(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一態様に係る蓄電モジュールは、複数の蓄電素子と、前記蓄電素子の間に配置される仕切部材とを備え、前記仕切部材が、ガラス繊維を主体とするガラス紙シートと、内部空間に前記ガラス紙シートを収容する袋体とを有し、前記袋体の内部空間が減圧されている。
【0015】
当該蓄電モジュールは、前記仕切部材が、ガラス繊維を主体とするガラス紙シートと、内部空間に前記ガラス紙シートを収容する袋体とを有し、前記袋体の内部空間が減圧されている。前記仕切部材は、ガラス紙シートを芯材とする非常に薄い真空断熱材であってもよい。通常の使用状態ではないが何らかの原因によりいずれかの蓄電素子が過熱状態となった場合にも、前記仕切部材が過熱状態の蓄電素子から隣接する蓄電素子への熱伝導を抑制することができるため、蓄電素子間の過熱状態の連鎖を防止することができる。
【0016】
当該蓄電モジュールは、各蓄電素子の前記仕切部材に対向する面とは異なる面に隣接する冷却部材をさらに備えてもよい。この構成によって、冷却部材が蓄電素子を冷却して、通常の使用状態で蓄電素子に熱が蓄積されることを抑制することができる。
【0017】
前記冷却部材が、内部に冷媒が通るよう構成されてもよい。この構成によって、前記蓄電素子をより効果的に冷却することができる。
【0018】
前記袋体が、金属層を有してもよい。この構成によって、前記袋体のシール性を向上することができ、当該蓄電モジュールの耐用年数を長くすることができる。
【0019】
前記袋体が、前記金属層を形成するアルミニウム箔と、樹脂フィルムとを接合したラミネートシートから形成されてもよい。この構成によって、前記袋体が安価でガスバリア性に優れるものとなる。
【0020】
前記蓄電素子が、直方体状に形成され、前記仕切部材が前記蓄電素子の長側面の間に圧迫保持されてもよい。この構成によって、蓄電素子と仕切部材との間にデッドスペースが形成されないので、当該蓄電モジュールのエネルギー密度をさらに大きくすることができる。
【0021】
本発明の別の態様に係る蓄電パックは、前記複数の蓄電モジュールと、前記複数の蓄電モジュールを保持するホルダとを備える。当該蓄電パックは、蓄電モジュールが前記仕切部材を有することで蓄電素子間の過熱状態の連鎖を防止できる。
【0022】
当該電池パックは、隣接し合う前記蓄電モジュールの間に配置される隔離部材をさらに備え、前記隔離部材が、ガラス繊維を主体とするガラス紙シートと、内部空間に前記ガラス紙シートを収容する袋体とを有し、前記袋体の内部空間が減圧されていてもよい。この構成によって、蓄電モジュール間で隣接する蓄電素子の間隔を小さくしても、前記隔離部材により蓄電素子間の過熱状態の連鎖を防止することができる。
【0023】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0024】
図1に、本発明の一実施形態に係る蓄電モジュール1を示す。当該蓄電モジュール1は、複数の蓄電素子2と、蓄電素子2の間に1つずつ配置される仕切部材3とを備える。また、当該蓄電モジュール1は、蓄電素子2及び仕切部材3を保持する保持部材4と、複数の蓄電素子2を電気的に接続するバスバー5と、複数の蓄電素子2を冷却する冷却部材6とをさらに備える。
【0025】
蓄電素子2は、ケース7の中に、正極板及び負極板をセパレータを介して積層して形成される電極体が電解液に浸漬される状態で封入されていてもよい。
【0026】
ケース7は、例えば金属箔と樹脂フィルムとを接合したラミネートシートから形成される可撓性の袋体であってもよいし、樹脂や金属から形成される堅固な容器であってもよい。図示するように、ケース7は、強度に優れると共にデッドスペースを小さくできる箱型(直方体形状)の金属製容器であってもよい。
【0027】
ケース7には、一対の外部端子(正極外部端子8及び負極外部端子9)が設けられる。正極外部端子8は電極体の正極板に電気的に接続され、負極外部端子9は、電極体の負極板に電気的に接続される。
【0028】
電極体としては、平板状の複数の正極板、負極板及びセパレータを積層して形成される積層タイプのものを用いることが、空間効率を向上してエネルギー密度を大きくできることから好ましい。代替的に、電極体として、長尺の正極板、負極板及びセパレータを断面視扁平状に巻回して形成される巻回タイプのものを用いてもよい。
【0029】
