【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ベースマテリアル層の一方の界面付近にフィラーが密に存在しているハードコートフィルムであって、
上記フィラーの90%以上が、上記ベースマテリアル層の一方の界面側から上記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域に存在しており、上記ベースマテリアル層の厚み方向の断面において、上記フィラーが密に存在している側の界面から上記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域における上記フィラーの濃度が30〜60%であり、下記条件(1)及び(2)を充足することを特徴とするハードコートフィルムである。
(1)180°折り曲げ試験を10万回繰り返した場合に割れない
(2)#0000番のスチールウールで1kg/cm
2の荷重をかけながら、速度100mm/secで、上記ベースマテリアル層の上記フィラーが密に存在している側の表面を1万回往復摩擦させる耐スチールウール試験において傷が生じない
【0009】
また、上記フィラーは、有機粒子及び/又は無機粒子であり、上記有機粒子は、ポリメチルメタクリレート粒子、ポリアクリル−スチレン共重合体粒子、メラミン樹脂粒子、ポリカーボネート粒子、ポリスチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子、ポリ塩化ビニル粒子、ベンゾグアナミン−メラミンホルムアルデヒド粒子、シリコーン粒子、フッ素系樹脂粒子、及び、ポリエステル系樹脂粒子からなる群より選択される少なくとも1種であり、上記無機粒子は、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、及び、チタニア粒子からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、本発明のハードコートフィルムは、上記ベースマテリアル層の一方の界面付近に、異型の無機粒子が密に存在していることが好ましい。
【0010】
本発明のハードコートフィルムを用いてなることを特徴とする折り畳み式画像表示装置もまた、本発明の一つである。
また、本発明は、離型フィルム上にフィラーを散布し、フィラー層を形成する工程、上記フィラー層上に、ベースマテリアル層形成用組成物を塗布し、上記フィラー層上にベースマテリアル塗布層を形成し、更に、上記フィラー層の上記フィラー間に上記ベースマテリアル層形成用組成物を浸透させて浸透層を形成する工程、上記ベースマテリアル塗布層と、上記浸透層とを硬化させる工程、及び、上記離型フィルムを剥離する工程を有
し、製造するハードコートフィルムのベースマテリアル層において、該ベースマテリアル層の一方の界面側から上記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域にフィラーの90%以上が存在し、上記ベースマテリアル層の厚み方向の断面において、上記フィラーが密に存在している側の界面から上記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域における前記フィラーの濃度が30〜60%となるように、上記フィラー層を形成する工程において隣接する上記フィラーの間隔を調整することを特徴とするハードコートフィルムの製造方法でもある。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ハードコートフィルムとして、ベースマテリアル層中に特定の状態でフィラーが存在したものは、極めて優れた硬度及び耐擦傷性を有するとともに、折り畳み性にも極めて優れたものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
図1は、本発明のハードコートフィルムの一例を模式的に示した断面図である。
図1に示したように、本発明のハードコートフィルム10は、ベースマテリアル層11の一方の界面付近にフィラー12が密に存在している。
このような本発明のハードコートフィルムは、ベースマテリアル層の単層構造と見なすことができる。ここで、従来の基材フィルム上に異形シリカ微粒子を含むハードコート層が設けられた2層構成からなるハードコートフィルムは、上述のように硬度及び耐擦傷性と折り畳み性との両立ができないという問題のほか、基材フィルムとハードコート層との間の層間密着性も問題となることがあり、更に、基材フィルムとハードコート層との界面における干渉縞の発生が問題となることもあった。
これに対し、本発明のハードコートフィルムは、ベースマテリアル層の単層構造とみなすことができるので、従来のハードコートフィルムのような層間密着性の問題や干渉縞の問題が生じることはない。
【0013】
本発明のハードコートフィルムは、下記条件(1)及び(2)を充足するものである。
(1)180°折り曲げ試験を10万回繰り返した場合に割れない
(2)#0000番のスチールウールで1kg/cm
2の荷重をかけながら、速度100mm/secで、上記ベースマテリアル層の上記フィラーが密に存在している側の表面を1万回往復摩擦させる耐スチールウール試験において傷が生じない
