【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度独立行政法人科学技術振興機構研究成果展開事業研究成果最適展開支援プログラム産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方の面の所定の位置より入射した光を、前記所定の位置に対応する他方の面の位置より射出する第1の光学部材と、第1の光学部材上に配された複数のシンチレータと、を備えたシンチレータプレートであって、
前記複数のシンチレータの面の法線方向で、且つ前記第1の光学部材が位置する方向に、前記複数のシンチレータを夫々投影したとき前記第1の光学部材に至るまでの間に隣接する前記複数のシンチレータの端部同士が重なりあい、前記隣接する複数のシンチレータは、前記法線方向の異なる位置に配されており、前記複数のシンチレータの一部は、前記第1の光学部材とは別の、一方の面の所定の位置より入射した光を、前記所定の位置に対応する他方の面の位置より射出する第2の光学部材を介して前記第1の光学部材上に配されていることを特徴とするシンチレータプレート。
前記第2の光学部材は、前記一方の面に比して前記他方の面の大きさが小さく、前記一方の面に入射した光を前記他方の面側に縮小して伝搬させるものであることを特徴とする請求項8に記載のシンチレータプレート。
前記第2の光学部材により縮小される倍率は、被写体における解像したい周期をF、前記周期に沿った検出器の画素サイズをPとすると、2P/F以上であることを特徴とする請求項9に記載のシンチレータプレート。
前記シンチレータが、柱状の複数の第1の相と、前記複数の第1の相のそれぞれの周りに位置する第2の相とを有するシンチレータ結晶体を用いて構成され、前記第1の相と前記第2の相とはシンチレーション光に対する屈折率が互いに異なることを特徴とする請求項1から12の何れか1項に記載のシンチレータプレート。
前記第1の相がGdを含有するペロブスカイト型酸化物材料であり、前記第1の相が発光中心として希土類元素を0.001mol%以上含有し、前記第2の相がアルミナであると共に、前記第1の相がシンチレーション光を発することを特徴とする請求項13に記載のシンチレータプレート。
前記複数のシンチレータの一部は、前記第1の光学部材とは別の、一方の面の所定の位置より入射した光を、前記所定の位置に対応する他方の面の位置より射出する第2の光学部材を介して前記第1の光学部材上に配されており、
前記シンチレータプレートを構成する複数のシンチレータの一部は、前記第2の光学部材を介して前記第1の光学部材上に配されており、前記第2の光学部材は、前記一方の面に比して前記他方の面の大きさが小さく、前記一方の面に入射した光を前記他方の面側に縮小して伝搬させるものであること特徴とする請求項16に記載の放射線検出器。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のシンチレータプレートは、X線とはじめとする放射線の入射により光を発生させる複数のシンチレータを光学部材上に配して構成される。放射線には、X線の他、α線、γ線等が含まれ、本願明細書ではX線を例として説明するが、放射線はX線に限定されるものではない。本発明のシンチレータプレートは、一方の面の所定の位置より入射した光を、所定の位置に対応する他方の面の位置より射出する第1の光学部材と、第1の光学部材上に配された複数のシンチレータと、を備えて構成される。そして、放射線が入射する複数のシンチレータの面の法線方向で、且つ第1の光学部材が位置する方向に、複数のシンチレータを夫々投影したとき第1の光学部材に至るまでの間に隣接する複数のシンチレータの端部同士が重なりあうことが特徴である。
【0012】
本発明のシンチレータプレートは、隣接する複数のシンチレータに、平行な放射線が入射し、複数のシンチレータは、放射線が入射する面の法線方向の異なる位置に配された構成とすることもできる。また、放射線が放射線状に拡がる放射線であり、複数のシンチレータの放射線が入射する面が放射状に設けられている構成とすることもできる。
【0013】