積層タイプの電極体において積層される正極板の枚数は、蓄電素子2を高容量化するために、例えば40乃至60枚とすることができる。積層タイプの電極体では、電析による内部短絡を抑制するために、積層方向両側において正極板よりも外側に負極板が配置されることが好ましい。従って、負極板の枚数は、正極板の枚数よりも1枚多いことが好ましい。
【0030】
電極体の正極板は、導電性を有する箔状乃至シート状の正極基材と、この正極基材の両面に積層される正極活物質層とを有する構成とすることができる。
【0031】
正極板の正極基材の材質としては、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル等の金属又はそれらの合金が用いられる。これらの中でも、導電性の高さとコストとのバランスからアルミニウム、アルミニウム合金、銅及び銅合金が好ましく、アルミニウム及びアルミニウム合金がより好ましい。また、正極基材の形状としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの面から箔が好ましい。つまり、正極基材としてはアルミニウム箔が好ましい。なお、アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS−H4000(2014)に規定されるA1085P、A3003P等が例示できる。
【0032】
正極板の正極活物質層は、正極活物質を含むいわゆる合材から形成される多孔性の層である。また、正極活物質層を形成する合材は、必要に応じて導電剤、結着剤(バインダ)、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。
【0033】
前記正極活物質としては、例えばLi
xMO
y(Mは少なくとも一種の遷移金属を表す)で表される複合酸化物(Li
xCoO
2、Li
xNiO
2、Li
xMn
2O
4、Li
xMnO
3、Li
xNi
αCo
(1−α)O
2、Li
xNi
αMn
βCo
(1−α−β)O
2、Li
xNi
αMn
(2−α)O
4等)、Li
wMe
x(XO
y)
z(Meは少なくとも一種の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、V等を表す)で表されるポリアニオン化合物(LiFePO
4、LiMnPO
4、LiNiPO
4、LiCoPO
4、Li
3V
2(PO
4)
3、Li
2MnSiO
4、Li
2CoPO
4F等)が挙げられる。これらの化合物中の元素又はポリアニオンは他の元素又はアニオン種で一部が置換されていてもよい。正極活物質層においては、これら化合物の一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。また、正極活物質の結晶構造は、層状構造又はスピネル構造であることが好ましい。
【0034】
負極板は、導電性を有する箔状乃至シート状の負極基材と、この負極基材の両面に積層される多孔性の負極活物質層とを有する。
【0035】
負極板の負極基材の材質としては、銅又は銅合金が好ましい。また、負極基材の形状としては、箔が好ましい。つまり、負極板の負極基材としては銅箔が好ましい。負極基材として用いられる銅箔としては、例えば圧延銅箔、電解銅箔等が例示される。
【0036】
負極活物質層は、負極活物質を含むいわゆる合材から形成される多孔性の層である。また、負極活物質層を形成する合材は、必要に応じて導電剤、結着剤(バインダ)、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。
【0037】
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材質が好適に用いられる。具体的な負極活物質としては、例えばリチウム、リチウム合金等の金属、金属酸化物、ポリリン酸化合物、例えば黒鉛、非晶質炭素(易黒鉛化性炭素又は難黒鉛化性炭素)等の炭素材料などが挙げられる。
【0038】
前記負極活物質の中でも、正極板と負極板との単位対向面積当たりの放電容量を好適な範囲とする観点から、Si、Si酸化物、Sn、Sn酸化物又はこれらの組み合わせを用いることが好ましく、Si酸化物を用いることが特に好ましい。なお、SiとSnとは、酸化物にした際に、黒鉛の3倍程度の放電容量を持つことができる。
【0039】
