特許第6949216号(P6949216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許69492164−スルホンアリールジベンゾフランを含む光電材料及び応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6949216
(24)【登録日】2021年9月24日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】4−スルホンアリールジベンゾフランを含む光電材料及び応用
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20210930BHJP
   C07D 405/02 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   H05B33/14 B
   C07D405/02
   H05B33/22 B
   H05B33/22 D
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-523420(P2020-523420)
(86)(22)【出願日】2018年9月25日
(65)【公表番号】特表2021-507502(P2021-507502A)
(43)【公表日】2021年2月22日
(86)【国際出願番号】CN2018107239
(87)【国際公開番号】WO2019114364
(87)【国際公開日】20190620
【審査請求日】2020年6月22日
(31)【優先権主張番号】201711344679.6
(32)【優先日】2017年12月15日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515177907
【氏名又は名称】広東阿格蕾雅光電材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】彭 嘉歓
(72)【発明者】
【氏名】戴 雷
(72)【発明者】
【氏名】蔡 麗菲
【審査官】 岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/128800(WO,A1)
【文献】 特開平05−109485(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104662023(CN,A)
【文献】 国際公開第2014/017094(WO,A1)
【文献】 特開2017−206666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
C07D 405/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−スルホンアリールジベンゾフランを含む双極性材料であって、式(I)に示される構造を有し、
Arはフェニレン基又はナフチレン基であり、
Arはフェニレン基であり、
は独立して水素を表し、
はカルバゾール基、又はインデノカルバゾール基である
ことを特徴とする双極性材料。
【請求項2】
式(I)は以下のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の双極性材料。
【請求項3】
式(I)は以下の構造であることを特徴とする請求項2に記載の双極性材料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の双極性材料の製造方法であって、
ジベンゾフラン(a)をn−ブチルリチウムの存在下でリチウム塩とした後、ヨウ素化して4,6−ジヨードジベンゾフラン(b)を生成し、更に置換若しくは非置換のアリールチオフェノール、ヘテロアリールチオフェノール又は縮合環アリールチオフェノール(c)とのウルマン反応によりチオエーテル中間体(d)を生成するステップと、
ヨードチオエーテル中間体を酸化して、ヨードスルホン化合物(e)を生成するステップと、
スルホン化合物(e)を、置換若しくは非置換のアリールホウ酸/ホウ酸エステル、ヘテロアリールホウ酸/ホウ酸エステル又は縮合環アリールホウ酸/ホウ酸エステル(f)とパラジウム触媒による鈴木反応により反応させて、前記双極性材料を生成するステップとを含み、
反応式は次のとおりであることを特徴とする製造方法。
【請求項5】
有機エレクトロルミネッセンスデバイスであって、
陰極、陽極及び有機層を含み、
前記有機層は、正孔輸送層、正孔阻止層、電子輸送層及び発光層のうちの1つ又は複数であり、
前記有機層の材料は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の双極性材料であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
【請求項6】
前記有機層の総厚さは1〜1000nmであり、
