特許第6950243号(P6950243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6950243ハードコートフィルム、折り畳み式画像表示装置、及び、ハードコートフィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6950243
(24)【登録日】2021年9月28日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】ハードコートフィルム、折り畳み式画像表示装置、及び、ハードコートフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/046 20200101AFI20210930BHJP
【FI】
   C08J7/046 ZCFD
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-71557(P2017-71557)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-172528(P2018-172528A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 和也
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 迅希
(72)【発明者】
【氏名】大石 英司
(72)【発明者】
【氏名】岩田 行光
(72)【発明者】
【氏名】中村 典永
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−193271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/046
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマテリアル層の一方の界面付近にフィラーが密に存在しているハードコートフィルムであって、
前記フィラーの90%以上が、前記ベースマテリアル層の一方の界面側から前記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域に存在しており、
前記ベースマテリアル層の厚み方向の断面において、前記フィラーが密に存在している側の界面から前記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域における前記フィラーの濃度が30〜60%であり、
下記条件(1)及び(2)を充足することを特徴とするハードコートフィルム。
(1)180°折り曲げ試験を10万回繰り返した場合に割れない
(2)#0000番のスチールウールで1kg/cmの荷重をかけながら、速度100mm/secで、前記ベースマテリアル層の前記フィラーが密に存在している側の表面を1万回往復摩擦させる耐スチールウール試験において傷が生じない
【請求項2】
フィラーは、有機粒子及び/又は無機粒子であり、
前記有機粒子は、ポリメチルメタクリレート粒子、ポリアクリル−スチレン共重合体粒子、メラミン樹脂粒子、ポリカーボネート粒子、ポリスチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子、ポリ塩化ビニル粒子、ベンゾグアナミン−メラミンホルムアルデヒド粒子、シリコーン粒子、フッ素系樹脂粒子、及び、ポリエステル系樹脂粒子からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記無機粒子は、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、及び、チタニア粒子からなる群より選択される少なくとも1種である
請求項記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
ベースマテリアル層の一方の界面付近に、異型の無機粒子が密に存在している請求項記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載のハードコートフィルムを用いてなることを特徴とする折り畳み式画像表示装置。
【請求項5】
離型フィルム上にフィラーを散布し、フィラー層を形成する工程、
前記フィラー層上に、ベースマテリアル層形成用組成物を塗布し、前記フィラー層上にベースマテリアル塗布層を形成し、更に、前記フィラー層の前記フィラー間に前記ベースマテリアル層形成用組成物を浸透させて浸透層を形成する工程、
前記ベースマテリアル塗布層と、前記浸透層とを硬化させる工程、及び、
前記離型フィルムを剥離する工程を有し、
製造するハードコートフィルムのベースマテリアル層において、該ベースマテリアル層の一方の界面側から前記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域にフィラーの90%以上が存在し、前記ベースマテリアル層の厚み方向の断面において、前記フィラーが密に存在している側の界面から前記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域における前記フィラーの濃度が30〜60%となるように、前記フィラー層を形成する工程において隣接する前記フィラーの間隔を調整する
ことを特徴とするハードコートフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコートフィルム、折り畳み式画像表示装置、及び、ハードコートフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置における画像表示面は、取り扱い時に傷がつかないように、耐擦傷性を付与することが要求される。これに対し、例えば、基材フィルムにハードコート(HC)層を形成させたハードコートフィルムを利用することにより、画像表示装置の画像表示面の耐擦傷性を向上させることが一般になされている。
【0003】
このようなハードコートフィルムに要求される性能は、近年益々高くなってきており、硬度及び耐擦傷性に更に優れたものが求められている。このような硬度及び耐擦傷性に優れるハードコートフィルムとしては、例えば、特許文献1には、3層以上の樹脂層から構成される基板上に、異形シリカ微粒子とアクリル系ポリマーとマトリクス樹脂とを含むハードコート層が形成されたハードコートフィルムが開示されている。
【0004】
ところで、近年、ハードコートフィルムには、優れた硬度及び耐擦傷性とともに、ハードコートフィルムを繰り返し折り畳んでもクラックの生じることのない優れた折り畳み性が求められることがある。
しかしながら、硬度及び耐擦傷性と折り畳み性とは、通常、トレードオフの関係にあるため、従来のハードコートフィルムでは、硬度及び耐擦傷性の向上を図ると折り畳み性は低下し、折り畳み性の向上を図ると硬度及び耐擦傷性が低下してしまい、これらの性能を同時に優れたものとすることができなかった。
