(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6950360
(24)【登録日】2021年9月28日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】運転席用エアバッグ
(51)【国際特許分類】
B60R 21/233 20060101AFI20210930BHJP
B62D 1/10 20060101ALI20210930BHJP
B60R 21/2338 20110101ALI20210930BHJP
B60R 21/203 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
B60R21/233
B62D1/10
B60R21/2338
B60R21/203
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-163222(P2017-163222)
(22)【出願日】2017年8月28日
(65)【公開番号】特開2019-38449(P2019-38449A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】竹内 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中村 和哉
(72)【発明者】
【氏名】寺村 勉
(72)【発明者】
【氏名】吉田 純子
【審査官】
飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−153747(JP,A)
【文献】
特開2006−213097(JP,A)
【文献】
特開2017−065394(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/061163(WO,A1)
【文献】
特開2007−055577(JP,A)
【文献】
特開2014−172570(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0104351(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−21/33
B62D 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1チャンバと、該第1チャンバの周囲を周回する第2チャンバとを備える運転席用エアバッグであって、
略筒状のインナパネルと、
前記インナパネルの側周を取り巻いて周方向に配列された複数枚のサイドパネルと、
を有し、
隣接する前記サイドパネルの側辺同士が結合されており、
前記サイドパネルの反乗員側の一端部は前記インナパネルの反乗員側の周縁部に結合されており、
前記サイドパネルの他端部は、前記インナパネルの乗員側と反乗員側との途中部分に結合されており、
前記第2チャンバは前記インナパネル及び前記サイドパネルで囲まれており、
前記インナパネルに、該インナパネルの内側の前記第1チャンバと該インナパネルの外周側の前記第2チャンバとを連通する連通口が設けられており、
前記インナパネルの乗員側と反乗員側との間の径を絞るようにテザーが設けられていることを特徴とする運転席用エアバッグ。
【請求項2】
請求項1の運転席用エアバッグにおいて、
中央部にインフレータ用開口が設けられ、周縁部が前記インナパネルの反乗員側の周縁部及び前記サイドパネルの反乗員側の一端部に結合されたボトムパネルと、
周縁部が前記インナパネルの乗員側の周縁部に結合されたトップパネルと、
をさらに備えることを特徴とする運転席用エアバッグ。
【請求項3】
請求項2の運転席用エアバッグにおいて、膨張した運転席用エアバッグの乗員対向面にあっては、トップパネルとサイドパネルとの間に凹陥部が存在することを特徴とする運転席用エアバッグ。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項の運転席用エアバッグにおいて、前記連通口は、前記インナパネルの反乗員側に設けられていることを特徴とする運転席用エアバッグ。
【請求項5】
請求項4の運転席用エアバッグにおいて、前記連通口は、前記インナパネルの反乗員側を切り欠いた形状を有することを特徴とする運転席用エアバッグ。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項の運転席用エアバッグにおいて、前記インナパネルは、帯状パネルの長手方向の両端が連結された筒状であることを特徴とする運転席用エアバッグ。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項の運転席用エアバッグにおいて、前記サイドパネルは6〜8枚配列されていることを特徴とする運転席用エアバッグ。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれか1項の運転席用エアバッグにおいて、前記サイドパネルは単独形状のサイドパネルを複数枚連ねた多連形状のものであることを特徴とする運転席用エアバッグ。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項の運転席用エアバッグにおいて、前記インナパネルの乗員側の径が反乗員側の径よりも小さいことを特徴とする運転席用エアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングに設置される運転席用エアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
運転席用のエアバッグ装置としては、リテーナに取り付けられて折り畳まれたエアバッグをモジュールカバーと称されるカバー部材で覆ったものが多く使用されている。
