(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1タンクから供給される第1インクを吐出するための第1ノズルと、第2タンクから供給される第2インクであって前記第1インクとは異なる第2インクを吐出するための第2ノズルと、を有するインクジェットヘッドと、
前記第1ノズルと前記第1タンクとを接続する第1流路と、
前記第2ノズルと前記第2タンクとを接続する第2流路と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1タンク及び前記第1流路の少なくとも一方へインクが補充されたと判断した場合に、前記第1タンク及び前記第1流路の少なくとも一方へのインクの補充に関連する補充条件を満たしているか否かを判定し、
前記第1インクで印刷することを指示する印刷データを受信したときに、
当該印刷データの受信の直前又は直後において前記補充条件を満たしていないと判定している場合には、前記インクジェットヘッドに、前記第1ノズルから被記録媒体にインクを吐出させ、且つ、前記第2ノズルからは被記録媒体にインクを吐出させない第1吐出動作を行わせ、
前記第1インクで印刷することを指示する印刷データを受信したときに、当該印刷データの受信の直前又は直後において前記補充条件を満たしていると判定している場合には、前記インクジェットヘッドに、少なくとも前記第2ノズルから被記録媒体にインクを吐出させる第2吐出動作を行わせることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0013】
<インクジェットプリンタの全体構成>
本実施の形態に係るインクジェットプリンタ1は、記録用紙P(本発明の「被記録媒体」)への印刷のほか、画像の読み取り、ファクシミリなども行うことが可能な、いわゆる複合機である。
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、印刷部2(
図2参照)、給送部3、排出部4、読取部5、操作部6、表示部7などを備えている。また、インクジェットプリンタ1の動作は、制御装置50(
図4参照)によって制御されている。
【0014】
印刷部2は、インクジェットプリンタ1の内部に設けられており、インクジェットプリンタ1に接続された図示しないPCから受信した印刷指令や、ファクシミリの信号を受信したときに、これらの信号に含まれる印刷データに対応する画像を記録用紙Pに印刷する。なお、印刷部2については、後程詳細に説明する。給送部3は、印刷部2により印刷が行われる記録用紙Pを給送するための部分である。排出部4は、印刷部2により印刷が行われた記録用紙Pが排出される部分である。読取部5は、スキャナなどであって、ファクシミリの送信時等に原稿の読み取りを行う。操作部6は、ボタン等を備えており、ユーザは、操作部6のボタンを操作することによって、インクジェットプリンタ1に対して必要な操作を行う。表示部7は液晶ディスプレイなどであって、インクジェットプリンタ1の使用時に必要な情報を表示する。
【0015】
<印刷部>
次に、印刷部2について説明する。
図2に示すように、印刷部2は、キャリッジ11、インクジェットヘッド12、1色分の1つのインクタンク13a、3色分の3つのインクタンク13b、プラテン14、搬送ローラ15、16、メディアセンサ17、及び、メンテナンスユニット18(本発明の「排出装置」)を備えている。
【0016】
キャリッジ11は、走査方向に延びた2本のガイドレール21、22に支持され、走査方向に移動可能となっている。キャリッジ11は、図示しないベルトなどを介して、キャリッジモータ56(
図4参照)と接続されている。キャリッジモータ56を駆動させると、キャリッジ11がガイドレール21、22に沿って走査方向に移動する。なお、以下では、
図1、
図2に示すように、走査方向の右側及び左側を定義して説明を行う。
【0017】
インクジェットヘッド12は、キャリッジ11に搭載されている。インクジェットヘッド12の下面には複数のノズル10a、10bが形成されている。複数のノズル10a、10bは、走査方向と直交する搬送方向に配列されることによってノズル列9を形成している。また、インクジェットヘッド12は、走査方向に並んだ4つのノズル列9を有している。最も右側のノズル列9は、複数のノズル10a(本発明の「第1ノズル」)によって形成される。ノズル10aからはブラックインク(本発明の「第1インク」)が吐出される。左側3列のノズル列9は、複数のノズル10b(本発明の「第2ノズル」)によって形成される。ノズル10bからは、右側のノズル列9を形成するものから順に、イエロー、シアン、マゼンタのカラーインク(本発明の「第2インク」)が吐出される。
【0018】
インクタンク13a、13bは、インクジェットプリンタ1の搬送方向の下流側且つ走査方向の右側の部分に設けられたタンク収容部26に収容され、走査方向に並んでいる。インクタンク13a、13bは、それぞれ、チューブ23を介してインクジェットヘッド3と接続されている。インクタンク13a(本発明の「第1タンク」)には、ブラックインクが貯留されている。3色分のインクタンク13b(本発明の「第2タンク」)には、右側に位置するものからイエロー、シアン、マゼンタのインクが貯留されている。そして、インクタンク13a、1bに貯留されたこれら4色のインクが4本のチューブ23を介してインクジェットヘッド12に供給される。なお、本実施の形態では、インクタンク13aと接続されたチューブ23、及び、ノズル10aに接続されたインクジェットヘッド12内のインク流路が、本発明の「第1流路」に相当する。また、インクタンク13bと接続されたチューブ23、及び、ノズル10bに接続されたインクジェットヘッド12内のインク流路が、本発明の「第2流路」に相当する。なお、インクタンク13a、13b及びタンク収容部26については、後ほど詳細に説明する。
【0019】
プラテン14は、インクジェットヘッド12の下方に、インクジェットヘッド12と対向して配置されている。プラテン14は、印刷中の記録用紙Pを下方から支持する。搬送ローラ15、16は、それぞれ、搬送方向におけるプラテン14よりも上流側、及び、プラテン14よりも下流側に配置されている。搬送ローラ15、16は図示しないギヤなどを介して搬送モータ57(
図4参照)に接続されている。搬送モータ57を駆動すると、搬送ローラ15、16が回転し、記録用紙Pが搬送方向に搬送される。
【0020】
そして、印刷部2では、搬送ローラ15、16により、記録用紙Pを搬送方向に所定距離(例えば、ノズル列9の長さ)ずつ搬送し、記録用紙Pを搬送する毎に、キャリッジ11を走査方向に移動させつつ、ノズル10a、10bから記録用紙Pに向けてインクを吐出させることによって、記録用紙Pに印刷を行う。
【0021】
メディアセンサ17は、キャリッジ11に搭載され、インクジェットヘッド12よりも搬送方向の上流側に位置している。メディアセンサ17は、発光素子17aと受光素子17bとを有し、発光素子17aからプラテン14に向けて光を照射したときに受光素子17bで受信される光の光量に基づいて、記録用紙Pの先端を検出する。より詳細に説明すると、プラテン14は表面が黒色になっており、プラテン14上に記録用紙Pが存在していない状態では、プラテン14上に記録用紙Pが存在している場合よりも、受光素子17bで受信される光の光量が小さくなる。このことを利用して、メディアセンサ17では、受光素子17bで受信される光の光量が所定の閾値未満の状態から閾値以上の状態に切り換わることを検出することによって、記録用紙Pの先端がメディアセンサ17と対向する位置に到達したことを検出する。
