特許第6949580号(P6949580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6949580
(24)【登録日】2021年9月27日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】油圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/07 20060101AFI20210930BHJP
   F16K 3/24 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   F16K11/07 C
   F16K11/07 F
   F16K3/24 D
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-124867(P2017-124867)
(22)【出願日】2017年6月27日
(65)【公開番号】特開2019-7579(P2019-7579A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】山中 健太郎
【審査官】 西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−002236(JP,A)
【文献】 特開平09−004739(JP,A)
【文献】 特開平03−249485(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0260302(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/00 − 11/24
F16K 3/00 − 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に沿って延在する弁孔と、前記弁孔に向けて作動油供給る入力ポートと、前記弁孔から前記作動油が排出される出力ポートと、前記入力ポートと前記出力ポートとの連通遮断時に前記弁孔を介して前記出力ポートと連通し且つ前記入力ポートと前記出力ポートの連通時に前記出力ポートとの連通が遮断されるドレインポートとが形成されたスリーブと、
前記スリーブの軸線方向一端側に設けられて前記作動油の流量を制御する電磁弁と、
前記弁孔の内壁に摺接するように設けられて前記電磁弁の作用下に前記軸線方向に沿って変位し、前記出力ポートの連通先を前記入力ポート又は前記ドレインポートのいずれかに切り替える第1ランド部、第2ランド部が設けられ、且つ前記軸線方向で前記第1ランド部と前記第2ランド部との間に挟まれる環状凹部が形成されたスプールと、
前記弁孔内に配設され、前記スプールを前記電磁弁側に弾発付勢するリターンスプリングと、
を備え、
前記弁孔内に、前記スプールの前記軸線方向他端側が着座するストッパ部が設けられ、
前記電磁弁の作用下に前記スプールが前記リターンスプリングを圧縮し且つ前記ストッパ部に着座した位置で前記入力ポートと前記出力ポートが連通するとき、前記第1ランド部及び前記第2ランド部前記入力ポート及び前記出力ポートに重ならない位置となって前記入力ポート、前記出力ポート及び前記ドレインポートが前記弁孔に向けて全開にされるとともに、前記第2ランド部により前記出力ポートと前記ドレインポートとの連通が遮断され、
前記リターンスプリングが伸張し且つ前記スプールが前記ストッパ部から離間した位置で前記入力ポートと前記出力ポートの連通が遮断されるとき、前記入力ポートが全閉となるように前記第1ランド部が前記入力ポートの全体にわたって延在され、且つ前記第1ランド部及び前記第2ランド部が前記ドレインポートに重ならない位置となって前記出力ポート及び前記ドレインポートが前記弁孔にむけて全開にされるとともに、前記出力ポートと前記ドレインポートが前記環状凹部を介して連通することを特徴とする油圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動油の圧力を制御する油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁弁を含む油圧制御装置は、例えば、自動車に搭載されるクラッチの作動油の油圧を制御する。この油圧制御装置を構成するスリーブには、特許文献1に記載されるように、その内部に作動油を供給するための入力ポートと、前記作動油を内部から排出するための出力ポートと、入力ポートが閉塞されたときに出力ポート内の作動油を排出するドレインポートとが形成される。すなわち、出力ポートは、入力ポート又はドレインポートのいずれか一方に連通するとともに、その際、残余の一方との連通が遮断される。
【0003】
図4Aに簡略的に示すように、油圧制御装置1は、図示しない電磁弁の作用下に変位するスプール2を有する。図示しない出力ポートの連通先は、スプール2が変位することによって切り替えられる。ここで、図4Aは、出力ポートとドレインポート3が連通状態にあるときを示している。
【0004】
