、チタン、ジルコニウム、鉄、コバルト、ニッケル、マグネシウム、銅といった金属の珪酸、硼酸、燐酸、塩酸、硫化水素、硫酸、硝酸、炭酸等の無機酸塩水和物、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、コハク酸、サリチル酸、クエン酸等のカルボン酸といった有機酸塩水和物が挙げられる。好ましくは、酢酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸マンガン、硫酸銅、硫酸ランタン、硫酸チタン、硫酸ジルコニウム、硫酸鉄、硫酸コバルト及び硫酸ニッケルから選択される金属塩の水和物であり、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、銅から選択される金属の硫酸塩及び/又は酢酸塩の水和物であることが好ましく、硫酸カルシウム2水和物、硫酸ナトリウム10水和物、硫酸銅(II)5水和物であることがより好ましく、硫酸カルシウム2水和物、硫酸ナトリウム10水和物であることが特に好ましい。
【0159】
水担持物質(b9)の配合量は、エピクロルヒドリンゴム(b1−1)100質量部に対して0.1〜80質量部、好ましくは0.5〜70質量部であり、更に好ましくは1〜50質量部であり、特に好ましいのは1〜20質量部である。これらの範囲内であると、充分な接着効果が得られ、加硫物の機械的物性が損なわれることもないため好ましい。
【0160】
加硫用ゴム組成物はまた、銅塩を含んでいても良い。
銅塩としては、有機銅塩が好ましい。有機銅塩としては、蟻酸、酢酸、酪酸、ステアリン酸等の飽和カルボン酸の銅塩、オレイン酸、リノール酸等の不飽和カルボン酸の銅塩、サリチル酸、安息香酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸の銅塩、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸の銅塩、乳酸、クエン酸等のヒドロキシ酸の銅塩、カルバミン酸の銅塩、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸銅、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸銅、ジベンジルジチオカルバミン酸銅等のチオカルバミン酸、スルホン酸等の銅塩が挙げられる。有機銅塩としては、飽和カルボン酸の銅塩、不飽和カルボン酸の銅塩、芳香族カルボン酸の銅塩、チオカルバミン酸の銅塩が好ましく、ステアリン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅がより好ましい。
【0161】
接着性向上の観点から、銅塩の配合量は、エピクロルヒドリンゴム(b1−1)100質量部に対して0.01〜5質量部、好ましくは0.05〜3質量部である。さらに好ましくは0.1〜2質量部である。これらの範囲内であると、充分な接着効果が得られ、加硫物の機械的物性が損なわれることもないため好ましい。
【0162】
加硫用ゴム組成物は、層(A)にエピクロルヒドリンゴム(b1−1)とは別の特性を付与するために、更に、エポキシ樹脂以外の他の樹脂を含有してもよい。樹脂としては、たとえばポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリウレタン(PUR)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、エチレン−酢酸ビニル(EVA)樹脂、スチレン−アクリロニトリル(AS)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、塩素化ポリスチレン、クロロスルホン化ポリスチレンエチレン等が挙げられる。この場合、樹脂の配合量は、エピクロルヒドリンゴム(b1−1)100質量部に対し1〜50質量部が好ましい。
【0163】
また本発明においては、目的または必要に応じて、一般の加硫用ゴム組成物に配合する通常の添加物、たとえば充填剤、加工助剤、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、着色剤、安定剤、接着助剤、離型剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、表面非粘着剤、粘着付与剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤、紫外線吸収剤、耐油性向上剤、発泡剤、スコーチ防止剤、滑剤などの各種添加剤を配合することができる。また、上記のものとは異なる常用の加硫剤や加硫促進剤を1種または2種以上配合してもよい。ただし、これらの添加剤は、層(B)との接着力を損なわない範囲の量で配合する。