セパレータは、電解液が浸潤するシート状乃至フィルム状の材料から形成される。セパレータを形成する材料としては、例えば織布、不織布等を用いることもできるが、典型的には多孔性を有するシート状乃至フィルム状の樹脂が用いられる。このセパレータは、正極板と負極板とを隔離すると共に、正極板と負極板との間に電解液を保持する。
【0040】
このセパレータの主成分としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、塩素化ポリエチレン等のポリオレフィン誘導体、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートや共重合ポリエステル等のポリエステルなどを採用することができる。中でも、セパレータの主成分としては、耐電解液性、耐久性及び溶着性に優れるポリエチレン及びポリプロピレンが好適に用いられる。
【0041】
セパレータは、両面又は片面(好ましくは正極板に対向する面)に耐熱層又は耐酸化層を有することが好ましい。「耐熱層」は、セパレータの熱による破損を防止して、正極板と負極板との短絡をより確実に防止するものを意味する。一方、「耐酸化層」は、高電圧環境下でセパレータを保護するが、セパレータに十分な耐熱性を与えないものを意味する。
【0042】
セパレータの耐熱層又は対酸化層は、多数の無機粒子と、この無機粒子間を接続するバインダとを含む構成とすることができる。
【0043】
無機粒子の主成分としては、例えばアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄等の酸化物、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物、シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレイ、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウムなどが挙げられる。中でも、耐熱層又は耐酸化層の無機粒子の主成分としては、アルミナ、シリカ及びチタニアが特に好ましい。
【0044】
電極体は、正極板から延び、正極板を正極外部端子8に接続するための正極タブ、及び負極板から延び、負極板を負極外部端子9に接続するための負極タブを有することが好ましい。
【0045】
正極タブ及び負極タブは、正極板及び負極板の正極基材及び負極基材を、活物質層が積層されている方形状の領域からそれぞれ帯状に突出するよう延長して形成することができる。
【0046】
正極タブと負極タブとは、電極体の積層方向視において互いに重ならないよう、ケース7の中のデッドスペースを小さくするために、正極板及び負極板から同じ方向に突出するよう配設されることが好ましい。各正極板及び負極板から延びた正極タブ及び負極タブは、それぞれ積層されて束ねられ、正極外部端子8及び負極外部端子9、又は正極外部端子8及び負極外部端子9に取り付けられる導電性の正極集電部材及び負極集電部材に接続することができる。
【0047】
電極体と共にケース7に封入される電解液としては、蓄電素子に通常用いられる公知の電解液が使用でき、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)等の環状カーボネート、又はジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状カーボネートを含有する溶媒に、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF
6)等を溶解した溶液を用いることができる。
【0048】
仕切部材3は、
図2に詳しく示すように、ガラス繊維を主体とするガラス紙シート10と、内部空間にガラス紙シート10を収容する袋体11とを有し、袋体11の内部空間が減圧されている。つまり、仕切部材3は、内部空間の圧力が大気圧よりも低い真空状態(低真空を含む)とされている。仕切部材3は、袋体11がガラス紙シート10に密着した板状体となっている。
【0049】
袋体11の内部空間の圧力の下限としては、10kPaが好ましく、50kPaがより好ましい。一方、袋体11の内部空間の圧力の上限としては、95kPaが好ましく、90kPaがより好ましい。袋体11の内部空間の圧力を前記下限以上とすることによって、一般的な真空ポンプを使用して仕切部材3を比較的安価に製造することができる。また、袋体11の内部空間の圧力を前記上限以下とすることによって、断熱性を向上することができる。