【0005】
例えば、特許文献2には、ハードコート性と屈曲性とを備えたハードコートフィルムとして、透明基材の一方の面上にビッカース硬度の異なる2つのハードコート層を設けたハードコートフィルムが開示されている。
しかしながら、このようなハードコートフィルムは、ある程度優れた硬度及び屈曲性を備えているが、耐擦傷性が充分とは言い難いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−238614号公報
【特許文献2】特開2014−186210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みて、極めて優れた硬度、耐擦傷性及び折り畳み性を有するハードコートフィルム、該ハードコートフィルムを用いてなる折り畳み式画像表示装置、並びに、ハードコートフィルムの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ベースマテリアル層の一方の界面付近にフィラーが密に存在しているハードコートフィルムであって、上記フィラーの90%以上が、上記ベースマテリアル層の一方の界面側から上記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域に存在しており、上記ベースマテリアル層の厚み方向の断面において、上記フィラーが密に存在している側の界面から上記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域における上記フィラーの濃度が30〜60%であり、下記条件(1)及び(2)を充足することを特徴とするハードコートフィルムである。
(1)180°折り曲げ試験を10万回繰り返した場合に割れない
(2)#0000番のスチールウールで1kg/cmの荷重をかけながら、速度100mm/secで、上記ベースマテリアル層の上記フィラーが密に存在している側の表面を1万回往復摩擦させる耐スチールウール試験において傷が生じない
【0009】
た、上記フィラーは、有機粒子及び/又は無機粒子であり、上記有機粒子は、ポリメチルメタクリレート粒子、ポリアクリル−スチレン共重合体粒子、メラミン樹脂粒子、ポリカーボネート粒子、ポリスチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子、ポリ塩化ビニル粒子、ベンゾグアナミン−メラミンホルムアルデヒド粒子、シリコーン粒子、フッ素系樹脂粒子、及び、ポリエステル系樹脂粒子からなる群より選択される少なくとも1種であり、上記無機粒子は、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、及び、チタニア粒子からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、本発明のハードコートフィルムは、上記ベースマテリアル層の一方の界面付近に、異型の無機粒子が密に存在していることが好ましい。
【0010】
本発明のハードコートフィルムを用いてなることを特徴とする折り畳み式画像表示装置もまた、本発明の一つである。
また、本発明は、離型フィルム上にフィラーを散布し、フィラー層を形成する工程、上記フィラー層上に、ベースマテリアル層形成用組成物を塗布し、上記フィラー層上にベースマテリアル塗布層を形成し、更に、上記フィラー層の上記フィラー間に上記ベースマテリアル層形成用組成物を浸透させて浸透層を形成する工程、上記ベースマテリアル塗布層と、上記浸透層とを硬化させる工程、及び、上記離型フィルムを剥離する工程を有し、製造するハードコートフィルムのベースマテリアル層において、該ベースマテリアル層の一方の界面側から上記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域にフィラーの90%以上が存在し、上記ベースマテリアル層の厚み方向の断面において、上記フィラーが密に存在している側の界面から上記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域における前記フィラーの濃度が30〜60%となるように、上記フィラー層を形成する工程において隣接する上記フィラーの間隔を調整することを特徴とするハードコートフィルムの製造方法でもある。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ハードコートフィルムとして、ベースマテリアル層中に特定の状態でフィラーが存在したものは、極めて優れた硬度及び耐擦傷性を有するとともに、折り畳み性にも極めて優れたものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
図1は、本発明のハードコートフィルムの一例を模式的に示した断面図である。
図1に示したように、本発明のハードコートフィルム10は、ベースマテリアル層11の一方の界面付近にフィラー12が密に存在している。
このような本発明のハードコートフィルムは、ベースマテリアル層の単層構造と見なすことができる。ここで、従来の基材フィルム上に異形シリカ微粒子を含むハードコート層が設けられた2層構成からなるハードコートフィルムは、上述のように硬度及び耐擦傷性と折り畳み性との両立ができないという問題のほか、基材フィルムとハードコート層との間の層間密着性も問題となることがあり、更に、基材フィルムとハードコート層との界面における干渉縞の発生が問題となることもあった。
これに対し、本発明のハードコートフィルムは、ベースマテリアル層の単層構造とみなすことができるので、従来のハードコートフィルムのような層間密着性の問題や干渉縞の問題が生じることはない。
【0013】
本発明のハードコートフィルムは、下記条件(1)及び(2)を充足するものである。
(1)180°折り曲げ試験を10万回繰り返した場合に割れない
(2)#0000番のスチールウールで1kg/cmの荷重をかけながら、速度100mm/secで、上記ベースマテリアル層の上記フィラーが密に存在している側の表面を1万回往復摩擦させる耐スチールウール試験において傷が生じない
【0014】
上記条件(1)を充足することで、本発明のハードコートフィルムは極めて折り畳み性に優れることとなる。上記180°折り曲げ試験は、具体的には、本発明のハードコートフィルムの一方の端面を持ち、当該一方の端面を他方の端面に向けてφ7mmとなるようにして折り畳み(180°折り畳み)、その後上記一方の端面を元に戻す試験を10万回繰り返す。上記180°折り曲げ試験後、目視にて割れの有無を確認する。