【0022】
メンテナンスユニット18は、ノズルキャップ31と、切換ユニット32と、吸引ポンプ33と、廃液タンク34とを備えている。ノズルキャップ31は、プラテン14の右側に配置されている。ノズルキャップ31は、キャップ部31aと、キャップ部31aの左側に隣接するキャップ部31bとを有する。また、ノズルキャップ31は、キャップ昇降装置58(
図4参照)によって昇降可能となっている。そして、キャリッジ11をプラテン14よりも右側のメンテナンス位置まで移動させると、ノズル10aがキャップ部31aと対向し、ノズル10bがキャップ部31bと対向する。この状態で、キャップ昇降装置58によりノズルキャップ31を上昇させると、複数のノズル10a、10bがノズルキャップ31に覆われる。より詳細には、ノズル10aがキャップ部31aに覆われ、ノズル10bがキャップ部31bに覆われる。
【0023】
切換ユニット32は、チューブ39a、39bを介してキャップ部31a、31bと接続されている。また、切換ユニット32は、チューブ39cを介して吸引ポンプ33と接続されている。切換ユニット32は、キャップ部31a、31bのいずれかを選択的に吸引ポンプ33と接続させる。吸引ポンプ33はチューブポンプなどである。また、吸引ポンプ33は、チューブ39dを介して廃液タンク34と接続されている。
【0024】
そして、メンテナンスユニット18では、上述したように、複数のノズル10a、10bがノズルキャップ31で覆われた状態で、切換ユニット32により、キャップ部31aを吸引ポンプ33と接続させたうえで、吸引ポンプ33を駆動させる。これにより、複数のノズル10aからインクジェットヘッド12内のブラックインクを排出させる、ブラックの吸引パージ(本発明の「第1ノズルからのインクの排出」)を行うことができる。また、メンテナンスユニット18では、上述したように、複数のノズル10a、10bがノズルキャップ31で覆われた状態で、切換ユニット32により、キャップ部31bを吸引ポンプ33と接続させたうえで、吸引ポンプ33を駆動させる。これにより、複数のノズル10bからインクジェットヘッド12内のカラーインクを排出させる、カラーの吸引パージを行うことができる。
【0025】
<インクタンク及びタンク収容部>
次に、インクタンク13a、13b及びタンク収容部26について詳細に説明する。
図3(a)〜(c)に示すように、インクタンク13a、13bは、直方体形状であり、内部にインクを貯留するための貯留空間41を有している。また、インクタンク13a、13bには、搬送方向における下流側の上端部に、インク補充部42が設けられている。インク補充部42は、貯留空間41に接続された補充流路42aが形成され、補充流路42aの先端部に補充口42bが形成されている。また、インク補充部42には、補充口42bを塞ぐためのタンクキャップ43が取り付けられている。
【0026】
タンク収容部26は走査方向を長手方向とする略直方体の箱状に形成され、内部にインクタンク13a、13bが収容されている。また、タンク収容部26には、搬送方向の下流側の部分に、カバー45が設けられている。カバー45は、その下端部に設けられた、走査方向と平行な揺動軸45aを中心に揺動可能となっている。そして、タンク収容部26は、カバー45を揺動させることで開閉可能となっている。また、タンク収容部26には、カバー45が開いているか閉じているかを検出するためのカバーセンサ46(
図4参照)が設けられている。
【0027】
印刷部2による印刷時などには、
図3(a)、(b)に示すように、カバー45が閉じられており、インクタンク13a、13bへのインクの補充ができないようになっている。このとき、インク補充部42にタンクキャップ43を取り付けた状態とすることにより、貯留空間41内のインクが補充口42bからこぼれるのを防止したり、貯留空間41内のインク中の水分が補充口42bから蒸発するのを抑えたりすることができる。
【0028】
カバー45を開くと、
図3(c)に示すように、インクタンク13a、13bが露出する。この状態で、インク補充部42からタンクキャップ43を取り外すと、補充口42bを介して、インクが充填されたインクボトル40から貯留空間41にインクを補充することができる。
【0029】
また、インクタンク13a、13bは透明の合成樹脂材料で構成される。一方、タンク収容部26のカバー45には、透明の合成樹脂材料で構成された窓部45bが形成されている。これらのことから、ユーザは、カバー45が閉じられている状態で、窓部45b越しに、貯留空間41内に貯留されたインクの量をインクタンク13a、13bの外部から視認することができる。
【0030】
<制御装置>
次に、インクジェットプリンタ1の動作を制御する制御装置50について説明する。
図4に示すように、制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)51、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53、フラッシュメモリー54(本発明の「記憶部」、「メモリー」)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)55等からなり、これらが、印刷部2、読取部5、表示部7などの動作を制御する。また、制御装置50は、カバーセンサ46からの信号に基づいて、カバー45が開かれているか閉じられているかを検出する。また、インクジェットプリンタ1には、メディアセンサ17からの信号に基づいて、記録用紙Pの先端を検出する。制御装置50は、操作部6の操作に応じた信号を受信し、操作部6の操作に応じた処理を行う。
【0031】
また、インクジェットプリンタ1は、ファクシミリポート61(本発明の「第1入力部」)と、通信ポート62(本発明の「第2入力部」)とを備えている。ファクシミリポート61は、電話回線と接続される、ファクシミリを行うためのポートである。インクジェットプリンタ1は、ファクシミリ(本発明の「所定の通信形式」)によって送られてきた印刷データを含むファクシミリデータを、ファクシミリポート61において受信する。通信ポート62は、外部のPC等と接続される、ファクシミリとは異なる通信方式でPC等との通信を行うためのポートである。通信ポート62は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポート、LAN(Local Area Network)ポートなどである。インクジェットプリンタ1は、PC等から送信された印刷データを含む印刷指令を、通信ポートにおいて受信する。なお、
図4では、通信ポート62を1つだけ図示しているが、インクジェットプリンタ1は、例えば、USBポートとLANポートの両方を備えている等、複数の通信ポート62を備えていてもよい。
【0032】
なお、
図4では、CPU51を1つだけ図示しているが、制御装置50は、CPU51を1つだけ備え、この1つのCPU51が一括して処理を行うようになっていてもよいし、CPU51を複数備え、これら複数のCPU51が分担して処理を行うようになっていてもよい。また、