【0050】
ガラス紙シート10は、ガラス繊維を抄紙して形成されるシートであり、ガラス繊維の間に空隙を有する。仕切部材3において、ガラス紙シート10の空隙内は真空になっている。逆にいうと、ガラス紙シート10は、袋体11の内部空間を減圧したときに、袋体11の内部空間の容積を保持する芯材として使用されている。このように、ガラス紙シート10の空隙が真空状態とされていることによって、仕切部材3は熱伝導率が小さくなっている。
【0051】
ガラス紙シート10は、ガラス繊維を抄紙して形成されるため、ガラス繊維が略面方向に延びるよう配置され、厚さ方向にはガラス繊維同士が小さい面積で互いに接触し合う構成となっている。このため、ガラス紙シート10は、面方向への熱伝導率に比して厚さ方向への熱伝導率が小さい。従って、このガラス紙シート10を芯材とした仕切部材3は、厚さ方向への熱伝導率が非常に小さい。
【0052】
ガラス紙シート10の平均厚さの下限としては、0.2mmが好ましく、0.3mmがより好ましい。一方、ガラス紙シート10の平均厚さの上限としては、1.0mmが好ましく、0.8mmがより好ましい。ガラス紙シート10の平均厚さを前記下限以上とすることによって、ガラス紙シート10が袋体11の中に十分な空隙を形成して仕切部材3に十分な断熱性を付与することができる。また、ガラス紙シート10の平均厚さを前記上限以下とすることによって、当該蓄電モジュール1におけるガラス紙シート10の占有体積を小さくして、エネルギー密度を向上することができる。
【0053】
大気圧下でのガラス紙シート10の空隙率の下限としては70%が好ましく、80%がより好ましい。一方、大気圧下でのガラス紙シート10の空隙率の上限としては、97%が好ましく、95%がより好ましい。大気圧下でのガラス紙シート10の空隙率を前記下限以上とすることによって、ガラス紙シート10が十分な断熱性を有するものとなる。また、大気圧下でのガラス紙シート10の空隙率を前記上限以下とすることによって、ガラス紙シート10が十分な圧縮強度を有するものとなるので、減圧時に空隙を保持して真空による断熱性を大きくすることができる。なお、「空隙率」は、シクネスゲージで測定した厚みを用いてガラス紙シートの単位面積当たりの体積を算出し、ガラス繊維の比重とガラス紙シートの単位面積当たりに使用したガラス繊維の重量とからガラス紙シートの単位面積当たりのガラス繊維の体積を算出し、これらの体積の差分のガラス紙シートの単位面積当たりの体積に対する比率として算出される値である。
【0054】
また、蓄電素子2に200kPaの圧力をかけた状態でのガラス紙シート10の空隙率の下限としては、45%が好ましく、50%がより好ましい。一方、蓄電素子2に200kPaの圧力をかけた状態でのガラス紙シート10の空隙率の上限としては、80%が好ましく、75%がより好ましい。ガラス紙シート10は、袋体11の減圧によって圧縮されるだけでなく、後述するように、当該蓄電モジュール1内で蓄電素子2に挟み込まれて200kPa程度の圧力で圧迫され得る。このため、蓄電素子2に200kPaの圧力をかけた状態でのガラス紙シート10の空隙率を前記下限以上とすることによって、仕切部材3が十分な空隙を有するものとなる。また、蓄電素子2に200kPaの圧力をかけた状態でのガラス紙シート10の空隙率を前記上限以下とすることによって、ガラス紙シート10の強度を確保することができる。
【0055】
ガラス紙シート10を形成するガラス繊維の平均径の下限としては、0.2μmが好ましく、0.3μmがより好ましい。一方、ガラス紙シート10を形成するガラス繊維の平均径の上限としては、1.5μmが好ましく、1.0μmがより好ましい。ガラス紙シート10を形成するガラス繊維の平均径を前記下限以上とすることによって、ガラス紙シート10を十分な強度を有するものとすることができる。また、ガラス紙シート10を形成するガラス繊維の平均径を前記上限以下とすることによって、ガラス紙シート10を十分な断熱性を有するものとすることができる。
【0056】
ガラス紙シート10は、バインダを含むことができる。ガラス紙シート10に含まれるバインダとしては、例えばアクリル樹脂、ポリエステル、ポリプロピレン、フッ素樹脂等の高分子バインダ、例えば珪酸ナトリウム等の無機バインダなどを用いることができる。
【0057】