上記条件(1)に係る180°折り曲げ試験は、本発明のハードコートフィルムを上記ハードコート層側が内側となるように折り曲げて行ってもよく、本発明のハードコートフィルムを上記ハードコート層側が外側となるように折り曲げて行ってもよい。本発明のハードコートフィルムは、上記ハードコート層が内側又は外側のいずれの側となるようにして上記180°折り曲げ試験を行っても、試験後に目視にて割れが生じない。本発明のハードコートフィルムは、上記180°折り曲げ試験を上記ハードコート層が内側となるように折り曲げ、かつ、上記ハードコート層が外側となるように折り曲げて行っても、試験後に目視にて割れが生じないことが好ましい。
【0015】
上記条件(2)を充足することで本発明のハードコートフィルムは、極めて硬度及び耐擦傷性に優れることとなる。上記耐スチールウール試験は、具体的には、#0000番のスチールウール(ボンスター#0000、日本スチールウール社製)を用い、1kg/cmの荷重をかけながら、速度100mm/secで、上記ベースマテリアル層の上記フィラーが密に存在している側の表面を1万回往復摩擦させる。上記耐スチールウール試験後、目視にて傷の有無を確認する。
【0016】
本発明のハードコートフィルムにおいて、上記フィラーの90%以上が、上記ベースマテリアル層の一方の界面側から上記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域に存在していることが好ましい。このような状態で上記フィラーがベースマテリアル層に含まれることで、好適に上記条件(1)及び(2)を同時に充足させることが可能となる。上記フィラーの95%以上が、上記ベースマテリアル層の一方の界面側から上記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域に存在していることがより好ましい。
なお、「上記フィラーの90%以上が、上記ベースマテリアル層の一方の界面側から上記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域に存在している。」とは、上記ベースマテリアル層中で上記フィラーが一方の界面側に偏在していることを意味しており、具体的には、上記ベースマテリアル層の厚み方向の断面において、任意の幅(例えば、1μm)で一方の界面から他方の界面までの帯状領域を顕微鏡観察したときに、該帯状領域に現れるフィラーの90%以上が一方の界面側から上記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域に存在していることを意味する。
【0017】
また、上記ベースマテリアル層の厚み方向の断面において、上記フィラーが密に存在している側の界面から上記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域における上記フィラーの濃度が30〜60%であることが好ましい。30%未満であると、本発明のハードコートフィルムの硬度及び耐擦傷性が不充分となることがあり、60%を超えると、本発明のハードコートフィルムの折り畳み性が不充分となることがある。上記フィラーの濃度のより好ましい下限は35%であり、より好ましい上限は55%であり、更に好ましい下限は40%、更に好ましい上限は50%である。
なお、上記ベースマテリアル層の厚み方向の断面における上記フィラーの濃度は、以下の方法で求めることができる。
すなわち、上記ベースマテリアル層の厚み方向の断面顕微鏡観察にて、上記フィラーが密に存在している側の界面から上記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域で任意に選択した20箇所の単位面積(例えば、0.15μm)当たりに観察されるフィラーが占める面積を、画像処理ソフトで計算し各単位面積に占めるフィラーの面積を算出する。
次いで、各単位面積でフィラーの面積が占める割合を求め平均値を算出することで上記フィラーの濃度を求めることができる。具体的には、各単位面積の断面顕微鏡画像で、コントラスト及び明るさを、輪郭を含めフィラーが占める部分が一番はっきりと見分けられるよう適宜調節し、フィラーが無い部分を白、フィラーがある部分を黒として画像処理ソフトで2値化し、各単位面積の白黒比を算出し、フィラーが占める割合を濃度として求めることができる。
【0018】
上記フィラーは、上記ベースマテリアル層に硬度及び耐擦傷性を付与する要素であれば特に限定されないが、本発明のフィルムにおいては、有機粒子及び/又は無機粒子であることが好ましい。
【0019】
上記有機粒子としては特に限定されないが、ポリメチルメタクリレート粒子、ポリアクリル−スチレン共重合体粒子、メラミン樹脂粒子、ポリカーボネート粒子、ポリスチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子、ポリ塩化ビニル粒子、ベンゾグアナミン−メラミンホルムアルデヒド粒子、シリコーン粒子、フッ素系樹脂粒子、及び、ポリエステル系樹脂粒子からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、上記無機粒子としては特に限定されないが、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、及び、チタニア粒子からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0020】
上記フィラーの大きさとしては特に限定されないが、例えば、該フィラーの平均粒子径が0.01〜10μmであることが好ましい。0.01μm未満であると、本発明のハードコートフィルムの硬度及び耐擦傷性が不充分となることがあり、10μmを超えると、上記ベースマテリアル層からの脱落が生じることがある。上記フィラーの平均粒子径のより好ましい下限は0.05μm、より好ましい上限は8μmである。
なお、上記フィラーの平均粒子径は、上記ベースマテリアル層の断面顕微鏡観察により20個フィラーの粒子径を測定した平均値である。
上記フィラーが球状である場合、上記フィラーの粒子径は、ベースマテリアル層の断面に現れたフィラーの直径であり、上記フィラーが非球状である場合、上記フィラーの粒子径は、ベースマテリアル層の断面に現れたフィラーの外周の2点間距離の最大値(長径)と最小値(短径)との平均値である。
【0021】
本発明のハードコートフィルムにおいて、上記フィラーとしては、なかでも無機粒子であることが好ましく、異型の無機粒子であることがより好ましい。異型の無機粒子を上記フィラーとして含有することで、本発明のハードコートフィルムの硬度及び耐擦傷性が特に優れたものとなる。
なお、上記「異型」とは、複数個の球状の無機粒子が合体したような状態の無機粒子を意味する。また、上記「異型」の無機粒子は、断面顕微鏡で観察したときの長径と短径とのアスペクト比が1:1.2〜1:10であることが好ましい。
【0022】
上記ベースマテリアル層を構成する材料としては、例えば、電離放射線の照射により硬化物を形成するものが挙げられ、重合性モノマーや重合性オリゴマー等を用いることができる。