【0014】
上記条件(1)を充足することで、本発明のハードコートフィルムは極めて折り畳み性に優れることとなる。上記180°折り曲げ試験は、具体的には、本発明のハードコートフィルムの一方の端面を持ち、当該一方の端面を他方の端面に向けてφ7mmとなるようにして折り畳み(180°折り畳み)、その後上記一方の端面を元に戻す試験を10万回繰り返す。上記180°折り曲げ試験後、目視にて割れの有無を確認する。
上記条件(1)に係る180°折り曲げ試験は、本発明のハードコートフィルムを上記ハードコート層側が内側となるように折り曲げて行ってもよく、本発明のハードコートフィルムを上記ハードコート層側が外側となるように折り曲げて行ってもよい。本発明のハードコートフィルムは、上記ハードコート層が内側又は外側のいずれの側となるようにして上記180°折り曲げ試験を行っても、試験後に目視にて割れが生じない。本発明のハードコートフィルムは、上記180°折り曲げ試験を上記ハードコート層が内側となるように折り曲げ、かつ、上記ハードコート層が外側となるように折り曲げて行っても、試験後に目視にて割れが生じないことが好ましい。
【0015】
上記条件(2)を充足することで本発明のハードコートフィルムは、極めて硬度及び耐擦傷性に優れることとなる。上記耐スチールウール試験は、具体的には、#0000番のスチールウール(ボンスター#0000、日本スチールウール社製)を用い、1kg/cm
2の荷重をかけながら、速度100mm/secで、上記ベースマテリアル層の上記フィラーが密に存在している側の表面を1万回往復摩擦させる。上記耐スチールウール試験後、目視にて傷の有無を確認する。
【0016】
本発明のハードコートフィルムにおいて、上記フィラーの90%以上が、上記ベースマテリアル層の一方の界面側から上記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域に存在していることが好ましい。このような状態で上記フィラーがベースマテリアル層に含まれることで、好適に上記条件(1)及び(2)を同時に充足させることが可能となる。上記フィラーの95%以上が、上記ベースマテリアル層の一方の界面側から上記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域に存在していることがより好ましい。
なお、「上記フィラーの90%以上が、上記ベースマテリアル層の一方の界面側から上記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域に存在している。」とは、上記ベースマテリアル層中で上記フィラーが一方の界面側に偏在していることを意味しており、具体的には、上記ベースマテリアル層の厚み方向の断面において、任意の幅(例えば、1μm)で一方の界面から他方の界面までの帯状領域を顕微鏡観察したときに、該帯状領域に現れるフィラーの90%以上が一方の界面側から上記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域に存在していることを意味する。
【0017】
また、上記ベースマテリアル層の厚み方向の断面において、上記フィラーが密に存在している側の界面から上記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域における上記フィラーの濃度が30〜60%であることが好ましい。30%未満であると、本発明のハードコートフィルムの硬度及び耐擦傷性が不充分となることがあり、60%を超えると、本発明のハードコートフィルムの折り畳み性が不充分となることがある。上記フィラーの濃度のより好ましい下限は35%であり、より好ましい上限は55%であり、更に好ましい下限は40%、更に好ましい上限は50%である。
なお、上記ベースマテリアル層の厚み方向の断面における上記フィラーの濃度は、以下の方法で求めることができる。
すなわち、上記ベースマテリアル層の厚み方向の断面顕微鏡観察にて、上記フィラーが密に存在している側の界面から上記ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域で任意に選択した20箇所の単位面積(例えば、0.15μm
2)当たりに観察されるフィラーが占める面積を、画像処理ソフトで計算し各単位面積に占めるフィラーの面積を算出する。
次いで、各単位面積でフィラーの面積が占める割合を求め平均値を算出することで上記フィラーの濃度を求めることができる。具体的には、各単位面積の断面顕微鏡画像で、コントラスト及び明るさを、輪郭を含めフィラーが占める部分が一番はっきりと見分けられるよう適宜調節し、フィラーが無い部分を白、フィラーがある部分を黒として画像処理ソフトで2値化し、各単位面積の白黒比を算出し、フィラーが占める割合を濃度として求めることができる。
【0018】
上記フィラーは、上記ベースマテリアル層に硬度及び耐擦傷性を付与する要素であれば特に限定されないが、本発明のフィルムにおいては、有機粒子及び/又は無機粒子であることが好ましい。
【0019】