本発明のシンチレータプレートでは、複数のシンチレータをタイリング配置する際、前述の接着層が存在しない構成とすることができる。よって、このシンチレータプレートを検出部と組み合わせて放射線検出器を構成すると、シンチレータの全領域で入射するX線に対する不感領域の発生確率が低減され(実質的に不感領域がなく)、欠損画素が生じないシンチレータプレートを提供することができる。
【0014】
以下、図面を参照して本実施形態をより具体的に説明する。
【0015】
図1に本発明のシンチレータプレートを適用した放射線検出器100の模式図を示す。放射線検出器100は、シンチレータプレート101と、シンチレータプレートからのシンチレーション光を検出する光検出器104とを備える。検出部104は、基板105と、基板に2方向に配列された受光素子106を有し、受光素子毎にその受光素子の受光面に入射した光の強度を検出する。シンチレータプレート101は、第1の光学部材103上に複数のシンチレータ(102a,102b、102c、102d、102e)を配して構成されている。第1の光学部材103は、一方の面の所定の位置より入射した光を、所定の位置に対応する他方の面の位置より射出する機能を備えた部材である。こうした光学部材としては多数(例えば、数千万本)の光ファイバを束ねて形成されたFOP(Fiber Optic Plate)を用いることができる。この光学部材は、第1の光学部材の一方の面の所定の位置で光ファイバに入射した光をこれに対応する他方の面の所定に位置で光検出器に導くことができる。複数のシンチレータは、複数のシンチレータ結晶体102(102a〜102e)で構成されている。ここで、3つのシンチレータ結晶体102a、102b及び102cは、第1の光学部材103a直上に設けられているが、2つのシンチレータ結晶体102d及び102eは、第2の光学部材(103b、103c)を介して第1の光学部材103a上に設けられている。第2の光学部材も第1の光学部材と同様に一方の面の所定の位置より入射した光を、所定の位置に対応する他方の面の位置より射出する機能を備えた部材である。そして、第2の光学部材も光ファイバを束ねて形成されたFOP(Fiber Optic Plate)を用いることができる。ここで、第1の光学部材103aとして用いたFOPは、入射(入力)端面に入射した光を射出(出力)端面にそのまま等倍で伝搬するものであり、入射(入力)端面のサイズ(D
0)と射出端面のサイズ(D
0)が等しい。よって、3つのシンチレータ結晶体(102a、102b、102c)によって形成されるX線画像は、光検出器104に、縮尺が変わることなくそのまま伝搬される。一方、第2の光学部材として用いた2つのFOP(103b、103c)は、入射(入力)端面に入射した光を射出(出力)端面に縮小して伝搬するFOP(テーパFOPともいう)である。ここでは、入射(入力)端面のサイズ(D
1)に対して、射出(出力)端面のサイズ(D
2)が小さく(D
2<D
1)なっており、その出力端面は、第1の光学部材103aの入力端面に接続され、光検出器に伝送される。即ち、第2の光学部材は、一方の面と他方の面との大きさが相異する。よって、2つのシンチレータ結晶体(102d、102e)によって形成されるX線画像は、D
2/D
1の倍率に縮小されて伝搬されることになる。
【0016】
本発明においては、放射線が入射する複数のシンチレータの面の法線方向で、且つ第1の光学部材が位置する方向に、複数のシンチレータを夫々投影したとき第1の光学部材に至るまでの間に隣接する複数のシンチレータの端部同士が重なりあうことが特徴である。隣接するシンチレータとしてシンチレータ結晶体(102b、102e)を参照して説明する。シンチレータプレート101に入射する放射線108のうち二つのシンチレータ結晶体(102b、102e)の境界領域に入射する放射線(108a、108b)について考える。符号107(107a〜107e)は、放射線が入射するシンチレータの面の法線方向を表している。放射線108aは、シンチレータ結晶体102bに入射して、発光109aが生じ、この発光が第1の光学部材であるFOP(103a)により、縮尺を保ったまま光検出器104に導波される。放射線108bは、シンチレータ結晶体102eに入射して、発光109bが生じ、この発光が第2の光学部材であるFOP(103c)により、D
