(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6950102
(24)【登録日】2021年9月27日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
B41F 15/08 20060101AFI20210930BHJP
B41F 15/44 20060101ALI20210930BHJP
B41F 15/40 20060101ALI20210930BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
B41F15/08 303E
B41F15/44 B
B41F15/40 B
H05K3/34 505D
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-551666(P2020-551666)
(86)(22)【出願日】2018年10月18日
(86)【国際出願番号】JP2018038808
(87)【国際公開番号】WO2020079797
(87)【国際公開日】20200423
【審査請求日】2020年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】特許業務法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】川尻 明宏
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 重義
【審査官】
上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−504633(JP,A)
【文献】
特開2010−258132(JP,A)
【文献】
特開2003−072024(JP,A)
【文献】
特開2015−177038(JP,A)
【文献】
特開2001−257457(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0242753(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/08
B41F 15/44
B41F 15/40
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ペーストが載せられる供給面を有する成膜トレイと、
前記成膜トレイの前記供給面に押し付けられる下面を有するスキージと、
前記成膜トレイに設けられ、前記成膜トレイの前記供給面に形成された第1開口部を有し、前記スキージの前記下面で掻き出された導電性ペーストが前記第1開口部を通って入れられるように構成された第1凹部と、
前記スキージに設けられ、前記スキージの前記下面に形成された第2開口部を有し、前記スキージの前記第2開口部は、前記成膜トレイの前記第1開口部よりも大きく、前記成膜トレイの前記供給面上の導電性ペーストが前記第2開口部を介して収められるように構成された第2凹部と、
前記成膜トレイと前記スキージを相対的に動かす駆動部と、
前記駆動部を制御し、前記成膜トレイの前記第1開口部の全域が前記スキージの前記第2開口部と重なるように、前記成膜トレイ又は前記スキージを停止させる制御部と
を備える成膜装置。
【請求項2】
前記スキージに形成され、前記第2凹部に連通する供給口部と、
前記供給口部に着脱自在な栓部とを備える請求項1に記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電性ペーストの薄膜を形成する成膜装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、成膜装置に関する種々の技術が提案されている。例えば、下記特許文献1に記載の技術は、クリーム半田のスクリーン印刷装置であって、パターン孔が開孔されたスクリーンマスクのマスクプレートの上方に配置される移動台と、この移動台をX方向に水平移動させるX方向移動手段と、この移動台を前記X方向と直交するY方向に水平移動させるY方向移動手段と、この移動台に一体的に設けられた回転手段と、内部にクリーム半田が貯溜されてこの回転手段に駆動されて前記マスクプレート上を水平方向に回転する筒状のスキージとを備えたことを特徴とする。
【0003】
このような特徴は、下記特許文献1によれば、クリーム半田を十分に練り合わせながら、マスクプレートのパターン孔に密に充填できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−234204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これにより、マスクプレートのパターン孔には、クリーム半田の薄膜が形成されているとも言えるが、上記特許文献1に記載の技術は、クリーム半田のスクリーン印刷装置であるため、ピン転写される導電性ペーストの薄膜を形成するには不向きであった。
【0006】
そこで、本開示は、上述した点を鑑みてなされたものであり、導電性ペーストの薄膜を形成するのに好適な成膜装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、導電性ペーストが載せられる供給面を有する成膜トレイと、成膜トレイの供給面に押し付けられる下面を有するスキージと、成膜トレイに設けられ、成膜トレイの供給面に形成された第1開口部を有し、スキージの下面で掻き出された導電性ペーストが第1開口部を通って入れられるように構成された第1凹部と