前記有機層は、蒸着又はスピンコーティングにより形成された薄膜である請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の双極性材料を含む有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新たな双極性ホスト材料に関し、有機発光材料技術の分野に属し、具体的には、4−スルホンアリールジベンゾフランを含む光電材料及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)は、アクティブ発光、速い応答速度、低エネルギー消費、高輝度、広視野角、折り曲げなどの特性を有するため、21世紀で最も有望な製品の1つと見なされている。現在、OLEDデバイスは大量生産を達成し、携帯電話、タブレットコンピュータ、カーメーター、ウェアラブルデバイスなどの電子製品で幅広く使用されている。エレクトロルミネッセンス蛍光とエレクトロルミネッセンス燐光は、それぞれ第1世代と第2世代のOLEDと呼ばれる。蛍光材料をベースにしたOLEDは、安定性が高いという特徴があるが、量子統計学の法則によって制限される。電気的活性化の作用下で、一重項励起子と三重項励起子の比率は1:3であるため、蛍光材料のエレクトロルミネセンスの最大内部量子効率はわずか25%である。燐光材料は、重原子のスピン軌道結合作用を有し、一重項励起子と三重項励起子を総合的に利用することによって、100%の内部量子効率に達することができる。研究によると、遷移金属錯体の励起状態励起子の寿命が比較的長いため、高電流密度での三重項励起子蓄積の存在により、三重項−三重項消滅(TTA)及び三重項−ポーラロン消滅(TPA)が発生し、それにより、効率ロールオフの現象が発生する。この問題を克服するために、研究者たちはしばしば燐光材料を有機ホスト材料にドープし、例えば、双極性ホスト材料にドープして、キャリアの注入のバランスをよりよくすることができる。ホスト材料が安定した電荷キャリアと十分に高い三重項エネルギーを提供できることは、高性能燐光デバイスを得るための重要な前提条件である。また、明確に平行な電子伝導及び正孔伝導のグループを持つ化合物の中には、一定の短距離分子秩序を持ち、その分子間のπ−π相互作用により、電荷を迅速に転送することができるとの報告もある。また、熱活性化遅延蛍光特性を持つ材料も燐光デバイスのホストに使用されている。熱活性化遅延蛍光材料の一重項−三重項エネルギー準位差が小さいため、三重項励起子は一重項状態に逆項間交差し、フェルスター(Forster)共鳴エネルギー転移(FRET)を介してゲスト材料に移動することで、発光層における三重項励起子濃度が減少し、デバイスの性能が向上する。熱活性化遅延蛍光材料は、一重項エネルギー準位と三重項エネルギー準位が高く、バランスの取れたキャリア注入と輸送能力を有し、電子伝導グループと正孔伝導グループの両方を備えているため、燐光材料のホストとして適している。高効率の有機発光ダイオードにとって、バランスの取れたキャリア輸送能力を持つホスト材料の開発は重要である。
【0003】
現在、燐光デバイスで広く使用されているホスト材料はCBP(4,4’−ビス(9−カルバゾリル)ビフェニル)であるが、ただし、より高い駆動電圧と低いガラス転移温度(T)(T = 62℃)が必要であり、結晶化が容易である。さらに、CBPはP型の材料であり、正孔移動度は電子移動度よりもはるかに高く、キャリアの注入と輸送のバランスに不利になり、発光効率も低くなる。
【発明の概要】
【0004】
既存のホスト(CBP)材料に必要とされる駆動電圧が高く、ガラス転移温度で結晶化しやすく、キャリア注入及び輸送不均衡などの問題に対して、本発明は双極性材料を提供する。この材料は、4−スルホンアリールジベンゾフランを中心コアとして、特定の配置でジフェニルアミン、カルバゾール、アクリジン、その他の芳香族ジフェニルアミン誘導体などの正孔伝導作用のあるグループを接続するものである。
【0005】
4−スルホンアリールジベンゾフランを含む双極性材料は、式(I)に示される構造を有する化合物である。

Ar、Arは、5〜15個の環原子を有するアリール基又はヘテロアリール基又は縮合環アリール基であり、R、Rは、アルキル基置換又は未置換のアクリジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニイル基、カルバゾール、インデノカルバゾール、ジフェニルアミン又は他の芳香族ジフェニルアミン誘導体、水素、ハロゲン、C1−C4アルキル基を表し、R、Rの少なくとも1つは、アルキル基置換又は未置換のアクリジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニイル基、カルバゾール、インデノカルバゾール、ジフェニルアミン又は他の芳香族ジフェニルアミン誘導体であり、ヘテロアリール基のヘテロ原子はN、Oである。
【0006】
好ましくは、Ar、Arは、6〜14個の環原子のアリール基又は縮合環アリール基、R、Rは水素、C1−C4アルキル基置換又は未置換のアクリジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニイル、カルバゾール、インデノカルバゾール、ジフェニルアミン又は他の芳香族ジフェニルアミン誘導体である。
【0007】
好ましくは、Ar、Arは、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基であり、Rは独立して水素を表し、 Rは、C1−C4アルキル基置換又は未置換のアクリジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニイル基、カルバゾール、インデノカルバゾール、ジフェニルアミン又は他の芳香性ジフェニルアミン誘導体である。