図4では、ASIC55を1つだけ図示しているが、制御装置50は、ASIC55を1つだけ備え、この1つのASIC55が一括して処理を行うようになっていてもよいし、ASIC55を複数備え、これら複数のASIC55が分担して処理を行うようになっていてもよい。
【0033】
<印刷時の制御>
次に、印刷部2において、モノクロ印刷を行うとき(ブラックインクで印刷することを指示する印刷データが入力されたとき)の、制御装置50による制御の流れについて説明する。なお、印刷部2では、カラー印刷を行うことも可能であるが、カラー印刷を行うときの制御装置50の制御については従来と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0034】
ここで、インクジェットプリンタ1では、例えば、インクタンク13aへのブラックインクの補充時に、ユーザが誤ってインクタンク13aに貯留されているブラックインクと物性の異なるブラックインクが充填されたインクボトル40を用いてインクの補充を行うことがあり得る。この場合、物性の異なるブラックインク同士が混ざることで凝集し、凝集したブラックインクがインクジェットヘッド12に到達している可能性がある。なお、物性の異なるブラックインクとは、例えば、顔料のブラックインクと染料のブラックインク、顔料の種類が異なる2種類のブラックインクなどである。
【0035】
インクジェットヘッド12内のブラックインクが凝集していると、インクジェットヘッド12を駆動させても、ノズル10aからブラックインクを吐出させることができない虞がある。そこで、本実施の形態では、制御装置50は、インクジェットプリンタ1の動作中、常に、後述するように、インクタンク13aへのインクの補充に関連する補充条件を満たしているか否かを判定することによって、インクジェットヘッド12内のブラックインクが凝集している可能性があるか否かを判定している。補充条件を満たしているか否かの判定方法については後程詳細に説明する。
【0036】
また、インクジェットプリンタ1では、制御装置50は、印刷後の印刷データをフラッシュメモリー54に記憶させて保存する保存モード、及び、印刷後の印刷データをフラッシュメモリー54に記憶させずに消去する非保存モードのうち、いずれかのモードに選択的に設定可能となっている。例えば、インクジェットプリンタ1では、個人情報保護等の観点から、出荷時(初回の使用前)には、非保存モードに設定されている。そして、制御装置50は、ユーザによる操作部6の操作に応じて、保存モード及び非保存モードのうち、いずれかのモードに選択的に設定可能となっている。また、保存モードに設定されている場合には、例えば、印刷データが入力されたときに、表示部7に対応する画像を表示させ、ユーザに画像を記録用紙Pに印刷させるか否かを選択させることもできる。
【0037】
また、本実施の形態では、インクジェットプリンタ1が受信する印刷データは、PC等からユーザの印刷指令とともに送られる印刷データ、ファクシミリの印刷データ、及び、ファクシミリについてのレポートの印刷データのうち、いずれかの印刷データである。ここで、ファクシミリについてのレポートとは、例えば、ファクシミリを所定件数送受信したときに印刷される、ファクシミリの送受信先の一覧等のことである。上記レポートの印刷データは、制御装置50が生成する。印刷データが、ユーザの印刷指令とともに入力される印刷データである場合と、ファクシミリの印刷データである場合と、上記レポートの印刷データである場合とでは、ヘッダ部分などのデータ形式が異なる。なお、本実施の形態では、ファクシミリ又は上記レポートの印刷データのデータ形式が本発明の「所定のデータ形式」に相当する。
【0038】
そして、印刷部2においてモノクロ印刷を行うときには、制御装置50は、補充条件を満たしていると判定されているか否か、保存モード及び非保存モードのうちどちらのモードに設定されているか、及び、印刷データのデータ形式に基づいて制御を行う。
【0039】
より詳細に説明すると、ブラックインクで印刷することを指示する印刷データが入力されたときに、制御装置50は、
図5のフローに沿った処理を開始する。この処理では、制御装置50は、補充条件を満たしていない場合(S101:NO)、保存モードに設定されている場合(S102:NO)、及び、印刷データのデータ形式がユーザからの印刷指令とともに入力される印刷データのデータ形式である場合(所定のデータ形式でない場合)には(S103:NO)、第1印刷処理を実行して、記録用紙Pに印刷データに対応する画像を印刷させる(S104)。第1印刷処理では、制御装置50は、キャリッジ11を走査方向に移動させつつ、ノズル10aから記録用紙Pに向けてブラックインクを吐出させ、ノズル10bからはカラーインクを吐出させない第1吐出動作を行わせる。ここで、制御装置50は、インクジェットプリンタ1の動作中、常に補充条件を満たしているか否かを判定しているが、S101の判定は、ブラックインクで印刷することを指示する印刷データを受信する直前、又は、上記印刷データを受信した直後における、上記判定の結果に基づいて行う。
【0040】
一方、補充条件を満たしていると判定されており(S101:YES)、且つ、非保存モードに設定され(S102:YES)、且つ、印刷データのデータ形式がファクシミリ又は上記レポートの印刷データのデータ形式である場合には(S103:YES)、第2印刷処理を実行して、記録用紙Pに印刷データに対応する画像を印刷させる(S105)。第2印刷処理では、制御装置50はキャリッジ11を走査方向に移動させつつ、ノズル10a、10bから記録用紙Pに向けて4色のインクを重ねて着弾するように吐出させる第2吐出動作を行わせる。また、第2吐出動作では、各ノズル10a、10bからのインクの吐出量を、第1吐出動作でのノズル10aからのインクの吐出量、及び、ノズル10bのみからインクを吐出させる場合よりも少なくさせる。このとき、ノズル10bからのインクの吐出頻度が、ノズル10aからのインクの吐出頻度よりも高くなるように、印刷データに対応する画像を印刷させるときの、ノズル10a、10bの使用の割り当てを行って、ノズル10a、10bからインクを吐出させる。例えば、印刷データに対応する画像を印刷させるためのノズル10a、10bからのインクの吐出のうち、70%程度をノズル10bからのインクの吐出に割り当て、30%程度をノズル10aからのインクの吐出に割り当てる。
【0041】
ここで、インクタンク13aにブラックインクが補充されなければ、インクジェットヘッド12内のブラックインクが凝集することはない。インクジェットヘッド12内のブラックインクが凝集していなければ、ノズル10aからブラックインクを吐出させることができる。そこで、補充条件を満たしていない場合には、モノクロ印刷を行うときに、第1吐出動作を行わせる。これにより、印刷データに対応するブラックインクで、印刷データに対応する画像を印刷することができる。
【0042】