【0003】
車両の衝突がセンサによって検知されると、インフレータが作動し、インフレータから発生したガスによってエアバッグが膨張展開する。
【0004】
特許文献1には、初期膨張時の乗員側への突出を抑制し、かつ斜め方向に移動する乗員を拘束することができる運転席用エアバッグが記載されている。特許文献1では、テザーによって運転席用エアバッグの乗員側とインフレータ用開口部とを連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−65394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、膨張厚みを大きくすることができると共に、膨張直径を抑制することができる運転席用エアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の運転席用エアバッグは、第1チャンバと、該第1チャンバの周囲を周回する第2チャンバとを備える運転席用エアバッグであって、略筒状のインナパネルと、前記インナパネルの側周を取り巻いて周方向に配列された複数枚のサイドパネルと、を有し、隣接する前記サイドパネルの側辺同士が結合されており、前記サイドパネルの反乗員側の一端部は前記インナパネルの反乗員側の周縁部に結合されており、前記サイドパネルの他端部は、前記インナパネルの乗員側と反乗員側との途中部分に結合されており、前記第2チャンバは前記インナパネル及び前記サイドパネルで囲まれており、前記インナパネルに、該インナパネルの内側の前記第1チャンバと該インナパネルの外周側の前記第2チャンバとを連通する連通口が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様では、中央部にインフレータ用開口が設けられ、周縁部が前記インナパネルの反乗員側の周縁部及び前記サイドパネルの反乗員側の一端部に結合されたボトムパネルと、周縁部が前記インナパネルの乗員側の周縁部に結合されたトップパネルと、をさらに備える
【0009】
本発明の一態様では、膨張した運転席用エアバッグの乗員対向面にあっては、トップパネルとサイドパネルとの間に凹陥部が存在する。
【0010】
本発明の一態様では、前記連通口は、前記インナパネルの反乗員側に設けられている。
【0011】
本発明の一態様では、前記連通口は、前記インナパネルの反乗員側を切り欠いた形状を有する。
【0012】
本発明の一態様では、前記インナパネルは、帯状パネルの長手方向の両端が連結された筒状である。
【0013】
本発明の一態様では、前記サイドパネルは6〜8枚配列されている。
【0014】
本発明の一態様では、前記サイドパネルは単独形状のサイドパネルを複数枚連ねた多連形状のものである。
【0015】
本発明の一態様では、前記インナパネルの乗員側の径が反乗員側の径よりも小さい。
【0016】
本発明の一態様では、前記インナパネルの乗員側と反乗員側との間の径を絞るようにテザーが設けられている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の運転席用エアバッグは、膨張厚みが大きく、しかも膨張直径が過大ではないものとすることができる。本発明では、乗員対向面のトップパネル周囲に凹陥部が形成されることにより、斜め衝突又は微小オーバーラップ衝突したときに乗員を拘束するのに好適なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態に係る運転席用エアバッグの膨張時の斜視図である。
【
図4】実施の形態に係る運転席用エアバッグの分解斜視図である。
【
図5】実施の形態に係る運転席用エアバッグの各パネルの平面図である。
【
図6】別の実施の形態に係る運転席用エアバッグの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1〜5を参照して実施の形態に係る運転席用エアバッグ1について説明する。
【0020】
この運転席用エアバッグ(以下、エアバッグということがある。)1は、ステアリングホイールのハブ部に設置される運転席用エアバッグ装置用のものであり、運転席乗員の前方に膨張展開する。
【0021】
この運転席用エアバッグ1は、膨張展開した状態において、エアバッグ1のハブ部側を構成するボトムパネル2と、該ボトムパネル2に連なる略筒状のインナパネル3と、該インナパネル3に連なり、乗員に対面するトップパネル4と、運転席用エアバッグ1の側周を構成するサイドパネル5とを備えている。
【0022】
ボトムパネル2は、直径がステアリングホイールと略同等程度の円形のパネルであり、中央にインフレータ用開口2aが設けられ、周縁近傍にベントホール2b(
図3)が設けられている。インフレータ用開口2aの周囲には、ボルト挿通孔2dが設けられている。
【0023】
インナパネル3は、
図5に示される帯状のパネルの両端3a,3bを縫合糸で縫合して略円筒状としたものである。インナパネル3のボトムパネル2側には、逆U字形に切り欠いた形状の連通口3dが設けられており、連通口3d,3d間は脚片部3cとなっている。脚片部3cの先端は縫合糸11によってボトムパネル2の周縁部2c及びサイドパネル5の下端部5bに縫合されている。
【0024】
トップパネル4は円形であり、インナパネル3の乗員側の先端部3fに対しトップパネル4の周縁部4fが縫合糸12によって縫合されている。
【0025】
サイドパネル5は、インナパネル3の外周を取り巻いて、複数枚(この実施の形態では8枚)配置されている。各サイドパネル5は、運転席用エアバッグ1の側周面を構成するサイドパネルアウタ部5aと、該サイドパネルアウタ部5aに連なるサイドパネル下縁部5bと、サイドパネルアウタ部5aの乗員側に連なるサイドパネルトップ部5cと、サイドパネルトップ部5cに連なり、インナパネル3の外周面に沿って反乗員方向に延在するサイドパネルインナ部5dとを有する。