【0008】
好ましくは、Ar、Arはフェニレン基、ナフチレン基であり、Rは独立して水素を表し、Rはアクリジニル基、カルバゾール又はインデノカルバゾールである。
【0009】
式中、Arはフェニレン基、ナフチレン基であり、Arはフェニレン基であり、Rは独立して水素を表し、Rはカルバゾール又はインデノカルバゾールである。
【0010】
好ましくは、式(I)の化合物は、以下の構造化合物である。
【0011】
有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、陰極、陽極及び有機層を含み、上記有機層は、正孔輸送層、正孔阻止層、電子輸送層、発光層の中の1つ又は複数である。上記の有機層は必要に応じて存在してもよく、これらの有機層がすべての層に存在する必要はないことを特に指摘しておくべきである。
【0012】
上記式(I)の上記化合物は発光層の材料である。
【0013】
本発明の電子デバイスの有機層の合計厚さは1〜1000nmであり、好ましくは1〜500 nm、より好ましくは5〜300nmである。
【0014】
上記有機層は、蒸着またはスピンコーティングによって薄膜に形成することができる。
【0015】
上記のように、本発明の式(I)の化合物は以下のとおりであるが、列挙された構造に限定されない。
【0016】
上述した双極性材料の製造方法は、以下の製造ステップを含む。
【0017】
まず、ジベンゾフラン(a)をn−ブチルリチウムの条件下でリチウム塩にした後、ヨウ素化して4,6−ジヨードジベンゾフラン(b)を取得し、次に置換又は非置換のアリールチオフェノール(c)とのウルマン反応によって、チオエーテル中間体(d)を取得する。ハロゲン化チオエーテル中間体を酸化して、ハロゲン化スルホン化合物(e)を取得する。最後に、スルホン化合物(e)を置換又は非置換アリールホウ酸/ホウ酸エステル(f)などとパラジウム触媒による鈴木反応により反応させて、双極性ホスト材料を得る。
【0018】
実験は、本発明の化合物が一般的に使用されるホスト材料CBPより高いガラス転移温度を有し、本発明がホスト材料の熱安定性を大幅に改善することを示している。本発明の双極性ホスト材料で製造される有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、高い安定性を有し、より良好な用途の見通しを有し、有機発光ダイオードのホスト材料に対する要求を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】化合物9のDSC曲線である。
図2】本発明のデバイス構造図であり、10はガラス基板を表し、20は陽極を表し、30は正孔注入層を表し、40は正孔輸送層を表し、50は発光層を表し、60は電子輸送を表し、70は電子注入層を表し、80は陰極を表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施例を参照しながら、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の実施形態はこれらに限定されるものではない。
実施例1
【0021】
(1)4,6−ジヨードジベンゾフラン(b)の合成
合成経路は以下のとおりである。
【0022】
具体的な合成ステップは以下のとおりである。
ジベンゾフラン(8.41g、50mmol)を量って、三つ口フラスコに入れ、窒素で保護し、乾燥ジエチルエーテル(150mL)を添加した。フラスコを−78℃の低温反応器に入れ、n−ブチルリチウム(2.2M、68mL、150mmol)をゆっくりと滴下し、滴下終了後、反応系をゆっくりと室温まで昇温し、10時間撹拌を続けた。その後、−78℃に冷却し、Iのテトラヒドロフラン溶液(38g、150mmol)をゆっくりと滴下し、滴下終了後、室温で4時間撹拌した。反応が完了した後、10%のNaHSO溶液(100mL)を添加し、抽出して層を分離した。無機相をジクロロメタン(3*50mL)で抽出し、有機相を収集し、無水MgSO4で乾燥させ、溶液をスピン乾燥して粗生成物を取得し、その後、エタノールでスラリー化し、吸引濾過して乾燥させ、14gの白色固体を取得した。収率は、67%であった。
【0023】
(2)4−ヨード−6−ビス(フェニルチオ)ジベンゾ[b,d]フラン(d1)の合成
合成経路は以下のとおりである。
【0024】
具体的な合成ステップは以下のとおりである。
4,6−ジヨードジベンゾフラン(b)(4.2g、10mmol)、チオフェノール(0.55g、5mmol)、CuI(0.48g、2.5mmol)、フェナントロリン(0.9g、5mmol)、及び炭酸カリウム(4.8g、35mmol)を量って、100mLの三つ口フラスコに入れ、窒素ガスを3回交換した。乾燥DMSOを添加し、温度を130℃に上げ、16時間反応させた。反応が完了した後、150mLの水を添加し、ジクロロメタン(3*50mL)で抽出し、有機層を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。砂コア漏斗で濾過し、溶媒をスピン乾燥させ、n−ヘキサンを溶離剤として使用し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離して、1.8gの白色固体を取得した。収率は、44.8%であった。