上記重合性モノマー又は重合性オリゴマーとしては、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートモノマー、又は、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。
上記分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートモノマー、又は、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリフルオロアルキル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等のモノマー又はオリゴマーが挙げられる。これら重合性モノマー又は重合性オリゴマーは、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
なお、硬度や組成物の粘度調整等のために、上記ベースマテリアル層を構成する材料としては、上記重合性モノマー又は重合性オリゴマーに加えて、更に単官能(メタ)アクリレートモノマーを用いてもよい。
上記単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、グリシジルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルサクシネート等が挙げられる。
【0024】
上記重合性モノマーの重量平均分子量は、ベースマテリアル層の硬度を向上させる観点から、1000未満が好ましく、200〜800がより好ましい。
また、上記重合性オリゴマーの重量平均分子量は、1000〜2万であることが好ましく、1000〜1万であることがより好ましく、2000〜7000であることが更に好ましい。
なお、本明細書において、上記重合性モノマー及び重合性オリゴマーの重量平均分子量は、GPC法で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0025】
上記ベースマテリアル層は、紫外線吸収剤(UVA)を含有することが好ましい。
本発明のハードコートフィルムは、後述するように、折り畳み可能なスマートフォンやタブレット端末のようなモバイル端末に特に好適に用いられるが、このようなモバイル端末は屋外で使用されることが多く、そのため、本発明のハードコートフィルムの下方に配設された偏光子が紫外線に晒されて劣化しやすいという問題がある。
しかしながら、上記ベースマテリアル層は、上記偏光子の表示画面側に配置されるため、該ベースマテリアル層に紫外線吸収剤が含有されていると、上記偏光子が紫外線に晒されることによる劣化を好適に防止することができる。
【0026】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、及び、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0027】
上記トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、および2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
また、市販されているトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、TINUVIN460、TINUVIN477(いずれも、BASF社製)、LA−46(ADEKA社製)等が挙げられる。
【0028】
上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸及びその三水塩、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
また、市販されているベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、CHMASSORB81/FL(BASF社製)等が挙げられる。
【0029】
上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネート、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−〔5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル〕−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3’ ’,4’ ’,5’ ’,6’ ’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、及び、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等が挙げられる。
また、市販されているベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、KEMISORB71D、KEMISORB79(いずれも、ケミプロ化成社製)、JF−80、JAST−500(いずれも、城北化学社製)、ULS−1933D(一方社製)、RUVA−93(大塚化学社製)等が挙げられる。
【0030】
上記紫外線吸収剤は、なかでも、トリアジン系紫外線吸収剤が好適に用いられ、具体的には、紫外線吸収性、ベースマテリアル層を構成する上記重合性モノマー又は重合性オリゴマーへの溶解性等の観点から、TINUVIN477が特に好適に用いられる。
【0031】
上記紫外線吸収剤の含有量としては特に限定されないが、上記ベースマテリアル層の樹脂固形分100質量部に対して1〜6質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、上述した紫外線吸収剤をベースマテリアル層に含有させる効果を充分に得ることができないことがあり、6質量部を超えると、上記ベースマテリアル層に著しい着色や強度低下が生じることがある。上記紫外線吸収剤の含有量のより好ましい下限は2質量部、より好ましい上限は5質量部である。
【0032】
上記ベースマテリアル層は、層厚が10〜25μmであることが好ましい。10μm未満であると、上記ベースマテリアル層の強度が著しく低下することがあり、25μmを超えると、上記ベースマテリアル層を形成するための塗液のコーティングが困難となり、また、厚みが厚すぎることに起因した加工性(特に、耐チッピング性)が悪化することがある。上記ベースマテリアル層の層厚みは、下限が15μmであることがより好ましく、上限が20μmであることがより好ましい。
なお、上記ベースマテリアル層の層厚みは、断面の電子顕微鏡(SEM、TEM、STEM)観察により測定して得られた値である。
【0033】