、前記スキージに設けられ、前記スキージの前記下面に形成された第2開口部を有し、前記スキージの前記第2開口部は、前記成膜トレイの前記第1開口部よりも大きく、前記成膜トレイの前記供給面上の導電性ペーストが前記第2開口部を介して収められるように構成された第2凹部と、前記成膜トレイと前記スキージを相対的に動かす駆動部と、前記駆動部を制御し、前記成膜トレイの前記第1開口部の全域が前記スキージの前記第2開口部と重なるように、前記成膜トレイ又は前記スキージを停止させる制御部とを備える成膜装置を開示する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、成膜装置は、導電性ペーストの薄膜を形成するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図1の成膜装置が
図1の線I−Iで切断された断面を示す図である。
【
図3】成膜装置が
図1の線I−Iで切断された断面を示す図である。
【
図4】成膜装置が
図1の線I−Iで切断された断面を示す図である。
【
図5】
図6の成膜装置が
図6の線I−Iで切断された断面を示す図である。
【
図8】
図7の成膜装置が
図7の線I−Iで切断された断面を示す図である。
【
図9】
図7の成膜装置が
図7の線I−Iで切断された断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の好適な実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。但し、図面では、構成の一部が省略されて描かれており、描かれた各部の寸法比等は必ずしも正確ではない。
【0011】
図1及び
図2に示されるように、成膜装置1は、成膜トレイ10、スキージ30、スライド機構50、及び制御装置52を備えている。成膜トレイ10は、供給面12を有している。供給面12は、スキージ30が載せられるものであって、概して長方形状をなしている。尚、図面において、X軸方向は供給面12の長手方向を示し、Y軸方向は供給面12の短手方向を示している。Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向の両方に直交する方向であり、上下方向を示している。
【0012】
成膜トレイ10において、供給面12の略中央には、第1凹部14及び第1開口部16が設けられている。第1凹部14及び第1開口部16は、供給面12と比べて、非常に小さい。第1凹部14は、第1開口部16と連なっており、下方向へ窪んだ状態にある。
【0013】
スキージ30は、成膜トレイ10の供給面12と同様にして、概して長方形状をなしている。但し、スキージ30の短手方向の長さは、供給面12の短手方向よりも短く、供給面12の短手方向の長さの3分の1程度である。これにより、スキージ30は、供給面12のY軸方向の端縁側に位置する場合には、供給面12の第1凹部14及び第1開口部16とは重ならない状態にある。
【0014】
スキージ30は、下面32を有している。下面32の略中央には、第2凹部34及び第2開口部36が設けられている。第2凹部34は、第2開口部36と連なっており、上方向へ窪んだ状態にある。スキージ30の第2開口部36は、平面視において、成膜トレイ10の第1開口部16よりも大きい。
【0015】
スライド機構50は、成膜トレイ10の外方において、スキージ30の長手方向側の端部に連結されており、成膜トレイ10の供給面12に載せられたスキージ30をY軸方向でスライドさせるものである。これにより、成膜トレイ10とスキージ30が相対的に動かされる。更に、スライド機構50は、スキージ30の下面32を成膜トレイ10の供給面12に押し付けるので、スキージ30の第2凹部34が密閉状態になる。尚、スキージ30の下面32は、不図示の高さ調節機構等によって、供給面12に押し付けられてもよい。
【0016】
制御装置52は、スライド機構50に接続されている。これにより、制御装置52は、スライド機構50を制御することによって、成膜トレイ10の供給面12上でスキージ30をY軸方向の任意の位置に移動させることができる。尚、スライド機構50及び制御装置52は、公知技術で構成されるため、その詳細な説明は省略する。
【0017】
図2乃至
図4に示されるように、スキージ30の上部には、供給路38及び供給口部40が設けられている。供給路38の上方は、供給口部40と連なっている。これに対して、供給路38の下方は、スキージ30の第2凹部34に連通している。供給口部40には、栓部42が着脱自在に設けられている。
【0018】
作業者は、栓部42を供給口部40から外すと、スキージ30の第2凹部34に導電性ペースト54を供給することが可能である。そのために、作業者は、シリンジ70を用意する。シリンジ70は、針管72、バレル74、及びプランジャー76を備えている。バレル74には、導電性ペースト54が詰められる。
【0019】
尚、導電性ペースト54は、例えば、3次元積層電子デバイスの製造において、電極パットの作成や導電回路間の接合等にピン転写の方法で使用されるものである。
【0020】
作業者は、シリンジ70の針管72を、供給口部40及び供給路38に差し入れることによって、スキージ30の第2凹部34にまで通す。更に、作業者は、シリンジ70のプランジャー76をバレル74に押し込む。これにより、導電性ペースト54は、シリンジ70のバレル74から針管72を通って、スキージ30の第2凹部34に移される。このようにして、スキージ30の第2凹部34には、導電性ペースト54が供給される。
【0021】
スキージ30の第2凹部34では、導電性ペースト54が盛り上がった状態で成膜トレイ10の供給面12に載せられている。これにより、成膜トレイ10の供給面12に載せられた導電性ペースト54(以下、成膜トレイ10の供給面12上の導電性ペースト54という)は、スキージ30の第2開口部36の開口縁に囲まれた状態で、スキージ30の第2凹部34に収められる。
【0022】
その後、作業者は、栓部42を供給口部40に付ける。これにより、スキージ30の第2凹部34は、成膜トレイ10の供給面12上の導電性ペースト54を収めた状態で密閉される。つまり、成膜トレイ10の供給面12上の導電性ペースト54は、スキージ30の第2凹部34でキャッピングされた状態になる。