2/D
1の倍率に縮小され、さらに第1に光学部材であるFOP(103a)によって発光109bとして光検出器104に導波される。隣接する2つのシンチレータ102bと102eは、放射線が入射する面の法線方向107b、107eで、且つ第1の光学部材103aが位置する方向に、夫々投影したとき第1の光学部材103aに至るまでの間に端部同士が重なりあっている。
図1において放射線108aの入射位置を、108aから108bの位置に連続的に変化させた場合、放射線が入射するシンチレータ結晶体は、通常のタイリングの際、用いられる接着層が無い為、シンチレータ結晶体102bから102eへと連続的に変化することになる。よって、隣接するシンチレータ結晶体(102b)の端部とシンチレータ結晶体(102e)の端部を、放射線が入射する面の法線方向で、且つ第1の光学部材が位置する方向に、夫々投影したとき第1の光学部材103aに至るまでの間に端部同士が重なりあうように(L>0)配置することで、入射するX線に対する不感領域を無くすことができる。隣接するシンチレータ結晶体102aと102d、102bと102d、102cと102eの境界領域についても同様であり、シンチレータの全領域で入射するX線に対する不感領域がないシンチレータプレート101が構成される。ここで、隣接す複数のシンチレータの端部同士の重なりは、得ようとする解像度、製造プロセスの条件等を考慮して適宜決定されるが、一般的には、10μmから300μmの範囲の長さとされる。そしてより好ましくは、30μmから200μmの範囲の長さとされ、更には、50μmから150μmの範囲の長さとするのが好適である。
【0017】
ここで、第2の光学部材であるテーパFOP(103b、103c)によって縮小される倍率D
2/D
1の値が小さ過ぎる場合は、撮像する被写体の解像度が低下することが有る為、適切な倍率を用いる必要がある。すなわち、被写体における解像したい周期をFとし、その周期に沿った検出器の画素のサイズをPとして表わすと、F×D
2/D
1≧2Pを満たす必要がある。例えば、F=8μmの2次元パターンを、それに沿って2次元に配列するP=2.5μmの画素サイズの検出器で解像する場合は、D
2/D
1≧0.625とする必要がある。また、言い換えると、用いる画素サイズとテーパFOPの縮小倍率D
2/D
1が決まっている場合は、解像可能な周期は、F≧2P×D
1/D
2となる。
【0018】
図3は、
図1示す放射線検出器を用い、校正の基準として2Dの格子状パターンのX線が入力された場合のX線画像の補正方法を示すものである。305はX線のパターンを構成するドットを示している。ここで、第2の光学部材であるFOP(103b、103c)の縮尺はD
2/D
1=0.9とし、2次元の情報を均等に縮小する場合を考える。シンチレータ結晶体(102a、102b、102c)によって形成されるX線画像(入力データ)は、光検出器に縮尺が変わることなく(D
0)そのまま伝達される。一方、シンチレータ結晶体(102d、102e)によって形成されるX線画像は、縮小されて光検出器で読み出されることになる。
【0019】
初めに、光検出器の信号を用いて、各々の入力端面と、該入力端面に対応する出力端面の縮尺関係を取得する。そして、この縮尺関係に基づく補正係数を用いて拡大処理を施すことで、入力データと等しい縮尺のX線画像を形成する。このX線画像の縮尺に関わる補正を第一の補正手段とする。続いて、各々の入力端面に対応するX線画像の輝度のムラを補正する。輝度分布が生じる原因としては、まず、各々に配置されたシンチレータの特性(厚さ、発光量)のばらつきに起因するものがある。加えて、縮尺領域ではより厚いFOPを介して光検出器に光が導波されるため、光検出器に導波される光量が低下することによる輝度低下が生じる場合がある。領域毎の輝度分布に基づく補正係数を用いて輝度補正を施すことで、入力データと等しい輝度分布を有するX線画像を形成することができる。このX線画像の輝度に関わる補正を第二の補正手段とする。
【0020】
以上の縮尺と輝度に関わる補正手段の校正の基準として、例えば
図3に示す2Dの格子状パターンのX線信号の入力値と、光検出器による読み出し値を用いて、各々の領域の補正係数を取得することができる。また、D
