(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0029】
また、図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。例えば、実際の製造工程において、エッチングなどの処理により層やレジストマスクなどが意図せずに目減りすることがあるが、理解を容易とするために省略して示すことがある。また、図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、同様の機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0030】
また、特に上面図(「平面図」ともいう。)や斜視図などにおいて、発明の理解を容易とするため、一部の構成要素の記載を省略する場合がある。また、一部の隠れ線などの記載を省略する場合がある。
【0031】
また、本明細書などにおいて、第1、第2等として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順又は積層順を示すものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」又は「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書等に記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合がある。
【0032】
また、本明細書において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0033】
例えば、本明細書等において、XとYとが接続されている、と明示的に記載されている場合は、XとYとが電気的に接続されている場合と、XとYとが機能的に接続されている場合と、XとYとが直接接続されている場合とが、本明細書等に開示されているものとする。したがって、所定の接続関係、例えば、図または文章に示された接続関係に限定されず、図または文章に示された接続関係以外のものも、図または文章に記載されているものとする。
【0034】
ここで、X、Yは、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、など)であるとする。
【0035】
XとYとが直接的に接続されている場合の一例としては、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)が、XとYとの間に接続されていない場合であり、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)を介さずに、XとYとが、接続されている場合である。
【0036】
XとYとが電気的に接続されている場合の一例としては、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが可能である。なお、スイッチは、オンオフが制御される機能を有している。つまり、スイッチは、導通状態(オン状態)、または、非導通状態(オフ状態)になり、電流を流すか流さないかを制御する機能を有している。または、スイッチは、電流を流す経路を選択して切り替える機能を有している。なお、XとYとが電気的に接続されている場合は、XとYとが直接的に接続されている場合を含むものとする。
【0037】
XとYとが機能的に接続されている場合の一例としては、XとYとの機能的な接続を可能とする回路(例えば、論理回路(インバータ、NAND回路、NOR回路など)、信号変換回路(DA変換回路、AD変換回路、ガンマ補正回路など)、電位レベル変換回路(電源回路(昇圧回路、降圧回路など)、信号の電位レベルを変えるレベルシフタ回路など)、電圧源、電流源、切り替え回路、増幅回路(信号振幅または電流量などを大きく出来る回路、オペアンプ、差動増幅回路、ソースフォロワ回路、バッファ回路など)、信号生成回路、記憶回路、制御回路など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが可能である。なお、一例として、XとYとの間に別の回路を挟んでいても、Xから出力された信号がYへ伝達される場合は、XとYとは機能的に接続されているものとする。なお、XとYとが機能的に接続されている場合は、XとYとが直接的に接続されている場合と、XとYとが電気的に接続されている場合とを含むものとする。
【0038】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域またはソース電極)の間にチャネル形成領域を有しており、チャネル形成領域を介して、ソースとドレインとの間に電流を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル領域とは、電流が主として流れる領域をいう。
【0039】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができる場合がある。
【0040】
なお、チャネル長とは、例えば、トランジスタの上面図において、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが互いに重なる領域、またはチャネルが形成される領域における、ソース(ソース領域またはソース電極)とドレイン(ドレイン領域またはドレイン電極)との間の距離をいう。なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル長が全ての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つのトランジスタのチャネル長は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書では、チャネル長は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
【0041】
チャネル幅とは、例えば、トランジスタの上面図において、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが互いに重なる領域、またはチャネルが形成される領域における、チャネル長方向を基準として垂直方向のチャネル領域の長さを言う。なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル幅がすべての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つのトランジスタのチャネル幅は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書では、チャネル幅は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
【0042】
なお、トランジスタの構造によっては、実際にチャネルの形成される領域におけるチャネル幅(以下、「実効的なチャネル幅」ともいう。)と、トランジスタの上面図において示されるチャネル幅(以下、「見かけ上のチャネル幅」ともいう。)と、が異なる場合がある。例えば、ゲート電極が半導体の側面を覆う場合、実効的なチャネル幅が、見かけ上のチャネル幅よりも大きくなり、その影響が無視できなくなる場合がある。例えば、微細かつゲート電極が半導体の側面を覆うトランジスタでは、半導体の側面に形成されるチャネル形成領域の割合が大きくなる場合がある。その場合は、見かけ上のチャネル幅よりも、実効的なチャネル幅の方が大きくなる。
【0043】
このような場合、実効的なチャネル幅の、実測による見積もりが困難となる場合がある。例えば、設計値から実効的なチャネル幅を見積もるためには、半導体の形状が既知という仮定が必要である。したがって、半導体の形状が正確にわからない場合には、実効的なチャネル幅を正確に測定することは困難である。
【0044】
そこで、本明細書では、見かけ上のチャネル幅を、「囲い込みチャネル幅(SCW:Surrounded Channel Width)」と呼ぶ場合がある。また、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、囲い込みチャネル幅または見かけ上のチャネル幅を指す場合がある。または、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、実効的なチャネル幅を指す場合がある。なお、チャネル長、チャネル幅、実効的なチャネル幅、見かけ上のチャネル幅、囲い込みチャネル幅などは、断面TEM像などを解析することなどによって、値を決定することができる。
【0045】
なお、半導体の不純物とは、例えば、半導体を構成する主成分以外をいう。例えば、濃度が0.1原子%未満の元素は不純物と言える。不純物が含まれることにより、例えば、半導体のDOS(Density of States)が高くなることや、結晶性が低下することなどが起こる場合がある。半導体が酸化物半導体である場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、第1族元素、第2族元素、第13族元素、第14族元素、第15族元素、および酸化物半導体の主成分以外の遷移金属などがあり、例えば、水素、リチウム、ナトリウム、シリコン、ホウ素、リン、炭素、窒素などがある。酸化物半導体の場合、水も不純物として機能する場合がある。また、酸化物半導体の場合、例えば不純物の混入によって酸素欠損を形成する場合がある。また、半導体がシリコンである場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、酸素、水素を除く第1族元素、第2族元素、第13族元素、第15族元素などがある。
【0046】
なお、本明細書等において、酸化窒化シリコン膜とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多いものである。例えば、好ましくは酸素が55原子%以上65原子%以下、窒素が1原子%以上20原子%以下、シリコンが25原子%以上35原子%以下、水素が0.1原子%以上10原子%以下の濃度範囲で含まれるものをいう。また、窒化酸化シリコン膜とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多いものでる。例えば、好ましくは窒素が55原子%以上65原子%以下、酸素が1原子%以上20原子%以下、シリコンが25原子%以上35原子%以下、水素が0.1原子%以上10原子%以下の濃度範囲で含まれるものをいう。
【0047】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0048】
また、本明細書等において、「絶縁体」という用語を、絶縁膜または絶縁層と言い換えることができる。また、「導電体」という用語を、導電膜または導電層と言い換えることができる。また、「半導体」という用語を、半導体膜または半導体層と言い換えることができる。
【0049】
また、本明細書等に示すトランジスタは、明示されている場合を除き、電界効果トランジスタとする。また、本明細書等に示すトランジスタは、明示されている場合を除き、nチャネル型のトランジスタとする。よって、そのしきい値電圧(「Vth」ともいう。)は、明示されている場合を除き、0Vよりも大きいものとする。
【0050】
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「略平行」とは、二つの直線が−30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」とは、二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
【0051】
また、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表す。
【0052】
なお、本明細書において、バリア膜とは、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する膜のことであり、該バリア膜に導電性を有する場合は、導電性バリア膜と呼ぶことがある。
【0053】
本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い表現での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体を含む)、酸化物半導体(Oxide Semiconductorまたは単にOSともいう)などに分類される。例えば、トランジスタの活性層に金属酸化物を用いた場合、当該金属酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。つまり、OS FETと記載する場合においては、酸化物または酸化物半導体を有するトランジスタと換言することができる。
【0054】
(実施の形態1)
以下では、本発明の一態様に係るトランジスタ200を有する半導体装置の一例について説明する。
【0055】
<半導体装置の構成例1>
図1(A)、
図1(B)、および
図1(C)は、本発明の一態様に係るトランジスタ200、およびトランジスタ200周辺の上面図および断面図である。
【0056】
図1(A)は、トランジスタ200を有する半導体装置の上面図である。また、
図1(B)、および
図1(C)は該半導体装置の断面図である。ここで、
図1(B)は、
図1(A)にA1−A2の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200のチャネル長方向の断面図でもある。また、
図1(C)は、
図1(A)にA3−A4の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200のチャネル幅方向の断面図でもある。
図1(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0057】
本発明の一態様の半導体装置は、トランジスタ200と、層間膜として機能する絶縁体210、絶縁体212および絶縁体280と、を有する。また、トランジスタ200と電気的に接続し、配線として機能する導電体203(導電体203a、および導電体203b)を有する。
【0058】
なお、導電体203は、絶縁体212の開口の内壁に接して導電体203aが形成され、さらに内側に導電体203bが形成されている。ここで、導電体203の上面の高さと、絶縁体212の上面の高さは同程度にできる。なお、トランジスタ200では、導電体203aおよび導電体203bを積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体203bのみを設ける構成にしてもよい。
【0059】
[トランジスタ200]
図1に示すように、トランジスタ200は、基板(図示せず)の上に配置された絶縁体214および絶縁体216と、絶縁体214および絶縁体216に埋め込まれるように配置された導電体205と、絶縁体216と導電体205の上に配置された絶縁体220と、絶縁体220の上に配置された絶縁体222と、絶縁体222の上に配置された絶縁体224と、絶縁体224の上に配置された酸化物230(酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230c)と、酸化物230の上に配置された絶縁体250と、絶縁体250の上に配置された導電体260(導電体260aおよび導電体260b)と、導電体260の上に配置された絶縁体270、および絶縁体271と、導電体260の側面に接して配置された絶縁体272と、少なくとも酸化物230の上面、絶縁体272の側面および絶縁体271の上面と接して配置された絶縁体274と、を有する。
【0060】
なお、トランジスタ200では、酸化物230a、および酸化物230b、および酸化物230cを積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、
図1に示すように、酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230cの3層構造、または4層以上の積層構造としてもよい。また、酸化物230bの単層、または酸化物230bと酸化物230cを設ける構成にしてもよい。例えば、単層、または4層以上の積層構造としてもよい。
【0061】
ここで、
図1(B)における破線で囲む、チャネル近傍の領域239の拡大図を
図10(A)に示す。
【0062】
図10に示すように、酸化物230は、トランジスタ200のチャネル形成領域として機能する領域234と、ソース領域またはドレイン領域として機能する領域231(領域231a、および領域231b)と、領域234と領域231との間に、接合領域232(接合領域232a、および接合領域232b)と、を有する。ソース領域またはドレイン領域として機能する領域231は、キャリア密度が高い、低抵抗化した領域である。また、チャネル形成領域として機能する領域234は、ソース領域またはドレイン領域として機能する領域231よりも、キャリア密度が低い領域である。また、接合領域232は、ソース領域またはドレイン領域として機能する領域231よりもキャリア密度が低く、チャネル形成領域として機能する領域234よりもキャリア密度が高い領域である。すなわち接合領域232は、チャネル形成領域と、ソース領域またはドレイン領域との間の接合領域(junction region)としての機能を有する。
【0063】
接合領域を設けることで、ソース領域またはドレイン領域として機能する領域231と、チャネル形成領域として機能する領域234との間に高抵抗領域が形成されず、トランジスタのオン電流を大きくすることができる。
【0064】
また、接合領域232は、ゲート電極として機能する導電体260と重なる、いわゆるオーバーラップ領域(Lov領域ともいう)として機能する場合がある。
【0065】
なお、領域231は、絶縁体274と接することが好ましい。また、領域231は、インジウムなどの金属元素、並びに水素、および窒素などの不純物元素、の少なくとも一の濃度が接合領域232、および領域234よりも大きいことが好ましい。
【0066】
接合領域232は、絶縁体272と重畳する領域を有する。接合領域232は、インジウムなどの金属元素、並びに水素、および窒素などの不純物元素、の少なくとも一の濃度が領域234よりも大きいことが好ましい。一方、インジウムなどの金属元素、並びに水素、および窒素などの不純物元素、の少なくとも一の濃度が領域231よりも、小さいことが好ましい。
【0067】
領域234は、導電体260と重畳する。領域234は、接合領域232a、および接合領域232bとの間に配置しており、インジウムなどの金属元素、並びに水素、および窒素などの不純物元素、の少なくとも一の濃度が領域231、および接合領域232より、小さいことが好ましい。
【0068】
また、酸化物230において、領域231、接合領域232、および領域234の境界は明確に検出できない場合がある。各領域内で検出されるインジウムなどの金属元素、並びに水素、および窒素などの不純物元素の濃度は、領域ごとの段階的な変化に限らず、各領域内でも連続的に変化(グラデーションともいう)していてもよい。つまり、領域231から接合領域232へ、領域234に近い領域であるほど、インジウムなどの金属元素、並びに水素、および窒素などの不純物元素の濃度が減少していればよい。
【0069】
また、
図10では、領域234、領域231、および接合領域232が、酸化物230bに形成されているが、これに限られることなく、例えばこれらの領域は酸化物230a、または酸化物230cにも形成されていてもよい。また、図では、各領域の境界を、酸化物230の上面に対して略垂直に表示しているが、本実施の形態はこれに限られるものではない。例えば、接合領域232が酸化物230bの表面近傍では導電体260側に張り出し、酸化物230bの下面近傍では、導電体252a側または導電体252b側に後退する形状になる場合がある。
【0070】
なお、トランジスタ200において、酸化物230は、酸化物半導体として機能する金属酸化物(以下、酸化物半導体ともいう)を用いることが好ましい。酸化物半導体を用いたトランジスタは、非導通状態において極めてリーク電流(オフ電流)が小さいため、低消費電力の半導体装置が提供できる。また、酸化物半導体は、スパッタリング法などを用いて成膜できるため、高集積型の半導体装置を構成するトランジスタに用いることができる。
【0071】
一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、酸化物半導体中の不純物及び酸素欠損によって、その電気特性が変動しやすく、信頼性が悪くなる場合がある。また、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。チャネル形成領域に酸素欠損が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、チャネル形成領域中の酸素欠損はできる限り低減されていることが好ましい。
【0072】
特に、酸化物230におけるチャネルが形成される領域234と、ゲート絶縁膜として機能する絶縁体250との界面に、酸素欠損が存在すると、電気特性の変動が生じやすく、また信頼性が悪くなる場合がある。
【0073】
そこで、酸化物230の領域234と接する絶縁体250が化学量論的組成を満たす酸素(過剰酸素ともいう)よりも多くの酸素を含むことが好ましい。つまり、絶縁体250が有する過剰酸素が、領域234へと拡散することで、領域234中の酸素欠損を低減することができる。
【0074】
また、絶縁体250と接して、絶縁体272を設けることが好ましい。例えば、絶縁体272は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の少なくとも一の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。絶縁体272が、酸素の拡散を抑制する機能を有することで、効率よく領域234へ供給される。従って、酸化物230と、絶縁体250との界面における酸素欠損の形成が抑制され、トランジスタ200の信頼性を向上させることができる。
【0075】
さらに、トランジスタ200は、水または水素などの不純物の混入を防ぐバリア性を有する絶縁体で覆われていることが好ましい。バリア性を有する絶縁体とは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(N
2O、NO、NO
2など)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい)絶縁性材料を用いた絶縁体である。また、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の少なくとも一の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。
【0076】
以下では、本発明の一態様に係るトランジスタ200を有する半導体装置の詳細な構成について説明する。
【0077】
第2のゲート電極として機能する導電体205は、酸化物230および導電体260と重なるように配置する。
【0078】
ここで、導電体205は、酸化物230における領域234よりも、チャネル幅方向の長さが大きくなるように大きく設けるとよい。特に、導電体205は、酸化物230の領域234がチャネル幅方向と交わる端部よりも外側の領域においても、延伸していることが好ましい。つまり、酸化物230のチャネル幅方向における側面において、導電体205と、導電体260とは、絶縁体を介して重畳していることが好ましい。
【0079】
ここで、導電体260は、第1のゲート電極として機能する場合がある。また、導電体205は、第2のゲート電極として機能する場合がある。その場合、導電体205に印加する電位を、導電体260に印加する電位と、連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ200のしきい値電圧を制御することができる。特に、導電体205に負の電位を印加することにより、トランジスタ200のしきい値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。従って、導電体260に印加する電圧が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0080】
また、
図1(A)に示すように、導電体205は、酸化物230、および導電体260と重なるように配置する。ここで、酸化物230のチャネル幅方向(W長方向)と交わる端部よりも外側の領域においても、導電体205は、導電体260と、重畳するように配置することが好ましい。つまり、酸化物230の側面の外側において、導電体205と、導電体260とは、絶縁体を介して重畳していることが好ましい。
【0081】
上記構成を有することで、導電体260、および導電体205に電位を印加した場合、導電体260から生じる電界と、導電体205から生じる電界と、がつながることで、閉回路を形成し、酸化物230に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。
【0082】
つまり、第1のゲート電極としての機能を有する導電体260の電界と、第2のゲート電極としての機能を有する導電体205の電界によって、領域234のチャネル形成領域を電気的に取り囲むことができる。本明細書において、第1のゲート電極、および第2のゲート電極の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(S−channel)構造とよぶ。
【0083】
導電体205は、絶縁体214および絶縁体216の開口の内壁に接して導電体205aが形成され、さらに内側に導電体205bが形成されている。ここで、導電体205aおよび導電体205bの上面の高さと、絶縁体216の上面の高さは同程度にできる。なお、トランジスタ200では、導電体205aおよび導電体205bを積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体205bのみを設ける構成にしてもよい。
【0084】
ここで、導電体205aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(N
2O、NO、NO
2など)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい)導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の少なくとも一の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)導電性材料を用いることが好ましい。なお、本明細書において、不純物、または酸素の拡散を抑制する機能とは、上記不純物、または上記酸素のいずれか一または、すべての拡散を抑制する機能とする。
【0085】
導電体205aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体205bが酸化して導電率が低下することを防ぐことができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウムまたは酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。従って、導電体205aとしては、上記導電性材料を単層または積層とすればよい。これにより、絶縁体214より基板側から、水素、水などの不純物が、導電体205を通じて、トランジスタ200側に拡散するのを抑制することができる。
【0086】
また、導電体205bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。なお、導電体205bを単層で図示したが、積層構造としても良く、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
【0087】
絶縁体214は、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタに混入するのを防ぐバリア絶縁膜として機能することが好ましい。従って、絶縁体214は、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(N
2O、NO、NO
2など)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の少なくとも一の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。
【0088】
例えば、絶縁体214として、酸化アルミニウムや窒化シリコンなどを用いることが好ましい。これにより、水素、水などの不純物が絶縁体214よりトランジスタ側に拡散するのを抑制することができる。または、絶縁体224などに含まれる酸素が、絶縁体214より基板側に、拡散するのを抑制することができる。
【0089】
また、層間膜として機能する絶縁体216、および絶縁体280は、絶縁体214よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0090】
例えば、層間膜として機能する絶縁体216、および絶縁体280として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)または(Ba,Sr)TiO
3(BST)などの絶縁体を単層または積層で用いることができる。またはこれらの絶縁体に例えば酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理しても良い。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0091】
絶縁体220、絶縁体222、および絶縁体224は、ゲート絶縁体としての機能を有する。
【0092】
ここで、酸化物230と接する絶縁体224は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁体を用いることが好ましい。つまり、絶縁体224には、過剰酸素領域が形成されていることが好ましい。このような過剰酸素を含む絶縁体を酸化物230に接して設けることにより、酸化物230中の酸素欠損を低減し、信頼性を向上させることができる。
【0093】
過剰酸素領域を有する絶縁体として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×10
18atoms/cm
3以上、好ましくは3.0×10
20atoms/cm
3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上400℃以下の範囲が好ましい。
【0094】
また、絶縁体224が、過剰酸素領域を有する場合、絶縁体222は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の少なくとも一の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。
【0095】
絶縁体222が、酸素の拡散を抑制する機能を有することで、過剰酸素領域の酸素は、絶縁体220側へ拡散することなく、効率よく酸化物230へ供給することができる。また、導電体205が、絶縁体224が有する過剰酸素領域の酸素と反応することを抑制することができる。
【0096】
絶縁体222は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)または(Ba,Sr)TiO
3(BST)などのいわゆるhigh−k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いることが好ましい。ゲート絶縁体として機能する絶縁体に、high−k材料を用いることで、トランジスタの微細化、および高集積化が可能となる。特に、酸化アルミニウム、および酸化ハフニウム、などの、不純物、および酸素などの拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。このような材料を用いて形成した場合、酸化物230からの酸素の放出や、トランジスタ200の周辺部からの水素等の不純物の混入を防ぐ層として機能する。
【0097】
または、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理しても良い。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0098】
また、絶縁体220は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、high−k材料の絶縁体と組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。
【0099】
なお、絶縁体220、絶縁体222、および絶縁体224が、2層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。また、トランジスタ200で絶縁体220、絶縁体222、および絶縁体224がゲート絶縁体として機能する構成を示したが、本実施の形態はこれに限られるものではない。例えば、ゲート絶縁体として、絶縁体220、絶縁体222、および絶縁体224のいずれか2層または1層を設ける構成にしてもよい。
【0100】
酸化物230は、酸化物230aと、酸化物230a上の酸化物230bと、酸化物230b上の酸化物230cと、を有する。また、酸化物230は、領域231、接合領域232、および領域234を有する。なお、領域231の少なくとも一部は、絶縁体274と接することが好ましい。また、領域231の少なくとも一部は、インジウムなどの金属元素、水素、および窒素の少なくとも一の濃度が領域234よりも大きいことが好ましい。
【0101】
トランジスタ200をオンさせると、領域231a、または領域231bは、ソース領域、またはドレイン領域として機能する。一方、領域234の少なくとも一部は、チャネルが形成される領域として機能する。
【0102】
ここで、
図10に示すように、酸化物230は、接合領域232を有することが好ましい。当該構成とすることで、トランジスタ200において、オン電流を大きくし、かつ、非導通時のリーク電流(オフ電流)を小さくすることができる。
【0103】
また、酸化物230a上に、酸化物230bを有することで、酸化物230aよりも下方に形成された構造物から、酸化物230bに対する不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物230c下に、酸化物230bを有することで、酸化物230cよりも上方に形成された構造物から、酸化物230bに対する不純物の拡散を抑制することができる。
【0104】
図1に示すように、酸化物230cを有する場合、酸化物230cは、酸化物230aまたは酸化物230bに用いることができる金属酸化物を、用いることができる。
【0105】
なお、酸化物230cとなる酸化膜は、酸化物230aとなる酸化膜の成膜条件と同様の条件を用いて成膜してもよいし、酸化物230bとなる酸化膜の成膜条件と同様の条件を用いて成膜してもよい。また、これらの条件を組み合わせて成膜してもよい。
【0106】