上記ベースマテリアル層は、波長380nmの光の透過率が7%以下であることが好ましい。7%を超えると、本発明のハードコートフィルムをモバイル端末に用いた場合、偏光子が紫外線に晒されて劣化しやすくなる恐れがある。上記ベースマテリアル層の波長380nmの光の糖率のより好ましい上限は5%である。
また、上記ベースマテリアル層は、ヘイズが1%以下であることが好ましい。1%を超えると、本発明のハードコートフィルムをモバイル端末に用いた場合、表示画面の白化が問題となる恐れがある。上記ヘイズのより好ましい上限は0.5%である。
上記ベースマテリアル層の透過率及びヘイズは、例えば、上述した紫外線吸収剤の添加量を調整すること等により達成できる。
また、上記透過率及びヘイズは、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7361に従い測定することができる。
【0034】
上記ベースマテリアル層は、必要に応じて、例えば、滑剤、可塑剤、充填剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、架橋剤、光安定剤、染料、顔料等の着色剤等のその他の成分が含有されていてもよい。
【0035】
上記ベースマテリアル層は、例えば、上記重合性モノマー及び/又は重合性オリゴマー、紫外線吸収剤やその他の成分等を添加したベースマテリアル層形成用組成物を用いて形成することができる。
上記ベースマテリアル層形成用組成物は、必要に応じて溶媒を含有してもよい。
【0036】
上記溶媒としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール、PGME、エチレングリコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ヘプタノン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)等を挙げることができる。
なかでも、上記溶媒としては、上述した重合性モノマー及び/又は重合性オリゴマー、並びに、他の添加剤を溶解或いは分散させ、上記ベースマテリアル層形成用組成物を好適に塗工できる点で、メチルイソブチルケトン、及び/又は、メチルエチルケトンが好ましい。
【0037】
上記ベースマテリアル層形成用組成物は、総固形分が30〜45%であることが好ましい。30%より低いと残留溶剤が残ったり、白化が生じたりするおそれがある。45%を超えると、ベースマテリアル層形成用組成物の粘度が高くなり、塗工性が低下して表面にムラやスジが出たり、上述したようなフィラーを特定の状態でベースマテリアル層中に存在させることができなかったりすることがある。上記固形分は、35〜45%であることがより好ましい。
【0038】
上記ベースマテリアル層形成用組成物を用いた本発明のハードコートフィルムの製造方法もまた、本発明の一つである。
すなわち、本発明のハードコートフィルムの製造方法は、離型フィルム上にフィラーを散布し、フィラー層を形成する工程、上記フィラー層上に、ベースマテリアル層形成用組成物を塗布し、上記フィラー層上にベースマテリアル塗布層を形成し、更に、上記フィラー層の上記フィラー間に上記ベースマテリアル層形成用組成物を浸透させて浸透層を形成する工程、上記ベースマテリアル塗布層と、上記浸透層とを硬化させる工程、及び、上記離型フィルムを剥離する工程を有することを特徴とする。
【0039】
図2は、本発明のハードコートフィルムの製造方法を説明する断面図である。
図2(a)に示したように、本発明のハードコートフィルムの製造方法は、離型フィルム21上にフィラー12を散布し、フィラー層13を形成する工程を有する。
離型フィルム21としては特に限定されないが、例えば、未処理のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好適に用いられる。未処理のPETフィルムは、ベースマテリアル層との離型性に優れる他、安価であるため本発明のハードコートフィルムの製造コストを低く抑えることが可能となる。また、離型フィルム21は、フィラー層13を形成する基材となり、後述する工程を経てベースマテリアル層を形成するまではフィラー層13を保護する保護フィルムとして機能するが、未処理のPETフィルムは、COPフィルムや表面処理PETフィルムと比較して強靭であるため、上記保護フィルムとして好適に機能する。
なお、離型フィルム21として、離型剤を含む離型PETフィルムを用いることもできる。上記離型PETフィルムを用いて本発明のハードコートフィルムを製造した場合、後述する工程を経てベースマテリアル層を形成したときに、該ベースマテリアル層に離型PETフィルム中の離型剤が移行し、製造するハードコートフィルムの耐擦傷性が極めて優れたものとすることができる。
【0040】
フィラー層13の厚みとしては特に限定されないが、形成するベースマテリアル層の厚みの30%以内であることが好ましい。フィラー層13の厚みをこのような範囲とすることで、製造するハードコートフィルムにおいて、フィラーの90%以上を、ベースマテリアル層の厚みの一方の界面側から該ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域に存在させることが可能となる。
【0041】
離型フィルム21上にフィラー12を散布する方法としては、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコーター法等の公知の各種方法が挙げられる。
【0042】
また、フィラー層13は、製造するハードコートフィルムのベースマテリアル層において、該ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域におけるフィラーの濃度が上述した範囲内となるように、隣接するフィラー12の間隔が適宜調整されていることが好ましい。
このような隣接するフィラー12の間隔は、離型フィルム21上に散布する際のフィラー12の量等を適宜調整することで制御できる。
【0043】
本発明のハードコートフィルムの製造方法は、図2(b)に示したように、フィラー層13上に、ベースマテリアル層形成用組成物を塗布し、フィラー層13上にベースマテリアル塗布層22を形成し、更に、図2(c)に示したように、フィラー層13のフィラー12間にベースマテリアル層形成用組成物を浸透させて浸透層14を形成する工程を有する。
【0044】
本工程において、フィラー層13上塗布するベースマテリアル層形成用組成物としては、上述した組成のものが挙げられる。
また、上記ベースマテリアル層形成用組成物をフィラー層13上に塗布してベースマテリアル塗布層22を形成する方法としては、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコーター法等の公知の各種方法を挙げることができる。
【0045】