特許文献1の図6に示されるように、従来技術に係る油圧制御装置1では、スプール2に設けられたランド部4の一部がドレインポート3に重なるとともに、ドレインポート3のその他の部分は、ランド部4が重ならない(ランド部4に閉塞されない)開放状態となる。図4A、及び図4A中の矢印X2方向から視認される図4Bは、この状態を簡素に示している。
【0005】
この場合、出力ポートが開放されるとともに、該出力ポートとドレインポート3の間に、スプール2に形成された環状凹部5によって作動油の流通路が形成される。このため、出力ポートの作動油が、環状凹部5を介してドレインポート3から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−77355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ランド部4の厚みや、ドレインポート3をはじめとする各ポートのポート径には、ある程度の公差が許容されている。図4Bには、ランド部4の厚み及びドレインポート3のポート径が公差内の最大値で作製されたときを実線で表すとともに、最小値で作製されたときを破線で表している。実線と破線を対比し、ドレインポート3の、ランド部4で閉塞されていない部分の開口面積に無視し得ない程度の相違があることが認められる。
【0008】
作動油の供給流量又は排出流量は、ポートの開口面積が大きい場合には大きくなる一方、小さい場合には小さくなる。このことから諒解されるように、従来技術に係る油圧制御装置には、例えば、製造ロットが異なる製品同士の間で作動油の流量が相違することがあり得る。
【0009】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、個々の製品における作動油の流量を略同等とすることが可能な油圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明に係る一実施形態によれば、作動油が供給される入力ポートと、前記作動油が排出される出力ポートと、前記入力ポートと前記出力ポートとの連通遮断時に前記出力ポートと連通し且つ前記入力ポートと前記出力ポートの連通時に前記出力ポートとの連通が遮断されるドレインポートとが形成されたスリーブと、
前記スリーブに設けられて前記作動油の流量を制御する電磁弁と、
前記電磁弁の作用下に変位し、前記出力ポートの連通先を前記入力ポート又は前記ドレインポートのいずれかに切り替える複数個のランド部が設けられたスプールと、
を備え、
前記複数個のランド部は、前記入力ポートと前記出力ポートが連通するとき、少なくとも前記入力ポート及び前記出力ポートに重ならない位置となり、且つ前記入力ポートと前記出力ポートの連通が遮断されるとき、少なくとも前記ドレインポートに重ならない位置となる油圧制御装置が提供される。
【0011】
すなわち、本発明においては、ランド部は、ポートを開放するときには該ポートを全開とし、一方、閉塞するときには全閉とする。個々の油圧制御装置を比較したとき、全開となったポートの開口面積に相違はほとんどない。このため、ポート径やランド部の厚みに公差の範囲内で相違がある場合であっても、作動油の流量が略同等となる。
【0012】
結局、上記のような構成とすることにより、個々の油圧制御装置同士の間で作動油の流量が相違すること、換言すれば、バラツキが生じることを回避することができる。すなわち、例えば、製造ロットが異なる製品であっても、略同等の流量が得られる。このため、油圧制御装置の信頼性が向上する。
【0013】
この構成では、入力ポートと出力ポートが連通する(入力ポートと出力ポートの双方が全開となる)とき、ランド部がドレインポートにも重ならない位置となることが好ましい。すなわち、入力ポート、出力ポート及びドレインポートを全開とするとよい。この場合、ドレインポートを、入力ポートと出力ポートが連通するときにランド部で閉塞される位置に制限されることがない。従って、ドレインポートを設ける位置の自由度が向上する。なお、このときにランド部によって出力ポートとドレインポートとの連通が遮断されることは勿論である。
【0014】
また、入力ポートと出力ポートの連通を遮断するには、例えば、入力ポートを全閉とすればよい。この際、複数個のランド部は、出力ポート及びドレインポートに重ならない位置、すなわち、出力ポート及びドレインポートを全開とする位置とすることができる。この場合、出力ポートが、ランド部で閉塞される位置に制限されることがない。従って、出力ポートを設ける位置の自由度が向上する。なお、このときには、ランド部によって出力ポートとドレインポートとが連通する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スプールに設けたランド部を、ポートを開放するときには該ポートが全開となり、一方、閉塞するときには全閉となるように位置させるようにしている。個々の油圧制御装置において、全開となったポートの開口面積が相違することはほとんどない。このため、ポート径やランド部の厚みに公差の範囲内で相違がある場合であっても、作動油の流量が略同等となる。
【0016】