上記有機粒子としては特に限定されないが、ポリメチルメタクリレート粒子、ポリアクリル−スチレン共重合体粒子、メラミン樹脂粒子、ポリカーボネート粒子、ポリスチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子、ポリ塩化ビニル粒子、ベンゾグアナミン−メラミンホルムアルデヒド粒子、シリコーン粒子、フッ素系樹脂粒子、及び、ポリエステル系樹脂粒子からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、上記無機粒子としては特に限定されないが、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、及び、チタニア粒子からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0020】
上記フィラーの大きさとしては特に限定されないが、例えば、該フィラーの平均粒子径が0.01〜10μmであることが好ましい。0.01μm未満であると、本発明のハードコートフィルムの硬度及び耐擦傷性が不充分となることがあり、10μmを超えると、上記ベースマテリアル層からの脱落が生じることがある。上記フィラーの平均粒子径のより好ましい下限は0.05μm、より好ましい上限は8μmである。
なお、上記フィラーの平均粒子径は、上記ベースマテリアル層の断面顕微鏡観察により20個フィラーの粒子径を測定した平均値である。
上記フィラーが球状である場合、上記フィラーの粒子径は、ベースマテリアル層の断面に現れたフィラーの直径であり、上記フィラーが非球状である場合、上記フィラーの粒子径は、ベースマテリアル層の断面に現れたフィラーの外周の2点間距離の最大値(長径)と最小値(短径)との平均値である。
【0021】
本発明のハードコートフィルムにおいて、上記フィラーとしては、なかでも無機粒子であることが好ましく、異型の無機粒子であることがより好ましい。異型の無機粒子を上記フィラーとして含有することで、本発明のハードコートフィルムの硬度及び耐擦傷性が特に優れたものとなる。
なお、上記「異型」とは、複数個の球状の無機粒子が合体したような状態の無機粒子を意味する。また、上記「異型」の無機粒子は、断面顕微鏡で観察したときの長径と短径とのアスペクト比が1:1.2〜1:10であることが好ましい。
【0022】
上記ベースマテリアル層を構成する材料としては、例えば、電離放射線の照射により硬化物を形成するものが挙げられ、重合性モノマーや重合性オリゴマー等を用いることができる。
上記重合性モノマー又は重合性オリゴマーとしては、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートモノマー、又は、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。
上記分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートモノマー、又は、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリフルオロアルキル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等のモノマー又はオリゴマーが挙げられる。これら重合性モノマー又は重合性オリゴマーは、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
なお、硬度や組成物の粘度調整等のために、上記ベースマテリアル層を構成する材料としては、上記重合性モノマー又は重合性オリゴマーに加えて、更に単官能(メタ)アクリレートモノマーを用いてもよい。
上記単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、グリシジルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルサクシネート等が挙げられる。
【0024】
上記重合性モノマーの重量平均分子量は、ベースマテリアル層の硬度を向上させる観点から、1000未満が好ましく、200〜800がより好ましい。
また、上記重合性オリゴマーの重量平均分子量は、1000〜2万であることが好ましく、1000〜1万であることがより好ましく、2000〜7000であることが更に好ましい。
なお、本明細書において、上記重合性モノマー及び重合性オリゴマーの重量平均分子量は、GPC法で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0025】
上記ベースマテリアル層は、紫外線吸収剤(UVA)を含有することが好ましい。
本発明のハードコートフィルムは、後述するように、折り畳み可能なスマートフォンやタブレット端末のようなモバイル端末に特に好適に用いられるが、このようなモバイル端末は屋外で使用されることが多く、そのため、本発明のハードコートフィルムの下方に配設された偏光子が紫外線に晒されて劣化しやすいという問題がある。
しかしながら、上記ベースマテリアル層は、上記偏光子の表示画面側に配置されるため、該ベースマテリアル層に紫外線吸収剤が含有されていると、上記偏光子が紫外線に晒されることによる劣化を好適に防止することができる。