本実施の形態では、酸化物230cとなる酸化膜として、スパッタリング法によって、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]のターゲットを用いて成膜する。このとき、酸素の割合を70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは100%として、成膜してもよい。
【0107】
なお、上記酸化膜は、成膜条件、および原子数比を適宜選択することで、酸化物230に求める特性に合わせて形成するとよい。
【0108】
ここで、
図1(C)に示すように、チャネル幅方向において、酸化物230cは、酸化物230a、および酸化物230bを覆って設けられることが好ましい。つまり、酸化物230bは、酸化物230a、および酸化物230cにより包囲される。当該構造とすることで、領域234において、チャネルが形成される酸化物230bに不純物が混入することを抑制することができる。
【0109】
また、酸化物230aおよび酸化物230cを設ける場合、酸化物230aおよび酸化物230cの伝導帯下端のエネルギーが、酸化物230bの伝導帯下端のエネルギーが低い領域における、伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、酸化物230aおよび酸化物230cの電子親和力が、酸化物230bの伝導帯下端のエネルギーが低い領域における電子親和力より小さいことが好ましい。
【0110】
ここで、酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230cにおいて、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物230aと酸化物230bとの界面、および酸化物230bと酸化物230cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
【0111】
具体的には、酸化物230aと酸化物230b、酸化物230bと酸化物230cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物230bがIn−Ga−Zn酸化物の場合、酸化物230aおよび酸化物230cとして、In−Ga−Zn酸化物、Ga−Zn酸化物、酸化ガリウムなどを用いるとよい。
【0112】
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物230bに形成されるナローギャップ部分となる。酸化物230aと酸化物230bとの界面、および酸化物230bと酸化物230cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができるため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さく、高いオン電流が得られる。
【0113】
また、酸化物230の側面と、酸化物230の上面との間に、湾曲面を有する。つまり、側面の端部と上面の端部は、湾曲していることが好ましい(以下、ラウンド状ともいう)。湾曲面は、例えば、酸化物230bの端部において、曲率半径が、3nm以上10nm以下、好ましくは、5nm以上6nm以下とすることが好ましい。
【0114】
酸化物230は、酸化物半導体として機能する金属酸化物(以下、酸化物半導体ともいう)を用いることが好ましい。例えば、領域234となる金属酸化物としては、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、エネルギーギャップの広い金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0115】
電子親和力または伝導帯下端のエネルギー準位Ecは、
図20に示すように、真空準位と価電子帯上端のエネルギーEvとの差であるイオン化ポテンシャルIpと、バンドギャップEgから求めることができる。イオン化ポテンシャルIpは、例えば、紫外線光電子分光分析(UPS:Ultraviolet Photoelectron Spectroscopy)装置を用いて測定することができる。エネルギーギャップEgは、例えば、分光エリプソメータを用いて測定することができる。
【0116】
なお、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と総称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。
【0117】
酸化物半導体を用いたトランジスタは、非導通状態において極めてリーク電流が小さいため、低消費電力の半導体装置が提供できる。また、酸化物半導体は、スパッタリング法などを用いて成膜できるため、高集積型の半導体装置を構成するトランジスタに用いることができる。
【0118】
例えば、酸化物230として、In−M−Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。また、酸化物230として、In−Ga酸化物、In−Zn酸化物を用いてもよい。
【0119】
ここで、酸化物230の領域234にについて説明する。
【0120】
領域234は、各金属原子の原子数比が異なる酸化物により、積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物230a、および酸化物230bの積層構造を有する場合、酸化物230aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物230bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物230aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物230bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物230bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物230aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物230cは、酸化物230aまたは酸化物230bに用いることができる金属酸化物を、用いることができる。
【0121】
続いて、酸化物230の領域231、および接合領域232について説明する。
【0122】
領域231、および接合領域232は、酸化物230として設けられた金属酸化物に、インジウムなどの金属原子、または不純物を添加し、低抵抗した領域である。なお、各領域は、少なくとも、領域234における酸化物230bよりも、導電性が高い。なお、領域231、および接合領域232に、不純物を添加するために、例えば、プラズマ処理、イオン化された原料ガスを質量分離して添加するイオン注入法、イオン化された原料ガスを質量分離せずに添加するイオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いて、インジウムなどの金属元素、および不純物の少なくとも一であるドーパントを添加すればよい。
【0123】
つまり、領域231、および接合領域232において、酸化物230のインジウムなどの金属原子の含有率を高くすることで、電子移動度を高くし、低抵抗化を図ることができる。
【0124】
または、酸化物230に接して、不純物となる元素を含む絶縁体274を成膜することで、領域231、および接合領域232に、不純物を添加することができる。
【0125】
つまり、領域231、および接合領域232は、酸素欠損を形成する元素、または酸素欠損に捕獲される元素を添加されることで低抵抗化される。このような元素としては、代表的には水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、リン、硫黄、塩素、チタン、希ガス等が挙げられる。また、希ガス元素の代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。よって、領域231、および接合領域232は、上記元素の一つまたは複数を含む構成にすればよい。
【0126】
例えば、絶縁体274として、領域231、および接合領域232に含まれる酸素を引き抜き、吸収する膜を用いてもよい。酸素が引き抜かれると、領域231、および接合領域232には酸素欠損が生じる。酸素欠損に水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、リン、硫黄、塩素、チタン、希ガス等が捕獲されることにより、領域231、および接合領域232は低抵抗化する。
【0127】
また、トランジスタ200において、接合領域232を設けることで、ソース領域およびドレイン領域として機能する領域231と、チャネルが形成される領域234との間に高抵抗領域が形成されないため、トランジスタのオン電流、および移動度を大きくすることができる。また、接合領域232を有することで、チャネル長方向において、ソース領域およびドレイン領域と、ゲートとが重ならないため、不要な容量が形成されるのを抑制することができる。また、接合領域232有することで、非導通時のリーク電流を小さくすることができる。
【0128】
従って、接合領域232の範囲を適宜選択することにより、回路設計に合わせて、要求に見合う電気特性を有するトランジスタを容易に提供することができる。
【0129】
絶縁体250は、ゲート絶縁膜として機能する。絶縁体250は、酸化物230cの上面に接して配置することが好ましい。絶縁体250は、加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。例えば、昇温脱離ガス分光法分析(TDS分析)にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×10
18atoms/cm
3以上、好ましくは3.0×10
20atoms/cm
3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上500℃以下の範囲が好ましい。
【0130】
加熱により酸素が放出される絶縁体を、絶縁体250として、酸化物230cの上面に接して設けることにより、酸化物230bの領域234に効果的に酸素を供給することができる。また、絶縁体224と同様に、絶縁体250中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁体250の膜厚は、1nm以上20nm以下とするのが好ましい。
【0131】
第1のゲート電極として機能する導電体260は、導電体260a、および導電体260a上の導電体260bを有する。導電体260aは、導電性酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物230aまたは酸化物230bとして用いることができる金属酸化物を用いることができる。特に、In−Ga−Zn系酸化物のうち、導電性が高い、金属の原子数比が[In]:[Ga]:[Zn]=4:2:3から4.1、およびその近傍値のものを用いることが好ましい。このような導電体260aを設けることで、導電体260bへの酸素の透過を抑制し、酸化によって導電体260bの電気抵抗値が増加することを防ぐことができる。
【0132】
また、上記導電性酸化物を、スパッタリング法を用いて成膜することで、絶縁体250に酸素を添加し、酸化物230bに酸素を供給することが可能となる。これにより、酸化物230の領域234の酸素欠損を低減することができる。
【0133】
導電体260bは、導電体260aに窒素などの不純物を添加して導電体260aの導電性を向上できる導電体を用いてもよい。例えば導電体260bは、窒化チタンなどを用いることが好ましい。また、導電体260bとしては、例えば、上述の窒化チタンなどと、導電性が高いタングステンなどと、の積層構造を用いることができる。
【0134】
また、
図1(C)に示すように、導電体205が、酸化物230のチャネル幅方向と交わる端部よりも外側の領域において、延伸している場合、導電体260は、該領域において、絶縁体250を介して、重畳していることが好ましい。つまり、酸化物230の側面の外側において、導電体205と、絶縁体250と、導電体260とは、積層構造を形成することが好ましい。
【0135】
上記構成を有することで、導電体260、および導電体205に電位を印加した場合、導電体260から生じる電界と、導電体205から生じる電界と、がつながることで、閉回路を形成し、酸化物230に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。
【0136】
つまり、第1のゲート電極としての機能を有する導電体260の電界と、第2のゲート電極としての機能を有する導電体205の電界によって、領域234のチャネル形成領域を電気的に取り囲むことができる。
【0137】
また、導電体260bの上に、バリア膜として機能する絶縁体270を配置してもよい。絶縁体270は、水または水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、アルミニウム及びハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いることができる。アルミニウム及びハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましいこれにより、導電体260の酸化を防ぐことができる。また、導電体260および絶縁体250を介して、水または水素などの不純物が酸化物230に混入することを防ぐことができる。
【0138】
また、絶縁体270上に、ハードマスクとして機能する絶縁体271を配置することが好ましい。絶縁体271を設けることで、導電体260の加工の際、導電体260の側面が略垂直、具体的には、導電体260の側面と基板表面のなす角を、75度以上100度以下、好ましくは80度以上95度以下とすることができる。導電体をこのような形状に加工することで、次に形成する絶縁体272を所望の形状に形成することができる。
【0139】
また、バリア膜として機能する絶縁体272を、導電体260および絶縁体270の側面に接して設ける。
【0140】
ここで、絶縁体272は、水または水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、アルミニウム及びハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いることができる。アルミニウム及びハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましいこれにより、絶縁体250中の酸素が外部に拡散することを防ぐことができる。また、絶縁体250の端部などから酸化物230に水素、水などの不純物が混入するのを抑制することができる。
【0141】
絶縁体272を設けることで、水または水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体で導電体260の上面と側面を覆うことができる。これにより、導電体260を介して、水または水素などの不純物が酸化物230に混入することを防ぐことができる。従って、絶縁体272は、ゲート電極およびゲート絶縁膜の側面を保護するサイドバリアとして機能を有する。
【0142】
また、トランジスタが微細化され、チャネル長が10nm以上30nm以下程度に形成されている場合、トランジスタ200の周辺に設けられる構造体に含まれる不純物元素が拡散し、領域231aと、領域231b、あるいは、接合領域232aと接合領域232bと、が電気的に導通する恐れがある。
【0143】
そこで、本実施の形態に示すように、絶縁体272を形成することにより、導電体260に水素、水などの不純物が混入するのを抑制することができる。従って、第1のゲート電圧が0Vのときに、ソース領域とドレイン領域が直接、あるいは接合領域232などを介して電気的に導通することを防ぐことができる。
【0144】
絶縁体274は、少なくとも酸化物230および絶縁体272と接する領域を有する。特に、絶縁体274は、酸化物230の領域231に接する領域を有することが好ましい。
【0145】
また、絶縁体274は酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いることが好ましい。例えば、絶縁体274として、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどを用いることが好ましい。このような絶縁体274を形成することで、絶縁体274を透過して酸素が混入し、領域231aおよび領域231bの酸素欠損に酸素を供給して、キャリア密度が低下するのを防ぐことができる。
【0146】
なお、絶縁体274を成膜することにより、領域231、および接合領域232を設ける場合、絶縁体274は、水素および窒素の少なくとも一方を有することが好ましい。水素、または窒素などの不純物を有する絶縁体を絶縁体274に用いることで、水素または窒素などの不純物を酸化物230に添加して、酸化物230において、領域231、および接合領域232を形成することができる。
【0147】
絶縁体274の上に、層間膜として機能する絶縁体280を設けることが好ましい。絶縁体280は、絶縁体224などと同様に、膜中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0148】
本発明の一態様であるトランジスタ200の構成は、第1のゲート電極である導電体260と、ソース領域またはドレイン領域を有する酸化物230と、の間のリーク電流を低減する構成となっている。
【0149】
図1(B)における破線で囲む、導電体260の側面および絶縁体250の側面近傍の領域238の拡大図を
図11に示す。
図11(A)に、本発明の一態様であるトランジスタ200の構成を示す。また、
図11(B)に、トランジスタ200と異なる構成のトランジスタの一例を示す。
【0150】
図11(A)に示すように、トランジスタ200は、導電体260と、絶縁体250と、が重ならない領域250Wを有する。一方、
図11(B)に示すトランジスタ200と異なる構成のトランジスタは、領域250Wを有さず、導電体260の側面と、絶縁体250の側面とが、略一致する構成となっている。言いかえると、導電体260の側面と、絶縁体250の側面とが、略面一となっている。
【0151】
これは、導電体260の形成と、絶縁体250の形成と、を一括に形成するとこの様な構成となることがある。この様な構成とすることで、ゲート電極としての機能を有する導電体260と、酸化物230のソース領域またはドレイン領域としての機能を有する領域231との間に絶縁体250の側面および酸化物230cおよび接合領域232を介して、電流が流れることがある。(リーク電流と呼ぶ。)。
【0152】
これは、ドライエッチング法によって、導電体260の形成と、絶縁体250の形成と、を一括に形成する場合、当該ドライエッチング中に生ずるエッチング生成物が、導電体260の側面および絶縁体250の側面に付着する場合がある。
図11(A)中および
図11(B)中に点線の枠で示す領域近傍に該エッチング生成物が付着する場合がある。
【0153】
例えば、フッ素または塩素を含むガスを用いて導電体260となる導電膜をエッチングする場合、フッ素または塩素およびエッチングマスクとしてのフォトレジストの成分の一部である炭素および導電膜の一部を含むエッチング生成物が付着する場合がある。該エッチング生成物は、上述のように導電膜の一部およびフォトレジストの成分の一部である炭素を含むために導電性を有する場合がある。
【0154】
該エッチング生成物は、
図11(A)中および
図11(B)中に点線の枠で示す近傍に付着するが、基板の底面と平行な面、例えば、領域250Wの面には付着しにくい。これは、ドライエッチング中の電界の方向が、領域250Wの面と垂直となる為であり、この電界の方向にエッチングが進行するので、基板の底面と平行な面、例えば、領域250Wの面にはエッチング生成物が堆積しにくい。一方、
図11(A)中および
図11(B)中に点線の枠で示す近傍は、ドライエッチング中の電界の方向と略平行であるので、エッチングの進行がほとんどないために
図11(A)中および
図11(B)中に点線の枠で示す近傍にエッチング生成物が堆積しやすい。
【0155】
該生成物は、導電体260および絶縁体250の形成後の洗浄処理によって除去することは可能であるが、完全に除去することができない場合があり、わずかに残った生成物によってもリーク電流の経路となることがある。以上により、導電体260の側面および絶縁体250の側面に付着するエッチング生成物がリーク電流の経路となる。
図11(A)および(B)中にリーク電流の経路260Lを矢印付きの直線で示す。
【0156】
このようなリーク電流の経路を有するトランジスタは、例えば、ゲート電極としての機能を有する導電体260と、ソース領域またはドレイン領域と、の間に電位差が生じた際にリーク電流が流れてしまう。従って、該トランジスタを有する半導体装置の正常な動作を妨げる可能性がある。例えば、記憶装置においては、該リーク電流によって、メモリの長期保持ができなくなる可能性がある。
【0157】
そこで、
図11(A)に示す、本発明の一態様であるトランジスタ200は、導電体260と、絶縁体250と、が重ならない領域250Wを有することで、リーク電流の経路を遮断することができる。上述のように、領域250Wには、エッチング生成物が堆積しにくい。当該構成とするには、導電体260の形成と、絶縁体250の形成と、を一括に形成しなければよく、導電体260の形成のみ行えばよい。絶縁体250の形成は、後の工程である絶縁体272の形成時に一括して行えばよい。工程数および加工に用いるマスク数については、導電体260の形成と、絶縁体250の形成と、を一括に形成した場合と同じである。また、このような形成方法とすることで、導電体260と接しない領域である領域250Wの絶縁体250の膜厚は、導電体260と接する領域の絶縁体250の膜厚よりも薄くなる場合がある。
【0158】
トランジスタ200を有する半導体装置を以上のような構成とすることで、トランジスタ200のゲート電極と、ソース領域およびドレイン領域とのリーク電流を低減することができるので、高性能で、かつ高い信頼性のトランジスタを有する半導体装置とすることができる。
【0159】
<半導体装置の構成例2>
図2(A)、
図2(B)、および
図2(C)は、本発明の一態様に係るトランジスタ200a、およびトランジスタ200a周辺の上面図および断面図である。
【0160】
図2(A)は、トランジスタ200aを有する半導体装置の上面図である。また、
図2(B)、および
図2(C)は該半導体装置の断面図である。ここで、
図2(B)は、
図2(A)にA1−A2の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200aのチャネル長方向の断面図でもある。また、
図2(C)は、
図2(A)にA3−A4の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200aのチャネル幅方向の断面図でもある。
図2(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0161】
[トランジスタ200a]
図2に示すように、トランジスタ200aは、基板(図示せず)の上に配置された絶縁体214および絶縁体216と、絶縁体214および絶縁体216に埋め込まれるように配置された導電体205と、絶縁体216と導電体205の上に配置された絶縁体220と、絶縁体220の上に配置された絶縁体222と、絶縁体222の上に配置された絶縁体224と、絶縁体224の上に配置された酸化物230と、酸化物230の上に配置された絶縁体250と、絶縁体250の上に配置された導電体260と、導電体260の上に配置された絶縁体270、および絶縁体271と、導電体260の側面に接して配置された絶縁体272と、酸化物230cの側面、絶縁体250の側面および絶縁体272の側面に接して配置された絶縁体273と、少なくとも酸化物230の上面、絶縁体273の側面および絶縁体271の上面と接して配置された絶縁体274と、を有する。
【0162】
トランジスタ200aは、上述のように、酸化物230cの側面、絶縁体250の側面および絶縁体272の側面に接して配置された絶縁体273を有するところが、
図1に示す、トランジスタ200と構成が異なる。
【0163】
トランジスタ200aは、絶縁体250の側面と接して、絶縁体273が設けられている。例えば、絶縁体273として、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の少なくとも一の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。絶縁体273が、酸素の拡散を抑制する機能を有することで、過剰酸素領域の酸素は絶縁体274側へ拡散することなく、効率よく領域234へ供給される。従って、酸化物230と、絶縁体250との界面における酸素欠損の形成が抑制され、トランジスタ200aの信頼性をより向上させることができる。その他の構成および効果は、
図1に示す、トランジスタ200を有する半導体装置の構成例1の記載を参酌する。
【0164】
<半導体装置の構成例3>
図3(A)、
図3(B)、および
図3(C)は、本発明の一態様に係るトランジスタ200b、およびトランジスタ200b周辺の上面図および断面図である。
【0165】
図3(A)は、トランジスタ200bを有する半導体装置の上面図である。また、
図3(B)、および
図3(C)は該半導体装置の断面図である。ここで、
図3(B)は、
図3(A)にA1−A2の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200bのチャネル長方向の断面図でもある。また、
図3(C)は、
図3(A)にA3−A4の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200bのチャネル幅方向の断面図でもある。
図3(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0166】
[トランジスタ200b]
図3に示すように、トランジスタ200bは、基板(図示せず)の上に配置された絶縁体214および絶縁体216と、絶縁体214および絶縁体216に埋め込まれるように配置された導電体205と、絶縁体216と導電体205の上に配置された絶縁体220と、絶縁体220の上に配置された絶縁体222と、絶縁体222の上に配置された絶縁体224と、絶縁体224の上に配置された酸化物230と、酸化物230の上に配置された絶縁体250と、絶縁体250の上に配置された導電体260と、導電体260の上に配置された絶縁体270、および絶縁体271と、導電体260の側面に接して配置された絶縁体272と、少なくとも酸化物230の上面、酸化物230cの側面、絶縁体250の側面および絶縁体272の側面および絶縁体271の上面と接して配置された絶縁体273Aと、絶縁体273上の絶縁体274と、を有する。
【0167】
トランジスタ200bは、上述のように、酸化物230cの側面、絶縁体250の側面および絶縁体272の側面に接して配置された絶縁体273Aを有するところが、
図1に示す、トランジスタ200と構成が異なる。
【0168】
また、トランジスタ200bは、
図3に示すように、酸化物230と、水素、または窒素などを含む膜である絶縁体274との間に、絶縁体273Aとして水素、または窒素の拡散を抑制する膜を設ける構成となっている。絶縁体274を、絶縁体273Aを介して、酸化物230の領域231上に設けることで、過剰な水素、または窒素が、酸化物230の領域234へと添加されることを防止することができる。
【0169】
また、絶縁体273Aが、ゲート電極としての機能を有する導電体260およびゲート絶縁体としての機能を有する絶縁体250の側面を保護するサイドバリアとして機能を兼ねることができる。なお、サイドバリアとして機能を有する場合、
図3に示すように、絶縁体273Aは、少なくとも、導電体260の側面および絶縁体250の側面を覆うように、設けられる。絶縁体273Aとして、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の少なくとも一の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。絶縁体273Aが、酸素の拡散を抑制する機能を有することで、過剰酸素領域の酸素は絶縁体274側へ拡散することなく、効率よく領域234へ供給される。従って、酸化物230と、絶縁体250との界面における酸素欠損の形成が抑制され、トランジスタ200aの信頼性をより向上させることができる。その他の構成および効果は、
図1に示す、トランジスタ200を有する半導体装置の構成例1の記載を参酌する。
【0170】
<半導体装置の構成例4>
図4(A)、
図4(B)、および
図4(C)は、本発明の一態様に係るトランジスタ200c、およびトランジスタ200c周辺の上面図および断面図である。
【0171】
図4(A)は、トランジスタ200cを有する半導体装置の上面図である。また、
図4(B)は、
図4(A)にA1−A2の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200cのチャネル長方向の断面図でもある。また、
図4(C)は、
図4(A)にA3−A4の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200cのチャネル幅方向の断面図でもある。
図4(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0172】
[トランジスタ200c]
図4に示すように、トランジスタ200cは、一つのゲート電極に対して複数のチャネル形成領域を有するところが、
図1(A)、(B)および(C)に示すトランジスタ200の構成と異なる。トランジスタ200cは、複数のチャネル形成領域を有することで大きなオン電流を得ることができる。また、それぞれのチャネル形成領域は、ゲート電極で覆われた構造、つまりs−channel構造となっているため、それぞれのチャネル形成領域において大きなオン電流を得ることができる。なお、
図4は、3つのチャネル形成領域を有する一例を示すが、チャネル形成領域の数はこれに限定されない。その他の構成および効果は、
図1に示す、トランジスタ200を有する半導体装置の構成例1の記載を参酌する。
【0173】
<半導体装置の構成例5>
図5(A)、
図5(B)、および
図5(C)は、本発明の一態様に係るトランジスタ200d、およびトランジスタ200d周辺の上面図および断面図である。
【0174】
図5(A)は、トランジスタ200dを有する半導体装置の上面図である。また、
図5(B)、および
図5(C)は該半導体装置の断面図である。ここで、
図5(B)は、
図5(A)にA1−A2の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200dのチャネル長方向の断面図でもある。また、
図5(C)は、
図5(A)にA3−A4の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200dのチャネル幅方向の断面図でもある。
図5(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0175】
本発明の一態様の半導体装置は、トランジスタ200dと、層間膜として機能する絶縁体210、絶縁体212および絶縁体280を有する。
【0176】
[トランジスタ200d]
図5に示すように、トランジスタ200dは、基板(図示せず)の上に配置された絶縁体220と、絶縁体220の上に配置された絶縁体224と、絶縁体224の上に配置された酸化物230と、酸化物230の上に配置された絶縁体250と、絶縁体250の上に配置された導電体260と、導電体260の上に配置された絶縁体270、および絶縁体271と、導電体260の側面に接して配置された絶縁体272と、少なくとも酸化物230の上面、絶縁体272の側面および絶縁体271の上面と接して配置された絶縁体274と、を有する。
【0177】
トランジスタ200dは、導電体203および導電体205を有しないところが、
図1(A)、(B)および(C)に示すトランジスタ200と異なる。その他の構成および効果は、
図1に示す、トランジスタ200を有する半導体装置の構成例1の記載を参酌する。
【0178】
<半導体装置の構成例6>
図6(A)、
図6(B)、および
図6(C)は、本発明の一態様に係るトランジスタ200e、およびトランジスタ200e周辺の上面図および断面図である。
【0179】
図6(A)は、トランジスタ200eを有する半導体装置の上面図である。また、
図6(B)、および
図6(C)は該半導体装置の断面図である。ここで、
図6(B)は、
図6(A)にA1−A2の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200eのチャネル長方向の断面図でもある。また、
図6(C)は、
図6(A)にA3−A4の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200eのチャネル幅方向の断面図でもある。
図6(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0180】
本発明の一態様の半導体装置は、トランジスタ200eと、層間膜として機能する絶縁体210、絶縁体212および絶縁体280を有する。
【0181】
[トランジスタ200e]
図6に示すように、トランジスタ200eは、基板(図示せず)の上に配置された絶縁体224と、絶縁体224の上に配置された酸化物230と、酸化物230の上に配置された絶縁体250と、絶縁体250の上に配置された導電体260と、導電体260の上に配置された絶縁体271と、導電体260の側面に接して配置された絶縁体272と、少なくとも酸化物230の上面、絶縁体272の側面および絶縁体271の上面と接して配置された絶縁体274と、を有する。
【0182】
トランジスタ200eは、導電体203、導電体205、絶縁体220、絶縁体222および絶縁体270を有しないところが、
図1(A)、(B)および(C)に示すトランジスタ200と異なる。その他の構成および効果は、
図1に示す、トランジスタ200を有する半導体装置の構成例1の記載を参酌する。
【0183】
<半導体装置の構成例7>
図7(A)、
図7(B)、および
図7(C)は、本発明の一態様に係るトランジスタ100A、およびトランジスタ100A周辺の上面図および断面図である。
【0184】
図7(A)は、トランジスタ100Aを有する半導体装置の上面図である。また、
図7(B)、および
図7(C)は該半導体装置の断面図である。ここで、
図7(B)は、
図7(A)にA1−A2の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ100Aのチャネル長方向の断面図でもある。また、
図7(C)は、