これにより、例えば、製造ロットが異なる製品同士の間で作動油の流量が相違することが回避される。すなわち、作動油の流量のバラツキが抑制され、略同等の流量が得られるようになる。このような理由から、油圧制御装置の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る油圧制御装置の要部概略断面図である。
図2図1の矢印X1方向から視認したときの油圧制御装置の要部拡大図である。
図3図1の油圧制御装置における入力ポートと出力ポートが連通して開状態となったときの要部概略断面図である。
図4図4Aは、スプールに設けられたランド部の一部がドレインポートに重なる位置にあるときの要部概略断面図であり、図4Bは、図4A中の矢印X2方向から視認したときの要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る油圧制御装置につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明における「上」及び「下」は、各図面における上及び下に対応しているが、これは便宜を図るためのものであり、油圧制御装置を実使用する際の方向を特定するものではない。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る油圧制御装置10の要部概略断面図である。この油圧制御装置10は、自動車に搭載されてクラッチを構成するクラッチケーシング12に取り付けられるカートリッジ型であり、前記クラッチケーシング12に形成された取付孔14に収容されるスリーブ20と、該スリーブ20に設けられた電磁弁22とを有する。
【0020】
スリーブ20は略円筒形状をなし、その内部には、該スリーブ20の軸線方向に沿って延在する弁孔24が形成されている。弁孔24内には、スプール26が着座するストッパ部28が設けられる。また、スリーブ20の側周壁には、周回方向に沿って第1環状溝30a〜第4環状溝30dが形成される。第1環状溝30aの底部には、複数個の入力ポート32が、互いの間に所定の位相差が形成されるようにして設けられる。一方、第2環状溝30b、第3環状溝30cの各底部には、複数個の出力ポート34、複数個のドレインポート36が、互いの間に所定の位相差が形成されるように設けられる。入力ポート32、出力ポート34及びドレインポート36は、スリーブ20の直径方向に沿って延在し、弁孔24にそれぞれ連通する。
【0021】
本実施の形態では、入力ポート32、出力ポート34、ドレインポート36の個数は各々4個であり、隣り合う同一ポート同士の位相差は略90°である。図1には、互いの位相差が略180°である2個が示されている。なお、入力ポート32と出力ポート34同士、出力ポート34とドレインポート36同士は略同位相である。特に図示はしていないが、入力ポート32、出力ポート34、ドレインポート36は、クラッチケーシング12に形成された油供給路、油排出路、ドレイン通路にそれぞれ連通する。
【0022】
ここで、第1環状溝30a及び第2環状溝30bの底部には、それぞれ、金属材からなる第1環状フィルタ部材40、第2環状フィルタ部材42が配設されている。換言すれば、入力ポート32及び出力ポート34は、第1環状フィルタ部材40、第2環状フィルタ部材42でそれぞれ覆われている。
【0023】
残余の第4環状溝30dには、取付孔14の内壁とスリーブ20との間をシールするOリング56が装着される。なお、スリーブ20の、第1環状溝30a〜第4環状溝30dが形成されていない部位の外周壁(外側壁)は、取付孔14の内壁に当接するシール面となる。スリーブ20には、さらに、電磁弁22に臨む面は、電磁弁22を取り付ける取付面であり、該取付面に第5環状溝30eが形成される。この第5環状溝30eには、スリーブ20と電磁弁22との間をシールするOリング58が装着される。
【0024】
弁孔24には、該弁孔24の一端を閉塞する有底円筒形状のキャップ部材60と、長手方向に沿って延在する内孔61が形成された長尺なスプール26とが収容される。スプール26の外周壁には作動油の油路となる環状凹部62が形成され、このため、スプール26は、環状凹部62を挟んで比較的長尺な第1ランド部64(ランド部)と第2ランド部66(別のランド部)が形成された形状となっている。第1ランド部64と第2ランド部66は、弁孔24の内壁に摺接する。
【0025】
第1ランド部64では内孔61の内径が大きく、一方、それ以外の部位では内径が小さい。すなわち、内孔61には内径差があり、このため、スプール26の内部に段部68が形成されている。さらに、スプール26の、第2ランド部66よりも上方には、長手方向に直交する方向に延在する横孔70が複数個形成される。内孔61は、横孔70を介してパイロット室72に連通する。
【0026】
図1に示すように、油圧制御装置10が閉状態であるとき、第1ランド部64は、その厚み方向が入力ポート32の全体にわたって延在する。このため、入力ポート32は全閉である。すなわち、第1ランド部64は、入力ポート32を全閉とする位置にある。従って、入力ポート32から内孔61内に作動油が流入することが確実に阻止される。
【0027】