一方で、インクジェットヘッド12内のブラックインクが凝集している場合に、第1吐出動作を行わせると、ノズル10aからブラックインクが吐出されず、ノズル10bからカラーインクを吐出させないため、画像が印刷されないことがある。このとき、上述のブラックの吸引パージを行わせて、インクジェットヘッド12内の凝集したブラックインクを排出させれば、インクジェットヘッド12を、ノズル10aからブラックインクを吐出可能な状態に復帰させることはできる。しかしながら、非保存モードに設定されている場合、ファクシミリ又は上記レポートの印刷が行われた後に、印刷データが消去される。また、通常、ファクシミリや上記レポートの印刷データの基となるデータはユーザが管理できない。そのため、上述したようにブラックインクが凝集していることで、画像が印刷されなかった場合には、その後、インクジェットヘッド12をノズル10aからブラックインクを吐出可能な状態に復帰させても、再度の印刷を行うことができず問題となる。
【0043】
そこで、本実施の形態では、補充条件を満たしており、且つ、非保存モードに設定されており、且つ、印刷データのデータ形式がファクシミリ又は上記レポートのデータ形式である場合に、第2吐出動作を行わせる。これにより、インクジェットヘッド12内のブラックインクが凝集しており、ノズル10aからブラックインクが吐出されなかったとしても、ノズル10bからカラーインクが吐出される。したがって、印刷に使用されるインクの種類は印刷データに対応したものとは異なるものの、印刷データに対応する画像を印刷することはできる。これにより、印刷データに対応する画像を印刷することができず、再度の印刷も行うことができなくなってしまうことを防止することができる。
【0044】
一方、保存モードに設定されている場合には、印刷データがフラッシュメモリー54に保存される。また、ユーザの印刷指令による印刷の場合には、通常、印刷データの基となるデータがPCに保存されているなど、ユーザがデータを管理できる。そこで、補充条件を満たしていると判定している場合でも、保存モードに設定されている場合、及び、印刷データのデータ形式がユーザの印刷指令とともに入力される印刷データのデータ形式の場合には、第1印刷処理によって画像を印刷させる。
【0045】
インクタンク13aへのブラックインクの補充時に、物性が同じインクが補充されれば、インクジェットヘッド12内のブラックインクが凝集することはない。そして、この場合には、第1印刷処理によって印刷を行うことにより適切に印刷を行うことができる。また、インクジェットヘッド12内のブラックインクが凝集しており、第1印刷処理を行わせたときに、ノズル10aからブラックインクが吐出されず、画像が印刷されなかったとしても、ブラックの吸引パージを行わせた後、フラッシュメモリー54に保存された印刷データ、又は、印刷データの基となるデータを用いて、再度、印刷を行わせることができる。
【0046】
また、本実施の形態では、第2印刷処理において、インクジェットヘッド12に、ノズル10a、10bの両方からインクを吐出させる第2吐出動作を行わせる。これにより、インクジェットヘッド12内のブラックインクが凝集していない場合や、凝集の程度がそれほど大きくない場合には、ノズル10aからブラックインクが吐出される。これにより、第2吐出動作において、ノズル10bからカラーインクを吐出させ、ノズル10aからはブラックインクを吐出させない場合と比較して、印刷される画像の色を第1吐出動作によって印刷される場合の画像の色に近いものとすることができる。
【0047】
また、第2吐出動作では、インクジェットヘッド12内のブラックインクが凝集しておらずノズル10aからブラックインクが吐出されることを考慮して、ノズル10bのみからインクを吐出させて印刷する場合よりも、ノズル10bからのインクの吐出量を少なくする必要がある。しかしながら、このとき、ノズル10bからのインクの吐出量を少なくしすぎると、ノズル10aからブラックインクが吐出されなかった場合に、ユーザが印刷された画像を視認することができない虞がある。
【0048】
そこで、本実施の形態では、ノズル10bからのインクの吐出頻度が、ノズル10aからのインクの吐出頻度よりも高くなるように、印刷データに対応する画像を印刷させるときの、ノズル10a、10bの使用の割り当てをする。これにより、第2吐出動作において、ノズル10aからブラックインクが吐出されなかったとしても、ユーザが印刷された画像を視認することができる。
【0049】
<補充条件を満たしているか否かの判定>
次に、補充条件を満たしているか否かを判定する方法について説明する。本実施の形態では、
図6のフロー沿って処理を行うことで、補充条件を満たしているか否かを判定する。
図6の処理は、例えば、インクジェットプリンタ1に最初にコンセントが接続されたときに開始される。
【0050】
図6の処理について説明すると、制御装置50は、まず、第1判定処理を実行する(S201)。そして、第1判定処理において、補充条件を満たしていないと判定されている間は(S202:NO)、S201に戻って第1判定処理を繰り返す。
【0051】
一方、第1判定処理で補充条件を満たしていると判定された場合には(S202:YES)、制御装置50は第2判定処理を実行する(S203)。そして、第2判定処理において、補充条件を満たしていると判定されている間は(S204:NO)、S203に戻って第2判定処理を繰り返す。第2判定処理において、補充条件を満たしていないと判定された場合には(S204:YES)、S201に戻って第1判定処理を実行する。
【0052】
<第1判定処理>
S201の第1判定処理について説明する。第1判定処理では、
図7に示すように、まず、制御装置50は、インクジェットプリンタ1の最初の使用時からのノズル10aからのブラックインクの消費量の合計である総消費量Cを算出する(S301)。
【0053】
ここで、制御装置50は、インクジェットプリンタ1の最初の使用時からのノズル10aからのインクの吐出回数、ブラックの吸引パージの実行回数をカウントし、フラッシュメモリー54に記憶させている。また、フラッシュメモリー54には、予め、インクタンク13aにおけるインクの最大の貯留量である最大貯留量R1の情報が記憶されている。また、フラッシュメモリー54には、1回のノズル10aからのブラックインクの吐出量の情報や、1回のブラックの吸引パージによるノズル10aからのインクの排出量の情報が記憶されている。また、フラッシュメモリー54には、インクタンク13aへのインクの補充回数Nの情報が記憶されている。インクジェットプリンタ1の最初の使用時に、インクタンク13aにブラックインクが補充されたときに補充回数Nが1に設定される。
【0054】
そして、S301では、フラッシュメモリー54に記憶された、上記ノズル10aからのブラックインクの吐出回数、ブラックの吸引パージの実行回数と、1回のノズル10aからのブラックインクの吐出量の情報、1回のブラックの吸引パージによるノズル10aからのブラックインクの排出量の情報とを用いて、総消費量Cを算出する。
【0055】
続いて、制御装置50は、算出した総消費量Cが最大貯留量R1のN倍の量(N・R1)未満である場合には(S302:NO)、補充条件を満たしていないと判定する(S303)。一方、算出した総消費量Cが上記量(N・R1)以上である場合には(S302:YES)、制御装置50は、補充条件を満たしていると判定し(S304)、補充回数Nを1増加させる(S305)。これにより、補充回数Nが1のときには、総消費量Cが最大貯留量R1未満の場合に、補充条件を満たしていないと判定され、総消費量Cが最大貯留量R1以上の場合に、補充条件を満たしていると判定される。また、補充回数Nが2以上のときには、総消費量Cが([N−1]×R1)以上且つ(N×R1)未満の状態で、補充条件を満たしていないと判定されており、その後、総消費量Cが(N×R1)以上となった場合に、それ以降、補充条件を満たしていると判定される。