図7(A)にB1−B2の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ100Aのチャネル幅方向の断面図でもある。
図7(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0185】
[トランジスタ100A]
トランジスタ100Aは、基板102上の絶縁層104と、絶縁層104上の半導体層108と、半導体層108上の絶縁層140と、絶縁層140上の金属酸化物層114と、金属酸化物層114上の導電層142と、金属酸化物層114の側面および導電層142の側面に接して配置された絶縁層115と、少なくとも半導体層108の上面、絶縁層115の側面および導電層142の上面と接して配置された絶縁層116と、を有する。半導体層108の、導電層142と重畳する部分は、チャネル形成領域として機能する。
【0186】
半導体層108は、上述の酸化物230と同様の材料を用いることが出来る。
【0187】
また、
図7(A)、(B)、(C)に示すように、トランジスタ100Aを有する半導体装置は、絶縁層116上に絶縁層118を有する。また、絶縁層116及び絶縁層118に設けられた開口部141aまたは開口部141bを介して、それぞれ領域108nに電気的に接続される導電層121a及び導電層121bを有していてもよい。
【0188】
なお、本明細書等において、絶縁層104を第1の絶縁膜と、絶縁層140を第2の絶縁膜と、絶縁層116を第3の絶縁膜と、絶縁層118を第4の絶縁膜と、それぞれ呼称する場合がある。また、導電層142は、ゲート電極としての機能を有し、導電層121aは、ソース電極としての機能を有し、導電層121bは、ドレイン電極としての機能を有する。
【0189】
トランジスタ100Aは、上述のトランジスタ200と同様に、導電層142と、絶縁層140と、が重ならない領域を有する。該領域を有することで、導電層142と、半導体層108との間のリーク電流の経路を遮断することができる。
【0190】
また、領域108nは、半導体層108として設けられた金属酸化物に、インジウムなどの金属原子、または不純物を添加し、低抵抗した領域である。なお領域108nは、少なくとも、半導体層108の絶縁層140と半導体層108とが接する領域よりも導電性が高い。なお、領域108nに、不純物を添加するために、例えば、プラズマ処理、イオン化された原料ガスを質量分離して添加するイオン注入法、イオン化された原料ガスを質量分離せずに添加するイオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いて、インジウムなどの金属元素、および不純物の少なくとも一であるドーパントを添加すればよい。
【0191】
つまり、領域108nにおいて、半導体層108のインジウムなどの金属原子の含有率を高くすることで、電子移動度を高くし、低抵抗化を図ることができる。
【0192】
または、半導体層108に接して、不純物となる元素を含む絶縁層116を成膜することで、領域108nに、不純物を添加することができる。
【0193】
つまり、領域108nは、酸素欠損を形成する元素、または酸素欠損に捕獲される元素を添加されることで低抵抗化される。このような元素としては、代表的には水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、リン、硫黄、塩素、チタン、希ガス等が挙げられる。また、希ガス元素の代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。よって、領域108nは、上記元素の一つまたは複数を含む構成にすればよい。
【0194】
例えば、絶縁層116として、領域108nに含まれる酸素を引き抜き、吸収する膜を用いてもよい。酸素が引き抜かれると、領域108nには酸素欠損が生じる。酸素欠損に水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、リン、硫黄、塩素、チタン、希ガス等が捕獲されることにより、領域108nは低抵抗化する。
【0195】
ゲート絶縁層として機能する絶縁層140は、過剰酸素領域を有する。絶縁層140が過剰酸素領域を有することで、半導体層108中に過剰酸素を供給することができる。よって、半導体層108中に形成されうる酸素欠損を過剰酸素により補填することができるため、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0196】
絶縁層140と導電層142の間に位置する金属酸化物層114は、絶縁層140から放出される酸素が導電層142側に拡散することを防ぐバリア膜として機能する。金属酸化物層114は、例えば少なくとも絶縁層140よりも酸素を透過しにくい材料を用いることができる。
【0197】
金属酸化物層114としては、絶縁性材料または導電性材料を用いることができる。金属酸化物層114が絶縁性を有する場合には、ゲート絶縁層の一部として機能する。一方、金属酸化物層114が導電性を有する場合には、ゲート電極の一部として機能する。
【0198】
特に、金属酸化物層114として、酸化シリコンよりも誘電率の高い絶縁性材料を用いることが好ましい。特に、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、またはハフニウムアルミネート膜等を用いることが好ましい。
【0199】
また、半導体層108とゲート電極として機能する導電層142との間に、酸化アルミニウム膜や酸化ハフニウム膜など、窒素を主成分として含まない金属酸化物膜を用いる構成とすることができる。そのため、金属酸化物層114が、膜中に準位を形成しうる窒素酸化物(NO
x、xは0よりも大きく2以下、好ましくは1以上2以下、代表的にはNO
2またはNO)の含有量が極めて少ない構成とすることができる。これにより、電気特性及び信頼性に優れたトランジスタを実現できる。
【0200】
酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、及びハフニウムアルミネート膜等は、膜厚が薄い(例えば厚さ5nm程度)場合でも十分に高いバリア性を有するため、薄く形成することが可能で、生産性を向上させることができる。例えば金属酸化物層114の厚さを、1nm以上50nm以下、好ましくは3nm以上30nmとすることができる。さらに、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜及びハフニウムアルミネート膜は、酸化シリコン膜等よりも誘電率が高い特徴を有する。このように金属酸化物層114として、誘電率が高い絶縁膜を薄く形成できるため、酸化シリコン膜等を用いた場合に比べて、半導体層108にかかるゲート電界の強度を高めることができる。その結果、駆動電圧を低くすることができ、消費電力を低減することができる。
【0201】
また、金属酸化物層114は、スパッタリング装置を用いて形成すると好ましい。例えば、スパッタリング装置を用いて酸化アルミニウム膜を形成する場合、酸素ガスを含む雰囲気で形成することで、半導体層108中に好適に酸素を添加することができる。また、スパッタリング装置を用いて、酸化アルミニウム膜を形成する場合、膜密度を高めることができるため好適である。
【0202】
また、金属酸化物層114として導電性材料を用いる場合には、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物などの酸化物導電性材料を用いることができる。
【0203】
また、金属酸化物層114は、水や水素が拡散しにくいことが好ましい。これにより、導電層142が水や水素を拡散しやすい材料を用いた場合であっても、絶縁層140や半導体層108に水や水素が拡散することを防ぐことができる。特に、酸化アルミニウム膜や酸化ハフニウム膜は、水や水素に対するバリア性が高いため好ましい。
【0204】
なお、半導体層108中に過剰酸素を供給させるためには、半導体層108の下方に形成される絶縁層104に過剰酸素を供給してもよい。この場合、絶縁層104中に含まれる過剰酸素は、領域108nにも供給されうる。領域108n中に過剰酸素が供給されると、領域108n中の抵抗が高くなり、好ましくない。一方で、半導体層108の上方に形成される絶縁層140に過剰酸素を有する構成とすることで、導電層142と重畳する領域にのみ選択的に過剰酸素を供給させることが可能となる。
【0205】
ここで、半導体層108中に形成されうる酸素欠損について説明を行う。
【0206】
半導体層108に形成される酸素欠損は、トランジスタ特性に影響を与えるため問題となる。例えば、半導体層108中に酸素欠損が形成されると、該酸素欠損に水素が結合し、キャリア供給源となりうる。半導体層108中にキャリア供給源が生成されると、トランジスタ100Aの電気特性の変動、代表的にはしきい値電圧のシフトが生じる。したがって、半導体層108においては、酸素欠損が少ないほど好ましい。
【0207】
そこで、本発明の一態様においては、半導体層108近傍の絶縁膜、具体的には、半導体層108の上方に形成される絶縁層140が、過剰酸素を含有する構成である。絶縁層140から半導体層108へ酸素または過剰酸素を移動させることで、半導体層108中の酸素欠損を低減することが可能となる。
【0208】
なお、半導体層108の下方に位置する絶縁層104が、過剰酸素を含有していてもよい。このとき、絶縁層104からも半導体層108へ過剰酸素を移動させることで、半導体層108の酸素欠損をより低減することが可能となる。
【0209】
また、半導体層108の上方に位置する絶縁層118が、過剰酸素を含有していてもよい。絶縁層118と絶縁層104とが接する領域を有するので、絶縁層118から、絶縁層104を通り、半導体層108へ過剰酸素を移動させることができるので、半導体層108の酸素欠損をより低減することが可能となる。
【0210】
ここで、半導体層108に混入する水素または水分などの不純物は、トランジスタ特性に影響を与えるため問題となる。したがって、半導体層108においては、水素または水分などの不純物が少ないほど好ましい。
【0211】
半導体層108としては、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い金属酸化物膜を用いることで、優れた電気特性を有するトランジスタを作製することができ好ましい。ここでは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない)ことを高純度真性または実質的に高純度真性とよぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である金属酸化物膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。従って、該金属酸化物膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真性である金属酸化物膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。また、高純度真性または実質的に高純度真性である金属酸化物膜は、オフ電流が著しく小さく、チャネル幅が1×10
6μmでチャネル長が10μmの素子であっても、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10
−13A以下という特性を得ることができる。
【0212】
トランジスタ100Aは、表示装置に用いることができる。例えば、表示装置が有する画素回路、ゲートドライバ回路およびソースドライバ回路に用いることができる。
【0213】
<半導体装置の構成例8>
図8(A)、
図8(B)、および
図8(C)は、本発明の一態様に係るトランジスタ100B、およびトランジスタ100B周辺の上面図および断面図である。
【0214】
図8(A)は、トランジスタ100Aを有する半導体装置の上面図である。また、
図8(B)、および
図8(C)は該半導体装置の断面図である。ここで、
図8(B)は、
図8(A)にA1−A2の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ100Bのチャネル長方向の断面図でもある。また、
図8(C)は、
図8(A)にB1−B2の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ100Bのチャネル幅方向の断面図でもある。
図8(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0215】
[トランジスタ100B]
トランジスタ100Bは、基板102上の絶縁層104と、絶縁層104上の半導体層108と、半導体層108上の絶縁層140と、絶縁層140上の導電層142と、導電層142の側面に接して配置された絶縁層115と、を有する。半導体層108の、導電層142と重畳する部分は、チャネル形成領域として機能する。
【0216】
半導体層108は、上述の酸化物230と同様の材料を用いることが出来る。
【0217】
また、
図8(A)、(B)、(C)に示すように、トランジスタ100Bを有する半導体装置は、トランジスタ100B上に絶縁層118を有する。また、絶縁層118に設けられた開口部141aまたは開口部141bを介して、それぞれ領域108nに電気的に接続される導電層121a及び導電層121bを有していてもよい。
【0218】
トランジスタ100Bは、上述のトランジスタ100Aと同様に、導電層142と、絶縁層140と、が重ならない領域を有する。該領域を有することで、導電層142と、半導体層108との間のリーク電流の経路を遮断することができる。
【0219】
また、領域108nは、半導体層108として設けられた金属酸化物に、インジウムなどの金属原子、または不純物を添加し、低抵抗した領域である。なお領域108nは、少なくとも、半導体層108の絶縁層140と半導体層108とが接する領域よりも導電性が高い。なお、領域108nに、不純物を添加するために、例えば、プラズマ処理、イオン化された原料ガスを質量分離して添加するイオン注入法、イオン化された原料ガスを質量分離せずに添加するイオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いて、インジウムなどの金属元素、および不純物の少なくとも一であるドーパントを添加すればよい。
【0220】
つまり、領域108nにおいて、半導体層108のインジウムなどの金属原子の含有率を高くすることで、電子移動度を高くし、低抵抗化を図ることができる。その他の構成および効果は、
図7に示す、トランジスタ100Aを有する半導体装置の構成例7の記載を参酌する。
【0221】
<半導体装置の構成例9>
図9にトランジスタに加えて、容量素子を有する半導体装置の一例を示す。
【0222】
図9(A)は、トランジスタ200および容量素子100を有する半導体装置の断面図であり、トランジスタ200のチャネル長方向の断面図でもある。
【0223】
[容量素子100]
トランジスタ200の構成は、
図1に示す半導体装置の構成例1の記載を参酌する。
図9(A)に示す容量素子100は、絶縁体224の上に配置された酸化物230(酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230c1)と、酸化物230の上に配置された絶縁体250aと、絶縁体250aの上に配置された導電体260_1a(導電体260_1aおよび導電体260_1b)と、導電体260_1の上に配置された絶縁体270a、および絶縁体271aと、導電体260_1の側面に接して配置された絶縁体272aと、少なくとも酸化物230の上面、絶縁体272aの側面および絶縁体271aの上面と接して配置された絶縁体274と、を有する。
【0224】
酸化物230は、容量素子100の一方の電極としての機能を有し、導電体260_1は、容量素子100の他方の電極としての機能を有する。また、絶縁体250aは、容量素子100の誘電体としての機能を有する。
【0225】
容量素子100は、導電体260_1と、絶縁体250aと、が重ならない領域を有する。該領域は、
図11(A)に示す、トランジスタ200が有する領域250Wと同様に形成される。従って、該領域を有することで、容量素子100の一方の電極としての機能を有する酸化物230と、他方の電極としての機能を有する導電体260_1と、の間のリーク電流を低減することができる。つまり、容量素子100の電荷保持特性を向上することができる。
【0226】
また、容量素子100は、トランジスタ200と同じ層に同時に形成するので、半導体装置の作製工程数の増加なしに作製することができる。
【0227】
図9(B)は、トランジスタ100Aおよび容量素子200Aを有する半導体装置の断面図であり、トランジスタ100Aのチャネル長方向の断面図でもある。
【0228】
[容量素子200A]
トランジスタ100Aの構成は、
図7に示す半導体装置の構成例7の記載を参酌する。
図9(B)に示す容量素子200Aは、基板102上の絶縁層104と、絶縁層104上の半導体層108と、半導体層108上の絶縁層140aと、絶縁層140a上の金属酸化物層114aと、金属酸化物層114a上の導電層142aと、金属酸化物層114aの側面および導電層142aの側面に接して配置された絶縁層115aと、少なくとも半導体層108の上面、絶縁層115aの側面および導電層142aの上面と接して配置された絶縁層116と、を有する。
【0229】
領域108nを含む半導体層108は、容量素子200Aの一方の電極としての機能を有し、金属酸化物層114aおよび導電層142aは、容量素子200Aの他方の電極としての機能を有する。また、絶縁層140aは、容量素子200Aの誘電体としての機能を有する。
【0230】
容量素子200Aは、導電層142aと、絶縁層140aと、が重ならない領域を有する。該領域は、
図7に示すトランジスタ100Aの導電層142と、絶縁層140と、が重ならない領域と同様の構成である。従って、該領域を有することで、容量素子200Aの一方の電極としての機能を有する領域108nを含む半導体層108と、他方の電極としての機能を有する金属酸化物層114aおよび導電層142aと、の間のリーク電流を低減することができる。つまり、容量素子200Aの電荷保持特性を向上することができる。
【0231】
また、容量素子200Aは、トランジスタ100Aと同じ層に同時に形成するので、半導体装置の作製工程数の増加なしに作製することができる。
【0232】
<半導体装置の構成材料>
以下では、半導体装置に用いることができる構成材料について説明する。
【0233】
<<基板>>
上述のトランジスタを形成する基板としては、例えば、絶縁体基板、半導体基板または導電体基板を用いればよい。絶縁体基板としては、例えば、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、安定化ジルコニア基板(イットリア安定化ジルコニア基板など)、樹脂基板などがある。また、半導体基板としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどの単体半導体基板、または炭化シリコン、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、酸化亜鉛、酸化ガリウムからなる化合物半導体基板などがある。さらには、前述の半導体基板内部に絶縁体領域を有する半導体基板、例えばSOI(Silicon On Insulator)基板などがある。導電体基板としては、黒鉛基板、金属基板、合金基板、導電性樹脂基板などがある。または、金属の窒化物を有する基板、金属の酸化物を有する基板などがある。さらには、絶縁体基板に導電体または半導体が設けられた基板、半導体基板に導電体または絶縁体が設けられた基板、導電体基板に半導体または絶縁体が設けられた基板などがある。または、これらの基板に素子が設けられたものを用いてもよい。基板に設けられる素子としては、容量素子、抵抗素子、スイッチ素子、発光素子、記憶素子などがある。
【0234】
また、基板として、可とう性基板を用いてもよい。なお、可とう性基板上にトランジスタを設ける方法としては、非可とう性の基板上にトランジスタを作製した後、トランジスタを剥離し、可とう性基板である基板に転置する方法もある。その場合には、非可とう性基板とトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。また、基板が伸縮性を有してもよい。また、基板は、折り曲げや引っ張りをやめた際に、元の形状に戻る性質を有してもよい。または、元の形状に戻らない性質を有してもよい。基板は、例えば、5μm以上700μm以下、好ましくは10μm以上500μm以下、さらに好ましくは15μm以上300μm以下の厚さとなる領域を有する。基板を薄くすると、トランジスタを有する半導体装置を軽量化することができる。また、基板を薄くすることで、ガラスなどを用いた場合にも伸縮性を有する場合や、折り曲げや引っ張りをやめた際に、元の形状に戻る性質を有する場合がある。そのため、落下などによって基板上の半導体装置に加わる衝撃などを緩和することができる。即ち、丈夫な半導体装置を提供することができる。
【0235】
可とう性基板である基板としては、例えば、金属、合金、樹脂もしくはガラス、またはそれらの繊維などを用いることができる。また、基板として、繊維を編みこんだシート、フィルムまたは箔などを用いてもよい。可とう性基板である基板は、線膨張率が低いほど環境による変形が抑制されて好ましい。可とう性基板である基板としては、例えば、線膨張率が1×10
−3/K以下、5×10
−5/K以下、または1×10
−5/K以下である材質を用いればよい。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリルなどがある。特に、アラミドは、線膨張率が低いため、可とう性基板である基板として好適である。
【0236】
<<絶縁体>>
絶縁体としては、絶縁性を有する酸化物、窒化物、酸化窒化物、窒化酸化物、金属酸化物、金属酸化窒化物、金属窒化酸化物などがある。
【0237】
ここで、ゲート絶縁体として機能する絶縁体には、ゲート絶縁体として機能する絶縁体に、比誘電率の高いhigh−k材料を用いることで、トランジスタの微細化、および高集積化が可能となる。一方、層間膜として機能する絶縁体には、比誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。従って、絶縁体の機能に応じて、材料を選択するとよい。
【0238】
また、比誘電率の高い絶縁体としては、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化物、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化窒化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化窒化物またはシリコンおよびハフニウムを有する窒化物などがある。
【0239】
また、比誘電率が低い絶縁体としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンまたは樹脂などがある。
【0240】
また、特に、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定である。そのため、例えば、樹脂と組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の低い積層構造とすることができる。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネートまたはアクリルなどがある。また、例えば、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは、比誘電率の高い絶縁体と組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。
【0241】
また、酸化物半導体を用いたトランジスタは、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体で囲うことによって、トランジスタの電気特性を安定にすることができる。
【0242】
水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。具体的には、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
【0243】
例えば、絶縁体210、絶縁体214、絶縁体222、絶縁層115、絶縁層115a、絶縁体270、絶縁体270a、絶縁体272、絶縁体272aおよび絶縁体273Aとして、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体を用いればよい。なお、絶縁体210、絶縁体214、絶縁体222、絶縁層115、絶縁層115a、絶縁体270、絶縁体270a、絶縁体272、絶縁体272aおよび絶縁体273Aは、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いればよい。
【0244】
また、絶縁層104、絶縁層140、絶縁層140a、絶縁体220、絶縁体224、絶縁体250、絶縁体250a、絶縁層116および絶縁体274としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。具体的には、酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは、窒化シリコンを有することが好ましい。
【0245】
例えば、ゲート絶縁体として機能する絶縁層140、絶縁層140a、絶縁体220、絶縁体224、絶縁体250および絶縁体250aにおいて、酸化アルミニウム、酸化ガリウムまたは酸化ハフニウムを酸化物230または半導体層108と接する構造とすることで、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンに含まれるシリコンが、酸化物230または半導体層108に混入することを抑制することができる。一方、絶縁層140、絶縁層140a、絶縁体220、絶縁体224、絶縁体250および絶縁体250aにおいて、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを酸化物230または半導体層108と接する構造とすることで、酸化アルミニウム、酸化ガリウムまたは酸化ハフニウムと、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンと、の界面にトラップセンターが形成される場合がある。該トラップセンターは、電子を捕獲することでトランジスタのしきい値電圧をプラス方向に変動させることができる場合がある。
【0246】
絶縁層118、絶縁体212、絶縁体216、絶縁体271、絶縁体271aおよび絶縁体280は、比誘電率の低い絶縁体を有することが好ましい。例えば、絶縁層118、絶縁体212、絶縁体216、絶縁体271、絶縁体271aおよび絶縁体280としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンまたは樹脂などを有することが好ましい。または、絶縁層118、絶縁体212、絶縁体216、絶縁体271、絶縁体271aおよび絶縁体280は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコンまたは空孔を有する酸化シリコンと、樹脂と、の積層構造を有することが好ましい。酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、樹脂と組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の低い積層構造とすることができる。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネートまたはアクリルなどがある。
【0247】
<<導電体>>
導電体としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウムなどから選ばれた金属元素を1種以上含む材料を用いることができる。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される、電気伝導度が高い半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。
【0248】
また、上記の材料で形成される導電層を複数積層して用いてもよい。例えば、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、窒素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、窒素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。
【0249】
なお、トランジスタのチャネル形成領域に酸化物を用いる場合において、ゲート電極として機能する導電体には、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造を用いることが好ましい。この場合は、酸素を含む導電性材料をチャネル形成領域側に設けるとよい。酸素を含む導電性材料をチャネル形成領域側に設けることで、当該導電性材料から離脱した酸素がチャネル形成領域に供給されやすくなる。
【0250】
特に、ゲート電極として機能する導電体として、チャネルが形成される金属酸化物に含まれる金属元素および酸素を含む導電性材料を用いることが好ましい。また、前述した金属元素および窒素を含む導電性材料を用いてもよい。例えば、窒化チタン、窒化タンタルなどの窒素を含む導電性材料を用いてもよい。また、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、シリコンを添加したインジウム錫酸化物を用いてもよい。また、窒素を含むインジウムガリウム亜鉛酸化物を用いてもよい。このような材料を用いることで、チャネルが形成される金属酸化物に含まれる水素を捕獲することができる場合がある。または、外方の絶縁体などから混入する水素を捕獲することができる場合がある。
【0251】
導電層121a、導電層121b、導電体260a、導電体260b、導電体260_1a、導電体260_1b、導電体203a、導電体203b、導電体205a、および導電体205bとしては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウムなどから選ばれた金属元素を1種以上含む材料を用いることができる。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される、電気伝導度が高い半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。
【0252】
<<金属酸化物>>
半導体層108および酸化物230として、酸化物半導体として機能する金属酸化物(以下、酸化物半導体ともいう)を用いることが好ましい。以下では、本発明に係る半導体層および酸化物230に適用可能な金属酸化物について説明する。
【0253】
酸化物半導体は、少なくともインジウムまたは亜鉛を含むことが好ましい。特にインジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどが含まれていることが好ましい。また、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていてもよい。
【0254】
ここでは、酸化物半導体が、インジウム、元素Mおよび亜鉛を有するIn‐M‐Zn酸化物である場合を考える。なお、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどとする。そのほかの元素Mに適用可能な元素としては、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合がある。
【0255】
[金属酸化物の構成]
以下では、本発明の一態様で開示されるトランジスタに用いることができるCAC(Cloud−Aligned Composite)−OSの構成について説明する。
【0256】
なお、本明細書等において、CAAC(c−axis aligned crystal)、及びCAC(Cloud−Aligned Composite)と記載する場合がある。なお、CAACは結晶構造の一例を表し、CACは機能、または材料の構成の一例を表す。
【0257】
CAC−OSまたはCAC−metal oxideとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC−OSまたはCAC−metal oxideを、トランジスタの活性層に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(またはホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC−OSまたはCAC−metal oxideに付与することができる。CAC−OSまたはCAC−metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
【0258】
また、CAC−OSまたはCAC−metal oxideは、導電性領域、及び絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
【0259】
また、CAC−OSまたはCAC−metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
【0260】
また、CAC−OSまたはCAC−metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC−OSまたはCAC−metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC−OSまたはCAC−metal oxideをトランジスタのチャネル領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、及び高い電界効果移動度を得ることができる。
【0261】
すなわち、CAC−OSまたはCAC−metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
【0262】
[金属酸化物の構造]
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC−OS(c−axis aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc−OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a−like OS:amorphous−like oxide semiconductor)および非晶質酸化物半導体などがある。
【0263】