【0164】
充填剤、加工助剤、可塑剤としては、上述したものと同様のものが挙げられる。
【0165】
加硫用ゴム組成物は、エピクロルヒドリンゴム(b1−1)、化合物(b2−1)、受酸剤(b3−1)、及び、エポキシ樹脂(b7−1)、さらに要すれば、シリカ(b4−1)、酸化亜鉛(b8)、加硫剤(b5−1)並びにその他の添加剤を混練することにより調製される。
【0166】
混練は、たとえば150℃以下の温度でオープンロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダーなどを用いて行うことができる。
【0167】
本発明の積層体は、ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)とを積層することにより製造できる。本発明の積層体は、フッ素樹脂層(B)の両側にゴム層(A)が積層されていてもよいし、ゴム層(A)の両側にフッ素樹脂層(B)が積層されていてもよい。
【0168】
ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)の積層は、ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)を別々に成形した後に圧着などの手段で積層する方法、ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)を同時に成形して積層する方法、ゴム層(A)にフッ素樹脂層(B)を塗布する方法のいずれでもよい。
【0169】
ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)を別々に成形した後に圧着などの手段で積層する方法では、フッ素ポリマーの成形方法と加硫用ゴム組成物のそれぞれ単独での成形方法が採用できる。
【0170】
ゴム層(A)の成形は、加硫用ゴム組成物を加熱圧縮成形法、トランスファー成形法、押出成形法、射出成形法、カレンダー成形法、塗装法などにより、シート状、チューブ状などの各種形状の成形体とすることができる。
【0171】
フッ素樹脂層(B)は、加熱圧縮成形、溶融押出成形、射出成形、塗装(粉体塗装を含む)などの方法により成形できる。成形には通常用いられるフッ素ポリマーの成形機、たとえば射出成形機、ブロー成形機、押出成形機、各種塗装装置などが使用でき、シート状、チューブ状など、各種形状の積層体を製造することが可能である。これらのうち、生産性が優れている点から、溶融押出成形法が好ましい。
【0172】
また、後述するように、フッ素樹脂層(B)に他のポリマー層(C)を積層する場合は、多層押出成形、多層ブロー成形、多層射出成形などの成形方法を適用でき、多層チューブ、多層ホース、多層タンクなどの多層成形品とすることができる。
【0173】
ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)を同時に成形して積層する方法としては、ゴム層(A)を形成する加硫用ゴム組成物およびフッ素樹脂層(B)を形成する上記共重合体を用いて、多層圧縮成形法、多層トランスファー成形法、多層押出成形法、多層射出成形法、ダブリング法などの方法により成形と同時に積層する方法があげられる。この方法では、ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)とを同時に積層できるため、ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)とを密着させる工程が特に必要ではなく、また、後の加硫工程において強固な接着を得るのに好適である。
このような方法により未加硫のゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)とが積層された未加硫の積層体が得られる。
【0174】
本発明の積層体は、上述した方法で得られる未加硫の積層体を加硫処理することにより得られたものであることが好ましい。上記の未加硫の積層体を加硫処理して得られた積層体は、ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)が加硫接着され、強固な接着性を有するものとなる。
【0175】
加硫処理は、従来公知の加硫用ゴム組成物の加硫方法と条件が採用できる。たとえば、未加硫の積層体を長時間加硫する方法、未加硫の積層体を比較的単時間で前処理としての熱処理をし(加硫も生じている)、ついで長時間かけて加硫を行う方法がある。これらのうち、未加硫の積層体を比較的短時間で前処理としての熱処理をし、ついで長時間かけて加硫を行う方法が、前処理でゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)との密着性が容易に得られ、また、前処理で既にゴム層(A)が加硫しており形状が安定化しているので、その後の加硫における積層体の保持方法をさまざまに選択することができるので好適である。