(3)4−ヨード−6−(フェニルスルホニル)ジベンゾ[b,d]フラン(e1)の合成
合成経路は以下のとおりである。
【0025】
具体的な合成ステップは以下のとおりである。
4−ヨード−6−(フェニルチオ)ジベンゾ[b,d]フラン(d1)(1g、2.49mmol)をフラスコに入れ、ジクロロメタンで溶解し、反応系を氷浴に入れ、2.2当量のメタクロロ過安息香酸をゆっくりと添加し、室温で24時間反応させた。反応が完了した後、5%のNaHSO溶液50mLを添加し、ジクロロメタン(3*50mL)で抽出し、有機層を合わせ、NaCO溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離して、吸引濾過してから乾燥させて、0.7gの白色固体を取得した。収率は、64.8%であった。
【0026】
(4)9−[3−(6−(フェニルスルホニル)ジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(1)の合成
合成経路は以下のとおりである。
【0027】
具体的な合成ステップは以下のとおりである。
4−ヨード−6−(フェニルスルホニル)ジベンゾ[b,d]フラン(e1)(0.6g、1.38mmol)、3−(9H−カルバゾール)−9−イル−フェニルボロン酸(f1) (0.4g、1.38mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.08g、0.07mmol)、炭酸カリウム(0.48g、3.45mmol)を量って、50mLのフラスコに入れ、10mLジオキサン、2mL純水を添加し、吸引排気して窒素ガス保護に置き換え、100℃に加熱して10時間反応させた。反応が完了した後、20mLの水を添加し、ジクロロメタン(3*20mL)で抽出し、溶離剤としてジクロロメタン:n−ヘキサン=2:1を使用し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離して、0.66gの白色固体を取得した。収率は、86.9%であった。
【0028】
生成物の測定データは以下のとおりである。
H NMR (400MHz ,CDCl) δ = 8.45 (d, J = 8.0 Hz, 2 H), 8.08 (s, 1 H), 8.03 (d, J = 8.0 Hz, 2 H), 7.89−7.66 (m, 8 H), 7.53−7.46 (m, 6 H), 7.45−7.36 (m, 4 H) ppm. Ms(ESI: Mz 550) (M+1)

実施例2
【0029】
(1)4−ヨード−6−(ナフタレン−2−チオ)ジベンゾ[b,d]フラン(d2)の合成
合成経路は以下のとおりである。
【0030】
具体的な合成ステップは以下のとおりである。
4,6−ジヨードジベンゾフラン(b)(4.2g、10mmol)、2−ナフタレンチオール(0.8g、5mmol)、CuI(0.48g、2.5mmol)、フェナントロリン(0.9g、5mmol)、及び炭酸カリウム(4.8g、35mmol)を量って、100mLの三つ口フラスコに入れ、窒素ガスを3回交換した。乾燥DMSOを添加し、温度を130℃に上げ、16時間反応させた。反応が完了した後、150mLの水を添加し、ジクロロメタン(3*50mL)で抽出し、有機層を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。砂コア漏斗で濾過し、溶媒をスピン乾燥させ、n−ヘキサンを溶離剤として使用し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離して、2.1gの白色固体を取得した。収率は、46.5%であった。
【0031】
(2) 4−ヨード−6−(ナフタレン−2−スルホニル)ジベンゾ[b,d]フラン(e2)の合成
合成経路は以下のとおりである。
【0032】
具体的な合成ステップは以下のとおりである。
4−ヨード−6−(ナフタレン−2−チオ)ジベンゾ[b,d]フラン(d2)(2g、4.42mmol)をフラスコに入れ、ジクロロメタンで溶解し、反応系を氷浴に入れ、2.2当量のメタクロロ過安息香酸をゆっくりと添加し、室温で24時間反応させた。反応が完了した後、5%のNaHSO溶液50mLを添加し、ジクロロメタン(3*50mL)で抽出し、有機層を合わせ、NaCO溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、吸引濾過してから乾燥させて、2gの白色固体を取得した。収率は、93.5%であった。
【0033】
(3) 9−[4−(6−(ナフタレン−2−スルホニル)ジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(2)の合成
合成経路は以下のとおりである。
【0034】
具体的な合成ステップは以下のとおりである。
4−ヨード−6−(ナフタレン−2−スルホニル)ジベンゾ[b,d]フラン(e2)(1.2g、2.76mmol)、4−(9H−カルバゾール)−9−イル−フェニルボロン酸(f2)(0.8g、2.76mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.16g、0.14mmol)、炭酸カリウム(1g、6.9mmol)を量って、50mLのフラスコに入れ、20mLのジオキサン、4mLの純水を添加し、吸引排気して窒素ガス保護に置き換え、100℃に加熱して10時間反応させた。反応が完了した後、20mLの水を添加し、ジクロロメタン(3*20mL)で抽出し、溶離剤としてジクロロメタン:n−ヘキサン= 2:1を使用し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離して、1.3gの白色固体を取得した。収率は、86.1%であった。