袋体11は、ガスバリア性を有するシートから形成される。袋体11は、1枚のシートを折り返して、折り曲げ線以外の外縁(3方)を接着することで形成してもよく、2枚のシートを重ねて外縁全周(4方)を接着することで形成してもよい。
【0058】
袋体11は、高度なガスバリア性を確保するために、金属層12を有すること、つまり袋体11を形成するシートが金属層12を有することが好ましい。袋体11が金属層12を有することで、仕切部材3ひいては当該蓄電モジュール1の寿命を十分に長くすることができる。
【0059】
袋体11の金属層12の材質としては、例えばアルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、銅等を挙げることができる。中でも、袋体11の金属層12の材質としては、安価でガスバリア性及び取り扱い性に優れるアルミニウムが特に好ましい。
【0060】
袋体11の金属層12の平均厚さの下限としては、40μmが好ましく、80μmがより好ましい。一方、袋体11の金属層12の平均厚さの上限としては、300μmが好ましく、200μmがより好ましい。袋体11の金属層12の平均厚さを前記下限以上とすることによって、袋体11のガスバリア性が大きくなることで仕切部材3に十分な寿命を付与することができる。また、袋体11の金属層12の平均厚さを前記上限以下とすることによって、仕切部材3が厚くなって当該蓄電モジュール1のエネルギー密度を低下させることを防止できると共に、製造コストの増大を防止できる。
【0061】
袋体11は(つまり袋体11を形成するシートは)、金属層12の外面を保護する樹脂製の被覆層13をさらに有することが好ましい。袋体11の被覆層13は、金属層12の表面を被覆し、金属層12が引っ掻き等で損傷してガスバリア性が損なわれることを防止して、仕切部材3の取り扱い性を向上する。具体的には、袋体11を形成するシートとしては、金属層12を構成する金属箔と被覆層13を構成する樹脂フィルムとを接合したラミネートシートを用いることが好ましい。
【0062】
被覆層13の材質としては、例えばポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート等を挙げることができる。
【0063】
被覆層13の平均厚さの下限としては、10μmが好ましく、15μmがより好ましい。一方、被覆層13の平均厚さの上限としては、200μmが好ましく、100μmがより好ましい。被覆層13の平均厚さを前記下限以上とすることによって、被覆層13の強度が十分となり、金属層12の保護が担保される。また、被覆層13の平均厚さを前記上限以下とすることにより、仕切部材3の厚さが大きくなることを防止できる。
【0064】
袋体11を形成するシートは、ヒートシールによる接着を可能にするよう、金属層12の内面側に樹脂製の接着層14をさらに有することが好ましい。従って、つまり袋体11を形成するシートとしては、金属層12を構成する金属箔と接着層14を構成する樹脂フィルムとを接合したラミネートシートを用いることが好ましく、金属層12を形成する金属箔と、被覆層13を形成する樹脂フィルムと、接着層14を形成する樹脂フィルムとを接合したラミネートシートを用いることがより好ましい。
【0065】
接着層14の材質としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合等を挙げることができる。
【0066】
接着層14の平均厚さの下限としては、10μmが好ましく、15μmがより好ましい。一方、接着層14の平均厚さの上限としては、200μmが好ましく、100μmがより好ましい。接着層14の平均厚さを前記下限以上とすることによって、十分なヒートシール性が得られる。また、接着層14の平均厚さを前記上限以下とすることにより、仕切部材3の厚さが大きくなることを防止できる。
【0067】
保持部材4は、複数の蓄電素子2、複数の仕切部材3及び冷却部材6を保持する。この保持部材4は、例えばラック状、フレーム状、ボックス状等の構成とすることができる。保持部材4は、一対のエンドプレートと、エンドプレートを繋ぐ拘束バーとを有するものであってもよい。
【0068】
保持部材4は、複数の蓄電素子2を長側面同士が対向するよう並べ、蓄電素子2の長側面間に仕切部材3を配置するよう保持することが好ましい。また、保持部材4は、蓄電素子2の仕切部材に対向する面(長側面)とは異なる面に隣接するよう冷却部材6を保持することが好ましい。