【0026】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、及び、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0027】
上記トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、および2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
また、市販されているトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、TINUVIN460、TINUVIN477(いずれも、BASF社製)、LA−46(ADEKA社製)等が挙げられる。
【0028】
上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸及びその三水塩、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
また、市販されているベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、CHMASSORB81/FL(BASF社製)等が挙げられる。
【0029】
上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネート、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−〔5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル〕−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3’ ’,4’ ’,5’ ’,6’ ’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、及び、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等が挙げられる。
また、市販されているベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、KEMISORB71D、KEMISORB79(いずれも、ケミプロ化成社製)、JF−80、JAST−500(いずれも、城北化学社製)、ULS−1933D(一方社製)、RUVA−93(大塚化学社製)等が挙げられる。
【0030】
上記紫外線吸収剤は、なかでも、トリアジン系紫外線吸収剤が好適に用いられ、具体的には、紫外線吸収性、ベースマテリアル層を構成する上記重合性モノマー又は重合性オリゴマーへの溶解性等の観点から、TINUVIN477が特に好適に用いられる。
【0031】
上記紫外線吸収剤の含有量としては特に限定されないが、上記ベースマテリアル層の樹脂固形分100質量部に対して1〜6質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、上述した紫外線吸収剤をベースマテリアル層に含有させる効果を充分に得ることができないことがあり、6質量部を超えると、上記ベースマテリアル層に著しい着色や強度低下が生じることがある。上記紫外線吸収剤の含有量のより好ましい下限は2質量部、より好ましい上限は5質量部である。
【0032】
上記ベースマテリアル層は、層厚が10〜25μmであることが好ましい。10μm未満であると、上記ベースマテリアル層の強度が著しく低下することがあり、25μmを超えると、上記ベースマテリアル層を形成するための塗液のコーティングが困難となり、また、厚みが厚すぎることに起因した加工性(特に、耐チッピング性)が悪化することがある。上記ベースマテリアル層の層厚みは、下限が15μmであることがより好ましく、上限が20μmであることがより好ましい。
なお、上記ベースマテリアル層の層厚みは、断面の電子顕微鏡(SEM、TEM、STEM)観察により測定して得られた値である。
【0033】
上記ベースマテリアル層は、波長380nmの光の透過率が7%以下であることが好ましい。7%を超えると、本発明のハードコートフィルムをモバイル端末に用いた場合、偏光子が紫外線に晒されて劣化しやすくなる恐れがある。上記ベースマテリアル層の波長380nmの光の糖率のより好ましい上限は5%である。
また、上記ベースマテリアル層は、ヘイズが1%以下であることが好ましい。1%を超えると、本発明のハードコートフィルムをモバイル端末に用いた場合、表示画面の白化が問題となる恐れがある。上記ヘイズのより好ましい上限は0.5%である。
上記ベースマテリアル層の透過率及びヘイズは、例えば、上述した紫外線吸収剤の添加量を調整すること等により達成できる。
また、上記透過率及びヘイズは、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7361に従い測定することができる。
【0034】
上記ベースマテリアル層は、必要に応じて、例えば、滑剤、可塑剤、充填剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、架橋剤、光安定剤、染料、顔料等の着色剤等のその他の成分が含有されていてもよい。