【0176】
加硫処理の条件は特に制限されるものではなく、通常の条件で行うことができるが、130〜260℃で、10分〜80時間、スチーム、プレス、オーブン、エアーバス、赤外線、マイクロウェーブ、被鉛加硫などを用いて処理を行うことが好ましい。より好ましくは、160〜230℃で、20分〜80時間かけて行う。
【0177】
前処理の加熱条件も特に制限されないが、100〜170℃で、30秒〜1時間、スチーム、プレス、オーブン、エアーバス、赤外線、マイクロウェーブ、被鉛加硫などを用いて処理を行うことが好ましい。
【0178】
得られる積層体ではゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)が加硫接着しており、強固な層間接着力が生じている。
【0179】
本発明の積層体は、ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)の2層構造でもよいし、(A)−(B)−(A)または(B)−(A)−(B)といった3層構造でもよい。さらに、ゴム層(A)およびフッ素樹脂層(B)以外のポリマー層(C)が接着された3層以上の多層構造であってもよい。
【0180】
ポリマー層(C)としては、ゴム層(A)以外のゴム層(C1)、フッ素樹脂層(B)以外の樹脂層(C2)、さらには繊維補強層などでもよい。また、ポリマー層(C)を介して、ゴム層(A)および/またはフッ素樹脂層(B)をさらに積層させてもよい。
【0181】
ゴム層(C1)の材料としては、フッ素樹脂層(B)と直接接着されているゴム層(A)として使用したゴム以外のゴムがあげられ、フッ素ゴムでも非フッ素ゴムでもよい。具体例は、未加硫ゴム(a1)の例としてあげたものが例示できる。
【0182】
なお、ゴム層(C1)を形成する未加硫ゴム組成物中にも、加硫剤(a6)や、その他の配合剤を配合してもよい。
【0183】
樹脂層(C2)の材料としては、フッ素樹脂(但し、フッ素樹脂層(B)を除く)、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS)、セルロース系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、ポリエーテルイミド樹脂などの機械的強度に優れた樹脂や、エチレン/ビニルアルコール共重合体からなる樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフタルアミド(PPA)などの燃料や気体の透過性が低い樹脂(以下、低透過性樹脂ということもある)があげられる。なかでも成形性、接着性が良好な点からポリアミド系樹脂が好ましい。積層体として加硫処理に供される場合は、樹脂の融点が熱処理の温度よりも高いことが望ましい。
【0184】
つぎに本発明の積層体の層構造について説明する。
【0185】
(1)ゴム層(A)−フッ素樹脂層(B)の2層構造
基本構造であり、従来、フッ素樹脂層(B)とゴム層(A)を積層させるには、層間(フッ素樹脂層−ゴム層)の接着が不充分なため、樹脂側において表面処理を施したり、別途接着剤を層間に塗布したり、テープ状のフィルムを巻き付けて固定したりなどと工程が複雑になりがちであったが、そのような複雑な工程を組まずに、加硫することにより加硫接着が起こり化学的に強固な接着が得られる。
【0186】
(2)ゴム層−フッ素樹脂層(B)−ゴム層の3層構造
(A)−(B)−(A)および(A)−(B)−(C1)がある。シール性が要求される場合、たとえば燃料配管などの接合部は、シール性保持のためにゴム層を両側に配置することが望ましい。内外層のゴム層は同じ種類であっても、違う種類であっても良い。
【0187】
また、燃料配管を(A)−(B)−(C1)型構造とし、ゴム層(A)として非フッ素ゴム層を、ゴム層(C1)としてフッ素ゴム層を設け、フッ素ゴム層(C1)を配管の内層にすることにより、耐薬品性、燃料低透過性が向上する。
【0188】
(3)樹脂層−ゴム層(A)−樹脂層の3層構造
(B)−(A)−(B)および(B)−(A)−(C2)がある。
内外層のゴム層は同じ種類であっても、違う種類であっても良い。
【0189】
樹脂層を両側に配置することで形状が安定する。また、耐薬品性が重視される場合に好適である。さらにそれぞれの側に別の機械特性を要求されるような場合は、(B)−(A)−(C2)型であっても良い。
【0190】