上記ベースマテリアル層形成用組成物の塗布量としては、15〜60g/mであることが好ましい。15g/m未満であると、所望の硬度のベースマテリアル層が得られないおそれがある。60g/mを超えると、カールの発生や硬化不足の原因となるおそれがある。上記ベースマテリアル層形成用組成物の塗布量は、20〜50g/mであることがより好ましい。
【0046】
また、フィラー層13は、隣接するフィラー12間に所定の間隔を有するため、フィラー層13上にベースマテリアル塗布層22を形成し静置すると、ベースマテリアル塗布層22の構成成分が経時的にフィラー12間に浸透し、浸透層14が形成される。
【0047】
また、本工程において、浸透層14を形成した後、必要に応じてベースマテリアル塗布層22及び浸透層14を乾燥させてもよい。
上記乾燥の方法としては特に限定されないが、一般的に30〜120℃で3〜120秒間乾燥を行うとよい。
【0048】
本発明のハードコートフィルムの製造方法は、ベースマテリアル塗布層22と、浸透層14とを硬化させる工程を有する。
本工程を行うことで、図2(d)に示したように、離型フィルム21上に、一方の界面(離型フィルム21側の界面)付近にフィラー12が密に存在しているベースマテリアル層11が形成される。
【0049】
ベースマテリアル塗布層22と、浸透層14とを硬化させる方法としては、上記ベースマテリアル層形成用組成物の組成等に応じて公知の方法を適宜選択すればよい。例えば、上記ベースマテリアル層形成用組成物が紫外線硬化型のものであれば、ベースマテリアル塗布層及び浸透層14に紫外線を照射することにより硬化させればよい。
上記紫外線を照射する場合は、紫外線照射量が80mJ/cm以上であることが好ましく、100mJ/cm以上であることがより好ましく、130mJ/cm以上であることが更に好ましい。
【0050】
そして、本発明のハードコートフィルムの製造方法は、離型フィルム21を剥離する工程を有する。
本工程を行うことで、図2(e)に示したように、ベースマテリアル層11の一方の界面付近にフィラー12が密に存在しているハードコートフィルムを製造することができる。
【0051】
このようにして製造された本発明のハードコートフィルムは、フィラーが密に存在している側の表面形状が、表面粗さを表すパラメーターであるJIS B0601(1994)に規定される算術平均粗さ(Ra)が1nm以下であることが好ましい。
【0052】
本発明のハードコートフィルムは、上述した構成を有し、上記条件(1)、すなわち、180°折り曲げ試験を10万回繰り返した場合に割れないものであるため、極めて優れた折り畳み性を有し、上記条件(2)、すなわち、#0000番のスチールウールで1kg/cmの荷重をかけながら、速度100mm/secで、上記ベースマテリアル層の上記フィラーが密に存在している側の表面を1万回往復摩擦させる耐スチールウール試験において傷が生じないものであるため、極めて優れた硬度と耐擦傷性とを有するものである。
このような本発明のハードコートフィルムは、従来公知のハードコート層を備えたハードコートフィルムと同様に、液晶表示装置等の画像表示装置の表面保護フィルムとして使用できるだけでなく、曲面ディスプレイや、曲面を有する製品の表面保護フィルム、折り畳み式の部材の表面保護フィルムとして使用できる。
なかでも、本発明のハードコートフィルムは、極めて優れた折り畳み性を有するため、折り畳み式の部材の表面保護フィルムとして好適に用いられる。
なお、上記「折り畳み性」とは、折り畳んだ状態にできる性能以外に、ロール状に巻ける状態とすることができる性能も意味し、上記「折り畳んだ状態」とは、ハードコート層側を内側としても外側としても折り畳んだ状態で使用できることを意味する。
また、本発明のハードコートフィルムは、ロール状に巻き取られた形態であってもよいし、枚葉の形態であってもよい。また、本発明のハードコートフィルムのサイズは特に限定されず、用途に応じて適宜決定され、例えば、1インチ四方程度のサイズであってもよいし、100インチ四方を超えるサイズであってもよい。
【0053】
上記折り畳み式の部材としては、折り畳まれる構造を備えた部材であれば特に限定されず、例えば、折り畳み式の腕時計のようなウェアラブルデバイス、折り畳み式スマートフォンや折り畳み式タッチパネル等の折り畳み式画像表示装置、折り畳み式の(電子)アルバム、ロール状に巻ける画像表示装置、車両や家屋のウインドウガラス、家電製品などの曲面を有する製品の表面保護部材、屋外のデジタルサイネージ等が挙げられる。
なお、本発明のハードコートフィルムを用いてなる折り畳み式画像表示装置もまた、本発明の一つである。
【発明の効果】
【0054】
本発明のハードコートフィルムは、上述した構成からなるものであるため、極めて優れた硬度、耐擦傷性及び折り畳み性を有するものとなる。このため、本発明のハードコートフィルムは、従来のハードコート層を備えたハードコートフィルムと同様の表面保護フィルムのほか、曲面を有する製品の表面保護フィルムや、折り畳み式画像表示装置といった折り畳み式の部材の表面保護フィルムとして好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1図1は、本発明のハードコートフィルムの一例を模式的に示した断面図である。
図2図2(a)〜(e)は、本発明のハードコートフィルムの製造方法を説明する断面図である。
図3図3(a)〜(c)は、実施例、比較例に係るハードコートフィルムを用いたサンプルの180度曲げ試験を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例及び比較例のみに限定されるものではない。
なお、文中、「部」又は「%」とあるのは特に断りのない限り、質量基準である。
【0057】
<フィラー層>
下記に示す組成となるように各成分を配合して、フィラー層用組成物を得た。
(フィラー層用組成物1)
・反応性異形シリカ(無機粒子、製品名「ELCOM V8803」、日揮触媒化成社製):30質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製):4質量部
・レベリング剤(製品名「F568」、DIC社製):0.1質量部(固形分100%換算値)
・メチルイソブチルケトン(MIBK):150質量部
【0058】
(フィラー層用組成物2)
・反応性異形シリカ(無機粒子、製品名「ELCOM V8803」、日揮触媒化成社製):75質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製):4質量部
・レベリング剤(製品名「F568」、DIC社製):0.1質量部(固形分100%換算値)
・メチルイソブチルケトン(MIBK):150質量部
【0059】
(フィラー層用組成物3)