【0035】
上記ベースマテリアル層は、例えば、上記重合性モノマー及び/又は重合性オリゴマー、紫外線吸収剤やその他の成分等を添加したベースマテリアル層形成用組成物を用いて形成することができる。
上記ベースマテリアル層形成用組成物は、必要に応じて溶媒を含有してもよい。
【0036】
上記溶媒としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール、PGME、エチレングリコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ヘプタノン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)等を挙げることができる。
なかでも、上記溶媒としては、上述した重合性モノマー及び/又は重合性オリゴマー、並びに、他の添加剤を溶解或いは分散させ、上記ベースマテリアル層形成用組成物を好適に塗工できる点で、メチルイソブチルケトン、及び/又は、メチルエチルケトンが好ましい。
【0037】
上記ベースマテリアル層形成用組成物は、総固形分が30〜45%であることが好ましい。30%より低いと残留溶剤が残ったり、白化が生じたりするおそれがある。45%を超えると、ベースマテリアル層形成用組成物の粘度が高くなり、塗工性が低下して表面にムラやスジが出たり、上述したようなフィラーを特定の状態でベースマテリアル層中に存在させることができなかったりすることがある。上記固形分は、35〜45%であることがより好ましい。
【0038】
上記ベースマテリアル層形成用組成物を用いた本発明のハードコートフィルムの製造方法もまた、本発明の一つである。
すなわち、本発明のハードコートフィルムの製造方法は、離型フィルム上にフィラーを散布し、フィラー層を形成する工程、上記フィラー層上に、ベースマテリアル層形成用組成物を塗布し、上記フィラー層上にベースマテリアル塗布層を形成し、更に、上記フィラー層の上記フィラー間に上記ベースマテリアル層形成用組成物を浸透させて浸透層を形成する工程、上記ベースマテリアル塗布層と、上記浸透層とを硬化させる工程、及び、上記離型フィルムを剥離する工程を有することを特徴とする。
【0039】
図2は、本発明のハードコートフィルムの製造方法を説明する断面図である。
図2(a)に示したように、本発明のハードコートフィルムの製造方法は、離型フィルム21上にフィラー12を散布し、フィラー層13を形成する工程を有する。
離型フィルム21としては特に限定されないが、例えば、未処理のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好適に用いられる。未処理のPETフィルムは、ベースマテリアル層との離型性に優れる他、安価であるため本発明のハードコートフィルムの製造コストを低く抑えることが可能となる。また、離型フィルム21は、フィラー層13を形成する基材となり、後述する工程を経てベースマテリアル層を形成するまではフィラー層13を保護する保護フィルムとして機能するが、未処理のPETフィルムは、COPフィルムや表面処理PETフィルムと比較して強靭であるため、上記保護フィルムとして好適に機能する。
なお、離型フィルム21として、離型剤を含む離型PETフィルムを用いることもできる。上記離型PETフィルムを用いて本発明のハードコートフィルムを製造した場合、後述する工程を経てベースマテリアル層を形成したときに、該ベースマテリアル層に離型PETフィルム中の離型剤が移行し、製造するハードコートフィルムの耐擦傷性が極めて優れたものとすることができる。
【0040】
フィラー層13の厚みとしては特に限定されないが、形成するベースマテリアル層の厚みの30%以内であることが好ましい。フィラー層13の厚みをこのような範囲とすることで、製造するハードコートフィルムにおいて、フィラーの90%以上を、ベースマテリアル層の厚みの一方の界面側から該ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域に存在させることが可能となる。
【0041】
離型フィルム21上にフィラー12を散布する方法としては、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコーター法等の公知の各種方法が挙げられる。
【0042】
また、フィラー層13は、製造するハードコートフィルムのベースマテリアル層において、該ベースマテリアル層の厚みの30%までの領域におけるフィラーの濃度が上述した範囲内となるように、隣接するフィラー12の間隔が適宜調整されていることが好ましい。
このような隣接するフィラー12の間隔は、離型フィルム21上に散布する際のフィラー12の量等を適宜調整することで制御できる。
【0043】
本発明のハードコートフィルムの製造方法は、
図2(b)に示したように、フィラー層13上に、ベースマテリアル層形成用組成物を塗布し、フィラー層13上にベースマテリアル塗布層22を形成し、更に、
図2(c)に示したように、フィラー層13のフィラー12間にベースマテリアル層形成用組成物を浸透させて浸透層14を形成する工程を有する。