CAAC−OSは、c軸配向性を有し、かつa−b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0264】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC−OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう)を確認することはできない。即ち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC−OSが、a−b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
【0265】
また、CAAC−OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
【0266】
CAAC−OSは結晶性の高い酸化物半導体である。一方、CAAC−OSは、明確な結晶粒界を確認することはできないため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC−OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。従って、CAAC−OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC−OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。
【0267】
nc−OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc−OSは、分析方法によっては、a−like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0268】
a−like OSは、nc−OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。a−like OSは、鬆または低密度領域を有する。即ち、a−like OSは、nc−OSおよびCAAC−OSと比べて、結晶性が低い。
【0269】
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a−like OS、nc−OS、CAAC−OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0270】
[酸化物半導体を有するトランジスタ]
続いて、上記酸化物半導体をトランジスタに用いる場合について説明する。
【0271】
なお、上記酸化物半導体をトランジスタに用いることで、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0272】
また、トランジスタには、キャリア密度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。酸化物半導体膜のキャリア密度を低くする場合においては、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性と言う。例えば、酸化物半導体は、キャリア密度が8×10
11/cm
3未満、好ましくは1×10
11/cm
3未満、さらに好ましくは1×10
10/cm
3未満であり、1×10
−9/cm
3以上とすればよい。
【0273】
また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0274】
また、酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0275】
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体中の不純物濃度を低減することが有効である。また、酸化物半導体中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0276】
[不純物]
ここで、酸化物半導体中における各不純物の影響について説明する。
【0277】
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物半導体において欠陥準位が形成される。このため、酸化物半導体におけるシリコンや炭素の濃度と、酸化物半導体との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる濃度)を、2×10
18atoms/cm
3以下、好ましくは2×10
17atoms/cm
3以下とする。
【0278】
また、酸化物半導体にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×10
18atoms/cm
3以下、好ましくは2×10
16atoms/cm
3以下にする。
【0279】
また、酸化物半導体において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を半導体に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、該酸化物半導体において、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、酸化物半導体中の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×10
19atoms/cm
3未満、好ましくは5×10
18atoms/cm
3以下、より好ましくは1×10
18atoms/cm
3以下、さらに好ましくは5×10
17atoms/cm
3以下とする。
【0280】
また、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×10
20atoms/cm
3未満、好ましくは1×10
19atoms/cm
3未満、より好ましくは5×10
18atoms/cm
3未満、さらに好ましくは1×10
18atoms/cm
3未満とする。
【0281】
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0282】
<半導体装置の作製方法>
次に、本発明に係るトランジスタ200を有する半導体装置について、作製方法を
図1および
図12乃至
図19を用いて説明する。また、
図1および
図12乃至
図19において、各図の(A)は上面図を示す。また、各図の(B)は(A)に示すA1−A2の一点鎖線で示す部位に対応する断面図である。また、各図の(C)は、(A)にA3−A4の一点鎖線で示す部位に対応する断面図である。
【0283】
まず、基板(図示しない)を準備し、当該基板上に絶縁体210を成膜する。絶縁体210の成膜は、スパッタリング法、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、パルスレーザ堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法またはALD法などを用いて行うことができる。
【0284】
なお、CVD法は、プラズマを利用するプラズマCVD(PECVD:Plasma Enhanced CVD)法、熱を利用する熱CVD(TCVD:Thermal CVD)法、光を利用する光CVD(Photo CVD)法などに分類できる。さらに用いる原料ガスによって金属CVD(MCVD:Metal CVD)法、有機金属CVD(MOCVD:Metal Organic CVD)法に分けることができる。
【0285】
プラズマCVD法は、比較的低温で高品質の膜が得られる。また、熱CVD法は、プラズマを用いないため、被処理物へのプラズマダメージを小さくすることが可能な成膜方法である。例えば、半導体装置に含まれる配線、電極、素子(トランジスタ、容量素子など)などは、プラズマから電荷を受け取ることでチャージアップする場合がある。このとき、蓄積した電荷によって、半導体装置に含まれる配線、電極、素子などが破壊される場合がある。一方、プラズマを用いない熱CVD法の場合、こういったプラズマダメージが生じないため、半導体装置の歩留まりを高くすることができる。また、熱CVD法では、成膜中のプラズマダメージが生じないため、欠陥の少ない膜が得られる。
【0286】
また、ALD法も、被処理物へのプラズマダメージを小さくすることが可能な成膜方法である。また、ALD法も、成膜中のプラズマダメージが生じないため、欠陥の少ない膜が得られる。
【0287】
CVD法およびALD法は、ターゲットなどから放出される粒子が堆積する成膜方法とは異なり、被処理物の表面における反応により膜が形成される成膜方法である。したがって、被処理物の形状の影響を受けにくく、良好な段差被覆性を有する成膜方法である。特に、ALD法は、優れた段差被覆性と、優れた厚さの均一性を有するため、アスペクト比の高い開口部の表面を被覆する場合などに好適である。ただし、ALD法は、比較的成膜速度が遅いため、成膜速度の速いCVD法などの他の成膜方法と組み合わせて用いることが好ましい場合もある。
【0288】
CVD法およびALD法は、原料ガスの流量比によって、得られる膜の組成を制御することができる。例えば、CVD法およびALD法では、原料ガスの流量比によって、任意の組成の膜を成膜することができる。また、例えば、CVD法およびALD法では、成膜しながら原料ガスの流量比を変化させることによって、組成が連続的に変化した膜を成膜することができる。原料ガスの流量比を変化させながら成膜する場合、複数の成膜室を用いて成膜する場合と比べて、搬送や圧力調整に掛かる時間の分、成膜に掛かる時間を短くすることができる。したがって、半導体装置の生産性を高めることができる場合がある。
【0289】
本実施の形態では、絶縁体210として、スパッタリング法によって酸化アルミニウムを成膜する。また、絶縁体210は、多層構造としてもよい。例えばスパッタリング法によって酸化アルミニウムを成膜し、該酸化アルミニウム上にALD法によって酸化アルミニウムを成膜する構造としてもよい。または、ALD法によって酸化アルミニウムを成膜し、該酸化アルミニウム上に、スパッタリング法によって酸化アルミニウムを成膜する構造としてもよい。
【0290】
次に絶縁体210上に絶縁体212を成膜する。絶縁体212の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、絶縁体212として、CVD法によって酸化シリコンを成膜する。
【0291】
次に、絶縁体212に絶縁体210に達する開口を形成する。開口とは、例えば、溝やスリットなども含まれる。また、開口が形成された領域を指して開口部とする場合がある。開口の形成はウェットエッチングを用いてもよいが、ドライエッチングを用いるほうが微細加工には好ましい。また、絶縁体210は、絶縁体212をエッチングして溝を形成する際のエッチングストッパ膜として機能する絶縁体を選択することが好ましい。例えば、溝を形成する絶縁体212に酸化シリコン膜を用いた場合は、絶縁体210は窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜を用いるとよい。
【0292】
開口の形成後に、導電体203aとなる導電膜を成膜する。該導電膜は、酸素の透過を抑制する機能を有する導電体を含むことが望ましい。たとえば、窒化タンタル、窒化タングステン、窒化チタンなどを用いることができる。またはタンタル、タングステン、チタン、モリブデン、アルミニウム、銅、モリブデンタングステン合金との積層膜とすることができる。導電体203aとなる導電体の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。
【0293】
本実施の形態では、導電体203aとなる導電膜として、スパッタリング法によって窒化タンタルを成膜する。導電体203aとしてこのような金属窒化物を用いることにより、後述する導電体203bで銅など拡散しやすい金属を用いても、当該金属が導電体203aから外に拡散するのを防ぐことができる。
【0294】
次に、導電体203aとなる導電膜上に、導電体203bとなる導電膜を成膜する。該導電膜の成膜は、メッキ法、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、導電体203bとなる導電膜として、銅などの低抵抗導電性材料を成膜する。
【0295】
次に、CMP処理を行うことで、導電体203aとなる導電膜、ならびに導電体203bとなる導電膜の一部を除去し、絶縁体212を露出する。その結果、開口部のみに、導電体203aとなる導電膜、ならびに導電体203bとなる導電膜が残存する。これにより、上面が平坦な、導電体203aおよび導電体203bを含む導電体203を形成することができる(
図12参照。)。なお、当該CMP処理により、絶縁体212の一部が除去される場合がある。
【0296】
次に、導電体203上に絶縁体214を成膜する。絶縁体214の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、絶縁体214として、CVD法によって窒化シリコンを成膜する。このように、絶縁体214として、窒化シリコンなどの銅が透過しにくい絶縁体を用いることにより、導電体203bに銅など拡散しやすい金属を用いても、当該金属が絶縁体214より上の層に拡散するのを防ぐことができる。
【0297】
次に絶縁体214上に絶縁体216を成膜する。絶縁体216の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、絶縁体216として、CVD法によって酸化シリコンを成膜する。
【0298】
次に、絶縁体214および絶縁体216に、導電体203に達する開口を形成する。開口の形成はウェットエッチングを用いてもよいが、ドライエッチングを用いるほうが微細加工には好ましい。
【0299】
開口の形成後に、導電体205aとなる導電膜を成膜する。導電体205aとなる導電膜は、酸素の透過を抑制する機能を有する導電性材料を含むことが望ましい。たとえば、窒化タンタル、窒化タングステン、窒化チタンなどを用いることができる。またはタンタル、タングステン、チタン、モリブデン、アルミニウム、銅、モリブデンタングステン合金との積層膜とすることができる。導電体205aとなる導電膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。
【0300】
本実施の形態では、導電体205aとなる導電膜として、スパッタリング法によって窒化タンタルを成膜する。
【0301】
次に、導電体205aとなる導電膜上に、導電体205bとなる導電膜を成膜する。該導電膜の成膜は、メッキ法、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。
【0302】
本実施の形態では、導電体205bとなる導電膜として、CVD法によって窒化チタンを成膜し、該窒化チタン上にCVD法によってタングステンを成膜する。
【0303】
次に、CMP処理を行うことで、導電体205aとなる導電膜、ならびに導電体205bとなる導電膜の一部を除去し、絶縁体216を露出する。その結果、開口部のみに、導電体205a、および導電体205bとなる導電膜が残存する。これにより、上面が平坦な、導電体205aおよび導電体205bを含む導電体205を形成することができる(
図12参照。)。なお、当該CMP処理により、絶縁体216の一部が除去される場合がある。
【0304】
次に、絶縁体216、および導電体205上に絶縁体220を成膜する。絶縁体220の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。
【0305】
次に、絶縁体220上に絶縁体222を成膜する。絶縁体222の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。
【0306】
特に、絶縁体222として、ALD法により、酸化ハフニウムを形成することが好ましい。ALD法により成膜された酸化ハフニウムは、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する。絶縁体222が、水素および水に対するバリア性を有することで、トランジスタ200の周辺に設けられた構造体に含まれる水素、および水は、トランジスタ200の内側へ拡散することなく、酸化物230中の酸素欠損の生成を抑制することができる。
【0307】
次に、絶縁体222上に絶縁膜224Aを成膜する。絶縁膜224Aの成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる(
図12参照。)。
【0308】
続いて、加熱処理を行うと好ましい。加熱処理は、250℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下、さらに好ましくは320℃以上450℃以下で行えばよい。第1の加熱処理は、窒素または不活性ガス雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上もしくは10%以上含む雰囲気で行う。第1の加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、第1の加熱処理は、窒素または不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを10ppm以上、1%以上または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。
【0309】
上記、加熱処理によって、絶縁膜224Aに含まれる水素や水などの不純物を除去することなどができる。
【0310】
または、加熱処理として、減圧状態で酸素を含むプラズマ処理を行ってもよい。酸素を含むプラズマ処理は、例えばマイクロ波を用いた高密度プラズマを発生させる電源を有する装置を用いることが好ましい。または、基板側にRF(Radio Frequency)を印加する電源を有してもよい。高密度プラズマを用いることより高密度の酸素ラジカルを生成することができ、基板側にRFを印加することで高密度プラズマによって生成された酸素ラジカルを効率よく絶縁膜224A内に導くことができる。または、この装置を用いて不活性ガスを含むプラズマ処理を行った後に脱離した酸素を補うために酸素を含むプラズマ処理を行ってもよい。尚、第1の加熱処理は行わなくても良い場合がある。
【0311】
また、加熱処理は、絶縁体220成膜後、および絶縁体222の成膜後のそれぞれに行うこともできる。該加熱処理は、上述した加熱処理条件を用いることができるが、絶縁体220成膜後の加熱処理は、窒素を含む雰囲気中で行うことが好ましい。
【0312】
本実施の形態では、加熱処理として、絶縁膜224A成膜後に窒素雰囲気にて400℃の温度で1時間の処理を行なう。
【0313】
次に、絶縁膜224A上に、酸化物230aとなる酸化膜230Aと、酸化物230bとなる酸化膜230Bを順に成膜する(
図13参照。)。なお、上記酸化膜は、大気環境にさらさずに連続して成膜することが好ましい。大気開放せずに成膜することで、酸化膜230A、および酸化膜230B上に大気環境からの不純物または水分が付着することを防ぐことができ、酸化膜230Aと酸化膜230Bとの界面近傍を清浄に保つことができる。
【0314】
酸化膜230A、および酸化膜230Bの成膜はスパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。
【0315】
例えば、酸化膜230A、および酸化膜230Bの成膜をスパッタリング法によって成膜する場合は、スパッタリングガスとして酸素、または、酸素と希ガスの混合ガスを用いる。スパッタリングガスに含まれる酸素の割合を高めることで、成膜される酸化膜中の過剰酸素を増やすことができる。また、上記の酸化膜の成膜をスパッタリング法によって成膜する場合は、上記のIn−M−Zn酸化物ターゲットを用いることができる。
【0316】
特に、酸化膜230Aの成膜時に、スパッタリングガスに含まれる酸素の一部が絶縁膜224Aに供給される場合がある。なお、酸化膜230Aのスパッタリングガスに含まれる酸素の割合は70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは100%とすればよい。
【0317】
また、酸化膜230Bをスパッタリング法で形成する場合、スパッタリングガスに含まれる酸素の割合を1%以上30%以下、好ましくは5%以上20%以下として成膜すると、酸素欠乏型の酸化物半導体が形成される。酸素欠乏型の酸化物半導体を用いたトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られる。
【0318】
本実施の形態では、酸化膜230Aとして、スパッタリング法によって、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]のターゲットを用いて成膜する。また、酸化膜230Bとして、スパッタリング法によって、In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]のターゲットを用いて成膜する。なお、各酸化膜は、成膜条件、および原子数比を適宜選択することで、酸化物230に求める特性に合わせて形成するとよい。
【0319】
次に、加熱処理を行ってもよい。加熱処理は、上述した加熱処理条件を用いることができる。加熱処理によって、酸化膜230A、および酸化膜230B中の水素や水などの不純物を除去することなどができる。本実施の形態では、窒素雰囲気にて400℃の温度で1時間の処理を行なった後に、連続して酸素雰囲気にて400℃の温度で1時間の処理を行う。
【0320】
次に、絶縁膜224A、酸化膜230A、および酸化膜230Bを島状に加工して、絶縁体224、酸化物230a、および酸化物230bを形成する(
図14参照。)。本工程は、例えば絶縁体222をエッチングストッパ膜として用いることができる。
【0321】
なお、上記工程において、絶縁膜224Aは、必ずしも島状に加工しなくともよい。絶縁膜224Aに対しては、ハーフエッチングを行ってもよい。絶縁膜224Aに対してハーフエッチングを行うことで、後の工程で形成する酸化物230cの下にも絶縁体224が残った状態で形成される。なお、絶縁膜224Aは、後の工程である絶縁膜272Aを加工する際に、島状に加工することができる。
【0322】
ここで、酸化物230は、少なくとも一部が導電体205と重なるように形成する。また、酸化物230の側面は、絶縁体222に対し、略垂直であることが好ましい。酸化物230の側面が、絶縁体222に対し、略垂直であることで、複数のトランジスタ200を設ける際に、小面積化、高密度化が可能となる。なお、酸化物230の側面と絶縁体222の上面のなす角が鋭角になる構成にしてもよい。その場合、酸化物230の側面と絶縁体222の上面のなす角は大きいほど好ましい。
【0323】
また、酸化物230の側面と、酸化物230の上面との間に、湾曲面を有する。つまり、側面の端部と上面の端部は、湾曲していることが好ましい(以下、ラウンド状ともいう)。湾曲面は、例えば、酸化物230bの端部において、曲率半径が、3nm以上10nm以下、好ましくは、5nm以上6nm以下とすることが好ましい。
【0324】
なお、端部に角を有さないことで、以降の成膜工程における膜の被覆性が向上する。
【0325】
なお、当該酸化膜の加工はリソグラフィー法を用いて行えばよい。また、該加工はドライエッチング法やウェットエッチング法を用いることができる。ドライエッチング法による加工は微細加工に適している。
【0326】
なお、リソグラフィー法では、まず、マスクを介してレジストを露光する。次に、露光された領域を、現像液を用いて除去または残存させてレジストマスクを形成する。次に、当該レジストマスクを介してエッチング処理することで導電体、半導体または絶縁体などを所望の形状に加工することができる。例えば、KrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光、EUV(Extreme Ultraviolet)光などを用いて、レジストを露光することでレジストマスクを形成すればよい。また、基板と投影レンズとの間に液体(例えば水)を満たして露光する、液浸技術を用いてもよい。また、前述した光に代えて、電子ビームやイオンビームを用いてもよい。なお、電子ビームやイオンビームを用いる場合には、マスクは不要となる。なお、レジストマスクの除去には、アッシングなどのドライエッチング処理を行う、ウェットエッチング処理を行う、ドライエッチング処理後にウェットエッチング処理を行う、またはウェットエッチング処理後にドライエッチング処理を行うことができる。
【0327】
また、レジストマスクの代わりに絶縁体や導電体からなるハードマスクを用いてもよい。ハードマスクを用いる場合、酸化膜230B上にハードマスク材料となる絶縁膜や導電膜を形成し、その上にレジストマスクを形成し、ハードマスク材料をエッチングすることで所望の形状のハードマスクを形成することができる。酸化膜230A、および酸化膜230Bのエッチングは、レジストマスクを除去してから行っても良いし、レジストマスクを残したまま行っても良い。後者の場合、エッチング中にレジストマスクが消失することがある。上記酸化膜のエッチング後にハードマスクをエッチングにより除去しても良い。一方、ハードマスクの材料が後工程に影響が無い、あるいは後工程で利用できる場合、必ずしもハードマスクを除去する必要は無い。
【0328】
ドライエッチング装置としては、平行平板型電極を有する容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)エッチング装置を用いることができる。平行平板型電極を有する容量結合型プラズマエッチング装置は、平行平板型電極の一方の電極に高周波電源を印加する構成でもよい。または平行平板型電極の一方の電極に複数の異なった高周波電源を印加する構成でもよい。または平行平板型電極それぞれに同じ周波数の高周波電源を印加する構成でもよい。または平行平板型電極それぞれに周波数の異なる高周波電源を印加する構成でもよい。または高密度プラズマ源を有するドライエッチング装置を用いることができる。高密度プラズマ源を有するドライエッチング装置は、例えば、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)エッチング装置などを用いることができる。
【0329】
また、上記ドライエッチングなどの処理を行うことによって、エッチングガスなどに起因した不純物が酸化物230a、および酸化物230bなどの表面または内部に付着または拡散することがある。不純物としては、例えば、フッ素または塩素などがある。
【0330】
上記の不純物などを除去するために、洗浄を行う。洗浄方法としては、洗浄液など用いたウェット洗浄、プラズマを用いたプラズマ処理または、熱処理による洗浄などがあり、上記洗浄を適宜組み合わせて行ってもよい。
【0331】
ウェット洗浄としては、シュウ酸、リン酸またはフッ化水素酸などを炭酸水または純水で希釈した水溶液を用いて洗浄処理を行ってもよい。または、純水または炭酸水を用いた超音波洗浄を行ってもよい。本実施の形態では、純水または炭酸水を用いた超音波洗浄を行う。
【0332】
続いて、加熱処理を行っても良い。加熱処理の条件は、前述の加熱処理の条件を用いることができる。本実施の形態では、窒素雰囲気にて400℃の温度で1時間の処理を行なった後に、連続して酸素雰囲気にて400℃の温度で1時間の処理を行う。
【0333】
次に、絶縁体224、および酸化物230bの上に、酸化物230cとなる酸化膜230C、絶縁膜250A、導電膜260A、導電膜260B、絶縁膜270Aおよび絶縁膜271Aを順に成膜する(
図15参照。)。
【0334】
酸化膜230Cの成膜はスパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。
【0335】
例えば、酸化膜230Cの成膜をスパッタリング法によって成膜する場合は、スパッタリングガスとして酸素、または、酸素と希ガスの混合ガスを用いる。スパッタリングガスに含まれる酸素の割合を高めることで、成膜される酸化膜中の過剰酸素を増やすことができる。また、上記の酸化膜の成膜をスパッタリング法によって成膜する場合は、上記のIn−M−Zn酸化物ターゲットを用いることができる。
【0336】
特に、酸化膜230Cの成膜時に、スパッタリングガスに含まれる酸素の一部が酸化物230bおよび酸化物230aに供給される場合がある。なお、酸化膜230Cのスパッタリングガスに含まれる酸素の割合は70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは100%とすればよい。
【0337】
本実施の形態では、酸化膜230Cとして、スパッタリング法によって、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]のターゲットを用いて成膜する。
【0338】
ここで、リソグラフィー法によって、酸化膜230Cを加工して、酸化物230cを形成してもよい。ここで、形成することによって、酸化物230cの形状を任意とすることができる。
【0339】
絶縁膜250Aは、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて成膜することができる。
【0340】
なお、絶縁膜250Aは多層膜とすることができる。例えば、CVD法によって、酸化シリコンを成膜し、次に、スパッタリング法によって、酸化アルミニウムを成膜してもよい。酸素を含む雰囲気において、スパッタリング法を用いて成膜することで、酸化シリコンに酸素を添加することができる。
【0341】
また、ここで、加熱処理を行ってもよい。加熱処理は、前述の加熱処理条件を用いることができる。該加熱処理によって、絶縁膜250Aの水分濃度および水素濃度を低減させることができる。本実施の形態では、ここでの加熱処理は行わない。
【0342】
導電膜260Aは、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて成膜することができる。ここで、例えば、酸化物230として用いることができる酸化物半導体は、低抵抗化処理を施すことで、導電性酸化物となる。そこで、導電膜260Aとして、酸化物230として用いることができる酸化物を成膜し、後の工程で該酸化物を低抵抗化してもよい。なお、導電膜260Aに、酸化物230として用いることができる酸化物を、酸素を含む雰囲気において、スパッタリング法を用いて成膜することで、絶縁体250に酸素を添加することができる。絶縁体250に酸素を添加することで、添加された酸素は、絶縁体250を介して、酸化物230に酸素を供給することが可能となる。
【0343】
導電膜260Bは、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて成膜することができる。また、導電膜260Aに酸化物230として用いることができる酸化物半導体を用いた場合、導電膜260Bをスパッタリング法で成膜することで、導電膜260Aの電気抵抗値を低下させて導電体とすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極と呼ぶことができる。該OC電極上の導電体上に、さらに導電体をスパッタリング法などによって成膜してもよい。
【0344】
続いて、加熱処理を行うことができる。加熱処理は、前述の加熱処理条件を用いることができる。なお、加熱処理は行わなくてもよい場合がある。本実施の形態では、ここでの加熱処理は行わない。
【0345】
絶縁膜270Aは、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて成膜することができる。ここで、絶縁膜270Aの膜厚は、後の工程で成膜する絶縁膜272Aの膜厚より厚くすることが好ましい。これにより、後の工程で絶縁体272を形成する際、導電体260の上に絶縁体270を、容易に残存させることができる。
【0346】
絶縁膜271Aは、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて成膜することができる。
【0347】
次に、絶縁膜271Aをエッチングし、絶縁体271を形成する。続いて、絶縁体271をエッチングマスクとして、導電膜260A、導電膜260Bおよび絶縁膜270Aをエッチングし、導電体260(導電体260a、および導電体260b)および絶縁体270を形成する。(
図16参照。)。導電体260a、導電体260b、絶縁体270および絶縁体271は、少なくとも一部が、導電体205および酸化物230と重なるように形成する。
【0348】
また、導電体260aの側面、導電体260bの側面、絶縁体270および絶縁体271の側面は、略同一面内であることが好ましい。
【0349】
また、導電体260aの側面、導電体260bの側面、絶縁体270および絶縁体271の側面が共有する同一面は、基板に対し、略垂直であることが好ましい。つまり、断面形状において、導電体260a、導電体260b、絶縁体270および絶縁体271は、酸化物230の上面に対する角度が、90度に近いほど好ましい。なお、断面形状において、導電体260a、導電体260b、絶縁体270および絶縁体270の側面と、酸化物230の上面のなす角が鋭角になる構成にしてもよい。その場合、導電体260a、導電体260b、絶縁体270および絶縁体271の側面と、酸化物230の上面のなす角は90度に近いほど好ましい。
【0350】
また、上記エッチングにより、絶縁膜250Aの導電体260と重ならない領域の上部がエッチングされる場合がある。この場合、絶縁膜250Aの導電体260と重なる領域の膜厚が、導電体260と重ならない領域の膜厚より厚くなる場合がある。
【0351】
次に、絶縁膜250A、導電体260、絶縁体270および絶縁体271を覆って、絶縁膜272Aを成膜する。絶縁膜272Aとして、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて成膜することができる。
【0352】
絶縁膜272Aの成膜は、ALD法を用いてもよい。ALD法を用いることで、絶縁膜250A、導電体260、および絶縁体270および絶縁体271の側面に対して、より被覆性が良好な絶縁膜272Aを成膜することができる(
図17参照。)。
【0353】
ここで、絶縁膜272Aを介して、酸化物230に、インジウムなどの金属原子、または不純物を添加し、低抵抗領域を形成しても良い。不純物を添加するために、例えば、プラズマ処理、イオン化された原料ガスを質量分離して添加するイオン注入法、イオン化された原料ガスを質量分離せずに添加するイオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いて、インジウムなどの金属元素、および不純物の少なくとも一であるドーパントを添加すればよい。または、アルゴン、ヘリウムなどの希ガスを添加してもよい。ここで、酸化物230と、導電体260と、が重なる領域は、導電体260、絶縁体271および絶縁体270が位置するために該ドーパントが注入されない。一方、酸化物230と、導電体260と、が重ならない領域に該ドーパントが注入される。つまり、自己整合的に酸化物230が低抵抗化した領域を形成することができる。
【0354】
次に、絶縁膜272Aに異方性のエッチング処理を行って、導電体260、絶縁体270および絶縁体271の側面に接して、絶縁体272を形成する。また、絶縁膜250Aおよび酸化膜230Cを加工し、絶縁体250および酸化物230cを形成する。異方性のエッチング処理としては、ドライエッチング処理を行うことが好ましい。また、これにより、基板面に略平行な面に成膜された絶縁膜272Aを除去して、絶縁体272を自己整合的に形成することができる。また、