このとき、第2ランド部66は、厚み方向全体がドレインポート36の上方に位置する。換言すれば、第2ランド部66は、ドレインポート36に重ならない位置である。すなわち、第2ランド部66はドレインポート36に差し掛かっていない。このため、図1中の矢印X1方向から視認した図2に示すように、ドレインポート36が全開となっている。そして、この際には、出力ポート34とドレインポート36が環状凹部62を介して連通する(図1参照)。
【0028】
パイロット室72は弁孔24の一部であり、第2ランド部66と、スリーブ20と、後述する固定コア74によって画成された空間である。パイロット室72には、パイロット圧を供給するパイロット油が、キャップ部材60に形成された呼吸孔76を介して出入する。
【0029】
キャップ部材60とスプール26の間には、リターンスプリング80が介在する。該リターンスプリング80の一端はキャップ部材60の底面に着座し、他端は段部68に着座する。このリターンスプリング80は、スプール26を電磁弁22側に指向して弾発付勢する。
【0030】
電磁弁22は、固定コア74と、電磁コイル82が巻回されたボビン84と、可動コア86と、これらを収容するハウジング88とを有する。固定コア74の大径端部はスリーブ20の取付面に当接し、小径な円筒部は、可動コア86とともにボビン84の貫通孔90内に挿入されている。なお、円筒部の中空内部には、スプール26の先端が挿入される。
【0031】
ハウジング88の天井部には、ボビン84の貫通孔90内に進入する環状壁92が突出形成される。該環状壁92により、ボビン84が支持される。また、環状壁92の中空内部には、例えば、樹脂からなるブッシュ93が嵌合される。可動コア86は、ブッシュ93の中空内部に変位可能に挿入されており、変位する際にブッシュ93の内壁に摺接する。
【0032】
ボビン84に巻回された電磁コイル82に対しては、図示しない電源から通電がなされる。この通電に伴って電磁コイル82の周囲に磁界が形成され、その結果、可動コア86が図1における下方に変位する。
【0033】
ハウジング88の開口端部は、固定コア74の大径端部と、スリーブ20の取付面近傍を囲繞するとともに、直径方向内方に向かって加締められる。これにより、ハウジング88のスリーブ20からの抜け止めがなされている。
【0034】
このように構成される油圧制御装置10は、取付ステー94を介してクラッチケーシング12に取り付けられる。
【0035】
本実施の形態に係る油圧制御装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0036】
油圧制御装置10は、次のように動作する。
【0037】
電磁コイル82に通電がなされておらずパイロット室72にパイロット圧が付加されないとき、スプール26は、図1に示すように、リターンスプリング80によって電磁弁22側に弾発付勢される。また、可動コア86は、スプール26を介してリターンスプリング80の弾発付勢力を受けることで最も後退している。
【0038】
このときには、スプール26の第1ランド部64が入力ポート32の全体を閉塞する。すなわち、第1ランド部64は全閉となる。このように、第1ランド部64が、入力ポート32が全閉となる位置となるので、作動油が入力ポート32から弁孔24に導入されることはない。すなわち、入力ポート32と出力ポート34の連通が遮断された非連通(連通遮断)状態であり、油圧制御装置10は閉状態である。
【0039】
その一方で、環状凹部62が出力ポート34からドレインポート36にわたって延在する位置となる。このため、出力ポート34がドレインポート36に連通する。なお、このとき、環状凹部62が出力ポート34の位置に対応した位置となる。このため、出力ポート34は全開である。
【0040】
ここで、第2ランド部66は、その全体がドレインポート36の上方に位置する。従って、ドレインポート36が全開となっている(図2参照)。このため、出力ポート34内の作動油が、ドレインポート36から所定の流量で排出される。
【0041】
この状態から前記電源を介して電磁コイル82に通電がなされることに伴い、固定コア74が磁化され、その結果、可動コア86を引き寄せる電磁力が発生する。この電磁力がリターンスプリング80の弾発付勢力を上回るため、可動コア86が図1の下方、すなわち、固定コア74側に向かって変位する。この際、パイロット室72には、呼吸孔76、内孔61及び横孔70を通過したパイロット油が導入される。
【0042】
変位した可動コア86に押圧されるとともに第2ランド部66にパイロット圧を受けたスプール26は、可動コア86と一体的に変位する。これに伴い、リターンスプリング80が収縮する。図3に示すように、スプール26は、ストッパ部28に着座することで停止する。この際、第1ランド部64は、全体が入力ポート32の下方に位置する。換言すれば、第1ランド部64は、入力ポート32に重ならない(差し掛からない)位置である。このため、入力ポート32が全開となる。
【0043】
すなわち、第1ランド部64が、入力ポート32が全開となる位置となる。その結果、作動油が所定の流量で入力ポート32から弁孔24に導入される。
【0044】