2/D
1<1の場合、必然的にX線画像に対応する情報が無い読み出し領域が形成されるが、この領域を除いて補正されたX線画像を形成する。以上の第一と第二の補正手段を用いて、スケールと輝度が補正されたX線画像を形成することができる。
【0021】
このようにして、隣接する複数の入力端面が異なる面上に配置し、すなわち、隣接するシンチレータ結晶体の配置をX線の光路に沿ってずらし、X線の上流側に配置されたシンチレータ結晶体(102d、102e)によって形成されるX線画像の情報を縮小して光検出器に伝達することで、シンチレータ結晶体同士をX線の光路上に重ねることができるようになる。このような配置にすることで、隣接するシンチレータ結晶体間に接着層が存在しない構成となり、シンチレータプレートに入射するX線に対する不感領域がなく、全域でタイリング境界による欠損画素の発生確率を低減するシンチレータプレートを提供することができる。
【0022】
ここで、シンチレータ結晶体としては、
図2に模式図で示すような、相分離結晶体201を用いることで高い解像度(空間分解能ともいう)を得ることができる。シンチレータ結晶体201は、複数の第1の相202と、第1の相の周りに位置する第2の相203を有する、相分離構造をとる。シンチレータ結晶体201は第1の面208と第2の面209とを有し、第1の相202は第1の面208から第2の面209へ延伸している。第1の面208は放射線照射面(入射面)であり、第2の面209は光取り出し面であるとし、放射線は第1の面208から入射し、シンチレーション光は第2の面209から受光素子へ取り出される。第1の相と第2の相の少なくともいずれかは、入射した放射線の少なくとも一部をシンチレーション光に変換する発光相である。また、第1の相202と第2の相203は異なる屈折率を有している。よって、シンチレーション光は屈折率が相対的に高い高屈折率相に閉じ込められながら、シンチレータ結晶体の厚さ207を第1の面の方向から第2の面の方向へ、第2の面の方向から第1の面の方向へ導波される。シンチレーション光は、シンチレーション光が発生した相内を導波した方が解像度が高いと考えられるため、高屈折率相が発光相として機能することが好ましい。相対的に屈折率の低い低屈折率相は、発光相として機能しても良いし、機能しなくても良い。以下、第1の相202が高屈折率相であり、且つ発光相である場合を例に挙げて説明する。第1の相202が高屈折率相である場合、光ファイバーのように、シンチレーション光は第1の相の中に閉じ込められながら第1の面208と第2の面209間を導波する。第1の相202は円柱の形状を有する。第1の相202で発生したシンチレーション光のうち、第1と第2の相の境界面に臨界角度以上で入射するシンチレーション光206は、全反射を繰り返しながら第1の相202中を導波方向210に導波され、第1の面208又は第2の面209から出射される。ここで、シンチレーション光の導波方向210は第1の相202の延伸方向(長手方向)であり、円柱の中心軸と平行な方向である。導波する発光の波長よりも第1の相の直径が小さい場合は、シンチレーション光が第1の相202と第2の相203の境界面で反射せずに境界面を透過する成分が多くなる。よって、第1の相の周期204と第1の相の直径205はシンチレーション光の波長よりも大きいことが望ましい。相分離構造を有するシンチレータとして、300nmからの紫外域に発光を有するようなシンチレータを用いることも想定される為、第1の相の直径205は300nm以上であることが望ましい。また、第一の相の直径205が受光素子105の1画素の対角線の長さ(画素サイズ)よりも大きくなってしまうと、1画素内に光を閉じ込める効果が低下してしまうため、第一の相の直径205の上限値は画素サイズよりも小さいことが望ましい。画素サイズは任意の大きさのものを用いることが可能であり、用いる受光素子の画素サイズに応じて第一の相の直径205の好ましい範囲が変化する。以上より、第1の相の直径205は、300nm以上画素サイズ以下の範囲であることが好ましい。尚、上述の光ファイバーのような導波機能を有するシンチレータは、高い解像度を有しており、画素サイズが2μm程度の高解像度センサを用いることも可能である。