図11(A)に示す、導電体260と、絶縁体250と、が重ならない領域250Wを形成することができる(
図18参照。)。
【0355】
次に、絶縁体224、酸化物230、絶縁体271、および絶縁体272を覆って、絶縁体274となる絶縁膜を成膜し、絶縁体274を形成する。絶縁体274となる絶縁膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる(
図19参照。)。
【0356】
絶縁体274となる絶縁膜の成膜は、窒素または水素の少なくとも一方を含む雰囲気で行うことが好ましい。このような雰囲気で成膜を行うことで、酸化物230bの絶縁体250と重ならない領域を中心に、酸素欠損を形成し、当該酸素欠損と窒素または水素などの不純物元素を結合させて、キャリア密度を高くすることができる。このようにして、低抵抗化された、領域231a及び領域231bを形成することができる。絶縁体274となる絶縁膜として、例えばCVD法を用いて、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンを用いることができる。本実施の形態では、絶縁体274となる絶縁膜として、窒化シリコンを用いる。
【0357】
このように、本実施の形態に示す半導体装置の作製方法では、チャネル長が10nmから30nm程度に微細化されたトランジスタでも、絶縁体274となる絶縁膜の成膜により、ソース領域およびドレイン領域を自己整合的に形成することができる。よって、微細化または高集積化された半導体装置も、歩留まり良く製造することができる。
【0358】
ここで、導電体260の上面および側面と、を、絶縁体272および絶縁体271で覆っておくことで、窒素または水素などの不純物元素が導電体260に混入することを防ぐことができる。
【0359】
また、絶縁体274となる絶縁膜を成膜する前にプラズマ処理を行ってもよい。当該プラズマ処理は、例えば、上述の酸素欠損を形成する元素、または酸素欠損と結合する元素を含む雰囲気で行えばよい。
【0360】
なお、プラズマ処理のみで酸化物230に領域231aおよび領域231bを形成する構成としてもよい。
【0361】
次に、絶縁体274の上に、絶縁体280となる絶縁膜を成膜する。絶縁体280となる絶縁膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。または、スピンコート法、ディップ法、液滴吐出法(インクジェット法など)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷など)、ドクターナイフ法、ロールコーター法またはカーテンコーター法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、該絶縁膜として、酸化窒化シリコンを用いる。
【0362】
次に、絶縁体280となる絶縁膜の一部を除去して、絶縁体280を形成する。絶縁体280は、上面が平坦性を有するように形成することが好ましい。例えば、絶縁体280は、絶縁体280となる絶縁膜として成膜した直後に上面が平坦性を有していてもよい。または、例えば、絶縁体280は、成膜後に基板裏面などの基準面と平行になるよう絶縁体などを上面から除去していくことで平坦性を有してもよい。このような処理を、平坦化処理と呼ぶ。平坦化処理としては、CMP処理、ドライエッチング処理などがある。本実施の形態では、平坦化処理として、CMP処理を用いる。ただし、絶縁体280の上面は必ずしも平坦性を有さなくてもよい。
【0363】
以上により、トランジスタ200を有する半導体装置を作製することができる(
図1参照。)。
【0364】
本発明の一態様により、微細化または高集積化が可能な半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、良好な電気特性を有する半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、オフ電流の小さい半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、オン電流の大きいトランジスタを提供することができる。または、本発明の一態様により、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、消費電力が低減された半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、生産性の高い半導体装置を提供することができる。
【0365】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0366】
(実施の形態2)
本実施の形態では、半導体装置の一形態を、
図21乃至
図25を用いて説明する。
【0367】
<記憶装置1>
図21に示す記憶装置は、トランジスタ300と、トランジスタ200、および容量素子100を有している。
図21は、トランジスタ200およびトランジスタ300のチャネル長方向の断面図である。
図22には、トランジスタ300近傍のトランジスタ300のチャネル幅方向の断面図を示す。
【0368】
トランジスタ200は、酸化物半導体を有する半導体層にチャネルが形成されるトランジスタである。トランジスタ200は、オフ電流が小さいため、これを記憶装置に用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、あるいは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ないため、記憶装置の消費電力を十分に低減することができる。
【0369】
図21に示す記憶装置において、配線1001はトランジスタ300のソースと電気的に接続され、配線1002はトランジスタ300のドレインと電気的に接続されている。また、配線1003はトランジスタ200のソースおよびドレインの一方と電気的に接続され、配線1004はトランジスタ200の第1のゲートと電気的に接続され、配線1006はトランジスタ200の第2のゲートと電気的に接続されている。そして、トランジスタ300のゲート、およびトランジスタ200のソースおよびドレインの他方は、容量素子100の電極の一方と電気的に接続され、配線1005は容量素子100の電極の他方と電気的に接続されている。
【0370】
図21に示す記憶装置は、トランジスタ300のゲートの電位が保持可能という特性を有することで、以下に示すように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
【0371】
情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、配線1004の電位を、トランジスタ200が導通状態となる電位にして、トランジスタ200を導通状態とする。これにより、配線1003の電位が、トランジスタ300のゲート、および容量素子100の電極の一方と電気的に接続するノードSNに与えられる。即ち、トランジスタ300のゲートには、所定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下Lowレベル電荷、Highレベル電荷という。)のどちらかが与えられるものとする。その後、配線1004の電位を、トランジスタ200が非導通状態となる電位にして、トランジスタ200を非導通状態とすることにより、ノードSNに電荷が保持される(保持)。
【0372】
トランジスタ200のオフ電流が小さい場合、ノードSNの電荷は長期間にわたって保持される。
【0373】
次に情報の読み出しについて説明する。配線1001に所定の電位(定電位)を与えた状態で、配線1005に適切な電位(読み出し電位)を与えると、配線1002は、ノードSNに保持された電荷量に応じた電位をとる。これは、トランジスタ300をnチャネル型とすると、トランジスタ300のゲートにHighレベル電荷が与えられている場合の見かけ上のしきい値電圧V
th_Hは、トランジスタ300のゲートにLowレベル電荷が与えられている場合の見かけ上のしきい値電圧V
th_Lより低くなるためである。ここで、見かけ上のしきい値電圧とは、トランジスタ300を「導通状態」とするために必要な配線1005の電位をいうものとする。したがって、配線1005の電位をV
th_HとV
th_Lの間の電位V
0とすることにより、ノードSNに与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、ノードSNにHighレベル電荷が与えられていた場合には、配線1005の電位がV
0(>V
th_H)となれば、トランジスタ300は「導通状態」となる。一方、ノードFGにLowレベル電荷が与えられていた場合には、配線1005の電位がV
0(<V
th_L)となっても、トランジスタ300は「非導通状態」のままである。このため、配線1002の電位を判別することで、ノードSNに保持されている情報を読み出すことができる。
【0374】
<記憶装置1の構造>
本発明の一態様の記憶装置は、
図21に示すようにトランジスタ300、トランジスタ200、容量素子100を有する。トランジスタ200はトランジスタ300の上方に設けられ、容量素子100はトランジスタ300、およびトランジスタ200の上方に設けられている。
【0375】
トランジスタ300は、基板311上に設けられ、導電体316、絶縁体315、基板311の一部からなる半導体領域313、およびソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bを有する。
【0376】
また、トランジスタ300は、
図22に示すように、半導体領域313の上面およびチャネル幅方向の側面が絶縁体315を介して導電体316に覆われている。このように、トランジスタ300をFin型とすることにより、実効上のチャネル幅が増大することによりトランジスタ300のオン特性を向上させることができる。また、ゲート電極の電界の寄与を高くすることができるため、トランジスタ300のオフ特性を向上させることができる。
【0377】
トランジスタ300は、pチャネル型、あるいはnチャネル型のいずれでもよい。
【0378】
半導体領域313のチャネルが形成される領域、その近傍の領域、ソース領域、またはドレイン領域となる低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bなどにおいて、シリコン系半導体などの半導体を含むことが好ましく、単結晶シリコンを含むことが好ましい。または、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)などを有する材料で形成してもよい。結晶格子に応力を与え、格子間隔を変化させることで有効質量を制御したシリコンを用いた構成としてもよい。またはGaAsとGaAlAs等を用いることで、トランジスタ300をHEMT(High Electron Mobility Transistor)としてもよい。
【0379】
低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bは、半導体領域313に適用される半導体材料に加え、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、またはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含む。
【0380】
ゲート電極として機能する導電体316は、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、もしくはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含むシリコンなどの半導体材料、金属材料、合金材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。
【0381】
なお、導電体の材料により、仕事関数を定めることで、しきい値電圧を調整することができる。具体的には、導電体に窒化チタンや窒化タンタルなどの材料を用いることが好ましい。さらに導電性と埋め込み性を両立するために導電体にタングステンやアルミニウムなどの金属材料を積層として用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが耐熱性の点で好ましい。
【0382】
なお、
図21および
図22に示すトランジスタ300は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0383】
トランジスタ300を覆って、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326が順に積層して設けられている。
【0384】
絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326として、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよい。
【0385】
絶縁体322は、その下方に設けられるトランジスタ300などによって生じる段差を平坦化する平坦化膜として機能を有していてもよい。例えば、絶縁体322の上面は、平坦性を高めるために化学機械研磨(CMP)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0386】
また、絶縁体324には、基板311、またはトランジスタ300などから、トランジスタ200が設けられる領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。
【0387】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、例えば、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ200等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、該半導体素子の特性が低下する場合がある。従って、トランジスタ200と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0388】
水素の脱離量は、例えば、昇温脱離ガス分析法(TDS)などを用いて分析することができる。例えば、絶縁体324の水素の脱離量は、TDS分析において、50℃から500℃の範囲において、水素原子に換算した脱離量が、絶縁体324の面積当たりに換算して、10×10
15atoms/cm
2以下、好ましくは5×10
15atoms/cm
2以下であればよい。
【0389】
なお、絶縁体326は、絶縁体324よりも誘電率が低いことが好ましい。例えば、絶縁体326の比誘電率は4未満が好ましく、3未満がより好ましい。また例えば、絶縁体324の比誘電率は、絶縁体326の比誘電率の0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0390】
また、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326には容量素子100、またはトランジスタ200と電気的に接続する導電体328、および導電体330等が埋め込まれている。なお、導電体328、および導電体330はプラグ、または配線として機能を有する。また、プラグまたは配線として機能を有する導電体は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と電気的に接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電体の一部が配線として機能する場合、および導電体の一部がプラグとして機能する場合もある。
【0391】
各プラグ、および配線(導電体328、および導電体330等)の材料としては、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0392】
絶縁体326、および導電体330上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図21において、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354が順に積層して設けられている。また、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354には、導電体356が形成されている。導電体356は、プラグ、または配線として機能を有する。なお導電体356は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0393】
なお、例えば、絶縁体350は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体356は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体350が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ200とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ200への水素の拡散を抑制することができる。
【0394】
なお、水素に対するバリア性を有する導電体としては、例えば、窒化タンタル等を用いるとよい。また、窒化タンタルと導電性が高いタングステンを積層することで、配線としての導電性を保持したまま、トランジスタ300からの水素の拡散を抑制することができる。この場合、水素に対するバリア性を有する窒化タンタル層が、水素に対するバリア性を有する絶縁体350と接する構造であることが好ましい。
【0395】
絶縁体350、および導電体356上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図21において、絶縁体360、絶縁体362、及び絶縁体364が順に積層して設けられている。また、絶縁体360、絶縁体362、及び絶縁体364には、導電体366が形成されている。導電体366は、プラグ、または配線として機能を有する。なお導電体366は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0396】
なお、例えば、絶縁体360は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体366は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体360が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ200とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ200への水素の拡散を抑制することができる。
【0397】
絶縁体364、および導電体366上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図21において、絶縁体370、絶縁体372、及び絶縁体374が順に積層して設けられている。また、絶縁体370、絶縁体372、及び絶縁体374には、導電体376が形成されている。導電体376は、プラグ、または配線として機能を有する。なお導電体376は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0398】
なお、例えば、絶縁体370は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体376は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体370が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ200とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ200への水素の拡散を抑制することができる。
【0399】
絶縁体374、および導電体376上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図21において、絶縁体380、絶縁体382、及び絶縁体384が順に積層して設けられている。また、絶縁体380、絶縁体382、及び絶縁体384には、導電体386が形成されている。導電体386は、プラグ、または配線として機能を有する。なお導電体386は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0400】
なお、例えば、絶縁体380は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体386は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体380が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ200とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ200への水素の拡散を抑制することができる。
【0401】
上記において、導電体356を含む配線層、導電体366を含む配線層、導電体376を含む配線層、および導電体386を含む配線層、について説明したが、本実施の形態に係る記憶装置はこれに限られるものではない。導電体356を含む配線層と同様の配線層を3層以下にしてもよいし、導電体356を含む配線層と同様の配線層を5層以上にしてもよい。
【0402】
絶縁体384上には絶縁体210、絶縁体212、絶縁体214、および絶縁体216が、順に積層して設けられている。絶縁体210、絶縁体212、絶縁体214、および絶縁体216のいずれかは、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。
【0403】
例えば、絶縁体210、および絶縁体214には、例えば、基板311、またはトランジスタ300を設ける領域などから、トランジスタ200を設ける領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。従って、絶縁体324と同様の材料を用いることができる。
【0404】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ200等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、該半導体素子の特性が低下する場合がある。従って、トランジスタ200と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0405】
また、水素に対するバリア性を有する膜として、例えば、絶縁体210、および絶縁体214には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
【0406】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、およびトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中および作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ200への混入を防止することができる。また、トランジスタ200を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ200に対する保護膜として用いることに適している。
【0407】
また、例えば、絶縁体212、および絶縁体216には、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、当該絶縁膜に、比較的誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体212、および絶縁体216として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0408】
また、絶縁体210、絶縁体212、絶縁体214、および絶縁体216には、導電体218、及びトランジスタ200を構成する導電体(導電体205)等が埋め込まれている。なお、導電体218は、容量素子100、またはトランジスタ300と電気的に接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体218は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0409】
特に、絶縁体210、および絶縁体214と接する領域の導電体218は、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する導電体であることが好ましい。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ200とは、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する層で、完全により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ200への水素の拡散を抑制することができる。
【0410】
絶縁体216の上方には、トランジスタ200が設けられている。なお、トランジスタ200の構造は、先の実施の形態で説明した半導体装置が有するトランジスタを用いればよい。また、
図21に示すトランジスタ200は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0411】
トランジスタ200の上方には、絶縁体280を設ける。
【0412】
絶縁体280上には、絶縁体286が設けられている。絶縁体286は、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、当該絶縁膜に、比較的誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体286として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0413】
また、絶縁体220、絶縁体222、絶縁体224、絶縁体274および絶縁体280には、導電体246、および導電体248等が埋め込まれている。
【0414】
導電体246、および導電体248は、容量素子100、トランジスタ200、またはトランジスタ300と電気的に接続するプラグ、または配線として機能を有する。導電体246、および導電体248は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0415】
続いて、トランジスタ200の上方には、容量素子100が設けられている。容量素子100は、導電体110と、導電体120、および絶縁体130とを有する。
【0416】
また、導電体246、および導電体248上に、導電体112を設けてもよい。導電体112は、容量素子100、トランジスタ200、またはトランジスタ300と電気的に接続するプラグ、または配線として機能を有する。導電体110は、容量素子100の電極として機能を有する。なお、導電体112、および導電体110は、同時に形成することができる。
【0417】
導電体112、および導電体110には、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化タンタル、窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。又は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。
【0418】
図21では、導電体112、および導電体110は単層構造を示したが、当該構成に限定されず、2層以上の積層構造でもよい。例えば、バリア性を有する導電体と導電性が高い導電体との間に、バリア性を有する導電体、および導電性が高い導電体に対して密着性が高い導電体を形成してもよい。
【0419】
また、導電体112、および導電体110上に、容量素子100の誘電体として、絶縁体130を設ける。絶縁体130は、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、窒化酸化ハフニウム、窒化ハフニウムなどを用いればよく、積層または単層で設けることができる。
【0420】
例えば、絶縁体130には、酸化窒化シリコンなどの絶縁耐力が大きい材料を用いるとよい。当該構成により、容量素子100は、絶縁体130を有することで、絶縁耐力が向上し、容量素子100の静電破壊を抑制することができる。
【0421】
絶縁体130上に、導電体110と重畳するように、導電体120を設ける。なお、導電体120は、金属材料、合金材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが好ましい。また、導電体などの他の構造と同時に形成する場合は、低抵抗金属材料であるCu(銅)やAl(アルミニウム)等を用いればよい。
【0422】
導電体120、および絶縁体130上には、絶縁体150が設けられている。絶縁体150は、絶縁体320と同様の材料を用いて設けることができる。また、絶縁体150は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。
【0423】
本構造を用いることで、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、電気特性の変動を抑制すると共に、信頼性を向上させることができる。または、オン電流が大きい酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。または、オフ電流が小さい酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。または、消費電力が低減された半導体装置を提供することができる。
【0424】
<記憶装置2>
図23に示す半導体装置は、トランジスタ400と、トランジスタ200、および容量素子100を有する記憶装置である。以下に、記憶装置としての一形態を、
図23を用いて説明する。
【0425】
本実施の形態に示す半導体装置における、トランジスタ200、トランジスタ400、および容量素子100の接続関係の一例を示した回路図を
図23(A)に示す。また、
図23(A)に示す配線1004から配線1010などを対応させた半導体装置の断面図を
図23(B)に示す。
【0426】
図23に示すように、トランジスタ200は、ゲートが配線1004と、ソースおよびドレインの一方が配線1002と、ソース及びドレインの他方が容量素子100の電極の一方と電気的に接続される。また、容量素子100の電極の他方が配線1005と電気的に接続される。また、トランジスタ400のドレインが配線1010と電気的に接続される。また、
図23(B)に示すように、トランジスタ200の第2のゲートと、トランジスタ400のソース、第1のゲート、および第2のゲートが、配線1006、配線1007、配線1008、および配線1009を介して電気的に接続される。
【0427】
ここで、配線1004に電位を印加することで、トランジスタ200のオン状態、オフ状態を制御することができる。トランジスタ200をオン状態として、配線1003に電位を印加することで、トランジスタ200を介して、容量素子100に電荷を供給することができる。このとき、トランジスタ200をオフ状態にすることで、容量素子100に供給された電荷を保持することができる。また、配線1005は、任意の電位を与えることで、容量結合によって、トランジスタ200と容量素子100の接続部分の電位を制御することができる。例えば、配線1005に接地電位を与えると、上記電荷を保持しやすくなる。また、配線1010に負の電位を印加することで、トランジスタ400を介して、トランジスタ200の第2のゲートに負の電位を与え、トランジスタ200のしきい値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減し、第1のゲート電圧が0Vのときのドレイン電流を非常に小さくすることができる。
【0428】
トランジスタ400の第1のゲート及び第2のゲートをソースとダイオード接続し、トランジスタ400のソースとトランジスタ200の第2のゲートを接続する構成にすることで、配線1010によって、トランジスタ200の第2のゲート電圧を制御することができる。トランジスタ200の第2のゲートの負電位を保持するとき、トランジスタ400の第1のゲートソース間の電圧、および第2のゲートソース間の電圧は、0Vになる。トランジスタ400の第1のゲート電圧が0Vのときのドレイン電流が非常に小さく、しきい値電圧がトランジスタ200より大きいので、この構成とすることにより、トランジスタ400に電源供給をしなくてもトランジスタ200の第2のゲートの負電位を長時間維持することができる。
【0429】
さらに、トランジスタ200の第2のゲートの負電位を保持することで、トランジスタ200に電源供給をしなくてもトランジスタ200の第1のゲート電圧が0Vのときのドレイン電流を非常に小さくすることができる。つまり、トランジスタ200およびトランジスタ400に電源供給をしなくても、容量素子100に電荷を長時間保持することができる。例えば、このような半導体装置を記憶素子として用いることにより、電源供給無しで長時間の記憶保持を行うことができる。よって、リフレッシュ動作の頻度が少ない、またはリフレッシュ動作を必要としない記憶装置を提供することができる。
【0430】
なお、トランジスタ200、トランジスタ400および容量素子100の接続関係は、
図23(A)(B)に示すものに限定されない。必要な回路構成に応じて適宜接続関係を変更することができる。
【0431】
<記憶装置2の構造>
図23(B)は、容量素子100、トランジスタ200、およびトランジスタ400を有する記憶装置の断面図である。なお、
図23に示す記憶装置において、先の実施の形態、および<記憶装置1の構造>に示した半導体装置、および記憶装置を構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記する。
【0432】
本発明の一態様の記憶装置は、
図23に示すようにトランジスタ200、トランジスタ400および容量素子100を有する。トランジスタ200およびトランジスタ400は同一層に設けられ、容量素子100はトランジスタ300、およびトランジスタ200の上方に設けられている。
【0433】
なお、トランジスタ200としては、先の実施の形態、および
図21で説明した半導体装置、および記憶装置が有する容量及びトランジスタを用いればよい。なお、
図23に示す容量素子100、トランジスタ300、トランジスタ200およびトランジスタ400は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0434】