【0056】
インクタンク13aにブラックインクが補充されるときに、最大貯留量R1となるまでブラックインクが補充されるとみなした場合、総消費量Cが最大貯留量R1の整数倍の量となる毎に、インクタンク13aへのブラックインクの補充が行われると推定される。そして、インクタンク13aにブラックインクが補充されるときに、上述したように、インクジェットヘッド12内のブラックインクが凝集する可能性がある。そこで、本実施の形態では、上述したように、総消費量Cに応じて、補充条件を満たしているか否かを判定することで、インクジェットヘッド12内のブラックインクが凝集している可能性があるか否かを判定する。
【0057】
<第2判定処理>
次に、S203の第2判定処理について説明する。第2判定処理では、
図8に示すように、制御装置50は、ブラックの吸引パージが行われず(S401:NO)、第1印刷処理による印刷も行われていない場合には、補充条件を満たしていると判定する(S405)。一方、制御装置50は、ブラックの吸引パージが行われることなく(S401:NO)、第1印刷処理による印刷が行われたときに(S402:YES)、印刷回数Npを1増加させる(S403)。印刷回数Npは、補充条件を満たしていると判定され始めてからの、第1印刷処理による印刷回数であり、フラッシュメモリー54に記憶される。
【0058】
続いて、制御装置50は、印刷回数Npが1である場合には(S404:NO)、補充条件を満たしていると判定する(S405)。一方、制御装置50は、印刷回数Npが2である場合には(S404:YES)、補充条件を満たしていないと判定し(S406)、印刷回数Npを0にリセットする(S407)。また、制御装置50は、ブラックの吸引パージが行われたときにも(S401:YES)、補充条件を満たしていないと判定し(S406)、印刷回数Npを0にリセットする(S407)。
【0059】
インクジェットヘッド12内のブラックインクが凝集している場合、第1印刷処理を実行しても、画像が印刷されない。そのため、この場合には、通常、ユーザは、操作部6を操作するなどして、ブラックの吸引パージを行わせてから、再度印刷を行わせる。逆に言えば、第1印刷処理によって印刷が行われた後、ブラックの吸引パージが行われることなく、次に第1印刷処理によって印刷が行われた場合、インクジェットヘッド12内のブラックインクが凝集していないと推定することができる。そこで、本実施の形態では、補充条件を満たしていると判定されている状態で、印刷回数Npが2となった場合に、それ以降、補充条件を満たしていないと判定する。
【0060】
また、インクジェットヘッド12内のブラックインクが凝集している場合に、ブラックの吸引パージを行って、ノズル10aからブラックインクを排出させれば、インクジェットヘッド12から凝集したインクが除去される。そこで、本実施の形態では、補充条件を満たしていると判定されている状態で、ブラックの吸引パージが行われた場合に、それ以降、補充条件を満たしていないと判定する。
【0061】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載の限りにおいて種々の変更が可能である。
【0062】
総消費量Cに基づいて補充条件を満たしているか否かを判定する方法は、上述の実施の形態のものには限られない。例えば、変形例1では、フラッシュメモリー54に、最大貯留量R1の情報に加えて、ブラックインクが充填されたインクボトル40における未使用の状態でのブラックインクの充填量R2の情報が記憶されている。ここで、変形例1では、充填量R2は、最大貯留量R1以下の量である。
【0063】
そして、変形例1では、
図9に示すように、第1判定処理において、上述の実施の形態と同様、総消費量Cを算出する(S501)。そして、補充回数Nが1の場合(S502:YES)、総消費量Cが最大貯留量R1未満のときには(S503:NO)、補充条件を満たしていないと判定する(S504)。一方、総消費量Cが最大貯留量R1以上のときには(S503:YES)、補充条件を満たしていると判定し(S505)、補充回数Nを1増加させる(S506)。
【0064】
一方、補充回数Nが2以上の場合(S502:NO)、総消費量Cが、最大貯留量R1に、充填量R2の[N−1]倍を加えた量(R1+[N−1]・R2)未満のときには(S507:NO)、補充条件を満たしていないと判定する(S504)。総消費量Cが上記量(R1+[N−1]・R2)以上のときには(S507:YES)、補充条件を満たしていると判定し(S505)、補充回数Nを1増加させる(S506)。これにより、変形例1では、補充回数Nが2以上の場合に、総消費量Cが(R1+[N−2]×R2)以上且つ(R1+[N−1]×R2)未満の状態で、補充条件を満たしていないと判定されており、その後、総消費量Cが(R1+[N−1]×R2)以上となった場合に、それ以降、補充条件を満たしていると判定される。
【0065】
インクジェットプリンタ1の最初の使用時に、インクタンク13aに最大貯留量R1となるまでブラックインクが補充されるとみなした場合、総消費量Cが最大貯留量R1となったときに、インクタンク13aへのブラックインクの補充が行われると推定される。そして、インクタンク13aにブラックインクが補充されるときに、上述したように、インクジェットヘッド12内のブラックインクに凝集が生じる可能性がある。そこで、本実施の形態では、補充回数Nが1の場合には、総消費量Cが最大貯留量R1未満の場合には、補充条件を満たしていないと判定し、総消費量Cが最大貯留量R1以上の場合に、補充条件を満たしていると判定する。
【0066】
また、2回目以降のインクタンク13aへのブラックインクの補充時に、インクボトル40に充填されたインクが全てインクタンク13aに補充される(充填量R2のブラックインクが補充される)とみなした場合、総消費量Cが最大貯留量R1に充填量R2の整数倍の量を加えた量となる毎に、インクタンク13aへのブラックインクの補充が行われると推定される。そして、インクタンク13aにブラックインクが補充されるときに、上述したように、インクジェットヘッド12内のブラックインクが凝集する可能性がある。そこで、変形例1では、補充回数Nが2以上の場合に、総消費量Cが(R1+[N−2]×R2)以上且つ(R1+[N−1]×R2)未満の状態で補充条件を満たしていないと判定されており、その後、総消費量Cが(R1+[N−1]×R2)以上となった場合に、それ以降、補充条件を満たしていると判定する。
【0067】
また、上述の実施の形態では、総消費量Cに基づいて補充条件を満たしているか否かの判定を行ったが、これには限られない。変形例2では、
図10に示すように、インクジェットプリンタ100が、インクタンク13a内のブラックインクの残量が所定の低残量以下となったことを検出するための低残量センサ101を備えている。低残量センサ101は、タンク収容部26(