この場合、ファイバーの直径が2μmより大きくなると、隣接する画素に光が漏れてしまう為、第1の相の直径は、2μm以下であることが望ましい。また、第1の相202の形状は円柱に限定されず、例えば、多角柱であってもよい。この場合、第1の相202の一番幅が大きいところの幅(例えば、四角柱であれば対角線の方向における幅)が上述の直径に対応する。第1の相202は、第1の面208から第2の面209まで直線的に連続していることが好ましいが、途中で途切れたり、枝分かれしたり、複数の結晶相が一体化したり、結晶相の直径が変化したり、直線的でなく非直線部分が含まれたりしても良い。第2の相203は、第1の面208から第2の面209まで連続的に存在していることが好ましく、第1の相同士の隙間を埋めるように配置されていることが好ましい。尚、第1の相と第2の相との屈折率差は特に問わないが、スネルの法則より、屈折率差が大きい方が臨界角度を小さくできるため好ましい。例えば、低屈折率相の屈折率を高屈折率相の屈折率で除した値(屈折率比と呼ぶことがある)が0.95以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましい。尚、低屈折率相又は高屈折率相の屈折率は、低屈折率相又は高屈折率相の材料の、シンチレーション光の中心波長における屈折率とする。
【0023】
図2に示したような構成のシンチレータ結晶体として、例えば、共晶相分離構造を有するシンチレータを用いることができる。共晶相分離構造とは、
図2に示したような相分離構造体の内、第1の相と第2の相とが共晶体を構成しているもののことを指す。共晶相分離構造体の材料系の一例として、Gdを含有するペロブスカイト型酸化物材料(GdAlO
3)と、アルミナ(Al
2O
3)との共晶相分離構造体が挙げられる。この材料系の共晶相分離構造体は、第1の相(GdAlO
3:屈折率2.05)の方が第2の相(Al
2O
3:屈折率1.79)よりも屈折率が高く、且つ、第1の相がシンチレータとして機能する。そのため、共晶相分離構造体の中でも特に導波性が高い。尚、共晶相分離構造体の場合、第1の相は第1の材料の結晶体、第2の相は第2の材料の結晶体である。第1の相と、第1の相の周りに位置し、第1の相の側面を覆う第2の相との2相を有する共晶相分離構造を形成する上で重要になるのは、第1の相を構成する材料と第2の相を構成する材料との組成比である。
図2に示す模式図のような良好な相分離構造を有するシンチレータ結晶体を得るためには、一般的に、第1の相の材料と第2の相の材料とが共晶組成比(例えば、GdAlO
3:Al
2O
3=46:54(mol%))であることが必要である。ただし、第1の相の材料と第2の相の材料との組成比は共晶組成から外れてはならないものではなく、この組成比に対して共晶組成±5mol%の範囲は許容範囲とすることができる。つまり、GdAlO
3とAl
2O
3との共晶相分離構造体を形成したい場合、これらの材料の組成比は、GdAlO
3:Al
2O
3=41:59〜51:49(mol%)とすることが好ましい。また、第1の相の材料と第2の相の材料との組成比が、共晶組成±3mol%の範囲内であることがより好ましい。第1の相の材料と第2の相の材料とが共晶組成比近傍(±5mol%)で混合された融液を用いて、一方向凝固を行うことで、
図2のような良質な相分離構造を有する結晶体を得ることができる。一方向凝固の具体的な方法としては、ブリッジマン法等を用いることができる。第1の相の材料と第2の相の材料との組成比が共晶組成±5mol%の範囲を逸脱している場合は、一方の結晶相が先に析出するため、相分離構造形成の観点から、シンチレータ結晶体の良好な相分離構造を乱す要因となる。ただし、第1の相の材料と第2の相の材料との組成比が共晶組成±5mol%の範囲を逸脱している場合であっても、共晶組成±10mol%の範囲であれば、凝固の方法によっては良好な相分離構造を有するシンチレータ結晶体が得られる場合がある。よって、第1の相と第2の相の材料の組成比が共晶組成比±5mol%の範囲外であっても、第1の相と第2の相とが共晶体を構成し、相分離構造体を構成していれば、その構造体は共晶相分離構造体であるとみなす。また、共晶相分離構造体を形成する際に、その融液の組成比が共晶組成比±5mol%の範囲内になかったとしても、第1の相の材料と第2の相の材料とのうち過剰な方の材料が先に析出し、残った融液が共晶組成比に共晶組成比±5mol%の範囲内となる場合がある。この場合、凝固の初期は相分離構造が乱れるが、途中から良好な相分離構造が取得できるため、構造が乱れている部分を適宜切り離せばよい。つまり、仕込み値は共晶相分離構造体の組成比と必ずしも一致せず、多少大まかでも良い。上述したGdAlO