(4)樹脂層(C2)−フッ素樹脂層(B)−ゴム層(A)の3層構造
【0191】
(5)フッ素樹脂層(B)−ゴム層(A)−ゴム層(C1)の3層構造
【0192】
(6)4層構造以上
(2)〜(5)の3層構造に加えて、さらに任意のゴム層(A)または(C1)、樹脂層(B)または(C2)を目的に応じて積層してもよい。例えば、(A)−(B)−(A)−(C1)、(C1)−(A)−(B)−(A)−(C1)等が挙げられる。また、金属箔などの層を設けてもよいし、ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)との層間以外には接着剤層を介在させてもよいし、フッ素樹脂層に表面処理を行ってもよい。
【0193】
またさらに、ポリマー層(C)と積層してライニング体とすることもできる。
【0194】
なお、各層の厚さ、形状などは、使用目的、使用形態などによって適宜選定すればよい。
【0195】
本発明の積層体は、燃料低透過性に優れるほか、耐熱性・耐油性・耐燃料油性・耐LLC性・耐スチーム性に優れており、また、苛酷な条件下での使用に充分耐えうるものであり、各種の用途に使用可能である。
【0196】
たとえば、自動車用エンジンのエンジン本体、主運動系、動弁系、潤滑・冷却系、燃料系、吸気・排気系など、駆動系のトランスミッション系など、シャーシのステアリング系、ブレーキ系など、電装品の基本電装部品、制御系電装部品、装備電装部品などの、耐熱性・耐油性・耐燃料油性・耐LLC性・耐スチーム性が要求されるガスケットや非接触型および接触型のパッキン類(セルフシールパッキン、ピストンリング、割リング形パッキン、メカニカルシール、オイルシールなど)などのシール、ベローズ、ダイヤフラム、ホース、チューブ、電線などとして好適な特性を備えている。
【0197】
具体的には、以下に列記する用途に使用可能である。
【0198】
エンジン本体の、シリンダーヘッドガスケット、シリンダーヘッドカバーガスケット、オイルパンパッキン、一般ガスケットなどのガスケット、O−リング、パッキン、タイミングベルトカバーガスケットなどのシール、コントロールホースなどのホース、エンジンマウントの防振ゴム、水素貯蔵システム内の高圧弁用シール材など。
【0199】
主運動系の、クランクシャフトシール、カムシャフトシールなどのシャフトシールなど。
【0200】
動弁系の、エンジンバルブのバルブステムシールなど。
【0201】
潤滑・冷却系の、エンジンオイルクーラーのエンジンオイルクーラーホース、オイルリターンホース、シールガスケットなどや、ラジエータ周辺のウォーターホース、バキュームポンプのバキュームポンプオイルホースなど。
【0202】
燃料系の、燃料ポンプのオイルシール、ダイヤフラム、バルブなど、フィラー(ネック)ホース、燃料供給ホース、燃料リターンホース、ベーパー(エバポ)ホースなどの燃料ホース、燃料タンクのインタンクホース、フィラーシール、タンクパッキン、インタンクフューエルポンプマウントなど、燃料配管チューブのチューブ本体やコネクターO−リングなど、燃料噴射装置のインジェクタークッションリング、インジェクターシールリング、インジェクターO−リング、プレッシャーレギュレーターダイヤフラム、チェックバルブ類など、キャブレターのニードルバルブ花弁、加速ポンプピストン、フランジガスケット、コントロールホースなど、複合空気制御装置(CAC)のバルブシート、ダイヤフラムなど。
【0203】
吸気・排気系の、マニホールドの吸気マニホールドパッキン、排気マニホールドパッキンなど、EGR(排気際循環)のダイヤフラム、コントロールホース、エミッションコントロールホースなど、BPTのダイヤフラムなど、ABバルブのアフターバーン防止バルブシートなど、スロットルのスロットルボディパッキン、ターボチャージャーのターボオイルホース(供給)、ターボオイルホース(リターン)、ターボエアホース、インタークーラーホース、タービンシャフトシールなど。
【0204】
トランスミッション系の、トランスミッション関連のベアリングシール、オイルシール、O−リング、パッキン、トルコンホースなど、ATのミッションオイルホース、ATFホース、O−リング、パッキン類など。
【0205】
ステアリング系の、パワーステアリングオイルホースなど。
【0206】
ブレーキ系の、オイルシール、O−リング、パッキン、ブレーキオイルホースなど、マスターバックの大気弁、真空弁、ダイヤフラムなど、マスターシリンダーのピストンカップ(ゴムカップ)など、キャリパーシール、ブーツ類など。
【0207】
基本電装部品の、電線(ハーネス)の絶縁体やシースなど、ハーネス外装部品のチューブなど。
【0208】
制御系電装部品の、各種センサー線の被覆材料など。
【0209】