トランジスタ400は、トランジスタ200と同じ層に形成されており、並行して作製することができるトランジスタである。トランジスタ400は、第1のゲート電極として機能する導電体460(導電体460a、および導電体460b)と、第2のゲート電極として機能する導電体405(導電体405a、および導電体405b)と、導電体460と接する絶縁体470、および絶縁体472と、ゲート絶縁層として機能する絶縁体220、絶縁体222、絶縁体224、および絶縁体450と、チャネルが形成される領域を有する酸化物430cと、ソースまたはドレインの一方として機能する酸化物431a、および酸化物431bと、ソースまたはドレインの他方として機能する酸化物432a、および酸化物432bと、を有する。また、第2のゲート電極として機能する導電体405は、配線として機能する導電体403(導電体403a、および導電体403b)と、電気的に接続されている。
【0435】
トランジスタ400において、導電体405は、導電体205と、同じ層である。酸化物431a、および酸化物432aと、酸化物230aと、同じ層であり、酸化物431b、および酸化物432bと、酸化物230bと、同じ層である。酸化物430cは、酸化物230cは同じ層である。絶縁体450は、絶縁体250と、同じ層である。導電体460は、導電体260と、同じ層である。また、絶縁体470は、絶縁体270と、同じ層である。また、絶縁体471は絶縁体271と同じ層である。また、絶縁体472は、絶縁体272と、同じ層である。
【0436】
トランジスタ400の活性層として機能する酸化物430cは、酸化物230などと同様に、酸素欠損が低減され、水素または水などの不純物が低減されている。これにより、トランジスタ400のしきい値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減し、第2のゲート電圧及び第1のゲート電圧が0Vのときのドレイン電流を非常に小さくすることができる。
【0437】
本構造を用いることで、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、電気特性の変動を抑制すると共に、信頼性を向上させることができる。または、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、消費電力を低減することができる。または、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、微細化または高集積化を図ることができる。または、微細化または高集積化された半導体装置を生産性良く提供することができる。
【0438】
<記憶装置3>
図24に示す半導体装置は、トランジスタ300と、トランジスタ200、および容量素子100を有する記憶装置である。以下に、記憶装置としての一形態を、
図24を用いて説明する。
【0439】
トランジスタ200は、酸化物半導体を有する半導体層にチャネルが形成されるトランジスタであり、上記実施の形態に示すトランジスタを用いることができる。上記実施の形態に示すトランジスタは、微細化しても歩留まり良く形成できるので、トランジスタ200の微細化を図ることができる。このようなトランジスタを記憶装置に用いることで、記憶装置の微細化または高集積化を図ることができる。上記実施の形態に示すトランジスタは、オフ電流が小さいため、これを記憶装置に用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、あるいは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ないため、記憶装置の消費電力を十分に低減することができる。
【0440】
図24において、配線1001はトランジスタ300のソースと電気的に接続され、配線1002はトランジスタ300のドレインと電気的に接続されている。また、配線1003はトランジスタ200のソースおよびドレインの一方と電気的に接続され、配線1004はトランジスタ200のゲートと電気的に接続され、配線1006はトランジスタ200のバックゲートと電気的に接続されている。そして、トランジスタ300のゲート、およびトランジスタ200のソースおよびドレインの他方は、容量素子100の電極の一方と電気的に接続され、配線1005は容量素子100の電極の他方と電気的に接続されている。配線1007はトランジスタ400のソースと電気的に接続され、配線1008はトランジスタ400のゲートと電気的に接続され、配線1009はトランジスタ400のバックゲートと電気的に接続され、配線1010はトランジスタ400のドレインと電気的に接続されている。ここで、配線1006、配線1007、配線1008、及び配線1009が電気的に接続されている。
【0441】
図24に示す半導体装置は、トランジスタ300のゲートの電位が保持可能という特性を有することで、以下に示すように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
【0442】
情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、配線1004の電位を、トランジスタ200が導通状態となる電位にして、トランジスタ200を導通状態とする。これにより、配線1003の電位が、トランジスタ300のゲート、および容量素子100の電極の一方と電気的に接続するノードFGに与えられる。即ち、トランジスタ300のゲートには、所定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下Lowレベル電荷、Highレベル電荷という。)のどちらかが与えられるものとする。その後、配線1004の電位を、トランジスタ200が非導通状態となる電位にして、トランジスタ200を非導通状態とすることにより、ノードSNに電荷が保持される(保持)。
【0443】
トランジスタ200のオフ電流が小さい場合、ノードSNの電荷は長期間にわたって保持される。
【0444】
次に情報の読み出しについて説明する。配線1001に所定の電位(定電位)を与えた状態で、配線1005に適切な電位(読み出し電位)を与えると、配線1002は、ノードSNに保持された電荷量に応じた電位をとる。これは、トランジスタ300をnチャネル型とすると、トランジスタ300のゲートにHighレベル電荷が与えられている場合の見かけ上のしきい値電圧V
th_Hは、トランジスタ300のゲートにLowレベル電荷が与えられている場合の見かけ上のしきい値電圧V
th_Lより低くなるためである。ここで、見かけ上のしきい値電圧とは、トランジスタ300を「導通状態」とするために必要な配線1005の電位をいうものとする。したがって、配線1005の電位をV
th_HとV
th_Lの間の電位V
0とすることにより、ノードSNに与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、ノードSNにHighレベル電荷が与えられていた場合には、配線1005の電位がV
0(>V
th_H)となれば、トランジスタ300は「導通状態」となる。一方、ノードSNにLowレベル電荷が与えられていた場合には、配線1005の電位がV
0(<V
th_L)となっても、トランジスタ300は「非導通状態」のままである。このため、配線1002の電位を判別することで、ノードSNに保持されている情報を読み出すことができる。
【0446】
図24は、容量素子100、トランジスタ200、トランジスタ300、およびトランジスタ400を有する記憶装置の断面図である。なお、
図24に示す記憶装置において、先の実施の形態、<記憶装置1の構造>、および<記憶装置2の構造>、に示した半導体装置、および記憶装置を構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記する。
【0447】
本発明の一態様の記憶装置は、
図24に示すようにトランジスタ300、トランジスタ200、トランジスタ400および容量素子100を有する。トランジスタ200およびトランジスタ400はトランジスタ300の上方に設けられ、容量素子100はトランジスタ300、トランジスタ200およびトランジスタ400の上方に設けられている。
【0448】
なお、容量素子100、トランジスタ200、トランジスタ300、およびトランジスタ400としては、先の実施の形態、および
図21乃至
図23で説明した半導体装置、および記憶装置が有する容量及びトランジスタを用いればよい。なお、
図24に示す容量素子100、トランジスタ300、トランジスタ200およびトランジスタ400は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0449】
本構造を用いることで、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、電気特性の変動を抑制すると共に、信頼性を向上させることができる。または、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、消費電力を低減することができる。または、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、微細化または高集積化を図ることができる。または、微細化または高集積化された半導体装置を生産性良く提供することができる。
【0451】
本実施の形態のメモリセルアレイの一例を、
図25に示す。トランジスタ200をメモリセルとして、マトリクス状に配置することで、メモリセルアレイを構成することができる。
【0452】
なお、
図25に示す記憶装置は、
図21、および
図24に示す記憶装置をマトリクス状に配置することで、メモリセルアレイを構成する半導体装置である。なお、1個のトランジスタ400は、複数のトランジスタ200のバックゲート電圧を制御することができる。そのため、トランジスタ400は、トランジスタ200よりも、少ない個数を設けるとよい。
【0453】
従って、
図25には、
図24に示すトランジスタ400は省略する。
図25は、
図21、および
図24に示す記憶装置を、マトリクス状に配置した場合における、行の一部を抜き出した断面図である。
【0454】
また、
図24と、トランジスタ300の構成が異なる。
図25に示すトランジスタ300はチャネルが形成される半導体領域313(基板311の一部)が凸形状を有する。また、半導体領域313の側面および上面を、絶縁体315を介して、導電体316が覆うように設けられている。なお、導電体316は仕事関数を調整する材料を用いてもよい。このようなトランジスタ300は半導体基板の凸部を利用していることからFIN型トランジスタとも呼ばれる。なお、凸部の上部に接して、凸部を形成するためのマスクとして機能する絶縁体を有していてもよい。また、ここでは半導体基板の一部を加工して凸部を形成する場合を示したが、SOI基板を加工して凸形状を有する半導体膜を形成してもよい。
【0455】
図25に示す記憶装置では、メモリセル650aとメモリセル650bが隣接して配置されている。メモリセル650aおよびメモリセル650bは、トランジスタ300、トランジスタ200、および容量素子100を有し、配線1001、配線1002、配線1003、配線1004、配線1005、および配線1006と電気的に接続される。また、メモリセル650aおよびメモリセル650bにおいても、同様にトランジスタ300のゲートと、容量素子100の電極の一方と、が電気的に接続するノードを、ノードSNとする。なお、配線1002は隣接するメモリセル650aとメモリセル650bで共通の配線である。
【0456】
メモリセルをアレイ状に配置する場合、読み出し時には、所望のメモリセルの情報を読み出さなくてはならない。例えば、メモリセルアレイがNOR型の構成の場合、情報を読み出さないメモリセルのトランジスタ300を非導通状態にすることで、所望のメモリセルの情報のみを読み出すことができる。この場合、ノードSNに与えられた電荷によらずトランジスタ300が「非導通状態」となるような電位、つまり、V
th_Hより低い電位を、情報を読み出さないメモリセルと接続される配線1005に与えればよい。または、例えば、メモリセルアレイがNAND型の構成の場合、情報を読み出さないメモリセルのトランジスタ300を導通状態にすることで、所望のメモリセルの情報のみを読み出すことができる。この場合、ノードSNに与えられた電荷によらずトランジスタ300が「導通状態」となるような電位、つまり、V
th_Lより高い電位を、情報を読み出さないメモリセルと接続される配線1005に与えればよい。
【0457】
本構造を用いることで、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、電気特性の変動を抑制すると共に、信頼性を向上させることができる。または、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、消費電力を低減することができる。または、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、微細化または高集積化を図ることができる。または、微細化または高集積化された半導体装置を生産性良く提供することができる。
【0458】
以上、本実施の形態に示す構成、構造、方法などは、他の実施の形態に示す構成、構造、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0459】
(実施の形態3)
本実施の形態では、
図26および
図27を用いて、本発明の一態様に係る、酸化物を半導体に用いたトランジスタ(以下、OSトランジスタと呼ぶ。)、および容量素子が適用されている記憶装置の一例として、NOSRAMについて説明する。NOSRAM(登録商標)とは「Nonvolatile Oxide Semiconductor RAM」の略称であり、ゲインセル型(2T型、3T型)のメモリセルを有するRAMを指す。なお、以下において、NOSRAMのようにOSトランジスタを用いたメモリ装置を、OSメモリと呼ぶ場合がある。
【0460】
NOSRAMでは、メモリセルにOSトランジスタが用いられるメモリ装置(以下、「OSメモリ」と呼ぶ。)が適用されている。OSメモリは、少なくとも容量素子と、容量素子の充放電を制御するOSトランジスタを有するメモリである。OSトランジスタが極小オフ電流のトランジスタであるので、OSメモリは優れた保持特性をもち、不揮発性メモリとして機能させることができる。
【0461】
<<NOSRAM>>
図26にNOSRAMの構成例を示す。
図26に示すNOSRAM1600は、メモリセルアレイ1610、コントローラ1640、行ドライバ1650、列ドライバ1660、出力ドライバ1670を有する。なお、NOSRAM1600は、1のメモリセルで多値データを記憶する多値NOSRAMである。
【0462】
メモリセルアレイ1610は複数のメモリセル1611、複数のワード線WWL、RWL、ビット線BL、ソース線SLを有する。ワード線WWLは書き込みワード線であり、ワード線RWLは読み出しワード線である。NOSRAM1600では、1のメモリセル1611で3ビット(8値)のデータを記憶する。
【0463】
コントローラ1640は、NOSRAM1600全体を統括的に制御し、データWDA[31:0]の書き込み、データRDA[31:0]の読み出しを行う。コントローラ1640は、外部からのコマンド信号(例えば、チップイネーブル信号、書き込みイネーブル信号など)を処理して、行ドライバ1650、列ドライバ1660および出力ドライバ1670の制御信号を生成する。
【0464】
行ドライバ1650は、アクセスする行を選択する機能を有する。行ドライバ1650は、行デコーダ1651、およびワード線ドライバ1652を有する。
【0465】
列ドライバ1660は、ソース線SLおよびビット線BLを駆動する。列ドライバ1660は、列デコーダ1661、書き込みドライバ1662、DAC(デジタル‐アナログ変換回路)1663を有する。
【0466】
DAC1663は3ビットのデジタルデータをアナログ電圧に変換する。DAC1663は32ビットのデータWDA[31:0]を3ビットごとに、アナログ電圧に変換する。
【0467】
書き込みドライバ1662は、ソース線SLをプリチャージする機能、ソース線SLを電気的に浮遊状態にする機能、ソース線SLを選択する機能、選択されたソース線SLにDAC1663で生成した書き込み電圧を入力する機能、ビット線BLをプリチャージする機能、ビット線BLを電気的に浮遊状態にする機能等を有する。
【0468】
出力ドライバ1670は、セレクタ1671、ADC(アナログ‐デジタル変換回路)1672、出力バッファ1673を有する。セレクタ1671は、アクセスするソース線SLを選択し、選択されたソース線SLの電圧をADC1672に送信する。ADC1672は、アナログ電圧を3ビットのデジタルデータに変換する機能を持つ。ソース線SLの電圧はADC1672において、3ビットのデータに変換され、出力バッファ1673はADC1672から出力されるデータを保持する。
【0469】
<メモリセル>
図27(A)はメモリセル1611の構成例を示す回路図である。メモリセル1611は2T型のゲインセルであり、メモリセル1611はワード線WWL、RWL、ビット線BL、ソース線SL、配線BGLに電気的に接続されている。メモリセル1611は、ノードSN、OSトランジスタMO61、トランジスタMP61、容量素子C61を有する。OSトランジスタMO61は書き込みトランジスタである。トランジスタMP61は読み出しトランジスタであり、例えばpチャネル型Siトランジスタで構成される。容量素子C61はノードSNの電圧を保持するための保持容量である。ノードSNはデータの保持ノードであり、ここではトランジスタMP61のゲートに相当する。
【0470】
メモリセル1611の書き込みトランジスタがOSトランジスタMO61で構成されているため、NOSRAM1600は長時間データを保持することが可能である。
【0471】
図27(A)の例では、ビット線は、書き込みと読み出しで共通のビット線であるが、
図27(B)に示すように、書き込みビット線WBLと、読み出しビット線RBLとを設けてもよい。
【0472】
図27(C)−
図27(E)にメモリセルの他の構成例を示す。
図27(C)−
図27(E)には、書き込み用ビット線と読み出し用ビット線を設けた例を示しているが、
図27(A)のように書き込みと読み出しで共有されるビット線を設けてもよい。
【0473】
図27(C)に示すメモリセル1612は、メモリセル1611の変形例であり、読み出しトランジスタをnチャネル型トランジスタ(MN61)に変更したものである。トランジスタMN61はOSトランジスタであってもよいし、Siトランジスタであってもよい。
【0474】
メモリセル1611、1612において、OSトランジスタMO61はバックゲートの無いOSトランジスタであってもよい。
【0475】
図27(D)に示すメモリセル1613は、3T型ゲインセルであり、ワード線WWL、RWL、ビット線WBL、RBL、ソース線SL、配線BGL、PCLに電気的に接続されている。メモリセル1613は、ノードSN、OSトランジスタMO62、トランジスタMP62、トランジスタMP63、容量素子C62を有する。OSトランジスタMO62は書き込みトランジスタである。トランジスタMP62は読み出しトランジスタであり、トランジスタMP63は選択トランジスタである。
【0476】
図27(E)に示すメモリセル1614は、メモリセル1613の変形例であり、読み出しトランジスタおよび選択トランジスタをnチャネル型トランジスタ(MN62、MN63)に変更したものである。トランジスタMN62、MN63はOSトランジスタであってもよいし、Siトランジスタであってもよい。
【0477】
メモリセル1611−1614に設けられるOSトランジスタは、バックゲートの無いトランジスタでもよいし、バックゲートが有るトランジスタであってもよい。
【0478】
容量素子C61の充放電によってデータを書き換えるため、NOSRAM1600は原理的には書き換え回数に制約はなく、かつ、低エネルギーで、データの書き込みおよび読み出しが可能である。また、長時間データを保持することが可能であるので、リフレッシュ頻度を低減できる。
【0479】
上記実施の形態に示す半導体装置をメモリセル1611、1612、1613、1614に用いる場合、OSトランジスタMO61、MO62としてトランジスタ200を用い、容量素子C61、C62として容量素子100を用い、トランジスタMP61、MN62としてトランジスタ300を用いることができる。
【0480】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0481】
(実施の形態4)
本実施の形態では、
図28および
図29を用いて、本発明の一態様に係る、OSトランジスタ、および容量素子が適用されている記憶装置の一例として、DOSRAMについて説明する。DOSRAM(登録商標)とは、「Dynamic Oxide Semiconductor RAM」の略称であり、1T(トランジスタ)1C(容量)型のメモリセルを有するRAMを指す。DOSRAMも、NOSRAMと同様に、OSメモリが適用されている。
【0482】
<<DOSRAM1400>>
図28にDOSRAMの構成例を示す。
図28に示すように、DOSRAM1400は、コントローラ1405、行回路1410、列回路1415、メモリセルおよびセンスアンプアレイ1420(以下、「MC−SAアレイ1420」と呼ぶ。)を有する。
【0483】
行回路1410はデコーダ1411、ワード線ドライバ回路1412、列セレクタ1413、センスアンプドライバ回路1414を有する。列回路1415はグローバルセンスアンプアレイ1416、入出力回路1417を有する。グローバルセンスアンプアレイ1416は複数のグローバルセンスアンプ1447を有する。MC−SAアレイ1420はメモリセルアレイ1422、センスアンプアレイ1423、グローバルビット線GBLL、GBLRを有する。
【0484】
(MC−SAアレイ1420)
MC−SAアレイ1420は、メモリセルアレイ1422をセンスアンプアレイ1423上に積層した積層構造をもつ。グローバルビット線GBLL、GBLRはメモリセルアレイ1422上に積層されている。DOSRAM1400では、ビット線の構造に、ローカルビット線とグローバルビット線とで階層化された階層ビット線構造が採用されている。
【0485】
メモリセルアレイ1422は、N個(Nは2以上の整数)のローカルメモリセルアレイ1425<0>―1425<N−1>を有する。
図29(A)にローカルメモリセルアレイ1425の構成例を示す。ローカルメモリセルアレイ1425は、複数のメモリセル1445、複数のワード線WL、複数のビット線BLL、BLRを有する。
図29(A)の例では、ローカルメモリセルアレイ1425の構造はオープンビット線型であるが、フォールデッドビット線型であってもよい。
【0486】
図29(B)にメモリセル1445の回路構成例を示す。メモリセル1445はトランジスタMW1、容量素子CS1、端子B1、B2を有する。トランジスタMW1は容量素子CS1の充放電を制御する機能をもつ。トランジスタMW1のゲートはワード線に電気的に接続され、第1端子はビット線に電気的に接続され、第2端子は容量素子の第1端子に電気的に接続されている。容量素子CS1の第2端子は端子B2に電気的に接続されている。端子B2には、定電圧(例えば、低電源電圧)が入力される。
【0487】
上記実施の形態に示す半導体装置をメモリセル1445に用いる場合、トランジスタMW1としてトランジスタ200を用い、容量素子CS1として容量素子100を用いることができる。
【0488】
トランジスタMW1はバックゲートを備えており、バックゲートは端子B1に電気的に接続されている。そのため、端子B1の電圧によって、トランジスタMW1の閾値電圧を変更することができる。例えば、端子B1の電圧は固定電圧(例えば、負の定電圧)であってもよいし、DOSRAM1400の動作に応じて、端子B1の電圧を変化させてもよい。
【0489】
トランジスタMW1のバックゲートをトランジスタMW1のゲート、ソース、またはドレインに電気的に接続してもよい。あるいは、トランジスタMW1にバックゲートを設けなくてもよい。
【0490】
センスアンプアレイ1423は、N個のローカルセンスアンプアレイ1426<0>―1426<N−1>を有する。ローカルセンスアンプアレイ1426は、1のスイッチアレイ1444、複数のセンスアンプ1446を有する。センスアンプ1446には、ビット線対が電気的に接続されている。センスアンプ1446は、ビット線対をプリチャージする機能、ビット線対の電圧差を増幅する機能、この電圧差を保持する機能を有する。スイッチアレイ1444は、ビット線対を選択し、選択したビット線対とグローバルビット線対と間を導通状態にする機能を有する。
【0491】
ここで、ビット線対とは、センスアンプによって、同時に比較される2本のビット線のことをいう。グローバルビット線対とは、グローバルセンスアンプによって、同時に比較される2本のグローバルビット線のことをいう。ビット線対を一対のビット線と呼ぶことができ、グローバルビット線対を一対のグローバルビット線と呼ぶことができる。ここでは、ビット線BLLとビット線BLRが1組のビット線対を成す。グローバルビット線GBLLとグローバルビット線GBLRとが1組のグローバルビット線対をなす。以下、ビット線対(BLL,BLR)、グローバルビット線対(BLL,BLR)とも表す。
【0492】
(コントローラ1405)
コントローラ1405は、DOSRAM1400の動作全般を制御する機能を有する。コントローラ1405は、外部からの入力されるコマンド信号を論理演算して、動作モードを決定する機能、決定した動作モードが実行されるように、行回路1410、列回路1415の制御信号を生成する機能、外部から入力されるアドレス信号を保持する機能、内部アドレス信号を生成する機能を有する。
【0493】
(行回路1410)
行回路1410は、MC−SAアレイ1420を駆動する機能を有する。デコーダ1411はアドレス信号をデコードする機能を有する。ワード線ドライバ回路1412は、アクセス対象行のワード線WLを選択する選択信号を生成する。
【0494】
列セレクタ1413、センスアンプドライバ回路1414はセンスアンプアレイ1423を駆動するための回路である。列セレクタ1413は、アクセス対象列のビット線を選択するための選択信号を生成する機能をもつ。列セレクタ1413の選択信号によって、各ローカルセンスアンプアレイ1426のスイッチアレイ1444が制御される。センスアンプドライバ回路1414の制御信号によって、複数のローカルセンスアンプアレイ1426は独立して駆動される。
【0495】
(列回路1415)
列回路1415は、データ信号WDA[31:0]の入力を制御する機能、データ信号RDA[31:0]の出力を制御する機能を有する。データ信号WDA[31:0]は書き込みデータ信号であり、データ信号RDA[31:0]は読み出しデータ信号である。
【0496】
グローバルセンスアンプ1447はグローバルビット線対(GBLL,GBLR)に電気的に接続されている。グローバルセンスアンプ1447はグローバルビット線対(GBLL,GBLR)間の電圧差を増幅する機能、この電圧差を保持する機能を有する。グローバルビット線対(GBLL,GBLR)へのデータの書き込み、および読み出しは、入出力回路1417によって行われる。
【0497】
DOSRAM1400の書き込み動作の概要を説明する。入出力回路1417によって、データがグローバルビット線対に書き込まれる。グローバルビット線対のデータは、グローバルセンスアンプアレイ1416によって保持される。アドレスが指定するローカルセンスアンプアレイ1426のスイッチアレイ1444によって、グローバルビット線対のデータが、対象列のビット線対に書き込まれる。ローカルセンスアンプアレイ1426は、書き込まれたデータを増幅し、保持する。指定されたローカルメモリセルアレイ1425において、行回路1410によって、対象行のワード線WLが選択され、選択行のメモリセル1445にローカルセンスアンプアレイ1426の保持データが書き込まれる。
【0498】
DOSRAM1400の読み出し動作の概要を説明する。アドレス信号によって、ローカルメモリセルアレイ1425の1行が指定される。指定されたローカルメモリセルアレイ1425において、対象行のワード線WLが選択状態となり、メモリセル1445のデータがビット線に書き込まれる。ローカルセンスアンプアレイ1426によって、各列のビット線対の電圧差がデータとして検出され、かつ保持される。スイッチアレイ1444によって、ローカルセンスアンプアレイ1426の保持データの内、アドレスが指定する列のデータが、グローバルビット線対に書き込まれる。グローバルセンスアンプアレイ1416は、グローバルビット線対のデータを検出し、保持する。グローバルセンスアンプアレイ1416の保持データは入出力回路1417に出力される。以上で、読み出し動作が完了する。
【0499】
容量素子CS1の充放電によってデータを書き換えるため、DOSRAM1400には原理的には書き換え回数に制約はなく、かつ、低エネルギーで、データの書き込みおよび読み出しが可能である。また、メモリセル1445の回路構成が単純であるため、大容量化が容易である。
【0500】
トランジスタMW1はOSトランジスタである。OSトランジスタはオフ電流が極めて小さいため、容量素子CS1から電荷がリークすることを抑えることができる。したがって、DOSRAM1400の保持時間はDRAMに比べて非常に長い。したがってリフレッシュの頻度を低減できるため、リフレッシュ動作に要する電力を削減できる。よって、DOSRAM1400は大容量のデータを高頻度で書き換えるメモリ装置、例えば、画像処理に利用されるフレームメモリに好適である。
【0501】
MC−SAアレイ1420が積層構造であることよって、ローカルセンスアンプアレイ1426の長さと同程度の長さにビット線を短くすることができる。ビット線を短くすることで、ビット線容量が小さくなり、メモリセル1445の保持容量を低減することができる。また、ローカルセンスアンプアレイ1426にスイッチアレイ1444を設けることで、長いビット線の本数を減らすことができる。以上の理由から、DOSRAM1400のアクセス時に駆動する負荷が低減され、消費電力を低減することができる。
【0502】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0503】
(実施の形態5)
本実施の形態では、
図30から
図33を用いて、本発明の一態様に係る、OSトランジスタ、および容量素子が適用されている半導体装置の一例として、FPGA(フィールドブログラマブルブゲートアレイ)について説明する。本実施の形態のFPGAは、コンフィギュレーションメモリ、およびレジスタにOSメモリが適用されている。ここでは、このようなFPGAを「OS−FPGA」と呼ぶ。
【0504】
<<OS−FPGA>>
図30(A)にOS−FPGAの構成例を示す。
図30(A)に示すOS−FPGA3110は、マルチコンテキスト構造によるコンテキスト切り替え、細粒度パワーゲーティング、NOFF(ノーマリオフ)コンピューティングが可能である。OS−FPGA3110は、コントローラ3111、ワードドライバ3112、データドライバ3113、プログラマブルエリア3115を有する。
【0505】
プログラマブルエリア3115は、2個の入出力ブロック(IOB)3117、コア3119を有する。IOB3117は複数のプログラマブル入出力回路を有する。コア3119は、複数のロジックアレイブロック(LAB)3120、複数のスイッチアレイブロック(SAB)3130を有する。LAB3120は複数のPLE3121を有する。
図30(B)には、LAB3120を5個のPLE3121で構成する例を示す。
図30(C)に示すようにSAB3130はアレイ状に配列された複数のスイッチブロック(SB)3131を有する。LAB3120は自身の入力端子と、SAB3130を介して4(上下左右)方向のLAB3120に接続される。
【0506】
図31(A)乃至
図31(C)を参照して、SB3131について説明する。
図31(A)に示すSB3131には、data、datab、信号context[1:0]、word[1:0]が入力される。data、databはコンフィギュレーションデータであり、dataとdatabは論理が相補的な関係にある。OS−FPGA3110のコンテキスト数は2であり、信号context[1:0]はコンテキスト選択信号である。信号word[1:0]はワード線選択信号であり、信号word[1:0]が入力される配線がそれぞれワード線である。
【0507】
SB3131は、PRS(プログラマブルルーティングスイッチ)3133[0]、3133[1]を有する。PRS3133[0]、3133[1]は、相補データを格納できるコンフィギュレーションメモリ(CM)を有する。なお、PRS3133[0]とPRS3133[1]とを区別しない場合、PRS3133と呼ぶ。他の要素についても同様である。
【0508】
図31(B)にPRS3133[0]の回路構成例を示す。PRS3133[0]とPRS3133[1]とは同じ回路構成を有する。PRS3133[0]とPRS3133[1]とは入力されるコンテキスト選択信号、ワード線選択信号が異なる。信号context[0]、word[0]はPRS3133[0]に入力され、信号context[1]、word[1]はPRS3133[1]に入力される。例えば、SB3131において、信号context[0]が“H”になることで、PRS3133[0]がアクティブになる。
【0509】
PRS3133[0]は、CM3135、SiトランジスタM31を有する。SiトランジスタM31は、CM3135により制御されるパストランジスタである。CM3135は、メモリ回路3137、3137Bを有する。メモリ回路3137、3137Bは同じ回路構成である。メモリ回路3137は、容量素子C31、OSトランジスタMO31、MO32を有する。メモリ回路3137Bは、容量素子CB31、OSトランジスタMOB31、MOB32を有する。
【0510】
上記実施の形態に示す半導体装置をSAB3130に用いる場合、OSトランジスタMO31、MOB31としてトランジスタ200を用い、容量素子C31、CB31として容量素子100を用いることができる。
【0511】
OSトランジスタMO31、MO32、MOB31、MOB32はバックゲートを有し、これらバックゲートはそれぞれ固定電圧を供給する電源線に電気的に接続されている。
【0512】
SiトランジスタM31のゲートがノードN31であり、OSトランジスタMO32のゲートがノードN32であり、OSトランジスタMOB32のゲートがノードNB32である。ノードN32、NB32はCM3135の電荷保持ノードである。OSトランジスタMO32はノードN31と信号context[0]用の信号線との間の導通状態を制御する。OSトランジスタMOB32はノードN31と低電位電源線VSSとの間の導通状態を制御する。
【0513】
メモリ回路3137、3137Bが保持するデータは相補的な関係にある。したがって、OSトランジスタMO32またはMOB32の何れか一方が導通する。
【0514】
図31(C)を参照して、PRS3133[0]の動作例を説明する。PRS3133[0]にコンフィギュレーションデータが既に書き込まれており、PRS3133[0]のノードN32は“H”であり、ノードNB32は“L”である。
【0515】