3の場合、発光中心の元素の種類によって発光波長が変化する。具体的には、発光中心として、例えば希土類元素であるTb
3+、Eu
3+、Ce
3+を用いることができる。尚、これらのイオンを含有する元素は単体に限定されず、これらの元素を含めば良く、これらの元素を含んだ化合物を発光中心として添加すればよい。また、発光効率を高くするために、GdAlO
3中にこれらの発光中心を0.001mol%以上含有していることが好ましい。複数種類の発光中心が添加される場合は、発光中心の総量が0.001mol%以上であればよい。発光中心となる添加元素は第1の相であるGdAlO
3のGdサイトを置換するように添加され、添加元素を一般式REで表わすと、Gd
1−xRE
xAlO
3とAl
2O
3の組成比が46:54(mol%)となる。発光中心としてTb
3+を用いた場合、545nm付近に緑色発光ピークを示す。また、Eu
3+を用いた場合615nm付近に赤色発光ピークを示す。また、Ce
3+を用いた場合、360nm付近にブロードな紫外発光を示す。このように、添加元素を適切に選択することで、様々な発光波長のシンチレータを得ることができる。また、添加元素として、他の希土類元素(Pr、Nd、Pm、Sm、Dy、Ho、Er、Tm、Yb)を選択することもできる。上述のような相分離構造を有するシンチレータを用いると、高い解像度を実現する放射線検出器を得ることができる。一方で、複数枚を接着層を介してタイリングした検出器を構成する場合には、X線が接着層に沿って入射することによる解像度の低下は、高い解像度を有する放射線検出器のほうが顕著に表れる。すなわち、100μm程度の解像度の放射線検出器では相対的に無視できていたような10μm程度の接着層による不感領域が、2μm程度の解像度の放射線検出器では、欠損画素として顕著に観察されるようになる。よって、欠損領域を無くしたX線画像を得たい場合には接着層の影響を受けない本発明の構成を必要となる。
【0024】
図1において、符号107(107a〜107e)は、上述した通りシンチレータ結晶体102(102a〜102e)が配置された、それぞれの入力端面の法線方向を表している。
図1は放射線の入射方向が放射線間で略平行である場合に対応した模式図であり、入射位置によらず、放射線の入射方向は同じである。このとき、放射線の入射方向と、入力端面の法線方向(107a〜107e)を一致させ、さらにシンチレータ結晶体として相分離結晶体201を用いてシンチレーション光の導波方向210を一致させることで最も高い解像度を実現する放射線検出器を得ることができる。
【0025】
さらに、
図1に示すシンチレータ結晶体を一方向に並べたライン状のシンチレータプレート101を1つのシンチレータ結晶体とみなし、タイリングすることで、
図4(a)に示すような二次元状の検出器を得ることができる。
図4(a)は得られる二次元状の検出器の斜視図である。すなわち、シンチレータプレート101を、
図1で示した各々のシンチレータ結晶体(102a〜102e)とみなして
図4のように配置することで、二次元状の検出器を得ることができる。この場合、
図4の点線枠内が、それぞれ、
図1のシンチレータプレート101となる。この構成では、最終的に全てのシンチレータプレート101は103aを介してまとめられるため、各々のシンチレータプレート101にFOPは103aは必須ではなく、
図4では略して図示している。この場合では、高さの異なるチェッカーパターンのようなFOPを組むことなり、等倍、1回縮小、2回縮小の3種類のエリアができる。例えば、5×5枚のシンチレータ結晶体で二次元状の検出器を構成し、FOP(103b、103c)の縮尺がD