図1参照)等、インクタンク13aの近傍に設けられている。低残量センサ101は、例えば、発光素子と、発光素子から照射された光を受信する受光素子とを有し、インクタンク13a内のブラックインクの残量が所定の低残量以下であるか否かによって、受光素子における受光量が変化するようなセンサである。なお、3つのインクタンク13bに対しても、同様の低残量センサが設けられている。
【0068】
また、変形例2では、制御装置50が、
図11のフローに沿って処理を行うことにより、ブラックインクの補充の完了の検出等を行っている。より詳細に説明すると、制御装置50は、カバーセンサ46の検出結果に基づいて、カバー45が開かれるまで待機する(S601:NO)。そして、カバー45が開かれたときには(S601:YES)、続いて、カバーセンサ46の検出結果に基づいて、カバー45が閉じられるまで待機する(S602:NO)。そして、カバー45が閉じられたときに(S602:YES)、表示部7に、インクの補充を行ったか否か、及び、インクの補充を行った場合にどの色のインクの補充を行ったかの入力をユーザに確認するための補充確認画面を表示させる(S603)。ユーザにより上記確認画面の表示に従って操作部6(本発明の「入力手段」)が操作されて確認の信号が入力されるまで待機し(S604:NO)、ユーザにより確認の信号が入力されたときに(S604:YES)、入力された信号に基づいて、ブラックインクが補充されたか否かを判定する(S605)。
【0069】
インクの補充が行われなかったことを示す信号、又は、カラーインクが補充されたことを示す信号が入力された場合には(S605:NO)、S601に戻る。ブラックインクが補充されたことを示す信号(本発明の「補充完了信号」)が入力された場合には(S605:YES)、フラッシュメモリー54に記憶されたブラックインクの補充回数Nを1増加させるように更新する(S606)。なお、変形例2では、フラッシュメモリー54に記憶されたブラックインクの補充回数Nの情報が、本発明の「補充回数情報」に相当する。そして、第1判定処理を開始させたうえで(S607)、S601に戻る。
【0070】
変形例2の第1判定処理では、制御装置50は、
図12に示すように、低残量センサ101により低残量状態となったことが検出された後に、インクタンク13aへのブラックインクの補充の完了が検出された(S605:YESとなった)か否かを判定する(S701)。そして、低残量センサ101により低残量状態となったことが検出された後に、インクタンク13aへのブラックインクの補充の完了が検出された場合には(S701:YES)、制御装置50は、低残量センサ101により低残量状態となったことが検出されてからの、インクジェットヘッド12からのブラックインクの消費量Dを算出する(S702)。そして、消費量Dが所定の第1閾値S1未満の場合には(S703:NO)、補充条件を満たしていないと判定し(S704)、S701に戻る。一方、消費量Dが所定の第1閾値S1以上の場合には(S703:YES)、補充条件を満たしていると判定し(S705)、第2判定処理を開始させて(S706)、処理を終了する。ここで、第1閾値S1は、上記低残量以下の量である。
【0071】
一方、低残量センサ101により低残量状態となったことが検出される前に、インクタンク13aへのブラックインクの補充の完了が検出された場合には(S701:NO)、制御装置50は、補充回数Nが2回の場合には(S707:YES)、制御装置50は、前回のインクタンク13aのブラックインクの補充が完了した時点からの、インクジェットヘッド12からのブラックインクの消費量Eを算出する(S708)。そして、消費量Eが所定の第2閾値S2未満の場合には(S709:NO)、補充条件を満たしていないと判定し(S704)、S701に戻る。一方、消費量Eが所定の第2閾値S2以上の場合には(S709:YES)、補充条件を満たしていると判定し(S705)、第2判定処理を開始させたうえで(S706)、処理を終了する。ここで、第2閾値S2は、最大貯留量R1以下の量である。
【0072】
また、補充回数Nが3回以上である場合には(S707:NO)、補充条件を満たしていると判定し(S705)、第2判定処理を開始させて(S706)、処理を終了する。これにより、補充回数Nが3回以上である場合には、低残量状態となったことが検出される前に、インクタンク13aのブラックインクの補充が完了したときに、それ以降、補充条件を満たしていると判定される。
【0073】
また、変形例2の第2判定処理では、
図13に示すように、上述の実施の形態のS401〜S406と同様の、S801〜S806の処理を実行する。ただし、変形例2では、上述の実施の形態とは異なり、S805で補充条件を満たしていると判定した後、S801に戻る。また、S806で補充条件を満たしていないと判定した後、処理を終了する。
【0074】
低残量状態となった後にインクタンク13aにインクが補充され、インクタンク13a内のブラックインクが凝集した場合、低残量状態となった後、ノズル10aから所定量のインクが消費されたときに、凝集したブラックインクがインクジェットヘッド12に到達してノズル10aからブラックインクを吐出させることができなくなる。上記所定量は、上記低残量に対応した量であるため、ある程度正確に推定することができる。そこで、変形例2では、低残量状態となったことが検出されてから、インクタンク13aへのインクの補充が完了した場合には、低残量状態になったことを検出した時点からの、ノズル10aからのインクの消費量Dを算出する。そして、消費量Dが第1閾値S1未満の場合に、補充定条件を満たしていないと判定し、消費量Dが第1閾値S1以上の場合に、補充条件を満たしていると判定する。
【0075】
一方、低残量状態となったことが検出される前に、インクタンク13aにブラックインクが補充された場合には、ブラックインクが補充される直前のインクタンク13aにおけるブラックインクの残量がわからず、上記のような推定を行うことができない。
【0076】
ここで、1回目(インクジェットプリンタ1の初回の使用前)のインクタンク13aへのインクの補充時には、第1タンク内のインク量が最大貯留量R1となるまでインクが補充されると推定される。そこで、補充回数Nが2回の場合には、低残量状態となったことが検出される前に、インクタンク13aにブラックインクが補充されたときには、前回(1回目)のインクタンク13aへのブラックインクの補充時からのノズル10aからのインクの消費量Eを算出する。そして、消費量Eが第2閾値S2未満の場合に、補充条件を満たしていないと判定し、消費量Eが第2閾値S2以上の場合に、補充条件を満たしていると判定する。
【0077】
これに対して、2回目以降のインクタンク13aへのブラックインクの補充時には、インクタンク13a内のインク量が最大貯留量R1となるまでインクが補充されない可能性が高い。そこで、補充回数Nが3回以上の場合には、低残量状態となったことが検出される前に、インクタンク13aへのブラックが補充されたときに、補充条件を満たしていると判定する。これにより、実際にインクジェットヘッド12内のブラックインクが凝集している状態で、補充条件を満たしていないと判定されるのを防止することができる。ただし、この場合には、実際にはインクジェットヘッド12内のブラックインクが凝集していない状態で、補充条件を満たしていると判定される期間は長くなることはある。