・アルミナ(製品名「NanoTek Powder Al」、CIKナノテック社製):75質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製):4質量部
・レベリング剤(製品名「F568」、DIC社製):0.1質量部(固形分100%換算値)
・メチルイソブチルケトン(MIBK):150質量部
【0060】
(フィラー層用組成物4)
・ジルコニア(製品名「ジルコニアナノ粒子分散液 ジルコスター」、日本触媒社製):75質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製):4質量部
・レベリング剤(製品名「F568」、DIC社製):0.1質量部(固形分100%換算値)
・メチルエチルケトン(MEK):150質量部
【0061】
(フィラー層用組成物5)
・アクリル−スチレンビーズ(有機粒子、製品名「SX−500H」、綜研化学社製):75質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製):4質量部
・レベリング剤(製品名「F568」、DIC社製):0.1質量部(固形分100%換算値)
・メチルイソブチルケトン(MIBK):150質量部
【0062】
(フィラー層用組成物6)
・反応性異形シリカ(無機粒子、製品名「ELCOM V8803」、日揮触媒化成社製):10質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製):4質量部
・レベリング剤(製品名「F568」、DIC社製):0.1質量部(固形分100%換算値)
・メチルイソブチルケトン(MIBK):150質量部
【0063】
(フィラー層用組成物7)
・反応性異形シリカ(無機粒子、製品名「ELCOM V8803」、日揮触媒化成社製):150質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製):4質量部
・レベリング剤(製品名「F568」、DIC社製):0.1質量部(固形分100%換算値)
・メチルイソブチルケトン(MIBK):150質量部
【0064】
(フィラー層用組成物8)
・反応性異形シリカ(無機粒子、製品名「ELCOM V8803」、日揮触媒化成社製):50質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製):4質量部
・レベリング剤(製品名「F568」、DIC社製):0.1質量部(固形分100%換算値)
・メチルイソブチルケトン(MIBK):150質量部
【0065】
<ベースマテリアル層用組成物>
下記に示す組成となるように各成分を配合して、ベースマテリアル層用組成物1を得た。
(ベースマテリアル層用組成物1)
・ウレタンアクリレート(製品名「UV−3310B」、日本合成化学社製、重量平均分子量5000、2官能):40質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製):4質量部
・レベリング剤(製品名「F568」、DIC社製):0.1質量部(固形分100%換算値)
・紫外線吸収剤(製品名「TINUVIN400」、BASFジャパン社製):3質量部
・メチルイソブチルケトン(MIBK):60質量部
【0066】
<実施例1>
まず、離型フィルムとしての厚さ100μmの片面易接着処理がされたポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「コスモシャインA4100」、東洋紡社製)を準備し、ポリエチレンテレフタレートフィルムの未処理側面に、フィラー層用組成物1を塗布し、厚み10.8μmの塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が200mJ/cmになるように照射して塗膜を半硬化させてフィラー層を形成した。
【0067】
次いで、形成したフィラー層上に、上記ベースマテリアル層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が300mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させベースマテリアル層を形成した。
【0068】
最後に、ポリエチレンテレフタレートフィルムをベースマテリアル層(フィラー層)表面から剥離して、フィラーが密に存在している層が表面に露出したハードコートフィルムを得た。
【0069】
<実施例2>
実施例2においては、フィラー層用組成物1の代わりにフィラー層用組成物2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを得た。
【0070】
<実施例3>
実施例3においては、フィラー層用組成物1の塗布量を減らす(フィラー層の存在領域減少)こと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを得た。
【0071】
<実施例4>
実施例4においては、フィラー層用組成物1の代わりにフィラー層用組成物3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを得た。
【0072】
<実施例5>
実施例5においては、フィラー層用組成物1の代わりにフィラー層用組成物4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを得た。
【0073】
<実施例6>
実施例6においては、フィラー層用組成物1の代わりにフィラー層用組成物5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを得た。
【0074】
<比較例1>
比較例1においては、フィラー層用組成物1の代わりにフィラー層用組成物6を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを得た。
【0075】
<比較例2>
比較例2においては、フィラー層用組成物1の代わりにフィラー層用組成物7を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを得た。
【0076】
<比較例3>
比較例3においては、フィラー層用組成物1の代わりにフィラー層用組成物8を用いて、フィラー層用組成物8を塗布して厚み20μmの塗膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを得た。
【0077】
<フィラーの濃度・存在領域測定>
実施例1〜6及び比較例1〜3に係るハードコートフィルムにおいて、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S−4800」、日立製作所社製)を用いて、ベースマテリアル層厚み方向の断面を観察し、フィラー濃度及びフィラーの存在領域を測定した。