信号contex[0]が“L”である間はPRS3133[0]は非アクティブである。この期間に、PRS3133[0]の入力端子が“H”に遷移しても、SiトランジスタM31のゲートは“L”が維持され、PRS3133[0]の出力端子も“L”が維持される。
【0516】
信号contex[0]が“H”である間はPRS3133[0]はアクティブである。信号contex[0]が“H”に遷移すると、CM3135が記憶するコンフィギュレーションデータによって、SiトランジスタM31のゲートは“H”に遷移する。
【0517】
PRS3133[0]がアクティブである期間に、入力端子が“H”に遷移すると、メモリ回路3137のOSトランジスタMO32がソースフォロアであるために、ブースティングによってSiトランジスタM31のゲート電圧は上昇する。その結果、メモリ回路3137のOSトランジスタMO32は駆動能力を失い、SiトランジスタM31のゲートは浮遊状態となる。
【0518】
マルチコンテキスト機能を備えるPRS3133において、CM3135はマルチプレサの機能を併せ持つ。
【0519】
図32にPLE3121の構成例を示す。PLE3121はLUT(ルックアップテーブル)ブロック3123、レジスタブロック3124、セレクタ3125、CM3126を有する。LUTブロック3123は、入力inA−inDに従って内部の16ビットCM対の出力をマルチプレクスする構成である。セレクタ3125は、CM3126が格納するコンフィギュレーションに従って、LUTブロック3123の出力またはレジスタブロック3124の出力を選択する。
【0520】
PLE3121は、パワースイッチ3127を介して電圧VDD用の電源線に電気的に接続されている。パワースイッチ3127のオンオフは、CM3128が格納するコンフィギュレーションデータによって設定される。各PLE3121にパワースイッチ3127を設けることで、細粒度パワーゲーティングが可能である。細粒度パワーゲーティング機能により、コンテキストの切り替え後に使用されないPLE3121をパワーゲーティングすることができるので、待機電力を効果的に低減できる。
【0521】
NOFFコンピューティングを実現するため、レジスタブロック3124は、不揮発性レジスタで構成される。PLE3121内の不揮発性レジスタはOSメモリを備えるフリップフロップ(以下[OS−FF]と呼ぶ)である。
【0522】
レジスタブロック3124は、OS−FF3140[1]3140[2]を有する。信号user_res、load、storeがOS−FF3140[1]、3140[2]に入力される。クロック信号CLK1はOS−FF3140[1]に入力され、クロック信号CLK2はOS−FF3140[2]に入力される。
図33(A)にOS−FF3140の構成例を示す。
【0523】
OS−FF3140は、FF3141、シャドウレジスタ3142を有する。FF3141は、ノードCK、R、D、Q、QBを有する。ノードCKにはクロック信号が入力される。ノードRには信号user_resが入力される。信号user_resはリセット信号である。ノードDはデータ入力ノードであり、ノードQはデータ出力ノードである。ノードQとノードQBとは論理が相補関係にある。
【0524】
シャドウレジスタ3142は、FF3141のバックアップ回路として機能する。シャドウレジスタ3142は、信号storeに従いノードQ、QBのデータをそれぞれバックアップし、また、信号loadに従い、バックアップしたデータをノードQ、QBに書き戻す。
【0525】
シャドウレジスタ3142は、インバータ回路3188、3189、SiトランジスタM37、MB37、メモリ回路3143、3143Bを有する。メモリ回路3143、3143Bは、PRS3133のメモリ回路3137と同じ回路構成である。メモリ回路3143は容量素子C36、OSトランジスタMO35、MO36を有する。メモリ回路3143Bは容量素子CB36、OSトランジスタMOB35、OSトランジスタMOB36を有する。ノードN36、NB36はOSトランジスタMO36、OSトランジスタMOB36のゲートであり、それぞれ電荷保持ノードである。ノードN37、NB37は、SiトランジスタM37、MB37のゲートである。
【0526】
上記実施の形態に示す半導体装置をLAB3120に用いる場合、OSトランジスタMO35、MOB35としてトランジスタ200を用い、容量素子C36、CB36として容量素子100を用いることができる。
【0527】
OSトランジスタMO35、MO36、MOB35、MOB36はバックゲートを有し、これらバックゲートはそれぞれ固定電圧を供給する電源線に電気的に接続されている。
【0528】
図33(B)を参照して、OS−FF3140の動作方法例を説明する。
【0529】
(バックアップ)
“H”の信号storeがOS−FF3140に入力されると、シャドウレジスタ3142はFF3141のデータをバックアップする。ノードN36は、ノードQのデータが書き込まれることで、“L”となり、ノードNB36は、ノードQBのデータが書き込まれることで、“H”となる。しかる後、パワーゲーティングが実行され、パワースイッチ3127をオフにする。FF3141のノードQ、QBのデータは消失するが、電源オフであっても、シャドウレジスタ3142はバックアップしたデータを保持する。
【0530】
(リカバリ)
パワースイッチ3127をオンにし、PLE3121に電源を供給する。しかる後、“H”の信号loadがOS−FF3140に入力されると、シャドウレジスタ3142はバックアップしているデータをFF3141に書き戻す。ノードN36は“L”であるので、ノードN37は“L”が維持され、ノードNB36は“H”であるので、ノードNB37は“H”となる。よって、ノードQは“H”になり、ノードQBは“L”になる。つまり、OS−FF3140はバックアップ動作時の状態に復帰する。
【0531】
細粒度パワーゲーティングと、OS−FF3140のバックアップ/リカバリ動作とを組み合わせることで、OS−FPGA3110の消費電力を効果的に低減できる。
【0532】
メモリ回路において発生しうるエラーとして放射線の入射によるソフトエラーが挙げられる。ソフトエラーは、メモリやパッケージを構成する材料などから放出されるα線や、宇宙から大気に入射した一次宇宙線が大気中に存在する原子の原子核と核反応を起こすことにより発生する二次宇宙線中性子などがトランジスタに照射され、電子正孔対が生成されることにより、メモリに保持されたデータが反転するなどの誤作動が生じる現象である。OSトランジスタを用いたOSメモリはソフトエラー耐性が高い。そのたため、OSメモリを搭載することで、信頼性の高いOS−FPGA3110を提供することができる。
【0533】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0534】
(実施の形態6)
本実施の形態では、
図34から
図36を用いて、上記実施の形態に示す半導体装置を適用した、AIシステムについて説明を行う。
【0535】
図34はAIシステム4041の構成例を示すブロック図である。AIシステム4041は、演算部4010と、制御部4020と、入出力部4030を有する。
【0536】
演算部4010は、アナログ演算回路4011と、DOSRAM4012と、NOSRAM4013と、FPGA4014と、を有する。DOSRAM4012、NOSRAM4013、およびFPGA4014として、上記実施の形態に示す、DOSRAM1400、NOSRAM1600、およびOS−FPGA3110を用いることができる。
【0537】
制御部4020は、CPU(Central Processing Unit)4021と、GPU(Graphics Processing Unit)4022と、PLL(Phase Locked Loop)4023と、SRAM(Static Random Access Memory)4024と、PROM(Programmable Read Only Memory)4025と、メモリコントローラ4026と、電源回路4027と、PMU(Power Management Unit)4028と、を有する。
【0538】
入出力部4030は、外部記憶制御回路4031と、音声コーデック4032と、映像コーデック4033と、汎用入出力モジュール4034と、通信モジュール4035と、を有する。
【0539】
演算部4010は、ニューラルネットワークによる学習または推論を実行することができる。
【0540】
アナログ演算回路4011はA/D(アナログ/デジタル)変換回路、D/A(デジタル/アナログ)変換回路、および積和演算回路を有する。
【0541】
アナログ演算回路4011はOSトランジスタを用いて形成することが好ましい。OSトランジスタを用いたアナログ演算回路4011は、アナログメモリを有し、学習または推論に必要な積和演算を、低消費電力で実行することが可能になる。
【0542】
DOSRAM4012は、OSトランジスタを用いて形成されたDRAMであり、DOSRAM4012は、CPU4021から送られてくるデジタルデータを一時的に格納するメモリである。DOSRAM4012は、OSトランジスタを含むメモリセルと、Siトランジスタを含む読み出し回路部を有する。上記メモリセルと読み出し回路部は、積層された異なる層に設けることができるため、DOSRAM4012は、全体の回路面積を小さくすることができる。
【0543】
ニューラルネットワークを用いた計算は、入力データが1000を超えることがある。上記入力データをSRAMに格納する場合、SRAMは回路面積に制限があり、記憶容量が小さいため、上記入力データを小分けにして格納せざるを得ない。DOSRAM4012は、限られた回路面積でも、メモリセルを高集積に配置することが可能であり、SRAMに比べて記憶容量が大きい。そのため、DOSRAM4012は、上記入力データを効率よく格納することができる。
【0544】
NOSRAM4013はOSトランジスタを用いた不揮発性メモリである。NOSRAM4013は、フラッシュメモリや、ReRAM(Resistive Random Access Memory)、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)などの他の不揮発性メモリと比べて、データを書き込む際の消費電力が小さい。また、フラッシュメモリやReRAMのように、データを書き込む際に素子が劣化することもなく、データの書き込み可能回数に制限が無い。
【0545】
また、NOSRAM4013は、1ビットの2値データの他に、2ビット以上の多値データを記憶することができる。NOSRAM4013は多値データを記憶することで、1ビット当たりのメモリセル面積を小さくすることができる。
【0546】
また、NOSRAM4013は、デジタルデータの他にアナログデータを記憶することができる。そのため、アナログ演算回路4011は、NOSRAM4013をアナログメモリとして用いることもできる。NOSRAM4013は、アナログデータのまま記憶することができるため、D/A変換回路やA/D変換回路が不要である。そのため、NOSRAM4013は周辺回路の面積を小さくすることができる。なお、本明細書においてアナログデータとは、3ビット(8値)以上分解能を有するデータのことを指す。上述した多値データがアナログデータに含まれる場合もある。
【0547】
ニューラルネットワークの計算に用いられるデータやパラメータは、一旦、NOSRAM4013に格納することができる。上記データやパラメータは、CPU4021を介して、AIシステム4041の外部に設けられたメモリに格納してもよいが、内部に設けられたNOSRAM4013の方が、より高速且つ低消費電力に上記データやパラメータを格納することができる。また、NOSRAM4013は、DOSRAM4012よりもビット線を長くすることができるので、記憶容量を大きくすることができる。
【0548】
FPGA4014は、OSトランジスタを用いたFPGAである。AIシステム4041は、FPGA4014を用いることによって、ハードウェアで後述する、ディープニューラルネットワーク(DNN)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)、自己符号化器、深層ボルツマンマシン(DBM)、深層信念ネットワーク(DBN)などの、ニューラルネットワークの接続を構成することができる。上記のニューラルネットワークの接続をハードウェアで構成することで、より高速に実行することができる。
【0549】
FPGA4014はOSトランジスタを有するFPGAである。OS‐FPGAは、SRAMで構成されるFPGAよりもメモリの面積を小さくすることができる。そのため、コンテキスト切り替え機能を追加しても面積増加が少ない。また、OS‐FPGAはブースティングによりデータやパラメータを高速に伝えることができる。
【0550】
AIシステム4041は、アナログ演算回路4011、DOSRAM4012、NOSRAM4013、およびFPGA4014を1つのダイ(チップ)の上に設けることができる。そのため、AIシステム4041は、高速且つ低消費電力に、ニューラルネットワークの計算を実行することができる。また、アナログ演算回路4011、DOSRAM4012、NOSRAM4013、およびFPGA4014は、同じ製造プロセスで作製することができる。そのため、AIシステム4041は、低コストで作製することができる。
【0551】
なお、演算部4010は、DOSRAM4012、NOSRAM4013、およびFPGA4014を、全て有する必要はない。AIシステム4041が解決したい課題に応じて、DOSRAM4012、NOSRAM4013、およびFPGA4014の一または複数を、選択して設ければよい。
【0552】
AIシステム4041は、解決したい課題に応じて、ディープニューラルネットワーク(DNN)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)、自己符号化器、深層ボルツマンマシン(DBM)、深層信念ネットワーク(DBN)などの演算を実行することができる。PROM4025は、これらの演算を実行するためのプログラムを保存することができる。また、これらプログラムの一部または全てを、NOSRAM4013に保存してもよい。
【0553】
ライブラリとして存在する既存のプログラムは、GPUの処理を前提としているものが多い。そのため、AIシステム4041はGPU4022を有することが好ましい。AIシステム4041は、学習と推論で用いられる積和演算のうち、律速となる積和演算を演算部4010で実行し、それ以外の積和演算をGPU4022で実行することができる。そうすることで、学習と推論を高速に実行することができる。
【0554】
電源回路4027は、論理回路用の低電圧電位を生成するだけではなく、アナログ演算のための電位生成も行う。電源回路4027はOSメモリを用いてもよい。電源回路4027は、基準電位をOSメモリに保存することで、消費電力を下げることができる。
【0555】
PMU4028は、AIシステム4041の電力供給を一時的にオフにする機能を有する。
【0556】
CPU4021およびGPU4022は、レジスタとしてOSメモリを有することが好ましい。CPU4021およびGPU4022はOSメモリを有することで、電力供給がオフになっても、OSメモリ中にデータ(論理値)を保持し続けることができる。その結果、AIシステム4041は、電力を節約することができる。
【0557】
PLL4023は、クロックを生成する機能を有する。AIシステム4041は、PLL4023が生成したクロックを基準に動作を行う。PLL4023はOSメモリを有することが好ましい。PLL4023はOSメモリを有することで、クロックの発振周期を制御するアナログ電位を保持することができる。
【0558】
AIシステム4041は、DRAMなどの外部メモリにデータを保存してもよい。そのため、AIシステム4041は、外部のDRAMとのインターフェースとして機能するメモリコントローラ4026を有することが好ましい。また、メモリコントローラ4026は、CPU4021またはGPU4022の近くに配置することが好ましい。そうすることで、データのやり取りを高速に行うことができる。
【0559】
制御部4020に示す回路の一部または全ては、演算部4010と同じダイの上に形成することができる。そうすることで、AIシステム4041は、高速且つ低消費電力に、ニューラルネットワークの計算を実行することができる。
【0560】
ニューラルネットワークの計算に用いられるデータは外部記憶装置(HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)など)に保存される場合が多い。そのため、AIシステム4041は、外部記憶装置とのインターフェースとして機能する外部記憶制御回路4031を有することが好ましい。
【0561】
ニューラルネットワークを用いた学習と推論は、音声や映像を扱うことが多いので、AIシステム4041は音声コーデック4032および映像コーデック4033を有する。音声コーデック4032は、音声データのエンコード(符号化)およびデコード(復号)を行い、映像コーデック4033は、映像データのエンコードおよびデコードを行う。
【0562】
AIシステム4041は、外部センサから得られたデータを用いて学習または推論を行うことができる。そのため、AIシステム4041は汎用入出力モジュール4034を有する。汎用入出力モジュール4034は、例えば、USB(Universal Serial Bus)やI2C(Inter−Integrated Circuit)などを含む。
【0563】
AIシステム4041は、インターネットを経由して得られたデータを用いて学習または推論を行うことができる。そのため、AIシステム4041は、通信モジュール4035を有することが好ましい。
【0564】
アナログ演算回路4011は、多値のフラッシュメモリをアナログメモリとして用いてもよい。しかし、フラッシュメモリは書き換え可能回数に制限がある。また、多値のフラッシュメモリは、エンベディッドで形成する(演算回路とメモリを同じダイの上に形成する)ことが非常に難しい。
【0565】
また、アナログ演算回路4011は、ReRAMをアナログメモリとして用いてもよい。しかし、ReRAMは書き換え可能回数に制限があり、記憶精度の点でも問題がある。さらに、2端子でなる素子でありため、データの書き込みと読み出しを分ける回路設計が複雑になる。
【0566】
また、アナログ演算回路4011は、MRAMをアナログメモリとして用いてもよい。しかし、MRAMは抵抗変化率が低く、記憶精度の点で問題がある。
【0567】
以上を鑑み、アナログ演算回路4011は、OSメモリをアナログメモリとして用いることが好ましい。
【0568】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0570】
<AIシステムの応用例>
本実施の形態では、上記実施の形態に示すAIシステムの応用例について
図35を用いて説明を行う。
【0571】
図35(A)は、
図34で説明したAIシステム4041を並列に配置し、バス線を介してシステム間での信号の送受信を可能にした、AIシステム4041Aである。
【0572】
図35(A)に図示するAIシステム4041Aは、複数のAIシステム4041_1乃至AIシステム4041_n(nは自然数)を有する。AIシステム4041_1乃至AIシステム4041_nは、バス線4098を介して互いに接続されている。
【0573】
また
図35(B)は、
図34で説明したAIシステム4041を
図35(A)と同様に並列に配置し、ネットワークを介してシステム間での信号の送受信を可能にした、AIシステム4041Bである。
【0574】
図35(B)に図示するAIシステム4041Bは、複数のAIシステム4041_1乃至AIシステム4041_nを有する。AIシステム4041_1乃至AIシステム4041_nは、ネットワーク4099を介して互いに接続されている。
【0575】
ネットワーク4099は、AIシステム4041_1乃至AIシステム4041_nのそれぞれに通信モジュールを設け、無線または有線による通信を行う構成とすればよい。通信モジュールは、アンテナを介して通信を行うことができる。例えばWorld Wide Web(WWW)の基盤であるインターネット、イントラネット、エクストラネット、PAN(Personal Area Network)、LAN(Local Area Network)、CAN(Campus Area Network)、MAN(Metropolitan Area Network)、WAN(Wide Area Network)、GAN(Global Area Network)等のコンピュータネットワークに各電子装置を接続させ、通信を行うことができる。無線通信を行う場合、通信プロトコル又は通信技術として、LTE(Long Term Evolution)、GSM(Global System for Mobile Communication:登録商標)、EDGE(Enhanced Data Rates for GSM Evolution)、CDMA2000(Code Division Multiple Access 2000)、W−CDMA(登録商標)などの通信規格、またはWi−Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)等のIEEEにより通信規格化された仕様を用いることができる。
【0576】
図35(A)、(B)の構成とすることで、外部のセンサ等で得られたアナログ信号を別々のAIシステムで処理することができる。例えば、生体情報のように、脳波、脈拍、血圧、体温等といった情報を脳波センサ、脈波センサ、血圧センサ、温度センサといった各種センサで取得し、別々のAIシステムでアナログ信号を処理することができる。別々のAIシステムのそれぞれで信号の処理、または学習を行うことで一つのAIシステムあたりの情報処理量を少なくできる。そのため、より少ない演算量で信号の処理、または学習を行うことができる。その結果、認識精度を高めることができる。それぞれのAIシステムで得られた情報から、複雑に変化する生体情報の変化を瞬時に統合的に把握することができるといったことが期待できる。
【0577】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0578】
(実施の形態8)
本実施の形態は、上記実施の形態に示すAIシステムが組み込まれたICの一例を示す。
【0579】
上記実施の形態に示すAIシステムは、CPU等のSiトランジスタでなるデジタル処理回路と、OSトランジスタを用いたアナログ演算回路、OS−FPGAおよびDOSRAM、NOSRAM等のOSメモリを、1のダイに集積することができる。
【0580】
図36に、AIシステムを組み込んだICの一例を示す。
図36に示すAIシステムIC7000は、リード7001及び回路部7003を有する。回路部7003には、上記実施の形態で示した各種の回路が1のダイに設けられている。回路部7003は、先の実施の形態で例えば、
図21に示すように、積層構造をもち、Siトランジスタ層7031、配線層7032、OSトランジスタ層7033に大別される。OSトランジスタ層7033をSiトランジスタ層7031に積層して設けることができるため、AIシステムIC7000の小型化が容易である。
【0581】
図36では、AIシステムIC7000のパッケージにQFP(Quad Flat Package)を適用しているが、パケージの態様はこれに限定されない。
【0582】
CPU等のデジタル処理回路と、OSトランジスタを用いたアナログ演算回路、OS−FPGAおよびDOSRAM、NOSRAM等のOSメモリは、全て、Siトランジスタ層7031、配線層7032およびOSトランジスタ層7033に形成することができる。すなわち、上記AIシステムを構成する素子は、同一の製造プロセスで形成することが可能である。そのため、本実施の形態に示すICは、構成する素子が増えても製造プロセスを増やす必要がなく、上記AIシステムを低コストで組み込むことができる。
【0583】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0584】
(実施の形態9)
本実施の形態においては、先の実施の形態で例示したトランジスタを有する表示装置の一例について説明を行う。
【0585】
[構成例]
図37(A)は、表示装置の一例を示す上面図である。
図37(A)に示す表示装置700は、第1の基板701上に設けられた画素部702と、第1の基板701に設けられたソースドライバ回路部704及びゲートドライバ回路部706と、画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706を囲むように配置されるシール材712と、第1の基板701に対向するように設けられる第2の基板705と、を有する。なお、第1の基板701と第2の基板705は、シール材712によって貼り合わされている。すなわち、画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706は、第1の基板701とシール材712と第2の基板705によって封止されている。なお、
図37(A)には図示しないが、第1の基板701と第2の基板705の間には表示素子が設けられる。
【0586】
また、表示装置700は、第1の基板701上のシール材712によって囲まれている領域とは異なる領域に、FPC端子部708(FPC:Flexible printed circuit)が設けられる。FPC端子部708は、画素部702、ソースドライバ回路部704、ゲートドライバ回路部706、及びゲートドライバ回路部706と、それぞれ電気的に接続される。また、FPC端子部708には、FPC716が接続され、FPC716によって画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706に各種信号等が供給される。また、画素部702、ソースドライバ回路部704、ゲートドライバ回路部706、及びFPC端子部708には、信号線710が各々接続されている。FPC716により供給される各種信号等は、信号線710を介して、画素部702、ソースドライバ回路部704、ゲートドライバ回路部706、及びFPC端子部708に与えられる。
【0587】
また、表示装置700にゲートドライバ回路部706を複数設けてもよい。また、表示装置700としては、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706を画素部702と同じ第1の基板701に形成している例を示しているが、この構成に限定されない。例えば、ゲートドライバ回路部706のみを第1の基板701に形成してもよい、またはソースドライバ回路部704のみを第1の基板701に形成してもよい。この場合、ソースドライバ回路またはゲートドライバ回路等が形成された基板(例えば、単結晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を、第1の基板701に形成する構成としても良い。なお、別途形成した駆動回路基板の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法などを用いることができる。
【0588】
また、表示装置700が有する画素部702、ソースドライバ回路部704及びゲートドライバ回路部706は、複数のトランジスタを有しており、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタを適用することができる。
【0589】
また、表示装置700は、様々な素子を有することができる。該素子の一例としては、例えば、エレクトロルミネッセンス(EL)素子(有機物及び無機物を含むEL素子、有機EL素子、無機EL素子、LEDなど)、発光トランジスタ素子(電流に応じて発光するトランジスタ)、電子放出素子、液晶素子、電子インク素子、電気泳動素子、エレクトロウェッティング素子、プラズマディスプレイパネル(PDP)、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)ディスプレイ(例えば、グレーティングライトバルブ(GLV)、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、デジタル・マイクロ・シャッター(DMS)素子、インターフェロメトリック・モジュレーション(IMOD)素子など)、圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。
【0590】
また、EL素子を用いた表示装置の一例としては、ELディスプレイなどがある。電子放出素子を用いた表示装置の一例としては、フィールドエミッションディスプレイ(FED)又はSED方式平面型ディスプレイ(SED:Surface−conduction Electron−emitter Display)などがある。液晶素子を用いた表示装置の一例としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプレイ)などがある。電子インク素子又は電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、電子ペーパーなどがある。なお、半透過型液晶ディスプレイや反射型液晶ディスプレイを実現する場合には、画素電極の一部または全部が、反射電極としての機能を有するようにすればよい。例えば、画素電極の一部または全部が、アルミニウム、銀、などを有するようにすればよい。さらにその場合、反射電極の下にSRAMなどの記憶回路を設けることも可能である。これにより、さらに消費電力を低減することができる。
【0591】
なお、表示装置700における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、Rの画素とGの画素とBの画素とW(白)の画素の四画素から構成されてもよい。または、ペンタイル配列のように、RGBのうちの2色分で一つの色要素を構成し、色要素によって、異なる2色を選択して構成してもよい。またはRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加してもよい。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、開示する発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用することもできる。
【0592】
また、バックライト(有機EL素子、無機EL素子、LED、蛍光灯など)に白色発光(W)を用いて表示装置をカラー表示させるために、着色層(カラーフィルタともいう。)を用いてもよい。着色層は、例えば、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)、イエロー(Y)などを適宜組み合わせて用いることができる。着色層を用いることで、着色層を用いない場合と比べて色の再現性を高くすることができる。このとき、着色層を有する領域と、着色層を有さない領域と、を配置することによって、着色層を有さない領域における白色光を直接表示に利用しても構わない。一部に着色層を有さない領域を配置することで、明るい表示の際に、着色層による輝度の低下を少なくでき、消費電力を2割から3割程度低減できる場合がある。ただし、有機EL素子や無機EL素子などの自発光素子を用いてフルカラー表示する場合、R、G、B、Y、Wを、それぞれの発光色を有する素子から発光させても構わない。自発光素子を用いることで、着色層を用いた場合よりも、さらに消費電力を低減できる場合がある。
【0593】
また、カラー化方式としては、上述の白色発光からの発光の一部をカラーフィルタを通すことで赤色、緑色、青色に変換する方式(カラーフィルタ方式)の他、赤色、緑色、青色の発光をそれぞれ用いる方式(3色方式)、または青色発光からの発光の一部を赤色や緑色に変換する方式(色変換方式、量子ドット方式)を適用してもよい。
【0594】
図37(B)に示す表示装置700Aは、大型の画面を有する電子機器に好適に用いることのできる表示装置である。例えばテレビジョン装置、モニタ装置、デジタルサイネージなどに好適に用いることができる。
【0595】
表示装置700Aは、複数のソースドライバIC721と、一対のゲートドライバ回路722を有する。
【0596】
複数のソースドライバIC721は、それぞれFPC723に取り付けられている。また、複数のFPC723は、一方の端子が基板701に、他方の端子がプリント基板724にそれぞれ接続されている。FPC723を折り曲げることで、プリント基板724を画素部702の裏側に配置して、電気機器に実装することができる。
【0597】
一方、ゲートドライバ回路722は、基板701上に形成されている。これにより、狭額縁の電子機器を実現できる。
【0598】
このような構成とすることで、大型で且つ高解像度な表示装置を実現できる。例えば画面サイズが対角30インチ以上、40インチ以上、50インチ以上、または60インチ以上の表示装置に適用することができる。また、解像度がフルハイビジョン、4K2K、または8K4Kなどといった極めて高解像度の表示装置を実現することができる。
【0599】
[断面構成例]
以下では、表示素子として液晶素子及びEL素子を用いる構成について、
図38および
図39を用いて説明する。なお、
図38は、
図37に示す一点鎖線Q−Rにおける断面図であり、表示素子として液晶素子を用いた構成である。また、
図39は、
図37に示す一点鎖線Q−Rにおける断面図であり、表示素子としてEL素子を用いた構成である。
【0600】
まず、
図38および
図39に示す共通部分について最初に説明し、次に異なる部分について以下説明する。
【0601】
〔表示装置の共通部分に関する説明〕
図38および
図39に示す表示装置700は、引き回し配線部711と、画素部702と、ソースドライバ回路部704と、FPC端子部708と、を有する。また、引き回し配線部711は、信号線710を有する。また、画素部702は、トランジスタ750及び容量素子790を有する。また、ソースドライバ回路部704は、トランジスタ752を有する。
【0602】
トランジスタ750及びトランジスタ752は、実施の形態1で例示したトランジスタ100Aを適用することができる。
【0603】
本実施の形態で用いるトランジスタは、高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した酸化物半導体膜を有する。該トランジスタは、オフ電流を低くすることができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
【0604】
また、本実施の形態で用いるトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。例えば、このような高速駆動が可能なトランジスタを表示装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用するドライバトランジスタを同一基板上に形成することができる。すなわち、別途駆動回路として、シリコンウェハ等により形成された半導体装置を用いる必要がないため、半導体装置の部品点数を削減することができる。また、画素部においても、高速駆動が可能なトランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