【0078】
また、変形例2において、インクタンク13aにインクが補充されるときに、常にインク量が最大貯留量R1となるまで補充されるとみなして、補充回数Nが3回以上のときも、補充回数Nが2回のときと同様、消費量Eに基づいて補充条件を満たしているか否かを判定してもよい。
【0079】
また、補充条件を満たしていると判定されている状態で第1印刷処理が行われたときに、ノズル10aからブラックインクが吐出されたか否かを判定する方法は、上述の実施の形態のものには限られない。
【0080】
例えば、変形例3では、制御装置50は、上述の実施の形態と同様、
図6に示すフローに沿って処理を行うことで、補充条件を満たしているか否かを判定する。ただし、変形例3では、第2判定処理が上述の実施の形態と異なる。変形例3の第2判定処理では、
図14に示すように、制御装置50は、ブラックの吸引パージが行われず(S901:NO)、第1印刷処理による印刷も行われていない場合には(S902:NO)、補充条件を満たしていると判定する(S905)。一方、制御装置50は、ブラックの吸引パージが行われることなく(S901:NO)、第1印刷処理による印刷が行われたときに(S902:YES)、メディアセンサ17に画像が記録された記録用紙P上のブラックインクを検出させるためのブラックインク検出処理を実行する(S903)。
【0081】
ブラックインク検出処理では、例えば、表示部7にメッセージを表示させることによって、ユーザに印刷が完了した記録用紙Pを給送部3に供給させる。そして、印刷後の記録用紙Pを搬送させつつ、メディアセンサ17の発光素子17aから、印刷後の記録用紙Pに向けて光を照射させる。記録用紙P上にブラックインクが存在する場合には、存在しない場合と比較して、記録用紙P上で光が反射しにくく、受光素子17bが受信する光の光量が小さくなる。そこで、ブラックインク検出処理では、受光素子17bの受光量が所定の閾値未満の場合に、記録用紙P上にブラックインクが存在することを検出する。
【0082】
そして、メディアセンサ17により記録用紙P上のブラックインクが検出されなかった場合には(S904:NO)、補充条件を満たしていると判定する(S905)。一方、メディアセンサ17により記録用紙P上のブラックインクが検出された場合には(S904:YES)、補充条件を満たしていないと判定する(S906)。また、変形例3でも、上述の実施の形態と同様、ブラックの吸引パージが行われたときには(S901:YES)、補充条件を満たしていないと判定する(S906)。
【0083】
インクタンク13aへのインク補充時に、物性が同じインクが補充された場合には、ブラックインクは凝集しない。そして、この場合には、第1印刷処理で印刷を行ったときに、ノズル10aからブラックインクが吐出され、記録用紙P上にブラックインクが着弾する。そこで、本実施の形態では、補充条件を満たしていると判定されている状態で、第1印刷処理が行われたときに、メディアセンサ17を用いて、記録用紙P上のブラックインクの有無を検出する。そして、記録用紙P上にブラックインクがあると判定された場合には、それ以降、補充条件を満たしていないと判定する。
【0084】
また、変形例3では、記録用紙Pの先端を検出するためのメディアセンサ17を利用して、記録用紙P上のブラックインクの有無を検出したが、これには限られない。例えば、メディアセンサ17とは別に、記録用紙P上のブラックインクの有無を検出するための、発光素子と受光素子とを有する専用のセンサを設けてもよい。この場合、このセンサを、搬送方向におけるインクジェットヘッド12よりも下流側の位置に設ければ、印刷の直後に、記録用紙P上のブラックインクの有無を検出することができる。
【0085】
さらには、補充条件を満たしていると判定されている状態で、第1印刷処理が行われたときに、ノズル10aから正常にブラックインクが吐出されたか否かの判定は行わなくてもよい。例えば、補充条件を満たしていると判定されている状態で、ブラックの吸引パージが行われたときにのみ、それ以降、補充条件を満たしていないと判定するようにしてもよい。
【0086】
また、上述の実施の形態では、印刷データのデータ形式に基づいて、印刷データがユーザの印刷指令とともに入力された印刷データであるか、ファクシミリ又は上記レポートの印刷データであるかを判定したが、これには限られない。例えば、変形例4では、
図15に示すように、上述の実施の形態のS103の判定の代わりに、印刷データが、制御装置50において生成されたものであるか、ファクシミリポート61から入力されたものであるか、通信ポート62から入力されたものであるかを判定する(S1003、S1004)。
【0087】
そして、補充条件を満たしていないと判定されている場合(S1001:NO)、保存モードに設定されている場合(S1002:NO)、及び、印刷データが通信ポート62から入力されたものである場合には(S1003:NO、S1004:NO)、制御装置50は、第1印刷処理を実行して、記録用紙Pに印刷データに対応する画像を印刷させる(S1005)。
【0088】
一方、補充条件を満たしていると判定され(S1001:YES)、且つ、非保存モードに設定され(S1002:YES)、且つ、印刷データが、制御装置50で生成されたものであるか(S1003:YES)、又は、ファクシミリポート61から入力されたものである場合には(S1004:YES)、第2印刷処理を実行して、記録用紙Pに印刷データに対応する画像を印刷させる(S1005)。
【0089】
上述したように、制御装置50は、例えば、ファクシミリを所定件数送受信する毎に、ファクシミリの履歴を印刷するための印刷データを生成し、印刷部2に印刷させる。また、ファクシミリの印刷データは、ファクシミリポート61から入力される。これに対して、ユーザの印刷指令に含まれる印刷データは通信ポート62から入力される。そこで、変形例4では、印刷データが通信ポート62から入力されたものであるか、印刷データが制御装置50において生成されたもの、又は、ファクシミリポート61から入力されたものであるかに応じて、印刷データがユーザからの印刷指令とともに入力されたものであるか、ファクシミリ又は上記レポートの印刷データであるかを判定する。
【0090】
また、上述の実施の形態や変形例3では、ファクシミリ又は上記レポートの印刷データであるか否かを判定していたが、これには限られない。例えば、上述の実施の形態において、印刷データのデータ形式が、ファクシミリ又は上記レポートのデータ形式とは異なる所定のデータ形式であるか否かを判定してもよい。この場合、補充条件を満たしていると判定され、且つ、非保存モードに設定され、且つ、印刷データのデータ形式が上記所定のデータ形式である場合に、第2印刷処理によって画像を印刷させる。
【0091】
あるいは、変形例3において、インクジェットプリンタ1が、ファクシミリとは異なる所定の通信方式で印刷データを受信する第1通信ポート(本発明の「第1入力部」)と、第1通信ポートとは別の通信方式で印刷データを受信する第2通信ポート(本発明の「第2入力部」)とを有し、印刷データが第1、第2通信ポートのどちらから入力されたものであるかを判定してもよい。この場合、補充条件を満たしていると判定され、且つ、非保存モードに設定され、且つ、印刷データが上記所定の通信方式で上記ポートから入力された場合に、第2印刷処理によって画像を印刷させる。