装備電装部品の、カーエアコンのO−リング、パッキン、クーラーホース、外装品のワイパーブレードなど。
【0210】
また自動車用以外では、たとえば、船舶、航空機などの輸送機関における耐油、耐薬品、耐熱、耐スチーム、あるいは耐候用のパッキン、O−リング、ホース、その他のシール材、ダイヤフラム、バルブに、また化学プラントにおける同様のパッキン、O−リング、シール材、ダイヤフラム、バルブ、ホース、ロール、チューブ、耐薬品用コーティング、ライニングに、食品プラント機器および食品機器(家庭用品を含む)における同様のパッキン、O−リング、ホース、シール材、ベルト、ダイヤフラム、バルブ、ロール、チューブに、原子力プラント機器における同様のパッキン、O−リング、ホース、シール材、ダイヤフラム、バルブ、チューブに、一般工業部品における同様のパッキン、O−リング、ホース、シール材、ダイヤフラム、バルブ、ロール、チューブ、ライニング、マンドレル、電線、フレキシブルジョイント、ベルト、ゴム板、ウエザーストリップ、PPC複写機のロールブレードなどへの用途に好適である。たとえば、PTFEダイヤフラムのバックアップゴム材は滑り性が悪いため、使用している間にすり減ったり、破れたりする問題があったが、本発明の積層体を用いることにより、この問題を改善でき、好適に使用できる。
【0211】
また、食品ゴムシール材用途においては、従来ゴムシール材において着香性やゴムの欠片などが食品中に混入するトラブルがあるが、本発明の積層体を用いることにより、この問題を改善でき、好適に使用できる。医薬・ケミカル用途のゴムシール材溶剤を使用する配管のシール材としてゴム材料は溶剤に膨潤する問題があるが、本発明の積層体を用いることにより、樹脂を被覆する事で改善される。一般工業分野では、ゴム材料の強度、すべり性、耐薬品性、透過性を改善する目的において、たとえば、ゴムロール、O−リング、パッキン、シール材等に好適に用いることができる。特に、リチウムイオン電池のパッキン用途には耐薬品性とシールの両方を同時に維持できることから好適に使用できる。その他、低摩擦による摺動性が要求される用途においては、好適に使用できる。
【0212】
また、医療用用途としては、薬栓、ボトルのキャップシール、缶シール、薬用テープ、薬用パッド、注射器シリンジパッキン、経皮吸収薬用基材、ほ乳びん等の吸い口、医療用バッグ、カテーテル、輸液セット、混注管、キャップライナー、真空採血管のキャップ、シリンジ用ガスケット、輸液チューブ、医療機器のガスケット・キャップ、シリンジチップ、グロメット、採血管キャップ、キャップシール、バッキング、O−リング、シースイントロデューサー、ダイレーター、ガイディングシース、血液回路、人工心肺回路、ロ−タブレーター用チューブ、留置針、インフュージョンセット、輸液チューブ、閉鎖式輸液システム、輸液バッグ、血液バッグ、血液成分分離バッグ、血液成分分離バッグ用チューブ、人工血管、動脈カニューレ、ステント、内視鏡処置具保護チューブ、内視鏡スコープチューブ、内視鏡トップオーバーチューブ、咽頭部通過用ガイドチューブ、冠動脈バイパス術用チューブ、イレウスチューブ、経皮経肝胆道ドレナージ術用チューブ、電気メス外装チューブ、超音波メス外装チューブ、剥離鉗子外装チューブ、細胞培養用バッグ等が挙げられる。
【0213】
また、本発明の積層体が適用できるオフショア用成形品としては、海底油田用チューブ若しくはホース(インジェクションチューブ、原油移送チューブ含む)が挙げられる。
【0214】
これらの中でも、特に本発明の積層体は、耐熱性、燃料低透過性の点で、燃料配管に用いられることが好ましい。
【0215】
本発明の積層体からなる燃料配管は通常の方法によって製造することができ、特に制限されることはない。また、上記燃料配管には、コルゲートチューブも含まれる。
【0216】
本発明は、上述の積層体を製造するために使用する共重合体であって、上記共重合体を構成する全単量体単位に対して、96.0〜97.4モル%のクロロトリフルオロエチレン単位及びテトラフルオロエチレン単位を含み、上記共重合体を構成する全単量体単位に対して、2.6〜4.0モル%の上記パーフルオロアルキルビニルエーテル単位を含むことを特徴とする共重合体でもある。
【0217】
上記共重合体の好適な態様は、上述したとおりである。
【実施例】
【0218】
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0219】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0220】
フッ素樹脂(共重合体)の組成
19F−NMR分析により測定した。
【0221】
燃料透過率