2/D
1=0.9である場合を考えると、
図4(b)のように等倍、0.9倍、0.81倍のエリアができる。それぞれ縮尺と輝度を補正しX線画像を得る。
【0026】
図5は点光源から放出された放射状に拡がるような放射線(111a〜111e)に対応した、本発明の放射線検出器110の模式図である。
図1の場合と異なる点としては、各々の入射(入力)端面の法線方向(107a〜107e)と、放射線(111a〜111e)の入射方向とが一致するように周辺部で、第2の光学部材FOP(103d〜103g)を段階的に傾けて配置していることである。各々の入射(入力)端面にシンチレータ結晶体(102a〜102e)が配置されている。この場合においても、隣接するシンチレータ結晶体の端部を、それぞれの入射(入力)端面の法線方向に射出(出力)端面側に投影した領域が重なるように配置することで、入射するX線に対する不感領域を無くすことができる。さらにシンチレータ結晶体として相分離結晶体201を用いてシンチレーション光の導波方向210と、各々の入射(入力)端面の法線方向を一致させることで最も高い解像度を実現する放射線検出器を得ることができる。
【0027】
図6は複数の光検出器を用いた、本発明の放射線検出器112の模式図である。シンチレータ結晶体102の配置は、
図1の場合と同じであるが、それぞれのテーパFOP113の射出(出力)端面が、個別の光検出器114に接続されている点が異なる。こうすることで大面積の検出器を用いることなく、大面積の撮像エリアを得ることが可能となる。
【0028】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明をする。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
本実施例では、シンチレータ結晶体の製造方法の具体例、作製したシンチレータ結晶体を用いて構成したシンチレータプレート及び、それを用いたX線の撮像結果について説明をする。
【0030】
本実施例では、各々のシンチレータ結晶体は、複数の第1の相の材料としてGdAlO
3を、第2の相の材料としてAl
2O
3を有する共晶相分離シンチレータ結晶体であり、Tb
3+を発光中心として含有する。このような共晶相分離シンチレータ結晶体の製造方法について説明をする。まず、GdAlO
3に対してTb
3+を8mol%添加した材料とAl
2O
3との組成比が、46:54(mol%)になるように、Gd
2O
3、Tb
4O
7、Al
2O
3、を評量した。そして、これらの粉末を充分に混合し、これを原料粉末とした。これらの原料粉末をIrるつぼに入れて、誘導加熱によりるつぼを1700℃まで加熱し、試料全体を溶解させた。そして、試料全体が溶解した後30分保持してから、18mm/hの速度で一方向凝固を行うことで試料を育成した。このようにして作製した試料を2.5mm×5mm×厚さ500μmで2枚、2.8mm×5mm×厚さ500μmで1枚切り出し、両面を研磨した。この試料は、X線照射により、545nm付近に緑色発光ピークを示した。試料を走査型電子顕微鏡で観察したところ、この試料が、Al
2O
3相中に直径約1.2μmの無数のGdAlO
3柱状構造体が埋め込まれたような相分離構造体であることが確認された。
【0031】
まず、5.4mm×4.0mm×厚さ2.5mmのFOPを用意し、その入力端面に、中央部分を1.8mm×4.0mm空けて、1.8mm×4.0mmのシンチレータ結晶体を張り付けた。中央部分に、入力端面のサイズが2.0mm×4.0mm、出力端面のサイズが1.8mm×4.0mmであり、2次元の情報を縮尺D
2/D
1=0.9で等方的に縮小する厚さ1.5mmのテーパFOPを張り付け、その入力端面に1.8mm×4.0mmのシンチレータ結晶体を張り付け、全体として5.4mm×4.0mmの有効エリアを有するシンチレータプレートとした。作製したシンチレータプレートは、両端のシンチレータ結晶体と、テーパFOP上のシンチレータ結晶体とが、それぞれの入力端面の法線方向に出力端面側に投影した領域が100μm重なって配置されている。このような構成にすることで、タイリング時にシンチレータ結晶体間の接着層がなく、放射線に対する不感領域のないシンチレータプレートとなる。このシンチレータプレートを二次元受光素子であるCMOSセンサに張り付けることで放射線検出器とした。CMOSは画素サイズが2.5μmのものを用いた。放射線源としては、タングステン管球のX線源を用い、X線はシンチレータ結晶体に垂直に入射する配置とし、40kV、0.5mA、Alフィルター有りの条件で得られるX線を撮像に用いた。