【0092】
また、これらの場合、インクジェットプリンタがファクシミリも行うことが可能なものであることにも限られず、インクジェットプリンタは、ファクシミリ機能を有しないものであってもよい。
【0093】
また、ユーザの印刷指令による印刷であるか否かの判定の方法は、上述の実施の形態や変形例4のものには限られない。例えば、PC等からインクジェットプリンタ1に送られる印刷指令に、印刷データとは別に、ユーザの印刷指令であることを示すデータを含ませておき、ユーザの印刷指令であることを示すデータを受信したか否かによって、ユーザの印刷指令による印刷であるか否かを判定するなどしてもよい。
【0094】
また、補充条件を満たしている場合に、第1印刷処理及び第2印刷処理のどちらにより印刷を行わせるかは、以上に説明したものには限られない。
【0095】
例えば、補充条件を満たしている場合に、ユーザの印刷指令による印刷の場合であっても、第2印刷処理により印刷を行わせてもよい。例えば、ユーザが、インクジェットプリンタへの印刷指令の送信後に、PC等において印刷データの基となるデータを消去してしまうことがある。この場合、モノクロ印刷を行うときに、補充条件を満たす場合に、ユーザの印刷指令による印刷であっても、第2印刷処理によって印刷を行わせることにより、印刷データに対応する画像を印刷することができず、再度の印刷も行うことができなくなってしまうことを防止することができる。
【0096】
あるいは、補充条件を満たしている場合に、保存モードに設定されていても、第2印刷処理により印刷を行わせてもよい。また、この場合には、インクジェットプリンタ1は、保存モード及び非保存モードのいずれかのモードに選択的に設定可能なものではなく、印刷後の印刷データが、常に保存されずに消去されるようになっていてもよい。
【0097】
また、補充条件を満たしているか否かを判定する方法は、以上に説明したものには限られない。例えば、変形例2と同様に、カバー45が開かれた後に閉じられたときに、表示部7に補充確認画面を表示させ、ユーザがこの画面に従って操作部6を操作することによってブラックインクを補充したことを示す信号を入力したときに、補充条件を満たしていると判定してもよい。あるいは、インクタンク13a、13b毎に個別にカバーを設け、インクタンク13aに対応するカバーが開かれた後に閉じられたときに補充条件を満たしていると判定してもよい。
【0098】
また、以上では、補充口42bからインクを補充可能なインクタンク13a、13bを有するインクジェットプリンタに本発明を適用した場合について説明したが、これには限られない。インクカートリッジが取り外し可能に装着されたインクジェットプリンタに本発明を適用することも可能である。この場合には、インクカートリッジが交換されたときに、インクカートリッジとノズルとを接続する流路にインクが補充されることになる。
【0099】
インクカートリッジを交換する際に、ユーザが誤って、それまで装着されていたインクカートリッジに充填されていたブラックインクとは物性の異なるブラックインクが充填されたインクカートリッジを装着してしまうことがあり得る。そして、この場合にも、物性の異なるインクが混ざることでブラックインクが凝集してしまう虞がある。したがって、この場合でも、以上に説明したのと同様に、モノクロ印刷を行うときに、補充条件を満たしている場合などに、第2印刷処理によって印刷を行わせることにより、印刷データに対応するインクとはインクの種類は異なるものの、印刷データに対応する画像を印刷することはできる。また、この場合には、例えば、インクカートリッジが交換されたときに、補充条件を満たしていると判定するようにする。
【0100】
また、上述の実施の形態では、第2吐出動作において、ノズル10a、10bの両方からインクを吐出させたが、これには限られない。第2吐出動作において、ノズル10aからブラックインクを吐出させず、ノズル10bからカラーインクを吐出させてもよい。この場合には、インクジェットヘッド12内のブラックインクが凝集しているか否かによらず、ノズル10aからブラックインクが吐出されることがない。そのため、ノズル10aからインクが吐出される可能性を考慮して、ノズル10bからのインクの吐出量を減らす必要がない。したがって、ノズル10bからのインクの吐出量を、印刷される画像が視認可能な程度に多くすることができる。
【0101】
また、この場合には、ノズル10bからイエロー、シアン、マゼンタの3色のインクを重ねて着弾させたが、これらのうち2色インクを重ねて着弾させてもよいし、ノズル10bから1色のインクのみを吐出させてもよい。
【0102】
また、上述の実施の形態では、吸引パージによってノズル10a、10bからインクジェットヘッド12内の凝集したインクを排出させたが、これには限られない。例えば、チューブ23など、インクタンク13a、13bとインクジェットヘッド12との間の流路に、インクを送るためのポンプが設けられ、このポンプを駆動することで、ノズル10a、10bからインクジェットヘッド12内の凝集したインクを排出させる加圧パージを行うことができるようになっていてもよい。この場合には、上記ポンプが、本発明の「排出装置」に相当する。あるいは、吸引パージと加圧パージの両方を行うことによって、ノズル10a、10bからインクジェットヘッド12内の凝集したインクを排出できるようになっていてもよい。この場合には、メンテナンスユニット8とチューブ23などに設けられるポンプとを合わせたものが、本発明の「排出装置」に相当する。あるいは、インクジェットヘッド12を駆動させてノズル10a、10bからインクを吐出させるフラッシングによって、インクジェットヘッド12内の凝集したインクを排出させてもよい。この場合には、フラッシング時に、印刷時よりもノズル10a、10b内のインクの大きな吐出エネルギーを与えるように、インクジェットヘッド12を駆動させることにより、インクジェットヘッド12内の凝集したインクを排出させることができる。また、この場合には、インクジェットヘッド12が本発明の「排出装置」を兼ねるものとなる。
【0103】
また、以上の例では、インクジェットプリンタが、キャリッジ11とともに走査方向に移動しつつノズル10a、10bからインクを吐出する、いわゆるシリアル式のインクジェットヘッドを備えたものであったが、これには限られない。インクジェットプリンタは、走査方向に記録用紙Pの全長にわたって延びたいわゆるラインヘッドを備えたものであってもよい。このとき、例えば、インクジェットプリンタを、4色のインクを吐出する1つのラインヘッドを備えたものとする。この場合には、この1つのラインヘッドが本発明の「インクジェットヘッド」に相当する。あるいは、インクジェットプリンタを、4色のインクのうち一部の色のインクのみを吐出するラインヘッドが搬送方向に複数並んだものとしてもよい。この場合には、これら複数のラインヘッドを合わせたものが、本発明の「インクジェットヘッド」に相当する。
【0104】
また、以上では、第1インクがブラックインクであり、第2インクがカラーインクである場合を例に挙げて説明を行ったが、第1インク及び第2インクは、上記以外の、互いに異なる別の種類のインクであってもよい。