【0026】
サイドパネルインナ部5dの下縁部は、縫合糸13(
図2)によってインナパネル3の筒軸心線方向の途中部に縫合されている。縫合糸13による縫合位置は、連通口3dよりも若干先端部3f側である。
【0027】
隣接する各サイドパネル5の側辺部5s同士は縫合糸14(
図3)によって縫合されている。
【0028】
図2の通り、膨張したエアバッグ1内は、ボトムパネル2、インナパネル3及びトップパネル4で囲まれた中央側の第1チャンバC
1と、インナパネル3とサイドパネル5とで囲まれた側周側の第2チャンバC
2とからなる。第1チャンバC
1,C
2は連通口3dを介して連通している。第2チャンバC
2は第1チャンバC
1の周囲をステアリングホイールに沿って周回している。
【0029】
このエアバッグ1は、インフレータ用開口2aに沿ってエアバッグ1内に配置された取付用リング(図示略)によって、運転席用エアバッグ装置のリテーナ(図示略)に取り付けられる。この取付用リングには複数のスタッドボルトが設けられており、該スタッドボルトがボルト挿通孔2dと、インフレータのフランジ部のボルト挿通孔と、リテーナのボルト挿通孔とに差し通され、ナット締めされることにより、運転席用エアバッグ1及びインフレータがリテーナに固定される。
【0030】
運転席用エアバッグ1は折り畳まれ、運転席用エアバッグ装置モジュールカバーで覆われる。
【0031】
このように構成されたエアバッグ装置においては、車両衝突時等に、インフレータが作動してエアバッグ1内にガスが噴出する。エアバッグ1は、このガスにより膨張してモジュールカバーを押し開き、ステアリングホイールと乗員との間に膨張展開して運転席乗員を拘束する。
【0032】
このエアバッグ1にあっては、インフレータからのガスは第1チャンバC
1内に供給され、まず第1チャンバC
1を膨張させる。また、このガスは連通口3dを介して第2チャンバC
2に流入して第2チャンバC
2を膨張させる。
【0033】
膨張したエアバッグ1にあっては、第1チャンバC
1を取り囲むインナパネル3の乗員側の径(例えば縫合糸12付近の径)は反乗員側の径(例えば縫合糸11付近の径)よりも小さい。なお、縫合糸11付近の径は、連通口3dの大きさによって調整することができる。
【0034】
膨張したエアバッグ1の乗員対向面にあっては、トップパネル4及びサイドパネルトップ部5cは乗員方向に膨出し、両者の間に凹陥部Rが形成される。この凹陥部Rは、トップパネル4の周囲を周回している。
【0035】
このエアバッグ1にあっては、
図5に示すインナパネル3の短手幅W及びサイドパネル5の長手方向長さXを選定することにより、
図2に示す膨張厚みL(ステアリングシャフト軸心線方向の寸法)が大きく、しかも直径Dはステアリングホイールの直径よりも若干大きい程度のものとなる。膨張厚みLは250〜350mm特に300〜330mm程度が好適である。膨張直径Dは350〜560mm特に500〜560mm程度が好適である。なお、
図5の平面図におけるインナパネル2の直径は350〜450mm特に400〜450mm程度が好適であり、トップパネル4の直径は200〜350mm特に200〜250mm程度が好適である。
【0036】
また、インナパネル3の短手幅W及びサイドパネル5の長手方向長さXを選定することにより、膨張したエアバッグ1のトップパネル4の最乗員側の面P
1と、サイドパネルトップ部5cの最乗員側の面P
2との間隔ΔLを小さくすることができる。このΔLは30〜50mm特に約30mm程度が好適である。ただし、これに限定されるものではなく、トップパネル4の最乗員側の面P
1は、サイドパネルトップ部5cの最乗員側の面P
2と面一となってもよく、それよりも反乗員側となってもよく、ΔLは±50mm程度であればよい。
【0037】
膨張したエアバッグ1の膨張厚みLが大きく、またサイドパネルトップ部5cの最乗員側の面P
2とトップパネル4の最乗員側の面P
1との間隔ΔLが小さく、しかもトップパネル4のサイドパネルトップ部5cとの間に凹陥部Rが形成されることにより、斜め衝突又は微小オーバーラップ衝突したときに乗員を拘束するのに好適なものとなる。
【0038】
本発明では、
図6の運転席用エアバッグ1’のように、インナパネル3の乗員側と反乗員側との間の径を絞ってくびれ部を形成するようにテザー19を設けてもよい。この絞り(くびれ)寸法はインナパネル3の連通口3dを形成する切り欠き方により調整が可能である。このくびれ部を形成した運転席用エアバッグ1’にあっては、乗員がバッグに進入してきた際にくびれ部で反力が生まれるので、底付きを回避することができる。
【0039】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の種々の形態をとることができる。例えば、サイドパネル5の数は8枚に限定されず、6〜12枚程度であればよく、6〜8枚程度が好ましい。また、脚片部3cの数も4個に限定されず、3〜8個程度であればよい。
【0040】
本発明では、単独形状のサイドパネル5の代りに、単独形状のサイドパネル5を複数枚連ねた形状の多連形サイドパネルを用いてもよい。
図7は単独形状の2枚のサイドパネル5を連ねた形状の2連形サイドパネル5Wを示している。多連形サイドパネルを用いると、サイドパネル同士の縫合の手間を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0041】
1,1’ 運転席用エアバッグ
2 ボトムパネル
3 インナパネル
3c 脚片部
3d 連通口
4 トップパネル
5 サイドパネル
11〜14 縫合糸
19 テザー
C
1 第1チャンバ
C
2 第2チャンバ