【0032】
まず、スケールと輝度に関する補正値を取得する為、周期43μm、開口22μmの二次元パターンを有する金から成る格子を被写体として用いた。、両端のシンチレータ結晶体に対応する領域では、周期43μm、開口22μmの二次元パターンがそのままX線画像(以降、X線画像A、と表す)として得られた。一方、テーパFOP上のシンチレータ結晶体に対応する領域では、0.9倍に縮小された周期38.7μm、開口19.8μmの二次元パターンのX線画像(以降、X線画像B、と表す)が得られた。X線画像Aに対するX線画像Bの輝度は85%であった。X線画像Bは元の入力データが縮小されて検出されることになるため、X線画像AとX線画像Bに間には100μm幅のX線画像の無い領域が形成された。
【0033】
以上により取得したスケールと輝度に係る補正係数を用いてX線画像Bをのスケールと輝度を補正し、100μm幅のX線画像の無い領域を除いてX線画像を合成することで、スケールと輝度が補正されたX線画像を形成することができた。合成したX線画像は、入力データに対応した二次元パターンが欠陥領域が無くすべて連続してつながっていた。
【0034】
本実施例のように、隣接するシンチレータ結晶体の配置をテーパFOPを用いてX線の光路に沿ってずらし、X線の上流側に配置されたシンチレータ結晶体によって形成されるX線画像の情報を縮小して光検出器に伝送することで、シンチレータ結晶体同士をX線の光路上に重ねることができるようになる。このような配置にすることで、隣接するシンチレータ結晶体間に接着層が存在しない構成となり、シンチレータプレートに入射するX線に対する不感領域がなく、全域でタイリング境界による欠損画素の発生確率が低減するシンチレータプレートを作製することができた。
【0035】
(実施例2)
本実施例は、実施例1の放射線検出器を、放射線計測システムとしてのX線トールボット干渉計の検出器として用いた具体例について説明をする。
【0036】
本実施例のX線トールボット干渉計の模式図を
図7に示す。X線トールボット干渉計は、X線源70と、X線源からのX線71を回折して干渉パターンを形成するX線回折格子73と、干渉パターンを形成するX線を検出するX線検出器74と、X線検出器の検出結果を用いて被検体72の情報を取得する演算装置75を備える。
【0037】
X線トールボット干渉計については、例えば国際公開2010/050483号公報など多数の文献に詳細が記載されているため、詳細については省略する。一般的なトールボット干渉計は、干渉パターンが形成される位置に遮蔽格子または吸収格子と呼ばれる格子を配置し、モアレを形成することで、数μm程度の周期を有する干渉パターンの情報を取得する。
【0038】
一方、本実施例のX線トールボット干渉計は、X線検出器74として実施例1の放射線検出器を備える。このため、X線検出器74を干渉パターンが形成される位置に配置することで、干渉パターンの明暗をX線検出器74で直接観察することができる。よって、X線検出器74による検出結果を用いて、被検体72による干渉パターンの変化を解析することで、被検体の位相、散乱、吸収に関する情報を取得することができる。
【0039】
その他、X線源、回折格子、演算装置による干渉パターンの解析方法などは一般的なトールボット干渉計と同様である。尚、X線トールボット干渉計は、演算装置75により取得した被検体の情報を表示する表示手段(不図示)を備えていても良い。また、X線トールボット干渉計は、演算装置75やX線源70を備えなくても良い。この場合、撮像時に任意のX線源と組み合わせることで、X線トールボット干渉計による撮像(干渉パターンの取得)を行うことができる。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。