【0023】
スキージ30が、制御装置52及びスライド機構50によって、成膜トレイ10の第1開口部16側へ向けてスライドさせられると、スキージ30の第2凹部34では、導電性ペースト54が、スキージ30の下面32のエッジで掻き出されながらスキージ30の第2凹部34の内壁面で押されることによって、成膜トレイ10の供給面12上を移動する。
【0024】
そして、
図5及び
図6に示されるように、スキージ30が成膜トレイ10の第1開口部16まで移動すると、スキージ30の第2凹部34では、導電性ペースト54の一部が成膜トレイ10の第1開口部16を通って第1凹部14に入り込む。
【0025】
更に、
図7及び
図8に示されるように、スキージ30が成膜トレイ10の第1開口部16を通り越すと、成膜トレイ10の供給面12よりも非常に小さい第1凹部14において、第1凹部14の深さを膜厚とする、導電性ペースト54の薄膜が形成される。従って、導電性ペースト54の膜厚は、成膜トレイ10の第1凹部14の深さでコントロールされる。
【0026】
これに対して、スキージ30の第2凹部34では、スキージ30が成膜トレイ10の第1開口部16側へ向けてスライドさせられる場合と同様にして、導電性ペースト54が、スキージ30の下面32のエッジで掻き出されながらスキージ30の第2凹部34の内壁面に押されることによって、成膜トレイ10の供給面12上を移動する。
【0027】
そして、スキージ30が、制御装置52及びスライド機構50によって、成膜トレイ10の第1開口部16を通り越した状態で停止させられる。これにより、本実施形態の成膜装置1では、
図9に示されるようにして、3次元積層電子デバイスの製造等で使用される転写ピン78が、成膜トレイ10の第1凹部14に形成された導電性ペースト54の薄膜に対して、ディップすることが可能となる。
【0028】
その後、成膜トレイ10の第1凹部14内の導電性ペースト54が少なくなった場合には、スキージ30が、制御装置52及びスライド機構50によって、上述したスライドとは反対方向へスライドさせられる。これにより、上述したスライドのときと同様にして、成膜トレイ10の第1凹部14には、導電性ペースト54の薄膜が形成される。その際には、
図10及び
図12に示されるようにして、スキージ30が成膜トレイ10の第1開口部16まで移動し、更に、
図11及び
図13に示されるようにして、スキージ30が成膜トレイ10の第1開口部16を通り越した状態で停止させられる。
【0029】
従って、本実施形態の成膜装置1は、成膜トレイ10の第1凹部14内の導電性ペースト54が少なくなる度に、制御装置52及びスライド機構50によって、スキージ30を成膜トレイ10の供給面12上でスライドさせると、導電性ペースト54の薄膜を成膜トレイ10の第1凹部14に形成させることができる。尚、成膜トレイ10の供給面12上の導電性ペースト54(つまり、スキージ30の第2凹部34内の導電性ペースト54)が少なくなった場合には、上述したシリンジ70によって、導電性ペースト54がスキージ30の第2凹部34に補充される。
【0030】
また、本実施形態の成膜装置1は、成膜トレイ10の第1凹部14内の導電性ペースト54が使用されなくなった場合にも、制御装置52及びスライド機構50によって、スキージ30を成膜トレイ10の供給面12上でスライドさせる。但し、本実施形態の成膜装置1は、制御装置52及びスライド機構50によって、スキージ30を、
図6又は
図12に示される状態、つまり、スキージ30の第2開口部36が成膜トレイ10の第1開口部16の全域と重なる状態で停止させる。
【0031】
これにより、本実施形態の成膜装置1では、スキージ30の第2凹部34が成膜トレイ10の第1凹部14を覆う状態になるので、成膜トレイ10の第1凹部14内の導電性ペースト54が、スキージ30(の第2凹部34)でキャッピングされる。
【0032】
そのようなスキージ30のキャッピングは、制御装置52及びスライド機構50によって、スキージ30を成膜トレイ10の供給面12上でスライドさせることによって解除される。その際、スキージ30が成膜トレイ10の第1開口部16から離間すると、成膜トレイ10の第1凹部14には、導電性ペースト54の薄膜が形成される。つまり、本実施形態の成膜装置1では、導電性ペースト54の薄膜形成と、スキージ30のキャッピング解除とが、同時に行われる。
【0033】
以上詳細に説明したように、本実施形態の成膜装置1は、導電性ペースト54の薄膜を形成するのに好適である。
【0034】
ちなみに、本実施形態において、スライド機構50は、「駆動部」の一例である。制御装置52は、「制御部」の一例である。
【0035】
尚、本開示は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、成膜トレイ10をスライドさせることによって、成膜トレイ10とスキージ30を相対的に動かしてもよい。また、成膜トレイ10及びスキージ30の双方をスライドさせることによって、成膜トレイ10とスキージ30を相対的に動かしてもよい。
【0036】
また、スキージ30の下面32が成膜トレイ10の第1開口部16の全域と重なることが可能な場合には、成膜装置1は、制御装置52及びスライド機構50によって、スキージ30を、その下面32が成膜トレイ10の第1開口部16の全域と重なる状態で停止させる。これにより、成膜トレイ10の第1凹部14内の導電性ペースト54が、スキージ30の下面32でキャッピングされる。
【符号の説明】
【0037】
1 成膜装置
10 成膜トレイ
12 供給面
14 第1凹部
16 第1開口部
30 スキージ
32 下面
34 第2凹部
36 第2開口部
40 供給口部
42 栓部
50 スライド機構
52 制御装置
54 導電性ペースト