表2に記載の組成を有する共重合体のペレットを、それぞれ、直径120mmの金型に入れ、300℃に加熱したプレス機にセットし、約2.9MPaの圧力で溶融プレスして、厚さ0.15mmのシートを得た。CE10(イソオクタンとトルエンとの容量比50:50の混合物にエタノール10容量%を混合した燃料)を18mL投入した内径40mmφ、高さ20mmのSUS316製の燃料透過率測定用カップに得られたシートを設置し、60℃における質量変化を1000時間まで測定した。時間あたりの質量変化、接液部のシートの表面積およびシートの厚さから燃料透過率(g・mm/m/day)を算出した。
【0222】
ソルベントクラック性
押出機を使用して成形した120μm厚の押出フィルムを、JISK6301 1号ダンベルに打ち抜き、治具に試験片をセットした。CE10に治具と共に試験片全体を浸漬させ、浸漬直後よりCE10中で試験片を約20mm/minの延伸速度で延伸した。延伸後15分間静置した後、試験片を取り出しクラックが発生する伸度を目視にて確認した。(エッジ部分にあるクラックは除く)
【0223】
メルトフローレート(MFR)
メルトインデクサー(東洋精機製作所社製)を用い、温度297℃、加重5.0kgで、直径2mm、長さ8mmのノズルから単位時間(10分間)に流出するポリマーの質量(g)を測定した。
【0224】
作製例1〜7
表2に記載の組成を有する共重合体のペレットを使用し、φ30mm単層押出機を用いて、フッ素樹脂シートを得た。押出機は、シリンダー温度を275〜285℃、ヘッド温度を285℃、ダイス温度を290〜295℃、スクリュー回転数を33rpm、シート引き取り速度を3m/min、リップ幅を1150μmに設定した。
【0225】
表2に、各共重合体のMFR、各作製例で得られたフッ素樹脂シートの厚みを示す。表中、PPVEは、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)を表し、HFPは、ヘキサフルオロプロピレンを表す。
【0226】
【表2】
【0227】
作製例8
表3に示す材料を、40℃に温調した8インチオープンロールを用いて混練することにより、約3mm厚みのシート状の加硫用ゴム組成物を得た。なお、表3の各数値は質量部を表す。
【0228】
【表3】
【0229】
実施例1〜4及び比較例1〜2
厚さ約3mmの表3に示す加硫用ゴム組成物のシートと、表2に示す厚みのフッ素樹脂シートを重ね合わせ、片方の端部に幅約10〜15mmの樹脂フィルム(厚さ10μmの離形フィルム)を両シートの間に挟んだ後、得られるシートが厚み2mmになるよう金属製スペーサーを入れた金型に挿入し、160℃で45分間プレスすることにより、シート状の積層体を得た。得られた積層体を幅10mm×長さ40mm×3セットの短冊状に切断し、離形フィルムを剥がして掴みしろとした試験片を作製した。この試験片について、オートグラフ(島津製作所社製 AGS−J 5kN)を使用して、JIS−K−6256(架橋ゴムの接着試験方法)に記載の方法に準拠し、25℃において50mm/minの引張速度で剥離試験を行い、接着強度を測定した。また、剥離モードを観測し、以下の基準で評価した。得られた結果を表4に示す。
【0230】
接着性評価の基準
○:加硫用ゴム組成物のシート又はフッ素樹脂シートから形成された層が、積層体の界面で材料破壊し、界面で剥離するのが不可能であった。
なお、表中で接着性評価が○である場合の接着強度は、樹脂層又はゴム層のうち強度が弱い方の材料が破壊する強度である。
×:積層体が界面で剥離可能で、界面での剥離強度が15N/cm以下であった。
【0231】
【表4】
【0232】
作製例9
表5に示す材料を、40℃に温調した8インチオープンロールを用いて混練することにより、約3mm厚みのシート状の加硫用ゴム組成物を得た。なお、表5の各数値は質量部を表す。
【0233】
【表5】
【0234】
実施例5〜8及び比較例3〜4
厚さ約3mmの表5に示す加硫用ゴム組成物のシートと、表2に示す厚みのフッ素樹脂シートを重ね合わせ、片方の端部に幅約10〜15mmの樹脂フィルム(厚さ10μmの離形フィルム)を両シートの間に挟んだ後、得られるシートが厚み2mmになるよう金属製スペーサーを入れた金型に挿入し、160℃で45分間プレスすることにより、シート状の積層体を得た。得られた積層体を幅10mm×長さ40mm×3セットの短冊状に切断し、離形フィルムを剥がして掴みしろとした試験片を作製した。この試験片について、オートグラフ(島津製作所社製 AGS−J 5kN)を使用して、JIS−K−6256(架橋ゴムの接着試験方法)に記載の方法に準拠し、25℃において50mm/minの引張速度で剥離試験を行い、接着強度を測定した。また、剥離モードを観測し、以下の基準で評価した。得られた結果を表6に示す。
【0235】
【表6】