その一方で、環状凹部62を介して入力ポート32と出力ポート34が連通する。この際にも、環状凹部62が出力ポート34の位置に対応した位置となるもで、出力ポート34は全開である。
【0045】
すなわち、入力ポート32と出力ポート34が環状凹部62を介して連通するとともに、各ポート32、34が全開となる。従って、入力ポート32から弁孔24内に所定の流量で流入した作動油は、環状凹部62を介して出力ポート34に到達し、さらに、該出力ポート34から前記油排出路に所定の流量で流出する。作動油は、さらに、前記油排出路を経てクラッチに流入し、所定のクラッチ圧を供給する。その後、所定の経路を経由して前記油供給路に戻り、さらに入力ポート32から弁孔24(環状凹部62)に再供給される。
【0046】
このように、油圧制御装置10を開状態とするときに入力ポート32及び出力ポート34の双方を全開とすることにより、作動油を所定の流量で入力及び出力することができる。すなわち、作動油の流量が安定する。
【0047】
このときには、スプール26の第2ランド部66の全体がドレインポート36の下方となる。すなわち、第2ランド部66は、ドレインポート36に重ならない(差し掛からない)位置である。このため、ドレインポート36は全開に維持され、この状態で、出力ポート34とドレインポート36との連通が遮断されて両ポート34、36が非連通状態となる。
【0048】
適切な量の作動油が流通した後、前記電源から電磁コイル82への通電が停止される。これに伴って、可動コア86に作用していた前記電磁力が消失する。従って、リターンスプリング80が伸張してスプール26及び可動コア86を一体的に弾発付勢する。その結果、スプール26及び可動コア86が図3における上方に変位し、図1に示す状態に戻る。すなわち、入力ポート32と出力ポート34の連通が遮断され、油圧制御装置10が閉状態となる。
【0049】
この際、パイロット室72のパイロット油が、横孔70、内孔61及び呼吸孔76を介して排出される。また、出力ポート34近傍の作動油が、ドレインポート36を介して所定の流量でドレイン通路に排出される。
【0050】
このように、本実施の形態では、各ポート32、34、36を、別のポートに対して連通状態又は非連通状態とするときに適宜全閉又は全開となるように、第1ランド部64、第2ランド部66の位置を設定している。図2は、第2ランド部66の厚み及びドレインポート36のポート径が公差内の最大値で作製されたときを実線で表し、且つ最小値で作製されたときを破線で表している。いずれの場合においても、第2ランド部66がドレインポート36に差し掛からないためにドレインポート36が全開となるので、ドレインポート36の開口面積の相違はほとんどない。
【0051】
このため、別個に作製された油圧制御装置10の各々において、第1ランド部64、第2ランド部66の厚みや、各ポート32、34、36のポート径が公差の範囲内で相違しているときであっても、各ポート32、34、36から流入又は流出する作動油の流量が略同等となる。すなわち、例えば、製造ロットが異なる油圧制御装置10同士の間で作動油の流量にバラツキが生じることを回避し得る。このため、油圧制御装置10の信頼性が向上する。
【0052】
本発明は、上記した実施の形態に特に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0053】
例えば、低圧の作動油を出力する出力ポートと、高圧の作動油を出力する別の出力ポートとを、スリーブ20の軸線方向における別位置に形成するようにしてもよい。例えば、2個の出力ポート34を形成する場合、スリーブ20の軸線方向における低圧用出力ポートと高圧用出力ポートとの間に、入力ポートを形成すればよい。
【0054】
また、この実施の形態では、電磁コイル82への非通電時に閉状態である、いわゆるノーマルクローズド弁を例示しているが、電磁コイル82への非通電時に開状態である、いわゆるノーマルオープン弁であってもよい。
【0055】
いずれの場合においても、第1ランド部64及び第2ランド部66は、入力ポート、出力ポート及びドレインポートに重ならない(差し掛からない)位置であればよい。例えば、上記の実施の形態では、入力ポートと出力ポートの連通を遮断するときに入力ポートが全閉となり且つ出力ポートが全開となるようにしているが、これとは逆に、入力ポートが全開となり且つ出力ポートが全閉となるようにしてもよい。
【0056】
さらに、上記の実施の形態では、クラッチの作動油の油圧を制御する油圧制御装置10を例示しているが、本発明は、例えば、オイルポンプ等の油圧を制御する油圧制御装置等、その他の油圧制御装置として用いることもできる。
【符号の説明】
【0057】
1、10…油圧制御装置 2、26…スプール
3、36…ドレインポート 5、62…環状凹部
14…取付孔 20…スリーブ
22…電磁弁 24…弁孔
32…入力ポート 34…出力ポート
40…第1環状フィルタ部材 42…第2環状フィルタ部材
61…内孔 64…第1ランド部
66…第2ランド部 72…パイロット室
74…固定コア 80…リターンスプリング
82…電磁コイル 84…ボビン
86…可動コア
図1
図2
図3
図4