【0035】
生成物の測定データは以下のとおりである。
H NMR (400MHz ,CDCl) δ = 8.78 (s, 1 H), 8.20 (d, J = 8.0 Hz, 1 H), 8.06 (d, J = 8.0 Hz, 1 H), 7.96−7.92 (m, 7 H), 7.76−7.53 (m, 6 H), 7.46−28 (m, 9 H) ppm. Ms(ESI: Mz 550) (M+1)

実施例3
【0036】
(1)7,7−ジメチル−5−(3−(6−ナフタレン−2−スルホニル)ジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)フェニル)−5,7−ジヒドロインデノ[2,1−b]カルバゾール(9)の合成
合成経路は以下のとおりである。
【0037】
具体的な合成ステップは以下のとおりである。
4−ヨード−6−(フェニルスルホニル)ジベンゾ[b,d]フラン(e2)(1.21g、2.5mmol)、f3(1.21g、2.5mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.14g、0.12mmol)、炭酸カリウム(0.86g、6.25mmol)を量って、50mLのフラスコに入れ、20mLのジオキサン、4mLの純水を添加し、吸引排気して窒素ガス保護に置き換え、100℃に加熱して10時間反応させた。反応が完了した後、20mLの水を添加し、ジクロロメタン(3*20mL)で抽出し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離して、1.32gの白色固体を取得した。収率は、73.7%であった。
【0038】
生成物の測定データは以下のとおりである。
Ms(ESI: Mz 716) (M+1)

実施例4
【0039】
ガラス転移温度の測定
窒素の保護下で、20℃/分の加熱及び冷却速度で示差走査熱量測定法(DSC)によって、化合物9のガラス転移温度を測定した。測定された化合物9のガラス転移温度Tは98.9℃である(図1)。ただし、文献で報告されているCBPのガラス転移温度は62℃であった。
【0040】
本発明の化合物は、一般的に使用されるホスト材料CBPより高いガラス転移温度を有し、本発明は、ホスト材料の熱安定性を大幅に改善することがわかる。

実施例5
【0041】
有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造
デバイスの構造は、ITO/HATCN(5nm)/TAPC(50nm)/化合物9:Ir(ppy):(4wt%、20nm)/TmPyPb(50nm)/LiF(1nm)/AL(100nm)である。
【0042】
デバイスの製造方法は次のとおりである。図2を参照されたい。
まず、透明導電ITOガラス基板(10と20を含む)を、予め洗浄剤溶液、脱イオン水、エタノール、アセトン及び脱イオン水で洗浄した後、酸素プラズマで30秒間処理した。
次に、ITO上に厚さ5nmのHATCNを正孔注入層30として蒸着した。
次に、正孔注入層上に厚さ50nmのTAPCを正孔輸送層40として蒸着した。
次に、正孔輸送層上に厚さ20nmの化合物9:Ir(ppy):(4wt%)を発光層50として蒸着した。
次に、発光層上に厚さ50nmのTmPyPbを電子輸送層60として蒸着した。
次に、電子輸送層上に厚さ1nmのLiFを電子注入層70として蒸着した。
最後に、電子注入層上に厚さ100nmのアルミニウムをデバイス陰極80として蒸着した。

比較例
【0043】
エレクトロルミネッセンスデバイスの製造
デバイスの構造は、ITO/HATCN(5nm)/TAPC(50nm)/CBP:Ir(ppy):(4wt%、20nm)/TmPyPb(50nm)/LiF(1nm)/AL(100nm)である。
【0044】
方法は実施例4と同じであるが、一般的に使用されている市販の化合物CBPをホスト材料として使用して、比較のためのエレクトロルミネッセンス有機半導体ダイオードデバイスを製造した。
【0045】
実験によると、本発明の双極性ホスト材料を使用して製造されたエレクトロルミネッセンスデバイスは、20mA/cmの電流密度で、7.8Vの電圧、6849cd/mの輝度、34.25cd/Aの電流効率、13.83lm/Wの電力効率、及び10.12%の外部量子効率EQEを有する。一方、市販されているホストCBPによって製造されたエレクトロルミネッセンスデバイスは、同じ電流密度で、7.71Vの電圧、5845cd/mの輝度、29.23cd/Aの電流効率、11.91lm/Wの電力効率、及び8.5%の外部量子効率EQEを有する。従って、本発明の双極性ホスト材料を使用すると、CBPで製造されたデバイスよりも17%高い電流効率及び19%高い外部量子効率を取得でき、より高いデバイス安定性を取得でき、有機発光ダイオードのホスト材料に対する要求を満たす。
図1
図2