【0069】
保持部材4は、蓄電素子2及び仕切部材3を圧迫して保持することが好ましい。蓄電素子2及び仕切部材3を圧迫保持するための構成としては、例えば、図示するように蓄電素子2を圧迫する圧迫板15を押し込みボルト16によって押圧する構成、ばね等の弾性部材を用いる構成等を採用することができる。このように、蓄電素子2及び仕切部材3を圧迫保持することで、蓄電素子2及び仕切部材3間にデッドスペースを形成せず、当該蓄電モジュール1のエネルギー密度を大きくすることができると共に、個々の蓄電素子2及び仕切部材3を保持しないでよいことから保持部材4の構成を簡素化することができる。
【0070】
保持部材4の圧迫力(押圧力を蓄電素子2のケース7の面積で除した値)の下限としては、50kPaが好ましく、100kPaがより好ましい。逆に、保持部材4の圧迫力の上限としては、400kPaが好ましく、300kPaがより好ましい。保持部材4の圧迫力を前記下限以上とすることによって、蓄電素子2及び仕切部材3を確実に保持することができる。また、保持部材4の圧迫力を前記上限以下とすることによって、蓄電素子2のケース7の厚さの増大によるエネルギー密度の低下を防止することができる。
【0071】
バスバー5は、蓄電素子2の正極外部端子8と隣接する蓄電素子2の負極外部端子9とを接続し、複数の蓄電素子2を電気的に直列に接続してもよい。バスバー5は、複数の蓄電素子2を並列に接続してもよい。
【0072】
冷却部材6は、複数の蓄電素子2に隣接するよう、複数の蓄電素子2の配列方向に延びるよう配置され、各蓄電素子2の熱を奪う。この冷却部材6は、蓄電素子2を冷却して、通常の使用状態で蓄電素子2に熱が蓄積されることを抑制する。
【0073】
冷却部材6は空冷式のものでもよいが、冷却効果を高める視点からは、内部に冷却水等の冷媒が通るよう構成されるものが好ましい。
【0074】
冷却部材6と各蓄電素子2との間には、隙間の形成を防止して熱伝導を効率化するために、例えば樹脂、ゲル等から形成される伝熱シートを配置してもよい。
【0075】
当該蓄電モジュールは、上述のように、ガラス紙シート10を袋体11の中に収容し、袋体11の内部空間を減圧したことによって、高い断熱性を有する仕切部材3が蓄電素子2の間に配置されている。このため、通常の使用状態ではないが何らかの原因によりいずれかの蓄電素子2が過熱状態となった場合にも、仕切部材3が過熱状態の蓄電素子2から隣接する蓄電素子2への熱伝導を抑制することができるので、蓄電素子2間の過熱状態の連鎖を防止することができる。
【0076】
図3に、
図1の蓄電モジュール1を備える蓄電パックを示す。
図3の蓄電パックは、複数の蓄電モジュール1と、隣接し合う蓄電モジュール1の間に配置される隔離部材17と、複数の蓄電モジュール1及び隔離部材17を保持するホルダ(パックケース)18とを備える。
【0077】
隔離部材17は、ガラス繊維を主体とするガラス紙シートと、内部空間に前記ガラス紙シートを収容する袋体とを有し、前記袋体の内部空間が減圧されている。この隔離部材17のガラス紙シート及び袋体は、仕切部材3のガラス紙シート10及び袋体11と同様とすることができる。つまり、隔離部材17は、平面寸法が異なる点を除いて、仕切部材3と同様に構成される。
【0078】
ホルダ18は、複数の蓄電モジュール1及び隔離部材17を固定する枠体であってもよい。例えば蓄電モジュール1及び隔離部材17を収容する堅固な箱体とすることが好ましい。ホルダ18は、蓄電モジュール1及び隔離部材17を保持するベース部材と蓄電モジュール1、隔離部材17及びベース部材を覆うカバーとを有する構成とされてもよい。ホルダ18がベース部材とカバーとを有する場合、カバーは、例えば蓄電パックを搭載する車両等と一体に形成されてもよい。
【0079】
[その他の実施形態]
前記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、前記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて前記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0080】
当該蓄電モジュールにおいて、冷却部材は任意である。また、冷却部材が保持部材と一体であってもよい。
【0081】
当該蓄電モジュールにおいて、袋体は、十分なガスバリア性を確保できれば金属層を有しなくてもよい。