【0605】
容量素子790は、トランジスタ750が有する第1のゲート電極と機能する導電膜と同一の導電膜を加工する工程を経て形成される下部電極と、トランジスタ750が有するソース電極またはドレイン電極として機能する導電膜と同一の導電膜を加工する工程を経て形成される上部電極と、を有する。また、下部電極と上部電極との間には、トランジスタ750が有する第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜と同一の絶縁膜を形成する工程を経て形成される絶縁膜、及びトランジスタ750上の保護絶縁膜として機能する絶縁膜と同一の絶縁膜を形成する工程を経て形成される絶縁膜が設けられる。すなわち、容量素子790は、一対の電極間に誘電体膜として機能する絶縁膜が挟持された積層型の構造である。
【0606】
また、
図38および
図39において、トランジスタ750、トランジスタ752、及び容量素子790上に平坦化絶縁膜770が設けられている。
【0607】
また、
図38および
図39においては、画素部702が有するトランジスタ750と、ソースドライバ回路部704が有するトランジスタ752と、を同じ構造のトランジスタを用いる構成について例示したが、これに限定されない。例えば、画素部702と、ソースドライバ回路部704とは、異なるトランジスタを用いてもよい。具体的には、画素部702にトップゲート型のトランジスタを用い、ソースドライバ回路部704にボトムゲート型のトランジスタを用いる構成、あるいは画素部702にボトムゲート型のトランジスタを用い、ソースドライバ回路部704にトップゲート型のトランジスタを用いる構成などが挙げられる。なお、上記のソースドライバ回路部704を、ゲートドライバ回路部と読み替えてもよい。
【0608】
また、信号線710は、トランジスタ750、752のソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜と同じ工程を経て形成される。信号線710として、例えば、銅元素を含む材料を用いた場合、配線抵抗に起因する信号遅延等が少なく、大画面での表示が可能となる。
【0609】
また、FPC端子部708は、接続電極760、異方性導電膜780、及びFPC716を有する。なお、接続電極760は、トランジスタ750、752のソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜と同じ工程を経て形成される。また、接続電極760は、FPC716が有する端子と異方性導電膜780を介して、電気的に接続される。
【0610】
また、第1の基板701及び第2の基板705としては、例えばガラス基板を用いることができる。また、第1の基板701及び第2の基板705として、可撓性を有する基板を用いてもよい。該可撓性を有する基板としては、例えばプラスチック基板等が挙げられる。
【0611】
また、第1の基板701と第2の基板705の間には、構造体778が設けられる。構造体778は柱状のスペーサであり、第1の基板701と第2の基板705の間の距離(セルギャップ)を制御するために設けられる。なお、構造体778として、球状のスペーサを用いていてもよい。
【0612】
また、第2の基板705側には、ブラックマトリクスとして機能する遮光膜738と、カラーフィルタとして機能する着色膜736と、遮光膜738及び着色膜736に接する絶縁膜734が設けられる。
【0613】
〔液晶素子を用いる表示装置の構成例〕
図38に示す表示装置700は、液晶素子775を有する。液晶素子775は、導電膜772、導電膜774、及び液晶層776を有する。導電膜774は、第2の基板705側に設けられ、対向電極としての機能を有する。
【0614】
また、
図38に示す表示装置700は、液晶素子の駆動方式として横電界方式(例えば、FFSモード)を用いる構成の一例である。
図38に示す構成の場合、導電膜772上に絶縁膜773が設けられ、絶縁膜773上に導電膜774が設けられる。この場合、導電膜774は、共通電極(コモン電極ともいう)としての機能を有し、絶縁膜773を介して、導電膜772と導電膜774との間に生じる電界によって、液晶層776の配向状態を制御することができる。
【0615】
また、
図38において図示しないが、導電膜772または導電膜774のいずれか一方または双方に、液晶層776と接する側に、それぞれ配向膜を設ける構成としてもよい。また、
図38において図示しないが、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設けてもよい。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0616】
また、導電膜772は、トランジスタ750が有するソース電極またはドレイン電極として機能する導電膜と電気的に接続される。導電膜772は、平坦化絶縁膜770上に形成され画素電極、すなわち表示素子の一方の電極として機能する。
【0617】
導電膜772としては、可視光において透光性のある導電膜、または可視光において反射性のある導電膜を用いることができる。可視光において透光性のある導電膜としては、例えば、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)の中から選ばれた一種を含む材料を用いるとよい。可視光において反射性のある導電膜としては、例えば、アルミニウム、または銀を含む材料を用いるとよい。
【0618】
導電膜772に可視光において反射性のある導電膜を用いる場合、表示装置700は、反射型の液晶表示装置となる。また、導電膜772に可視光において透光性のある導電膜を用いる場合、表示装置700は、透過型の液晶表示装置となる。反射型の液晶表示装置の場合、視認側に偏光板を設ける。一方、透過型の液晶表示装置の場合、液晶素子を挟む一対の偏光板を設ける。
【0619】
表示素子として液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、高分子ネットワーク型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0620】
また、横電界方式を採用する場合、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するために数重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が短く、光学的等方性であるため配向処理が不要である。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。また、ブルー相を示す液晶材料は、視野角依存性が小さい。
【0621】
また、表示素子として液晶素子を用いる場合、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro−cell)モード、OCB(Optical Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード、ゲストホストモードなどを用いることができる。
【0622】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、例えば、MVA(Multi−Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASVモードなどを用いることができる。
【0623】
〔発光素子を用いる表示装置〕
図39示す表示装置700は、発光素子782を有する。発光素子782は、導電膜772、EL層786、及び導電膜788を有する。
図39に示す表示装置700は、画素毎に設けられる発光素子782が有するEL層786が発光することによって、画像を表示することができる。なお、EL層786は、有機化合物、または量子ドットなどの無機化合物を有する。
【0624】
有機化合物に用いることのできる材料としては、蛍光性材料または燐光性材料などが挙げられる。また、量子ドットに用いることのできる材料としては、コロイド状量子ドット材料、合金型量子ドット材料、コア・シェル型量子ドット材料、コア型量子ドット材料、などが挙げられる。また、12族と16族、13族と15族、または14族と16族の元素グループを含む材料を用いてもよい。または、カドミウム(Cd)、セレン(Se)、亜鉛(Zn)、硫黄(S)、リン(P)、インジウム(In)、テルル(Te)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)、ヒ素(As)、アルミニウム(Al)、等の元素を有する量子ドット材料を用いてもよい。
【0625】
図39に示す表示装置700には、平坦化絶縁膜770及び導電膜772上に絶縁膜730が設けられる。絶縁膜730は、導電膜772の一部を覆う。なお、発光素子782はトップエミッション構造である。したがって、導電膜788は透光性を有し、EL層786が発する光を透過する。なお、本実施の形態においては、トップエミッション構造について、例示するが、これに限定されない。例えば、導電膜772側に光を射出するボトムエミッション構造や、導電膜772及び導電膜788の双方に光を射出するデュアルエミッション構造にも適用することができる。
【0626】
また、発光素子782と重なる位置に、着色膜736が設けられ、絶縁膜730と重なる位置、引き回し配線部711、及びソースドライバ回路部704に遮光膜738が設けられている。また、着色膜736及び遮光膜738は、絶縁膜734で覆われている。また、発光素子782と絶縁膜734の間は封止膜732で充填されている。なお、
図39に示す表示装置700においては、着色膜736を設ける構成について例示したが、これに限定されない。例えば、EL層786を画素毎に島状形成する、すなわち塗り分けにより形成する場合においては、着色膜736を設けない構成としてもよい。
【0627】
本実施の形態で例示した構成例、及びそれらに対応する図面等は、少なくともその一部を他の構成例、または図面等と適宜組み合わせて実施することができる。
【0628】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0629】
(実施の形態10)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を有する表示装置について、
図40を用いて説明を行う。
【0630】
図40(A)に示す表示装置は、表示素子の画素を有する領域(以下、画素部502という)と、画素部502の外側に配置され、画素を駆動するための回路を有する回路部(以下、駆動回路部504という)と、素子の保護機能を有する回路(以下、保護回路506という)と、端子部507と、を有する。なお、保護回路506は、設けない構成としてもよい。
【0631】
駆動回路部504の一部、または全部は、画素部502と同一基板上に形成されていることが望ましい。これにより、部品数や端子数を減らすことが出来る。駆動回路部504の一部、または全部が、画素部502と同一基板上に形成されていない場合には、駆動回路部504の一部、または全部は、COGやTAB(Tape Automated Bonding)によって、実装することができる。
【0632】
画素部502は、X行(Xは2以上の自然数)Y列(Yは2以上の自然数)に配置された複数の表示素子を駆動するための回路(以下、画素回路501という)を有し、駆動回路部504は、画素を選択する信号(走査信号)を出力する回路(以下、ゲートドライバ504aという)、画素の表示素子を駆動するための信号(データ信号)を供給するための回路(以下、ソースドライバ504b)などの駆動回路を有する。
【0633】
ゲートドライバ504aは、シフトレジスタ等を有する。ゲートドライバ504aは、端子部507を介して、シフトレジスタを駆動するための信号が入力され、信号を出力する。例えば、ゲートドライバ504aは、スタートパルス信号、クロック信号等が入力され、パルス信号を出力する。ゲートドライバ504aは、走査信号が与えられる配線(以下、走査線GL_1乃至GL_Xという)の電位を制御する機能を有する。なお、ゲートドライバ504aを複数設け、複数のゲートドライバ504aにより、走査線GL_1乃至GL_Xを分割して制御してもよい。または、ゲートドライバ504aは、初期化信号を供給することができる機能を有する。ただし、これに限定されず、ゲートドライバ504aは、別の信号を供給することも可能である。
【0634】
ソースドライバ504bは、シフトレジスタ等を有する。ソースドライバ504bは、端子部507を介して、シフトレジスタを駆動するための信号の他、データ信号の元となる信号(画像信号)が入力される。ソースドライバ504bは、画像信号を元に画素回路501に書き込むデータ信号を生成する機能を有する。また、ソースドライバ504bは、スタートパルス、クロック信号等が入力されて得られるパルス信号に従って、データ信号の出力を制御する機能を有する。また、ソースドライバ504bは、データ信号が与えられる配線(以下、データ線DL_1乃至DL_Yという)の電位を制御する機能を有する。または、ソースドライバ504bは、初期化信号を供給することができる機能を有する。ただし、これに限定されず、ソースドライバ504bは、別の信号を供給することも可能である。
【0635】
ソースドライバ504bは、例えば複数のアナログスイッチなどを用いて構成される。ソースドライバ504bは、複数のアナログスイッチを順次オン状態にすることにより、画像信号を時分割した信号をデータ信号として出力できる。また、シフトレジスタなどを用いてソースドライバ504bを構成してもよい。
【0636】
複数の画素回路501のそれぞれは、走査信号が与えられる複数の走査線GLの一つを介してパルス信号が入力され、データ信号が与えられる複数のデータ線DLの一つを介してデータ信号が入力される。また、複数の画素回路501のそれぞれは、ゲートドライバ504aによりデータ信号のデータの書き込み及び保持が制御される。例えば、m行n列目の画素回路501は、走査線GL_m(mはX以下の自然数)を介してゲートドライバ504aからパルス信号が入力され、走査線GL_mの電位に応じてデータ線DL_n(nはY以下の自然数)を介してソースドライバ504bからデータ信号が入力される。
【0637】
図40(A)に示す保護回路506は、例えば、ゲートドライバ504aと画素回路501の間の配線である走査線GLに接続される。または、保護回路506は、ソースドライバ504bと画素回路501の間の配線であるデータ線DLに接続される。または、保護回路506は、ゲートドライバ504aと端子部507との間の配線に接続することができる。または、保護回路506は、ソースドライバ504bと端子部507との間の配線に接続することができる。なお、端子部507は、外部の回路から表示装置に電源及び制御信号、及び画像信号を入力するための端子が設けられた部分をいう。
【0638】
保護回路506は、自身が接続する配線に一定の範囲外の電位が与えられたときに、該配線と別の配線とを導通状態にする回路である。
【0639】
図40(A)に示すように、画素部502と駆動回路部504にそれぞれ保護回路506を設けることにより、ESD(Electro Static Discharge:静電気放電)などにより発生する過電流に対する表示装置の耐性を高めることができる。ただし、保護回路506の構成はこれに限定されず、例えば、ゲートドライバ504aに保護回路506を接続した構成、またはソースドライバ504bに保護回路506を接続した構成とすることもできる。あるいは、端子部507に保護回路506を接続した構成とすることもできる。
【0640】
また、
図40(A)においては、ゲートドライバ504aとソースドライバ504bによって駆動回路部504を形成している例を示しているが、この構成に限定されない。例えば、ゲートドライバ504aのみを形成し、別途用意されたソースドライバ回路が形成された基板(例えば、単結晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を実装する構成としてもよい。
【0641】
図40(B)に示す画素回路501は、液晶素子570と、トランジスタ550と、容量素子560と、を有する。トランジスタ550に先の実施の形態に示すトランジスタを適用することができる。
【0642】
液晶素子570の一対の電極の一方の電位は、画素回路501の仕様に応じて適宜設定される。液晶素子570は、書き込まれるデータにより配向状態が設定される。なお、複数の画素回路501のそれぞれが有する液晶素子570の一対の電極の一方に共通の電位(コモン電位)を与えてもよい。また、各行の画素回路501の液晶素子570の一対の電極の一方に異なる電位を与えてもよい。
【0643】
例えば、液晶素子570を備える表示装置の駆動方法としては、TNモード、STNモード、VAモード、ASM(Axially Symmetric Aligned Micro−cell)モード、OCB(Optically Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モード、MVAモード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、IPSモード、FFSモード、又はTBA(Transverse Bend Alignment)モードなどを用いてもよい。また、表示装置の駆動方法としては、上述した駆動方法の他、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)モード、PNLC(Polymer Network Liquid Crystal)モード、ゲストホストモードなどがある。ただし、これに限定されず、液晶素子及びその駆動方式として様々なものを用いることができる。
【0644】
m行n列目の画素回路501において、トランジスタ550のソース電極またはドレイン電極の一方は、データ線DL_nに電気的に接続され、他方は液晶素子570の一対の電極の他方に電気的に接続される。また、トランジスタ550のゲート電極は、走査線GL_mに電気的に接続される。トランジスタ550は、データ信号のデータの書き込みを制御する機能を有する。
【0645】
容量素子560の一対の電極の一方は、電位が供給される配線(以下、電位供給線VL)に電気的に接続され、他方は、液晶素子570の一対の電極の他方に電気的に接続される。なお、電位供給線VLの電位の値は、画素回路501の仕様に応じて適宜設定される。容量素子560は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0646】
例えば、
図40(B)の画素回路501を有する表示装置では、例えば、
図40(A)に示すゲートドライバ504aにより各行の画素回路501を順次選択し、トランジスタ550をオン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
【0647】
データが書き込まれた画素回路501は、トランジスタ550がオフ状態になることで保持状態になる。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0648】
また、
図40(A)に示す複数の画素回路501は、例えば、
図40(C)に示す構成とすることができる。
【0649】
また、
図40(C)に示す画素回路501は、トランジスタ552、554と、容量素子562と、発光素子572と、を有する。トランジスタ552及びトランジスタ554のいずれか一方または双方に先の実施の形態に示すトランジスタを適用することができる。
【0650】
トランジスタ552のソース電極及びドレイン電極の一方は、データ信号が与えられる配線(以下、信号線DL_nという)に電気的に接続される。さらに、トランジスタ552のゲート電極は、ゲート信号が与えられる配線(以下、走査線GL_mという)に電気的に接続される。
【0651】
トランジスタ552は、データ信号のデータの書き込みを制御する機能を有する。
【0652】
容量素子562の一対の電極の一方は、電位が与えられる配線(以下、電位供給線VL_aという)に電気的に接続され、他方は、トランジスタ552のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
【0653】
容量素子562は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0654】
トランジスタ554のソース電極及びドレイン電極の一方は、電位供給線VL_aに電気的に接続される。さらに、トランジスタ554のゲート電極は、トランジスタ552のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
【0655】
発光素子572のアノード及びカソードの一方は、電位供給線VL_bに電気的に接続され、他方は、トランジスタ554のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
【0656】
発光素子572としては、例えば有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子ともいう)などを用いることができる。ただし、発光素子572としては、これに限定されず、無機材料を含む無機EL素子を用いても良い。
【0657】
なお、電位供給線VL_a及び電位供給線VL_bの一方には、高電源電位VDDが与えられ、他方には、低電源電位VSSが与えられる。
【0658】
図40(C)の画素回路501を有する表示装置では、例えば、
図40(A)に示すゲートドライバ504aにより各行の画素回路501を順次選択し、トランジスタ552をオン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
【0659】
データが書き込まれた画素回路501は、トランジスタ552がオフ状態になることで保持状態になる。さらに、書き込まれたデータ信号の電位に応じてトランジスタ554のソース電極とドレイン電極の間に流れる電流量が制御され、発光素子572は、流れる電流量に応じた輝度で発光する。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0660】
本実施の形態で例示した構成例、及びそれらに対応する図面等は、少なくともその一部を他の構成例、または図面等と適宜組み合わせて実施することができる。
【0661】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0662】
(実施の形態11)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を有する表示モジュールについて、
図41を用いて説明を行う。
【0663】
[1.表示モジュール]
図41に示す表示モジュール8000は、上部カバー8001と下部カバー8002との間に、FPC8003に接続されたタッチパネル8004、FPC8005に接続された表示パネル8006、バックライト8007、フレーム8009、プリント基板8010、バッテリ8011を有する。
【0664】
本発明の一態様の半導体装置は、例えば、表示パネル8006に用いることができる。
【0665】
上部カバー8001及び下部カバー8002は、タッチパネル8004及び表示パネル8006のサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
【0666】
タッチパネル8004は、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチパネルを表示パネル8006に重畳して用いることができる。また、表示パネル8006の対向基板(封止基板)に、タッチパネル機能を持たせるようにすることも可能である。また、表示パネル8006の各画素内に光センサを設け、光学式のタッチパネルとすることも可能である。
【0667】
バックライト8007は、光源8008を有する。なお、
図41において、バックライト8007上に光源8008を配置する構成について例示したが、これに限定さない。例えば、バックライト8007の端部に光源8008を配置し、さらに光拡散板を用いる構成としてもよい。なお、有機EL素子等の自発光型の発光素子を用いる場合、または反射型パネル等の場合においては、バックライト8007を設けない構成としてもよい。
【0668】
フレーム8009は、表示パネル8006の保護機能の他、プリント基板8010の動作により発生する電磁波を遮断するための電磁シールドとしての機能を有する。またフレーム8009は、放熱板としての機能を有していてもよい。
【0669】
プリント基板8010は、電源回路、ビデオ信号及びクロック信号を出力するための信号処理回路を有する。電源回路に電力を供給する電源としては、外部の商用電源であっても良いし、別途設けたバッテリ8011による電源であってもよい。バッテリ8011は、商用電源を用いる場合には、省略可能である。
【0670】
また、表示モジュール8000は、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの部材を追加して設けてもよい。
【0671】
本実施の形態で例示した構成例、及びそれらに対応する図面等は、少なくともその一部を他の構成例、または図面等と適宜組み合わせて実施することができる。
【0672】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0673】
(実施の形態12)
本実施の形態では、半導体装置の一形態を、
図42、および
図43を用いて説明する。
【0674】
<半導体ウエハ、チップ>
図42(A)は、ダイシング処理が行なわれる前の基板811の上面図を示している。基板811としては、例えば、半導体基板(「半導体ウエハ」ともいう。)を用いることができる。基板811上には、複数の回路領域812が設けられている。回路領域812には、本発明の一態様に係る半導体装置などを設けることができる。
【0675】
複数の回路領域812は、それぞれが分離領域813に囲まれている。分離領域813と重なる位置に分離線(「ダイシングライン」ともいう。)814が設定される。分離線814に沿って基板811を切断することで、回路領域812を含むチップ815を基板811から切り出すことができる。
図42(B)にチップ815の拡大図を示す。
【0676】
また、分離領域813に導電層、半導体層などを設けてもよい。分離領域813に導電層、半導体層などを設けることで、ダイシング工程時に生じうるESDを緩和し、ダイシング工程に起因する歩留まりの低下を防ぐことができる。また、一般にダイシング工程は、基板の冷却、削りくずの除去、帯電防止などを目的として、炭酸ガスなどを溶解させて比抵抗を下げた純水を切削部に供給しながら行なう。分離領域813に導電層、半導体層などを設けることで、当該純水の使用量を削減することができる。よって、半導体装置の生産コストを低減することができる。また、半導体装置の生産性を高めることができる。
【0677】
<電子部品>
チップ815を用いた電子部品の一例について、
図43(A)および
図43(B)を用いて説明する。なお、電子部品は、半導体パッケージ、またはIC用パッケージともいう。電子部品は、端子取り出し方向、端子の形状などに応じて、複数の規格、名称などが存在する。
【0678】
電子部品は、組み立て工程(後工程)において、上記実施の形態に示した半導体装置と該半導体装置以外の部品が組み合わされて完成する。
【0679】
図43(A)に示すフローチャートを用いて、後工程について説明する。前工程において基板811に本発明の一態様に係る半導体装置などを形成した後、基板811の裏面(半導体装置などが形成されていない面)を研削する「裏面研削工程」を行なう(ステップS821)。研削により基板811を薄くすることで、電子部品の小型化を図ることができる。
【0680】
次に、基板811を複数のチップ815に分離する「ダイシング工程」を行う(ステップS822)。そして、分離したチップ815を個々のリードフレーム上に接合する「ダイボンディング工程」を行う(ステップS823)。ダイボンディング工程におけるチップ815とリードフレームとの接合は、樹脂による接合、またはテープによる接合など、適宜製品に応じて適した方法を選択する。なお、リードフレームに代えてインターポーザ基板上にチップ815を接合してもよい。
【0681】
次いで、リードフレームのリードとチップ815上の電極とを、金属の細線(ワイヤー)で電気的に接続する「ワイヤーボンディング工程」を行う(ステップS824)。金属の細線には、銀線、金線などを用いることができる。また、ワイヤーボンディングは、例えば、ボールボンディング、またはウェッジボンディングを用いることができる。
【0682】
ワイヤーボンディングされたチップ815は、エポキシ樹脂などで封止される「封止工程(モールド工程)」が施される(ステップS825)。封止工程を行うことで電子部品の内部が樹脂で充填され、チップ815とリードを接続するワイヤーを機械的な外力から保護することができ、また水分、埃などによる特性の劣化(信頼性の低下)を低減することができる。
【0683】
次いで、リードフレームのリードをめっき処理する「リードめっき工程」を行なう(ステップS726)。めっき処理によりリードの錆を防止し、後にプリント基板に実装する際のはんだ付けをより確実に行うことができる。次いで、リードを切断および成形加工する「成形工程」を行なう(ステップS827)。
【0684】
次いで、パッケージの表面に印字処理(マーキング)を施す「マーキング工程」を行なう(ステップS828)。そして外観形状の良否、動作不良の有無などを調べる「検査工程」(ステップS829)を経て、電子部品が完成する。
【0685】
また、完成した電子部品の斜視模式図を
図43(B)に示す。
図43(B)では、電子部品の一例として、QFP(Quad Flat Package)の斜視模式図を示している。
図43(B)に示す電子部品850は、リード855およびチップ815を有する。電子部品850は、チップ815を複数有していてもよい。
【0686】
図43(B)に示す電子部品850は、例えばプリント基板852に実装される。このような電子部品850が複数組み合わされて、それぞれがプリント基板852上で電気的に接続されることで電子部品が実装された基板(実装基板854)が完成する。完成した実装基板854は、電子機器などに用いられる。
【0687】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0689】
<電子機器>
本発明の一態様に係る半導体装置は、様々な電子機器に用いることができる。
図44に、本発明の一態様に係る半導体装置を用いた電子機器の具体例を示す。
【0690】
図44(A)は、自動車の一例を示す外観図である。自動車2980は、車体2981、車輪2982、ダッシュボード2983、およびライト2984等を有する。また、自動車2980は、アンテナ、バッテリなどを備える。
【0691】
図44(B)に示す情報端末2910は、筐体2911に、表示部2912、マイク2917、スピーカ部2914、カメラ2913、外部接続部2916、および操作スイッチ2915等を有する。表示部2912には、可撓性基板が用いられた表示パネルおよびタッチスクリーンを備える。また、情報端末2910は、筐体2911の内側にアンテナ、バッテリなどを備える。情報端末2910は、例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレット型情報端末、タブレット型パーソナルコンピュータ、電子書籍端末等として用いることができる。
【0692】
図44(C)に示すノート型パーソナルコンピュータ2920は、筐体2921、表示部2922、キーボード2923、およびポインティングデバイス2924等を有する。また、ノート型パーソナルコンピュータ2920は、筐体2921の内側にアンテナ、バッテリなどを備える。
【0693】
図44(D)に示すビデオカメラ2940は、筐体2941、筐体2942、表示部2943、操作スイッチ2944、レンズ2945、および接続部2946等を有する。操作スイッチ2944およびレンズ2945は筐体2941に設けられており、表示部2943は筐体2942に設けられている。また、ビデオカメラ2940は、筐体2941の内側にアンテナ、バッテリなどを備える。そして、筐体2941と筐体2942は、接続部2946により接続されており、筐体2941と筐体2942の間の角度は、接続部2946により変えることが可能な構造となっている。筐体2941に対する筐体2942の角度によって、表示部2943に表示される画像の向きの変更や、画像の表示/非表示の切り換えを行うことができる。
【0694】
図44(E)にバングル型の情報端末の一例を示す。情報端末2950は、筐体2951、および表示部2952等を有する。また、情報端末2950、筐体2951の内側にアンテナ、バッテリなどを備える。表示部2952は、曲面を有する筐体2951に支持されている。表示部2952には、可撓性基板を用いた表示パネルを備えているため、フレキシブルかつ軽くて使い勝手の良い情報端末2950を提供することができる。
【0695】
図44(F)に腕時計型の情報端末の一例を示す。情報端末2960は、筐体2961、表示部2962、バンド2963、バックル2964、操作スイッチ2965、入出力端子2966などを備える。また、情報端末2960、筐体2961の内側にアンテナ、バッテリなどを備える。情報端末2960は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
【0696】
表示部2962の表示面は湾曲しており、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示部2962はタッチセンサを備え、指やスタイラスなどで画面に触れることで操作することができる。例えば、表示部2962に表示されたアイコン2967に触れることで、アプリケーションを起動することができる。操作スイッチ2965は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、情報端末2960に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作スイッチ2965の機能を設定することもできる。
【0697】
また、情報端末2960は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。また、情報端末2960は入出力端子2966を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子2966を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子2966を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0698】
例えば、本発明の一態様の半導体装置を用いた記憶装置は、上述した電子機器の制御情報や、制御プログラムなどを長期間保持することができる。本発明の一態様に係る半導体装置を用いることで、信頼性の高い電子機器を実現することができる。
【0699】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。