具体的には、走査透過型電子顕微鏡におけるベースマテリアル層の厚み方向の断面写真の撮影の際には、加速電圧を30kVとし、エミッション電流を10μA、倍率20万倍とし、またコントラスト及び明るさを、輪郭含めフィラーが占める部分が一番はっきりと見分けられるよう適宜調節した。
フィラー濃度は、上記ベースマテリアル層の厚み方向の断面において、上記フィラーが密に存在している側の界面から上記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域で任意に選択した20箇所の単位面積(0.15μm)当たりに観察されるフィラーが占める面積を、画像処理ソフトで計算し、各単位面積に占めるフィラーの面積の割合を求め平均することで算出した。
より具体的には、横500nm×縦300nmの走査透過型電子顕微鏡における断面画像で、コントラスト及び明るさを、輪郭を含めフィラーが占める部分が一番はっきりと見分けられるよう適宜調節し、フィラーが無い部分を白、フィラーが有る部分を黒として、画像処理ソフト(ソフト名「Image−Pro Plus」、日本ローパー社製)で2値化し、各単位面積の白黒比を算出し、フィラーが占める割合を濃度として求めた。
画像処理条件は下記の通りである。
オブジェクト抽出オプションの「4連結」にチェックを入れ、「予め選別」「穴を埋める」「包絡線」にはチェックなし、「平滑化」「境界上を除外」はなしに設定。
測定項目を面積とし、最小を1、最大を10000000とし、カウント/サイズ画面で「暗い色のオブジェクトを自動抽出」にチェックし、カウントボタンを押す。表示統計の合計が上記フィラーの占める面積になるので、画面上での上記フィラーの占める割合を出し、濃度として算出した。
フィラーの存在領域は、上記ベースマテリアル層の厚み方向の断面において、1μmの幅で一方の界面から他方の界面までの帯状領域を観察したときに、該帯状領域に現れるフィラーの90%以上が一方の界面側から上記ベースマテリアル層の厚みの何%までの領域に存在しているか測定した。なお、上記フィラーの存在領域の測定は、上記フィラーの濃度の算出と同様の方法で顕微鏡観察を行った。
【0078】
<ヘイズ・全光線透過率測定>
実施例1〜6及び比較例1〜3に係るハードコートフィルムにおいて、ヘイズ値(全ヘイズ値)、全光線透過率をそれぞれ測定した。ヘイズ値は、JIS K7136:2000に準拠して、ヘイズメーター(製品名「HM−150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、求めた。
【0079】
<180度曲げ試験>
実施例1〜6及び比較例1〜3に係るハードコートフィルムにおける180度曲げ試験を測定した。具体的には、図3(a)〜(c)に示したように、実施例、比較例に係るハードコートフィルムを、30mm×100mmの長方形にカットして作製したサンプル30を、耐久試験機(DLDMLH−FS、ユアサシステム機器社製)に、サンプル30の短辺(30mm)側を固定部31で屈曲部32が固定部31の下端からはみ出さないようにそれぞれ固定し、図3(c)に示したように対向する2つの辺の最小の間隔が7mm及び3mm(屈曲部32の外径7mm及び3mm)となるようにして取り付け、サンプル30のフィラー層を形成した側の面を180°折り畳む試験と、サンプル30のフィラー層を形成した面と反対側の面を180°折り畳む試験とを、それぞれ10万回行った。
【0080】
<耐SW性試験>
実施例1〜6および比較例1〜3に係るハードコートフィルムにおけるフィラー層の表面の耐SW性を測定した。具体的には、#0000番(製品名「ボンスター」、日本スチールウール社製)のスチールウールで1kg/cm及び1.2kg/cmの荷重をかけながら、速度100mm/secで、ベースマテリアル層のフィラーが密に存在している側の表面を1万回往復摩擦させる耐スチールウール試験を行った。
【0081】
<鉛筆硬度測定>
実施例1〜6および比較例1〜3に係るハードコートフィルムにおけるフィラー層の表面の鉛筆硬度を測定した。具体的には、偏光板を温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用いて、ベースマテリアル層のフィラーが密に存在している側の表面においてJIS K5600−5−4:1999に規定する鉛筆硬度試験(4.9N荷重)を行い、傷がつかなかった最も高い硬度を鉛筆硬度とした。
【0082】
以下、結果を表1に示す。
なお、180度曲げ試験において、φ7mm及びφ3mmのいずれにおいても割れが生じなかった場合「◎」とし、φ7mmのみ割れが生じなかった場合「〇」とし、φ7mmで割れが生じた場合「×」とした。
また、耐SW性において、1kg/cm及び1.2kg/cmの荷重いずれでも傷が生じなかった場合「◎」とし、1kg/cmの荷重のみ傷が生じなかった場合「〇」とし、1kg/cmの荷重で傷が生じた場合「×」とした。
【表1】
【0083】
表1に示されるように、比較例1に係るハードコートフィルムにおいては、耐SW性が弱かった。これに対し、実施例1〜6、比較例2〜3に係るハードコートフィルムにおいては、耐SW性が良好であった。これにより、フィラー層形成に係るフィラー濃度が高いほうが、耐SW性が向上することが確認された。
【0084】
また、比較例2に係るハードコートフィルムは、フィラー濃度が高すぎてしまったために、180度曲げ試験が悪化した。また、比較例3に係るハードコートフィルムは、存在領域が広かったために、180度曲げ試験が悪化した。これにより、フィラー濃度が高すぎず、存在領域も広すぎないことが、優れた曲げ性を有するハードコートフィルムを得られることが確認された。
【0085】
また、実施例1〜3に係るハードコートフィルムは、実施例4〜6に係るハードコートフィルムに比べてヘイズ値が低く、全光線透過率は高かった。これにより、フィラーの種類で光学特性が変化することが確認された。
なお、実施例1及び実施例2に係るハイブリッドフィルムの結果に基づき、フィラーの濃度が45%となるように、フィラー層用組成物1における反応性異形シリカ(無機粒子、製品名「ELCOM V8803」、日揮触媒化成社製)の配合量を調整し、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを製造したところ、180度曲げ試験及び耐SW性のいずれもが「◎」の評価であった。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のハードコートフィルムは、折り畳み式の部材の表面保護フィルムとして好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0087】
10 ハードコートフィルム
11 ベースマテリアル層
12 フィラー
13 フィラー層
14 浸透層
21 離型フィルム
22 ベースマテリアル塗布層
30 サンプル
31 固定部
32 屈曲部
図1
図2
図3