【0044】
本工程において、フィラー層13上塗布するベースマテリアル層形成用組成物としては、上述した組成のものが挙げられる。
また、上記ベースマテリアル層形成用組成物をフィラー層13上に塗布してベースマテリアル塗布層22を形成する方法としては、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコーター法等の公知の各種方法を挙げることができる。
【0045】
上記ベースマテリアル層形成用組成物の塗布量としては、15〜60g/m
2であることが好ましい。15g/m
2未満であると、所望の硬度のベースマテリアル層が得られないおそれがある。60g/m
2を超えると、カールの発生や硬化不足の原因となるおそれがある。上記ベースマテリアル層形成用組成物の塗布量は、20〜50g/m
2であることがより好ましい。
【0046】
また、フィラー層13は、隣接するフィラー12間に所定の間隔を有するため、フィラー層13上にベースマテリアル塗布層22を形成し静置すると、ベースマテリアル塗布層22の構成成分が経時的にフィラー12間に浸透し、浸透層14が形成される。
【0047】
また、本工程において、浸透層14を形成した後、必要に応じてベースマテリアル塗布層22及び浸透層14を乾燥させてもよい。
上記乾燥の方法としては特に限定されないが、一般的に30〜120℃で3〜120秒間乾燥を行うとよい。
【0048】
本発明のハードコートフィルムの製造方法は、ベースマテリアル塗布層22と、浸透層14とを硬化させる工程を有する。
本工程を行うことで、
図2(d)に示したように、離型フィルム21上に、一方の界面(離型フィルム21側の界面)付近にフィラー12が密に存在しているベースマテリアル層11が形成される。
【0049】
ベースマテリアル塗布層22と、浸透層14とを硬化させる方法としては、上記ベースマテリアル層形成用組成物の組成等に応じて公知の方法を適宜選択すればよい。例えば、上記ベースマテリアル層形成用組成物が紫外線硬化型のものであれば、ベースマテリアル塗布層及び浸透層14に紫外線を照射することにより硬化させればよい。
上記紫外線を照射する場合は、紫外線照射量が80mJ/cm
2以上であることが好ましく、100mJ/cm
2以上であることがより好ましく、130mJ/cm
2以上であることが更に好ましい。
【0050】
そして、本発明のハードコートフィルムの製造方法は、離型フィルム21を剥離する工程を有する。
本工程を行うことで、
図2(e)に示したように、ベースマテリアル層11の一方の界面付近にフィラー12が密に存在しているハードコートフィルムを製造することができる。
【0051】
このようにして製造された本発明のハードコートフィルムは、フィラーが密に存在している側の表面形状が、表面粗さを表すパラメーターであるJIS B0601(1994)に規定される算術平均粗さ(Ra)が1nm以下であることが好ましい。
【0052】
本発明のハードコートフィルムは、上述した構成を有し、上記条件(1)、すなわち、180°折り曲げ試験を10万回繰り返した場合に割れないものであるため、極めて優れた折り畳み性を有し、上記条件(2)、すなわち、#0000番のスチールウールで1kg/cm
2の荷重をかけながら、速度100mm/secで、上記ベースマテリアル層の上記フィラーが密に存在している側の表面を1万回往復摩擦させる耐スチールウール試験において傷が生じないものであるため、極めて優れた硬度と耐擦傷性とを有するものである。
このような本発明のハードコートフィルムは、従来公知のハードコート層を備えたハードコートフィルムと同様に、液晶表示装置等の画像表示装置の表面保護フィルムとして使用できるだけでなく、曲面ディスプレイや、曲面を有する製品の表面保護フィルム、折り畳み式の部材の表面保護フィルムとして使用できる。
なかでも、本発明のハードコートフィルムは、極めて優れた折り畳み性を有するため、折り畳み式の部材の表面保護フィルムとして好適に用いられる。
なお、上記「折り畳み性」とは、折り畳んだ状態にできる性能以外に、ロール状に巻ける状態とすることができる性能も意味し、上記「折り畳んだ状態」とは、ハードコート層側を内側としても外側としても折り畳んだ状態で使用できることを意味する。
また、本発明のハードコートフィルムは、ロール状に巻き取られた形態であってもよいし、枚葉の形態であってもよい。また、本発明のハードコートフィルムのサイズは特に限定されず、用途に応じて適宜決定され、例えば、1インチ四方程度のサイズであってもよいし、100インチ四方を超えるサイズであってもよい。
【0053】
上記折り畳み式の部材としては、折り畳まれる構造を備えた部材であれば特に限定されず、例えば、折り畳み式の腕時計のようなウェアラブルデバイス、折り畳み式スマートフォンや折り畳み式タッチパネル等の折り畳み式画像表示装置、折り畳み式の(電子)アルバム、ロール状に巻ける画像表示装置、車両や家屋のウインドウガラス、家電製品などの曲面を有する製品の表面保護部材、屋外のデジタルサイネージ等が挙げられる。
なお、本発明のハードコートフィルムを用いてなる折り畳み式画像表示装置もまた、本発明の一つである。